Synology NASをもっと活用!おすすめアプリ徹底紹介 ~単なるストレージを超えた可能性を引き出す~
はじめに:Synology NASが秘める「単なるストレージ」以上の価値
現代において、デジタルデータは私たちの生活やビジネスの基盤となっています。写真、動画、文書、音楽、プログラム…これらの大切なデータを安全に保管し、いつでもどこでもアクセスできる環境は、もはや必須と言えるでしょう。かつてデータの保管場所といえば、パソコンの内蔵ハードディスクや外付けHDDが主流でしたが、それでは容量の制限やアクセス性の課題がありました。
そこで登場するのが、NAS(Network Attached Storage)です。NASはネットワークに接続して使用するストレージデバイスであり、複数のユーザーやデバイスから同時にアクセスできるという大きな利点があります。そして、NASの世界において、その多機能性と使いやすさから多くのユーザーに支持されているのがSynology(シノロジー)です。
Synology NASは、単にデータを保存する箱ではありません。それは、独自のオペレーティングシステムであるDSM(DiskStation Manager)を搭載した、言わば小さなサーバーコンピュータです。DSMは直感的で洗練されたユーザーインターフェースを提供し、様々な機能を追加するための「パッケージセンター」というアプリストアを備えています。このパッケージセンターから提供される豊富なアプリケーションこそが、Synology NASを「単なるストレージ」から、パーソナルクラウド、メディアサーバー、監視システム、バックアップステーション、さらには開発環境へと進化させる鍵となります。
本記事では、このSynology NASの可能性を最大限に引き出すために、DSMの「パッケージセンター」からインストールできるおすすめのアプリケーションを徹底的にご紹介します。ファイル管理からメディア活用、バックアップ、セキュリティ、そして応用的な使い方まで、幅広いカテゴリのアプリを取り上げ、それぞれの機能、メリット、活用方法を詳しく解説していきます。あなたのSynology NASが、まだ眠っている能力を発揮し、日々のデジタルライフやビジネスをより豊かで効率的なものに変えるヒントが、きっとここに見つかるはずです。
さあ、Synology NASの無限の可能性を一緒に探求しましょう。
なぜSynology NASのアプリが重要なのか? DSMとパッケージセンターの役割
Synology NASの心臓部とも言えるのが、ブラウザベースのオペレーティングシステムであるDSM (DiskStation Manager)です。DSMはまるでパソコンのOSのように動作し、直感的なグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を通じてNASの全ての機能を設定・管理できます。ファイル操作、ユーザー管理、ネットワーク設定など、NASの基本的な操作は全てDSM上で行います。
そして、DSMの最大の特長の一つが、機能拡張を可能にする「パッケージセンター」の存在です。パッケージセンターは、スマートフォンにおけるApp StoreやGoogle Playのような役割を果たします。ここからSynology公式やサードパーティが開発した様々なアプリケーション(パッケージ)をインストールすることで、NASに新たな機能を追加できるのです。
なぜアプリが重要なのでしょうか? それは、ユーザー一人ひとりのニーズや目的に合わせて、NASの機能を柔軟にカスタマイズできるからです。例えば、
- 写真や動画を一元管理し、家族と共有したい: メディア関連アプリをインストール
- パソコンやスマートフォンのデータを自動でバックアップしたい: バックアップアプリをインストール
- 自宅に監視カメラシステムを構築したい: 監視カメラアプリをインストール
- 外部から安全にファイルにアクセスしたい: リモートアクセス・ファイル共有アプリをインストール
- 特定のアプリケーションをサーバー上で動かしたい: 仮想化・コンテナアプリをインストール
このように、アプリをインストールすることで、Synology NASは単なるネットワークストレージを超え、個々のユーザーに最適化された多機能サーバーへと変貌します。パッケージセンターには、Synologyが提供する公式アプリだけでなく、人気のオープンソースソフトウェアなどを簡単にインストールできるパッケージも多数用意されており、その選択肢は非常に豊富です。
適切なアプリを選ぶことが、Synology NASを最大限に活用するための第一歩となります。次に、具体的なおすすめアプリをカテゴリ別に詳しく見ていきましょう。
カテゴリ別おすすめアプリ徹底紹介
Synology NASのパッケージセンターには、実に様々なアプリが登録されています。ここでは、特に多くのユーザーにとって有用性の高いアプリを、機能カテゴリごとに分けてご紹介します。
1. ファイル管理・共有アプリ:データのハブとしての基本機能
NASの最も基本的な役割は、ファイルの保管と共有です。これらのタスクをより効率的、安全に、そして便利に行うためのアプリをご紹介します。
1.1. File Station
- 概要: DSMに標準搭載されている、Webブラウザ上で動作するファイルマネージャーです。NAS上のファイルやフォルダを直感的に操作できます。
- 主な機能・特徴:
- ファイルのアップロード、ダウンロード、コピー、移動、削除、名称変更などの基本的なファイル操作。
- フォルダやファイルの共有リンク作成(パスワード保護や有効期限設定も可能)。
- ファイルやフォルダのプロパティ表示(アクセス権限、サイズなど)。
- ファイルの検索機能。
- ドラッグ&ドロップによる簡単なファイル操作。
- 他のNASやクラウドサービス(Google Drive, Dropboxなど)をマウントして、File Stationから直接アクセス・操作。
- なぜおすすめか(メリット):
- NASのファイルにブラウザ経由でどこからでもアクセスできる(QuickConnect設定時)。
- 直感的な操作感で、パソコンのファイルエクスプローラーのように使える。
- 共有リンク機能で、大容量ファイルをメールに添付することなく簡単に共有できる。
- 複数のストレージサービスを一元管理できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- DSMにログインし、デスクトップにあるFile Stationアイコンをクリックするだけで起動します。
- 左側のナビゲーションペインでフォルダを選択し、右側のペインでファイルを表示・操作します。
- ファイルを右クリックすると、ダウンロード、共有、コピーなどの操作メニューが表示されます。
- 外部ストレージをマウントするには、「ツール」→「リモート接続」または「クラウドサービス」から設定します。
- 活用例:
- 外出先から自宅のNASにアクセスし、必要な書類や写真を取り出す。
- 顧客や友人に大容量の資料や写真を安全に共有する。
- 複数のクラウドストレージサービスに散らばったファイルをNASに集約して整理する。
1.2. Synology Drive Server
- 概要: Synology版のDropboxやGoogle Driveとも言えるパーソナルクラウドサービスを構築できるアプリです。PC、スマートフォン、タブレット間でファイルを自動同期・共有し、いつでも最新のファイルにアクセスできます。
- 主な機能・特徴:
- ファイル同期: 指定したフォルダ内のファイルを、接続されたデバイス間で自動的に同期します。
- ファイル共有: フォルダやファイルを他のユーザーと共有し、共同作業を効率化できます。
- バージョン管理: ファイルの変更履歴を複数世代保存し、誤って上書き・削除した場合でも以前のバージョンに戻すことができます。
- オンデマンド同期: ファイルをダウンロードせずに、エクスプローラー(Windows)やFinder(macOS)上に表示させ、必要な時にだけダウンロードすることでストレージ容量を節約できます(Drive Client機能)。
- リアルタイムバックアップ: PC上の指定フォルダをリアルタイムでNASにバックアップできます。
- Synology Drive Client: PCやMacにインストールして、NASと双方向または単方向の同期、バックアップを設定します。
- Synology Drive Mobile: スマートフォン・タブレット用アプリ。どこからでもファイルにアクセス・閲覧・アップロード・共有できます。
- なぜおすすめか(メリット):
- 自分専用のセキュアなクラウドストレージを構築できる。容量はNASのストレージ容量に依存するため、ほとんど無限に近い。
- 主要OS(Windows, macOS, Linux, iOS, Android)に対応しており、デバイス間の連携がスムーズ。
- 強力なバージョン管理機能により、データの安全性が高い。
- オンラインストレージの月額費用を削減できる。
- チーム内でのファイル共有や共同作業が容易になる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからSynology Drive Serverをインストールします。
- インストール後、Synology Drive管理コンソールで同期する共有フォルダなどを設定します。
- 同期したいPCやMacにはSynology Drive Clientをインストールし、NASのIPアドレスまたはQuickConnect IDを入力して接続設定を行います。
- スマートフォンにはSynology Driveアプリをインストールします。
- 同期フォルダや共有フォルダにファイルを入れるだけで、自動的に同期・共有が開始されます。
- 活用例:
- 仕事の書類をSynology Driveフォルダに入れ、自宅PC、会社のPC、スマートフォン間で常に最新の状態を同期する。
- 家族やチームと共有フォルダを設定し、写真や資料を簡単に共有・共同編集する。
- PCの重要なフォルダをSynology Drive Clientでリアルタイムバックアップし、万が一のデータ損失に備える。
2. バックアップ・同期アプリ:大切なデータを守る砦
データの損失は、計り知れない損害をもたらす可能性があります。Synology NASは、データのバックアップとリカバリのための強力なツールを提供しています。
2.1. Hyper Backup
- 概要: Synology NAS上のデータ(共有フォルダ、アプリケーション設定など)を、様々な場所へ多世代バックアップするための統合バックアップソリューションです。
- 主な機能・特徴:
- 多様なバックアップ先:
- 外部USBドライブ
- リモートSynology NAS (Hyper Backup Vault)
- rsync互換サーバー
- クラウドストレージサービス(Synology C2 Storage, Amazon S3, Google Drive, Microsoft Azure, Dropboxなど多数)
- 増分バックアップ: 初回のみフルバックアップを行い、以降は変更されたデータのみをバックアップするため、効率的かつ高速です。
- 多世代バックアップ: 複数のバックアップ世代を保存し、特定の時点の状態にデータを復元できます。必要に応じて世代数の上限を設定できます。
- データ重複排除: バックアップデータ内の重複を排除し、ストレージ容量を節約します。
- データ圧縮: バックアップデータを圧縮して、さらに容量を節約します。
- 暗号化: バックアップデータを暗号化することで、プライバシーとセキュリティを保護します。
- アプリケーションバックアップ: DSMの設定や一部のアプリケーション(Drive, Photo Station, Video Stationなど)の設定やデータをバックアップできます。
- バックアップスケジューリング: 定期的な自動バックアップを設定できます。
- バックアップ Explorer: バックアップ世代をブラウズし、個別のファイルやフォルダを復元できます。
- 多様なバックアップ先:
- なぜおすすめか(メリット):
- Synology NASのデータを安全に守るための最も基本的なアプリ。
- オンプレミスからクラウドまで、多様なバックアップ先を選べる柔軟性。
- 効率的な増分バックアップと重複排除により、バックアップ時間と容量を大幅に削減。
- 多世代管理により、過去の任意の時点にデータを復元できる安心感。
- 簡単なウィザード形式でバックアップタスクを設定できる使いやすさ。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからHyper Backupをインストールします。
- Hyper Backupを開き、「作成」→「データバックアップタスク」を選択します。
- バックアップ先(外部USB、リモートNAS、クラウドなど)を選択し、接続情報を入力します。
- バックアップしたい共有フォルダやアプリケーションを選択します。
- バックアップのスケジュール、世代管理設定、暗号化などを設定します。
- 「完了」で設定完了。手動でバックアップを開始するか、スケジュールに従って自動実行されます。
- 復元は「復元」ボタンから、タスク全体またはファイル単位で行えます。
- 活用例:
- 毎日夜中にSynology NASの全データを外部USBドライブに自動バックアップする。
- 重要な業務データを、Synology C2 Storageのようなオフサイトのクラウドにバックアップし、災害対策とする。
- 誤って削除・変更してしまったファイルを、Hyper Backup Explorerを使って過去の世代から復元する。
2.2. Snapshot Replication
- 概要: Btrfsファイルシステムを利用しているSynology NASで利用できる、高速かつ容量効率の高いスナップショットとレプリケーション(複製)を実現するアプリです。ランサムウェア対策や迅速なデータ復旧に非常に有効です。
- 主な機能・特徴:
- ポイントインタイムスナップショット: 特定の瞬間の共有フォルダやiSCSI LUNの状態を非常に短時間で「撮影」できます。ファイルシステムのメタデータのみを記録するため、容量消費が少なく、作成も高速です。
- スケジュール設定: スナップショットを自動的に作成する頻度(最小5分間隔)や保持期間を設定できます。
- レプリケーション: 作成したスナップショットを、別のSynology NASに複製できます。これにより、地理的に離れた場所へのDR(災害復旧)対策が可能です。
- 即時復旧: スナップショットから共有フォルダやiSCSI LUN全体を、ほぼ瞬時に以前の状態に戻せます。ファイル単位での復旧も可能です。
- 改変防止(Immutable Snapshots): 特定のスナップショットを一定期間ロックし、改変や削除ができないように設定できます。ランサムウェアによるスナップショットの削除を防ぐのに有効です。
- なぜおすすめか(メリット):
- ランサムウェアや誤削除からの復旧速度が、Hyper Backupなどと比較して圧倒的に速い。
- スナップショットの作成が非常に高速で、システムパフォーマンスへの影響が少ない。
- スナップショット自体の容量消費が少ない(変更されたブロックのみを記録するため)。
- リアルタイムに近い頻度(5分ごとなど)で保護ポイントを作成できる。
- リモートへのレプリケーション機能により、強力なDRサイトを構築できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- 重要: Snapshot ReplicationはBtrfsファイルシステムを使用しているボリュームでのみ利用可能です。ext4ボリュームでは使用できません。購入時にBtrfsを選択するか、後からBtrfsボリュームを作成する必要があります。
- パッケージセンターからSnapshot Replicationをインストールします。
- アプリを開き、保護したい共有フォルダまたはiSCSI LUNを選択します。
- 「設定」から、スナップショットのスケジュール(頻度、保持ポリシー)を設定します。
- 必要に応じて、「レプリケーション」タブからレプリケーション先となる別のSynology NASを設定します。
- 復元は「復元」タブから、復元したいスナップショット世代を選択し、フォルダ全体またはファイル単位で実行します。
- 活用例:
- 重要なファイルサーバーとして利用している共有フォルダに、5分間隔でスナップショットを作成。万が一ランサムウェアに感染しても、感染直前の状態に素早く復旧する。
- 業務システムが使用するiSCSI LUNのスナップショットを、別の拠点にあるSynology NASにレプリケーションし、本社のシステムがダウンしても迅速にサービスを継続できるようにする。
- 誤ってファイルを上書き・削除してしまった際に、ユーザー自身がSynology Drive ClientやWindowsの以前のバージョン機能を使って、スナップショットから簡単に復元できるようにする(設定が必要)。
3. メディアサーバーアプリ:エンターテイメントの中心地へ
Synology NASは、あなたのデジタルメディアライブラリを管理し、家中の様々なデバイスにストリーミングするための優れたプラットフォームです。
3.1. Synology Photos
- 概要: DSM 7.0以降で提供される、Synologyの次世代フォト管理アプリです。写真と動画を効率的に整理、閲覧、共有できます。旧Photo StationとMomentsの機能を統合・強化したアプリです。
- 主な機能・特徴:
- 一元管理: パソコンやスマートフォンなど、様々なデバイスからアップロードした写真・動画を一箇所にまとめて管理。
- 自動整理:
- アップロード元デバイス(「パーソナルスペース」や「共有スペース」)やフォルダ構造による整理。
- 撮影日時、撮影場所(GPS情報)、人物(顔認識)、被写体(AI物体認識)による自動分類・アルバム作成。
- 高機能ビューア: タイムライン表示、地図表示、詳細情報表示など。
- 共有機能: 特定のユーザーやグループとの共有、パスワード付き公開共有リンク作成。
- スマートフォン連携: iOS/Android用Synology Photosアプリによる自動バックアップ、オフライン表示、写真閲覧・共有。
- 顔認識・物体認識: AIによる高度な認識機能で、特定の人物や被写体が含まれる写真を素早く見つける。
- タイムライン表示: 撮影日時に基づいた直感的なブラウジング。
- なぜおすすめか(メリット):
- Googleフォトのような感覚で、自分専用のフォトクラウドを構築できる。
- 容量制限を気にせず、すべての写真・動画をオリジナル品質で保存できる。
- AIによる強力な自動整理機能で、大量の写真の中から目的のものを簡単に見つけ出せる。
- 家族や友人との写真共有が非常に簡単かつセキュアに行える。
- スマートフォンの写真自動バックアップ機能は、大切な思い出を守るのに非常に便利。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからSynology Photosをインストールします。
- DSMで、Synology Photosが使用する共有フォルダ(通常は
/photo
または指定したフォルダ)に写真や動画をアップロードします。File Stationやネットワークドライブとして接続してコピーでもOKです。 - または、PCにSynology Drive Clientをインストールし、写真フォルダを同期設定するか、スマートフォンにSynology Photosアプリをインストールし、「写真バックアップ」機能を有効にします。
- DSMのSynology Photosアプリを開くと、アップロードされた写真が自動的に整理・表示されます。
- 左側のメニューから、タイムライン、アルバム、人物、被写体などで絞り込めます。
- 共有したい写真やアルバムを選択し、「共有」ボタンから設定します。
- 活用例:
- スマートフォンで撮った写真を自動的にNASにバックアップし、スマホの容量を節約する。
- 旅行やイベントで撮った写真をSynology Photosにアップロードし、AIで人物ごとに自動分類されたアルバムを家族と共有する。
- 膨大な写真ライブラリの中から、特定の被写体(例:猫、車)が写っている写真を素早く検索する。
3.2. Video Station
- 概要: Synology NASを本格的な動画ライブラリ&ストリーミングサーバーにするためのアプリです。映画やドラマなどの動画ファイルを整理し、様々なデバイスで視聴できます。
- 主な機能・特徴:
- 動画ライブラリ管理: フォルダ内の動画ファイルをスキャンし、ポスターアート、キャスト、あらすじなどの情報を自動的に取得・整理します(IMDbなどのオンラインデータベースと連携)。
- カテゴリ分類: 映画、TV番組、ホームビデオなどのカテゴリに自動または手動で分類。
- オンライン情報取得: 動画ファイル名をもとに、関連情報を自動的にインターネットから取得して表示(情報が正確でない場合も手動で修正可能)。
- ストリーミング: NASに保存された動画を、Webブラウザ、スマートフォン/タブレット用アプリ(DS video)、スマートTV、ゲーム機、メディアプレーヤーなど様々なデバイスにストリーミングします。
- トランスコーディング: デバイスがネイティブで対応していない形式の動画を、視聴デバイスに合わせてリアルタイムで変換(トランスコーディング)してストリーミングします。NASのCPU性能に依存します。
- 字幕対応: 字幕ファイルを自動認識または手動で追加して表示。
- 視聴履歴管理: どこまで視聴したかを記録。
- なぜおすすめか(メリット):
- DVDやBlu-rayからリッピングした動画や、ダウンロードした動画ファイルを一箇所にまとめて、見やすいライブラリ形式で管理できる。
- リビングのスマートTVから、寝室のタブレットから、外出先のスマートフォンから、いつでも好きな時に動画を楽しめる。
- トランスコーディング機能により、再生デバイスを気にせず多様な形式の動画を視聴できる。
- オンラインデータベース連携で見栄えの良い動画ライブラリが自動生成される。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからVideo Stationをインストールします。
- DSMで、Video Stationが動画ライブラリとして使用する共有フォルダ(例:
/video
)を設定します。 - 設定したフォルダに動画ファイルを保存します。
- Video Stationを開き、「設定」→「ライブラリ」タブで、動画フォルダのスキャン設定(カテゴリ分けなど)を行います。スキャンが完了すると、動画情報が自動的に取得・表示されます。
- 視聴は、WebブラウザでVideo Stationを開くか、スマートフォンやタブレットにDS videoアプリをインストールして行います。他のデバイスからはDLNA/UPnP経由でMedia Serverアプリと連携して視聴することも可能です。
- 活用例:
- 自宅でコレクションしている映画やドラマをNASに保存し、リビングのスマートTVでソファに寝転がりながらリモコンで簡単に選んで視聴する。
- 通勤中にスマートフォンで、Video Stationからストリーミングして前夜の続きのドラマを見る。
- 子供に見せるホームビデオをNASにまとめておき、タブレットでいつでも見られるようにしておく。
3.3. Audio Station
- 概要: Synology NASを音楽ライブラリ&ストリーミングサーバーにするためのアプリです。音楽ファイルを一元管理し、様々なデバイスで再生できます。
- 主な機能・特徴:
- 音楽ライブラリ管理: アルバム、アーティスト、ジャンルなどで音楽ファイルを自動または手動で整理。
- メタデータ対応: MP3タグなどのメタデータ(曲名、アーティスト名、アルバム名、ジャケット写真など)を読み込み表示。
- プレイリスト作成: 好みの曲を集めたプレイリストを作成。
- ストリーミング: Webブラウザ、スマートフォン/タブレット用アプリ(DS audio)、DLNA/UPnP対応オーディオ機器、AirPlay対応デバイスなどへ音楽をストリーミング。
- インターネットラジオ: インターネットラジオ局の追加・再生。
- 歌詞表示: 音楽ファイルに埋め込まれた歌詞や、インターネットからの歌詞情報を表示(対応形式による)。
- なぜおすすめか(メリット):
- CDから取り込んだ音楽ファイルやダウンロードした音楽を一箇所にまとめて管理できる。
- 家の中の様々なオーディオ機器やスマートフォンから、NASに保存された音楽を自由に楽しめる。
- お気に入りの曲を簡単に整理・再生できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからAudio Stationをインストールします。
- DSMで、Audio Stationが音楽ライブラリとして使用する共有フォルダ(例:
/music
)を設定します。 - 設定したフォルダに音楽ファイルを保存します。
- Audio Stationを開くと、音楽ファイルがスキャンされ、アルバムやアーティストごとに整理されて表示されます。
- 再生は、WebブラウザでAudio Stationを開くか、スマートフォンやタブレットにDS audioアプリをインストールして行います。DLNA/UPnP対応機器からはMedia Serverアプリ経由でアクセスできます。
- 活用例:
- これまでのCDコレクションを全てNASに取り込み、スマートフォンからDS audioアプリを使ってBluetoothスピーカーで再生する。
- 自宅のPCで作成したプレイリストを、リビングのネットワークオーディオプレイヤーから再生する。
- 外出先からスマートフォンでDS audioアプリを使って、NASの音楽ライブラリから好きな曲を選んで聴く。
3.4. Media Server (DLNA/UPnP)
- 概要: NASをDLNA/UPnPメディアサーバーとして機能させるアプリです。これにより、DLNA対応のスマートTV、ゲーム機(PS4/PS5, Xboxなど)、ネットワークメディアプレイヤーなどからNAS内のメディアファイル(動画、音楽、写真)にアクセスできるようになります。
- 主な機能・特徴:
- DLNA/UPnPプロトコルに対応。
- NAS上の特定の共有フォルダをメディアライブラリとして共有。
- 対応ファイル形式であれば、接続されたデバイスで直接再生可能。
- 基本的なフォルダ表示によるメディア参照。
- なぜおすすめか(メリット):
- 特別なアプリをインストールすることなく、自宅の様々なDLNA対応デバイスからNASのメディアにアクセスできる。
- Video StationやAudio Station、Synology PhotosなどのSynology純正アプリがないデバイスからもメディアを視聴できる。
- 設定が非常にシンプル。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからMedia Serverをインストールします。
- インストール後、Media Serverの設定画面で、メディアライブラリとして公開する共有フォルダを選択します(デフォルトで
/video
,/music
,/photo
が設定されていることが多い)。 - 必要に応じて、トランスコーディング設定(対応NASモデルのみ)やDLNAクライアントのデバイスリスト設定などを行います。
- 設定が完了すると、同じネットワーク上のDLNA対応デバイスからNAS(Media Serverとして認識される)が見えるようになり、メディアファイルにアクセスできます。
- 活用例:
- リビングのスマートTVから直接NASにアクセスし、保存しているホームビデオを視聴する。
- PS5からNASにアクセスし、ゲーム中にBGMとしてNASの音楽を再生する。
- DLNA対応のネットワークオーディオプレイヤーでNASのハイレゾ音源を再生する。
4. 監視カメラアプリ:ホームセキュリティの要
Synology NASは、専用のソフトウェア「Surveillance Station」をインストールすることで、高度なネットワーク監視カメラシステムの中核を担うことができます。
4. Surveillance Station
- 概要: IPカメラを接続して、映像の録画、ライブビュー、再生、監視イベントの管理などを行うための総合的な監視システムソフトウェアです。
- 主な機能・特徴:
- 幅広いカメラ対応: 8000種類以上のIPカメラモデルに対応(ONVIF対応カメラも含む)。
- ライブビュー: 複数のカメラ映像を同時にリアルタイムで表示。レイアウトをカスタマイズ可能。
- 録画機能: 常時録画、モーション検知録画、スケジュール録画、手動録画など多様な録画モード。
- スマートモーション検知: カメラ側の検知だけでなく、Surveillance Station側での高度なモーション検知設定。
- 再生機能: タイムライン表示やイベント検索による効率的な録画映像再生。高速再生やスロー再生、コマ送りなども可能。
- イベント通知: 動きやセンサー反応などのイベント発生時に、メール、SMS、プッシュ通知(DS camアプリ)などでアラートを送信。
- マップ統合: フロアマップ上にカメラ配置を表示し、直感的に監視・操作。
- モバイルアクセス: iOS/Android用DS camアプリで、どこからでもライブビューの視聴、録画映像の再生、イベント通知の受信が可能。
- フェイルオーバー: 複数台のSynology NASを連携させ、録画サーバーの冗長化を実現(高度な設定)。
- アナリティクス: 人数カウント、侵入検知、置き去り/持ち去り検知などの高度な映像分析機能(一部ライセンスが必要な場合や、特定のNASモデル、カメラ機能に依存)。
- なぜおすすめか(メリット):
- 家庭や小規模オフィスに、本格的な監視システムを手軽に構築できる。
- 録画映像をローカルのNASに保存するため、プライバシーが保護されやすい。
- 豊富な機能と高い拡張性。後からカメラを追加したり、システムをスケールアップしたりしやすい。
- 無料のカメラライセンスが通常2つ付属(モデルによる)。追加ライセンスの購入でカメラ数を増やせる。
- スマートフォンアプリDS camにより、外出先からでも自宅やオフィスの状況を確認できる安心感。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからSurveillance Stationをインストールします。
- Surveillance Stationを開き、「IPカメラ」アプリからカメラを追加します。カメラのメーカー、モデル、IPアドレス、ユーザー名、パスワードなどを入力します。
- カメラが追加されたら、「録画」アプリで録画設定(録画モード、スケジュールなど)を行います。
- 「ライブビュー」アプリで接続されたカメラの映像を確認できます。
- スマートフォンにDS camアプリをインストールし、NASのQuickConnect IDまたはIPアドレスを入力して接続設定を行うと、モバイルデバイスからアクセスできるようになります。
- 活用例:
- 自宅の玄関や庭にIPカメラを設置し、Surveillance Stationで録画。留守中の防犯対策とする。
- ペットの様子を外出先からDS camアプリで確認する。
- 小規模オフィスの入口や倉庫にカメラを設置し、セキュリティ監視と従業員の入退室管理を行う。
5. 生産性・コラボレーションアプリ:NASをワークスペースに
Synology NASは、ファイル共有だけでなく、ドキュメント作成、スケジュール管理、ノート作成など、ビジネスや個人の生産性を向上させるための様々なツールも提供しています。
5.1. Synology Office
- 概要: Synology版のGoogle Workspace(旧G Suite)やMicrosoft 365とも言える、ウェブベースのオフィススイートです。ドキュメント、スプレッドシート、スライド(プレゼンテーション)をブラウザ上で作成・編集し、他のユーザーとリアルタイムで共同作業できます。
- 主な機能・特徴:
- Synology Document: テキストドキュメント作成・編集。
- Synology Spreadsheet: スプレッドシート作成・編集。
- Synology Slides: プレゼンテーション作成・編集。
- リアルタイム共同編集: 複数のユーザーが同時に同じファイルを編集できます。
- バージョン履歴: 編集履歴が自動的に保存され、以前の状態に戻すことができます。
- コメント機能: ファイルにコメントを付けて共同作業を促進。
- 他のOffice形式との互換性: Microsoft Officeファイル(.docx, .xlsx, .pptx)やOpenDocumentファイル(.odt, .ods, .odp)のインポート・エクスポートに対応。
- ファイル共有: 他のユーザーやグループとファイルを共有し、アクセス権限を設定できます。
- なぜおすすめか(メリット):
- インターネット上のクラウドサービスに依存せず、自社のNAS内でセキュアにドキュメントを共同編集できる。
- 月額費用がかからない(NAS購入費用のみ)。
- Microsoft OfficeやGoogle Workspaceにある基本的な機能を備えている。
- チームや家族との共同作業が効率化される。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからSynology Officeをインストールします(依存関係にあるSynology Application Serviceなども一緒にインストールされます)。
- インストール後、DSMのメニューからSynology Officeを開きます。
- 「新規作成」ボタンから、ドキュメント、スプレッドシート、スライドを作成できます。
- 作成したファイルはSynology Driveのフォルダに保存され、Synology DriveやFile Stationから管理できます。
- ファイルを右クリックして「共有」を選択すると、他のSynology NASユーザーと共同編集するために共有設定ができます。
- 活用例:
- チームでプロジェクトの企画書を同時に編集する。
- 家族で旅行のしおりを共同で作成する。
- 会議中に議事録をSynology Documentで共同でリアルタイムに作成する。
5.2. Note Station
- 概要: 多機能なウェブベースのノート作成・管理アプリです。アイデアや情報を記録し、整理、共有できます。
- 主な機能・特徴:
- リッチテキスト編集: テキストだけでなく、画像、添付ファイル、チェックリスト、コードブロック、表などを挿入可能。
- ノートブックとタグ: ノートをノートブックで分類し、タグで横断的に整理。
- ウェブクリッパー: Webブラウザの拡張機能を使って、閲覧中のウェブページ全体または一部をNote Stationに保存。
- タスク管理: ノートにタスクを追加し、期日や優先度を設定して管理。
- 暗号化: 機密性の高いノートは個別に暗号化可能。
- 共有: ノートやノートブックを他のユーザーと共有。
- エクスポート: ノートをHTML、PDF、Synology Archive形式などでエクスポート。
- モバイル連携: DS noteアプリ(iOS/Android)で、どこからでもノートを作成・閲覧・編集・同期。オフライン利用も可能。
- なぜおすすめか(メリット):
- EvernoteやOneNoteのようなノートアプリを、プライベートなNAS上で利用できる。
- アイデアや議事録、レシピ、読書メモなど、様々な情報を一元的に記録・整理できる。
- ウェブクリッパー機能で、情報収集が捗る。
- タスク管理機能で、ToDoリストをノートと連携させて管理できる。
- オフラインでノートを編集し、後で同期できる柔軟性。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからNote Stationをインストールします。
- Note Stationを開き、左側のペインでノートブックを作成します。
- ノートブックを選択し、「新規ノート」ボタンでノートを作成します。
- ChromeやFirefoxなどのブラウザに「Synology Web Clipper」拡張機能をインストールすると、Webページを簡単にクリップできます。
- スマートフォンにDS noteアプリをインストールし、NASのQuickConnect IDまたはIPアドレスを入力して接続すると、モバイルデバイスでノートを管理できます。
- 活用例:
- 会議の議事録をNote Stationで作成し、関連資料を添付して議事録用のノートブックに保存する。
- インターネットで見つけたレシピやDIYの情報をウェブクリッパーで保存し、後から見返せるようにする。
- 思いついたアイデアや買い物リストをスマートフォンでDS noteに記録し、自宅のPCで確認する。
6. Webサイト・開発アプリ:NASをサーバーとして活用
Synology NASは、Webサーバーとして機能させたり、コンテナや仮想マシンを実行したりするための環境も提供しています。開発者やホビーユーザーにとっては非常に魅力的な機能です。
6.1. Docker
- 概要: コンテナ仮想化技術であるDockerを実行するためのアプリです。Docker Hubなどから様々なアプリケーションのコンテナイメージをダウンロードし、NAS上で簡単に実行できます。
- 主な機能・特徴:
- Dockerエンジンの実行環境を提供。
- Docker Hubなどのコンテナレジストリからイメージを検索・ダウンロード。
- コンテナの作成、起動、停止、削除、監視、ログ表示など。
- Docker Composeのサポート(一部モデル)。
- GUIによる直感的なコンテナ管理。
- 様々なサービス(WordPress, Nextcloud, Plex, Home Assistantなど)をコンテナとして実行可能。
- なぜおすすめか(メリット):
- Synology NAS上で多様なアプリケーションを簡単かつ分離された環境で実行できる。
- アプリケーションのインストールや設定が大幅に簡略化される(依存関係の問題が少ない)。
- 異なるアプリケーションを互いに干渉させることなく安全に実行できる。
- 開発環境の構築や、特定のサービス(例:VPNサーバー、メディアサーバー、スマートホームハブなど)を手軽に試したり運用したりできる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからDockerをインストールします(一部のSynology NASモデルのみ対応しています。対応モデルを確認してください)。
- Dockerを開き、「レジストリ」タブで実行したいアプリケーションのコンテナイメージ名を検索します(例:
wordpress
,nextcloud
,plexinc/pms-docker
)。 - 見つかったイメージをダウンロードします。
- 「イメージ」タブでダウンロードしたイメージを選択し、「起動」ボタンからコンテナを作成・設定します(ポートフォワーディング、ボリュームマウント、環境変数などを設定)。
- 「コンテナ」タブで、実行中のコンテナの状態を確認したり、停止・再起動などの操作を行ったりできます。
- 活用例:
- DockerコンテナとしてWordPressをインストールし、自宅サーバー上でブログやウェブサイトを公開する。
- Nextcloudコンテナを立ち上げ、Synology Drive以外のプライベートクラウドサービスを構築する。
- Plex Media ServerをDockerコンテナで実行し、より高機能なメディアサーバー環境を構築する。
- Home Assistantなどのスマートホームハブソフトウェアをコンテナで動かす。
6.2. Web Station
- 概要: Synology NASをWebサーバーとして機能させるアプリです。Apache HTTP ServerやNginxなどのWebサーバーソフトウェアをインストールし、静的または動的なWebサイトをホストできます。
- 主な機能・特徴:
- Apache HTTP ServerまたはNginxの選択。
- PHP、MariaDB(MySQL互換)などのウェブ開発環境を簡単に構築(別パッケージとしてPHPやMariaDBもインストールが必要)。
- 仮想ホスト設定により、複数のドメイン名で異なるWebサイトを運用。
- TLS/SSL証明書の設定(Let’s Encryptとの連携も可能)。
- PHP設定のカスタマイズ。
- なぜおすすめか(メリット):
- 自宅のNASで簡単にWebサイトを公開できる。
- 開発中のWebサイトをローカル環境でテストできる。
- 外部のレンタルサーバー費用を削減できる可能性がある。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからWeb Stationをインストールします。必要に応じてPHPとMariaDBもインストールします。
- Web Stationを開き、「Webサービス設定」でバックエンド(Apache/Nginx, PHPバージョン)を設定します。
- WebサイトのファイルをNAS上の共有フォルダ(通常
/web
または指定したフォルダ)にアップロードします。 - DSMの「外部アクセス」設定でDDNSやポートフォワーディングを設定し、インターネットからNASにアクセスできるようにします(セキュリティリスクを理解した上で行ってください)。
- 必要に応じてWeb Stationの「仮想ホスト」設定でドメイン名とフォルダを関連付けます。
- 活用例:
- 家族や友人向けの簡単なホームページを公開する。
- WordPressなどのCMSをインストールし、ブログや小規模なコミュニティサイトを運営する。
- 個人的なポートフォリオサイトや、開発中のウェブアプリケーションをテスト公開する。
6.3. Virtual Machine Manager (VMM)
- 概要: Synology NAS上で仮想マシン(VM)を実行するためのアプリです。Windows、Linux、その他のOSをNAS上にインストールして、専用のサーバーやテスト環境を構築できます。
- 主な機能・特徴:
- 複数の仮想マシンを同時に実行。
- Windows、様々なLinuxディストリビューション、DSMなどのゲストOSをサポート。
- 仮想マシンのリソース(CPU、メモリ、ストレージ)を割り当て。
- スナップショット機能によるVMの状態保存と復元。
- インポート/エクスポート機能。
- VMのバックアップとレプリケーション機能。
- VMMクラスタ機能によるVMの高可用性(対応モデル)。
- なぜおすすめか(メリット):
- 物理的なサーバーを用意することなく、NAS上で異なるOS環境を利用できる。
- アプリケーションのテスト環境や開発環境を気軽に構築できる。
- 古いOSや特定のアプリケーションを実行するための環境を維持できる。
- NASのリソースを有効活用できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからVirtual Machine Managerをインストールします(対応モデルが限られています。強力なCPUと十分なメモリを搭載したモデルが必要です)。
- VMMを開き、「仮想マシン」タブで「作成」ボタンから新しい仮想マシンを作成します。
- インストールしたいOSのISOイメージファイルを用意し、VMに割り当てます。
- VMに割り当てるCPUコア数、メモリ容量、ストレージ容量を設定します。
- VMを起動し、通常のコンピュータと同様にOSをインストールします。
- インストール後、VMにリモートデスクトップやSSHなどで接続して操作します。
- 活用例:
- 特定の業務アプリケーションが必要なため、Windows Serverの仮想マシンをNAS上で実行する。
- 新しいLinuxディストリビューションやサーバーソフトウェアをテストするための使い捨て環境を構築する。
- Synology NAS上に別のSynology DSMを仮想マシンとして動かし、設定変更のテストや開発を行う。
7. ユーティリティ・管理アプリ:NASの状態を把握し、効率的に運用
NASを安定して運用するためには、その状態を適切に監視し、必要に応じて設定を調整することが重要です。
7.1. Resource Monitor
- 概要: Synology NASのCPU使用率、メモリ使用率、ネットワークトラフィック、ディスク使用率、接続ユーザー数などをリアルタイムで監視できるアプリです。
- 主な機能・特徴:
- CPU、メモリ、ネットワークのグラフ表示。
- ディスクの使用率、I/Oパフォーマンス表示。
- 現在接続しているユーザーと実行中のプロセス一覧。
- 過去の使用状況をグラフで確認。
- なぜおすすめか(メリット):
- NASの負荷状況を把握し、パフォーマンスボトルネックを特定できる。
- 特定のアプリや操作がどれだけリソースを消費しているかを確認できる。
- ディスクの空き容量を常に把握できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- DSMに標準搭載されています。メニューからResource Monitorを選択するだけで開きます。
- 様々なタブ(パフォーマンス、プロセス、接続済みのユーザーなど)を切り替えて情報を確認します。
7.2. Storage Analyzer
- 概要: Synology NASのストレージ使用状況を詳細に分析し、レポートを生成するアプリです。どのフォルダが容量を圧迫しているかなどを視覚的に把握できます。
- 主な機能・特徴:
- ボリュームごとの使用率、ファイルタイプごとの容量分布、フォルダサイズランキングなどのレポート生成。
- レポートのスケジュール設定。
- レポートの保存と閲覧。
- なぜおすすめか(メリット):
- ストレージ容量が不足してきた際に、原因を特定しやすくなる。
- 不要な大容量ファイルを効率的に見つけて削除できる。
- ストレージの計画的な運用に役立つ。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからStorage Analyzerをインストールします。
- Storage Analyzerを開き、「レポートタスク」を作成します。
- 分析したいボリュームやフォルダを選択し、レポートのルール(ファイルタイプ、サイズなど)を設定します。
- タスクを手動で実行するか、スケジュールを設定します。
- 生成されたレポートは「レポート表示」タブで確認できます。
7.3. Security Advisor
- 概要: Synology NASのセキュリティ状態を診断し、潜在的な脆弱性やリスクを特定して改善策を提案してくれるアプリです。
- 主な機能・特徴:
- システム設定、アカウント、ネットワーク、マルウェアなどのカテゴリでセキュリティスキャンを実行。
- パスワードの強度、ファイアウォール設定、DSMのアップデート状況などをチェック。
- 発見されたリスクと、それに対する推奨される対応策を提示。
- スキャンレポートの作成。
- なぜおすすめか(メリット):
- NASを安全に運用するための重要なヒントを得られる。
- セキュリティの専門知識がなくても、手軽にセキュリティレベルを向上させられる。
- 定期的なスキャンで、常に最新のセキュリティ状態を確認できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- DSMに標準搭載されています。メニューからSecurity Advisorを選択するだけで開きます。
- 「今すぐスキャン」ボタンをクリックして診断を開始します。
- スキャン完了後、結果を確認し、リスクが表示された項目について推奨される対応策を実行します。
- 定期的な自動スキャンを設定することも可能です。
8. その他(応用)アプリ:さらに高度な活用へ
特定の目的のために設計された、さらに応用的なアプリも多数存在します。
8.1. Download Station
- 概要: Synology NASをダウンロードマネージャーとして機能させるアプリです。HTTP、FTP、BitTorrent、usenetなどのプロトコルに対応し、PCを介さずに直接ファイルをダウンロードできます。
- 主な機能・特徴:
- 多様なプロトコルでのダウンロードに対応。
- BitTorrentのシード/ピア機能。
- ダウンロード速度の制限設定。
- ダウンロードスケジューリング。
- CAPTCHA認識機能(一部サイト)。
- スマートフォン用DS downloadアプリとの連携。
- なぜおすすめか(メリット):
- PCの電源をつけっぱなしにすることなく、大容量ファイルをダウンロードできる。
- 安定したネットワーク接続でダウンロードできる。
- ダウンロード中のPCの負荷を軽減できる。
- スマートフォンからリモートでダウンロードを開始できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからDownload Stationをインストールします。
- Download Stationを開き、「+」ボタンからダウンロードしたいファイルのURLやTorrentファイルを指定します。
- ダウンロード先のフォルダを指定して、ダウンロードを開始します。
- DS downloadアプリをスマートフォンにインストールすると、モバイルデバイスからダウンロードタスクの管理や追加ができます。
8.2. VPN Server
- 概要: Synology NASをVPN(Virtual Private Network)サーバーとして機能させるアプリです。自宅やオフィス外からNASやローカルネットワークに安全にアクセスするための暗号化された接続を構築できます。
- 主な機能・特徴:
- PPTP、OpenVPN、L2TP/IPSecプロトコルに対応。
- ユーザーごとの接続権限設定。
- 接続状況の監視。
- ログ表示。
- なぜおすすめか(メリット):
- 自宅やオフィスのネットワークに、外部から安全にリモートアクセスできる。
- NAS上のファイルに安全にアクセスしたり、ローカルネットワーク内の他のデバイス(プリンターなど)を利用したりできる。
- 公衆Wi-Fiなど安全でないネットワークを利用する際に、通信を暗号化してプライバシーを保護できる。
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからVPN Serverをインストールします。
- VPN Serverを開き、使用したいVPNプロトコルを有効にし、必要な設定を行います(例:OpenVPNの場合は証明書の生成など)。
- NASのファイアウォール設定でVPN接続に必要なポートを開放します。
- ルーターでNASのVPNポートへのポートフォワーディング設定を行います。
- リモートから接続するデバイス(PC、スマートフォン)にVPNクライアントソフトウェアを設定し、NASのIPアドレスまたはDDNSホスト名とVPNユーザー情報を入力して接続します。
- 活用例:
- 出張先からホテルのWi-Fiを使って、自宅のNASに安全に接続し、必要なファイルをダウンロードする。
- リモートワーク中に、会社のSynology NASにVPN接続し、社内ネットワークのリソースにアクセスする。
8.3. MailPlus Server / MailPlus
- 概要: Synology NASを本格的なメールサーバーとして運用するためのアプリ(MailPlus Server)と、そのメールサーバーにアクセスするためのウェブベースのメールクライアント(MailPlus)です。
- 主な機能・特徴:
- SMTP, POP3, IMAPプロトコル対応。
- アンチスパム、アンチウイルス機能。
- ユーザーアカウント管理。
- ウェブベースのメールクライアント(MailPlus)。
- モバイルアプリ(MailPlus)。
- 高可用性構成(MailPlus Serverハイアベイラビリティ)。
- なぜおすすめか(メリット):
- 自分専用のメールアドレス(例:
[email protected]
)を運用できる。 - メールデータを完全に自分で管理できるため、プライバシーとセキュリティが高い。
- 外部のメールサービスに依存しない。
- 自分専用のメールアドレス(例:
- 簡単な設定・使い方のポイント:
- パッケージセンターからMailPlus ServerとMailPlusをインストールします(対応モデルが限られています。MailPlus Serverのライセンス数にも注意が必要です)。
- NASに固定IPアドレスまたはDDNSホスト名を割り当て、ドメインのMXレコードなどを設定します。
- MailPlus Serverの設定ウィザードに従って、ドメイン情報、ユーザーアカウント、セキュリティ設定などを行います。
- MailPlusはブラウザからアクセスするか、モバイルアプリを利用します。
- 活用例:
- 個人事業主や家族向けのプライベートなメールサーバーを構築する。
- 企業のNAS上で社内メールサーバーを運用する。
アプリを使いこなすためのヒント
Synology NASのアプリ活用度をさらに高めるためのいくつかのヒントをご紹介します。
- DSMは常に最新の状態に: SynologyはDSMや主要アプリのアップデートを頻繁に行っています。セキュリティパッチの適用や新機能の追加、パフォーマンス改善が含まれていることが多いため、DSMは常に最新のバージョンに保つことを強くお勧めします。自動アップデート設定を活用しましょう。
- QuickConnect/DDNSの設定: 外部からNASのアプリにアクセスするためには、QuickConnectまたはDDNS(Dynamic DNS)の設定が不可欠です。
- QuickConnect: Synologyが提供する無料のサービスで、複雑なネットワーク設定(ポートフォワーディングなど)なしに専用IDでNASにアクセスできます。手軽ですが、通信速度がSynologyのサーバーを経由するため、直接接続より遅くなる場合があります。
- DDNS: 自宅のグローバルIPアドレスが変動する場合でも、常に一定のドメイン名でアクセスできるようにするサービスです。ルーターでのポートフォワーディング設定が必要ですが、直接通信となるためQuickConnectより高速になることが多いです。
- セキュリティ設定はしっかりと: NASはインターネットに接続されるため、セキュリティ対策は非常に重要です。
- 強力なパスワード: DSM管理者アカウントはもちろん、各ユーザーアカウントにも推測されにくい強力なパスワードを設定します。
- 2段階認証: DSMへのログインや、DS camなどのモバイルアプリへのログインに2段階認証を設定し、不正アクセスを防ぎます。
- ファイアウォール: 不必要なポートを閉じ、特定の国からのアクセスをブロックするなど、ファイアウォールを設定します。
- 自動ブロック: ログインに複数回失敗したIPアドレスを一定時間ブロックする設定を有効にします。
- Security Advisorの活用: 定期的にSecurity Advisorを実行し、NASのセキュリティ状態を診断・改善します。
- データのバックアップはNASだけでは不十分: Synology NAS自体がRAID構成などによりドライブ故障からデータを保護してくれますが、これは「データの可用性」を高めるものであり、「データのバックアップ」とは異なります。誤削除、ランサムウェア、火災、盗難などからデータを守るためには、Hyper Backupなどを使って別の場所(外部HDD、クラウド、別のNASなど)に定期的にバックアップを取ることが不可欠です。「データは3箇所にバックアップ(3-2-1ルール:3つのコピー、2種類のメディア、1つはオフサイト)」を意識しましょう。Snapshot Replicationもランサムウェア対策として非常に有効です。
- NASのスペックとアプリの負荷: NASのCPU、メモリ、ドライブの種類(HDDかSSDか)は、アプリの動作速度や同時実行できるアプリ数に影響します。特にSurveillance Station(カメラ数と録画画質)、Video Station(トランスコーディング)、Docker、Virtual Machine ManagerなどはNASに高い負荷をかけます。NASのモデルを選ぶ際には、これらのアプリを使う予定があるかどうかを考慮しましょう。
- コミュニティパッケージ (非公式アプリ) にも注目: パッケージセンターにはSynology公式以外の「コミュニティパッケージ」と呼ばれる非公式のアプリも存在します。これらはSynologyが直接サポートしているものではありませんが、公式パッケージにはない非常に便利なソフトウェア(例:Plex Media Server、NZBGet、さまざまな開発ツールなど)を利用できる場合があります。ただし、安定性やセキュリティ、アップデートの頻度などが公式パッケージより劣る可能性もありますので、インストールや利用は自己責任で行い、情報収集をしっかり行うことが重要です。パッケージセンターの設定で「コミュニティ」ソースを追加することで表示されるようになります。
これらのヒントを参考に、あなたのSynology NASをより安全に、より快適に活用してください。
まとめ:Synology NASは、アプリで進化する無限のプラットフォーム
本記事では、Synology NASの可能性を最大限に引き出すために、パッケージセンターからインストールできる様々なアプリケーションをご紹介しました。ファイル管理・共有、バックアップ・同期、メディアサーバー、監視、生産性向上、Webサイトホスティング、開発環境、そして各種ユーティリティまで、その機能は多岐にわたります。
- File Station と Synology Drive Server は、NASを強力なファイルサーバー兼パーソナルクラウドに変え、データのアクセス性と共有性を飛躍的に高めます。
- Hyper Backup と Snapshot Replication は、大切なデータを様々な脅威から守るための最も重要な盾となり、データ損失のリスクを最小限に抑えます。
- Synology Photos、Video Station、Audio Station、Media Server は、あなたのデジタルメディアコレクションを美しく整理し、家中のあらゆるデバイスで手軽に楽しむためのエンターテイメントハブを構築します。
- Surveillance Station は、ホームセキュリティやオフィス監視のための強力なツールを提供し、安心をもたらします。
- Synology Office や Note Station は、NASを単なるストレージから、チームや個人の生産性向上に役立つコラボレーションプラットフォームへと進化させます。
- Docker や Web Station、Virtual Machine Manager は、より技術的なユーザーや開発者向けに、NAS上で様々なサービスや環境を実行する自由を提供します。
- Resource Monitor や Storage Analyzer、Security Advisor は、NASを安定かつ安全に運用するための基盤となります。
Synology NASの最大の強みは、この豊富なアプリエコシステムと、それを支える使いやすいDSMというオペレーティングシステムにあります。あなたの特定のニーズに合わせて適切なアプリを選び、それらを組み合わせることで、Synology NASは単なるネットワークストレージという枠を超え、あなたのデジタルライフやビジネスの中心となる強力なサーバープラットフォームとなり得ます。
これからSynology NASの導入を検討されている方も、すでにSynology NASをお使いの方も、ぜひこの記事で紹介したアプリを参考に、あなたのNASの可能性を最大限に引き出し、活用をさらに深めていってください。Synology NASは、あなたの想像以上に多くのことができる、無限の可能性を秘めたデバイスなのです。