QT Pro(QuickTime Pro)入門:初心者向け機能ガイド
はじめに
動画は、今日のデジタル世界において最も強力な情報伝達手段の一つです。個人的な思い出の記録からプロフェッショナルなコンテンツ制作まで、動画の重要性は増す一方です。そんな動画を扱う上で、かつて多くのユーザーに親しまれていたのがAppleが開発したマルチメディアフレームワーク、QuickTimeです。そして、その有料版である「QuickTime Pro」は、単なる再生プレイヤーにとどまらず、簡単な編集、形式変換、書き出しといった多くの便利な機能を提供していました。
QuickTime Proは、そのシンプルながらパワフルな機能セットにより、初心者からある程度の経験者まで、幅広いユーザーのニーズに応えていました。特別な編集スキルがなくても、家庭で撮影したビデオを結合したり、インターネットで公開するために形式を変換したり、特定デバイスで再生できるように調整したりすることが可能でした。
しかし、時は流れ、QuickTime Proは2016年にWindows版のサポートが終了し、macOS版も新しいOSの登場とともにその役割をQuickTime Playerやより高度な編集ソフトウェア(Final Cut Proなど)に譲る形となりました。現在、QuickTime Proの新規購入はできません。また、特にWindows版においては、セキュリティ上の脆弱性が報告されているため、利用には十分な注意が必要です。
それでもなお、過去にQuickTime Proを購入し、古いシステム環境で利用しているユーザーや、そのシンプルで直感的な操作感を懐かしく思うユーザーも少なくありません。また、QuickTimeファイル形式(.mov)やQuickTimeテクノロジー自体は現在でも様々な場所で利用されています。
本記事は、かつてQuickTime Proを初めて使うユーザーに向けて書かれた入門ガイドという想定で、その主要な機能と操作方法を詳細に解説することを目的としています。もし現在QuickTime Proを利用している方がいれば、本記事がその活用の一助となれば幸いです。ただし、前述の通り、セキュリティリスクなどを十分に理解した上でご利用ください。本記事では、特に以下の点を重点的に解説します。
- QuickTime Proで何ができるのか?(Pro版のメリット)
- 基本的なインターフェースと操作方法
- 動画の再生機能の活用方法
- カット、コピー、ペーストといった基本的な編集機能
- 動画や音声の形式変換と書き出し機能
- その他の便利な機能
本記事を通じて、QuickTime Proが提供していた多機能性を理解し、そのシンプルながらも強力なツールキットを使いこなすための第一歩を踏み出せることを願っています。
QuickTime Proのインストールとアクティベーション
QuickTime Proを利用するためには、まずソフトウェアをインストールし、Pro機能を有効にするためのライセンスキーを入力する必要がありました。現在では新規にQuickTime Proを購入することはできませんが、ここでは過去の入手・インストール・アクティベーションプロセスについて解説します。
QuickTime Proの入手方法(過去)
かつてQuickTime Proは、Appleのオンラインストアや一部の家電量販店でライセンスキーとして販売されていました。多くの場合、QuickTime Player(無料版)をダウンロード・インストールした後、購入したProキーを入力することで、PlayerがPro版の機能を持つように「アップグレード」される形でした。ソフトウェア自体は、Appleの公式ウェブサイトから無料でダウンロードできるQuickTime Playerに含まれていたのです。
インストール手順
QuickTime Playerのインストール手順は、WindowsとmacOSで若干異なりますが、基本的な流れは共通しています。
- ソフトウェアのダウンロード: Appleの公式ウェブサイトのサポートページなどから、利用しているOSに対応した最新版のQuickTime Playerインストーラーをダウンロードします。(ただし、古いOSに対応するバージョンは、現時点では公式に入手困難になっている可能性があります。)
- インストーラーの実行: ダウンロードしたファイル(Windowsでは
.exe、macOSでは.dmg)をダブルクリックして実行します。 - 画面の指示に従う: インストーラーの指示に従って、インストールを進めます。使用許諾契約への同意、インストール先の指定(通常はデフォルトで問題ありません)、インストールするコンポーネントの選択(特別な理由がなければすべてインストール)などを行います。
- インストール完了: インストールが完了すると、QuickTime Playerがアプリケーションリストに追加されます。
アクティベーション方法(Proキーの入力)
QuickTime Playerをインストールしただけでは無料版です。Pro版の機能を利用するには、購入したライセンスキー(シリアル番号)を入力してアクティベーションを行う必要がありました。
- QuickTime Playerの起動: インストールしたQuickTime Playerを起動します。
- Proキー入力ウィンドウを開く:
- Windows版: メニューバーから「編集(Edit)」>「設定(Preferences)」>「QuickTime設定(QuickTime Settings)」を選択します。「登録(Registration)」または「Pro」といったタブやボタンがあるはずです。
- macOS版: メニューバーから「QuickTime Player」>「登録(Registration)」を選択します。
- ライセンス情報の入力: 開いたウィンドウに、購入したQuickTime Proのユーザー名(または登録名)とライセンスキー(シリアル番号)を正確に入力します。大文字・小文字、ハイフンなども含め、間違えないように注意が必要です。
- 登録/適用: 入力後、「登録(Register)」、「OK」、「適用(Apply)」などのボタンをクリックします。
- Pro機能の有効化: 入力した情報が正しければ、QuickTime PlayerがQuickTime Proとして認識され、編集や書き出しといったPro版限定の機能が利用可能になります。メニューバーの項目が増えたり、これまでグレーアウトされていた項目が選択できるようになるはずです。
注意点
- OSとの互換性: QuickTime PlayerおよびQuickTime Proは、新しいOSバージョンでは正しく動作しない場合があります。特にWindows版は、Windows 7までが実質的なサポート対象でした。macOS版も、Catalina以降など64bit環境への移行が進むにつれて、古い32bitアプリケーションであるQuickTime 7 Pro(およびそれ以前)は動作しなくなりました。利用したい場合は、対応OS環境を確認する必要があります。
- 現在のサポート状況: 前述の通り、QuickTime Proの新規購入や公式サポートは終了しています。インストールファイルの入手自体も難しくなっています。
- セキュリティリスク: 特にWindows版のQuickTime Playerには、Appleによるサポート終了後、セキュリティ上の脆弱性が発見されています。インターネットに接続された環境で使用することは推奨されません。オフライン環境での限定的な利用に留めるか、後述する代替ソフトウェアの利用を強く推奨します。
もし古いシステム環境でQuickTime Proを利用している場合、アクティベーション情報はシステム上に保存されますが、環境によってはOSの再インストールなどで再度入力が必要になることもあります。ライセンスキーは紛失しないように大切に保管する必要があります。
QuickTime Proの基本的な使い方
QuickTime Proを起動したら、まずはそのインターフェースと基本的な操作方法を理解しましょう。シンプルながらも必要な機能にアクセスしやすいように設計されています。
インターフェースの概要説明
QuickTime Proのメインウィンドウは、主に以下の要素で構成されています。
- メニューバー: ウィンドウ上部(Windows)または画面上部(macOS)に表示されます。「ファイル(File)」「編集(Edit)」「表示(View)」「ウインドウ(Window)」「ヘルプ(Help)」などの標準的なメニューに加え、QuickTime Proでは「ムービー(Movie)」「ウインドウ(Window)」メニューなどに編集や書き出しに関連する項目が追加されます。
- 再生コントロール: ムービーウィンドウの下部に表示されます。再生/一時停止ボタン、シークバー(再生位置を示すスライダー)、現在の再生時間/全体の長さ表示、音量コントロールなどが配置されています。
- ムービー表示エリア: ウィンドウの大部分を占める、映像が表示されるエリアです。
- プロパティウィンドウ(オプション): ムービーの情報を表示・編集するための別ウィンドウです。メニューバーの「ウインドウ(Window)」>「ムービーのプロパティ(Show Movie Properties)」で開くことができます。これは編集機能で非常に重要になります。
ファイルの開き方
QuickTime Proで動画や音声ファイルを開く方法はいくつかあります。
- メニューから開く: メニューバーの「ファイル(File)」>「ムービーを開く(Open Movie…)」を選択します。ファイル選択ダイアログが表示されるので、開きたいファイルを選んで「開く」をクリックします。
- ドラッグ&ドロップ: Finder(macOS)やエクスプローラー(Windows)から、開きたいファイルをQuickTime Playerのアイコンや開いているウィンドウにドラッグ&ドロップします。
- ダブルクリック: QuickTime Playerに関連付けられているファイル形式(.mov, .mp4など)であれば、ファイルをダブルクリックするだけでQuickTime Playerが起動して開かれます。
QuickTime Proは、QuickTimeフレームワークがサポートする多様なファイル形式(.mov, .mp4, .m4a, .mp3, .avi, .dv, .mjpegなど)を開くことができますが、特定のコーデック(圧縮方式)によっては、追加のコーデックコンポーネントが必要になる場合や、サポートされていない場合があります。
基本的な再生操作
ファイルを開くと、ムービー表示エリアに映像(または音声ファイルの場合は波形やアイコン)が表示され、再生コントロールが有効になります。
- 再生/一時停止: 再生コントロールの中央にある再生ボタン(▶)または一時停止ボタン(⏸)をクリックします。スペースキーでも操作できます。
- 停止: 再生ボタンの横などに停止ボタンがある場合や、一時停止後に再度一時停止ボタンを押すことで停止できます。(多くの場合、一時停止ボタンが停止ボタンを兼ねています)
- シーク: シークバー上のスライダーをドラッグするか、シークバーの任意の場所をクリックすることで、再生位置を自由に移動できます。左右の矢印キーで短くシークすることも可能です。
- 現在の再生時間/全体の長さ: シークバーの近くに「00:00:05 / 00:01:30」(現在 5秒 / 全体 1分30秒)のように表示されます。クリックすると表示形式(フレーム数など)が切り替わることもあります。
- 音量調整: 音量スライダーをドラッグするか、スピーカーアイコンをクリックしてミュート/ミュート解除します。
フルスクリーン表示
動画を画面いっぱいに表示したい場合は、フルスクリーン機能を利用します。
- メニューバーの「表示(View)」>「フルスクリーン(Full Screen)」を選択します。
- 再生コントロールのフルスクリーンボタン(斜めの矢印アイコンなど)をクリックします。
- フルスクリーンを終了するには、Escキーを押すか、画面上部にマウスカーソルを持っていって表示される解除ボタンをクリックします。
これらの基本的な操作をマスターすれば、QuickTime Proで様々なマルチメディアファイルを快適に再生できるようになります。しかし、QuickTime Proの真価はここから始まる編集・変換機能にあります。
再生機能の活用
QuickTime Proは単に再生するだけでなく、再生をより細かくコントロールしたり、特定の情報を表示したりするための機能も備えています。
フレーム単位での再生/停止
動画編集において、特定のフレームを正確に確認することは非常に重要です。QuickTime Proでは、これを簡単に行えます。
- 動画を一時停止した状態で、キーボードの右矢印キーを押すと、1フレームだけ次に進みます。
- 左矢印キーを押すと、1フレームだけ前に戻ります。
- Shiftキーを押しながら矢印キーを押すと、数フレーム(デフォルトでは10フレーム)単位で進む/戻ることができます。
この機能は、編集点を探したり、静止画を切り出したりする際に非常に役立ちます。
再生速度の変更
特定のシーンをじっくり見たい、あるいは早送りで確認したい場合に便利です。
- メニューバーの「表示(View)」>「A/Vコントロールを表示(Show A/V Controls)」を選択します。A/Vコントロールパネルが表示されます。
- このパネルに「再生速度(Playback Speed)」などのスライダーや入力欄があります。スライダーを動かすか、数値を入力することで、再生速度を通常速度(1x)から遅く(0.5xなど)したり、速く(2xなど)したりできます。
- Windows版では、再生中にCtrlキー(macOSではOptionキー)を押しながら右矢印キーで速く、左矢印キーで遅く再生することも可能です。
ループ再生
短いクリップや特定の音楽トラックなどを繰り返し再生したい場合に便利な機能です。
- メニューバーの「表示(View)」>「ループ(Loop)」を選択します。
- 「すべて(All)」を選択すると、ムービー全体が繰り返し再生されます。
- 「再生部分(Play Selection Only)」を選択すると、後述する選択範囲のみが繰り返し再生されます。(このオプションは、選択範囲が設定されている場合に有効です。)
A-Bリピート再生(範囲指定リピート)
ムービーの特定の部分だけを繰り返し再生したい場合に非常に便利な機能です。
- まず、リピートしたい区間の開始点に再生ヘッド(シークバー上の再生位置マーカー)を移動させます。
- キーボードのIキーを押します。(これは「イン点(In Point)」を設定するショートカットです)
- 次に、リピートしたい区間の終了点に再生ヘッドを移動させます。
- キーボードのOキーを押します。(これは「アウト点(Out Point)」を設定するショートカットです)
- シークバー上に、設定したイン点からアウト点までの区間がハイライト表示されます。これが選択範囲です。
- メニューバーの「表示(View)」>「ループ(Loop)」>「再生部分(Play Selection Only)」を選択します。
- 再生を開始すると、設定した選択範囲だけが繰り返し再生されます。
リピートを解除するには、「表示(View)」>「ループ(Loop)」>「すべて(All)」または「オフ(Off)」を選択します。選択範囲自体を解除するには、「編集(Edit)」>「すべてを選択解除(Deselect All)」を選択するか、選択範囲の外側をクリックします。
チャプターマーカーの活用
QuickTimeムービー(.mov)の中には、チャプターマーカーが埋め込まれているものがあります。これはDVDなどのチャプター機能と同様に、ムービー内の特定の場所へ素早くジャンプするためのものです。
- チャプターマーカーが設定されているムービーの場合、再生コントロールの下部や、別ウィンドウでチャプターリストが表示されることがあります。
- チャプターリストの項目をクリックすることで、そのチャプターの開始位置へ瞬時に移動できます。
QuickTime Pro自体でチャプターマーカーを作成・編集する機能は限定的でしたが、既存のチャプターマーカーを利用して快適に再生することは可能でした。
ビデオ設定とオーディオ設定
再生時の画質や音質に影響する設定も確認・調整できます。これらの設定は通常、プロパティウィンドウやA/Vコントロールにあります。
- ビデオ設定: アスペクト比(画面の縦横比)の表示変更、インターレース解除(古い映像形式で発生する横線ノイズの軽減)、表示サイズ調整など。
- オーディオ設定: オーディオデバイスの選択、ボリューム、バランス、オーディオチャンネルの選択(ステレオ/モノラルなど)。プロパティウィンドウでは、オーディオトラックごとに音量を調整することも可能です。
これらの再生機能を活用することで、QuickTime Proは単なる動画プレイヤーとしてだけでなく、コンテンツをより深く分析したり、特定の情報を抜き出したりするための便利なツールとしても機能します。
編集機能
QuickTime Proの最大の魅力の一つは、その直感的で簡単な編集機能です。複雑なマルチトラック編集はできませんが、動画の不要部分をカットしたり、複数の動画をつなぎ合わせたり、音声トラックを追加したりといった基本的な編集作業であれば、QuickTime Proで十分に対応できます。
QuickTime Proの編集は、主にムービーのプロパティウィンドウを使って行われます。メニューバーの「ウインドウ(Window)」>「ムービーのプロパティ(Show Movie Properties)」で開きます。このウィンドウには、ムービーを構成する様々な「トラック」(ビデオトラック、オーディオトラック、テキストトラックなど)が表示され、それぞれのトラックを選択して編集することができます。
クリップの選択
編集の基本は、編集したい範囲(クリップ)を選択することです。
- 編集したいムービーを開きます。
- シークバー上の再生ヘッドを、選択範囲の開始点(イン点)に移動させます。
- メニューバーの「編集(Edit)」>「イン点を選択(Select In)」を選択するか、キーボードのIキーを押します。
- 再生ヘッドを、選択範囲の終了点(アウト点)に移動させます。
- メニューバーの「編集(Edit)」>「アウト点を選択(Select Out)」を選択するか、キーボードのOキーを押します。
シークバー上にイン点からアウト点までの範囲が黄色くハイライト表示されます。これが選択されたクリップです。範囲を解除するには、「編集(Edit)」>「すべてを選択解除(Deselect All)」を選択するか、選択範囲の外側をクリックします。
基本的な編集操作
選択したクリップに対して、以下の基本的な編集操作を行うことができます。これらの操作は、メニューバーの「編集(Edit)」メニューから行います。
- コピー (Copy): 選択したクリップをコピーします。コピーされたクリップはクリップボードに保持されます。
- カット (Cut): 選択したクリップを切り取ります。切り取られたクリップはクリップボードに保持され、元の場所からは削除されます。
- ペースト (Paste): クリップボードにコピーまたはカットされたクリップを、再生ヘッドがある位置に貼り付けます。新しいクリップは、既存のムービーに挿入されます。これにより、複数の動画をつなぎ合わせたり、同じクリップを繰り返し挿入したりすることができます。
- 削除 (Delete): 選択したクリップを削除します。カットと異なり、クリップボードには保持されません。キーボードのDeleteキー(またはBackspaceキー)でも削除できます。
- トリム (Trim): 選択したクリップ以外の部分をすべて削除し、選択したクリップのみを残します。これは、動画の最初と最後の不要部分をカットして、真ん中の必要な部分だけを取り出したい場合に非常に便利な機能です。
- 残したい部分(必要なクリップ)を選択します(イン点とアウト点を設定します)。
- メニューバーの「編集(Edit)」>「トリム(Trim)」を選択します。
クリップの分割
ムービーを複数のクリップに分割したい場合は、選択範囲を利用して分割します。
- 分割したい位置に再生ヘッドを移動させます。
- メニューバーの「編集(Edit)」>「ムービーを分割(Split Movie)」のようなオプションを探します。(QuickTime Pro 7では、「編集」>「すべてを選択」で全体を選択し、「編集」>「コピー」>新規ウィンドウで「編集」>「ペースト」、そして元のウィンドウで「編集」>「削除」という流れで一部を切り出す方が一般的でした。または、プロパティウィンドウでトラックを選択し、そのトラックの編集範囲をイン点/アウト点で調整する方法も取れました。)
より一般的なのは、上記の「カット」や「トリム」を組み合わせて部分的に切り出す、あるいはムービーのプロパティウィンドウでトラックの開始・終了タイミングを調整する方法です。
トラックの操作
QuickTimeムービーは、複数のトラック(ビデオ、オーディオ、テキストなど)の集まりとして構成されています。QuickTime Proでは、ムービーのプロパティウィンドウを使ってこれらのトラックを管理できます。
- メニューバーの「ウインドウ(Window)」>「ムービーのプロパティ(Show Movie Properties)」を選択してプロパティウィンドウを開きます。
- 左側のリストに、ムービーに含まれるトラックが表示されます。ビデオトラック、サウンドトラック(オーディオトラック)、テキストトラックなどが確認できるはずです。
- リストから特定のトラックを選択すると、右側にそのトラックの詳細情報と設定が表示されます。
プロパティウィンドウでは以下の操作が可能です。
- トラックの追加: 別のQuickTimeムービーからトラックをコピーし、現在のムービーに貼り付けることでトラックを追加できます。例えば、別の音声ファイルからサウンドトラックを追加したり、別の動画からビデオトラックを追加したりできます。(ただし、同期の調整は手動で行う必要があり、高度な作業になります。)
- トラックの削除: 削除したいトラックをリストで選択し、ウィンドウ下部の「削除(Delete)」ボタンをクリックします。不要なオーディオトラックやビデオトラックを削除するのに便利です。
- トラックの有効/無効: トラックを選択し、設定項目の中にあるチェックボックスなどで、そのトラックを再生時に有効にするか無効にするか切り替えることができます。複数のオーディオトラックがある場合などに、一時的に特定のトラックだけを無効にして確認するのに便利です。
- トラック設定の調整: 選択したトラックの種類に応じて、様々な設定項目が表示されます。
- サウンドトラック: 音量(ボリューム)、バランス、出力チャンネルのマッピングなど。音量調整は、プロパティウィンドウでサウンドトラックを選択し、「ボリューム(Volume)」スライダーで調整するのが最も簡単な方法です。
- ビデオトラック: 不透明度(アルファチャンネルがある場合)、位置、サイズ、回転、レイヤー順序など。複数のビデオトラックを重ねて表示する場合(ピクチャー・イン・ピクチャーなど)に、レイヤー順序を調整できます。
ビデオの簡単な調整
プロパティウィンドウまたはメニューから、ビデオトラックに対して簡単な調整を行うことができます。
- 回転・反転: メニューバーの「ウインドウ(Window)」>「ムービーのプロパティ(Show Movie Properties)」でビデオトラックを選択し、設定項目から回転や水平/垂直反転を選択します。これにより、撮影時に天地が逆になってしまった動画などを修正できます。
- サイズ変更: プロパティウィンドウでビデオトラックを選択し、「ビジュアル設定(Visual Settings)」のような項目にある「現在のサイズ(Current Size)」でサイズを変更できます。ただし、この変更はあくまで再生時の表示サイズや書き出し時のデフォルトサイズに影響するものであり、元の映像の解像度を変えるものではありません。
オーディオの編集
前述の通り、プロパティウィンドウでサウンドトラックの音量やバランスを調整できます。複数のオーディオトラックがある場合は、それぞれのトラックの音量を個別に調整できます。これにより、BGMの音量を下げて話し声を聞き取りやすくするなどの簡単なミキシングのようなことができます。
テキストトラック / 字幕
QuickTimeムービーフォーマットは、テキストトラックをサポートしています。これは主に字幕やキャプションに使用されます。
- プロパティウィンドウでテキストトラックを追加・編集できます。テキストトラックは、時間情報とともにテキストを表示するものです。
- 外部の字幕ファイル(SRTなど)を直接インポートして自動的にテキストトラックとして追加する機能は、QuickTime Proの標準機能としては限定的でした。しかし、互換性のある形式であれば手動でトラックを作成し、テキストとタイミング情報をペーストすることで実現可能でした。
- 既存のムービーにテキストトラックが含まれている場合、表示/非表示を切り替えたり、プロパティウィンドウでフォントやサイズ、位置などを調整したりできます。
QuickTime Proの編集機能は、現代のノンリニア編集ソフトウェアに比べると非常にシンプルですが、「不要部分のカット」「複数のクリップの結合」「音量調整」「回転」といった基本的な作業を素早く行うには十分な能力を持っていました。特に、初心者にとっては複雑な操作を覚える必要がなく、直感的に編集できる点が利点でした。
書き出し・変換機能
QuickTime Proの最も強力で頻繁に利用される機能の一つが、ムービーやサウンドを様々な形式で書き出す(エクスポートする)機能です。これにより、編集した動画をWebに公開したり、スマートフォンや特定のデバイスで再生できるように変換したり、他の編集ソフトウェアで使用できる形式に変換したりすることが可能になります。
書き出し機能は、メニューバーの「ファイル(File)」>「書き出す(Export…)」からアクセスします。このメニューには、いくつかの書き出しオプションが表示されます。
- 「ムービーをQuickTimeムービーに書き出す…」(Export Movie to QuickTime Movie…)
- 「ムービーを…に書き出す」(Export Movie to…)
- 「サウンドを…に書き出す」(Export Sound to…)
- 「現在のフレームを…に書き出す」(Export Current Frame to…)
それぞれのオプションについて詳しく見ていきましょう。
「ムービーをQuickTimeムービーに書き出す…」
これは、QuickTimeムービー形式(.mov)でファイルを書き出すための最も基本的なオプションです。元のムービーに含まれるトラック構成や設定を維持しやすい形式です。
このオプションを選択すると、保存場所とファイル名を指定するダイアログが表示されます。ダイアログ下部には「書き出し(Export)」と「オプション(Options…)」というボタンがあります。「書き出し」をクリックするとデフォルト設定で書き出されますが、「オプション」をクリックすることで詳細な設定を行うことができます。
「オプション」をクリックすると、通常は「ムービー設定(Movie Settings)」というウィンドウが表示されます。ここでビデオとオーディオのエンコーディングに関する詳細な設定を行います。
- ビデオ(Video):
- 圧縮タイプ(Compression Type): 使用するビデオコーデックを選択します。QuickTime Proがサポートしていた主なコーデックには、H.264、MPEG-4 Video、Photo – JPEG、PNG、TIFF、アニメーション、DVなどが含まれていました。どのコーデックを選択するかによって、画質、ファイルサイズ、互換性が大きく異なります。高画質・高圧縮率で汎用性の高いH.264はよく利用される選択肢でした。
- フレームレート(Frame Rate): 1秒あたりのフレーム数(例: 29.97、30、24)。元のムービーのフレームレートに合わせるのが一般的ですが、必要に応じて変更できます。
- キーフレーム(Key Frames): キーフレームの間隔を設定します。短いほど編集性は高まりますが、ファイルサイズは大きくなる傾向があります。
- 品質(Quality): スライダーでビデオの圧縮品質を調整します。高品質ほどファイルサイズは大きくなります。
- データレート(Data Rate): 特定のデータレート(ビットレート)の上限を指定できます。ファイルサイズを厳密にコントロールしたい場合に便利です。
- サイズ(Size): 書き出すムービーの解像度(ピクセル数)を選択します。元のサイズ、Web用、デバイス用などのプリセットや、カスタムサイズを指定できます。
- サウンド(Sound):
- フォーマット(Format): オーディオコーデックを選択します。AAC、MP3、Linear PCMなどがよく利用されていました。AACは比較的高音質でファイルサイズも小さいため、汎用性が高い形式です。
- レート(Rate): サンプルレートを選択します(例: 44.1 kHz, 48 kHz)。音楽CD品質は44.1kHzです。
- チャンネル(Channels): モノラル、ステレオなどを選択します。
- 品質(Quality): オーディオの圧縮品質を選択します。
- エンコーディング方法(Encoding Method): より詳細なエンコーディング設定がある場合があります。
これらの設定を適切に行うことで、目的(Web公開、デバイス再生、アーカイブなど)に合わせた最適なQuickTimeムービーを書き出すことができます。よく使う設定は、カスタム設定として保存しておくことも可能でした。
「ムービーを…に書き出す」
このオプションは、「ムービーをQuickTimeムービーに書き出す」よりもさらに多様なファイル形式やデバイス向けプリセットで書き出す場合に利用します。このオプションを選択すると、「書き出し(Export)」というドロップダウンメニューが表示され、そこから様々な形式を選択できます。
- 「Web用に書き出す」(Export for Web): Webサイトでのストリーミング再生に適した形式(多くの場合、低ビットレートのH.264やMPEG-4)で書き出します。接続速度に合わせて複数のビットレートで書き出すオプションもありました。
- 「iPhone、iPod、Apple TV用に書き出す」(Export for iPhone, iPod, Apple TV): 各Appleデバイスに最適な解像度、フレームレート、コーデックで自動的に設定して書き出します。これにより、デバイスに転送してスムーズに再生できるようになります。
- 「480p、720p、1080pに書き出す」(Export to 480p, 720p, 1080p): 標準的なSDやHD解像度で書き出します。
- 「iTunesに書き出す」(Export to iTunes): iTunesライブラリに追加するのに適した形式で書き出します。
- 「AVCHDとして書き出す」(Export as AVCHD): 一部の形式をAVCHD形式に変換して書き出すオプション。(対応バージョンやコーデックによる)
- その他の形式: オーディオのみ、特定のビデオフォーマット(例: DVストリーム、AVI)、静止画シーケンスなど、インストールされているQuickTimeコンポーネントやプラグインによって様々な形式が選択可能でした。
これらのプリセットを利用すれば、詳細な設定を知らなくても、簡単に目的のデバイスや用途に合わせたファイルを生成できます。もちろん、多くのプリセットで「オプション」ボタンからさらに詳細な設定を調整することも可能です。
「サウンドを…に書き出す」
ムービーから音声トラックだけを抜き出して、音声ファイルとして書き出す場合に利用します。
- 「サウンドをAIFFに書き出す」(Export Sound to AIFF): 非圧縮の高音質オーディオ形式です。
- 「サウンドをAACに書き出す」(Export Sound to AAC): 圧縮形式ですが、比較的高音質でファイルサイズが小さいです。
- 「サウンドをMP3に書き出す」(Export Sound to MP3): 汎用性の高い圧縮オーディオ形式です。
- 「サウンドをWAVに書き出す」(Export Sound to WAV): Windows環境で一般的な非圧縮オーディオ形式です。
これらのオプションを選択すると、オーディオコーデック、サンプルレート、チャンネルなどの設定を行うことができます。
「現在のフレームを…に書き出す」
再生中の動画の現在のフレームを、静止画ファイルとして書き出す機能です。
- 「静止画をTIFFに書き出す」(Export Still Image to TIFF): 非圧縮の高画質画像形式です。
- 「静止画をJPEGに書き出す」(Export Still Image to JPEG): 圧縮形式ですが、汎用性が高くファイルサイズも小さいです。
- 「静止画をPNGに書き出す」(Export Still Image to PNG): 可逆圧縮形式で、透過(アルファチャンネル)もサポートします。
静止画として書き出すことで、動画の中から特定の瞬間をスクリーンショットとして切り出すことができます。フレーム単位再生と組み合わせると、狙った瞬間を正確に画像化できます。
書き出し時の注意点
- 処理時間: 書き出しは、ムービーの長さ、解像度、選択したコーデック、設定した品質、そしてコンピューターの処理能力によって、時間がかかる場合があります。
- ファイルサイズ: 設定(特にビットレートや品質)によって、書き出されるファイルのサイズは大きく変動します。容量制限がある場合などは注意が必要です。
- 互換性: 特定のデバイスやソフトウェアで再生したい場合は、対象がサポートしているフォーマットやコーデックを正確に把握しておく必要があります。不明な場合は、一般的な形式(H.264ビデオ+AACオーディオの.mp4または.movコンテナ)を選択するのが無難です。
- プレビュー: 書き出し設定の変更が結果にどう影響するかを確認するために、可能であれば短いクリップで試しの書き出しを行うことをお勧めします。
QuickTime Proの書き出し機能は、多岐にわたる形式と詳細な設定オプションを提供することで、ユーザーが様々な目的でマルチメディアコンテンツを利用できるようにサポートしていました。特に、デバイス向けのプリセットは、技術的な知識がないユーザーでも簡単に互換性のあるファイルを生成できるため、非常に便利でした。
高度な機能とテクニック
QuickTime Proには、基本的な再生・編集・書き出し機能に加えて、さらに高度な使い方やテクニックも存在しました。
スクリーンレコーディング
(注: ここで説明するスクリーンレコーディング機能は、主にmacOSに標準搭載されているQuickTime Playerの機能です。QuickTime Pro単体で購入してWindowsで使用する場合など、この機能は利用できないことがあります。macOSのQuickTime Playerは、Pro版の機能とは別にOS機能として録画をサポートしています。)
macOSのQuickTime Player(Pro機能が有効化されているかどうかにかかわらず、特定のOSバージョン以降)では、画面の操作を録画するスクリーンレコーディング機能が利用できます。
- QuickTime Playerを起動します。
- メニューバーの「ファイル(File)」>「新規画面収録(New Screen Recording)」を選択します。
- 画面収録コントロールが表示されます。マイクの入力元や保存先などのオプションを設定できます。
- 録画ボタン(⚫)をクリックします。
- 画面上の指示に従います。画面全体を収録するか、特定の範囲だけを収録するかを選択できます。特定の範囲を選択する場合は、ドラッグで範囲を囲みます。
- 収録を開始するには、画面上の指示をクリックします。
- 収録を停止するには、メニューバーに表示される停止ボタン(■)をクリックします。
- 収録された動画がQuickTime Playerで開き、確認・保存できます。
この機能は、ソフトウェアの操作説明動画を作成したり、オンライン会議の内容を記録したりするのに非常に便利です。
URLからのストリーミング再生
QuickTime Proは、HTTPやRTSPなどのプロトコルを使用したインターネット上のストリーミングコンテンツを再生する機能も備えていました。
- メニューバーの「ファイル(File)」>「URLを開く…(Open URL…)」を選択します。
- ストリーミングコンテンツのURLを入力します。
- 「OK」をクリックすると、QuickTime Playerがストリーミングを開始し、再生します。
この機能は、ライブ配信やオンデマンドのストリーミングコンテンツを再生する際に利用されました。
QuickTime VR (QTVR) の再生
QuickTimeは、QuickTime VR(QTVR)というパノラマ画像やオブジェクト画像を扱う独自のフォーマットをサポートしていました。QuickTime Playerでは、これらのQTVRファイルを再生し、視点をグリグリと動かして周囲を見回したり、オブジェクトを様々な角度から見たりすることが可能でした。
QTVRファイルの作成にはQuickTime VR Authoring Studioなどの専用ツールが必要でしたが、QuickTime Proはそれらを再生するプレイヤーとしての役割を担っていました。
プラグインの利用
QuickTimeフレームワークはプラグイン(QuickTimeコンポーネント)による拡張をサポートしていました。これにより、標準では対応していないファイル形式やコーデック、機能を追加することが可能でした。
有名なプラグインとしては、DivX、Xvid、WMV(Flip4Macなど)、そして多くの非標準コーデックに対応するためのPerianなどがありました。Perianは、QuickTime Playerで非常に多くの種類の動画ファイルを再生できるようにする画期的なコンポーネントでしたが、開発は終了しており、新しいOSでは動作しません。
これらのプラグインをインストールすることで、QuickTime Proの対応フォーマットを大幅に増やすことができましたが、プラグインによってはシステム不安定の原因となったり、セキュリティリスクを伴ったりする可能性もありました。
スクリプト対応(AppleScriptなど)
macOS環境では、QuickTime ProはAppleScriptによる制御をある程度サポートしていました。これにより、ファイルの連続処理(複数の動画ファイルの形式変換など)や、特定の操作の自動化といったことが可能でした。
AppleScriptの知識が必要になりますが、繰り返し行う定型作業の効率化に役立つ可能性がありました。
これらの高度な機能やテクニックは、QuickTime Proの基本的な編集・書き出し機能に加え、その汎用性と拡張性をさらに高めるものでした。特に、プラグインによる対応フォーマットの拡張は、多くのユーザーにとってQuickTime Playerを主要なメディアプレイヤーとして利用する上で重要な要素でした。
トラブルシューティングと注意点
QuickTime Proはかつて非常に便利なツールでしたが、現在利用するにあたっては、いくつかの問題や注意すべき点があります。
対応フォーマットの問題(コーデック不足など)
QuickTime Playerが再生できるファイル形式は、インストールされているQuickTimeコンポーネント(コーデック)に依存します。新しい、あるいはあまり一般的でないコーデックでエンコードされたファイルは、QuickTime Playerで再生できない場合があります。
- 問題: 「必要なコーデックが見つかりません」といったエラーメッセージが表示される、または音声は再生されるが映像が表示されない、あるいはその逆のケース。
- 原因: QuickTime Playerがそのファイルをデコードするために必要なコーデックコンポーネントがシステムにインストールされていない。
- 対処法(過去): ファイルの種類を確認し、そのファイル形式に対応するQuickTimeコンポーネント(例: DivXコーデック、WMVコーデックなど)をダウンロードしてインストールする。前述のPerianのような汎用的なコンポーネントスイートも有効な手段でした。ただし、不明な提供元からのコーデックのインストールはセキュリティリスクを伴います。
- 現在の推奨: QuickTime Playerで再生できないファイルは、VLC Media Playerのような多くのコーデックを内蔵した他のメディアプレイヤーで試すか、HandBrakeなどのツールで互換性のある形式に変換する方が安全で確実です。
パフォーマンスの問題(古いマシンでの処理負荷)
特に高解像度(HD以上)の動画ファイルや、複雑な編集(複数のトラック合成など)を行う場合、古いコンピューターではQuickTime Proの動作が重くなったり、書き出しに非常に時間がかかったりすることがあります。
- 原因: 動画のデコード・エンコードや編集処理は、CPUやGPUに負荷のかかる作業です。古いハードウェアでは処理能力が不足している可能性があります。
- 対処法:
- より高性能なコンピューターを使用する。
- 編集や書き出しを行うムービーの解像度を下げる。
- 書き出し設定で、より処理負荷の軽いコーデックや低い品質を選択する。
- バックグラウンドで他のアプリケーションを終了させる。
互換性の問題(最新OSでの動作保証外である点)
QuickTime Pro 7(多くのユーザーがProキーで有効化して使用していたバージョン)は、開発が終了して久しく、特にmacOSの新しいバージョン(Catalina以降の64bit専用環境など)や新しいWindowsバージョンでは、公式にはサポートされていません。
- 問題: アプリケーションが起動しない、予期しないクラッシュが発生する、特定の機能が動作しない、OSのアップデート後に動作しなくなる。
- 原因: OS側の仕様変更(例: 32bitアプリケーションの非サポート化)、ライブラリの変更、セキュリティ機構の強化などにより、古いアプリケーションが対応できなくなっている。
- 対処法: 残念ながら、最新OS環境でQuickTime Proを安定して使用することは困難です。古いOSが動作する環境を維持するか、後述する代替ソフトウェアへの移行を検討する必要があります。
QuickTime Proの現状(販売終了、セキュリティリスク)
最も重要な注意点です。
- 販売終了: QuickTime Proのライセンスキーは、Apple Storeなどで新規に購入することはできません。
- セキュリティリスク: 2016年に米国土安全保障省のUS-CERT(Computer Emergency Readiness Team)は、Windows版QuickTime Playerに重大な脆弱性が存在するとして、アンインストールを強く推奨しました。AppleもWindows版のサポートを終了しています。macOS版についても、古いバージョンのQuickTime Player 7はセキュリティアップデートの対象外となっています。
- 推奨事項: インターネットに接続された環境で古いバージョンのQuickTime Player、特にWindows版を使用することは、セキュリティ上のリスク(マルウェア感染、データ漏洩など)にさらされる可能性が高いため、強く推奨されません。どうしても利用したい場合は、インターネットから完全に隔離されたオフライン環境でのみ使用するべきです。
代替ソフトウェアの紹介
QuickTime Proが提供していた機能の多くは、現代の他のソフトウェアで代替可能です。
- 再生: VLC Media Player, MPV, IINA (macOS), Windows Media Playerなど。VLCは多くのコーデックを内蔵しており、互換性が非常に高いことで知られています。
- 簡単な編集: macOS標準のQuickTime Player(Pro機能なしでもカットやトリムが可能)、Windows標準のフォトアプリやビデオエディター、Shotcut (無料), DaVinci Resolve (無料版あり) など。
- 形式変換・書き出し: HandBrake (無料), FFmpeg (コマンドラインツール、多くのGUIフロントエンドあり), VLC Media Player (変換機能あり) など。HandBrakeは、特に動画ファイルのエンコードにおいて非常に強力で多機能です。
- 高度な編集: Adobe Premiere Pro, Final Cut Pro (macOS), DaVinci Resolve, Avid Media Composerなど。これらはプロフェッショナル向けのノンリニア編集ソフトウェアで、QuickTime Proよりもはるかに多機能で高性能ですが、学習コストや価格もそれなりにかかります(DaVinci Resolveには非常に高機能な無料版があります)。
もし現在QuickTime Proを利用している方が、特にWindows環境やインターネットに接続された環境で利用している場合は、セキュリティリスクを回避するためにも、これらの代替ソフトウェアへの移行を強く検討することをお勧めします。
まとめ
QuickTime Proは、かつて多くのユーザーにとって、手軽な動画再生、基本的な編集、そして形式変換を一台でこなせる非常に便利なツールでした。そのシンプルで直感的なインターフェースは、動画編集の初心者にとっての強力な味方であり、家庭で撮影したビデオの簡単な加工から、Web公開用の動画準備まで、幅広い用途に対応していました。
本記事では、QuickTime Proの導入から、基本的な再生操作、カット&ペーストやトリムといった編集機能、そして多岐にわたる形式への書き出し機能まで、その主要な機能を詳細に解説しました。ムービーのプロパティウィンドウを使ったトラック操作や、A-Bリピート、フレーム単位再生といった地味ながらも便利な機能についても触れました。また、macOS版のスクリーンレコーディング機能や、かつてQuickTimeエコシステムを支えたプラグインの存在にも言及しました。
しかし、繰り返しになりますが、QuickTime Proはすでに新規購入が不可能であり、特にWindows版は公式サポートが終了し、セキュリティリスクが指摘されています。macOS版も、最新OS環境では動作しない古いソフトウェアとなっています。したがって、現在QuickTime Proを利用している方、あるいは古いシステム環境で利用を検討している方は、そのリスクを十分に理解し、利用には細心の注意を払う必要があります。可能であれば、現代的でアクティブにサポートされている代替ソフトウェアへの移行を強くお勧めします。VLC Media Player、HandBrake、DaVinci Resolveなどのフリーソフトウェアでも、QuickTime Proが提供していた機能の多く、あるいはそれ以上の機能を利用することができます。
かつてQuickTime Proが果たした役割は大きく、多くのユーザーがその恩恵を受けました。本記事が、QuickTime Proの機能について理解を深める一助となれば幸いです。そして、もし今も利用されている方がいれば、本記事の情報を参考にしつつ、セキュリティには十分注意してご利用ください。デジタルメディアの世界は常に進化しており、より安全で高機能な新しいツールが次々と登場しています。必要に応じて、新しいソフトウェアの導入も検討することをお勧めします。