はい、承知いたしました。Elasticsearchのreindex操作を安全に実行するための注意点とベストプラクティスについて、詳細な記事(約5000語)を作成します。記事の内容を直接ここに表示します。
Elasticsearch reindexで失敗しないための注意点とベストプラクティス
はじめに
Elasticsearchは、大量のデータを高速にインデックス、検索、分析するための強力な分散型検索・分析エンジンです。その運用において、既存のインデックスから新しいインデックスへデータを移行する必要が生じることがあります。これは通常、インデックス構造(マッピング)の変更、設定の更新、データの変換、または単純にインデックス名を変更したい場合などに行われます。この目的のために提供されているのが、_reindex
APIです。
_reindex
APIは非常に便利ですが、適切に計画・実行されない場合、クラスター全体のパフォーマンス低下、reindex処理自体の失敗、データの不整合、さらにはサービス停止といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。特に、大量のデータを扱う場合や、本番環境でダウンタイムを最小限に抑えたい場合には、慎重な対応が求められます。
この記事では、Elasticsearchの_reindex
APIを安全かつ効率的に実行するための詳細な注意点とベストプラクティスを約5000語で解説します。reindexが失敗する主な原因から、事前の準備、実行中の監視、そして実行後の検証まで、網羅的な情報を提供することを目指します。
reindex APIの基本
_reindex
APIは、ソースとなる1つ以上のインデックス、またはエイリアスから、デスティネーションとなる1つのインデックスにドキュメントをコピーするために使用されます。この処理は、内部的にはソースインデックスに対して「スクロール検索」を実行し、取得したドキュメントを新しいデスティネーションインデックスに対して「バルクインデックス」として書き込む、という流れで行われます。
基本的な仕組み:
- スクロール (Scroll): reindexは、ソースインデックスのすべてのドキュメントを取得するために、
scroll
APIを利用します。これは、一度にすべての検索結果をメモリに保持するのではなく、結果のバッチ(ページ)を繰り返し取得する効率的な方法です。 - バルクインデックス (Bulk Index): 取得したドキュメントのバッチは、デスティネーションインデックスに対して
_bulk
APIを使用して書き込まれます。_bulk
APIは、複数のドキュメントのインデックス、更新、削除操作をまとめて効率的に実行するためのAPIです。
この「読み込んで書き込む」プロセスが、ソースインデックスのすべてのドキュメントがデスティネーションインデックスにコピーされるまで繰り返されます。
基本的なreindexリクエストの構造:
最も基本的なreindexリクエストは、source
とdest
を指定します。
json
POST _reindex
{
"source": {
"index": "my_source_index"
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
}
}
この例では、my_source_index
のすべてのドキュメントをmy_destination_index
にコピーします。my_destination_index
が存在しない場合、Elasticsearchはデフォルトの設定で自動的に作成します。
一般的な使用例:
- インデックス名変更: 既存のインデックス名を実質的に変更する場合(例:
logs-2023-10-26
からlogs-2023-10-27
)。 - マッピング変更: フィールドのデータ型を変更したり、新しいフィールドを追加したりする場合。マッピングは不変(immutable)であるため、既存のインデックスのマッピングを直接変更することはできません。新しいマッピングを持つインデックスを作成し、データをreindexする必要があります。
- 設定変更: シャード数、レプリカ数、
refresh_interval
などのインデックス設定を変更する場合。設定の中には、インデックス作成後に変更できないものがあります。 - データ変換: ドキュメントの内容をインデックス中に変更する場合。Painlessスクリプトを使用して、フィールドの追加、削除、変更、値の変換などを行います。
- データのフィルタリング: 特定の条件に一致するドキュメントのみをコピーする場合。
source
セクションにquery
を追加します。
json
POST _reindex
{
"source": {
"index": "my_source_index",
"query": {
"term": {
"status": "processed"
}
}
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
}
}
- リモートクラスターからの移行: 別のElasticsearchクラスターからデータを移行する場合。
source
セクションにremote
設定を追加します。
json
POST _reindex
{
"source": {
"remote": {
"host": "http://remote_host:9200",
"username": "user",
"password": "password"
},
"index": "remote_source_index"
},
"dest": {
"index": "my_local_index"
}
}
reindexが失敗する主な原因
reindex操作は多くの内部処理を伴うため、様々な要因で失敗する可能性があります。主な原因を理解しておくことは、失敗を未然に防ぎ、あるいは発生した問題を迅速に解決するために不可欠です。
-
リソース不足:
- CPU: スクロール検索、スクリプト実行(もし使用する場合)、バルクインデックス処理は全てCPUリソースを消費します。特に、大規模なインデックスのreindexや複雑なスクリプトを使用する場合、CPU使用率が急増し、他の操作(検索、インデックス)に影響を与えたり、reindexタスク自体がタイムアウトしたりする可能性があります。
- メモリ (JVM Heap): スクロールコンテキストの管理、バルク要求の構築、スクリプト実行、シャード間の通信など、reindexはJVMヒープメモリを使用します。ヒープが不足すると、GC(ガーベージコレクション)が増加してノードの応答性が低下し、
OutOfMemoryError
が発生してノードがクラッシュする可能性もあります。 - ディスクI/O: ソースインデックスからの読み込み、デスティネーションインデックスへの書き込みはディスクI/Oを大量に消費します。I/O性能がボトルネックになると、reindex処理が遅延するだけでなく、クラスター全体のディスク操作(新しいドキュメントのインデックス、セグメントマージなど)にも影響が出ます。
- ネットワーク帯域幅: 特にリモートreindexや、ソース/デスティネーションインデックスのシャードが異なるノードに分散している場合、ネットワークトラフィックが増加します。ネットワークが飽和すると、通信エラーやタイムアウトが発生し、reindexが失敗する原因となります。
- ディスク容量不足: デスティネーションインデックスはソースインデックスと同等かそれ以上のディスク容量を必要とします(特にレプリカを考慮に入れると)。十分な空き容量がない場合、インデックス操作が失敗し、クラスターが読み取り専用モードに切り替わるなどの問題が発生します。
-
バージョン互換性の問題:
- 特に異なるメジャーバージョン間でreindexする場合、マッピング、設定、分析器などが互換性がない場合があります。例えば、以前のバージョンで許可されていたマッピングが新しいバージョンでは非推奨またはサポートされていない場合、reindex中にマッピングエラーが発生します。
- 古いバージョンから新しいバージョンへreindexする際は、公式ドキュメントのアップグレードガイドラインを必ず確認し、
_migration
APIなどの移行ツールを検討することが重要です。
-
マッピングの競合・不一致:
- デスティネーションインデックスを事前に作成せずにreindexを実行すると、Elasticsearchはソースインデックスから推測したマッピングでデスティネーションインデックスを作成します。しかし、ソースインデックスが動的マッピングを多用していたり、複数のシャードで同じフィールドに対して異なるデータ型が推測されたりしている場合、マッピングの競合が発生し、reindexが失敗することがあります。
- また、デスティネーションインデックスを事前に作成した場合でも、ソースインデックスのマッピングとデスティネーションインデックスのマッピングに互換性のない違いがあると、ドキュメントのインデックス中にエラーが発生します。例えば、ソースでは数値型だったフィールドがデスティネーションでは文字列型になっている場合などです。
-
スクリプトの問題:
script
オプションを使用してドキュメントを変換する場合、Painlessスクリプトに構文エラーや実行時エラーがあると、reindexは失敗します。- スクリプトのパフォーマンスが低い場合、reindex処理全体が著しく遅延し、リソースを過剰に消費する原因となります。特に、複雑な計算や大量のデータを扱うスクリプトは注意が必要です。
-
ネットワークの問題:
- reindexはノード間通信を頻繁に行います。ネットワークの不安定性、パケットロス、タイムアウトは、スクロール検索の失敗、バルクインデックス要求の失敗、タスクのキャンセルなど、様々な形でreindexを妨害します。
- リモートreindexの場合は、さらにリモートクラスターへの接続性、認証、ネットワーク帯域幅などが問題となる可能性があります。
-
シャードの状態:
- ソースインデックスのシャードが利用不可(例:
UNASSIGNED
)、RELOCATING
、またはノードの障害によりアクセスできない状態にある場合、reindexはソースからの読み込みができずに失敗します。reindexを開始する前に、ソースインデックスが健全な状態であることを確認する必要があります。
- ソースインデックスのシャードが利用不可(例:
-
レプリカシャードの不足:
- reindex中のソースインデックスは、大量の検索リクエスト(スクロール)を処理します。ソースインデックスにレプリカシャードが少ない、あるいはまったくない場合、プライマリシャードに負荷が集中し、通常の検索やインデックス操作に遅延が発生したり、reindex自体が遅くなったりする可能性があります。
-
クラスター設定:
- バルクキューのサイズやスレッドプールの設定が不適切だと、バルクインデックス要求が拒否されたり、保留されたりすることがあります。
reindex.remote.whitelist
のようなセキュリティ設定が正しく構成されていないと、リモートreindexがブロックされます。
-
セキュリティと権限:
- reindexを実行するユーザーが、ソースインデックスに対する読み取り権限と、デスティネーションインデックスに対する書き込み(インデックス)権限を持っていない場合、reindexリクエストは拒否されます。
これらの原因の多くは、適切な準備と計画、そして実行中の慎重な監視によって回避または対処可能です。
失敗しないための事前準備と計画
reindexを成功させるための鍵は、入念な事前準備と計画にあります。以下のステップは、潜在的な問題を特定し、リスクを最小限に抑えるのに役立ちます。
-
環境の評価:
- クラスターの状態確認: reindexを実行する前に、対象のElasticsearchクラスターが正常な状態であることを確認します。クラスターの状態が
green
であり、割り当てられていないシャード(UNASSIGNED
)がないこと、ノードのリソース使用率(CPU, メモリ, ディスクI/O)が異常に高くないことを確認します。
bash
GET _cluster/health
GET _cat/nodes?v
GET _cat/allocation?v - 対象インデックスの評価: ソースインデックスのサイズ、ドキュメント数、シャード数、レプリカ数を確認します。これにより、reindexにかかるおおよその時間と、必要となるリソースを推定できます。
bash
GET _cat/indices/my_source_index?v - 現在の負荷状況: クラスターが通常どの程度の検索・インデックス負荷を受けているか把握します。reindexはこれに追加の負荷をかけるため、その影響を考慮に入れる必要があります。KibanaのMonitoring機能や専用の監視ツール(Prometheus+Grafanaなど)を活用します。
- クラスターの状態確認: reindexを実行する前に、対象のElasticsearchクラスターが正常な状態であることを確認します。クラスターの状態が
-
マッピングと設定の確認・準備:
- 新しいインデックスのマッピング定義: reindex APIに自動でマッピングを作成させるのではなく、新しいデスティネーションインデックスのマッピングを事前に明示的に定義することを強く推奨します。これにより、意図しないマッピングが作成されることを防ぎ、データ型の不一致によるエラーを回避できます。
json
PUT my_destination_index
{
"settings": {
"index": {
"number_of_shards": 3,
"number_of_replicas": 0, // reindex中は0にすることが多い
"refresh_interval": "30s" // reindex中は長くすることが多い
}
},
"mappings": {
"_doc": { // またはタイプ名を指定しない(7.x以降の推奨)
"properties": {
"field1": { "type": "keyword" },
"field2": { "type": "long" },
// ... 他のフィールド
}
}
}
} - マッピング互換性の確認: ソースインデックスのマッピングとデスティネーションインデックスで定義するマッピングに互換性があるか慎重に確認します。特にデータ型の変更はエラーの原因になりやすいです。
- インデックス設定の最適化: reindex中の書き込みパフォーマンスを向上させるために、デスティネーションインデックスの初期設定を最適化します。
number_of_replicas
を0に設定します。レプリカへの書き込みはオーバーヘッドになるため、reindex完了後にレプリカ数を増やします。refresh_interval
を長く設定します(例:30s
や-1
)。頻繁なrefreshはI/Oリソースを消費するため、reindex中は間隔を長くするか無効(-1
)にします。完了後に元の設定に戻します。index.codec
の設定(例えば、best_compression
など)も考慮できますが、reindex中のパフォーマンスよりもディスク容量最適化を優先する場合に検討します。
- 新しいインデックスのマッピング定義: reindex APIに自動でマッピングを作成させるのではなく、新しいデスティネーションインデックスのマッピングを事前に明示的に定義することを強く推奨します。これにより、意図しないマッピングが作成されることを防ぎ、データ型の不一致によるエラーを回避できます。
-
バージョン互換性の確認:
- 異なるメジャーバージョン間でreindexする場合、Elasticsearchの公式ドキュメントで提供されている「Migration Guide」または「Upgrade Guide」を必ず参照します。バージョン間の非互換性に関する情報(廃止された機能、変更されたAPI、マッピングの変更点など)が記載されています。
- 可能であれば、Upgrade Assistant APIやツールを使用して、潜在的な互換性の問題を検出します。
-
スクリプトのテスト:
- reindexでスクリプトを使用する場合は、本番環境での実行前に十分にテストします。
_simulate
APIや、テスト用の小さなデータセットを持つインデックスに対してスクリプトを実行し、期待通りの結果が得られるか、エラーが発生しないかを確認します。- スクリプトのパフォーマンスも重要です。
_explain
APIやプロファイリングツールを使用して、遅いスクリプトを特定・改善します。
-
十分なリソースの確保:
- reindexはCPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワークに高い負荷をかけます。reindex実行中の負荷増加を見越して、クラスターに必要なリソースが十分に確保されているか確認します。
- 特に、ソースインデックスの読み込みとデスティネーションインデックスへの書き込みを同時に行うため、ディスクI/Oがボトルネックになりやすいです。高速なストレージ(SSDなど)を使用しているか確認します。
- ディスク容量は、ソースインデックスのサイズに加えて、デスティネーションインデックス(レプリカを含む)に必要な容量、および一時的に増加するディスク使用量(セグメントマージなど)を考慮して、十分な空き容量があることを確認します。一般的に、ソースインデックスのサイズの2倍程度の空き容量があると安心です。
- クラスターのノードリソースが不足している場合は、reindex実行前にノードを追加するか、既存のノードのリソース(CPU, メモリ, ディスク)を増強することを検討します。
-
本番環境での影響評価:
- reindexはクラスターに負荷をかけるため、本番環境で実行する場合は、サービスへの影響を評価します。
- reindex中に、通常の検索やインデックス操作の応答性が低下したり、レイテンシが増加したりする可能性があります。
- ピーク時間帯を避け、システム負荷の低い時間帯(例: 深夜や週末)にreindexを実行する計画を立てます。
- reindex中のシステム負荷を継続的に監視し、必要に応じてスロットリングを調整できるように準備しておきます。
-
バックアップ戦略:
- 万が一、reindexが失敗したり、予期しないデータ損失や破損が発生したりした場合に備え、reindexを実行する前にソースインデックスのスナップショットを取得しておきます。これにより、問題が発生した場合でも元の状態に戻すことができます。
bash
PUT _snapshot/my_repository/my_source_index_snapshot?wait_for_completion=true
{
"indices": "my_source_index",
"ignore_unavailable": true,
"include_global_state": false
}
- 万が一、reindexが失敗したり、予期しないデータ損失や破損が発生したりした場合に備え、reindexを実行する前にソースインデックスのスナップショットを取得しておきます。これにより、問題が発生した場合でも元の状態に戻すことができます。
安全なreindex実行のためのベストプラクティス
事前準備が整ったら、実際にreindexを実行します。以下のベストプラクティスは、reindex処理をより安全かつ効率的に進めるのに役立ちます。
-
Dry Runの実行:
- reindexリクエストの構文や設定が正しいかを確認するために、
?dry_run=true
パラメータを付けてreindexを実行します。これは実際のデータ移行は行わず、リクエストが正常に処理されるか、どのようなタスクが作成されるかを確認できます。
json
POST _reindex?dry_run=true
{
"source": {
"index": "my_source_index"
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
}
} - これにより、権限の問題や基本的な構文エラーなどを事前に検出できます。
- reindexリクエストの構文や設定が正しいかを確認するために、
-
サイズの考慮と分割実行:
- 対象のインデックスが非常に大きい場合、単一のreindexジョブとして実行すると、完了までに非常に長い時間がかかったり、途中で失敗したりするリスクが高まります。
- 可能であれば、時間範囲や特定のフィールドの値に基づいて、ソースインデックスを論理的に分割し、複数の小さなreindexジョブとして並行または順番に実行することを検討します。これにより、失敗した場合の影響範囲を限定し、再開も容易になります。ただし、分割のロジックは慎重に設計する必要があります。
- また、一部のドキュメント(例: 数千件や数万件)のみを対象にreindexをテスト実行し、処理時間やリソース消費量を見積もることも有効です。
size
パラメータをsource
セクションに追加します。
json
POST _reindex
{
"source": {
"index": "my_source_index",
"size": 10000 // 最初の10000件のみ
},
"dest": {
"index": "my_destination_index_test"
}
}
-
デスティネーションインデックスの事前作成:
- 前述の準備ステップで述べたように、reindex APIにインデックスを自動作成させるのではなく、事前にデスティネーションインデックスを明示的なマッピングと設定で作成しておきます。これにより、マッピングの不一致や意図しない設定でのインデックス作成を防ぎます。
-
バッチサイズとスロットリング:
- reindexは内部的にスクロールとバルクを使用しますが、これらのバッチサイズと速度を制御できます。
scroll_size
: 一度のスクロールリクエストで取得するドキュメント数(デフォルト: 1000)。大きな値を設定すると、各ラウンドのI/Oが大きくなりますが、ラウンド数は減ります。クラスターのリソース状況に合わせて調整します。
json
POST _reindex
{
"source": {
"index": "my_source_index",
"size": 5000 // scroll_size に相当
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
}
}requests_per_second
: 1秒あたりのリクエスト数を制限する最も重要なパラメータです。reindexはデフォルトでは可能な限りの速度で実行されるため、クラスターに過剰な負荷をかける可能性があります。このパラメータを使用して、reindexの実行速度を明示的に制限することを強く推奨します。-1
: スロットリングなし(デフォルト)- 任意の数値 (例:
100
): 1秒あたり最大100リクエスト(約100 *scroll_size
ドキュメント/秒) "unlimited"
: スロットリングなし (v7.1以降)
json
POST _reindex
{
"source": {
"index": "my_source_index"
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
},
"requests_per_second": 100 // 1秒あたり100リクエストに制限
}
適切な値は、クラスターのリソース状況、ソースインデックスとデスティネーションインデックスの特性、許容できるreindex時間によって異なります。最初は低い値から始め、監視しながら徐々に上げていくのが安全です。
reindex.remote.throttle.max_bytes_per_sec
: リモートreindexの場合、クラスター設定で全体の帯域幅を制限することも可能です。
-
Wait for Completion (待機するか、タスクAPIを使用するか):
- デフォルトでは、
_reindex
リクエストは完了するまで(またはタイムアウトするまで)クライアントをブロックします。?wait_for_completion=true
はデフォルトの挙動です。 - 長時間かかるreindexジョブの場合、クライアント側のネットワーク接続が切れるとジョブがキャンセルされてしまうリスクがあります。これを避けるために、
?wait_for_completion=false
パラメータを指定してreindexを非同期で実行することを推奨します。
json
POST _reindex?wait_for_completion=false
{
"source": {
"index": "my_source_index"
},
"dest": {
"index": "my_destination_index"
},
"requests_per_second": 100
}
このリクエストはすぐにタスクIDを返します。このタスクIDを使用して、後述するTask APIで進捗を監視できます。
- デフォルトでは、
-
進捗の監視:
- reindex実行中は、その進捗とクラスターの負荷を継続的に監視することが非常に重要です。
- Task API (
_tasks
): 非同期で実行した場合、返されたタスクIDを使用して_tasks
APIで進捗を確認できます。
bash
GET _tasks?nodes=*,actions=*reindex&detailed=true&pretty
GET _tasks/<task_id>
これにより、処理されたドキュメント数、スキップされたドキュメント数、エラー数、実行時間などが確認できます。 _cat/tasks
: より簡潔な形式で実行中のタスク一覧を表示します。
bash
GET _cat/tasks?v&actions=*reindex- Kibana Monitoring: KibanaのMonitoring機能は、クラスター全体の健全性、ノードのリソース使用率、インデックス操作の統計情報などを視覚的に確認するのに非常に役立ちます。reindex実行中は、CPU負荷、メモリ使用率、ディスクI/O、ネットワークトラフィック、検索・インデックスレートなどを注視します。特に、reindexが開始されたことによるこれらのメトリクスの変化を確認します。
- ログの監視: Elasticsearchのログファイルも監視します。エラーメッセージや警告メッセージが出力されていないか確認します。
-
エラーハンドリングとリトライ:
- reindex APIは、一時的なエラー(例: ドキュメントのバージョン競合、ネットワークタイムアウトなど)に対してデフォルトで自動的にリトライを行います。リトライ回数や待機時間は設定で調整可能ですが、多くの場合デフォルトで十分です。
- 永続的なエラー(例: マッピングの不一致、スクリプトエラー、権限エラーなど)が発生した場合、reindexタスクは最終的に失敗するか、多くのドキュメントがスキップされます。
- エラーが発生した場合は、Task APIの応答に含まれるエラー情報や、Elasticsearchのログを確認して原因を特定します。
- 原因を修正した後、失敗したタスクを再実行するか、新しいreindexタスクを開始する必要があります。失敗したタスクは
_reindex/{task_id}/_cancel
でキャンセルできます。 - 一部のドキュメントがエラーでスキップされた場合、失敗したドキュメントのみを対象に再実行することも可能ですが、通常は全体を再実行する方がシンプルです。エラーになったドキュメントはタスクの状態に含まれるか、デスティネーションインデックスのrejectedドキュメントとして確認できます。
-
デスティネーションインデックスの最適化の遅延:
- reindexが完了するまで、デスティネーションインデックスの
refresh_interval
は長く保ち、number_of_replicas
は0のままにしておくことで、書き込みパフォーマンスを最大化します。 - reindex完了後、
_settings
APIを使用してこれらの設定を適切な値に戻します。
bash
PUT my_destination_index/_settings
{
"index": {
"number_of_replicas": 1, // 例: 1つのレプリカを設定
"refresh_interval": "1s" // 例: 元のrefresh intervalに戻す
}
} - force mergeは、多数の小さなセグメントをマージして検索パフォーマンスを向上させる操作ですが、I/O負荷が非常に高いため、reindex中に実行するのは避けるべきです。reindex完了後、システム負荷が低い時間帯に実行することを検討します。
bash
POST my_destination_index/_forcemerge?max_num_segments=1
- reindexが完了するまで、デスティネーションインデックスの
-
エイリアスの活用:
- reindexを伴うインデックス切り替えにおいて、ダウンタイムを最小限に抑えるための最も推奨される方法は、インデックスエイリアスを使用することです。
- サービスやアプリケーションは直接インデックス名を参照せず、エイリアスを参照するように設計します。
- reindexを実行して新しいインデックス(例:
my_index_new
)にデータをコピーします。 - reindexが完了し、新しいインデックスのデータが正しくコピーされ、検証が完了したら、アトミックにエイリアスを古いインデックス(例:
my_index_old
)から新しいインデックスに切り替えます。 - エイリアスの切り替えは
_aliases
APIを使用して単一のアトミックなリクエストで行います。これにより、トラフィックが新しいインデックスに瞬時に切り替わり、ダウンタイムが発生しません。
json
POST _aliases
{
"actions": [
{ "remove": { "index": "my_index_old", "alias": "my_alias" } },
{ "add": { "index": "my_index_new", "alias": "my_alias" } }
]
} - この操作は、エイリアスを参照しているアプリケーションからは、検索やインデックス操作の対象がスムーズに切り替わったように見えます。古いインデックスは、新しいインデックスが安定稼働していることを確認してから安全に削除できます。
-
リモートreindex:
- 異なるクラスター間でreindexする場合、以下の点に注意が必要です。
- ネットワーク: クラスター間のネットワーク帯域幅と遅延が重要です。十分な帯域幅がないとreindexに非常に時間がかかったり、タイムアウトが発生したりします。
- セキュリティ: リモートクラスターへの接続は認証情報(ユーザー名/パスワード、APIキーなど)を使用する必要があります。また、Elasticsearchノードの設定で
reindex.remote.whitelist
を設定し、接続を許可するリモートホストを制限する必要があります。 - バージョン互換性: リモートクラスターとローカルクラスターのバージョンに大きな違いがある場合、マッピングやデータの互換性に問題が生じる可能性があります。事前に互換性を十分確認します。
- スロットリング: リモートreindexは、特にソース側のクラスターに負荷をかけるため、
requests_per_second
によるスロットリングを必ず使用します。
- 異なるクラスター間でreindexする場合、以下の点に注意が必要です。
reindex後の検証とクリーンアップ
reindexが完了しただけでは作業は終わりではありません。データが正しく移行されたか検証し、必要に応じてクリーンアップを行います。
-
ドキュメント数の確認:
- 最も基本的な検証は、ソースインデックスとデスティネーションインデックスのドキュメント数を比較することです。通常、reindexによってスキップされたドキュメントがなければ、ドキュメント数は一致するはずです。
bash
GET my_source_index/_count
GET my_destination_index/_count - Task APIの応答やログでスキップされたドキュメントがないか(または意図的にスキップしたドキュメント数と一致するか)を確認します。
- もしドキュメント数が一致しない場合やスキップされたドキュメントがある場合は、reindexタスクの詳細を確認し、エラーが発生した原因を調査します。
- 最も基本的な検証は、ソースインデックスとデスティネーションインデックスのドキュメント数を比較することです。通常、reindexによってスキップされたドキュメントがなければ、ドキュメント数は一致するはずです。
-
データのサンプリングと検索テスト:
- 新しいインデックスに対して、いくつかの代表的な検索クエリを実行し、期待通りの結果が返ってくるか確認します。
- ソースインデックスからランダムにいくつかのドキュメントIDを取得し、それらのドキュメントが新しいインデックスに存在し、内容が正しくコピーされているか
_get
APIで確認します。
bash
GET my_destination_index/_doc/<document_id> - スクリプトを使用してデータを変換した場合、変換後のデータが期待通りになっているか、サンプリングしたドキュメントで確認します。
-
エイリアスの切り替え:
- 検証が完了し、新しいインデックスが本番利用可能であると判断したら、エイリアスを使用している場合は、前述のようにアトミックな切り替え操作を実行します。
-
古いインデックスの削除:
- 新しいインデックスがエイリアス経由で本番トラフィックを処理し、しばらく安定稼働していることを確認した後、古いソースインデックスを削除します。
bash
DELETE my_source_index - 古いインデックスをすぐに削除するのが不安な場合は、一定期間保持しておき、問題が発生した場合に備えることもできます。ただし、その間はディスク容量や管理コストがかかります。スナップショットがあれば、インデックス自体は削除しても後から復元可能です。
- 新しいインデックスがエイリアス経由で本番トラフィックを処理し、しばらく安定稼働していることを確認した後、古いソースインデックスを削除します。
代替手段の検討
reindex APIは非常に便利ですが、すべてのユースケースに最適とは限りません。状況によっては、他の方法を検討することも有効です。
- Bulk APIとScroll APIを組み合わせたカスタムスクリプト: reindex APIでは実現できない複雑なロジック(例: 複数のソースからのデータ統合、外部データとの連携、高度なデータ変換)が必要な場合、Scroll APIでソースからデータを取得し、カスタムのスクリプトやアプリケーションで処理した後、Bulk APIで新しいインデックスに書き込むという方法があります。これは柔軟性が高い反面、開発・保守コストがかかります。
- LogstashやBeatsなどのETLツール: Logstashは、様々なデータソースからデータを収集、変換し、Elasticsearchにロードするための強力なパイプラインツールです。Elasticsearch InputプラグインとElasticsearch Outputプラグインを使用すれば、あるインデックスから別のインデックスへデータを移行・変換できます。Beatsは軽量なデータシッパーで、特定の種類のデータを収集するのに特化しています。これらのツールは、定期的なデータ同期や、異なるシステム間のデータ連携の一部としてreindexの機能を実現する場合に適しています。
- Snapshot/Restore API: あるクラスターのインデックスを別のクラスターに完全にコピーしたい場合など、reindexではなくSnapshot/Restore APIを使用する方が効率的な場合があります。スナップショットはインデックスの物理的なコピー(または差分)を作成し、これを別のクラスターにリストアすることで、データを移行できます。ただし、スナップショット/リストアでは、インデックス内の個々のドキュメントに対して加工処理を行うことはできません。
- Upgrade Assistant: メジャーバージョンアップグレードに伴うreindexの場合は、Elasticsearchに同梱されているUpgrade Assistantを使用することを強く推奨します。これは非互換性のある設定やマッピングを特定し、多くの場合はreindex操作をガイドしてくれます。
まとめ
Elasticsearchの_reindex
APIは、インデックスの構造変更やデータ移行を行う上で非常に強力で便利なツールです。しかし、その操作はクラスターに大きな負荷をかける可能性があり、事前の計画、実行中の監視、そして実行後の検証が不欠です。
reindexを成功させるための最も重要なポイントは以下の通りです。
- 入念な事前準備: クラスターと対象インデックスの状況を評価し、新しいインデックスのマッピングと設定を事前に定義・最適化し、必要なリソース(特にディスク容量とI/O)を確保します。バージョン互換性やスクリプトの問題も事前に確認します。
- 安全な実行戦略:
requests_per_second
による適切なスロットリングは必須です。非同期実行 (wait_for_completion=false
) とTask APIによる進捗監視を活用し、Dry Runで構文を確認します。大きなインデックスは分割実行を検討します。 - 継続的な監視: reindex実行中は、Task APIで進捗を確認するだけでなく、クラスターのリソース使用率(CPU, メモリ, ディスクI/O, ネットワーク)やElasticsearchのログを継続的に監視し、問題の兆候を早期に検出します。
- エイリアスの活用: ダウンタイムなしでインデックスを切り替えるために、エイリアスを使用したアトミックな切り替え手順を計画します。
- 厳格な検証: reindex完了後、ドキュメント数の比較やデータのサンプリング・検索テストにより、データが正しく移行されたことを厳格に検証します。
これらの注意点とベストプラクティスを遵守することで、Elasticsearchのreindex操作をより安全かつ確実に実行し、クラスターへの悪影響を最小限に抑えることができます。計画段階から慎重に進め、必要に応じてテスト環境でのリハーサルを行うことで、本番環境での成功率を大幅に高めることができるでしょう。