はい、承知いたしました。ASUS ROG Ally Xに関する約5000語の詳細な記事を執筆します。「Xbox Ally X 大解剖!バッテリーやストレージは?最新情報まとめ」というタイトルで、各要素について深く掘り下げて説明します。
Xbox Ally X 大解剖!バッテリーやストレージは?最新情報まとめ
プロローグ:ハンドヘルドPC市場の進化と「ROG Ally X」の登場
2023年、ゲーミングPC市場に新たな波が押し寄せました。その中心にいたのが、ASUSが投入したWindows搭載ポータブルゲーミングPC、「ROG Ally」です。Steam Deckが築いたハンドヘルドPCというジャンルを、より高性能なハードウェアと汎用性の高いWindows OSで再定義しようという試みは、多くのゲーマーやテクノロジー愛好家を魅了しました。鮮やかなディスプレイ、強力なAMD Ryzen Z1 Extremeプロセッサ、そしてWindows環境で既存のゲームライブラリをそのまま遊べる自由度は、まさに新しいゲーミング体験を約束するものでした。
しかし、初代ROG Allyにも課題は存在しました。特にユーザーからのフィードバックで多く聞かれたのが、バッテリー駆動時間とストレージ容量に関するものでした。高性能ゆえに消費電力は大きく、外出先での長時間プレイには心もとないバッテリーは、ポータビリティというコンセプトにおいて最大の弱点と言えました。また、近年のゲームタイトルの肥大化を考えると、標準の512GBストレージではすぐに容量不足に陥り、ストレージのアップグレードも、一般的なM.2 2280サイズではなく、より小型で選択肢の少ない2230サイズであるという点が、ユーザーにとって不便を感じさせる要因となっていました。
ASUSはこうしたユーザーの声に真摯に耳を傾けました。そして、満を持して発表されたのが、その進化形である「ROG Ally X」です。これは、完全に新しい世代のデバイスというよりは、初代ROG Allyのコンセプトを継承しつつ、特にユーザーからの要望が強かったポイントを集中的に強化・改良したモデルと言えます。「X」という文字には、初代のポテンシャルを最大限に引き出し、ユーザー体験をクロスオーバーさせるような、そんな意図が込められているのかもしれません。
本記事では、この「ROG Ally X」を徹底的に「大解剖」し、その内部に秘められた進化の数々を詳細に解説していきます。特に注目されるバッテリーとストレージの強化はもちろん、デザイン、冷却システム、接続性など、あらゆる側面から初代からの変更点と、それがユーザー体験にどのような影響をもたらすのかを深く掘り下げていきます。競合製品との比較や、購入を検討しているユーザーにとって重要なメリット・デメリット、そしてハンドヘルドPC市場全体における「ROG Ally X」の立ち位置についても考察します。
さあ、ROG Ally Xの世界へ、一緒に深く潜っていきましょう。
ROG Ally Xの誕生背景 – なぜ「X」なのか?
「ROG Ally 2」ではなく「ROG Ally X」というネーミングは、このモデルが初代から劇的な世代交代を果たしたのではなく、「完成度を高めるための改良モデル」であることを示唆しています。ASUSがなぜこのようなアプローチを選んだのか、その背景にはいくつかの理由が考えられます。
- 初代ROG Allyの成功と課題の明確化: 初代ROG Allyは、WindowsハンドヘルドPC市場において確固たる地位を築きました。その成功は、高性能なZ1 Extremeチップセット、優れたディスプレイ、そしてWindowsの高い互換性という基本設計が正しかったことを証明しています。一方で、発売後にユーザーからのフィードバックとして顕在化したのが、前述のバッテリーとストレージの課題でした。これらは、初代の基本設計を大きく変更することなく、部品の選定や内部設計の調整によって解決可能な問題点でした。
- 迅速な市場投入とユーザーニーズへの対応: ゼロから全く新しいデバイスを開発するには、長い時間と多大なコストがかかります。市場が急速に変化し、競合製品も登場する中で、ユーザーの最も差し迫ったニーズ(バッテリーとストレージ)に応えるためには、既存のプラットフォームをベースに改良を加える方が迅速かつ効率的です。「ROG Ally X」は、まさにそうした市場の要求に迅速に対応するための「強化パック」のような位置づけと言えるでしょう。
- コストと開発リソースの最適化: Z1 Extremeチップセットは、現在もハンドヘルドPCとしては非常に高性能であり、そのポテンシャルはまだ十分に引き出せる余地があります。新しいチップセットを採用することは、開発コストを増大させ、製品価格の上昇にも繋がります。既存のチップを維持しつつ、周辺部分(バッテリー、冷却、ストレージインターフェース)を強化することで、パフォーマンスのボトルネックを解消し、体験の質を向上させるというアプローチは、コストパフォーマンスの面でも理にかなっています。
- 「完全版」としての位置づけ: 「X」は未知数や可能性、あるいは特定のカテゴリーを超える存在を示す記号として使われることがあります。ROG Ally Xは、初代で培った技術とユーザーからの知見を統合し、より洗練された、いわば「完成版」あるいは「決定版」としてROG Allyプラットフォームのポテンシャルを最大限に引き出したモデルである、というメッセージが込められていると考えられます。
このように、ROG Ally Xは、初代の成功を土台に、ユーザーの声を反映して明確な弱点を克服し、より多くのユーザーにとって魅力的なデバイスとなることを目指して誕生しました。それは、市場のニーズに迅速に応えつつ、リソースを最も効果的な部分に集中させた、戦略的な一手と言えるでしょう。
デザインとエルゴノミクスの進化 – 手に馴染む変化
ROG Ally Xの第一印象として目に飛び込んでくるのは、その新しいカラーリングです。初代がクリーンなホワイトだったのに対し、Ally Xは精悍なマットブラックを採用しています。これは、単なる見た目の変更に留まらず、長時間の使用において指紋や皮脂の汚れが目立ちにくいという実用的なメリットも兼ね備えています。特に、初代のホワイトは汚れが目立ちやすいという意見もあったため、この変更は歓迎されるでしょう。
しかし、デザインの進化は色だけに留まりません。本体の形状にも、エルゴノミクスを改善するための細かな調整が施されています。グリップ部分は、初代よりもやや厚みが増し、より丸みを帯びたデザインになったと言われています。これにより、手のひらに吸い付くような感覚が増し、長時間のゲームプレイでも疲れにくいホールド感を実現しています。特に、重量が増加した分を相殺し、むしろより安定した持ち心地を提供するための工夫が見られます。
ボタン配置にも変更があります。特に、デバイスの背面に配置されていたカスタムボタン(M1、M2ボタン)は、形状と配置が見直され、より押し間違えにくく、自然な指の位置で操作できるようになっています。これらのボタンは、ゲーム内で特定の操作を割り当てたり、OSレベルのショートカットを設定したりと、カスタマイズ性が高く非常に便利な機能です。その操作性が向上したことは、ユーザー体験の向上に直結します。
ジョイスティックにも改良が加えられました。耐久性が向上し、より正確な操作が可能になった新しいジョイスティックが採用されています。初代のジョイスティックも決して悪くはありませんでしたが、より長く安心して使える部品への変更は、デバイス全体の信頼性を高める上で重要です。デッドゾーンの改善や、より滑らかな操作感を実現するための調整も期待されます。
また、D-pad(方向キー)も刷新されています。初代のD-padは、一部の格闘ゲームなどで正確な入力がしにくいという意見もありました。ROG Ally Xでは、よりタクタイル感があり、斜め入力なども正確に認識しやすい、新しいデザインのD-padが採用されている可能性が高いです。これにより、クラシックゲームや2Dアクションゲームなど、D-padを多用するジャンルでのプレイフィールが大きく向上するでしょう。
これらのデザインとエルゴノミクスの変更は、一見すると些細なアップデートに見えるかもしれませんが、実際にデバイスを手に持って長時間ゲームをプレイする際には、その差は歴然となります。より手に馴染み、より快適に操作できるようになったROG Ally Xは、まさに「ゲームをプレイするための道具」としての完成度を高めていると言えます。
ただし、これらのエルゴノミクスの改善は、本体の重量増加という代償を伴います。バッテリー容量が倍増したことで、本体重量も初代の約608gから約678gへと増加しています。これは、例えばNintendo Switchの有機ELモデル(約420g)や、Steam Deck OLED(約640g)と比較しても、やや重い部類に入ります。約70gの増加は、手に持った瞬間に感じられる程度の差であり、特に片手で操作するような場面では、その重さを意識するかもしれません。しかし、前述のグリップ形状の改善が、この重量増加によるネガティブな影響をどこまで相殺できるかが、実際の使用感において重要なポイントとなります。より厚みのあるグリップと、バランスの見直しによって、数値上の重量ほど重さを感じさせない設計になっていることを期待したいところです。
全体として、ROG Ally Xのデザインとエルゴノミクスは、初代で得られたユーザーフィードバックを基に、より実用的で快適なゲーム体験を提供するための進化を遂げています。マットブラックのカラーリング、改善されたグリップ、刷新されたボタン類は、デバイスとしての魅力を高めるだけでなく、長時間の使用におけるユーザーの負担を軽減する重要な要素となります。
驚異のバッテリー強化 – 持続時間への回答
ROG Ally Xにおける最も注目すべき、そして多くのユーザーが待ち望んでいた進化が、バッテリー容量の飛躍的な増加です。初代ROG Allyが40Wh(ワットアワー)のバッテリーを搭載していたのに対し、ROG Ally Xはなんとその倍となる80Whという大容量バッテリーを搭載しています。これは、Steam Deck OLEDの40Wh、Lenovo Legion Goの49.2Wh、MSI Clawの53Whといった競合製品と比較しても、圧倒的な容量です。
80Whという容量が、実際のゲームプレイにおいてどの程度の差をもたらすのかを考えてみましょう。デバイスの消費電力は、実行するゲームの負荷や設定されているTDP(Thermal Design Power)によって大きく変動します。初代ROG Allyで、AAAタイトルを最高画質かつ高TDP(例えばTurboモードの30W)でプレイした場合、バッテリーは1時間から1時間半程度しか持たないのが一般的でした。これは、高性能なZ1 Extremeチップセットがそのポテンシャルを最大限に発揮する際に、それだけ多くの電力を消費するからです。
ROG Ally Xは、同じZ1 Extremeチップセットを使用していますが、バッテリー容量が倍になったことで、単純計算で駆動時間も倍になることが期待できます。つまり、初代で1時間しか持たなかった高負荷なゲームでも、ROG Ally Xでは2時間から3時間程度プレイできる可能性があります。もちろん、これはあくまで理論上の最大値であり、実際の駆動時間はゲームの種類、画面輝度、Wi-Fi/Bluetoothの使用状況など、様々な要因によって変動します。しかし、初代の最大の弱点であったバッテリー持ちが、大幅に改善されることは間違いありません。
特に、外出先や移動中など、電源がない環境でのプレイを想定しているユーザーにとって、このバッテリー強化は非常に大きな意味を持ちます。初代では、モバイルバッテリーがほぼ必須アイテムでしたが、ROG Ally Xであれば、より長時間デバイス単体でのプレイが可能になります。これは、ポータブルゲーミングPCとしての魅力を根本から引き上げるアップデートと言えるでしょう。
また、消費電力を抑えた低負荷なゲーム(例えばインディーゲームやレトロゲーム、あるいはクラウドゲーミングなど)をプレイする場合、バッテリーの持続時間はさらに伸びることが予想されます。初代でも、低TDP(例えばSilentモードの10W以下)であれば数時間プレイできましたが、ROG Ally Xでは5時間以上、あるいはそれ以上の時間プレイできる可能性も十分にあります。これは、通勤時間中のゲームや、寝る前のちょっとしたプレイなど、様々なシーンでの利便性を向上させます。
ただし、バッテリー容量の増加は、前述の通り本体の重量増加というトレードオフを伴います。80Whバッテリーは物理的に大きくて重いため、デバイス全体の重量が約70g増加した主要因となっています。この重量増加を、エルゴノミクスの改善がどこまでカバーできるか、ユーザーそれぞれの握り方や体力によって評価は分かれるでしょう。
充電に関しては、ROG Ally Xも初代と同様にUSB Power Delivery(USB PD)に対応すると考えられます。同梱されるACアダプターの出力については現時点で明確な情報がない場合もありますが、初代の65Wから変更はないか、あるいは若干の高速化が図られている可能性も考えられます。80Whのバッテリーを完全に充電するには、65Wでもそれなりの時間(例えば2時間程度)がかかると予想されます。急速充電への対応や、高出力(例えば100Wクラス)のPD充電器との互換性なども、詳細なスペック発表時に確認したいポイントです。
バッテリー管理ソフトウェア(Armoury Crate SE内)の進化も期待されます。より詳細なバッテリー使用量の表示、カスタマイズ可能な省電力プロファイル、特定のアプリケーション実行時のTDP自動調整機能など、ソフトウェア側での最適化が進むことで、バッテリー持ちを最大限に引き出すことが可能になります。
結論として、ROG Ally Xの80Whバッテリーは、初代の最大の弱点であった駆動時間を見事に克服する、まさに「ゲームチェンジャー」とも言える進化です。これにより、ROG Ally XはポータブルゲーミングPCとしての実用性を大幅に向上させ、より多くのシーンで安心してゲームを楽しめるデバイスとなりました。重量増加という代償はありますが、多くのユーザーにとって、バッテリー持ちの改善はそれを受け入れるに足る十分なメリットとなるでしょう。
ストレージ容量の拡大と柔軟性 – データ容量の悩みを解消
近年のゲームタイトルのファイルサイズは、驚くほど大きくなっています。数百GBを要求するAAAタイトルも珍しくなく、ストレージ容量はゲーマーにとって常に頭の痛い問題です。初代ROG Allyは、標準構成で512GBのPCIe 4.0 NVMe SSDを搭載していましたが、OSやプリインストールソフトウェアで容量が消費されると、実際にゲームをインストールできる容量はさらに少なくなります。いくつかの大型タイトルをインストールするだけで、あっという間に容量不足に陥ってしまうという状況は、初代ROG Allyユーザーにとって共通の悩みでした。
ROG Ally Xは、このストレージ容量の課題にも正面から取り組んでいます。まず、標準の内部ストレージ容量が1TBに倍増しました。これにより、初代の倍のゲームをインストールできるようになり、容量不足に悩まされる機会は大幅に減少するでしょう。1TBあれば、ある程度の数の大型タイトルや、多数のインディーゲームを同時にインストールして持ち歩くことが現実的になります。
さらに重要な変更点として、内部ストレージ用のM.2スロットのフォームファクタが、初代の2230サイズから、より一般的な2280サイズに変更されました。これは、自作PCやノートPCで広く使われている標準的なサイズであり、市場には様々なメーカーから、より多くの容量(例えば2TB、4TB、さらには8TB)や、より高速なモデルが、比較的安価に提供されています。
初代ROG Allyの2230サイズSSDは、選択肢が限られており、同じ容量でも2280サイズに比べて割高であるという課題がありました。ROG Ally Xで2280サイズが採用されたことにより、ユーザーは将来的にストレージ容量をアップグレードしたいと考えた際に、豊富な選択肢の中から予算や性能に応じて最適なSSDを選ぶことが容易になります。これは、デバイスの長期的な運用における柔軟性とコスト効率を大幅に向上させる変更点です。
SSDの換装作業自体は、デバイスを分解する必要があるため、ある程度の技術や知識が必要です。しかし、標準的なM.2 2280スロットになったことで、換装ガイドなども豊富に見つかりやすくなり、DIYでのアップグレードを検討するユーザーにとってはハードルが下がります。これにより、予算に応じて最初は1TBモデルを購入し、後から必要に応じて大容量のSSDに換装するといった運用も現実的になります。
また、ROG Ally XにもMicroSDカードスロットは引き続き搭載されています。初代では、高負荷時の排熱の影響でMicroSDカードの読み書き性能が低下したり、最悪の場合はカードが破損したりするという問題が報告されていました。ROG Ally Xでは、冷却システムの改善やMicroSDカードスロットの配置変更(より熱の影響を受けにくい場所へ移動など)によって、この問題が解決されているかどうかも重要なポイントです。MicroSDカードは、内部ストレージほど高速ではありませんが、容量を手軽に拡張できる手段として依然として有用です。特に、インディーゲームや動画、音楽などのデータを保存するのに適しています。
内部ストレージの高速性に関しては、ROG Ally Xも引き続きPCIe 4.0 x4接続のNVMe SSDを採用すると考えられます。これにより、ゲームのロード時間は非常に短く、OSやアプリケーションの起動も高速です。1TBという容量に加えてこの高速性が維持されていることは、快適なゲーム体験において非常に重要な要素です。
まとめると、ROG Ally Xのストレージ進化は、単に容量を倍にしただけでなく、ユーザーによるアップグレードの柔軟性を大幅に高める、非常に実用的な改善です。1TBという標準容量は多くのユーザーにとって十分であり、さらに必要であれば、安価で選択肢の多い標準的なM.2 2280 SSDに換装できるようになったことは、ROG Ally Xを長く使い続けたいと考えるユーザーにとって、非常に魅力的なポイントとなります。データ容量の悩みが解消されることで、より多くのゲームを気軽にインストールし、持ち運んでプレイすることが可能になります。
パフォーマンスと冷却システムの改良 – ポテンシャルを引き出す
ROG Ally Xは、初代ROG Allyと同じく、AMD Ryzen Z1 Extremeプロセッサを搭載しています。これは、Zen 4 CPUアーキテクチャとRDNA 3 GPUアーキテクチャを統合した強力なチップセットであり、ハンドヘルドデバイスとしては非常に高いグラフィックス性能と処理能力を持っています。つまり、ROG Ally Xは、初代と比較してチップセット自体の「絶対的なピーク性能」が向上しているわけではありません。
しかし、パフォーマンスはチップセット単体で決まるものではありません。そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、十分な電力供給と、発生する熱を効率的に排熱する冷却システムが不可欠です。そして、ROG Ally Xはまさにこの冷却システムに大幅な改良を加えています。
ROG Ally Xの冷却システムは、「Intelligent Cooling」システムとして知られており、初代から多くの点が強化されています。
1. 新しいファン: より薄型でありながら、ブレードの数が増加し、風量が増加した新しいファンが搭載されていると言われています。これにより、同じ回転数でもより多くの空気を送り込むことができ、冷却効率が向上します。また、ファン自体の騒音レベルが低減されている可能性も期待されます。
2. ヒートパイプの増加または大型化: 熱をCPU/GPUからフィンに伝えるヒートパイプが、初代よりも増えたり、太くなったりしている可能性があります。これにより、チップセットで発生した熱をより迅速かつ効率的に冷却フィンまで移動させることができます。
3. エアフローの改善: 内部構造の見直しにより、デバイス内部のエアフロー経路が最適化されています。より多くの冷たい空気を吸入し、効率的に熱を帯びた空気を外部に排出できる設計になっています。特に、前述のMicroSDカードスロットの配置変更なども、内部の熱の流れを考慮した結果である可能性があります。
これらの冷却システムの改良が、ROG Ally Xのパフォーマンスにどのような影響をもたらすのでしょうか。チップセットのピーク性能は同じでも、冷却性能が向上することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 持続的な高パフォーマンス: CPUやGPUは、温度が一定のしきい値を超えると、性能を意図的に低下させる「サーマルスロットリング」という現象を起こします。冷却性能が高いデバイスは、より長く高温に耐えることができるため、長時間のゲームプレイでもサーマルスロットリングが発生しにくく、結果としてより安定した、持続的な高フレームレートを維持できます。初代ROG Allyでは、特に高TDP設定で長時間のプレイを行うと、徐々にフレームレートが低下することがありましたが、ROG Ally Xではこの現象が軽減される可能性があります。
- より高いTDPのサポート?: 標準的なTDPモード(サイレント、パフォーマンス、ターボ)に加えて、冷却性能の余裕を活かして、さらに高いピークTDPを設定できるモードが追加される可能性もゼロではありません。例えば、短時間だけさらに高いブーストをかけるといった使い方ができるかもしれません。ただし、これはバッテリー消費をさらに加速させるため、限られたシチュエーションでの使用になるでしょう。
- より静かな動作: 冷却効率が向上することで、同じ温度を維持するためにファンを高速回転させる必要がなくなります。これにより、ゲーム中のファンノイズが初代よりも低減される可能性があります。これは、静かな環境でプレイしたいユーザーにとっては非常に大きなメリットです。
- 内部コンポーネントの信頼性向上: 熱は電子部品にとって最大の敵の一つです。冷却性能が高いデバイスは、チップセットだけでなく、バッテリーやストレージなどの他の内部コンポーネントも適切な温度に保ちやすくなります。これにより、デバイス全体の長期的な信頼性や寿命が向上する可能性があります。特に初代で報告されたMicroSDカードの問題も、熱対策が強化されたことで解決されることが期待されます。
ROG Ally Xの性能は、ベンチマークのスコアシート上で初代と劇的に変わらないかもしれませんが、実際のゲームプレイにおける「体験の質」という面で大きな差を生む可能性があります。特に、長時間のプレイや、要求の厳しいAAAタイトルを安定したフレームレートで遊びたいユーザーにとって、冷却システムの改善は非常に重要なポイントとなります。Ryzen Z1 Extremeチップセットのポテンシャルを、熱による制約から解放し、より引き出すことができるようになったのが、ROG Ally Xのパフォーマンスにおける隠れた、しかし決定的な進化と言えるでしょう。
接続性と拡張性の向上 – より使いやすく
ポータブルゲーミングPCは、単体でゲームをプレイするだけでなく、外部ディスプレイに接続して据え置き型のように使ったり、キーボードやマウス、外部コントローラーを接続したりと、様々な拡張性を求められます。ROG Ally Xは、この接続性においても初代から重要な改良を加えています。
最も注目すべき変更点は、USB Type-Cポートが1つから2つに増加したことです。初代ROG Allyは、充電とデータ転送、外部ディスプレイ出力などを兼ねるUSB Type-Cポートが1つしかありませんでした。これは、特に充電しながら外部ディスプレイに出力したり、外部ストレージやハブを接続したりする際に、非常に不便を感じるポイントでした。専用のドックを使用すれば解決できますが、デバイス単体での柔軟性が制限されていました。
ROG Ally Xでは、本体上部にUSB Type-Cポートが2つ並んで配置されています。これにより、例えば片方のポートで本体を充電しながら、もう片方のポートで外部ディスプレイに出力したり、ハブを介して複数のUSBデバイスを接続したりといったことが、ドックなしで可能になります。これは、デバイスの利便性を大幅に向上させる、非常に実用的な変更点です。
さらに、これらのUSB Type-Cポートのうち、少なくとも1つがUSB4またはThunderbolt 4に対応している可能性が高いと報じられています。初代ROG AllyのUSB Type-Cポートは、DisplayPort Alt ModeとPower Deliveryに対応していましたが、データ転送速度はUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)に限定されていました。Thunderbolt 4やUSB4に対応した場合、データ転送速度は最大40Gbpsに向上します。
USB4/Thunderbolt 4対応の最大のメリットの一つは、外部GPU(eGPU)のサポートです。Thunderbolt接続に対応したeGPUボックスを使用することで、ROG Ally Xを高性能なゲーミングデスクトップPCに変身させることが可能になります。外出先では単体でポータブルに、自宅ではeGPUと外部ディスプレイ、キーボード、マウスを接続して、デスクトップPC並みの快適な環境でAAAタイトルをプレイするといった、二刀流の使い方が実現できます。これは、デバイスの用途を大きく広げる可能性を秘めています。
その他にも、USB4/Thunderbolt 4は、より高解像度・高リフレッシュレートの外部ディスプレイを安定して接続したり、超高速な外部SSDを活用したりする上でもメリットがあります。また、多くの機能を持つドックとの互換性も高まります。
無線接続に関しては、ROG Ally Xは最新規格のWi-Fi 6Eに対応しています。Wi-Fi 6Eは、従来のWi-Fi 6(802.11ax)に加えて、6GHz帯の周波数帯域を使用できる規格です。6GHz帯は比較的空いている帯域であり、干渉が少なく、より高速かつ安定した通信が可能です。これにより、オンラインゲームの低遅延化や、クラウドゲーミングの快適性の向上、大容量データのダウンロード時間の短縮などが期待できます。ただし、Wi-Fi 6Eのメリットを最大限に享受するには、自宅のルーターもWi-Fi 6Eに対応している必要があります。Bluetoothに関しても、最新バージョン(例えばBluetooth 5.2以降)に対応し、より安定したワイヤレスオーディオ接続などが可能になっていると考えられます。
前述の通り、MicroSDカードスロットも引き続き搭載されていますが、配置が変更されたことで、信頼性が向上している可能性が高いです。これにより、内部ストレージと合わせて、さらに多くのゲームやメディアファイルを保存できるようになります。
総じて、ROG Ally Xの接続性と拡張性の向上は、デバイスの多用途性を高め、様々な使用シナリオに対応できるようになります。特に、USB Type-Cポートの増加とUSB4/Thunderbolt対応は、ポータブルなゲーミング体験だけでなく、自宅での据え置き環境や、将来的なeGPUによる性能向上といった、新たな可能性をユーザーにもたらす重要な進化です。
ディスプレイ – 最高の画面体験はそのままに?
初代ROG Allyは、そのディスプレイが高く評価されていました。7インチのIPS液晶パネルは、1920×1080(フルHD)解像度、120Hzの高いリフレッシュレート、そしてAMD FreeSync Premiumによる可変リフレッシュレート(VRR)に対応しており、非常に滑らかでティアリングのないゲーム映像を提供していました。また、sRGBカバー率100%に近い広色域と、最大500nitsの明るさにより、鮮やかで視認性の高い画面を実現していました。
ROG Ally Xのディスプレイに関する現時点での情報は、基本的に初代ROG Allyと同じスペックのディスプレイを搭載しているという可能性が高いことを示唆しています。つまり、7インチ、フルHD、120Hz、VRR対応のIPS液晶パネルが引き継がれていると考えられます。
これは、人によっては「進化がない」と捉えるかもしれません。特に、Steam Deck OLEDが有機ELディスプレイを採用し、黒の表現力やコントラスト比で液晶ディスプレイを凌駕する中で、ROG Ally Xが液晶を維持したことは、比較において不利に働く可能性もあります。
しかし、見方を変えれば、初代ROG Allyのディスプレイは、すでにハンドヘルドデバイスとしては非常に優れたものでした。フルHD解像度は7インチというサイズにおいて十分に精細であり、120Hzのリフレッシュレートは一般的な60Hzディスプレイと比較して段違いの滑らかさを提供します。そして何よりも重要なのがVRR(Variable Refresh Rate)対応です。VRRは、ディスプレイのリフレッシュレートをグラフィックスカードのフレームレートに合わせてリアルタイムで調整する技術であり、これにより画面のティアリング(映像が横方向にずれて表示される現象)やスタッタリング(カクつき)を解消し、非常に滑らかで快適なゲームプレイを実現します。特に、ハンドヘルドPCのようにフレームレートが変動しやすい環境では、VRRの有無がゲーム体験に大きく影響します。ROG Ally XがこのVRR対応を引き継いだことは、ゲーム体験の質を維持する上で非常に重要です。
また、IPS液晶は有機ELディスプレイに比べて、焼き付きのリスクが低いというメリットがあります。ハンドヘルドPCのように長時間同じ画面(ゲームのUIやデスクトップ画面など)を表示することが多いデバイスでは、焼き付きのリスクは無視できません。IPS液晶は、この点において安心して使用できる技術です。
ディスプレイに関する変更がない、あるいは少ないと仮定するならば、それはASUSが今回の「X」モデルにおいて、バッテリー、ストレージ、エルゴノミクス、接続性といった、初代の明確な弱点にリソースを集中させた結果と言えるでしょう。すでに高品質なディスプレイを変更することは、コスト増につながりやすく、限られた開発期間と予算の中で、最もユーザーの満足度を高めるための優先順位付けが行われたと考えられます。
もちろん、もし画面の明るさや色再現性が初代から微妙に改善されていたり、応答速度が向上していたりといった、数値に現れにくい微細な改良が加えられている可能性はゼロではありません。しかし、主要なスペックが初代と同じであれば、期待すべきは、初代で高評価だったディスプレイの品質が維持されていること、そしてVRRによる滑らかなゲーム体験が引き続き提供されることと言えます。
結論として、ROG Ally Xのディスプレイは、競合製品と比較して「革命的な進化」ではないかもしれませんが、初代ROG Allyで証明された「ハンドヘルドデバイスとして非常に優れたディスプレイ」の品質を継承していると考えられます。フルHD、120Hz、そしてVRR対応というスペックは、2024年においても十分な競争力を持ち、快適なゲーム体験を提供する基盤となります。
ソフトウェア体験 – Armoury Crate SEの進化
ROG Ally Xは、Windows 11 Homeをオペレーティングシステムとして搭載しています。これは初代ROG Allyと同じであり、Windowsプラットフォームの高いゲーム互換性という最大のメリットをそのまま引き継いでいます。Steam、Epic Games Store、Xbox Game Pass、EA Play、Ubisoft Connectなど、様々なプラットフォームで購入したゲームを、追加の互換性レイヤーなしでそのままインストールしてプレイできます。これは、LinuxベースのOSを採用しているSteam Deckなどと比較した場合の、ROG Allyシリーズの明確な優位性です。
しかし、Windows OSは、本来タッチ操作やゲームパッド操作に最適化されたOSではありません。この課題を解決するために、ASUSは独自のユーティリティソフトウェア「Armoury Crate SE (Special Edition)」を提供しています。ROG Ally Xでは、このArmoury Crate SEも初代から改良が加えられ、より使いやすく、洗練されたユーザーインターフェースになっていることが期待されます。
Armoury Crate SEは、ROG Allyのユーザー体験の中心となるソフトウェアです。
* ゲームライブラリ: デバイスにインストールされている様々なプラットフォームのゲームを一元管理し、簡単に起動できます。
* コマンドセンター: ゲーム中にいつでも呼び出せるオーバーレイメニューで、パフォーマンスモード(TDP設定)、解像度、リフレッシュレート、RSR(Radeon Super Resolution)などの設定を素早く変更できます。また、画面録画やスクリーンショット、キーボード呼び出しなどの機能もここからアクセスできます。
* コントロールマッピング: ゲームパッドのボタンやジョイスティック、背面ボタンなどに、キーボードやマウスの操作、あるいはマクロを割り当てることができます。これにより、ゲームパッドに正式対応していないPCゲームでも快適にプレイすることが可能です。
* パフォーマンスプロファイル: ゲームごとに最適なTDP設定やファンカーブなどを事前に設定しておくことができます。
ROG Ally Xに合わせたArmoury Crate SEの進化としては、以下のような点が考えられます。
* 新しいハードウェアへの最適化: 改善された冷却システムや80Whバッテリーを最大限に活用するための、新しいパフォーマンスプロファイルや省電力設定が追加されるでしょう。例えば、バッテリー容量が増えたことで、よりアグレッシブな高TDP設定でも安心して使えるようになるかもしれません。
* UI/UXの改善: ユーザーインターフェースがより直感的になり、タッチ操作やゲームパッド操作でのナビゲーションがスムーズになる可能性があります。設定項目が整理され、目的の設定に素早くアクセスできるようになることも期待されます。
* 機能の追加や改善: コントロールマッピング機能がより強力になったり、特定のゲームとの連携が強化されたりする可能性があります。また、ユーザーからのフィードバックを反映して、既存の機能が改善されることも考えられます。
* ソフトウェアアップデートの頻度と質: ASUSは初代ROG Allyに対しても継続的なソフトウェアアップデートを提供してきましたが、ROG Ally Xではさらに安定した、より頻繁なアップデートが期待されます。特に、Windows OSの特性上、ドライバの最適化やバグ修正は、ゲーム体験の安定性に直結するため非常に重要です。
Windows OS自体の課題、例えばバックグラウンドでのアップデートや通知、タッチ操作時のUIの最適化不足などは、完全に解消されるわけではありません。しかし、Armoury Crate SEが進化し、デバイスのハードウェアとより密接に連携することで、Windows上でのゲーム体験は初代よりもさらに洗練されたものになるでしょう。
また、サードパーティ製のユーティリティソフトウェア(例: Handheld Companionなど)も、ROG Ally Xに対応していくと考えられます。これらのツールを活用することで、Armoury Crate SEにはない高度なカスタマイズや機能を利用できるようになります。
総じて、ROG Ally Xのソフトウェア体験は、Windows OSの高い互換性を基盤としつつ、進化するArmoury Crate SEによって、より快適でパーソナライズされたものになると期待されます。新しいハードウェアのポテンシャルを最大限に引き出し、ユーザーがストレスなくゲームに没頭できる環境を提供することが、ソフトウェア側の重要な役割となります。
オリジナルROG Allyとの比較 – 「X」を選ぶ理由
ROG Ally Xは、初代ROG Allyの直接的な後継機というよりは、「改良強化版」あるいは「Complete Edition」と位置づけられます。では、具体的に初代から何が変わったのか、そして、これからROG Allyを購入する人や、初代ROG AllyユーザーがROG Ally Xに乗り換える理由はどこにあるのか、詳細に比較してみましょう。
特徴 | オリジナル ROG Ally (Z1 Extremeモデル) | ROG Ally X (Z1 Extremeモデル) | 変更点 |
---|---|---|---|
CPU/GPU | AMD Ryzen Z1 Extreme | AMD Ryzen Z1 Extreme | 変更なし (チップセット自体は同じ) |
RAM | 16GB LPDDR5 | 24GB LPDDR5X | 容量増加 (16GB -> 24GB)、速度向上 (LPDDR5 -> LPDDR5X) |
ストレージ | 512GB PCIe 4.0 NVMe SSD | 1TB PCIe 4.0 NVMe SSD | 容量増加 (512GB -> 1TB) |
M.2スロット | 2230サイズ | 2280サイズ | フォームファクタ変更 (より一般的なサイズへ) |
バッテリー | 40Wh | 80Wh | 容量倍増 (40Wh -> 80Wh) |
ディスプレイ | 7インチ FHD 120Hz VRR IPS | 7インチ FHD 120Hz VRR IPS | 仕様変更なし (高品質なディスプレイは維持) |
USBポート | Type-C x1 (USB 3.2 Gen 2) | Type-C x2 (うち1つがUSB4/Thunderbolt?) | ポート数増加、速度/対応規格の可能性 (Thunderbolt対応でeGPUなど) |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6E | 対応規格の進化 (6GHz帯対応) |
MicroSD | UHS-II 対応 | UHS-II 対応 | 仕様変更なし (配置変更で熱問題改善の可能性) |
デザイン | ホワイト | マットブラック | カラー変更 |
エルゴノミクス | 標準グリップ | 改良グリップ | グリップ形状、ボタン配置/デザイン、ジョイスティック、D-padの変更/改善 |
重量 | 約608g | 約678g | 約70g増加 |
冷却システム | Intelligent Cooling | 強化版 Intelligent Cooling | ファン、ヒートパイプ、エアフローの改良 |
価格 | 発売時 約109,800円〜 | 発売時 約13万円〜 (予想/推定) | 高くなる可能性が高い |
ROG Ally Xを選ぶ主な理由:
- 圧倒的に長いバッテリー駆動時間: 80Whバッテリーは初代の最大の弱点を完全に克服します。外出先でのプレイが多いユーザーにとって、これは最も強力な購入動機となります。
- 標準1TBストレージと容易なアップグレード: 最初から大容量であり、さらに標準的なM.2 2280 SSDで簡単にアップグレードできるため、容量不足の心配が格段に減ります。
- 強化された接続性: USB Type-Cポートが2つになり、充電しながら他のデバイスを接続できる利便性が向上。USB4/Thunderbolt対応の可能性はeGPU接続など、さらに用途を広げます。
- 改良されたエルゴノミクス: より手に馴染むグリップ、操作性の良いボタン類は、長時間のゲームプレイにおける快適性を向上させます。重量増加を補って余りある改善となるか注目です。
- 強化された冷却システム: チップセットのピーク性能は同じでも、冷却性能向上により、高負荷時の安定性向上やファンノイズ低減が期待できます。
- Wi-Fi 6E対応: より高速で安定した無線通信は、オンラインゲームやクラウドゲーミングの体験を向上させます。
- RAM容量増加 (24GB): 16GBでも多くのゲームは動作しますが、将来的にメモリを多く消費するタイトルや、ゲームと同時に複数のアプリケーションを立ち上げるような場面で、24GBのRAMがより余裕のある動作を提供します。特に共有VRAM容量を多く割り当てても、システム側に十分なメモリを確保できるメリットがあります。
それでもオリジナルROG Allyを選ぶ理由(あるいは、ROG Ally Xを選ばない理由):
- 価格: ROG Ally Xは初代の発売時価格よりも高くなる可能性が高いです。予算が限られている場合、価格が下がった初代ROG Allyは依然として魅力的な選択肢となり得ます。
- 重量: 約678gという重量は、ポータブルデバイスとしてはやや重めです。初代の約608gとの差をどう感じるかは個人差があります。
- チップセットは同じ: 絶対的なグラフィックス性能や処理能力は、初代のZ1 Extremeモデルと変わりません。最新のAAAタイトルを最高設定で快適にプレイするという点においては、劇的な差は生まれない可能性があります(安定性は向上しますが)。
- ディスプレイの進化がない: Steam Deck OLEDのような有機ELディスプレイを期待していたユーザーにとっては、ディスプレイが初代と同じであることは残念な点かもしれません。
結論として、 ROG Ally Xは、初代ROG Allyの基本設計が優れていることを前提に、ユーザーからのフィードバックで明らかになった「バッテリー」「ストレージ」「接続性」「エルゴノミクス」といった、実用面での弱点を集中的に改善したモデルです。チップセットの性能は同じですが、これらの改善が、実際のゲームプレイ体験の質を大きく向上させます。
これからROG Allyシリーズを購入する新規ユーザーにとっては、予算が許すならば、間違いなくROG Ally Xがおすすめです。初代の弱点を解消し、より完成度の高いデバイスとなっています。
初代ROG Allyをすでに所有しているユーザーにとっては、乗り換えの価値は、どれだけバッテリー持ちやストレージ容量、接続性に不満を感じていたかによります。これらの点が最大の悩みだったユーザーにとっては、ROG Ally Xへの乗り換えは非常に大きなメリットがあるでしょう。一方で、主に自宅で使用しており、常時電源に繋いでいたり、外部ストレージで容量を補っていたりするユーザーにとっては、初代でも十分満足できるかもしれません。初代の価格が下がれば、そちらを選択するというのも賢い判断です。
ROG Ally Xは、ポータブルゲーミングPCとしての実用性と快適性を大幅に向上させた、まさに「痒い所に手が届く」進化を遂げたモデルと言えます。
競合製品との比較 – ハンドヘルドPC市場での立ち位置
ROG Ally Xが登場するハンドヘルドPC市場は、近年急速に活況を呈しています。ValveのSteam Deckが市場を開拓し、ASUS ROG AllyがWindows機の可能性を示し、Lenovo Legion GoやMSI Clawといった強力な競合製品も登場しています。ROG Ally Xがこの市場でどのような位置づけになるのか、主要な競合製品と比較しながら考察します。
1. Steam Deck (特にOLEDモデル)
- 強み: Valve独自のSteamOS (Linuxベース) による最適化されたゲーム体験、優れたトラックパッドによる操作性、OLEDディスプレイの美しい画質(OLEDモデル)、比較的安価な価格設定(特にLCDモデル)、強固なコミュニティサポート。バッテリー持ちはOLEDモデルで改善されましたが、ROG Ally Xの80Whには及びません。
- 弱み: Windowsネイティブではないため、Steam以外のゲームプラットフォームや一部のゲーム(特にアンチチート対策が厳しいもの)の互換性に課題がある場合がある。プロセッサの絶対性能はROG Ally X (Z1 Extreme) よりも低い。ディスプレイはVRR非対応(OLEDモデルは高リフレッシュレートに対応)。
- ROG Ally Xとの比較: ROG Ally XはWindows搭載であるため、ゲーム互換性の高さではSteam Deckに勝ります。Z1 ExtremeチップはSteam DeckのカスタムAPUよりも高性能です。バッテリー容量はROG Ally Xが圧倒的に優位です。ディスプレイの画質ではOLEDモデルに劣るかもしれませんが、VRR対応はROG Ally Xの大きな強みです。操作系はそれぞれ特徴が異なりますが、一般的なゲームパッド操作に馴染むのはROG Ally Xかもしれません。重量はROG Ally Xの方がやや重いです。価格帯もROG Ally Xの方が高くなるでしょう。
2. Lenovo Legion Go
- 強み: 8.8インチという大型かつ高解像度(2560×1600)のディスプレイ、取り外し可能なコントローラーによる多様なプレイスタイル(FPSモードなど)、キックスタンド内蔵。バッテリー容量もROG Ally Xに次ぐレベル(49.2Wh)。
- 弱み: サイズと重量がハンドヘルドとしてはかなり大きい(約854g、コントローラー込み)、コントローラーの接続安定性や操作性に改善の余地があるというレビューも。ソフトウェアの成熟度。大型ディスプレイと高解像度ゆえに、高性能チップでもネイティブ解像度でのゲームプレイは困難な場合が多い。
- ROG Ally Xとの比較: Legion Goは大型ディスプレイと多機能性で差別化を図っています。ROG Ally Xはより標準的な7インチサイズと、携帯性を重視したデザインです。バッテリー容量はROG Ally Xが優位、重量はLegion Goがかなり重いです。Legion Goの取り外し可能なコントローラーはユニークですが、ROG Ally Xは一体型デザインで安定した操作性を提供します。ディスプレイはサイズも解像度もLegion Goが上ですが、VRR対応はROG Ally Xのみの強みです。
3. MSI Claw
- 強み: Intel Core Ultraプロセッサ搭載、Intel Xe-LPGグラフィックス採用、大型バッテリー(53Wh)。BIOS/UEFIへのアクセスが容易などPCとしての自由度が高い。
- 弱み: 発売当初はドライバやソフトウェアの最適化が進んでおらず、Ryzen Z1 Extreme搭載機と比較してパフォーマンスや安定性に課題が見られた。エルゴノミクスに関する評価が分かれる。
- ROG Ally Xとの比較: ROG Ally XはRyzen Z1 Extremeという、すでに実績のある高性能チップセットを搭載しており、パフォーマンスと安定性において現時点では優位性があります。ROG Ally Xはソフトウェア面(Armoury Crate SE)も比較的成熟しています。バッテリー容量はROG Ally Xが圧倒的に優位です。どちらもWindows機としての互換性は高いですが、ドライバやソフトウェアの最適化という点で、ASUSは一日の長があるかもしれません。
ROG Ally Xの市場での立ち位置:
ROG Ally Xは、これらの競合製品の中で、「Windowsネイティブの高い互換性」と「高性能なAMD Ryzen Z1 Extremeチップ」という初代の強みを維持しつつ、「バッテリー持ち」と「ストレージ容量/拡張性」という明確な弱点を克服した、「実用性の高い高性能WindowsハンドヘルドPC」というポジションを確立しようとしています。
Steam Deckとは、OSとゲームエコシステムへのアプローチで大きく異なります。ROG Ally Xは、すでにWindows環境で多くのゲームを所有しているユーザーや、PCとしての自由度を重視するユーザーにとって、より魅力的な選択肢となります。
Legion Goとは、サイズ感とコンセプトが異なります。ROG Ally XはLegion Goほど大型ではありませんが、より標準的なハンドヘルドとしての持ちやすさと、バッテリー持ちの良さで差別化します。
MSI Clawとは、採用チップセットが異なります。ROG Ally Xは、現状でハンドヘルドPC向けとして最も実績があり、パフォーマンスと省電力性のバランスに優れたZ1 Extremeを継続して採用することで、安定した高性能を提供することを目指しています。
ROG Ally Xは、飛び抜けたユニークな機能(例: 取り外しコントローラー、トラックパッド)は持ちませんが、ハンドヘルドPCに求められる「バッテリー持ち」「ストレージ容量」「高性能」という基本的な要素を非常に高いレベルで満たした、バランスの取れた優等生と言えます。特に、バッテリー容量80Whと標準1TBストレージ、そして2280 M.2スロット対応は、他の追随を許さない(あるいは先行している)強力なアドバンテージとなります。
価格帯は高めになることが予想されますが、その価格に見合うだけの、実用性と利便性が大幅に向上した、完成度の高いハンドヘルドPCとして、市場で強力な存在感を示すでしょう。
価格と発売時期 – 入手方法
ROG Ally Xの価格と発売時期に関する公式発表は、地域によって異なる場合がありますが、概ね以下の情報が有力視されています。
- 価格: 初代ROG AllyのZ1 Extremeモデルの発売時価格(日本国内では約109,800円)よりも高くなることが予想されています。これは、バッテリー容量の倍増、ストレージ容量の増加、RAM容量増加、デザイン・エルゴノミクスの改良、USBポートの追加・規格向上など、多くの部品がアップグレードされているため、当然の成り行きと言えます。具体的な価格帯としては、例えば13万円台後半から15万円前後といった価格が推測されています(為替レートや地域によって変動します)。この価格帯は、高性能な小型ゲーミングノートPCにも手が届くレベルであり、デバイスの価値をしっかりと見極める必要があります。
- 発売時期: 2024年後半、具体的には2024年7月以降に主要な市場で順次発売される見込みです。日本国内での正式発表や予約開始時期については、ASUS Japanからの公式発表を待つ必要があります。
入手方法:
ROG Ally Xは、ASUSの公式オンラインストアであるASUS Storeをはじめ、大手家電量販店、オンラインショッピングサイト(Amazon、楽天市場など)で販売されると考えられます。
- 予約: 発売に先駆けて予約販売が行われるのが一般的です。人気のデバイスであるため、確実に発売日に入手したい場合は、予約開始と同時に申し込むのが良いでしょう。ASUS Storeや各販売店のウェブサイト、SNSなどで最新情報をチェックすることが重要です。
- 販売店舗: 全国の主要な家電量販店(ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダデンキなど)のPCコーナーやゲームコーナーで取り扱われる可能性が高いです。実際に手に取ってエルゴノミクスやサイズ感を確認したい場合は、店頭での購入や予約がおすすめです。
- オンライン販売: Amazonや楽天市場、PayPayモールなどの主要なオンラインショッピングサイトでも販売されると考えられます。ポイント還元やセールなどを活用したい場合は、オンライン販売をチェックするのも良いでしょう。
価格に関しては、発売直後は定価販売が中心になると思われますが、時間が経過したり、特定のセール期間になったりすると、価格が変動する可能性もあります。ただし、ROG Ally Xは初代の課題を克服した完成度の高いモデルであるため、大幅な値崩れは当面考えにくいかもしれません。
購入を検討している場合は、事前に予算をしっかりと計画し、各販売店の予約情報や価格を比較検討することをおすすめします。特に、初回出荷分は品薄になる可能性も考慮し、早めの行動が肝心です。
ROG Ally Xのメリットとデメリット – 購入前に知っておくべきこと
ROG Ally Xは多くの魅力的な進化を遂げていますが、全てのユーザーにとって最適な選択肢とは限りません。購入を決定する前に、そのメリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが重要です。
メリット (Pros):
- 圧倒的なバッテリー駆動時間: 80Whバッテリーによる大幅な持続時間の向上は、ポータブルゲーミングPCとしての実用性を根底から変えます。外出先でのプレイ時間が飛躍的に伸びます。
- 大容量標準ストレージと高い拡張性: 標準1TBに加え、安価で豊富な選択肢のある2280 M.2 SSDで容易に増設・換装できる点は非常に強力です。容量不足の悩みから解放されます。
- 強化された接続性: USB Type-Cポートが2つになり、充電と同時に他のデバイスを接続できる利便性は計り知れません。USB4/Thunderbolt対応の可能性は、eGPU接続など将来的な拡張性も高めます。
- 改良されたエルゴノミクス: より手に馴染むグリップ、操作性の良いボタン類、刷新されたD-padなどは、長時間の快適なゲームプレイをサポートします。
- 安定した高性能: 同じZ1 Extremeチップでも、強化された冷却システムにより、高負荷時のサーマルスロットリングを抑制し、より安定したフレームレートを維持できます。ファンノイズの低減も期待できます。
- Windows OSの高いゲーム互換性: Steam、Epic Games Store、Xbox Game Passなど、既存のPCゲームライブラリをそのままプレイできる自由度は、他の追随を許しません。
- 高速なWi-Fi 6E対応: オンラインゲームやクラウドゲーミングをより快適に楽しめます。
- RAM容量の増加 (24GB): 将来的なゲームの要求スペック増や、マルチタスク時の余裕を提供します。
デメリット (Cons):
- 価格: 初代ROG Allyや競合製品の一部と比較して、価格が高くなることが予想されます。高性能なゲーミングノートPCと比較検討するレベルになります。
- 重量増加: 約678gという重量は、初代より約70g増加しており、ポータブルデバイスとしてはやや重めです。長時間の片手操作や、純粋な軽量性を求めるユーザーにはネックになる可能性があります。
- チップセットの性能は同じ: 搭載されているCPU/GPUは初代ROG Allyと同じZ1 Extremeです。絶対的なピーク性能は向上していないため、初代で動作が厳しかった最新のAAAタイトルが、劇的に快適になるわけではありません(安定性は向上しますが)。
- ディスプレイの進化がない: 高品質ではありますが、有機ELディスプレイを採用したSteam Deck OLEDのような、コントラストや黒の表現力における劇的な画質向上はありません。
- Windows OS特有の課題: タッチ操作やゲームパッド操作に完全に最適化されていないUI、バックグラウンドでのアップデートや通知など、Windows OS自有の使いにくさは依然として存在します。Armoury Crate SEによる改善はありますが、完全に解消されるわけではありません。
購入を検討するにあたって:
- 最優先事項が「バッテリー持ち」と「ストレージ容量」である: これらが初代ROG Allyで最も不満だった点であり、ROG Ally Xで最も劇的に改善されたポイントです。これらの課題を解消したいユーザーにとっては、ROG Ally Xは非常に魅力的な選択肢です。
- PCゲームの幅広い互換性を求める: Windows OS搭載機であるため、Steamだけでなく、様々なPCゲームストアのゲームをプレイしたいユーザーに向いています。
- 将来的な拡張性を重視する: 2280 M.2スロットによるストレージ増設の容易さや、USB4/Thunderbolt対応の可能性によるeGPU接続などは、デバイスを長く活用したいユーザーにとって大きなメリットです。
- 価格よりも体験の質を重視する: 価格は高めですが、その分、ポータブルゲーミングPCとしての実用性と快適性が初代から大幅に向上しています。
逆に、
- 予算を抑えたい: 価格が下がった初代ROG Allyや、より安価なSteam Deckなどが選択肢になります。
- 軽量性を最優先する: ROG Ally Xは初代より重くなっています。より軽量なデバイスを求める場合は、他の選択肢も検討が必要です。
- 最高の画質(有機EL)を求める: Steam Deck OLEDの方がディスプレイの質では優位に立つ可能性があります。
ROG Ally Xは、初代の成功を基盤に、ユーザーの声を反映して弱点を徹底的に改善した、非常にバランスの取れた完成度の高いモデルです。これらのメリット・デメリットを考慮し、自身のゲームスタイルや優先事項に合致するかどうかを慎重に判断することが重要です。
結論 – ROG Ally Xは買いか?
ROG Ally Xは、初代ROG Allyの正当な進化形であり、特にユーザーからの要望が強かったバッテリー駆動時間とストレージ容量の課題を、劇的に改善したモデルです。80Whのバッテリーは、これまでのハンドヘルドPCの常識を覆すレベルであり、ポータブルデバイスとしての実用性を飛躍的に高めます。標準1TBストレージと、標準的な2280サイズM.2スロットへの変更は、ストレージ容量の悩みを解消し、将来的なアップグレードを容易にします。
これらの核心的な改善に加え、エルゴノミクスの最適化、USBポートの増加と規格向上、強化された冷却システム、Wi-Fi 6E対応、そしてRAM容量の増加など、デバイス全体の使いやすさと完成度を高める細かな改良が多数施されています。
チップセット自体は初代と同じZ1 Extremeですが、冷却システムの強化により、そのポテンシャルをより安定して、より長時間引き出せるようになりました。パフォーマンスの「量」よりも「質」や「持続性」が向上したと言えます。
価格は初代よりも高くなる見込みですが、その価格に見合うだけの価値ある進化を遂げていると言えるでしょう。特に、初代のバッテリー持ちに不満を感じていたユーザーや、多くのゲームをインストールしたいと考えていたユーザー、そしてWindows PCとしての拡張性を重視するユーザーにとっては、ROG Ally Xは非常に魅力的な選択肢となります。
ROG Ally Xは買いか?
- ポータブルゲーミングPCの購入を初めて検討している新規ユーザーで、予算が許すならば、間違いなく「買い」の筆頭候補です。 現時点で入手できるWindowsハンドヘルドPCの中で、バッテリー容量、ストレージ容量、拡張性、エルゴノミクスといった、実用面で非常に高いレベルでバランスが取れたデバイスと言えます。
- 初代ROG Allyユーザーで、バッテリー持ちやストレージ容量不足に悩んでいたならば、「買い替え」の価値は非常に高いです。 これらの点は初代の最大の弱点であり、ROG Ally Xではそれが根本的に解決されています。特に、外出先での利用が多いユーザーほど、そのメリットを大きく感じられるでしょう。
- すでに初代ROG Allyを持っており、特に大きな不満がないユーザー: バッテリー持ちやストレージが十分と感じている、あるいは主に自宅で電源に繋いで使用している場合は、慌てて買い替える必要はないかもしれません。初代でも十分な体験が得られているならば、価格の下がった初代を引き続き使うという選択肢も賢明です。
- 絶対的な最高性能や、有機ELのような最高の画質を求めるユーザー: チップセットのピーク性能は初代と同じであり、ディスプレイも液晶であるため、この点においては他の選択肢(例えばより高価なPCライクなデバイスや、Steam Deck OLED)と比較検討が必要です。
総括すると、ROG Ally Xは「革命」ではなく「進化」です。しかし、その進化は、初代ROG Allyを「素晴らしい可能性を秘めたデバイス」から「実際に非常に使いやすい完成度の高いデバイス」へと昇華させる、ユーザー体験にとって非常に重要なものです。特に、バッテリー、ストレージ、接続性という、ポータブルデバイスの根幹に関わる部分の強化は、ROG Ally Xを市場における競争力の高い、魅力的な製品にしています。
ハンドヘルドPC市場は今後もさらに発展していくでしょう。その中で、ROG Ally Xは、ユーザーの声に寄り添い、弱点を克服することで、成熟した製品を提供することの重要性を示した、新たな基準となるモデルと言えるかもしれません。
将来への展望 – ハンドヘルドPC市場の今後
ROG Ally Xの登場は、ハンドヘルドPC市場の将来についていくつかの示唆を与えています。
- 改良モデルの重要性: ROG Ally Xが示したように、完全に新しい世代のチップセットを待つだけでなく、既存のプラットフォームをベースにユーザーフィードバックを反映した改良モデルを投入することは、市場のニーズに迅速に応え、製品ラインナップを充実させる有効な手段であることが証明されました。今後、他のメーカーも同様に、既存製品の「Pro」や「Plus」、「X」といった強化版を投入する可能性が高まります。
- バッテリーとストレージの競争激化: ROG Ally Xが80Whバッテリーという驚異的な容量を搭載したことは、競合製品にとって大きな刺激となります。今後登場するであろう新しいハンドヘルドPCは、ROG Ally Xに対抗するため、より大容量のバッテリーや、最初から大容量かつ拡張性の高いストレージを搭載してくることが予想されます。これはユーザーにとって非常に歓迎すべきトレンドです。
- 汎用性への回帰: Windows搭載機であるROG AllyやLegion Go、MSI Clawの人気は、多くのユーザーが特定のプラットフォームに縛られず、既存のPCゲームライブラリをそのまま活用できる汎用性の高いデバイスを求めていることを示しています。Steam DeckもProtonという互換性レイヤーでWindowsゲームへの対応を進めていますが、ネイティブ対応の強みは依然として大きいです。今後もWindows搭載ハンドヘルドPCは市場の中心の一つであり続けるでしょう。
- エルゴノミクスと冷却の洗練: ROG Ally Xのエルゴノミクスや冷却システムの改良は、ハードウェア性能だけでなく、デバイスとしての使い心地や安定性が重要視されていることを示しています。今後の製品は、単に高性能なだけでなく、手に馴染むデザイン、効果的かつ静音な冷却、信頼性の高い部品といった、ユーザー体験に直結する要素へのこだわりを強めていくと考えられます。
- 周辺機器とエコシステムの発展: ハンドヘルドPCの普及に伴い、専用のドック、ケース、外部コントローラー、そしてeGPUのような拡張デバイスといった周辺機器市場も拡大していくでしょう。USB4/Thunderboltのような高速インターフェースの採用は、こうした拡張性をさらに促進します。ソフトウェア面でも、Armoury Crate SEのような統合ユーティリティの進化や、サードパーティ製ツールの充実が進むでしょう。
ハンドヘルドPC市場は、もはやニッチな市場ではなく、主要なゲーミングプラットフォームの一つとして認識され始めています。技術の進化とメーカー間の競争により、バッテリー持ち、性能、価格、デザイン、ソフトウェアなど、あらゆる面で製品の質が向上していくことが期待されます。ROG Ally Xは、その進化の過程における重要なマイルストーンであり、今後のハンドヘルドPCの標準を押し上げる存在となるでしょう。
この市場の発展は、ゲーマーに多様な選択肢を提供し、ゲームをより自由に、より手軽に楽しめる未来を切り開いていきます。ROG Ally Xが、その明るい未来の一端を担う存在であることは間違いありません。