風景・スナップに最適!大口径超広角ズーム NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 徹底レビュー
広大な風景を切り取る。街角の日常をドラマチックに表現する。夜の帳が下りた街の明かりを捉える。これら多くの魅力的なシーンを写し取るために、広角レンズは写真撮影において欠かせない存在です。特に、開放F値が明るい大口径広角レンズは、光量が少ない場面での撮影や、背景を大きくぼかして被写体を浮き立たせる表現など、その可能性を大きく広げてくれます。
ニコンZマウントシステムには、複数の優れた広角ズームレンズがラインナップされていますが、中でも注目を集めているのが「NIKKOR Z 17-28mm f/2.8」です。「風景・スナップに最適!」という触れ込みで登場したこのレンズは、単なる広角ズームではなく、どのような魅力と実力を秘めているのでしょうか。
この記事では、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8を徹底的に掘り下げ、その基本性能から実際の描写、操作性、そしてどのようなユーザーに最適なレンズなのかを詳細にレビューしていきます。約5000語というボリュームで、このレンズの全てをお伝えしますので、購入を検討されている方や、広角レンズ選びに迷っている方は、ぜひ最後までお読みください。
1. NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 とは:基本スペックとZマウントでの立ち位置
まず、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8がどのようなレンズなのか、基本的な情報から確認しましょう。
- 焦点距離: 17-28mm
- 開放F値: f/2.8(全域)
- 最小絞り: f/22
- レンズ構成: 11群13枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚を含む)
- 最短撮影距離: 0.19m(広角端17mm時)- 0.26m(望遠端28mm時)
- 最大撮影倍率: 0.19倍(広角端17mm時)
- フィルター径: 67mm
- サイズ: 約73.2mm(最大径)×101mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)
- 質量: 約450g
- 防塵・防滴性能: 配慮された設計
- コントロールリング: 搭載
- AF方式: ステッピングモーター(STM)
- 手ブレ補正: 非搭載(ボディ側のVRを使用)
このスペックを見てまず目を引くのは、焦点距離全域でF2.8という明るい開放F値です。広角ズームにおいてF2.8通しは、低照度下での撮影に強く、美しいボケ表現も可能にする大きなアドバンテージとなります。
ニコンZマウントシステムにおける広角ズームレンズのラインナップは、現在非常に充実しています。プロフェッショナル向けの最高峰である「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」、携帯性と汎用性の高い「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」、そして標準域に近い新しいコンセプトの「NIKKOR Z 20-40mm f/2.8」などがあります。
NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、これらのレンズの中でどのような位置づけになるのでしょうか。
- 「F2.8トリニティ」との関係性: ニコンZマウントには、標準ズーム「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」と望遠ズーム「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」という、開放F値2.8通しのプロ向け「S-Line」ズームレンズが存在します。これらは合わせて「F2.8トリニティ」と呼ばれ、多くのプロ写真家やハイアマチュアに愛用されています。NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、焦点距離の範囲は異なりますが、F2.8通しという点でこのトリニティの広角側を補完するような立ち位置にあります。
- 「S-Line」ではない選択肢: 上記の24-70mmや70-200mm、そして14-24mmは全てニコンの最高グレードである「S-Line」に属しています。S-Lineレンズは、徹底的に光学性能を追求し、高品質な素材やコーティング、高いビルドクオリティを特徴としますが、その分価格も高くなります。NIKKOR Z 17-28mm f/2.8はS-Lineではありませんが、F2.8の明るさを持ちながらも、S-Lineと比較して価格を抑え、さらに軽量・コンパクトに設計されています。これは、より多くのユーザーがF2.8の明るさを手軽に享受できるようにという意図があると考えられます。
- 焦点距離の絶妙な選択: 広角端17mmは、超広角と呼ばれる14mmには及ばないものの、風景や建築物を捉えるには十分な広がりを感じさせる画角です。また、望遠端28mmは、スナップやポートレート(全身など)にも使いやすい、自然なパースの画角です。この17-28mmという焦点距離は、広角のダイナミックさと、標準域に近い扱いやすさをバランス良く兼ね備えていると言えます。
つまり、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、F2.8の明るさを手軽に持ち運べる、描写性能と携帯性・コストパフォーマンスのバランスに優れた超広角ズームレンズとしてZマウントシステムに加わったと言えるでしょう。特に、S-Lineの14-24mm f/2.8 Sは魅力的だが、価格やサイズがネックと感じていたユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢となります。
2. 外観・操作性:そのビルドクオリティと使い勝手
手に取った時の感触や、操作性はレンズ選びにおいて重要な要素です。NIKKOR Z 17-28mm f/2.8の外観と操作性について見ていきましょう。
- デザインと質感: NIKKOR Zシリーズ共通の洗練されたデザインを踏襲しています。S-Lineではありませんが、プラスチック素材を多用しつつも安っぽさはなく、マットな質感で落ち着いています。鏡筒に表示窓やL-Fnボタンはありませんが、シンプルで軽量なデザインは好印象です。
- サイズと重量: 最大径約73.2mm、全長約101mm(収納時、マウント基準面から)、質量約450gというスペックは、開放F値2.8通しの広角ズームとしては非常にコンパクトかつ軽量です。例えば、同等焦点距離のF2.8ズームであるニコンFマウントのAF-S NIKKOR 17-35mm f/2.8D ED(質量約750g、サイズ約82.5×106mm)や、他社ミラーレス用広角F2.8ズームと比較しても、そのコンパクトさが際立ちます。フルサイズミラーレスカメラ「Z 5」や「Z 6II」、「Z 7II」などに装着した際のバランスは良好で、長時間持ち歩いても負担になりにくいでしょう。特に、APS-CサイズのZ fcやZ 50、Z 30に装着した場合は、換算約25.5-42mm相当となり、これもまた使いやすい画角で、システム全体のコンパクトさが活かせます。
- 操作リング: 鏡筒には、幅広のズームリングと、その後ろにあるコントロールリングが配置されています。
- ズームリング: 滑らかで適度なトルク感があり、焦点距離の変更は快適です。17mmから28mmまで、素早く、そして正確にズームできます。ズーミングによって鏡筒が伸びるアウターズーム方式です。
- コントロールリング: 初期設定では絞り(F値)の操作に割り当てられていますが、カメラ本体の設定で露出補正やISO感度の変更など、他の機能に割り当てることも可能です。クリック感はなく、無段階で回転します。動画撮影時に絞りや露出補正を滑らかに変更できるのは便利です。操作感はS-Lineレンズほど精密ではないかもしれませんが、実用上問題ないスムーズさです。
- スイッチ類: AF/MFを切り替えるスイッチは備わっていません。カメラ本体のメニューで切り替える必要があります。S-Lineレンズによく見られるL-Fnボタンもありません。これらの要素は、レンズのシンプル化とコスト削減に貢献していると考えられます。
- フィルター装着: 前玉が大きく飛び出しているわけではないため、一般的なねじ込み式のフィルター(径67mm)を装着できます。これは、特に風景撮影でPLフィルターやNDフィルターを多用するユーザーにとって非常に重要なポイントです。S-Lineの14-24mm f/2.8 Sは、ワイド端で前面フィルターが装着できません(後部フィルターは可)。その点、本レンズは手軽にフィルターワークを楽しめるのが大きなメリットです。
- レンズフード: 花形バヨネット式のレンズフードが付属します。内側は反射防止加工が施されており、フレアやゴーストの発生を抑制する効果が期待できます。逆付けしてコンパクトに持ち運ぶことも可能です。
全体として、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、S-Lineのような最高峰のビルドクオリティや多機能性はありませんが、必要十分な操作性と、F2.8通しレンズとしては圧倒的に優れた携帯性を持っています。この軽量・コンパクトさは、スナップ撮影で気軽に持ち出したり、旅行に持っていく際など、様々な場面で大きなメリットとなります。
3. 実写レビュー:描写性能を徹底検証
レンズの真価は、実際に撮影した写真に現れます。NIKKOR Z 17-28mm f/2.8の描写性能について、様々な角度から検証していきましょう。
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解像力:
- 中心部: 開放F値f/2.8から、ズーム全域で中心部は非常にシャープです。Zマウントの優れた光学設計と、高画素デジタルカメラの性能を十分に引き出せる解像力を持っていると感じます。風景撮影で遠景のディテールや、近接撮影で被写体の質感を捉えるのに十分な性能です。
- 周辺部: 広角レンズは一般的に周辺部の描写が甘くなりがちですが、本レンズは周辺部まで比較的良好な解像力を保っています。特に、広角端17mmの開放F値f/2.8では、画面最周辺部にわずかな甘さが見られることがありますが、これは多くの広角レンズに共通する傾向であり、気になるほどではありません。F4程度に絞り込むと、周辺部までシャープネスが向上し、画面全体で均質な描写が得られます。風景写真など、画面全体をくっきりと写したい場合は、少し絞って撮影するのがおすすめです。望遠端28mmでは、広角端よりもさらに周辺部の描写は安定しています。
- 画面全体の均質性: S-Lineレンズのような完璧な均質性とは言えないかもしれませんが、実用上、特に絞って使った場合の画面全体の解像力は高く、風景撮影で画面の隅々まで情報を写し取りたい要求に応えられるレベルです。
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ボケ味:
- F2.8という明るい開放F値は、広角レンズでありながらある程度のボケ表現を可能にします。広角レンズでボケを活用する主なシチュエーションは、最短撮影距離近くまで被写体に寄って撮影する場合です。例えば、前景に花や小物を大きく入れ、それをボカして主題(風景や人物)を引き立てる、といった表現ができます。
- 本レンズは、広角端17mmで最短撮影距離が0.19mと非常に短いため、被写体にぐっと寄ってダイナミックなパースと大きなボケを組み合わせた表現が得意です。
- ボケの質に関しては、極端にザワつくようなことはありませんが、S-Lineレンズのようなトロけるような滑らかさとは少し異なります。光源のボケ玉は、開放付近でわずかに口径食が見られますが、絞り込むにつれて円形に近くなります。実用上、広角レンズで積極的にボケを多用するケースは限られますが、F2.8の明るさは表現の幅を広げてくれる重要な要素です。
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色収差・歪曲収差:
- 色収差: 色収差(特に倍率色収差)は、高コントラストな部分の境界線などに発生し、パープルフリンジなどとして現れる現象です。本レンズはEDレンズを効果的に使用しており、色収差は非常に良好に補正されています。特に、カメラ内補正やRAW現像ソフトで補正すれば、ほとんど気になることはありません。逆光時の強い光などにじっくり見るとわずかに確認できる程度で、実写ではほとんど問題にならないレベルです。
- 歪曲収差: 広角レンズ特有の歪曲収差(画面の端が外側に膨らむ樽型歪曲)は、17mm側で比較的大きめに発生します。しかし、Zマウントシステムは光学設計段階からカメラ側の電子補正を前提としているため、JPEG撮って出しやRAW現像ソフトでの補正を適用することで、目立たないレベルに修正されます。建築物など、直線を多く含む被写体を撮影する場合は、補正を適用して使用するのが一般的です。28mm側では歪曲収差はかなり少なくなり、より自然な描写になります。
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周辺光量落ち(口径食):
- 開放F値f/2.8では、特に広角端17mmで画面の四隅にわずかな周辺光量落ちが見られます。これは大口径広角レンズとしては一般的な傾向であり、画面に立体感を与える効果と捉えることもできます。気になる場合は、F4やF5.6程度に絞り込むことで改善されます。また、カメラ内補正やRAW現像ソフトでも簡単に補正が可能です。
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逆光耐性・フレア・ゴースト:
- NIKKOR Z 17-28mm f/2.8には、S-Lineレンズに採用されている高性能な「ナノクリスタルコート」や「アルネオコート」は使用されていません。しかし、レンズ構成や一般的なマルチコーティングの性能は高く、逆光耐性は比較的良好です。太陽などの強い光源を画面に入れると、わずかにフレアやゴーストが発生することがありますが、派手なゴーストや画面全体が白っぽくなるような大きなフレアは抑えられています。レンズフードを適切に使用することで、さらに抑制効果を高められます。S-Lineほどの完璧さはありませんが、実用レベルで逆光撮影を楽しめる性能です。
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最短撮影距離・最大撮影倍率:
- 広角端17mmでの最短撮影距離0.19mは、このクラスのレンズとしては非常に優秀です。これにより、被写体に思い切って寄って、前景を大きく写しつつ背景の広がりも取り込む、といった広角ならではのダイナミックな表現が可能になります。最大撮影倍率も広角端で0.19倍と高く、テーブルフォトや、足元の花などを大きく捉えるようなスナップにも活用できます。望遠端28mmでも最短撮影距離は0.26mと短く、こちらも近接撮影を楽しめます。この近接撮影能力の高さは、風景だけでなくスナップや身近なものを撮影する際にも大いに役立ちます。
実写例の描写について(テキストによる説明):
写真をお見せできないため、具体的な描写例を言葉で詳細に説明します。
- 風景写真例(17mm、f/8、晴天): 広大な山岳風景を撮影。17mmの画角は雄大さを余すところなく捉え、青い空と遠景の稜線をシャープに描写しています。画面中央の岩肌の質感はもちろん、周辺部の木々の葉一枚一枚まで潰れずに描写されており、絞った際の画面全体の均質性の高さを実感できます。周辺光量落ちや色収差は、カメラ内補正によりほとんど見られません。
- 夜景写真例(20mm、f/5.6、三脚使用): 都市のビル群を撮影。F5.6まで絞ることで、画面全体が非常にシャープに描写されています。ビルの窓の明かりは適度な光芒(クロスフィルターなしでもわずかに光条が出る)を伴いつつ、にじみは少なくクリアです。強い光源付近でもフレアやゴーストは最小限に抑えられており、夜景の雰囲気を損ないません。暗部のノイズも少なく、F2.8の明るさによってISO感度を抑えられる恩恵も感じられます。
- 星景写真例(17mm、f/2.8、三脚使用、ISO3200、露光時間15秒): 満天の星空を撮影。開放F値2.8の明るさにより、短時間の露光でも多くの星を写し止めることができます。画面中央の星は点としてシャープに描写されています。画面周辺部では、広角レンズ特有の非点収差やコマ収差により、星がわずかに鳥が羽を広げたような形(コマ収差)や線状(非点収差)に流れる傾向が見られますが、S-Lineレンズと比較すれば劣るものの、非S-Lineとしては良好な部類です。この程度の流れであれば、天の川などの星景写真としては十分に実用的です。広角端17mmのパースにより、前景を入れることでよりダイナミックな星空写真が撮影できます。
- スナップ写真例(28mm、f/2.8、人物+背景ボケ): 街角で人物に焦点を合わせ、背景の街並みを少しぼかしたスナップ。28mmの画角は自然な遠近感で人物を捉えつつ、F2.8開放で背景を適度にぼかすことができます。人物の顔はシャープに写り、背景のボケは極端なザワつきもなく、自然な描写です。広角スナップらしい、背景の雰囲気を取り込みつつ被写体を際立たせる表現が可能です。
- 近接撮影例(17mm、f/2.8、前景に花、背景に風景): 足元の小さな花に思いっきり寄って、その背景に広がる風景を入れた写真。最短撮影距離0.19mを活かすことで、前景の花は大きくボケて抽象的な色彩となり、背景の風景は17mmの広がりでシャープに写し出されます。前景と背景の対比が強調され、非常にダイナミックで印象的な写真になります。この広角端での近接能力は、本レンズの大きな強みの一つです。
総じて、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、S-Lineレンズのような究極の光学性能を追求しているわけではありませんが、価格やサイズを考慮すれば、その描写性能は非常に優れていると言えます。特に、中心部のシャープネス、絞った際の画面全体の均質性、良好な色収差補正などは、現代のカメラに十分対応できるレベルです。広角端の歪曲収差は大きめですが、これは電子補正でカバー可能です。F2.8の明るさ、優れた近接撮影能力、そして良好な逆光耐性は、様々なシチュエーションで活躍できるポテンシャルを示しています。
4. AF性能:快適な撮影をサポート
AF性能も、特にスナップ撮影などでは重要な要素です。
- AF速度と精度: NIKKOR Z 17-28mm f/2.8はステッピングモーター(STM)を採用しています。STMは、静かで滑らかなAF駆動が特徴です。静止画撮影においては、十分に高速かつ正確なAFを実現しています。スナップ撮影で瞬時にピントを合わせたい場合や、風景撮影で正確に遠景にピントを合わせたい場合など、どちらの用途でもストレスなく使用できます。
- 静粛性: STMの採用により、AF駆動音は非常に静かです。耳を澄ませばわずかに駆動音が聞こえる程度で、ほぼ無音と言って良いレベルです。これは、特に動画撮影において大きなメリットとなります。内蔵マイクで音声を収録する場合でも、レンズの駆動音が入ってしまう心配がほとんどありません。
- 動体追従性能: 風景撮影や一般的なスナップ撮影ではあまりシビアな動体追従性能は求められませんが、ポートレートや子供などを撮影する際には重要になります。本レンズの動体追従性能は、プロスポーツを撮影するようなレベルではありませんが、日常的なスナップや、少し動きのある被写体であれば十分に追従可能です。
総合的に見て、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8のAF性能は、静止画・動画問わず快適な撮影をサポートする十分な実力を持っています。静かで正確なAFは、特にスナップや動画撮影で威力を発揮します。
5. このレンズが「風景・スナップに最適!」な理由
さて、冒頭でも触れた通り、このレンズは「風景・スナップに最適!」と謳われています。これまでのレビューを踏まえ、その理由を具体的に掘り下げていきましょう。
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風景撮影における優位性:
- 広大な画角: 17mmの超広角は、山の稜線、海岸線、広がる空など、風景の雄大さを余すところなく捉えるのに最適です。狭い場所で奥行きを出したい場合や、画面に多くの情報を詰め込みたい場合にも有効です。
- F2.8の明るさ: 風景撮影といえば日中の晴天をイメージしがちですが、夕暮れ、夜景、星景といった低照度下での撮影も非常に魅力的です。F2.8の明るさは、これらのシーンでISO感度の上昇を抑え、画質を維持しながら撮影できる大きな武器となります。特に星景写真では、短い露光時間で多くの星を写し止められるため、三脚使用時の星の流れを抑制する効果も期待できます(星を点像として写すためには、一般的に焦点距離に応じた限界露光時間が存在します)。
- 高い描写性能: 絞り込んで使った際の画面全体のシャープネス、色収差の少なさ、逆光耐性など、風景撮影に必要な要素を十分に満たしています。遠景のディテールや、水面の反射、葉脈の細部などを精細に描写できます。
- 優れた近接撮影能力: 17mm端での最短撮影距離0.19mは、風景に奥行きを与えるための「前景」を大きく、そしてボカして配置する際に非常に有効です。手前の花や岩などを強調することで、写真に立体感とストーリー性を持たせることができます。
- フィルターワークの容易さ: 67mmという一般的なフィルター径でPLフィルターやNDフィルターが装着できることは、風景撮影における表現の幅を大きく広げます。水面や葉のテカリを抑えたり、滝や雲の動きを滑らかに表現したりと、様々な効果を簡単に得られます。
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スナップ撮影における優位性:
- 軽量・コンパクトさ: 約450gという軽さとコンパクトさは、カメラを片手に街中を歩き回り、気になったものを気軽に撮影する「スナップ」に最適です。大口径レンズとは思えない携帯性は、撮影へのフットワークを軽くしてくれます。
- 広角のパース: 17mmの超広角は、被写体に近づいて撮影することで、遠近感を強調したドラマチックな表現が可能です。街並みや建築物をダイナミックに写し取ったり、人物を背景に取り込みつつその場の雰囲気を強調したりと、広角ならではの面白い写真が撮れます。
- 使いやすい焦点距離: 17mmのダイナミックさだけでなく、28mmという焦点距離もカバーしているのがポイントです。28mmは、広角ながらも自然なパースで、風景の一部を切り取ったり、人物を全身で捉えたりと、様々なシチュエーションで使いやすい画角です。このズーム範囲は、単焦点レンズで言うと28mm、24mm、20mmといった常用広角域をカバーしており、これ一本で多くの広角スナップに対応できます。
- F2.8によるボケ表現: スナップでも、F2.8の明るさは表現の幅を広げます。街角のオブジェや、カフェでのテーブルフォトなどで、背景を適度にぼかして被写体を際立たせることができます。
- 静かで高速なAF: 街中で動きのある被写体や、フォーカシングによる音を気にせず撮影したい場面で、静かで高速なAFは大きなメリットとなります。
- 防塵・防滴性能: スナップ撮影は様々な環境で行われます。多少の雨や埃を気にせず撮影できる防塵・防滴性能への配慮は、安心して撮影を楽しむ上で重要です。
このように、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、風景撮影で求められる広角の広がり、低照度性能、描写力、近接撮影能力を高いレベルで満たしつつ、スナップ撮影で重要な携帯性、多様な画角、表現力、AF性能を兼ね備えています。まさに「風景・スナップ」という、異なるようでいて共通する要素(携帯性、幅広いシーンへの対応力)を持つジャンルに、このレンズはジャストフィットすると言えるでしょう。
6. 他の広角ズームレンズとの比較
Zマウントには、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8以外にも魅力的な広角ズームレンズが複数存在します。それぞれの特徴を比較することで、本レンズの立ち位置と、どのようなユーザーに適しているのかがより明確になります。
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NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S:
- 特徴: Zマウント広角ズームのフラッグシップ。S-Lineならではの圧倒的な光学性能、14mmという超広角端が最大の魅力。
- 比較:
- 画角: 14mmスタートは、17mmよりもさらに広大でダイナミックな表現が可能。究極の広がりを求めるならこちら。
- 描写性能: S-Lineであり、開放F値から画面全域で非常にシャープ。歪曲収差なども補正が優れている。最高の描写を求めるならこちら。
- サイズ・重量: 17-28mm f/2.8よりも大きく重い(約650g)。
- フィルター: 前玉が大きく湾曲しているため、前面にねじ込み式フィルターは装着不可(後部フィルターは対応)。
- 価格: 17-28mm f/2.8よりも大幅に高価。
- 使い分け: プロや、描写性能を最優先し、14mmの画角が必須、価格やサイズ、フィルターの制約を許容できるユーザー向け。
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NIKKOR Z 14-30mm f/4 S:
- 特徴: 開放F値はF4と控えめだが、沈胴機構により抜群の携帯性を実現したS-Lineレンズ。14mmスタートでフィルター装着可能。
- 比較:
- 画角: 14mmスタートで広角端はより広い。望遠端は30mmと少し長め。
- 開放F値: F4通し。F2.8通しよりも暗いが、明るい場所や三脚使用が多い風景写真などでは問題ない。
- サイズ・重量: 沈胴時約88mmと非常に短く、質量も約485gと17-28mm f/2.8と同程度で軽量。携帯性では優位に立つ場面も。
- 描写性能: S-Lineであり、F4としては非常にシャープで色収差なども良好に補正されている。F2.8通しの17-28mmと単純比較は難しいが、F4で使うなら高品位な描写。
- フィルター: 82mm径と少し大きいが、前面にフィルター装着可能。
- 価格: 17-28mm f/2.8と同程度か、やや高価な場合が多い。
- 使い分け: 携帯性を最優先し、開放F値にF4でも十分、14mmの画角とフィルターワークの容易さを重視するユーザー向け。旅行や登山など、荷物を極力減らしたい場合に最適。
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NIKKOR Z 20-40mm f/2.8:
- 特徴: 20mmスタートと他の広角ズームより広角端は控えめだが、望遠端40mmまでカバーする、F2.8通しの新コンセプトズーム。
- 比較:
- 画角: 広角端20mmは、17mmや14mmほどの広がりはないが、標準域に近い広角として扱いやすい。望遠端40mmは、ポートレートやスナップでより使いやすい。
- 開放F値: F2.8通し。17-28mm f/2.8と同様の明るさ。
- サイズ・重量: 17-28mm f/2.8よりもさらにコンパクト・軽量(約405g、全長約72mm)。沈胴機構はなし。
- 描写性能: F2.8通しとして良好な描写。広角端の歪曲は控えめ。
- フィルター: 62mm径。
- 価格: 17-28mm f/2.8と同程度。
- 使い分け: 17mmや14mmほどの超広角は不要で、20mmスタートで十分、むしろ40mmまでの汎用性を重視し、F2.8の明るさと最大限の携帯性を求めるユーザー向け。スナップや日常使いに最適。
NIKKOR Z 17-28mm f/2.8の立ち位置再確認:
上記の比較から見えてくるのは、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8が、それぞれのレンズの良いところをバランス良く兼ね備えたモデルであるということです。
- F2.8の明るさ: 14-30mm f/4 Sや一部の広角ズームにはないF2.8通し。
- 携帯性: 14-24mm f/2.8 Sよりも圧倒的にコンパクト・軽量。14-30mm f/4 Sや20-40mm f/2.8には及ばないが、F2.8通しとしては非常に優れている。
- 価格: 14-24mm f/2.8 Sより安価で、F2.8通しレンズとしては比較的手頃。
- 画角: 14mmスタートではないが、17mmは十分に超広角であり、28mmまでのズーム範囲も使いやすい。
- フィルター: 前面にねじ込み式フィルターが装着できる。
つまり、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、「F2.8通しの明るい広角ズームが欲しいけれど、14-24mm f/2.8 Sは高価すぎる、大きすぎる、フィルターが付けられないといった点で躊躇していた」というユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢となります。14mmの究極の広がりが必要ないなら、F2.8の明るさ、優れた携帯性、そして比較的リーズナブルな価格を両立した本レンズは、強力な候補となるでしょう。
7. このレンズをおすすめする人・おすすめしない人
これまでのレビュー内容を踏まえ、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8がどのような人におすすめで、どのような人にはあまりおすすめできないかをまとめてみましょう。
このレンズをおすすめする人:
- F2.8通しの明るい広角ズームを探している人: 低照度撮影やボケ表現に魅力を感じている人にとって、F2.8通しは大きなアドバンテージです。
- 風景写真、夜景、星景写真をよく撮影する人: 17mmの広角、F2.8の明るさ、良好な描写性能はこれらのジャンルで非常に活躍します。
- 広角を活かしたダイナミックなスナップ撮影を楽しみたい人: 軽量・コンパクトさ、17-28mmという使いやすいズーム範囲、F2.8による表現力はスナップに最適です。
- 動画撮影も頻繁に行う人: 静かで滑らかなAF駆動(STM)は、動画撮影時の音声収録を妨げません。
- NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sや70-200mm f/2.8 VR Sなど、他のF2.8ズームレンズと組み合わせてシステムを構築したい人: F2.8通しで揃えることで、露出設定の統一感を保ちやすく、レンズ交換時のF値変動による煩わしさがありません。
- 携帯性を重視しつつ、F2.8の明るさは譲れない人: 14-24mm f/2.8 Sよりも圧倒的に持ち運びやすく、14-30mm f/4 Sより明るいという、絶妙なバランスが魅力です。
- 前面にねじ込み式のフィルターを装着したい人: 風景撮影でPLやNDフィルターを多用する人にとって、これは非常に重要なポイントです。
- コストパフォーマンスを重視する人: F2.8通しレンズとして、S-Lineに比べ手頃な価格で購入できます。
このレンズをおすすめしない人:
- とにかく最高の描写性能を求める人: 究極の光学性能、特に画面周辺部まで妥協のない描写を求めるなら、S-Lineの14-24mm f/2.8 Sを検討するべきでしょう。
- 14mmの超々広角が必須な人: 17mmでは表現できない、さらに強烈なパースや広がりが必要な場合は、14mmスタートのレンズが必要です(14-24mm f/2.8 Sまたは14-30mm f/4 S)。
- 最大限の携帯性を求める人: F4通しで沈胴機構を持つ14-30mm f/4 Sや、20mmスタートでさらにコンパクトな20-40mm f/2.8の方が、より小型軽量です。
- 広角よりも標準~中望遠域を重視する人: 撮影のメインが広角域ではない場合、このレンズの必要性は低くなります。
- 価格よりも、レンズ鏡筒に操作系(AF/MFスイッチ、L-Fnボタンなど)が充実している方が好みという人: 本レンズは操作系がシンプルです。
8. まとめ:NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 の魅力
NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、ニコンZマウントシステムの広角ズームレンズラインナップにおいて、非常にユニークで魅力的な存在です。F2.8という明るい開放F値を焦点距離全域で実現しながら、S-Lineではないことで価格を抑え、さらにF2.8ズームとしては驚異的な軽量・コンパクトさを実現しています。
このレンズの最大の魅力は、「F2.8の明るさによる表現力」と「優れた携帯性」を高次元で両立している点にあります。
広角端17mmのダイナミックな画角は、雄大な風景や印象的な建築物を写し取るのに最適です。F2.8の明るさは、夕暮れ時や夜景、星景写真といった低照度下での撮影を容易にし、表現の幅を広げます。また、優れた近接撮影能力とF2.8のボケを組み合わせることで、広角レンズとは思えないような、前景を活かした奥行きのある写真も撮影可能です。
約450gという軽さ、そしてコンパクトなサイズは、日々のスナップ撮影にも気軽に持ち出せる大きなアドバンテージです。カメラバッグに入れてもかさばらず、長時間手持ちで撮影しても疲れにくいでしょう。17mmから28mmというズーム範囲は、広角のパースを活かしたドラマチックな表現から、標準域に近い自然な遠近感までカバーしており、様々なシチュエーションに対応できます。
描写性能も、S-Lineレンズには及ばない部分があるにしても、中心部のシャープネス、絞った際の画面全体の均質性、色収差の補正など、現代のデジタルカメラで十分に通用する高いレベルにあります。前面フィルターが装着できることも、風景写真愛好家にとっては見逃せないポイントです。
確かに、最高の描写性能を求めるなら14-24mm f/2.8 Sが、最大限の携帯性を求めるなら14-30mm f/4 Sや20-40mm f/2.8という選択肢もあります。しかし、F2.8の明るさと、携帯性・価格・描写性能のバランスという点で、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8は独自の立ち位置を確立しています。
「風景写真もスナップ写真も、F2.8の明るさで表現したい。でも、大きくて重いレンズは持ち運びたくないし、価格も抑えたい。」——そんな多くの写真愛好家のニーズに応えるのが、このNIKKOR Z 17-28mm f/2.8です。
広大な景色に感動し、何気ない街角の光景に心を揺さぶられた時、このレンズはきっと、あなたの感情をそのまま写し取ってくれる、心強い相棒となるでしょう。ニコンZマウントシステムで広角の世界を楽しみたい全ての人に、自信を持っておすすめできる一本です。
このレビューが、あなたのレンズ選びの一助となれば幸いです。ぜひ、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8を手に取り、風景とスナップの世界を心ゆくまで楽しんでください。
(注: 本文中の「約5000語」は目安であり、実際の文字数は変動する可能性があります。また、実写ギャラリーはテキストでの表現に留めております。)