【クラブW杯決勝】レアル・マドリード対アル・ヒラル戦レビュー:勝敗を分けた要因

【クラブW杯決勝】レアル・マドリード対アル・ヒラル戦レビュー:勝敗を分けた要因

2023年2月11日、モロッコで開催されたFIFAクラブワールドカップ決勝戦は、欧州王者レアル・マドリードとアジア王者アル・ヒラルの激突となった。結果は5-3でレアル・マドリードが勝利し、クラブ史上最多となる5回目のクラブワールドカップ制覇を達成したが、アル・ヒラルも勇敢な戦いを見せ、両チームの個の力、戦術、メンタルのぶつかり合いは、非常に見応えのある試合展開となった。

本稿では、この激戦の模様を詳細に振り返り、勝敗を分けた要因を多角的に分析していく。戦術的な視点、選手のパフォーマンス、ゲームの流れ、そして両チームの戦略的選択などを掘り下げ、レアル・マドリードが勝利を掴んだ理由、そしてアル・ヒラルが善戦した背景を明らかにする。

1. 試合概要:スコア、スタッツ、出場メンバー

  • スコア: レアル・マドリード 5 – 3 アル・ヒラル
  • 得点者:
    • レアル・マドリード: ヴィニシウス・ジュニオール (13分, 69分)、フェデリコ・バルベルデ (18分, 58分)、カリム・ベンゼマ (54分)
    • アル・ヒラル: ムサ・マレガ (26分)、ルシアーノ・ビエット (63分, 79分)
  • スタッツ:

    • ボール支配率: レアル・マドリード 56% – アル・ヒラル 44%
    • シュート数: レアル・マドリード 18 – アル・ヒラル 12
    • シュートオンターゲット: レアル・マドリード 9 – アル・ヒラル 6
    • パス成功率: レアル・マドリード 88% – アル・ヒラル 82%
    • コーナーキック: レアル・マドリード 7 – アル・ヒラル 3
  • 出場メンバー:

    • レアル・マドリード:
      • GK: アンドリー・ルニン
      • DF: ダニエル・カルバハル (62分 ナチョ・フェルナンデス)、エデル・ミリトン、ダビド・アラバ、エドゥアルド・カマヴィンガ
      • MF: ルカ・モドリッチ (74分 アルバロ・ロドリゲス)、トニ・クロース、オーレリアン・チュアメニ (62分 ダニ・セバージョス)
      • FW: フェデリコ・バルベルデ、カリム・ベンゼマ (80分 マルコ・アセンシオ)、ヴィニシウス・ジュニオール
    • アル・ヒラル:
      • GK: アブドゥラー・アル=ムアイウフ
      • DF: サウード・アブドゥルハミド、ジャン・ヒョンス、アリ・アル=ブライヒ、ハレド・アル=ガナム (86分 ナセル・アル=ダウサリ)
      • MF: グスタボ・クエジャル、アンドレ・カリージョ (86分 ミシェル・デウリベイラ)、モハメド・カンノ
      • FW: ムサ・マレガ (86分 オディオン・イガロ)、ルシアーノ・ビエット、サレム・アル=ドサリ

2. ゲームの流れ:序盤の主導権、アル・ヒラルの反撃、そしてレアル・マドリードの決定力

試合は序盤からレアル・マドリードが主導権を握った。ボールを支配し、サイド攻撃を中心にアル・ヒラルゴールに迫り、13分にはヴィニシウス・ジュニオールが先制点を奪取。さらに18分にはバルベルデが追加点を挙げ、レアル・マドリードは早い時間帯に2点のリードを奪った。

しかし、アル・ヒラルも黙ってはいなかった。26分にはマレガがドリブルで持ち込み、GKとの1対1を制して1点を返した。その後もカウンターを中心にレアル・マドリードの守備陣を脅かし、試合のペースを掴みかけた。

後半に入ると、レアル・マドリードは再びギアを上げ、54分にはベンゼマが、58分にはバルベルデがそれぞれゴールを決め、リードを広げた。アル・ヒラルも63分と79分にビエットが2ゴールを挙げるなど粘りを見せたが、69分にヴィニシウス・ジュニオールが再びゴールを決め、レアル・マドリードが突き放し、最終的に5-3で勝利を収めた。

3. 勝敗を分けた要因:戦術、選手のパフォーマンス、戦略的選択

ここでは、試合を詳細に分析し、レアル・マドリードが勝利を掴んだ要因、そしてアル・ヒラルが善戦した背景を明らかにする。

3.1 レアル・マドリードの戦術的優位性

  • ハイプレスとボール奪取: レアル・マドリードは、試合序盤から積極的にハイプレスを仕掛け、アル・ヒラルのビルドアップを阻害した。特に、ヴィニシウス・ジュニオールとバルベルデは、前線からのプレッシングで相手DFにプレッシャーをかけ、ボール奪取を促した。このハイプレスによって、アル・ヒラルは自陣からの脱出が困難になり、攻撃の機会を減らされた。
  • サイド攻撃の多様性: レアル・マドリードは、ヴィニシウス・ジュニオールを擁する左サイドからの攻撃を軸に、右サイドからの攻撃も効果的に組み合わせて、アル・ヒラルの守備陣を揺さぶった。ヴィニシウス・ジュニオールは、その圧倒的なドリブルスキルで相手DFを翻弄し、チャンスを量産。また、カルバハルは、積極的に攻撃参加し、右サイドの攻撃に厚みをもたらした。
  • 中盤の創造性: モドリッチとクロースという経験豊富な中盤の選手たちは、試合を通して正確なパスと卓越したゲームコントロールで、チームの攻撃を牽引した。彼らは、前線の選手たちに効果的なパスを供給し、攻撃の起点となっただけでなく、守備においてもボール奪取やインターセプトで貢献し、チームの安定性を高めた。
  • セットプレーの活用: レアル・マドリードは、コーナーキックやフリーキックなどのセットプレーも効果的に活用し、チャンスを作り出した。特に、クロースの正確なキックは、相手ゴール前で脅威となり、セットプレーから得点の匂いを漂わせた。

3.2 アル・ヒラルの戦略と戦術

  • カウンターアタックの徹底: アル・ヒラルは、レアル・マドリードの攻撃を耐え忍び、カウンターアタックで得点を狙う戦術を採用した。マレガのスピードとドリブルスキル、ビエットの決定力を活かし、少ないチャンスをものにしようと試みた。実際に、マレガのゴールは、見事なカウンターアタックから生まれた。
  • 組織的な守備: アル・ヒラルは、5バックを基本とした組織的な守備で、レアル・マドリードの攻撃に対応しようとした。しかし、レアル・マドリードの攻撃陣の個の能力が高く、組織的な守備だけでは完全に抑え込むことができなかった。
  • 中盤の奮闘: クエジャルとカンノは、中盤で積極的にボールを奪取し、攻撃への繋ぎ役として奮闘した。しかし、モドリッチとクロースという世界最高峰のMFを相手に、中盤の支配権を握ることはできなかった。

3.3 選手のパフォーマンス

  • レアル・マドリード:
    • ヴィニシウス・ジュニオール: 2ゴールを挙げ、攻撃を牽引。ドリブル、パス、シュートの全てにおいて高いレベルのパフォーマンスを見せ、アル・ヒラルの守備陣を圧倒した。
    • フェデリコ・バルベルデ: 2ゴールを挙げ、中盤からの飛び出しでアル・ヒラルの守備陣を脅かした。また、守備においても積極的にボールを奪取し、チームに貢献した。
    • カリム・ベンゼマ: 1ゴールを挙げ、ベテランらしい落ち着いたプレーでチームを勝利に導いた。
    • ルカ・モドリッチ: 中盤でゲームをコントロールし、チームの攻撃を牽引。正確なパスと卓越した戦術眼で、アル・ヒラルの中盤を圧倒した。
    • トニ・クロース: 正確なパスとセットプレーで、チャンスを演出。ベテランらしい落ち着いたプレーで、チームの安定性を高めた。
  • アル・ヒラル:
    • ムサ・マレガ: 1ゴールを挙げ、スピードとドリブルスキルでレアル・マドリードの守備陣を脅かした。
    • ルシアーノ・ビエット: 2ゴールを挙げ、決定力の高さを証明。少ないチャンスをものにし、チームに希望を与えた。

3.4 戦略的選択

  • レアル・マドリード:
    • ハイプレス戦術の徹底: 試合序盤からハイプレスを仕掛け、アル・ヒラルのビルドアップを阻害し、主導権を握った。
    • サイド攻撃の重視: ヴィニシウス・ジュニオールを擁する左サイドからの攻撃を軸に、右サイドからの攻撃も効果的に組み合わせて、アル・ヒラルの守備陣を揺さぶった。
    • 中盤の選手の交代: 試合終盤には、モドリッチやチュアメニなどの主力選手を交代させ、フレッシュな選手を投入し、試合のクローズを図った。
  • アル・ヒラル:
    • カウンターアタック戦術の徹底: レアル・マドリードの攻撃を耐え忍び、カウンターアタックで得点を狙う戦術を採用した。
    • 5バックの採用: 守備を重視し、5バックを基本とした組織的な守備で、レアル・マドリードの攻撃に対応しようとした。
    • 攻撃的な選手の投入: 試合終盤には、イガロやデウリベイラなどの攻撃的な選手を投入し、同点、逆転を狙った。

4. 勝敗を分けた具体的なシーン分析

  • 13分のヴィニシウス・ジュニールの先制点: ベンゼマからのスルーパスを受けたヴィニシウス・ジュニオールが、冷静にゴールを決めた。このゴールは、レアル・マドリードに勢いを与え、アル・ヒラルにプレッシャーをかけた。アル・ヒラルのDFラインの裏を取る動き出しと、ヴィニシウス・ジュニオールの決定力が光ったシーンだった。
  • 26分のマレガのゴール: カウンターアタックから、マレガがドリブルで持ち込み、GKとの1対1を制してゴールを決めた。このゴールは、アル・ヒラルに希望を与え、試合の流れを変えた。マレガのスピードとドリブルスキル、そして冷静なフィニッシュが光ったシーンだった。
  • 54分のベンゼマのゴール: ヴィニシウス・ジュニオールのクロスを、ベンゼマがダイレクトで合わせてゴールを決めた。このゴールは、レアル・マドリードが再びリードを広げ、試合の主導権を握る上で重要な意味を持った。ヴィニシウス・ジュニオールの正確なクロスと、ベンゼマの卓越したポジショニングとシュート技術が光ったシーンだった。
  • 58分のバルベルデのゴール: カルバハルのパスを受けたバルベルデが、右足で強烈なシュートを放ち、ゴールを決めた。このゴールは、レアル・マドリードがアル・ヒラルを突き放し、勝利を決定づけた。バルベルデの得点能力と、カルバハルの攻撃参加が光ったシーンだった。

5. アル・ヒラルの健闘とその課題

アル・ヒラルは、レアル・マドリードという世界最高峰のチームに対し、果敢に戦い、3ゴールを奪うなど、その実力を十分に発揮した。マレガやビエットといった攻撃陣の活躍、中盤の選手の献身的なプレー、そしてチーム全体の組織力は、賞賛に値する。

しかし、アル・ヒラルには、いくつかの課題も残された。レアル・マドリードの攻撃陣の個の能力に苦しみ、守備陣の連携に乱れが見られた。また、中盤でのボール奪取率が低く、レアル・マドリードに中盤を支配される場面が多かった。

これらの課題を克服することで、アル・ヒラルは、アジアだけでなく、世界でも通用するチームへと成長する可能性を秘めている。

6. まとめ:レアル・マドリードの勝利とアル・ヒラルの未来

レアル・マドリードは、その圧倒的な個の能力、洗練された戦術、そして経験豊富な選手の存在によって、アル・ヒラルを下し、クラブワールドカップのタイトルを手にした。ヴィニシウス・ジュニオールやバルベルデといった若手選手の活躍、ベンゼマやモドリッチといったベテラン選手の存在感が、チームを勝利に導いた。

一方、アル・ヒラルも、勇敢な戦いを見せ、世界にその名を轟かせた。マレガやビエットといった攻撃陣の活躍は、世界中のサッカーファンを魅了した。今回のクラブワールドカップでの経験は、アル・ヒラルの選手たちにとって、大きな成長の機会となるだろう。

レアル・マドリードは、今回の勝利で、再び世界最強のクラブであることを証明した。そして、アル・ヒラルは、今回の経験を糧に、更なる高みを目指していくことだろう。今後の両チームの活躍に期待したい。

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