Kernel Data Inpage Errorの原因と対処法|ブルースクリーンの直し方


【完全解説】Kernel Data Inpage Errorの原因と対処法|ブルースクリーンの直し方

パソコンを使用中に突然画面が真っ青になり、見慣れないエラーメッセージが表示される。いわゆる「ブルースクリーン(BSoD: Blue Screen of Death)」と呼ばれる現象です。その中でも比較的よく発生し、多くのユーザーを悩ませるエラーの一つに「Kernel Data Inpage Error」があります。

このエラーは、OSの核となる部分(カーネル)が、必要なデータをストレージ(HDDやSSD)からメモリ(RAM)に読み込もうとした際に失敗したことを示します。データが正しく読み込めなかった原因は多岐にわたり、ハードウェアの故障からソフトウェアの問題まで、様々な要因が考えられます。

本記事では、「Kernel Data Inpage Error」に焦点を当て、その具体的な意味から、発生する主な原因、原因を特定するための診断方法、そして具体的な対処法までを、網羅的に詳しく解説します。このエラーに直面してお困りの方はもちろん、将来的なエラー発生に備えたい方も、ぜひ参考にしてください。

1. Kernel Data Inpage Errorとは何か? ブルースクリーンの基本を理解する

まず、「Kernel Data Inpage Error」がどのようなエラーなのか、その基本的な意味を理解することから始めましょう。

1.1. エラーの名称とその意味

「Kernel Data Inpage Error」という名称は、以下の要素に分解できます。

  • Kernel (カーネル): オペレーティングシステム(Windowsなど)の最も中心的な部分です。ハードウェアとソフトウェアの間の橋渡しをし、メモリ管理、プロセス管理、ファイルシステム管理など、システムの根幹をなす機能を提供します。
  • Data (データ): プログラムが実行される際に必要となる情報です。
  • Inpage (インページ): ストレージ(HDDやSSD)からメモリ(RAM)へデータを読み込む操作を指します。特に、仮想メモリの仕組みにおいて、一時的にストレージに退避させていたデータを必要に応じてメモリに戻す際にこの言葉が使われます(ページイン)。
  • Error (エラー): 失敗、問題が発生したこと。

これらを組み合わせると、「Kernel Data Inpage Error」は、「カーネルが、ストレージからメモリへ必要なデータを読み込む際に失敗した」という意味になります。

1.2. なぜこのエラーが発生するのか?

パソコンは、実行中のプログラムや使用中のデータを一時的に高速なメモリ(RAM)に置いて処理を行います。しかし、メモリ容量には限りがあるため、使われていないデータや、すぐに必要ではないデータは、より低速ですが大容量なストレージ(HDDやSSD)に一時的に退避させることがあります。これを「スワッピング」や「ページング」と呼び、ストレージ上に確保されたその領域を「ページファイル」または「スワップファイル」と呼びます。

カーネルや実行中のプログラムが必要なデータがストレージ上のページファイルに退避されている場合、そのデータはメモリに読み戻されてから処理されます。この「ストレージからメモリへ読み込む(ページイン)」という処理が、何らかの原因で正常に行えなかった場合に、「Kernel Data Inpage Error」が発生し、システムが続行不可能と判断してブルースクリーンに至るのです。

1.3. エラーコードと表示

ブルースクリーンが発生した際、画面には様々な情報が表示されます。「Kernel Data Inpage Error」を示す代表的なエラーコードは以下の通りです。

  • 0x0000007A (KERNEL_DATA_INPAGE_ERROR)

これが最も一般的なエラーコードです。しかし、関連する他のエラーコードが表示されることもあります。

  • 0x0000003B (SYSTEM_SERVICE_EXCEPTION): ドライバやシステムサービス関連のエラーですが、ストレージやメモリ問題が原因で発生することもあります。
  • 0x000000D1 (DRIVER_IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL): ドライバー関連のエラーですが、不良メモリが原因で発生することも多いです。

ブルースクリーンの画面には、エラーコードの他に、エラーを引き起こした可能性のあるファイル名(例: ntfs.syswin32k.sys、特定のドライバファイル名など)が表示されることもあります。このファイル名が、原因特定の手がかりになることがあります。例えば、ntfs.sysが表示されている場合は、ファイルシステムの問題やストレージの問題が疑われます。

2. Kernel Data Inpage Errorの主な原因

Kernel Data Inpage Errorは、データがストレージからメモリへ正常に読み込めなかったことに起因するため、この処理に関わるハードウェア(ストレージ、メモリ、ケーブルなど)や、その処理を制御するソフトウェア(ファイルシステム、ドライバ、OS自体)に問題がある可能性が高いです。具体的な原因を以下に詳しく見ていきましょう。

2.1. ハードウェアの不具合

2.1.1. メモリ(RAM)の問題
  • 接触不良: メモリモジュールがマザーボードのスロットに正しく挿入されていない、または埃などが溜まっている場合に発生します。
  • モジュール自体の故障: メモリモジュールの一部または全体が物理的、電気的に故障している。
  • スロットの故障: マザーボード上のメモリスロット自体が故障している。
  • 相性問題: 取り付けられているメモリモジュール同士、あるいはメモリモジュールとマザーボードやCPUとの間に相性問題がある。特に複数の異なるメーカーや仕様のメモリを混在させている場合に発生しやすいです。
  • メモリクロック設定の問題: BIOS/UEFI設定でメモリクロックやタイミング設定が誤っている、または不安定な設定になっている。

データが必要になった際に、たとえストレージから正しく読み込めても、書き込み先のメモリ自体に問題があれば、エラーが発生します。また、カーネルが必要とするデータの一部が既にメモリ上にあるにも関わらず、そのメモリ領域が不良である場合にもエラーは発生します。

2.1.2. ストレージ(HDD/SSD)の問題
  • 物理的な故障: HDDのモーターやヘッド、SSDのNANDフラッシュメモリやコントローラーの故障。
  • 不良セクタ: ストレージ上の特定領域(セクタ)が読み書き不可能になっている。HDDでは物理的な損傷、SSDではフラッシュメモリの劣化などが原因です。カーネルが必要なデータが不良セクタに保存されている場合、読み込みに失敗します。
  • S.M.A.R.T.エラー: ストレージの自己診断機能(S.M.A.R.T.)が異常を検知している状態。予兆段階であることが多いですが、放置すると物理的な故障に進展します。
  • ファームウェアの問題: 特にSSDにおいて、ファームウェアのバグや古さが原因でパフォーマンスが低下したり、エラーが発生したりすることがあります。
  • 寿命: 特にSSDは書き込み回数に限界(寿命)があり、それを超えると読み書きエラーが発生しやすくなります。

ページファイルがストレージ上に存在するため、ストレージ自体に問題があると、そこからのデータ読み込みに直接的な影響が出ます。

2.1.3. ストレージ接続ケーブルの問題
  • SATAケーブルの劣化や損傷: データ転送に使用するSATAケーブルが劣化したり、物理的に損傷したりしていると、データの読み込みが不安定になります。
  • SATAケーブルの接触不良: ケーブルがマザーボードやストレージにしっかりと接続されていない。
  • 電源ケーブルの接触不良: ストレージへの電力供給が不安定になる。

ケーブルはデータの通り道であり、ここが不安定だとデータ転送エラーが発生します。

2.1.4. マザーボードの問題
  • SATAコントローラーの故障: ストレージとの通信を制御するマザーボード上のSATAコントローラーが故障している。
  • チップセットドライバの問題: SATAコントローラーを含むマザーボードのチップセットドライバが古い、または破損している。
  • メモリスロットの故障: 前述の通り、マザーボード上のメモリスロットの故障。

マザーボードはPC全体の各部品を接続し制御するため、ここに問題があると広範囲に影響が及びます。

2.1.5. 電源ユニット(PSU)の問題
  • 容量不足: PCの構成に対して電源ユニットの最大出力容量が不足している。
  • 劣化による不安定化: 電源ユニットが劣化し、各部品に安定した電力を供給できていない。特に、高負荷時に電力供給が不安定になりやすいです。

メモリやストレージが正常に動作するためには安定した電力供給が必要です。電力不足や不安定さは、読み書きエラーの原因となることがあります。

2.2. ソフトウェアの問題

2.2.1. ファイルシステムのエラー
  • NTFS構造の破損: Windowsで使用されるファイルシステム(主にNTFS)の論理構造が、予期せぬシャットダウンや停電などによって破損している。これにより、ページファイルを含む特定のファイルへのアクセス情報が壊れ、読み込みに失敗します。
2.2.2. ドライバーの問題
  • ストレージコントローラーのドライバ: マザーボードのSATAコントローラーや、拡張カードとして追加したストレージコントローラーのドライバが古い、破損している、または他のドライバと競合している。
  • その他のデバイスドライバ: グラフィックカード、ネットワークアダプターなど、他の重要なデバイスのドライバが不安定で、システム全体に悪影響を及ぼしている。特にメモリや割り込み処理に関連するドライバの問題は、カーネル関連のエラーを引き起こしやすいです。

ドライバはハードウェアとOSの間の翻訳者のようなものです。この翻訳に問題があると、ハードウェアを正しく制御できず、エラーが発生します。

2.2.3. Windowsシステムファイルの破損
  • OSの重要なファイル: Windowsの起動や基本的な動作に必要なシステムファイル自体が、何らかの原因(ウイルス、ソフトウェアのインストール失敗、強制終了など)で破損している。カーネルに関連するファイルが破損していると、データの読み込み処理も正常に行えなくなります。
2.2.4. 悪意のあるソフトウェア(マルウェア/ウイルス)の干渉
  • システムファイルやドライバの破壊: マルウェアがシステムファイルやドライバを改変、破壊することで、正常な動作を妨げる。
  • リソースの大量消費: マルウェアがメモリやストレージI/Oを大量に消費し、正規のプロセスが必要なデータにアクセスできなくなる。
  • ページファイルへの不正アクセス: マルウェアがページファイルにアクセスし、これを破壊したりロックしたりする。
2.2.5. サードパーティ製ソフトウェアの干渉
  • セキュリティソフト: セキュリティソフトが、ページファイルへのアクセスを誤って不正な操作と判断し、ブロックしてしまう。
  • 仮想ドライブ/ディスク作成ソフト: ストレージ関連の低レベルな操作を行うソフトが、システムと競合する。
  • その他システムユーティリティ: システムの最適化やパフォーマンス向上を謳うソフトが、意図せずシステムファイルを変更したり、動作を不安定にしたりする。

特定のソフトウェアがシステムの重要な領域に干渉することで、エラーが発生することがあります。

2.3. その他の原因

  • ページの空き容量不足(非常に稀): 仮想メモリとして割り当てているストレージ領域が極端に不足している場合。通常は自動管理されるため、この単独の原因でブルースクリーンに至ることは稀ですが、ストレージ容量全体が逼迫している場合は関連する可能性があります。
  • オーバークロックによる不安定化: CPUやメモリを定格以上の速度で動作させる(オーバークロック)と、システム全体の安定性が低下し、エラーが発生しやすくなります。特にメモリのオーバークロックは、データ読み書きのエラーに直結しやすいです。

3. 原因を特定するためのステップ(トラブルシューティング)

Kernel Data Inpage Errorの原因は多岐にわたるため、体系的なステップで原因を絞り込んでいくことが重要です。以下の手順でトラブルシューティングを進めてみましょう。

3.1. 基本の確認事項と切り分け

まず、落ち着いて以下の点を確認し、原因の切り分けを行います。

  • PCの再起動: 一時的なシステムのエラーや不整合であれば、再起動するだけで問題が解消することがあります。まずはこれを試します。
  • 最近の変更点: エラーが発生する直前に、何かハードウェアの増設・交換(特にメモリ、ストレージ)を行いましたか? 特定のソフトウェアをインストールしたり、アップデートしたりしましたか? もしそうであれば、その変更が原因である可能性が高いです。変更を元に戻す(ハードウェアを取り外す、ソフトウェアをアンインストールするなど)ことで問題が解決する場合があります。
  • エラー発生のタイミング: 特定のアプリケーションを実行中に発生するか? PC起動時か? アイドル時か? エラーが発生する状況が分かれば、原因の手がかりになります。例えば、特定の重いソフト実行時に発生するならメモリ不足やハードウェア負荷の問題、起動時ならOSやドライバの問題などが疑われます。
  • エラーの頻度: 一度だけ発生したのか、それとも頻繁に発生するのか? 一度きりなら一時的な問題、頻繁なら根本的な問題(ハードウェア故障など)の可能性が高いです。
  • ブルースクリーン画面の情報: エラーコード(0x7Aか?他のコードか?)、STOPコードに続く括弧内のパラメータ、エラーを引き起こした可能性のあるファイル名(もし表示されていれば)を控えておきます。これらの情報は後で原因を特定する際に役立ちます。

3.2. ハードウェアの診断

Kernel Data Inpage Errorはハードウェア、特にメモリやストレージに起因することが非常に多いエラーです。以下のツールや方法でハードウェアの健康状態を診断します。

3.2.1. メモリ(RAM)の診断

メモリの問題はKernel Data Inpage Errorの一般的な原因の一つです。

  • Windowsメモリ診断ツール: Windowsに標準搭載されているツールです。
    • 「Windowsメモリ診断」と検索して起動します。
    • 「今すぐ再起動して問題の有無を確認する (推奨)」を選択します。
    • PCが再起動し、自動的にメモリ診断が開始されます。テストには数分から数十分かかります。
    • 診断が完了すると、Windowsが起動し、結果が表示されます。エラーが見つかった場合は、メモリモジュールに問題がある可能性が高いです。
  • MemTest86+: Windowsメモリ診断ツールよりも詳細なテストが可能なフリーソフトです。USBメモリやCD/DVDから起動して使用します。
    • MemTest86+の公式サイトからイメージファイルをダウンロードします。
    • Rufusなどのツールを使って、ダウンロードしたイメージファイルをUSBメモリに書き込み、起動可能なUSBメモリを作成します。
    • PCのBIOS/UEFI設定で、作成したUSBメモリから起動するように設定します。
    • MemTest86+が起動したら、テストを開始します。通常、エラーが見つからなくなるまで複数回(最低でも1周、可能であれば複数周)テストを実行することが推奨されます。
    • エラーが検出された場合は、画面にその情報が表示されます。複数のメモリモジュールが搭載されている場合、1枚ずつテストすることで、どのモジュールに問題があるかを特定できます。

メモリ診断でエラーが検出された場合は、該当のメモリモジュールを交換するか、複数枚挿している場合は1枚ずつ試して、問題のあるモジュールを特定・交換する必要があります。

3.2.2. ストレージ(HDD/SSD)の診断

ストレージの問題もKernel Data Inpage Errorの非常に一般的な原因です。

  • S.M.A.R.T.情報の確認: S.M.A.R.T. (Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology) は、ストレージ自身が自分の状態を監視する機能です。
    • CrystalDiskInfoなどのフリーソフトを使用すると、S.M.A.R.T.情報を分かりやすく確認できます。
    • CrystalDiskInfoを起動し、ストレージの「健康状態」を確認します。「正常」以外(「注意」「異常」)が表示されている場合は、ストレージに問題があるか、寿命が近い可能性が高いです。
    • 特に、「代替処理済みのセクタ数」「代替処理保留中のセクタ数」「回復不可能セクタ数」「書き込みエラーレート」などの項目に注意して確認します。これらの数値が閾値を超えている、または増え続けている場合は、ストレージの物理的な不良が進行している兆候です。
  • エラーチェック(chkdskコマンド): ファイルシステムの論理的なエラーや、ストレージの物理的な不良セクタをチェック・修復するWindows標準のコマンドです。
    • コマンドプロンプトを「管理者として実行」で起動します。
    • 以下のコマンドを実行します(C:は診断したいドライブレターに置き換えてください)。
      bash
      chkdsk C: /f /r

      • /f オプション: ディスク上のエラーを修復します。
      • /r オプション: 不良セクタを特定し、読み取り可能な情報を回復します(時間がかかります)。
    • システムドライブ(通常C:)に対して実行する場合、再起動が必要になるというメッセージが表示されます。「Y」と入力してエンターキーを押し、PCを再起動すると、Windowsが起動する前に自動的にチェックが実行されます。
    • チェック完了後、結果が表示されます。ファイルシステムの修復や不良セクタが見つかったかどうかが報告されます。
  • メーカー製診断ツール: ストレージメーカー(Seagate, Western Digital, Crucial, Samsungなど)が提供している専用の診断ツールは、より詳細なストレージ診断が可能です。
    • お使いのストレージメーカーのウェブサイトから、対応する診断ツールをダウンロードして実行します。
    • ツールに従って診断を実行し、エラーがないか確認します。
  • SSDファームウェアの確認: SSDを使用している場合、ファームウェアが最新でないことが原因で問題が発生することがあります。
    • SSDメーカーのウェブサイトから、お使いのモデルの最新ファームウェアが提供されていないか確認します。
    • 提供されている場合は、メーカーが指定する方法に従ってファームウェアをアップデートします。

ストレージ診断でエラーが見つかったり、「注意」「異常」と判定されたりした場合は、そのストレージは寿命が近いか、すでに故障している可能性が高いです。データのバックアップを取り、ストレージの交換を検討してください。chkdskで論理エラーが修復された場合は、一時的に問題が解決する可能性がありますが、根本原因(物理的な不良など)が残っている場合、エラーが再発することがあります。

3.2.3. ケーブルの確認

PCケースを開ける作業が必要になります。電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜き、帯電防止の処置(PCケースの金属部分に触れるなど)を行ってから作業してください。

  • SATAケーブル: ストレージとマザーボードを繋ぐSATAケーブルが、両端でしっかりと奥まで挿入されているか確認します。可能であれば、別のSATAケーブルに交換してみます。
  • 電源ケーブル: ストレージに電力を供給するケーブルが、ストレージ側、電源ユニット側(モジュラー式の場合)でしっかりと挿入されているか確認します。可能であれば、別の電源ケーブルや、電源ユニットの別のコネクタを使用してみます。

ケーブルの接触不良や劣化は意外と見落としがちですが、重要な原因となり得ます。

3.3. ソフトウェアの診断と修復

ハードウェア診断で特に異常が見つからなかった場合や、ブルースクリーン画面に特定のファイル名が表示されている場合は、ソフトウェアの問題を疑います。

3.3.1. システムファイルチェッカー(SFCコマンド)

Windowsの重要なシステムファイルが破損していないかチェックし、破損があれば修復を試みるツールです。

  • コマンドプロンプトを「管理者として実行」で起動します。
  • 以下のコマンドを実行します。
    bash
    sfc /scannow
  • スキャンが開始され、システムファイルの整合性がチェックされます。問題が見つかった場合、自動的に修復が試みられます。
  • 完了までには時間がかかることがあります。結果が表示されたら、問題が検出・修復されたか確認します。
3.3.2. DISMコマンド

SFCコマンドでシステムファイルが修復できない場合や、Windowsイメージ自体に問題がある可能性がある場合に使用します。Windows Updateによってシステムファイルを修復します。

  • コマンドプロンプトを「管理者として実行」で起動します。
  • 以下のコマンドを順に実行します(オンライン環境が必要です)。
    bash
    DISM /Online /Cleanup-Image /CheckHealth
    DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth
    DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth

    • CheckHealth: イメージの破損がないか軽度なチェックを行います。
    • ScanHealth: より詳細なイメージの破損チェックを行います(時間がかかります)。
    • RestoreHealth: Windows Updateを使用して、破損したシステムファイルを修復します(時間がかかります)。
  • 各コマンドの実行が完了するのを待ちます。特にRestoreHealthは完了まで時間がかかることがあります。

SFCやDISMコマンドでシステムファイルの破損が修復された場合、それが原因で発生していたKernel Data Inpage Errorは解決する可能性があります。

3.3.3. ドライバーの確認と更新/ロールバック

特にストレージコントローラーやチップセット、グラフィックカードのドライバに問題がある場合、このエラーが発生しやすいです。

  • デバイスマネージャーを開く: スタートボタンを右クリックし、「デバイスマネージャー」を選択します。
  • エラーがないか確認: デバイス一覧に、黄色い感嘆符や赤い×印が付いている項目がないか確認します。特に「IDE ATA/ATAPI コントローラー」「ストレージ コントローラー」「ディスク ドライブ」「システム デバイス」などの項目を確認します。
  • ドライバの更新: 問題がありそうなデバイス(または最近追加・更新したデバイス)を右クリックし、「ドライバーの更新」を選択します。「ドライバーを自動的に検索」を試すか、メーカーのウェブサイトから最新のドライバをダウンロードして「コンピューターを参照してドライバーを検索」を選択し、手動でインストールします。
  • ドライバのロールバック: 最近ドライバを更新してからエラーが発生するようになった場合、そのドライバに問題がある可能性があります。デバイスのプロパティを開き、「ドライバー」タブにある「ドライバーを元に戻す」ボタンをクリックして、以前のバージョンに戻します(このボタンが有効になっている場合のみ可能です)。
  • ドライバのクリーンインストール: 問題が解決しない場合、現在インストールされているドライバを完全に削除してから、最新版を改めてインストールする「クリーンインストール」が有効な場合があります。グラフィックドライバなどの場合、専用のアンインストールツール(DDU: Display Driver Uninstallerなど)を使用すると、より確実に行えます。

ブルースクリーン画面に表示されていたファイル名が特定のドライバファイル名だった場合は、そのドライバが最有力候補となります。

3.3.4. Windows Updateの実行

Windows Updateによって、OS自体のバグが修正されたり、ドライバが更新されたりすることがあります。

  • 設定アプリを開き、「更新とセキュリティ」(または「Windows Update」)を選択します。
  • 「更新プログラムのチェック」をクリックし、利用可能な更新プログラムがあればすべてインストールします。
3.3.5. ウイルス/マルウェアスキャン

マルウェアがシステムファイルやストレージに悪影響を与えている可能性があります。

  • 信頼できるセキュリティソフトを使用して、システム全体のフルスキャンを実行します。
  • Windows Defenderを使用している場合、「Windows Defender オフライン スキャン」を実行することも有効です。これはWindows起動前に実行されるため、Windows上で活動しているマルウェアも検出・駆除できる可能性があります。
3.3.6. イベントビューアーの確認

ブルースクリーンが発生した際、システムはイベントログにその情報を記録します。イベントビューアーを確認することで、エラーの詳細や発生直前の状況を知ることができます。

  • 「イベントビューアー」と検索して起動します。
  • 左ペインの「Windows ログ」を展開し、「System」を選択します。
  • 右ペインの「現在のログをフィルター」をクリックし、「イベントID」に「1001」または「41」(BugCheckに関するイベント)を入力してOKをクリックします。
  • フィルターされた一覧の中から、ブルースクリーンが発生した日時のイベントを探します。
  • イベントの詳細を確認し、エラーコード(0x0000007Aなど)や、ブルースクリーン画面に表示されていたパラメータ、問題を起こした可能性のあるファイル名などが記載されていないか確認します。この情報は、原因を特定する上で非常に重要な手がかりとなります。
3.3.7. サードパーティ製ソフトウェアの干渉を排除(クリーンブート)

最近インストールしたソフトウェアや、常駐してシステムに深く関わるソフトウェア(セキュリティソフト、仮想ドライブソフト、各種ユーティリティなど)が原因でエラーが発生している可能性を排除します。

  • システム構成ツール(msconfigコマンド)を使用して、Windows起動時に読み込まれるサービスやスタートアップ項目を最小限にする「クリーンブート」を実行します。
  • クリーンブートの状態でエラーが発生しないか確認します。エラーが発生しない場合、起動を無効にしたサービスやスタートアップ項目の中に問題の原因があることになります。
  • 項目を少しずつ有効に戻しながらPCを再起動し、どの項目を有効にするとエラーが再発するかを特定します。
  • 問題を引き起こしているソフトウェアが特定できたら、そのソフトウェアの設定を変更するか、アンインストールを検討します。

3.4. その他の対処法

ここまでの診断や対処法で問題が解決しない場合に試す価値のある方法です。

3.4.1. システムの復元

エラーが発生する前にシステムの復元ポイントを作成していた場合、PCの状態をその時点に戻すことで問題が解決する可能性があります。

  • 「システムの復元」と検索して起動します。
  • 利用可能な復元ポイントが表示されるので、エラーが発生し始める前の日付の復元ポイントを選択します。
  • ウィザードに従って復元を実行します。復元には時間がかかり、完了後にPCが再起動します。システムの復元を行っても個人ファイルは削除されませんが、復元ポイント作成後にインストールしたアプリケーションやドライバーは削除される場合があります。
3.4.2. 仮想メモリ(ページファイル)の設定確認/リセット

ページファイル自体に問題がある場合、設定を一度リセットしてみます。

  • 「システムのプロパティ」を開き、「詳細設定」タブの「パフォーマンス」セクションにある「設定」をクリックします。
  • 「パフォーマンスオプション」ウィンドウの「詳細設定」タブで、「仮想メモリ」セクションにある「変更」をクリックします。
  • 「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」にチェックが入っているか確認します。通常はこの設定が推奨されます。
  • もしカスタムサイズに設定している場合は、「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」にチェックを入れ直して適用し、PCを再起動します。これにより、ページファイルが再作成される可能性があります。
  • 特定のドライブにページファイルを固定している場合、そのドライブに十分な空き容量があるか確認します。
3.4.3. BIOS/UEFI設定のリセットまたはアップデート

BIOS/UEFIの設定が原因でハードウェアが不安定になっている可能性を排除します。

  • PC起動時に特定のキー(Del, F2, F10, F12など。マザーボードによって異なります)を押してBIOS/UEFI設定画面に入ります。
  • 設定を工場出荷時の初期値に戻すオプション(例: “Load Default Settings”, “Load Optimized Defaults”など)を選択して設定を保存し、終了します。
  • BIOS/UEFI自体にバグがある可能性もゼロではありません。マザーボードメーカーのウェブサイトで、最新のBIOS/UEFIバージョンが公開されていないか確認し、必要であればアップデートを行います。ただし、BIOS/UEFIアップデートは失敗するとPCが起動不能になるリスクがあるため、慎重に行う必要があります。
3.4.4. Windowsのクリーンインストール(最終手段)

ここまでのどの対処法でも問題が解決しない場合、OS自体に深刻な問題がある可能性が高いです。最終手段として、Windowsのクリーンインストールを検討します。

  • クリーンインストールを行うと、システムドライブ(通常C:)の内容はすべて消去されます。事前に必要なデータのバックアップを必ず行ってください。
  • Windowsのインストールメディア(USBメモリやDVD)を作成します。マイクロソフトの公式ウェブサイトからツールをダウンロードして作成できます。
  • 作成したインストールメディアからPCを起動し、画面の指示に従ってWindowsを新規にインストールします。
  • インストール完了後、Windows Updateを実行し、必要なドライバーやアプリケーションを再インストールします。

クリーンインストールを行うことで、OS、システムファイル、ドライバ、レジストリなどがすべて初期状態に戻るため、ソフトウェア的な問題が原因であれば、ほぼ確実に解決します。しかし、クリーンインストール後も同じエラーが発生する場合は、ハードウェア(特にメモリかストレージ)の故障である可能性が極めて高いです。

4. 各原因に対する具体的な対処法(詳細)

前述のトラブルシューティングステップで原因が絞り込めた、あるいは特定のハードウェアやソフトウェアが怪しいと判断できた場合に、より具体的な対処法を実行します。ここでは、主要な原因に対する具体的な手順を詳しく説明します。

4.1. メモリの問題への対処

4.1.1. メモリモジュールの挿し直し、スロット変更

PCケースを開ける作業です。電源を切り、電源ケーブルを抜き、帯電防止を行います。

  1. PCケースを開けます。
  2. マザーボード上のメモリスロットを確認します。通常、CPUソケットの近くに並んでいます。
  3. メモリスロットの両端にある固定レバーを外側に倒します。メモリモジュールが少し浮き上がります。
  4. メモリモジュールを垂直に引き抜きます。
  5. メモリモジュールの金色の端子部分に埃や汚れがないか確認します。ブロワーなどで埃を吹き飛ばします(消しゴムで優しく擦るという方法もありますが、端子を傷つけないよう細心の注意が必要です)。
  6. メモリスロット内部に埃が溜まっていないか確認し、ブロワーなどで吹き飛ばします。
  7. メモリモジュールを再度スロットに挿入します。モジュールの切り欠きとスロットの突起の位置を合わせ、両端を同時に力を入れて押し込みます。固定レバーが自動的に元の位置に戻る音がすれば、正しく装着されています。
  8. 複数のスロットがある場合、別のスロットに挿し直してみるのも有効です(例: 1枚だけ挿している場合、別のスロットに移動する。2枚挿している場合、スロットの組み合わせを変える)。
  9. 全てのメモリモジュールを挿し直したら、PCケースを閉じ、電源を入れてエラーが解消されたか確認します。
4.1.2. 不良メモリモジュールの特定と交換

MemTest86+などの診断ツールでエラーが検出された場合、どのモジュールが原因かを特定する必要があります。

  1. 複数のメモリモジュールが搭載されている場合、まず1枚だけを特定のメモリスロット(マザーボードのマニュアルで推奨されているスロット)に挿してMemTest86+を実行します。
  2. 問題がなければ、次に別のモジュールと交換して再度テストを行います。
  3. これを繰り返すことで、エラーが発生するモジュールを特定できます。
  4. エラーが検出されたメモリモジュールは故障している可能性が高いため、新しい正常なモジュールと交換する必要があります。
  5. 全てのモジュールでテストを行い、問題のあるモジュールを全て交換します。
  6. 新しいメモリを取り付けたら、再度MemTest86+を実行して、エラーが発生しないことを確認します。

4.2. ストレージの問題への対処

4.2.1. chkdskによる論理エラー/物理不良セクタの修復

既に述べたコマンドプロンプトからの実行方法を再度確認します。

  1. スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択。「cmd」と入力し、「Ctrl + Shift + Enter」キーを押して管理者権限でコマンドプロンプトを起動します。または、スタートメニューから「コマンドプロンプト」を検索し、右クリックして「管理者として実行」を選択します。
  2. chkdsk C: /f /r /x と入力してEnterキーを押します(C:は対象ドライブ)。
    • /f: ディスクのエラーを修復します。
    • /r: 不良セクタを特定し、読み取り可能な情報を回復します。時間が最もかかります。
    • /x: 必要であれば、最初にボリュームを強制的にマウント解除します。通常、システムドライブ以外では必要ありませんが、確実を期すならつけても良いでしょう。
  3. システムドライブ(通常C:)の場合、次回のPC起動時に実行するか尋ねられます。「Y」と入力してEnterキーを押し、PCを再起動します。
  4. 再起動すると、Windows起動前に青い画面でディスクチェックが開始されます。完了まで待ちます。
  5. システムドライブ以外のドライブの場合、すぐにチェックが開始されます。
  6. チェック完了後、結果が表示されます。ログはイベントビューアーのApplicationログ、Source: ChkdskまたはWininit (ブート時の場合) で確認できます。

chkdskでエラーが検出され、修復された場合、エラーが解消される可能性があります。ただし、物理的な不良セクタが多数検出される場合は、ストレージ自体が故障している兆候です。

4.2.2. S.M.A.R.T.情報の確認と解釈(CrystalDiskInfo)

CrystalDiskInfoはS.M.A.R.T.情報を簡単に確認できる便利なツールです。

  1. CrystalDiskInfoをダウンロードしてインストールし、起動します。
  2. 画面上部に接続されているストレージの一覧が表示されます。Kernel Data Inpage Errorの発生元と思われるストレージ(通常はOSがインストールされているドライブ)を選択します。
  3. 中央に表示される「健康状態」を確認します。「正常 (Good)」以外の場合は注意が必要です。
  4. 下部に表示されるS.M.A.R.T.属性値を確認します。特に以下の項目に注意します。
    • 代替処理済みのセクタ数 (Reallocated Sector Count): 不良セクタが代替領域に置き換えられた回数。この数値が増加している場合は、ストレージの劣化が進んでいます。
    • 代替処理保留中のセクタ数 (Current Pending Sector Count): 読み取りエラーが発生し、代替処理を保留しているセクタ数。次に書き込みが発生した際に代替処理が行われる可能性があります。この数値が存在する場合は危険な状態です。
    • 回復不可能セクタ数 (Uncorrectable Sector Count): 読み取り・書き込み・検証でエラーが発生し、回復できないセクタ数。データが失われている可能性があり、ストレージが故障寸前または故障しています。
    • ライトエラーレート (Multi-Zone Error Rate / SSDの場合): 書き込みエラーの発生率。
    • CRCエラーカウント (UDMA CRC Error Count): データ転送時のエラー回数。ケーブルや接続ポートの問題を示唆することがあります。
  5. これらの値が警告レベルに達している(Raw値が増加している、または閾値を超えている)場合、そのストレージは信頼性が低下しています。データのバックアップを最優先に行い、交換を検討してください。
4.2.3. ストレージの交換

S.M.A.R.T.診断などで物理的な故障が強く疑われる場合、ストレージを交換する必要があります。

  1. 交換するストレージの種類(HDDかSSD)、容量、接続方式(SATA, NVMeなど)を確認し、新しいストレージを用意します。
  2. PCケースを開け、古いストレージを取り外します。SATAケーブルと電源ケーブルを外し、必要であれば取り付け金具やネジを外します。
  3. 新しいストレージをPCに取り付けます。ケーブルをしっかりと接続し、必要であれば固定します。
  4. PCケースを閉じ、電源を入れます。
  5. 新しいストレージはフォーマットされていないため、Windowsのインストールメディアやシステム修復ディスクなどを使用してPCを起動し、新しいストレージにWindowsをクリーンインストールします。または、古いストレージから新しいストレージへOSを含む全てのデータをコピー(クローン)する方法もありますが、古いストレージに不良セクタがある場合はクローン中にエラーが発生したり、クローン先のストレージにも問題を引き継いだりするリスクがあります。不良が疑われる場合はクリーンインストールが推奨されます。
  6. OSインストール後、必要なドライバやアプリケーションをインストールし、バックアップしておいたデータを復元します。

4.3. ドライバーの問題への対処

4.3.1. デバイスマネージャーでの操作
  1. スタートボタンを右クリックし、「デバイスマネージャー」を選択します。
  2. 疑わしいデバイス(例: IDE ATA/ATAPI コントローラー、ストレージ コントローラー、グラフィック アダプターなど)を探します。
  3. 対象のデバイスを右クリックし、「ドライバーの更新」を選択します。
    • 「ドライバーを自動的に検索」を試します。Windows Updateを通じて適切なドライバーが見つかる場合があります。
    • 自動検索で見つからない場合や、メーカーが提供する最新版を使いたい場合は、メーカーウェブサイトからダウンロードしたドライバーファイルを指定して「コンピューターを参照してドライバーを検索」を選択します。
  4. 最近ドライバーを更新してから問題が発生している場合、対象デバイスを右クリックし、「プロパティ」を選択。「ドライバー」タブを開き、「ドライバーを元に戻す」ボタンをクリックします。このボタンが有効であれば、以前のバージョンに戻すことができます。
  5. 問題のドライバーが特定できている場合は、デバイスマネージャーからそのデバイスを右クリックし、「デバイスのアンインストール」を選択します。アンインストール後、PCを再起動すると、Windowsが標準ドライバーを自動的にインストールするか、再度メーカーサイトから最新版をダウンロードして手動でインストールします。
4.3.2. ドライバークリーンインストール

グラフィックドライバなど、一部のドライバは通常のアンインストールだけでは完全に削除されず、問題が残ることがあります。

  1. Display Driver Uninstaller (DDU) のような専用ツールをダウンロードします(グラフィックドライバの場合)。他のデバイスドライバの場合も、メーカーが専用のアンインストールツールを提供している場合があります。
  2. PCをセーフモードで起動します。
  3. DDUなどのツールを起動し、対象のドライバを選択して「クリーンして再起動」を実行します。
  4. PCが再起動したら、通常モードで起動します。
  5. メーカーのウェブサイトからダウンロードした最新のドライバインストーラーを実行し、ドライバを新規にインストールします。

4.4. システムファイルの破損への対処

4.4.1. SFCコマンドの詳細

前述しましたが、より確実に実行するために以下の手順で確認します。

  1. スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択。「cmd」と入力し、「Ctrl + Shift + Enter」キーを押して管理者権限でコマンドプロンプトを起動します。
  2. sfc /scannow と入力してEnterキーを押します。
  3. 「システムの検査を開始しています。これにはしばらく時間がかかります。」というメッセージが表示され、進捗率が表示されます。完了まで待ちます。
  4. 完了すると、以下のいずれかの結果が表示されます。
    • 「Windows リソース保護は、整合性違反を検出しませんでした。」:システムファイルに問題は見つかりませんでした。
    • 「Windows リソース保護は、破損したファイルを検出し、それらを正常に修復しました。」:破損ファイルが見つかり、修復されました。
    • 「Windows リソース保護は、破損したファイルを検出しましたが、それらの一部を修復できませんでした。」:破損ファイルが見つかりましたが、修復できませんでした。この場合はDISMコマンドを試します。
    • 「Windows リソース保護は要求された操作を実行できませんでした。」:SFCを実行できませんでした。セーフモードで実行するか、DISMコマンドを試します。
4.4.2. DISMコマンドの詳細

SFCで修復できなかった場合、あるいはWindowsイメージ自体に問題がある場合に実行します。

  1. スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択。「cmd」と入力し、「Ctrl + Shift + Enter」キーを押して管理者権限でコマンドプロンプトを起動します。
  2. 以下のコマンドを順に実行します。
    bash
    DISM /Online /Cleanup-Image /CheckHealth

    (実行後、結果を確認します。問題なし、問題あり、修復可能、修復不可能などのステータスが表示されます)
    bash
    DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth

    (より詳細なスキャン。完了まで時間がかかります)
    bash
    DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth

    (Windows Updateから正常なファイルをダウンロードしてイメージを修復します。完了まで非常に時間がかかる場合があります。インターネット接続が必要です)
  3. すべてのコマンドが完了するのを待ちます。特にRestoreHealthは、進捗が止まっているように見えることがありますが、気長に待ちます。
  4. 完了後、SFCコマンドを再度実行して、今度はシステムファイルが修復できるか確認します。

4.5. サードパーティ製ソフトウェアの干渉への対処(クリーンブート)

システム構成ツール(msconfig)を使ったクリーンブートの手順です。

  1. 「ファイル名を指定して実行」(Windowsキー + R)を開き、「msconfig」と入力してEnterキーを押します。
  2. 「システム構成」ウィンドウが表示されます。「サービス」タブを開き、「Microsoft のサービスをすべて隠す」にチェックを入れます。
  3. チェックを入れた後、一覧に残ったサービスの左側にあるチェックボックスを全てオフにし、「すべて無効」ボタンをクリックします(後で問題特定のために一つずつ有効にする場合は、無効にする項目を記録しておきます)。
  4. 「スタートアップ」タブを開き、「タスク マネージャーを開く」をクリックします。
  5. タスクマネージャーの「スタートアップ」タブで、一覧表示されている項目(ログイン時に自動起動するアプリなど)を一つずつ選択し、「無効にする」をクリックします。問題特定のため、無効にする項目を記録しておきます。
  6. タスクマネージャーを閉じ、「システム構成」ウィンドウに戻ります。「OK」をクリックします。
  7. PCの再起動を求められるので、「再起動」をクリックします。
  8. PCがクリーンブートモードで起動します。この状態でエラーが発生しないか確認します。
  9. クリーンブートでエラーが発生しない場合、無効にしたサービスやスタートアップ項目の中に原因があります。「システム構成」ウィンドウを再度開き、「サービス」タブと「スタートアップ」タブで、無効にした項目を半分ずつ有効に戻して再起動し、エラーが再発するか確認します。これを繰り返すことで、問題の原因となっているソフトウェアを特定できます。
  10. 原因となっているソフトウェアが特定できたら、そのソフトウェアの設定を変更するか、アンインストールします。
  11. 問題が解決したら、「システム構成」ウィンドウで「通常のスタートアップ」を選択し、OKをクリックしてPCを再起動し、通常モードに戻します。

5. エラーの再発を防ぐために

Kernel Data Inpage Errorを一度経験したら、再発を防ぐための対策を講じることが重要です。

  • ハードウェアの定期診断: 特にストレージ(HDD/SSD)のS.M.A.R.T.情報を定期的に確認します。CrystalDiskInfoなどを利用して、「正常」であることを確認しましょう。ストレージの異常を早期に発見することで、データ喪失のリスクを減らし、深刻なエラーの発生を防げます。
  • Windows Updateとドライバの更新: OSやデバイスドライバのバグは、エラーの原因となり得ます。定期的にWindows Updateを実行し、特に重要なドライバ(チップセット、ストレージコントローラー、グラフィックドライバなど)はメーカーのウェブサイトから最新版が提供されていないか確認し、適用しましょう。ただし、新しいドライバが逆に問題を引き起こす可能性もゼロではないため、更新後はシステムの安定性を注意深く観察することが重要です。
  • 信頼できるセキュリティソフトの利用: マルウェアはシステムに深刻なダメージを与える可能性があります。信頼できるセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ち、定期的なスキャンを実行しましょう。
  • システムのバックアップ: 重要なデータは定期的にバックアップを取りましょう。また、Windowsのシステムイメージバックアップ機能などを利用して、システム全体をバックアップしておけば、万が一深刻なエラーが発生した場合でも、比較的簡単に元の環境に戻すことができます。
  • 電源環境の確認: タコ足配線などで複数の機器が接続されているコンセントや、老朽化したコンセントは、PCへの電力供給を不安定にすることがあります。PCは壁のコンセントから直接電源を取るようにしたり、可能であればUPS(無停電電源装置)の使用も検討したりすると、安定した電力供給に繋がり、ハードウェアの予期せぬ不具合を防ぐ助けになります。
  • PC内部の清掃: PCケース内部に埃が溜まると、部品の冷却効率が低下し、過熱による不安定化や故障の原因となります。定期的にブロワーなどで埃を吹き飛ばし、内部を清潔に保ちましょう。特にファンやヒートシンク、メモリスロットなどに埃が溜まりやすいです。
  • オーバークロックの見直し: CPUやメモリなどをオーバークロックしている場合、それが原因で不安定になっている可能性があります。安定動作を重視するなら、設定を定格に戻すことを検討しましょう。

6. 専門業者への依頼を検討するケース

多くの場合、本記事で紹介した手順を試すことでKernel Data Inpage Errorは解決可能です。しかし、以下のような場合は、PC修理やデータ復旧の専門業者に依頼することを検討しましょう。

  • 複数のハードウェア診断ツールで異常が検出された場合: メモリもストレージも異常が見られるなど、複数の部品に問題がある場合、個人で原因を特定し、複数の部品を交換するのは難しい場合があります。
  • ハードウェア診断で深刻な故障が確認された場合: ストレージのS.M.A.R.T.情報が「異常」を示している、MemTest86+で多数のエラーが検出されるなど、ハードウェアの物理的な故障が確定的な場合。特にストレージの故障はデータ消失に直結するため、自力での交換に自信がない場合や、データ復旧も必要な場合は専門業者に依頼するのが安全です。
  • あらゆる対処法を試しても解決しない場合: 本記事で紹介した基本的なトラブルシューティングから最終手段であるクリーンインストールまで全て試してもエラーが再発する場合、個人では診断が難しいハードウェアの問題(マザーボードの故障、CPUの故障など)や、非常に稀な原因が考えられます。
  • データ復旧が必要な場合: エラーの原因がストレージの故障であり、バックアップを取っていなかったり、バックアップが古かったりしてデータ復旧が必要な場合。データ復旧は専門的な技術が必要であり、個人で無理に行うとデータを完全に失うリスクがあるため、専門のデータ復旧業者に依頼しましょう。
  • PCの内部作業に自信がない場合: PCケースを開けて部品の抜き差しや交換を行う作業に不安がある場合、無理に行うと他の部品を破損させるリスクがあります。

専門業者に依頼することで、正確な診断と適切な修理を受けることができ、トラブルをより確実に解決できる可能性が高まります。

7. まとめ

Kernel Data Inpage Errorは、Windowsがストレージからメモリへデータを読み込む際に失敗することで発生するブルースクリーンエラーです。このエラーの主な原因は、メモリやストレージといったハードウェアの不具合、あるいはファイルシステム、ドライバ、システムファイルといったソフトウェアの問題にあります。

原因特定のためには、まずPCの再起動や最近の変更点の確認といった基本的な切り分けを行い、次にWindowsメモリ診断ツールやMemTest86+によるメモリ診断、chkdskやCrystalDiskInfoによるストレージ診断といったハードウェア診断を体系的に行うことが重要です。これらの診断で異常が見つからなかった場合は、SFC/DISMコマンドによるシステムファイルの修復、デバイスマネージャーでのドライバ確認・更新、ウイルススキャン、イベントビューアーの確認、クリーンブートによるソフトウェア競合の切り分けといったソフトウェア的なトラブルシューティングを行います。

具体的な対処法としては、問題のあるハードウェア(メモリやストレージ)の交換、ドライバの更新やロールバック、システムファイルの修復、マルウェアの駆除、競合するソフトウェアの特定と排除、システムの復元、そして最終手段としてのWindowsクリーンインストールなどがあります。

Kernel Data Inpage Errorは様々な原因が考えられるため、原因特定には根気が必要ですが、多くの場合、本記事で紹介した手順を踏むことでご自身で解決することが可能です。しかし、ハードウェアの深刻な故障が疑われる場合や、全ての対処法を試しても解決しない場合は、専門業者への依頼も有効な選択肢となります。

日頃からハードウェアの健康状態をチェックし、OSやドライバを最新の状態に保ち、セキュリティ対策をしっかりと行うことで、このような深刻なエラーの発生を予防することにも繋がります。ブルースクリーンに遭遇しても慌てず、本記事を参考に原因を特定し、適切な対処を行ってください。


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