VS Code SSH接続トラブルシューティングガイド:つながらないを解決!

はい、承知いたしました。VS CodeのSSH接続トラブルシューティングガイドに関する約5000語の記事を作成します。


VS Code SSH接続トラブルシューティングガイド:つながらないを解決!

はじめに

現代のソフトウェア開発において、リモートサーバー上での作業は日常的です。特に、開発環境がローカルマシンと異なる場合や、計算リソースが豊富なサーバーで作業する場合、あるいは複数の開発者が同じ環境を共有する場合など、リモート開発は非常に効率的な手法です。そのリモート開発を強力にサポートしてくれるのが、Microsoftが提供する高機能エディタ、Visual Studio Code(VS Code)のRemote Development拡張機能パックです。このパックに含まれる「Remote – SSH」拡張機能を使えば、ローカルのVS Codeから直接、SSHで接続したリモートサーバー上のファイルを開いたり、ターミナルを使ったり、デバッグを行ったりすることが可能になります。まるでローカルで作業しているかのような快適さで、リモート開発を実現できます。

しかし、この便利なRemote – SSH接続も、時に「つながらない」「遅い」「切断される」といったトラブルに見舞われることがあります。SSH接続自体が複数の要素(ネットワーク、サーバー設定、クライアント設定、認証情報など)に依存するため、どこに問題があるのか特定しにくい場合が多いのです。

この記事は、VS CodeのRemote – SSH接続に関するトラブルを解決するための網羅的なガイドです。接続できない、あるいは接続が不安定といった問題に直面した際に、原因を特定し、適切な対処を行うための具体的な手順と情報を提供することを目的としています。ネットワークの基礎からSSHの設定、そしてVS Code固有のトラブルまで、様々な角度から問題解決のアプローチを探ります。このガイドが、あなたのリモート開発をよりスムーズなものにする手助けとなれば幸いです。

VS Code SSH接続の基本

トラブルシューティングに入る前に、まずはVS CodeのRemote – SSH接続がどのように機能するのか、基本的な仕組みと設定方法を確認しておきましょう。

Remote – SSH拡張機能のインストール

VS CodeでSSH接続を行うには、まず「Remote – SSH」拡張機能をインストールする必要があります。

  1. VS Codeを開きます。
  2. 左側のアクティビティバーにある「拡張機能」アイコン(四角が3つと斜めの四角1つ)をクリックします。
  3. 検索バーに「Remote – SSH」と入力します。
  4. Microsoftが提供する「Remote – SSH」拡張機能が表示されるので、「インストール」ボタンをクリックします。
  5. Remote Development拡張機能パックをインストールしていない場合は、こちらもインストールすることをお勧めします。これにはRemote – SSH以外にも便利なリモート開発機能が含まれています。

SSHクライアントのインストールと設定

VS Code Remote – SSH拡張機能は、システムにインストールされている標準のSSHクライアントプログラム(sshコマンド)を利用してリモートサーバーに接続します。そのため、VS Codeを使用するローカルマシンにSSHクライアントがインストールされ、パスが通っている必要があります。

  • Windows:
    • Windows 10 (バージョン 1803以降) や Windows 11 では、OpenSSH Clientがオプション機能として標準でインストールされているか、容易にインストールできます。「設定」→「アプリ」→「オプション機能」→「機能を追加」から「OpenSSH クライアント」を選択してインストールしてください。
    • Git for Windowsをインストールしている場合、Git Bashに付属するOpenSSHクライアントを使用することもできます。この場合、Git Bashのターミナルでsshコマンドが実行できることを確認してください。
    • WSL (Windows Subsystem for Linux) を使用している場合は、WSL環境内のOpenSSHクライアントを使用することも可能です。VS CodeでWSL環境を開き、そこからSSH接続を行う形になります。
  • macOS: macOSには標準でOpenSSHクライアントがインストールされています。ターミナルを開いてssh -Vと入力し、バージョン情報が表示されるか確認してください。
  • Linux: ほとんどのLinuxディストリビューションには標準でOpenSSHクライアントがインストールされています。ターミナルを開いてssh -Vと入力し、バージョン情報が表示されるか確認してください。

SSHクライアントがインストールされていない、あるいはパスが通っていない場合は、適切にインストール・設定を行ってください。

SSH接続設定ファイル(~/.ssh/config

Remote – SSH拡張機能は、通常、SSHクライアントの設定ファイルである~/.ssh/config(Windowsの場合はC:\Users\YourUsername\.ssh\configなど、OpenSSHクライアントのインストール場所によって異なりますが、通常はユーザーのホームディレクトリ直下の.sshフォルダ内)を読み込んで接続先情報を取得します。このファイルに接続先情報を記述しておくことで、VS Codeから簡単に接続できるようになります。

~/.ssh/configファイルの基本的な記述例は以下の通りです。

config
Host my-remote-server
HostName 192.168.1.100 # リモートサーバーのIPアドレスまたはホスト名
User your_username # リモートサーバーへのログインユーザー名
Port 22 # SSHポート番号 (デフォルトは22)
IdentityFile ~/.ssh/id_rsa # 使用する秘密鍵ファイルのパス (公開鍵認証の場合)
# StrictHostKeyChecking no # 非推奨だが、ホストキー検証をスキップする場合 (トラブルシューティング目的以外では避ける)
# PreferredAuthentications publickey,password # 優先する認証方法
# ServerAliveInterval 60 # 接続維持のためにサーバーへ定期的に信号を送る (秒)
# ConnectTimeout 10 # 接続試行時のタイムアウト (秒)

  • Host: VS CodeやSSHコマンドから接続する際に指定する短縮名です。任意に設定できます。
  • HostName: 実際の接続先ホスト名またはIPアドレスです。
  • User: リモートサーバーにログインするユーザー名です。
  • Port: SSHデーモンが待ち受けているポート番号です。デフォルトは22ですが、変更されている場合があります。
  • IdentityFile: 公開鍵認証を使用する場合に、対応する秘密鍵ファイルのパスを指定します。指定しない場合、デフォルトの場所(~/.ssh/id_rsa, ~/.ssh/id_ecdsa, ~/.ssh/id_ed25519など)が自動的に試されます。
  • その他のオプションも、接続の安定化やセキュリティ設定に役立ちます。トラブルシューティングの過程でこれらのオプションを調整することもあります。

~/.ssh/configファイルを編集したら、VS Codeを再起動するか、VS CodeのRemote – SSH拡張機能ビュー(左側のアクティビティバーのモニターと波形アイコン)の「SSH TARGETS」セクションにある更新ボタンをクリックすると、設定が読み込まれます。

VS Codeからの接続手順

~/.ssh/configに設定を追加したら、VS Codeから接続を試みることができます。

  1. VS Codeを開きます。
  2. 左側のアクティビティバーの「Remote Explorer」アイコン(モニターと波形アイコン)をクリックします。
  3. 「SSH TARGETS」セクションに~/.ssh/configで設定したHost名が表示されます。
  4. 接続したいHost名の上にマウスカーソルを合わせると表示される接続アイコンをクリックするか、右クリックして「Connect to Host…」を選択します。
  5. 新しいVS Codeウィンドウが開かれ、リモートサーバーへの接続が試行されます。
  6. 初回接続時やサーバーのホストキーが変更されている場合は、ホストのフィンガープリントの確認を求められることがあります。内容を確認し、問題なければ「Continue」を選択します。
  7. パスワード認証の場合はパスワードの入力を求められます。公開鍵認証の場合は、設定が正しければパスワード入力なしで接続が完了します(秘密鍵にパスフレーズが設定されている場合はパスフレーズの入力が必要です)。

接続に成功すると、新しいVS Codeウィンドウの左下隅に「SSH: my-remote-server」(my-remote-serverは設定したHost名)のように表示されます。これでリモートサーバー上での開発が可能になります。

よくある接続トラブルとその原因

いよいよトラブルシューティングです。VS CodeのRemote – SSH接続がうまくいかない場合、考えられる原因は多岐にわたります。ここでは、よくあるトラブルとその背後にある原因を分類して説明します。

1. ネットワーク関連のトラブル

SSH接続はネットワーク経由で行われるため、ネットワークの問題が直接的な原因となることが非常に多いです。

  • ファイアウォール: クライアント側のファイアウォール、サーバー側のファイアウォール、あるいはその間にあるネットワーク機器(ルーターなど)のファイアウォールが、SSH接続に使用するポート(デフォルトは22)をブロックしている可能性があります。
  • ルーター/NATの設定: リモートサーバーがインターネット越しに接続されている場合(例: 自宅からクラウド上のサーバーへ)、クライアントとサーバーの間にあるルーターやNATデバイスで、SSHポートへの通信が正しく転送(ポートフォワーディング)される設定になっていない可能性があります。
  • IPアドレスまたはホスト名の間違い: 接続先として指定したIPアドレスやホスト名が間違っていると、当然接続できません。ホスト名の場合は、DNSで正しく名前解決できる必要があります。
  • DNS解決の問題: ホスト名で接続しようとしている場合、クライアント側のDNSサーバーがそのホスト名を正しくIPアドレスに変換できない(名前解決できない)と接続できません。
  • ネットワーク経路の問題: クライアントからサーバーまでのネットワーク経路の途中に障害が発生している可能性があります。特定のルーターがダウンしている、ケーブルに問題がある、ISP(インターネットサービスプロバイダ)側で問題が発生しているなどが考えられます。
  • 帯域幅の不足/不安定性: 接続自体はできても、ネットワーク帯域幅が不足している、あるいは不安定な場合、接続が途中で切断されたり、極端に処理が遅くなったりすることがあります。

2. SSHサーバー側のトラブル

接続先のSSHサーバー自体に問題がある場合です。

  • SSHデーモンが起動していない: リモートサーバー上でSSHサービス(通常sshd)が実行されていないと、接続要求に応答できません。
  • SSHデーモンの設定ミス(sshd_config): SSHデーモンの設定ファイル(Linuxの場合、通常/etc/ssh/sshd_config)に誤りがある場合、接続が拒否されたり、特定の認証方法が許可されていなかったりすることがあります。例えば、Port設定がVS Codeで指定したポートと異なっている、PasswordAuthentication noになっていてパスワード認証ができない、PubkeyAuthentication noになっていて公開鍵認証ができない、AllowUsersDenyUsers設定でログインが制限されている、などが考えられます。
  • SSHポートの変更: デフォルトの22番ポートから変更されているのに、クライアント側で古いポート番号を指定している。
  • サーバー側のファイアウォール: サーバー側で動作しているファイアウォールソフトウェア(iptables, firewalld, ufwなど)が、SSHポートへの着信接続をブロックしている。
  • サーバー側のリソース不足: サーバーのCPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/Oなどが極端に高い状態にある場合、SSH接続の処理が遅延したり、接続がタイムアウトしたりすることがあります。ディスク容量が不足していると、VS Code Serverのインストールや一時ファイルの作成に失敗することもあります。
  • SELinux/AppArmorなどのセキュリティ機構: Linuxサーバーで動作しているSELinuxやAppArmorのような強制アクセス制御(MAC)セキュリティ機構が、SSH関連のファイルアクセスやプロセス起動を制限している可能性があります。

3. SSHクライアント側のトラブル

VS Codeを実行しているローカルマシン上のSSHクライアント設定に問題がある場合です。

  • SSHクライアントがインストールされていない/パスが通っていない: 前述の通り、これが基本的な要件です。
  • SSH設定ファイル(~/.ssh/config)の記述ミス: 設定ファイルのフォーマットが間違っている、HostNamePortの記述が誤っているなど。
  • 秘密鍵/公開鍵のパーミッション設定ミス: 公開鍵認証を使用する場合、クライアント側の秘密鍵ファイルのパーミッションが緩すぎる(例: 他のユーザーから読み書き可能など)と、SSHクライアントがセキュリティ上の理由でその秘密鍵の使用を拒否することがあります。通常、秘密鍵のパーミッションは所有者のみ読み書き可能(600)である必要があります。
  • 秘密鍵/公開鍵ファイル名の指定ミス: ~/.ssh/configIdentityFileで指定した秘密鍵のパスが間違っている。
  • パスフレーズの入力ミス: 公開鍵認証で使用する秘密鍵にパスフレーズが設定されている場合、その入力を間違えている。
  • Known Hostsファイルの問題: SSHクライアントは、接続先のサーバーのホストキーを~/.ssh/known_hostsファイルに記録します。サーバー側のホストキーが変更された場合、このファイルに記録されている情報と一致しなくなり、「Host key verification failed.」といったエラーで接続が拒否されます。
  • SSHエージェントの問題: SSHエージェント(ssh-agent)を使用して秘密鍵を管理している場合、エージェントが起動していない、または秘密鍵がエージェントに追加されていない。
  • クライアント側のファイアウォール: ローカルマシンのファイアウォールが、VS CodeがSSHクライアントを起動して外部に接続しようとするのをブロックしている。

4. VS Code側のトラブル

VS Code本体やRemote – SSH拡張機能、あるいはリモートサーバーにインストールされるVS Code Serverに関する問題です。

  • Remote – SSH拡張機能のインストール/バージョン問題: 拡張機能が正しくインストールされていない、あるいはバージョンが古すぎる/新しすぎて互換性の問題が発生している。
  • VS Codeの設定ミス: VS Code自体の設定ファイル(settings.json)がSSH接続に影響を与えている可能性は低いですが、全くないとは言えません。
  • VS Code Serverのインストール失敗/問題: VS Codeはリモートサーバーに「VS Code Server」というプログラムをインストールして、ローカルのVS Codeと連携させます。サーバー側の環境によっては、このインストールが失敗したり、インストールされたServerが正しく動作しなかったりすることがあります(例: サーバー側のOSが古い、必要なライブラリがない、ディスク容量不足、パーミッション問題など)。
  • VS Codeのキャッシュ/設定ファイルの破損: まれですが、VS Code自体のユーザーデータやキャッシュが破損していることで問題が発生することがあります。
  • 拡張機能の競合: インストール済みの他の拡張機能がRemote – SSH拡張機能と競合している可能性があります。

5. 認証情報のトラブル

SSH接続で最も一般的なトラブルの一つです。

  • パスワード認証の失敗: リモートサーバーのログインパスワードを間違えている。あるいは、パスワード認証がサーバー側で許可されていない(sshd_configPasswordAuthentication no)。
  • 公開鍵認証の失敗:
    • クライアント側の秘密鍵に対応する公開鍵が、サーバー側のログインユーザーの~/.ssh/authorized_keysファイルに正しく登録されていない。
    • クライアント側の秘密鍵と、authorized_keysに登録されている公開鍵のペアが一致しない(違う鍵ペアを使っている)。
    • クライアント側の秘密鍵ファイルのパーミッションが厳密でない(上述)。
    • サーバー側の~/.sshディレクトリまたは~/.ssh/authorized_keysファイルのパーミッションが厳密でない。SSHでは、これらのファイルやディレクトリのパーミッションが緩すぎるとセキュリティ上の理由で公開鍵認証を拒否します。通常、.sshディレクトリは所有者のみ読み書き実行可能(700)、authorized_keysファイルは所有者のみ読み書き可能(600)である必要があります。
    • サーバー側のSELinux/AppArmorなどがauthorized_keysファイルへのアクセスを制限している。
    • 秘密鍵に設定されたパスフレーズを間違えている。

6. その他

  • 日本語入力の問題: 接続後にターミナルなどで日本語入力がうまくいかない場合は、サーバー側のロケール設定やクライアント側のターミナル設定を確認する必要があります。
  • 特定の拡張機能の問題: 接続後、特定のVS Code拡張機能をインストールしたり使用したりすると問題が発生する場合、その拡張機能がリモート環境に対応していないか、サーバー側のリソースを過度に消費している可能性があります。
  • パフォーマンスの問題: 接続はできるものの、ファイルの保存やターミナル操作などが極端に遅い場合は、ネットワーク遅延が大きいか、サーバー側のリソースが不足している可能性があります。

具体的なトラブルシューティング手順

これらの原因を踏まえ、接続できない問題を解決するための具体的な手順をステップバイステップで説明します。焦らず、一つずつ確認していくことが重要です。

ステップ0: 基本的な確認事項

まずは、誰でもすぐに確認できる基本的な項目から始めましょう。

  • ネットワーク接続の確認:
    • ローカルマシンがインターネットやローカルネットワークに接続されていることを確認してください。有線接続の場合はケーブルが抜けていないか、無線接続の場合はWi-Fiに接続できているか確認します。
  • サーバーの稼働確認:
    • 接続しようとしているリモートサーバーが起動しているか確認します。物理サーバーであれば電源が入っているか、仮想サーバーやクラウドインスタンスであればプロバイダの管理画面などでステータスを確認します。
  • SSH設定ファイルの記述ミス再確認:
    • ~/.ssh/configファイルを開き、接続しようとしているHost設定のHostNameUserPort(変更している場合)に誤りがないか、タイプミスがないか、再度じっくり確認してください。設定ファイルのフォーマットが正しいか(インデントなど)も確認します。
  • VS Codeと拡張機能のバージョン確認:
    • VS Code本体、特にRemote – SSH拡張機能が最新版であるか確認してください。古いバージョンに既知の問題が含まれている場合があります。最新版にアップデートすることで解決することがあります。ただし、ごくまれに最新版に問題が含まれることもあるため、その場合はバージョンを一つ戻すことも検討します(稀なケースです)。

これらの基本的な項目に問題がなければ、より技術的な確認に進みます。

ステップ1: SSHクライアント単体での接続テスト

VS Code Remote – SSH拡張機能は内部で標準のSSHクライアントを使用します。したがって、まずVS Codeを介さずに、SSHクライアント単体でリモートサーバーに接続できるかを確認することが、問題の切り分けにおいて非常に重要です。

  1. コマンドプロンプト/ターミナルを開く:
    • ローカルマシンのコマンドプロンプト、PowerShell、Git Bash、macOSのターミナル、またはLinuxのターミナルを開きます。
  2. 基本コマンドでの接続テスト:
    • 以下のコマンド形式で接続を試みます。your_usernameはリモートサーバーのユーザー名、hostname_or_ipはサーバーのホスト名またはIPアドレスです。SSHポートをデフォルトの22から変更している場合は、-pオプションでポート番号を指定します。
      bash
      ssh your_username@hostname_or_ip
      # 例: ssh [email protected]
      # ポート変更の場合: ssh [email protected] -p 2222
      # configファイルを使う場合: ssh my-remote-server (my-remote-serverはconfigのHost名)
    • このコマンド実行時に表示されるメッセージが、トラブルシューティングの重要な手がかりとなります。
  3. デバッグ情報の出力:
    • 接続が失敗する場合、より詳細なデバッグ情報を表示させるために-v-vv-vvvオプションを追加して実行します。-vvvが最も詳細な情報を表示します。
      bash
      ssh -vvv your_username@hostname_or_ip
    • 出力されるログを注意深く確認してください。接続試行のどの段階(名前解決、TCP接続、認証など)で失敗しているのか、具体的なエラーメッセージは何かがわかります。特に、以下のようなメッセージに注目してください。
      • ssh: connect to host ... port ...: Connection refused
      • ssh: connect to host ... port ...: Connection timed out
      • Permission denied (publickey,password).
      • Host key verification failed.
      • Bad owner or permissions on ...
      • No matching key found

【重要】SSHクライアント単体で接続できない場合:

VS Codeを介さなくてもSSHクライアント単体で接続できない場合は、問題はVS Code自体ではなく、ネットワーク設定、SSHクライアント設定、SSHサーバー設定、または認証情報にあります。VS Codeの問題は後回しにして、まずはSSHクライアント単体での接続を成功させることに注力してください。以下のステップ2〜4は、主にこの段階でのトラブルシューティングに役立ちます。

【重要】SSHクライアント単体で接続できるが、VS Codeから接続できない場合:

SSHクライアント単体では問題なく接続できるのに、VS Codeから接続できない場合は、問題はVS Code固有の設定や、VS Code Serverのインストール・実行に関する可能性が高くなります。この場合は、ステップ5以降に焦点を当ててください。

ステップ2: ネットワーク関連の確認(SSH単体接続ができない場合)

SSHクライアント単体で接続できない場合に、ネットワークが原因である可能性を探ります。

  1. pingによる到達性確認:
    • リモートサーバーのIPアドレスまたはホスト名に対してpingを実行し、ネットワーク的に到達可能かを確認します。
      bash
      ping hostname_or_ip
    • pingが成功すれば、基本的なIPレベルでの到達性はあります。失敗する場合(「Request timed out」や「Destination Host Unreachable」など)は、クライアントからサーバーまでの経路に問題があるか、サーバーが起動していないか、サーバー側のファイアウォールがICMP(pingが使用するプロトコル)をブロックしている可能性があります。
  2. traceroute/tracertによる経路確認:
    • クライアントからサーバーまでのネットワーク経路を確認します。経路上でどこまで到達できているか、どのルーターでパケットがドロップされている可能性があるかがわかります。
      bash
      traceroute hostname_or_ip # Linux/macOS
      tracert hostname_or_ip # Windows
    • 出力を見て、途中で応答がなくなる部分がないか確認します。
  3. Telnetまたはnc (netcat) によるポート到達性確認:
    • リモートサーバーのSSHポート(デフォルト22)に対して、クライアントからTCP接続が可能かを確認します。pingが通っても、特定のポートがファイアウォールでブロックされている可能性をこれで確認できます。
      bash
      telnet hostname_or_ip ssh_port # 例: telnet 192.168.1.100 22
      # または nc (netcat) を使用
      nc -zv hostname_or_ip ssh_port # 例: nc -zv 192.168.1.100 22
    • telnetの場合、接続に成功すると画面がクリアされるか、SSHサーバーからの応答(プロトコルバージョンなど)が表示されます。接続に失敗すると「Connection refused」や「Connection timed out」といったエラーが表示されます。
    • nc -zvの場合、「succeeded!」のようなメッセージが表示されれば成功です。
    • Connection refusedが表示される場合は、サーバー側でSSHデーモンが起動していないか、サーバー側のファイアウォールがそのポートを拒否しています。
    • Connection timed outが表示される場合は、サーバーまでの経路途中のファイアウォール(ルーターなど)が接続要求をブロックしている可能性が高いです。
  4. ファイアウォール設定の確認:
    • クライアント側: ローカルマシンのファイアウォール設定を開き、アウトバウンド(送信)のSSH接続(通常TCP 22番ポート、またはサーバーで設定されたポート)が許可されているか確認します。セキュリティソフトウェア(ウイルス対策ソフトなど)の設定も確認が必要です。
    • サーバー側: リモートサーバー上で動作しているファイアウォールソフトウェア(iptables, firewalld, ufwなど)の設定を確認し、クライアントからのSSHポートへのインバウンド(受信)接続が許可されているか確認します。特定のIPアドレスやネットワーク範囲からの接続のみ許可されている設定になっている場合もあります。
    • 中間機器: クライアントとサーバーの間にあるルーターや企業のファイアウォールなど、ネットワーク機器の設定を確認します。特にインターネット越しに接続する場合、サーバー側のネットワークにあるルーターで、SSHポートへの通信がサーバーのプライベートIPアドレスに正しくポートフォワーディングされているか確認が必須です。
  5. DNS設定の確認:
    • ホスト名で接続している場合、nslookupdigコマンドを使ってそのホスト名が正しいIPアドレスに解決されるか確認します。
      bash
      nslookup hostname
      dig hostname
    • 誤ったIPアドレスが表示されたり、名前解決自体ができなかったりする場合は、クライアント側のDNS設定またはDNSサーバー側の設定に問題があります。一時的に~/.ssh/configHostNameに直接IPアドレスを指定して接続できるか試すことで、DNSの問題かどうかの切り分けができます。

ステップ3: サーバー側の確認(SSH単体接続ができない場合)

サーバー側でSSH接続を受け付けるための設定や状態に問題がないか確認します。これらの確認は、通常、サーバーに別の手段(コンソール、別のユーザーでSSHログイン、またはサーバー管理パネル)でアクセスして行います。

  1. SSHデーモン(sshd)の起動状態確認:
    • リモートサーバーにログインし、SSHサービスが実行されているか確認します。
      bash
      # systemdを使用しているシステム (CentOS 7+, Ubuntu 15.04+, Debian 8+)
      sudo systemctl status sshd
      # SysVinitを使用しているシステム (CentOS 6, Ubuntu 14.04-)
      sudo service ssh status
    • SSHサービスが停止している場合は起動します。
      bash
      sudo systemctl start sshd
      # または
      sudo service ssh start
    • サーバー起動時に自動起動する設定になっているかも確認します。
      bash
      sudo systemctl enable sshd
  2. sshd_configファイルの設定確認:
    • SSHデーモンの設定ファイル/etc/ssh/sshd_configを開き、以下の項目を確認します。ファイルの変更には通常root権限が必要です。
      • Port: 設定されているポート番号が、クライアント側で指定しているポートと一致しているか確認します。デフォルトは22です。
      • ListenAddress: 特定のIPアドレスからの接続のみを許可する設定になっていないか確認します。通常はコメントアウトされているか、0.0.0.0::になっています。
      • PasswordAuthentication: パスワード認証を使用する場合はyesになっているか確認します。公開鍵認証のみを使用する場合はnoで問題ありません。
      • PubkeyAuthentication: 公開鍵認証を使用する場合はyesになっているか確認します。
      • AuthorizedKeysFile: authorized_keysファイルのパスが正しく設定されているか確認します(デフォルトは.ssh/authorized_keys)。
      • AllowUsers, DenyUsers, AllowGroups, DenyGroups: ログインしようとしているユーザーやグループがこれらの設定によって拒否されていないか確認します。
      • PermitRootLogin: rootユーザーでログインしようとしている場合、この設定がyesまたはprohibit-password, without-passwordになっている必要があります。セキュリティの観点からはrootでの直接ログインは推奨されません。
    • sshd_configファイルを変更した場合は、SSHサービスを再起動して設定を反映させます。
      bash
      sudo systemctl restart sshd
      # または
      sudo service ssh restart

      注意: sshd_configの記述ミスはSSH接続自体ができなくなる重大な問題を引き起こす可能性があります。編集前に必ずバックアップを取ることを強く推奨します。また、設定変更後、既存の別のSSHセッションが切断されないことを確認してから、変更元のセッションを閉じると安全です。設定ファイルのチェックコマンド(sudo sshd -t)も利用できます。
  3. 認証ログの確認:
    • SSH接続の試行に関するログは、サーバー側の認証ログファイルに記録されています。これらのログを確認することで、なぜ認証が失敗しているのか(例: パスワード間違い、公開鍵が見つからない、パーミッション問題など)の詳細な理由がわかります。
      • Debian/Ubuntu系: /var/log/auth.log
      • RHEL/CentOS/Fedora系: /var/log/secure
    • ログファイルを開き、接続試行時のタイムスタンプ周辺のメッセージを確認します。
  4. サーバー側のファイアウォール設定確認:
    • サーバーで動作しているファイアウォール(ufw, firewalld, iptablesなど)の設定を確認し、SSHポートへの接続が許可されているか確認します。
      • ufw: sudo ufw status (sudo ufw allow sshsudo ufw allow 22/tcp で許可)
      • firewalld: sudo firewall-cmd --list-all (sudo firewall-cmd --zone=public --add-service=ssh --permanent, sudo firewall-cmd --reload で許可)
      • iptables: sudo iptables -nL
    • 不要なルールを削除したり、適切なポート(デフォルト22または変更したポート)からの接続を許可するルールを追加したりします。
  5. SELinux/AppArmorの状態確認:
    • これらのセキュリティ機構が有効になっている場合、SSHに関連するファイルアクセスやプロセス実行を制限している可能性があります。
      • SELinux: sestatus コマンドで状態を確認します。getenforce で強制モードか permissive モードか確認できます。ログは/var/log/audit/audit.logなどに出力されます。一時的にsetenforce 0でPermissiveモードに切り替えて接続できるか試すことも、原因の切り分けに役立ちますが、セキュリティリスクがあるため注意が必要です。
      • AppArmor: sudo apparmor_status コマンドで状態を確認します。ログは/var/log/auth.log/var/log/syslogなどに出力されます。
    • これらのログを確認し、SSHや認証に関連するDenialメッセージがないかを探します。
  6. 公開鍵認証に関するファイルパーミッション確認(公開鍵認証の場合):
    • サーバー側のログインユーザーのホームディレクトリ内の.sshディレクトリとauthorized_keysファイルのパーミッションが正しく設定されているか確認します。
      bash
      ls -ld ~/.ssh
      ls -l ~/.ssh/authorized_keys
    • 正しいパーミッションは通常以下の通りです(SSHデーモンの設定による場合がありますが、これが一般的です)。
      • ~/.ssh ディレクトリ: drwx------ または drwxr-xr-x (700 または 755)。所有者はログインユーザーである必要があります。
      • ~/.ssh/authorized_keys ファイル: -rw------- (600)。所有者はログインユーザーである必要があります。
    • パーミッションが緩すぎる場合は、chmodコマンドで修正します。
      bash
      chmod 700 ~/.ssh
      chmod 600 ~/.ssh/authorized_keys
    • 所有者が正しくない場合は、chownコマンドで修正します。
      bash
      sudo chown your_username:your_group ~/.ssh
      sudo chown your_username:your_group ~/.ssh/authorized_keys
  7. サーバー側のリソース確認:
    • top, htop, df -hなどのコマンドで、サーバーのCPU使用率、メモリ使用率、ディスク空き容量などを確認します。リソース不足が原因でSSHデーモンの応答が遅くなったり、VS Code Serverのインストールに失敗したりしている可能性があります。

ステップ4: クライアント側の確認(SSH単体接続ができない場合)

ローカルマシンのSSHクライアント設定や環境に問題がないか確認します。

  1. SSHクライアントのインストールとパス:
    • コマンドプロンプト/ターミナルでssh -Vを実行し、SSHクライアントがインストールされており、コマンドが実行できるか確認します。パスが通っていない場合は、環境変数PATHにSSHクライアントの実行ファイルが含まれるディレクトリを追加します。
  2. ~/.ssh/configファイルの記述ミス再確認:
    • ステップ0でも触れましたが、再度設定ファイルを開き、設定項目のスペル、ホスト名やIPアドレス、ポート番号、ユーザー名、IdentityFileのパスなどに誤りがないか確認します。特にコメントアウトされているつもりが有効になっている、逆に必要な設定がコメントアウトされているといったミスがないか確認します。
    • Windowsの場合、~はユーザーディレクトリ(例: C:\Users\YourUsername)を指します。~/.ssh/configC:\Users\YourUsername\.ssh\configに、IdentityFile ~/.ssh/id_rsaC:\Users\YourUsername\.ssh\id_rsaを指します。パスの区切り文字はWindowsでも/を使うのが一般的です。
  3. 秘密鍵ファイルのパーミッション確認(公開鍵認証の場合):
    • クライアント側の秘密鍵ファイル(~/.ssh/id_rsa~/.ssh/configIdentityFileに指定したファイル)のパーミッションを確認します。Windowsの場合はエクスプローラーでファイルのプロパティを開き、セキュリティタブで確認します。Linux/macOSではls -l ~/.ssh/your_private_keyコマンドで確認します。
    • 秘密鍵のパーミッションは、所有者のみ読み書き可能(-rw——-, 600)である必要があります。これより緩いパーミッション(例: 644, 666, 777など)になっていると、SSHクライアントはセキュリティ上の理由でその鍵の使用を拒否します。
    • パーミッションが緩い場合は、chmod 600 ~/.ssh/your_private_keyで修正します。Windowsではエクスプローラーのセキュリティ設定で、所有者以外のユーザーの権限を削除または拒否に設定します。
  4. 秘密鍵/公開鍵のファイルパスとファイル名:
    • ~/.ssh/configIdentityFileを指定している場合、そのパスが正しいか、ファイル名が正確か確認します。指定しない場合、SSHクライアントはデフォルトの場所(~/.ssh/id_rsaなど)を探します。その場所に秘密鍵ファイルが置かれているか確認します。
  5. Known Hostsファイルの問題:
    • リモートサーバーのホストキーが変更された場合、~/.ssh/known_hostsファイルに記録された情報と不一致が生じ、「Host key verification failed.」というエラーで接続が拒否されます。
    • この問題を解決するには、known_hostsファイルを開き、エラーメッセージで示されているホスト名またはIPアドレスに関連する行を削除します。最も簡単な方法は、エラーメッセージに示されているコマンド(例: ssh-keygen -R hostname_or_ip)を実行することです。
    • あるいは、known_hostsファイル全体をバックアップとして別の場所に移動またはリネームし、新しい接続時に再度ホストキーを受け入れることで問題を回避できます(ただし、これはセキュリティリスクを理解した上で実施してください)。
  6. パスフレーズの入力ミス:
    • 公開鍵認証で使用する秘密鍵にパスフレーズが設定されている場合、接続時にパスフレーズの入力を求められます。この入力を間違えている可能性があります。正確なパスフレーズを入力してください。
    • 毎回パスフレーズを入力するのが面倒な場合は、ssh-agentに秘密鍵を登録することを検討してください。
  7. SSHエージェントの状態:
    • ssh-agentを使用している場合、エージェントが実行されているか、秘密鍵がエージェントに登録されているか確認します。
      bash
      ssh-add -l
    • 秘密鍵が表示されなければ、ssh-add ~/.ssh/your_private_keyで追加します。
  8. クライアント側のファイアウォール:
    • ステップ2でも触れましたが、ローカルマシンのファイアウォールがSSHクライアントの外部接続をブロックしていないか再度確認します。

ステップ5: VS Code側の確認(SSH単体接続は成功する場合)

SSHクライアント単体では接続できるのに、VS Codeから接続できない場合に確認します。この場合、問題はVS Code Remote – SSH拡張機能や、リモートサーバーにインストールされるVS Code Serverに関連している可能性が高いです。

  1. VS Codeの出力パネルの確認:
    • VS CodeでSSH接続を試みた後、画面下部のパネルを開き、「出力」タブを選択します。ドロップダウンメニューから「Remote – SSH」を選択すると、接続試行の詳細なログが表示されます。
    • このログには、VS CodeがどのようにSSHコマンドを実行しているか、VS Code Serverをリモートにインストールしようとしているか、認証がどのように行われているかなどの情報が含まれています。エラーメッセージが表示されていないか、どの段階で処理が停止しているかを確認します。ここに表示されるエラーメッセージは、問題特定の非常に重要な手がかりとなります。
  2. VS Code Serverのインストールログとステータス:
    • VS Codeは初回接続時にリモートサーバーに~/.vscode-server/bin/<commit id>/といったディレクトリ構造でVS Code Serverをダウンロード・インストールしようとします。このインストールが失敗すると、VS Codeからの接続は完了しません。
    • Remote – SSH出力パネルのログに、VS Code Serverのダウンロードや実行に関するエラーが出力されていないか確認します(例: 「Failed to install VS Code Server」など)。
    • サーバー側の~/.vscode-server/ディレクトリ以下に、インストールログファイル(例: .vscode-server/install.log)が存在する場合があり、そこに詳細なエラーが記録されていることがあります。サーバーにSSHでログインしてこのファイルを確認します。
    • サーバー側のディスク容量が不足している、必要なライブラリ(例: glibcなど)が不足している、サーバー側のアーキテクチャに対応していない(可能性は低いですが)、またはパーミッション問題などがインストール失敗の原因として考えられます。
    • インストールされたVS Code Serverプロセスがサーバー上で起動しているか確認することもできます (ps aux | grep vscode-server)。
  3. VS Codeキャッシュのクリア:
    • ごくまれに、VS Codeのキャッシュが破損して問題が発生することがあります。VS Codeを完全に終了し、ユーザーデータディレクトリ内のキャッシュ関連のファイルを削除または移動してから再度VS Codeを起動してみることを試すことができます。
    • ユーザーデータディレクトリの場所:
      • Windows: %APPDATA%\Code
      • macOS: $HOME/Library/Application Support/Code
      • Linux: $HOME/.config/Code
    • このディレクトリ内のCachedData, Cache, GPUCacheなどを削除またはリネームしてみてください。ただし、これによりVS Codeの設定や拡張機能の情報が失われる可能性があるため、事前にバックアップを取るか、慎重に行ってください。
  4. 他の拡張機能の無効化:
    • インストール済みの他のVS Code拡張機能がRemote – SSHと競合している可能性もゼロではありません。問題の切り分けのために、一度すべての拡張機能を無効にしてからSSH接続を試み、接続できるようであれば、一つずつ拡張機能を有効にしてどの拡張機能が問題を引き起こしているか特定するという方法があります。
    • VS Codeを拡張機能を無効にした状態で起動するには、コマンドパレット(Ctrl+Shift+PまたはCmd+Shift+P)を開き、「Developer: Reload Window With Extensions Disabled」を選択します。
  5. VS Codeの再インストール:
    • 上記の手順でも解決しない場合、最終手段としてVS Code本体およびRemote – SSH拡張機能を一度アンインストールし、再度クリーンな状態でインストールし直すことも検討します。ユーザーデータディレクトリをクリーンアップした上で再インストールすると、より効果的かもしれません。

ステップ6: 認証方法の切り分け

接続エラーメッセージがPermission deniedである場合、認証に問題があります。公開鍵認証を使っている場合は、一時的にパスワード認証を許可してどちらに問題があるかを切り分けることが有効です。

  1. サーバー側でパスワード認証を一時的に許可:
    • リモートサーバーの/etc/ssh/sshd_configファイルを編集し、PasswordAuthentication yesに設定します。コメントアウトされている場合はコメントアウトを解除します。
    • sshdサービスを再起動して設定を反映させます。
    • 注意: 設定変更前に必ずバックアップを取り、変更後には再度noに戻すことを忘れないでください。パスワード認証はセキュリティリスクを高める可能性があります。
  2. VS CodeまたはSSHクライアントからパスワード認証で接続:
    • ~/.ssh/configPasswordAuthentication yesを設定するか(または何も設定しない)、VS Codeから接続を試みます。パスワードの入力を求められるはずです。
    • これで接続できた場合、問題は公開鍵認証の設定(秘密鍵、公開鍵、authorized_keysファイル、パーミッションなど)にあることが確定します。ステップ3とステップ4の公開鍵認証に関連する項目を再度詳しく確認してください。
  3. パスワード認証でも接続できない場合:
    • パスワード認証でも接続できない場合、問題は認証情報自体ではなく、サーバー側のsshd設定(AllowUsers/DenyUsersなど)、PAM設定、またはサーバー側のファイアウォールやSELinux/AppArmorなど、認証以前の段階で接続が拒否されている可能性が高くなります。ステップ3のサーバー側の確認事項を再度重点的に確認してください。

ステップ7: 詳細デバッグ

これまでのステップで問題が特定できない場合、さらに詳細な情報を取得して分析する必要があります。

  1. SSHクライアントの-vvv出力の詳細分析:
    • ssh -vvv user@hostnameコマンドの出力を最初から最後まで注意深く読みます。特に、認証方法の試行順序(debug1: Offering public key:など)、失敗した認証方法(debug1: Authentications that can continue: publickey,passwordなど)、そして最終的なエラーメッセージに注目します。パーミッションエラーや鍵ファイル関連のエラーはここで詳細に表示されます。
  2. VS Code Remote – SSH出力ログの詳細分析:
    • VS Codeの出力パネルの「Remote – SSH」ログをもう一度、最初から最後まで読み直します。SSHコマンドの実行内容、VS Code ServerのダウンロードURL、インストールの進捗、エラーメッセージ、サーバー側での処理状況などが表示されます。
    • 特にVS Code Serverのインストールや起動に関するエラーメッセージは、原因を特定する上で非常に重要です。
  3. サーバー側のsshdログ(デバッグレベルを上げて):
    • サーバー側の/etc/ssh/sshd_configLogLevel DEBUG3(またはDEBUG)に設定し、sshdを再起動すると、認証ログ(/var/log/auth.logまたは/var/log/secure)により詳細なSSH接続試行のログが出力されます。
    • 接続試行後、このログファイルを確認します。認証の各ステップ(鍵の読み込み、ユーザー名の確認、パーミッションチェックなど)に関する詳細な情報が得られます。問題解決後にはログレベルを元に戻すことを忘れないでください。

よくあるエラーメッセージとその対処法

トラブルシューティング中に遭遇しやすい具体的なエラーメッセージと、それぞれの典型的な原因および対処法をまとめます。

  • ssh: connect to host hostname port 22: Connection refused
    • 原因: クライアントはサーバーに到達できるが、サーバー側でSSH接続を拒否している。SSHデーモンが起動していない、またはサーバー側のファイアウォールがSSHポートをブロックしている可能性が高い。
    • 対処法:
      • サーバー上でSSHデーモン(sshd)が起動しているか確認し、必要であれば起動する(ステップ3-1)。
      • サーバー側のファイアウォール設定を確認し、SSHポート(デフォルト22)への接続が許可されているか確認する(ステップ3-4)。
      • サーバーのsshd_configPort設定が正しいか確認する(ステップ3-2)。
  • ssh: connect to host hostname port 22: Connection timed out
    • 原因: クライアントからサーバーまでのネットワーク経路途中でパケットが失われているか、中間にあるファイアウォールやルーターが接続要求をブロックしている可能性が高い。
    • 対処法:
      • クライアントからサーバーへpingが通るか確認する(ステップ2-1)。
      • traceroute/tracertでネットワーク経路を確認し、どこまで到達できているか確認する(ステップ2-2)。
      • telnetやncでサーバーのSSHポートに到達できるか確認する(ステップ2-3)。
      • クライアント側、サーバー側、および特にその間にあるネットワーク機器(ルーター、企業ファイアウォールなど)のファイアウォール設定を確認する(ステップ2-4)。ポートフォワーディングが必要な場合は正しく設定されているか確認する。
  • Permission denied (publickey,password).
    • 原因: 認証に失敗した。指定されたすべての認証方法(公開鍵、パスワードなど)でログインできなかった。ユーザー名が間違っている、パスワードが間違っている、公開鍵認証の設定ミスなどが考えられる。
    • 対処法:
      • ログインユーザー名が正しいか確認する(~/.ssh/configUser設定やSSHコマンド)。
      • パスワード認証を使用している場合、パスワードが正しいか確認する。サーバー側でパスワード認証が許可されているか(sshd_configPasswordAuthentication yes)確認する(ステップ3-2, ステップ6)。
      • 公開鍵認証を使用している場合:
        • クライアント側の秘密鍵ファイルが正しいか、パーミッションが600になっているか確認する(ステップ4-3, 4-4)。
        • サーバー側のユーザーの~/.ssh/authorized_keysファイルに、対応する公開鍵が正しく登録されているか確認する(ステップ3-6)。
        • サーバー側の.sshディレクトリとauthorized_keysファイルのパーミッションが正しいか(700/.ssh, 600/authorized_keys)確認する(ステップ3-6)。
        • 秘密鍵にパスフレーズが設定されている場合、パスフレーズが正しいか確認する。ssh-agentを使用している場合は正しく登録されているか確認する(ステップ4-6, 4-7)。
        • サーバー側の認証ログ(/var/log/auth.logなど)を確認し、認証失敗の具体的な理由を探る(ステップ3-3)。
  • Host key verification failed.
    • 原因: 接続先のサーバーのホストキーが、クライアントの~/.ssh/known_hostsファイルに記録されているものと異なっている。これはサーバーが再インストールされた、サーバーのホスト名/IPアドレスが変更された、あるいは中間者攻撃を受けている可能性がある場合に発生する。
    • 対処法:
      • 意図的にサーバーのホストキーが変更された(例: サーバーを立て直した)場合は、~/.ssh/known_hostsファイルから該当するホスト名の行を削除し、再接続時に新しいホストキーを受け入れる(ステップ4-5)。エラーメッセージに削除すべき行番号または削除コマンド(ssh-keygen -R hostname_or_ip)が表示されることが多いので、それに従う。
      • ホストキーが変更される心当たりがない場合は、中間者攻撃の可能性も考慮し、サーバーの正規のホストキーを確認するなど慎重に対応する。
  • Bad owner or permissions on /path/to/your/private/key
    • 原因: クライアント側の秘密鍵ファイルの所有者やパーミッションが緩すぎる。SSHクライアントはセキュリティ上の理由でこのような秘密鍵の使用を拒否する。
    • 対処法:
      • 秘密鍵ファイルのパーミッションを所有者のみ読み書き可能(600)に設定する(chmod 600 /path/to/your/private/key、Windowsの場合はエクスプローラーのセキュリティ設定)(ステップ4-3)。
  • Bad owner or permissions on /home/your_username/.ssh/config
    • 原因: クライアント側の~/.ssh/configファイルの所有者やパーミッションが緩すぎる。
    • 対処法:
      • ~/.ssh/configファイルのパーミッションを所有者のみ読み書き可能(600)に設定するのが安全です(chmod 600 ~/.ssh/config)。
  • VS Code出力パネルの「Failed to install VS Code Server」
    • 原因: VS CodeがリモートサーバーにVS Code Serverをダウンロードまたはインストールするのに失敗した。サーバー側のディスク容量不足、必要なライブラリの不足、パーミッション問題、ネットワークの問題(サーバーがインターネットに出られないなど)などが考えられる。
    • 対処法:
      • サーバー側のディスク空き容量を確認する(df -h)(ステップ3-7)。
      • サーバーにSSHでログインし、~/.vscode-server/ディレクトリ内のインストールログファイルを確認する(例: .vscode-server/install.log)。具体的なエラーメッセージが記録されていることが多い(ステップ5-2)。
      • サーバーがインターネットに接続できるか確認する。VS Code Serverのダウンロードにはインターネット接続が必要です。
      • サーバーのOSバージョンが古い場合、サポート対象外の可能性があります。VS Code Remote – SSHの要件を確認する。
      • サーバー側の.vscode-serverディレクトリやその親ディレクトリに対するユーザーの書き込み権限があるか確認する。

高度なトラブルシューティング / パフォーマンス改善

基本的なトラブルシューティングで解決しない場合や、接続後のパフォーマンスに問題がある場合に検討する項目です。

  • ProxyCommand / ProxyJump の利用:
    • 直接SSH接続できないサーバー(例: DMZ内にあるサーバー)に、一度踏み台サーバーを経由して接続する必要がある場合があります。~/.ssh/configProxyCommandProxyJumpオプションを使用することで、VS Codeから透過的に踏み台経由の接続を設定できます。
    • 例 (ProxyJumpを使用する場合):
      “`config
      Host internal-server
      HostName 192.168.10.100
      User internal_user
      ProxyJump bastion_user@bastion_server_ip

      Host bastion_server_ip # 踏み台サーバーの設定 (必要に応じて)
      HostName bastion_server_ip
      User bastion_user
      ``
      *
      ProxyCommandはより柔軟な設定が可能ですが、設定がやや複雑になります。詳細はman ssh_configで確認してください。
      * **SSHポート転送(Port Forwarding):**
      * SSH接続自体はできるが、リモートサーバー上の特定のサービス(例: データベース、ウェブサーバー、Jupyter Notebookなど)にローカルマシンからアクセスしたい場合にポート転送を使用します。
      *
      ~/.ssh/configLocalForward(ローカルのポートをリモートのサービスに転送)やRemoteForward(リモートのポートをローカルのサービスに転送)を設定できます。
      * VS CodeのRemote Explorerでも、接続後のサーバーに対してポート転送を設定する機能があります。
      * ポート転送がうまくいかない場合は、サーバー側やクライアント側のファイアウォールが、転送に使用するポートをブロックしていないか確認する必要があります。
      * **帯域幅や遅延によるパフォーマンス問題への対処:**
      * ネットワークの遅延が大きい場合や帯域幅が狭い場合、VS Codeでの操作(ファイルの保存、ターミナル操作など)が遅くなることがあります。
      *
      sshd_config~/.ssh/configCompression yesを設定することで、データ転送量を減らしパフォーマンスが改善する場合があります。ただし、CPUリソースを消費するため、サーバーやクライアントの性能によっては逆効果になることもあります。
      * 使用する暗号方式(Cipher)やMAC(Message Authentication Code)アルゴリズムを変更することで、速度が改善する場合があります。ただし、これは高度な設定であり、互換性やセキュリティへの影響を理解して行う必要があります。
      ssh -vvvの出力でどのアルゴリズムが使用されているか確認できます。
      * **SSH接続のタイムアウトを防ぐ設定:**
      * 一定時間操作がないとSSH接続が切断される場合、ネットワーク機器(ルーターなど)やサーバー側の設定でアイドルセッションが切断されている可能性があります。
      * クライアント側の
      ~/.ssh/configServerAliveInterval 60(60秒ごとにサーバーへ生存信号を送る)を設定することで、接続が維持されやすくなります。
      * サーバー側の
      /etc/ssh/sshd_configClientAliveInterval 60およびClientAliveCountMax 3(60秒ごとにクライアントへ信号を送り、3回応答がなければ切断)を設定することでも同様の効果が得られます。
      * **複数のSSH設定を管理:**
      * 多くのサーバーに接続する場合、
      ~/.ssh/config`ファイルが長くなり管理しにくくなることがあります。includeディレクティブを使ってファイルを分割したり、VS CodeのSettings Sync機能で設定ファイルを複数のマシンで同期したりといった方法があります。

まとめ

VS Code Remote – SSH接続が「つながらない」という問題は、ネットワーク、SSHサーバー、SSHクライアント、認証、そしてVS Code自身といった、様々な要因が複雑に絡み合って発生することが多いです。問題解決のためには、焦らず、今回ご紹介したような体系的なアプローチで一つずつ原因候補を潰していくことが最も効果的です。

トラブルシューティングの基本的な流れを再確認します。

  1. 基本的な確認: サーバーは起動しているか、ネットワークは接続されているか、設定ファイルに明らかなミスはないか。
  2. SSHクライアント単体での接続テスト: まずVS Codeを介さずに、標準のsshコマンドで接続できるかを確認する。
  3. 問題の切り分け:
    • SSHクライアント単体でも接続できない場合 → ネットワーク、SSHサーバー、SSHクライアント、認証設定に問題がある可能性が高い。ステップ2〜4を中心に調査する。
    • SSHクライアント単体では接続できるが、VS Codeから接続できない場合 → VS CodeやVS Code Serverに問題がある可能性が高い。ステップ5を中心に調査する。
  4. エラーメッセージの確認: SSHコマンドの出力(-vオプションを使う)、VS Codeの出力パネル(Remote – SSH)、サーバー側の認証ログなどを確認し、具体的なエラーメッセージから原因の手がかりを得る。
  5. 一つずつ原因を排除: ネットワーク設定、ファイアウォール、SSHデーモン設定、認証方法(パスワード、公開鍵、パーミッション)、~/.ssh/configknown_hosts、VS Code Serverの状態など、考えられる原因を順番に確認し、問題箇所を特定する。
  6. 設定の修正と再試行: 問題箇所を特定したら、適切な設定変更や修復を行い、再度接続を試みる。設定変更は必ずバックアップを取った上で行い、特にサーバー側のSSH設定変更は慎重に行う。

問題解決のための心構え:

  • 落ち着いて、論理的に: 感情的にならず、冷静に一つずつ確認を進めます。
  • 情報を集める: エラーメッセージ、ログ、コマンドの出力結果など、得られる情報はすべて問題解決の手がかりになります。
  • 切り分けを徹底する: 問題を小さな範囲に絞り込むことで、原因特定が容易になります。SSH単体での接続テストはそのための重要なステップです。
  • 変更は一つずつ: 複数の設定を同時に変更すると、何が問題だったのか、あるいは新たな問題を引き起こしたのか分からなくなります。変更は最小限に留め、その都度接続を試みます。

それでも解決しない場合のリソース:

  • 公式ドキュメント: Visual Studio Code Remote – SSHの公式ドキュメント(https://code.visualstudio.com/docs/remote/ssh)を確認します。最新の情報や既知の問題について記載されていることがあります。
  • SSHクライアント/サーバーのドキュメント: OpenSSHのmanページ(man ssh_config, man sshd_configなど)や、使用しているOSのSSH関連ドキュメントを確認します。
  • VS Code GitHubリポジトリのIssue: 遭遇している問題がVS CodeやRemote – SSH拡張機能のバグである可能性もゼロではありません。VS CodeのGitHubリポジトリで類似のIssueが報告されていないか検索したり、自身でIssueを報告したりすることも検討します。
  • 開発者コミュニティやフォーラム: Stack OverflowやQiita、Redditなどの開発者コミュニティで質問したり、他のユーザーが似た問題をどのように解決したか検索したりします。質問する際は、実行した手順、エラーメッセージ、環境(OSバージョン、VS Codeバージョン、SSHバージョンなど)を具体的に記載すると、より的確なアドバイスを得やすくなります。

VS Code Remote – SSH接続は、一度正しく設定できれば非常に強力な開発環境を提供してくれます。今回のガイドが、あなたのSSH接続トラブルを解決し、快適なリモート開発を実現するための一助となれば幸いです。


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