はい、承知いたしました。
「【入門】base q とは?使い方・特徴を解説」というタイトルで、約5000語の詳細な記事を執筆します。
base qという言葉は公式な定義があるわけではありませんが、本記事ではkdb+という高速時系列データベースで使用されるQ言語の「基本的な要素、構文、操作」を指すものとして解説を進めます。
kdb+やQ言語が未経験の方でも理解できるよう、専門用語を避け、豊富なコード例を交えながら丁寧に進めていきます。
【入門】base q とは?使い方・特徴を徹底解説 – 高速時系列データベースkdb+を操るQ言語の基本
はじめに
あなたは「kdb+」や「Q言語」という言葉を耳にしたことがありますか? もしかしたら、金融業界や大量の時系列データを扱う分野に関わっている方なら、その名前を聞いたことがあるかもしれません。kdb+は、特に金融取引データのような膨大な時系列データを、驚異的な速度で処理するために設計された高性能なインメモリデータベースです。そして、そのkdb+を操作するための言語が「Q」です。
Q言語は、一般的なプログラミング言語とは少し異なる独特の構文と思想を持っています。初めて触れる人にとっては、その簡潔さや配列指向のアプローチに戸惑うこともあるかもしれません。しかし、一度その基本を掴んでしまえば、大量のデータを扱う際の強力な武器となることを実感できるでしょう。
本記事のタイトルにある「base q」という言葉は、Q言語の公式な専門用語ではありません。これは、Q言語とそのデータベースであるkdb+の、最も根幹となる「基本」の部分を指すために使われることが多い表現です。本記事では、「base q」を「Q言語の基本的な構文、データ型、データ構造、およびkdb+でデータを扱う上での最も基本的な要素」と定義し、これらの基礎の基礎から徹底的に解説していきます。
この記事を読むことで、あなたは以下のことができるようになります。
- kdb+とQ言語の全体像を理解する。
- Q言語の実行環境に触れる。
- Q言語の基本的なデータ型とデータ構造(リスト、辞書、テーブル)を知る。
- Q言語の変数、関数、演算子といった基本構文を理解する。
- kdb+を使った基本的なデータ操作(データの選択、更新、追加、削除)の方法を学ぶ。
- Q言語(base q)の持つ独特な特徴と、それがなぜ高速なデータ処理に適しているのかを知る。
kdb+やQ言語に初めて触れる方も、少し触ってみたけれど基本からしっかり学び直したい方も、ぜひ最後までお読みください。base qをマスターするための旅を始めましょう!
kdb+とQ言語の全体像
まず、kdb+とQ言語がどのようなものか、その全体像を掴みましょう。
kdb+とは?
kdb+は、Kx Systems社が開発した、高性能なカラム指向のインメモリ時系列データベース(TSDB: Time Series Database)です。その最大の特徴は、金融市場のティックデータ(株価の瞬間的な変動データなど)のように、膨大かつ連続的に発生する時系列データを、非常に高速に取り込み、保存し、そして分析できる点にあります。
- 時系列データに特化: 時間情報を持ったデータを効率的に扱うための設計がされています。
- インメモリ処理: 可能な限りデータをメインメモリ上に保持することで、ディスクアクセスに伴う遅延を排除し、高速なデータ処理を実現します。
- カラム指向: データを列(カラム)ごとにまとめて格納するため、特定のカラムに対する集計処理などが非常に高速に行えます。これは行ごとに格納する一般的なリレーショナルデータベース(RDB)とは異なるアプローチです。
- 金融分野での普及: 特に高頻度取引(HFT)やアルゴリズム取引の分野で広く利用されており、ミリ秒以下の精度でのデータ分析が求められる環境でその真価を発揮します。
kdb+は単なるデータベースではなく、強力なデータ分析・処理エンジンとしての側面も持っています。
Q言語とは?
Q言語は、このkdb+を操作するために開発されたプログラミング言語です。kdb+のデータベース機能へのアクセスはもちろん、データの加工、分析、アルゴリズムの実装など、kdb+上で行うほぼ全ての処理をQ言語で行います。
Q言語の設計には、A言語やK言語といった、より抽象的で数学的な配列処理言語の影響が見られます。そのため、一般的な手続き型言語(C++, Javaなど)やオブジェクト指向言語とはかなり異なる独特な特徴を持っています。
- 関数型プログラミング: 関数が第一級オブジェクトとして扱われ、高階関数(関数を引数にとったり、関数を返したりする関数)が多用されます。
- 配列指向プログラミング: スカラ値(単一の値)に対する操作が、自動的にリストや配列の全ての要素に対して適用されます。これにより、ループ処理などを明示的に記述することなく、簡潔に大量のデータを処理できます。
- APLの影響: 数学記号のような簡潔な単一文字または二文字の演算子が多く、非常に短いコードで複雑な処理を表現できます。
Q言語は、その簡潔さと強力な配列処理能力により、少量のコードで非常に高いパフォーマンスを発揮できるのが最大の魅力です。最初は難解に感じるかもしれませんが、慣れるとデータ処理の概念が変わり、より効率的な思考ができるようになるでしょう。
なぜkdb+とQ言語は重要なのか?
金融市場では、日々膨大な量の取引データが発生します。これらのデータをリアルタイムに近い速度で取り込み、分析し、迅速な意思決定に繋げることが競争優位性を確立する上で不可欠です。kdb+とQ言語は、この要求を満たすために生まれました。
- 速度: 何十億、何兆件もの時系列データから、特定の条件を満たすデータを抽出し、集計し、複雑な計算を瞬時に行う能力。
- 効率性: 少量のメモリで大量のデータを扱い、少ないコード量で複雑な分析ロジックを記述できる効率性。
- リアルタイム処理: 継続的に発生する新しいデータを取り込みながら、同時に過去データの分析や、リアルタイムでの条件判定を行う能力。
これらの理由から、kdb+とQ言語は、金融トレーディングシステム、リスク管理、市場データ分析、規制報告など、速度と効率が極めて重要視される分野で広く利用されています。
「base q」とは何か? – 本記事における定義
先述の通り、「base q」はQ言語の公式な用語ではありません。これは、kdb+やQ言語を学ぶ人々が、その基礎となる部分を指すためによく使う非公式な表現です。
例えば、他のプログラミング言語で「基本文法」「コアライブラリ」といった言葉で指されるような、プログラムを書く上で最初に身につけるべき要素群をイメージしていただけると良いでしょう。
本記事では、「base q」を以下のように定義し、解説を進めます。
「base q」とは、Q言語の最も基本的な構文、組み込み関数、データ型、データ構造(リスト、辞書、テーブル)、およびkdb+上でデータを扱うための基本的な操作(データの参照、更新、追加、削除など)の総称である。
つまり、「base q」をマスターすることは、Q言語の文法を理解し、基本的なデータ構造を使いこなし、kdb+データベースに対して最も基本的な操作を行う能力を身につけることと同義です。これは、より高度なデータ分析や複雑なシステム開発に進むための、まさに「土台(base)」となる部分です。
この土台がしっかりしていれば、その上にどんな複雑なアルゴリズムやデータ処理パイプラインを構築するにしても、迷うことなく効率的に作業を進めることができます。逆に、base qが曖昧なままだと、Q言語のコードを読んだり書いたりする際に常に引っかかりを感じることになるでしょう。
さあ、このbase qの世界へ飛び込んでいきましょう。
Q言語の実行環境
Q言語は通常、Qコンソールと呼ばれる対話型の環境で実行します。kdb+をインストールすると、このQコンソールが利用可能になります。
Qコンソールの起動
コマンドラインやターミナルを開き、q
と入力してEnterキーを押すだけで起動できます。
“`bash
$ q
KDB+ 4.0 2023.01.01 Copyright (C) 2023 Kx Systems
l64/ 8()
Welcome to Q! For more information visit www.kx.com/q and try .help
“`
上記のようなメッセージが表示されれば成功です。「q)」というプロンプトが表示されている状態になります。これがQコンソールです。
基本的な入力と出力
Qコンソールでは、「q)」プロンプトに対してQ言語のコードを入力し、Enterキーを押すと即座に評価されて結果が表示されます。
q
q)1+1
2
q)"hello", " world"
"hello world"
q)til 5
0 1 2 3 4
1+1
は数学的な計算です。結果は2
です。"hello", " world"
は文字列の結合です。結果は"hello world"
です。til 5
はQ言語の組み込み関数です。0から5未満の整数のリストを生成します。結果は0 1 2 3 4
です。
このように、Qコンソールは非常にインタラクティブであり、コードの挙動をすぐに確認しながら学習を進めるのに適しています。
コメント
コードの中に説明やメモを記述したい場合は、スラッシュ(/
)で始まる行はコメントとして扱われます。
q
q)/ This is a comment
q)1+2 / This is also a comment
3
Qコンソールの終了
Qコンソールを終了するには、\\
と入力してEnterキーを押します。
q
q)\\
$
以上がQコンソールの基本的な使い方です。これから紹介するコード例は、全てこのQコンソールで実行できます。
Q言語の基本的な要素:データ型
プログラミング言語において、データ型は非常に重要です。どのような種類のデータを扱えるのかを知ることは、その言語の理解の第一歩となります。Q言語は、高速なデータ処理に最適化された、様々なデータ型を持っています。
基本データ型
Q言語の基本データ型は多岐にわたります。それぞれに特定の用途と特徴があります。
型 | 文字コード | 符号 | 例 | 説明 |
---|---|---|---|---|
boolean | b | 0b , 1b , 0 , 1 |
真偽値 (0:偽, 1:真) | |
byte | x | 0x00 , 0xff |
8ビット符号なし整数 (0-255) | |
guid | g | 0g |
グローバル一意識別子 | |
integer | i | - |
1 , -10 , 0Ni |
32ビット符号付き整数 |
long | j | - |
10000000000j , 0Nj |
64ビット符号付き整数 (integerより大きい範囲) |
real | e | - |
1.2e , -3.14e , 0Ne |
32ビット浮動小数点数 (精度はfloatより低い) |
float | f | - |
1.2 , -3.14 , 0N |
64ビット浮動小数点数 (IEEE 754 double precision) |
char | c | "a" , "Z" |
単一文字 | |
symbol | s | 'apple , 'MSFT , ' |
高速比較・検索に使われる intern された文字列 | |
timestamp | p | - |
2023.10.27D10:30:00.123456789 |
タイムスタンプ (ナノ秒精度) |
timespan | n | - |
10:30:00.000000000 , 0Nn |
期間 (ナノ秒精度) |
datetime | z | - |
2023.10.27T10:30:00.123 |
日時 (ミリ秒精度, kdb+ v3.x 以前の標準) |
date | d | - |
2023.10.27 , 0Nd |
日付 |
time | t | - |
10:30:00.123 |
時刻 (ミリ秒精度, 日付は含まない) |
minute | u | - |
10:30 , 0Nu |
時刻 (分精度) |
second | v | - |
10:30:45 , 0Nv |
時刻 (秒精度) |
month | m | - |
2023.10 , 0Nm |
月 |
それぞれのデータ型について、もう少し詳しく見てみましょう。
数値型:
* boolean (b
): 真偽値を表します。0b
(false) と 1b
(true) の他に、数値の 0
と 1
もbooleanとして扱えます。
q
q)1b
1b
q)0b
0b
q)1
1
q)type 1
-6h / -6はinteger型
q)type 1b
-1h / -1はboolean型
* byte (x
): 1バイト(8ビット)の数値を扱います。主にバイナリデータやフラグなどに使われます。0x
の後に16進数で表現します。
q
q)0xff
0xff
q)0x0a
0x0a
q)type 0x0a
-4h / -4はbyte型
* integer (i
): 32ビット符号付き整数です。一般的な整数計算に使われます。
q
q)123
123
q)-456
-456
q)type 123
-6h
* long (j
): 64ビット符号付き整数です。integerよりも大きな値を扱う場合に使われます。数値の後ろに j
をつけます。
q
q)10000000000j
10000000000j
q)type 10000000000j
-7h / -7はlong型
* real (e
): 32ビット浮動小数点数です。数値の後ろに e
をつけます。floatよりも精度は低いですが、メモリ効率が良い場合があります。
q
q)3.14e
3.14e
q)type 3.14e
-8h / -8はreal型
* float (f
): 64ビット浮動小数点数です。より高精度な計算が必要な場合に標準的に使われます。小数点を含む数値はデフォルトでfloat型になります(末尾に何もつけない)。
q
q)3.1415926535
3.141593
q)type 3.1415926535
-9h / -9はfloat型
文字・文字列型:
* char (c
): 単一の文字です。二重引用符で囲みます。
q
q)"A"
"A"
q)type "A"
-10h / -10はchar型
* string: charのリストです。Q言語には独立したstring型はなく、charのリストとして扱われます。二重引用符で囲まれた複数の文字は、charのリストとして解釈されます。
q
q)"hello"
"hello"
q)type "hello"
10h / 10はcharのリスト型 (符号が正)
q)count "hello"
5 / リストなので要素数を数えられる
q)"hello"[0] / リストのようにインデックスでアクセスできる
"h"
* symbol (s
): 高速な比較と検索のために最適化されたデータ型です。一重引用符 '
で始まります。主にカテゴリデータや列名などに使われます。symbolは内部的には一意な整数値として管理されるため、文字列よりも比較処理が格段に高速です。
q
q)`apple
`apple
q)`MSFT`GOOG`AAPL / symbolのリスト
`MSFT`GOOG`AAPL
q)type `apple
-11h / -11はsymbol型
q)type `MSFT`GOOG`AAPL
11h / 11はsymbolのリスト型
時系列データ型:
kdb+が時系列データベースであるため、日付や時刻に関する専用のデータ型が豊富に用意されています。これらは特定のフォーマットで記述します。
* date (d
): 年月日を表します。 YYYY.MM.DD
形式で記述します。
q
q)2023.10.27
2023.10.27
q)type 2023.10.27
-14h / -14はdate型
* time (t
): 時分秒とミリ秒を表します。 HH:MM:SS.mil
形式で記述します。日付は含まれません。
q
q)10:30:00.123
10:30:00.123
q)type 10:30:00.123
-18h / -18はtime型
* datetime (z
): 日付と時刻(ミリ秒精度)を表します。 YYYY.MM.DDTHH:MM:SS.mil
形式で記述します。これはkdb+の古いバージョンでの標準的な日時型でした。
q
q)2023.10.27T10:30:00.123
2023.10.27T10:30:00.123
q)type 2023.10.27T10:30:00.123
-15h / -15はdatetime型
* timestamp (p
): 日付と時刻(ナノ秒精度)を表します。 YYYY.MM.DDTHH:MM:SS.nnnnnnnnn
形式で記述します。現在のkdb+で最も一般的な時系列データ型です。
q
q)2023.10.27D10:30:00.123456789
2023.10.27D10:30:00.123456789
q)type 2023.10.27D10:30:00.123456789
-16h / -16はtimestamp型
D
は日付と時刻の区切り文字です。
* timespan (n
): 期間(ナノ秒精度)を表します。 DDD:
もしくは HH:MM:SS.nnnnnnnnn
形式で記述します。時間の差分などを表現するのに使われます。
q
q)10:00:00.000000000
10:00:00.000000000
q)type 10:00:00.000000000
-17h / -17はtimespan型
q)23:59:59.999999999
23:59:59.999999999
* minute (u
), second (v
), month (m
): それぞれ分、秒、月単位の時系列データ型です。
q
q)10:30
10:30
q)type 10:30
-19h / -19はminute型
q)10:30:45
10:30:45
q)type 10:30:45
-20h / -20はsecond型
q)2023.10
2023.10
q)type 2023.10
-13h / -13はmonth型
特殊な値
各データ型には、「Null値」や無限大、非数といった特殊な値を表現する方法があります。これらはデータ欠損や計算不能な結果を示すためによく使われます。
-
Null: 各データ型のNull値は、その型の文字コードの前に
0N
をつけて表現します。0Nb
(boolean null)0Nx
(byte null)0Ng
(guid null)0Ni
(integer null)0Nj
(long null)0Ne
(real null)0Nf
(float null) – 通常0N
と書くことが多い0Nc
(char null)0Ns
(symbol null) – 通常''
と書くことが多い0Np
(timestamp null)0Nn
(timespan null)0Nz
(datetime null)0Nd
(date null)0Nt
(time null)0Nu
(minute null)0Nv
(second null)0Nm
(month null)
q
q)0Ni
0Ni
q)0N
0n / float null
q)''
'' / symbol null
q)0Nd
0Nd / date null
* Infinity: 数値型の無限大は0w
で表現します。負の無限大は-0w
です。
q
q)1 % 0
0w / Positive infinity (float)
q)-1 % 0
-0w / Negative infinity (float)
q)type 0w
-9h / float型
integerやlongの無限大も存在しますが、計算結果として出てくるのは主にfloatの無限大です。
* NaN (Not a Number): 非数、計算不能な結果を表します。float型にのみ存在し、0n
(Nullと同じ表記) で表現します。
q
q)0w - 0w
0n / Infinity minus infinity is NaN
q)type 0n
-9h / float型
型変換
Q言語では、異なるデータ型を相互に変換する組み込み関数が用意されています。最も一般的なのは !+
(cast) 演算子、または関数形式の !+
です。
q
q)`float$"123.45" / 文字列をfloat型に変換
123.45
q)`int$123.45 / float型をinteger型に変換 (小数点以下切り捨て)
123
q)`date$2023.10.27D10:30:00.123456789 / timestampをdateに変換
2023.10.27
q)`long$100
100j
また、文字列から特定の型に変換する際には、その型の文字コードを使った関数形式もよく使われます。
q
q)"s"$("MSFT";"GOOG") / 文字列のリストをsymbolのリストに変換
`MSFT`GOOG
q)"d"$"2023.10.27" / 文字列をdate型に変換
2023.10.27
q)"p"$"2023.10.27T10:30:00.000000000" / 文字列をtimestamp型に変換
2023.10.27D10:30:00.000000000
これらのデータ型は、Q言語で扱う全ての値の基本となります。それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
Q言語の基本的な要素:データ構造
Q言語は、スカラー値(単一の値)だけでなく、複数の値をまとめて扱うための強力なデータ構造を提供します。特に重要なのは「リスト」「辞書」「テーブル」の3つです。これらはbase qの中核を成す要素であり、kdb+でのデータ処理において頻繁に利用されます。
リスト(List)
リストは、順序付けられた要素の集まりです。Q言語では、ほぼ全ての操作がリスト(または配列)に対して効率的に行えるように設計されています。Q言語における「配列指向」とは、このリストに対する操作を指します。
リストの作成:
要素をセミコロン ;
で区切って括弧 ()
で囲むことでリストを作成できます。
q
q)(1; 2; 3; 4; 5) / integerのリスト
1 2 3 4 5
q)("apple"; "banana"; "cherry") / stringのリスト
"apple"
"banana"
"cherry"
q)(`MSFT; `GOOG; `AAPL) / symbolのリスト
`MSFT`GOOG`AAPL
q)(2023.10.27; 2023.10.28; 2023.10.29) / dateのリスト
2023.10.27 2023.10.28 2023.10.29
q)(1; `two; 3.0; "four") / 異なるデータ型の要素を持つことも可能 (Mixed List)
1
`two
3f
"four"
要素が全て同じデータ型の場合、Qはメモリ効率の良い均一なリスト(Atomic List)として扱います。異なるデータ型が混在する場合は、Mixed Listとなります。
リストの要素数:
リストの要素数は count
関数で取得できます。
q
q)count (1;2;3)
3
q)count `a`b`c`d`e
5
リストへのアクセス(インデックス参照):
リストの要素には、0から始まるインデックスを使ってアクセスします。角括弧 []
を使います。
q
q)fruits: ("apple"; "banana"; "cherry")
q)fruits[0] / 最初の要素 (インデックス0)
"apple"
q)fruits[1] / 2番目の要素
"banana"
q)fruits[2] / 3番目の要素
"cherry"
インデックスとしてリストを指定すると、複数の要素をまとめて取得できます(スライス)。
q
q)fruits[0 2] / インデックス0と2の要素を取得
"apple"
"cherry"
q)fruits[1 0 1] / インデックス1, 0, 1の要素を順番に取得
"banana"
"apple"
"banana"
インデックスにNull値を指定すると、対応する位置にNull値が入ったリストが返ります。
q)fruits[0 0N 2]
"apple"
"" / charのリストのNull
"cherry"
リストの結合:
カンマ ,
演算子を使ってリストを結合できます。
q
q)list1: (1; 2; 3)
q)list2: (4; 5; 6)
q)list1, list2
1 2 3 4 5 6
リストの要素への操作(アトム関数):
Q言語の強力な特徴の一つが「アトム関数」です。スカラ値に対して定義された関数の多くは、自動的にリストの各要素に対しても適用されます。
q
q)data: (10; 20; 30; 40; 50)
q)data + 5 / 各要素に5を加える
15 25 35 45 55
q)data * 2 / 各要素を2倍する
20 40 60 80 100
q)data > 25 / 各要素が25より大きいかを判定 (booleanのリストが返る)
01111b
これは、ループ処理を記述することなく、簡潔かつ高速にリスト全体に操作を適用できることを意味します。
辞書(Dictionary)
辞書は、キーと値のペアの集まりです。各キーは一意である必要があります。キーを使って対応する値にアクセスします。Q言語では、辞書はテーブルの基礎となります。
辞書の作成:
キーと値をセミコロン :
で区切り、複数のペアをカンマ ,
で区切って定義します。キーのリストと値のリストを :
でつなぐ方法もあります。
q
q)rates: `USDJPY`EURUSD`GBPUSD ! (149.50; 1.05; 1.22) / symbolをキー、floatを値
USDJPY| 149.5
EURUSD| 1.05
GBPUSD| 1.22
上記は keys
! values
という形式で辞書を作成しています。キーと値を直接 :
でつなぐ形式でも作成できます。
q
q)rates2: (`USDJPY:149.50; `EURUSD:1.05; `GBPUSD:1.22)
q)rates2
USDJPY| 149.5
EURUSD| 1.05
GBPUSD| 1.22
キーと値はそれぞれリストとして定義されます。
q
q)keys: `USDJPY`EURUSD`GBPUSD
q)values: (149.50; 1.05; 1.22)
q)dictionary: keys ! values
q)dictionary
USDJPY| 149.5
EURUSD| 1.05
GBPUSD| 1.22
辞書へのアクセス:
キーを使って対応する値にアクセスします。辞書名の後にキーを角括弧 []
で指定します。
q
q)rates[`USDJPY]
149.5
q)rates[`EURUSD]
1.05
キーのリストを指定すると、対応する値のリストが返ります。
q
q)rates[`USDJPY`GBPUSD]
149.5 1.22
辞書のキーと値:
辞書のキーは .k
を、値は .v
を使ってリストとして取得できます。
q
q)rates`.k
`USDJPY`EURUSD`GBPUSD
q)rates`.v
149.5 1.05 1.22
辞書の更新と追加:
既存のキーに新しい値を代入することで更新、新しいキーと値を代入することで追加ができます。
q
q)rates[`USDJPY]: 150.00 / 更新
q)rates[`CADJPY]: 110.00 / 追加
q)rates
USDJPY| 150
EURUSD| 1.05
GBPUSD| 1.22
CADJPY| 110
辞書は、関連する情報をまとめて管理したり、lookupテーブルとして利用したりするのに便利です。
テーブル(Table)
テーブルは、kdb+における主要なデータ構造です。リレーショナルデータベースのテーブルに似ていますが、Q言語では「辞書のリスト」として表現されます。各辞書が1行を表し、辞書のキーが列名、値がその行の各列の値に対応します。ただし、kdb+のテーブルは内部的には「列の辞書」として格納されており(カラム指向)、この内部構造が高速な処理を可能にしています。Q言語のレベルでは、「列の辞書」または「辞書のリスト」として捉えることができます。入門レベルでは「列の辞書」という捉え方が、特にテーブルの作成や操作において直感的です。
テーブルの作成:
列名をsymbolのリストとして、各列のデータをリストとして定義し、それらを辞書としてまとめたものを括弧 ()
で囲むことでインメモリテーブルを作成できます。列名のリストとデータのリストのリストを !
でつなぐのが一般的な方法です。
``q
MSFT
q)trade: ([] time:10:00:01.000+til 3; sym:GOOG
AAPL; price:150.0 2000.0 180.0; size:100 50 120)
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
[]
```
*は空の辞書を作成し、テーブル構造の開始を示します。
time: …
*は、
timeという列名(symbol)と、その列のデータ(timestampのリスト)のペアを定義しています。他の列も同様です。
;` で区切って並べます。
* 複数の列の定義をセミコロン
このように、テーブルは列名と対応するデータリストの辞書として作成されます。
テーブルの参照:
テーブル名を入力するだけで、テーブル全体が表示されます。
“`q
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 `AAPL 180 120
“`
テーブルの行数:
テーブルの行数は count
関数で取得できます。
q
q)count trade
3
テーブルの列名:
テーブルの列名は .c
を使ってsymbolのリストとして取得できます。
q)trade`.c
`time`sym`price`size
テーブルへのアクセス(列指定):
列名をsymbolとして角括弧 []
で指定すると、その列のデータをリストとして取得できます。
q)trade[`sym]
`MSFT`GOOG`AAPL
q)trade[`price]
150 2000 180f
複数の列名をリストで指定すると、それらの列で構成される新しいテーブルが返ります。
``q)trade[
sym`price]
sym price
MSFT 150
GOOG 2000
`AAPL 180
“`
テーブルへのアクセス(行指定):
リストのインデックス参照と同様に、行番号を整数リストで指定すると、対応する行で構成される新しいテーブルが返ります。
``q)trade[0] / 最初の行
MSFT
time | 10:00:01.000000000
sym |
price | 150f
size | 100
q)trade[0 2] / 最初の行と3番目の行
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
AAPL 180 120
10:00:03.000000000
“`
単一行を参照した場合、Qは辞書として返します。複数行の場合はテーブルとして返します。
テーブルへのアクセス(行・列指定):
行と列の両方を指定することもできます。辞書のリストとして捉えた場合の table[row_index][column_name]
のようにアクセスできます。
q
q)trade[0][`sym] / 最初の行のsym列の値
`MSFT
q)trade[1][`price] / 2番目の行のprice列の値
2000f
より一般的には、これはリレーショナル操作(select
文など)で行われます。
テーブルへのデータの追加 (insert):
insert
キーワードを使ってテーブルに新しい行を追加できます。
``q
trade values (10:00:04.000+til 1; `IBM; 140.0; 80)
q)insert into
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
``
insertinto
table_namevalues (value1; value2; ...);
の形式で使います。テーブル名はsymbolで指定します(この例ではインメモリテーブルなので、変数名をsymbol化したもの)。
後述の「kdb+における基本的なデータ操作」セクションでは、select
, update
, delete
といった、テーブルに対するより高度なリレーショナル操作を詳しく解説します。しかし、テーブルが「列の辞書」として構成されていること、そしてリストや辞書の操作の延長線上でテーブルを捉えられることが、base qの理解において非常に重要です。
Q言語の基本的な操作と構文
Q言語の基本的なデータ型とデータ構造を理解したところで、次はそれらを操作するための基本的な構文を見ていきましょう。変数、関数、制御構造、演算子など、プログラミング言語の基本的な要素です。
変数
Q言語で変数に値を代入するには、変数名の後にコロン :
と値を記述します。
q
q)x: 10 / integer型の変数xに10を代入
q)y: 20j / long型の変数yに20を代入
q)name: "Alice" / string型の変数nameに"Alice"を代入
q)syms: `MSFT`GOOG`AAPL / symbolのリストを変数symsに代入
変数名には、アルファベット、数字、アンダースコア _
を使えますが、数字で始めることはできません。Q言語の組み込み関数名やキーワードと同じ名前は避けるべきです。
変数の値を参照するには、変数名を入力します。
q
q)x
10
q)syms
`MSFT`GOOG`AAPL
代入された値は、その変数名がスコープ内で参照可能な限り保持されます。
関数
Q言語は関数型プログラミングの要素を強く持っています。関数は第一級オブジェクトであり、変数に代入したり、関数の引数として渡したり、関数から返したりすることができます。
無名関数(Lambda):
波括弧 {}
で囲むことで無名関数を作成できます。引数は x
, y
, z
といった特殊な変数名で受け取ります(最大3つまで)。
q
q){x+y} / 2つの引数を足し合わせる関数
q){x+y}[1;2] / 関数を呼び出す (引数は角括弧 [] で渡す)
3
q){x*x} / 引数を2乗する関数
q){x*x}[5]
25
引数が4つ以上必要な場合は、引数名を [a;b;c;d]
のように明示的にリストで指定します。
q
q){[a;b;c] a+b-c}
q){[a;b;c] a+b-c}[10;5;2]
13
名前付き関数:
無名関数を変数に代入することで、名前付き関数として利用できます。
q
q)add: {x+y} / addという名前で関数を定義
q)add[1;2]
3
q)square: {x*x} / squareという名前で関数を定義
q)square[5]
25
高階関数:
Q言語は高階関数を多用します。特に重要なのは、リスト操作のためのイテレータ(Each, Scan, Over)です。これらは、関数を引数として受け取り、リストの要素に対して繰り返し適用します。
-
Each (
'
または/:
): リストの各要素に関数を適用します。
q
q)data: (1; 2; 3; 4; 5)
q)square: {x*x}
q)square each data / dataの各要素に対してsquare関数を適用
1 4 9 16 25
q){x*x}/: data / `each` の代わりに `/:` を使うことも多い
1 4 9 16 25
q)neg each data / 各要素を負の数にする
-1 -2 -3 -4 -5
q)-/: data
-1 -2 -3 -4 -5
アトム関数と似ていますが、Eachは任意の関数(アトム関数でないものも含む)をリストの各要素に適用できます。 -
Scan (
\
): リストの要素に対して、関数を累積的に(左から右へ)適用し、途中結果のリストを返します。
q
q)data: (1; 2; 3; 4; 5)
q)+ \ data / 累積和 (1; 1+2; 1+2+3; ...)
1 3 6 10 15
q)* \ data / 累積積 (1; 1*2; 1*2*3; ...)
1 2 6 24 120 -
Over (
/
): リストの要素に対して、関数を累積的に適用し、最終結果のみを返します。Scanの最後の結果と同じです。
q
q)+ / data / 合計 (1+2+3+4+5)
15
q)* / data / 積 (1*2*3*4*5)
120
sum
,prd
といった組み込み関数も実際には+/
や*/
の糖衣構文(より書きやすいように提供された別名)です。
高階関数、特にEach, Scan, Overは、Q言語でのリスト処理の根幹をなすものであり、慣れると非常に強力なパターンとして利用できます。
条件分岐
Q言語には一般的な if-else
構造のようなものはなく、 if
関数を使って条件分岐を表現します。
q
q)if(condition; true_expression; false_expression)
condition
が真 (1b
) なら true_expression
が、偽 (0b
) なら false_expression
が評価され、その結果が返されます。
q
q)x: 10
q)if(x > 5; "x is greater than 5"; "x is not greater than 5")
"x is greater than 5"
q)y: 3
q)if(y > 5; "y is greater than 5"; "y is not greater than 5")
"y is not greater than 5"
true_expression
または false_expression
が省略された場合、その分岐が選択されても何も返されません(正確にはNullが返されることがありますが、意図的に利用することは少ないです)。
より複雑な条件分岐や多岐にわたる分岐には、辞書や関数リストと ?
(cond) 演算子を使う方法などもありますが、入門としては if
関数を理解しておけば十分です。
ループ
一般的なプログラミング言語にある for
ループや while
ループもQ言語にはありますが、Q言語では可能な限りループ処理を避け、配列指向のアプローチ(アトム関数、Eachなど)やリレーショナル操作 (select
) を使うことが推奨されます。これは、Q言語の内部処理がこれらの配列指向操作に最適化されているため、明示的なループよりもはるかに高速に処理できるからです。
しかし、ファイルの読み書きや外部システムとの連携など、一部の処理ではループがどうしても必要になる場合があります。
while ループ:
while
キーワードに続いて、条件式と実行する式を記述します。
q
q)i: 0; / Initialize loop counter
q)while[i < 5; (print i; i: i + 1)] / Loop while i is less than 5
0
1
2
3
4
while
ループは、条件が真の間、セミコロンで区切られた式のリストを実行します。最後の式の結果は通常無視されます。
repeat ループ:
特定の回数だけ処理を繰り返す repeat
ループもあります。
q
q)i: 0;
q)repeat[5; (print i; i: i + 1)] / Repeat 5 times
0
1
2
3
4
繰り返しになりますが、Q言語ではループはパフォーマンス上のボトルネックになりやすいため、可能な限り配列操作やリレーショナル操作で代替できないかを検討すべきです。
演算子
Q言語には様々な演算子があります。数学演算子、比較演算子、論理演算子などが基本的なものです。また、関数としても使える演算子も多くあります。
-
算術演算子:
+
(add),-
(subtract),*
(multiply),%
(divide),^
(power),neg
(negate)
q
q)10 + 5
15
q)10 * 5
50
q)10 % 3
3.333333
q)2 ^ 3
8
q)neg 10
-10
これらの演算子はアトム関数であり、リストに対しても適用されます。
q
q)(1 2 3) + 10
11 12 13
q)(1 2 3) + (10 20 30) / 要素ごとに加算
11 22 33 -
比較演算子:
<
(less than),>
(greater than),=
(equal),<=
(less than or equal),>=
(greater than or equal),<>
(not equal)
q
q)10 > 5
1b
q)10 = 5
0b
q)10 <> 5
1b
比較演算子もアトム関数です。
q
q)(10 20 30) > 15
011b
q)(10 20 30) = (10 20 30)
111b -
論理演算子:
&
(and),|
(or),not
(not)
q
q)1b & 0b
0b
q)1b | 0b
1b
q)not 1b
0b
論理演算子もアトム関数です。
q
q)(1b 0b 1b) & (1b 1b 0b) / 要素ごとにAND
100b -
集合演算子:
in
(element of),within
(range check)
q
q)3 in (1 2 3 4 5) / 3はリストに含まれるか?
1b
q)10 in (1 2 3 4 5)
0b
q)(10 15) within (10; 20) / 各要素が範囲 [10, 20) に含まれるか?
10b
within
は[min; max]
の範囲チェックを行います。 -
連結演算子:
,
(join) – リストを結合
q
q)(1 2), (3 4)
1 2 3 4 -
その他の重要な演算子/関数:
#
(count / take / drop): リストの要素数を数える、リストの先頭からN個を取る(take)、リストの先頭からN個を捨てる(drop)。コンテキストによって意味が変わる多義的な演算子です。
q
q)count (1 2 3) / 要素数
3
q)3 # (1 2 3 4 5) / 先頭から3つ取る
1 2 3
q)-2 # (1 2 3 4 5) / 末尾から2つ取る
4 5
q)3 # trade / 先頭から3行取る (テーブルに対しても使える)
time sym price size
--------------------------------------------------
10:00:01.000000000 `MSFT 150 100
10:00:02.000000000 `GOOG 2000 50
10:00:03.000000000 `AAPL 180 120
q)-2 # (1 2 3 4 5) / 先頭から2つ捨てる (drop)
3 4 5!
(key / signal / cast / group): これも非常に多義的な演算子です。辞書のキーとして使う、エラーを発生させる(signal)、型変換(cast)、そしてテーブル操作ではgroup byとして使われます。
q
q)`a`b ! (1 2) / 辞書を作成 (key)
a| 1
b| 2
q)! "Error message" / エラーを発生 (signal)
'Error message
q)`int$"123" / 型変換 (cast)
123
q)count trade!sym / sym列でグループ化して数を数える (group)
AAPL| 1
GOOG| 1
MSFT| 1?
(where / find / cond): これも多義的です。booleanリストをフィルタリングする(where)、リスト内の要素を検索する(find)、条件分岐(cond)。
q
q)data: (10; 20; 30; 40; 50)
q)where data > 25 / data>25 が真であるインデックスを返す
1 2 3 4
q)data[where data > 25] / そのインデックスを使ってフィルタリング
20 30 40 50
q)trade where trade[`price] > 170 / テーブルを行でフィルタリング
time sym price size
--------------------------------------------------
10:00:02.000000000 `GOOG 2000 50
10:00:03.000000000 `AAPL 180 120
q)`a`b`c ? `b / `b` はリスト `a`b`c` のどこにあるか? (find)
1
q)?(x>0; 1; -1) / 条件分岐 (cond - if関数に近い)
Q言語の演算子は非常に簡潔で多義的なため、最初は混乱するかもしれません。しかし、それぞれのコンテキストにおける意味を理解していくことが、Q言語の習得には不可欠です。
基本的な組み込み関数
Q言語には、データ操作や分析に役立つ多くの組み込み関数があります。ここでは、base qとして特に頻繁に使う関数をいくつか紹介します。
count
: リストやテーブルの要素数を返す。
q
q)count (1 2 3)
3
q)count trade
4sum
,avg
,min
,max
: 数値リストの合計、平均、最小値、最大値を計算する。
q
q)data: (10; 20; 30; 40; 50)
q)sum data
150
q)avg data
30f
q)min data
10
q)max data
50first
,last
: リストやテーブルの最初の要素/行、最後の要素/行を返す。
q
q)first (1 2 3 4 5)
1
q)last (1 2 3 4 5)
5
q)first trade
time| 10:00:01.000000000
sym | `MSFT
price| 150f
size| 100distinct
: リスト内の一意な要素のリストを返す。
q
q)distinct (1 2 2 3 1 4 3)
1 2 3 4
q)distinct trade[`sym]
`MSFT`GOOG`AAPL`IBM-
asc
,desc
: リストやテーブルを昇順、降順に並べ替える。
q
q)asc (5 2 8 1 9)
1 2 5 8 9
q)desc (5 2 8 1 9)
9 8 5 2 1
q)asc `trade by `price / price列でテーブルを昇順に並べ替え
time sym price size
--------------------------------------------------
10:00:04.000000000 `IBM 140 80
10:00:01.000000000 `MSFT 150 100
10:00:03.000000000 `AAPL 180 120
10:00:02.000000000 `GOOG 2000 50
テーブルの並べ替えでは、並べ替えるキーをsymbolで指定します。 -
key
: 辞書やテーブルのキー(列名)を返す。
q
q)key rates
`USDJPY`EURUSD`GBPUSD`CADJPY
q)key trade
`time`sym`price`size -
type
: 値の型を返す(数値コード)。
q
q)type 10
-6h
q)type "hello"
10h
q)type trade
98h / 98はテーブル型
これらの基本的な関数と演算子を組み合わせることで、様々なデータ処理を記述することができます。
kdb+における基本的なデータ操作(base qの応用)
Q言語のデータ構造、特にテーブルはkdb+データベースの中核です。base qを理解することは、このテーブルに対して効率的にデータを操作する能力を身につけることです。ここでは、SQLライクなQ言語のクエリ構文(select, update, delete, insert)を中心に解説します。これらはkdb+におけるデータ操作の最も基本的な方法です。
Q言語のクエリ構文は、SQLに慣れている人にとっては似ているように見えるかもしれませんが、Q言語独特の記法や考え方があります。基本形は以下の通りです。
q
select columns from table where condition group by grouping_column having aggregate_condition order by ordering_column
update column = value from table where condition
delete from table where condition
insert into table_name values (value1; value2; ...)
これらのキーワードは全て小文字で記述します。大文字小文字は区別されるため注意が必要です。
インメモリテーブル trade
を例に、これらの操作を見ていきましょう。
``q
MSFT
q)trade: ([] time:10:00:01.000+til 4; sym:GOOG
AAPL`IBM; price:150.0 2000.0 180.0 140.0; size:100 50 120 80)
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
“`
select文の詳細
select
は、テーブルからデータを抽出するための最も基本的なクエリです。SQLと比べて非常に柔軟で強力な構文を持っています。
基本的な構造:
q
select columns from table where condition
columns
: 抽出したい列を指定します。table
: データ元となるテーブルを指定します。condition
: 行を絞り込むための条件を指定します。
カラムの選択:
抽出したい列名をカンマ ,
またはセミコロン ;
で区切って指定します。複数の列を指定すると新しいテーブルが返ります。単一の列を指定するとリストが返ります。
“`q
q)select from trade / 全ての列を選択
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)select sym, price from trade / symとprice列を選択
sym price
MSFT 150
GOOG 2000
AAPL 180
IBM 140
q)select sym from trade / sym列のみを選択 (リストが返る)
MSFT
GOOGAAPL
IBM
``
新列名: 計算式` の形式で指定します。
抽出する際に列名を変更したり、計算結果を新しい列として追加したりすることもできます。計算結果を新しい列として追加する場合は、
“`q
q)select symbol:sym, value:pricesize from trade
symbol pricesize
MSFT 15000
GOOG 100000
AAPL 21600
IBM 11200
“`
条件指定 (where):
where
キーワードの後に、行を絞り込むための条件式を記述します。条件式には比較演算子や論理演算子を使います。複数の条件は and
(&
) や or
(|
) で組み合わせます。
``q
MSFT / sym列が`MSFTの行を抽出
q)select from trade where sym=
time sym price size
10:00:01.000000000 `MSFT 150 100
q)select from trade where price > 170
time sym price size
10:00:02.000000000 GOOG 2000 50
AAPL 180 120
10:00:03.000000000
q)select from trade where sym=GOOG or sym=
AAPL / symがGOOGまたは
AAPLの行を抽出
time sym price size
10:00:02.000000000 GOOG 2000 50
AAPL 180 120
10:00:03.000000000
q)select from trade where price > 100 and size < 100
time sym price size
10:00:02.000000000 GOOG 2000 50
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)select from trade where sym in GOOG
AAPL / symがGOOG
AAPLのリストに含まれる行を抽出
time sym price size
10:00:02.000000000 GOOG 2000 50
AAPL 180 120
10:00:03.000000000
``
where句内の条件式は、各行に対して評価され、結果が
1b` (真) の行のみが抽出されます。
集計関数とグループ化 (by):
by
キーワードを使うと、指定した列の値に基づいて行をグループ化し、各グループに対して集計関数(sum
, avg
, count
, min
, max
など)を適用できます。
“`q
q)select sum size by sym from trade / symごとにsizeの合計を計算
sym | size
—-| —–
AAPL| 120
GOOG| 50
IBM | 80
MSFT| 100
q)select count i by sym from trade / symごとに件数を計算 (iは行インデックスを表す特殊な変数)
sym | i
—-| —
AAPL| 1
GOOG| 1
IBM | 1
MSFT| 1
q)select avg price by date time from trade / time列をdate型にキャストしてdateごとにpriceの平均を計算
date | price
———-| ——
2023.10.27| 592.5
``
by句で複数の列を指定すると、それらの列の組み合わせでグループ化されます。集計関数は、
集計関数名 列名または
集計列名: 集計関数名 列名` の形式で指定します。
並べ替え (asc/desc):
抽出結果を特定の列で並べ替えるには、asc
(昇順) または desc
(降順) を使います。
“`q
q)select from trade order by price asc / price列で昇順に並べ替え
time sym price size
10:00:04.000000000 IBM 140 80
MSFT 150 100
10:00:01.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
q)select from trade order by size desc / size列で降順に並べ替え
time sym price size
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
MSFT 150 100
10:00:01.000000000
10:00:04.000000000 IBM 140 80
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
“`
結果の制限 (limit):
抽出する行数を制限するには、limit
または #
を使います。
“`q
q)3#select from trade / 先頭から3行
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
-N` を使うと末尾からN行を取得できます。
```
“`q
q)-2#select from trade / 末尾から2行
time sym price size
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
“`
select
文は非常に多機能であり、ここで紹介したのはその基本の一部です。しかし、これらの基本的な要素を組み合わせることで、多くの一般的なデータ抽出・分析ニーズに対応できます。
update文の詳細
update
は、テーブル内の既存のデータを更新するために使われます。
基本的な構造:
q
update column = value from table where condition
column = value
: 更新したい列と新しい値を指定します。複数の列を更新する場合はカンマ,
で区切ります。新しい値は、定数であることも、元の列の値に基づいた計算式であることもあります。table
: 更新対象のテーブルを指定します。condition
: 更新する行を絞り込むための条件を指定します。where
句を省略すると、テーブル全体のデータが更新されます(通常は避けるべきです)。
“`q
q)trade / 更新前のテーブル
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 150 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)update price: price * 1.1 from trade where sym=
MSFT / MSFTのpriceを10%増加
trade
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
GOOG 2000 50
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 180 120
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)update size: 0, price: 0.0 from trade where sym in
GOOGAAPL /
GOOGとAAPLのsizeとpriceを更新
trade
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
GOOG 0 0
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 0 0
IBM 140 80
10:00:04.000000000
`
trade
更新対象のテーブル名はsymbolで指定することに注意してください(`trade` ではなく)。update文は元のテーブルを直接変更します。
delete文の詳細
delete
は、テーブルから特定の行を削除するために使われます。
基本的な構造:
q
delete from table where condition
table
: 削除対象のテーブルを指定します。condition
: 削除する行を絞り込むための条件を指定します。where
句を省略すると、テーブル全体が削除されます(インメモリテーブルの場合は変数からテーブルが消えます)。
“`q
q)trade / 削除前のテーブル
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
GOOG 0 0
10:00:02.000000000
10:00:03.000000000 AAPL 0 0
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)delete from trade where price = 0 / priceが0の行を削除
trade
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
IBM 140 80
10:00:04.000000000
“`
delete文も元のテーブルを直接変更します。削除対象のテーブル名はsymbolで指定します。
insert文の詳細
insert
は、テーブルに新しい行を追加するために使われます。これは「テーブル(データ構造)」セクションで紹介した内容の繰り返しになりますが、クエリ構文としての形式です。
基本的な構造:
q
insert into table_name values (value1; value2; ...)
table_name
: データ追加先のテーブル名をsymbolで指定します。value1; value2; ...
: 追加する行の各列に対応する値を、テーブルの列の順序に合わせてセミコロンで区切ってリストで指定します。
“`q
q)trade / 追加前のテーブル
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
IBM 140 80
10:00:04.000000000
q)insert into trade values (10:00:05.000+til 1;
GOOG; 2050.0; 75) / 1行追加
trade
trade values (10:00:06.000+til 1;
q)insert intoAAPL; 190.0; 110) / 別の行追加
trade
q)trade
time sym price size
10:00:01.000000000 MSFT 165 100
IBM 140 80
10:00:04.000000000
10:00:05.000000000 GOOG 2050 75
AAPL 190 110
10:00:06.000000000
``
insert` 文は、データベースに接続しているkdb+セッション上のテーブルに対して行われます。ファイルとして永続化されたテーブル(ディスク上のテーブル)にinsertする場合は、少し異なる挙動になりますが、ここではインメモリテーブルを想定しています。
テーブルの結合 (joinの基礎)
複数のテーブルを結合してデータを組み合わせる操作も、kdb+の重要な機能です。Q言語にはいくつかの結合関数がありますが、ここでは最も基本的な左外部結合(Left Join)である lj
を簡単に紹介します。
例として、通貨ペアのリストを持つ別のテーブル quotes
を作成します。
q
q)quotes: ([] sym:`MSFT`GOOG`IBM; bid:164.9 2049.5 139.8; ask:165.1 2050.5 140.2)
q)quotes
sym | bid ask
----| ---------
MSFT| 164.9 165.1
GOOG| 2049.5 2050.5
IBM | 139.8 140.2
trade
テーブルと quotes
テーブルを、共通の列である sym
をキーとして結合してみましょう。
``q
sym xkey quotes / tradeテーブルにquotesテーブルをsymをキーとして左外部結合
q)trade lj
time sym price size bid ask
10:00:01.000000000 MSFT 165 100 164.9 165.1
IBM 140 80 139.8 140.2
10:00:04.000000000
10:00:05.000000000 GOOG 2050 75 2049.5 2050.5
AAPL 190 110 0N 0N
10:00:06.000000000
``
lj
*: 左外部結合を実行する関数です。
xkey quotes
*:
quotesテーブルを、そのキー列(ここでは
symをキーとして指定)でインデックス化します。これにより、高速なルックアップが可能になります。
trade lj key quotes
*:
tradeテーブルの各行に対して、その
sym値を使って
quotesテーブルから対応する行を探し、結合します。
tradeテーブルに存在する
symが
quotesテーブルに存在しない場合(例:
AAPL)、
quotesテーブルからの列 (
bid,
ask) にはNull値 (
0N`) が入ります。
テーブル結合は複雑なデータ分析の基本となる操作であり、lj
の他にも ij
(inner join), ej
(equi join), pj
(plus join) など、様々な結合関数が用意されています。xkey
のように、結合のパフォーマンスを向上させるためのテクニックも存在します。
ここで紹介した select
, update
, delete
, insert
、そして簡単な join
は、kdb+を使ってデータを操作する上での最も基本的な、まさに「base q」の応用例です。これらの構文と、前述のデータ型、データ構造、基本的な関数・演算子を組み合わせることで、大量の時系列データに対する様々な処理が可能になります。
base q(Q言語の基本)の特徴と利点
これまでに見てきたQ言語の基本的な要素や操作から、その特徴と利点が浮かび上がってきます。なぜQ言語が特定の分野でこれほど重宝されるのか、その理由をまとめてみましょう。
-
驚異的な簡潔性:
Q言語の最大の魅力の一つは、そのコードの簡潔さです。単一文字や二文字の演算子、配列指向のアプローチ、高階関数の利用により、他の言語では何十行、何百行とかかる処理を、数行、あるいは1行で記述できることが珍しくありません。- 例:リストの合計を計算する
- Q:
+/ data
またはsum data
- 他の言語: ループを使って要素を一つずつ足し合わせる
この簡潔さは、コードの記述量を減らすだけでなく、コードの意図を明確にし、素早く問題を解決するのに役立ちます。ただし、慣れるまではその記法が難解に感じられることもあります。
- Q:
- 例:リストの合計を計算する
-
圧倒的な高速性:
Q言語は、kdb+の内部構造であるカラム指向ストレージやインメモリ処理と密接に連携するように設計されています。配列指向の操作は、内部的には最適化された低レベルのコードに変換されて実行されるため、明示的なループなどよりもはるかに高速です。特に大量のデータに対する集計やフィルタリング、結合といった操作でその速度の優位性を発揮します。金融市場のリアルタイムデータを処理するような、速度がクリティカルなアプリケーションには不可欠な特性です。 -
データ型と操作の統一性:
Q言語では、スカラ値、リスト、辞書、テーブルといった様々なデータ構造が、多くの演算子や関数に対して統一的に扱えます。例えば、+
演算子はスカラ同士の加算、スカラとリストの加算(各要素への適用)、リスト同士の要素ごとの加算、さらにはテーブルの数値列に対する操作にも使えます。この統一性により、異なるレベルのデータ構造を扱うコードを自然に記述できます。 -
時系列データ処理に特化:
日付、時刻、タイムスタンプといった時系列データ型が豊富に用意されており、これらを効率的に扱うための組み込み関数(時間の差を計算する、指定した期間でデータを集計するなど)が多数存在します。これにより、時系列データの分析や加工が非常に直感的に行えます。 -
強力な集計・分析機能:
SQLライクなselect
文は、単なるデータ抽出だけでなく、強力な集計、グループ化、フィルタリング機能を持っています。さらに、Q言語の高階関数や配列操作と組み合わせることで、非常に複雑な分析ロジックも効率的に実装できます。 -
インタラクティブな開発:
Qコンソールによる対話型環境は、コードの断片をすぐに試したり、データを探索したりするのに非常に便利です。これにより、開発プロセスが高速化され、デバッグも容易になります。
これらの特徴が組み合わさることで、Q言語は大量の時系列データを高速かつ効率的に処理する必要がある領域で、非常に強力なツールとなっています。base qをしっかりと理解することは、これらの特徴を最大限に活かすための第一歩となります。
学習のステップとリソース
base qの基本を掴んだところで、今後の学習に役立つステップとリソースを紹介します。Q言語は独特な言語であるため、慣れるまでには練習が必要です。
-
Qコンソールで手を動かす:
この記事で紹介した全てのコード例を実際にQコンソールで実行してみてください。自分で値を変更したり、違う関数を使ってみたりしながら、挙動を確認することが最も重要です。 -
公式ドキュメントを読む:
Kx Systemsの公式ウェブサイトには、Q言語とkdb+に関する詳細なドキュメントがあります。最初は全てを理解するのが難しいかもしれませんが、特定のデータ型や関数の詳細を知りたいときに参照すると非常に役立ちます。特に、組み込み関数リファレンスは頻繁に使うことになります。 -
書籍やオンラインチュートリアルを活用する:
Q言語やkdb+に関する入門レベルから応用レベルまでの書籍やオンラインで公開されているチュートリアルがいくつか存在します。自分に合った教材を見つけて、体系的に学習を進めるのも良い方法です。 -
コミュニティに参加する:
Q言語やkdb+を使っている開発者コミュニティに参加することも有効です。質問をしたり、他の人のコードを見たりすることで、新たな発見や解決策が見つかることがあります。オンラインフォーラムやメーリングリストなどがあります。 -
実際に小さなプロジェクトに挑戦する:
簡単なデータセット(CSVファイルなど)をkdb+に読み込んで、select
文で分析したり、update
でデータを加工したりといった、具体的なタスクに挑戦してみましょう。実践を通じて学ぶのが最も効率的です。
Q言語の学習は、他の一般的な言語の経験があっても最初は少し戸惑うかもしれません。しかし、その独特の「配列指向」や「関数型」の考え方に慣れてくると、データ処理に対する新たな視点が開けるはずです。焦らず、楽しみながら学習を進めてください。
まとめ
本記事では、「base q」を「Q言語の基本的な構文、データ型、データ構造、およびkdb+でデータを扱う上での最も基本的な要素」と定義し、その使い方と特徴について詳細に解説しました。
- kdb+ は高速なインメモリ時系列データベースであり、Q言語 はそれを操作するための関数型・配列指向の言語です。
- Qコンソールは、コードを対話的に実行するための便利な環境です。
- Q言語には、数値型、文字型、時系列データ型など、様々な基本データ型があり、Null値や無限大といった特殊な値も扱えます。
- Q言語の主要なデータ構造は、順序付けられた要素の集まりであるリスト、キーと値のペアの集まりである辞書、そしてkdb+での主要なデータ格納形式であるテーブルです。
- 基本的な構文として、変数の代入 (
:
)、関数の定義と呼び出し ({}
と[]
)、高階関数(each
/:
、scan
\
、over
/
)、条件分岐 (if
)、基本的な演算子(+
,*
,=
,&
,in
など)を学びました。 - kdb+における基本的なデータ操作として、SQLライクなクエリ構文(
select
,update
,delete
,insert
)の使い方を、豊富な例とともに解説しました。特にselect
文は、データの抽出、フィルタリング、集計、グループ化など、データ分析の基礎となる強力なツールです。 - base q(Q言語の基本)の特徴として、その驚異的な簡潔性、圧倒的な高速性、データ型と操作の統一性、時系列データ処理への特化、強力な集計・分析機能、インタラクティブな開発環境といった利点を挙げました。
base qを理解することは、kdb+とQ言語を本格的に使いこなすための確固たる土台となります。最初は難しく感じられるかもしれませんが、繰り返し練習し、実際にコードを書いてみることで、その強力さと効率性を実感できるはずです。
この記事が、あなたのkdb+とQ言語の学習の出発点として、あるいは基本を再確認するためのリソースとして、役立つことを願っています。base qの世界は奥深く、学ぶべきことはまだたくさんありますが、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。
高速データ処理の世界へようこそ!
上記記事は、約5800語で構成されています。入門者向けに、各項目を詳細に、多くのコード例を交えながら解説することを試みました。kdb+/Q言語の全ての機能を網羅しているわけではありませんが、「base q」として定義した基本的な要素については詳しく解説しています。
Disclaimer:
kdb+とQ言語はKx Systems社の製品です。本記事はKx Systemsの公式ドキュメントや提供資料に基づいたものではなく、一般的な学習リソースや筆者の理解に基づいて記述されています。正確な情報については、必ずKx Systemsの公式ドキュメントを参照してください。特に、最新のバージョンにおける仕様や推奨されるコーディングスタイルは変更されている可能性があります。