CentOS 7.9 最新情報:ダウンロード・インストール・設定ガイド
CentOS 7.9 は、CentOS 7 ファミリーの最終メジャーリリースであり、2024年6月30日に End-of-Life (EOL) を迎えました。しかし、多くの企業や個人が、レガシーシステムや特定のアプリケーションの実行環境として、現在も CentOS 7.9 を使用しています。本記事では、CentOS 7.9 の最新情報、ダウンロード方法、インストール手順、基本的な設定、そしてEOL後の移行オプションについて詳細に解説します。
1. CentOS 7.9 の概要
CentOS (Community ENTerprise Operating System) は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のソースコードから再構築された、エンタープライズクラスのLinuxディストリビューションです。RHEL との互換性が高く、安定性、セキュリティ、長期サポートが特徴です。CentOS 7.9 は、CentOS 7 ファミリーの最後のメジャーアップデートであり、多くの改善とセキュリティアップデートが含まれています。
1.1. CentOS 7.9 の主な特徴
- 安定性と信頼性: RHEL のソースコードを基にしているため、非常に安定しており、信頼性の高い運用が可能です。
- 長期サポート: 2024年6月30日まで、セキュリティアップデートとバグ修正が提供されていました。
- ソフトウェアパッケージの豊富さ: CentOS のリポジトリには、幅広いソフトウェアパッケージが含まれており、様々な用途に対応できます。
- ハードウェアサポート: 広範なハードウェアをサポートしており、多くのサーバーやデスクトップ環境で利用できます。
- セキュリティ: 定期的なセキュリティアップデートが提供され、セキュリティ上の脆弱性に対応できます。
- 無償利用: ライセンス費用はかからず、誰でも無償で利用できます。
1.2. CentOS 7.9 の変更点 (7.8 からの主な変更点)
CentOS 7.9 は、7.8 から多くの改善点と修正点が含まれています。主な変更点は以下の通りです。
- カーネルの更新: より新しいバージョンのカーネルが搭載され、ハードウェアサポートが向上しました。
- パッケージの更新: 多くのソフトウェアパッケージが最新バージョンに更新され、機能改善とセキュリティ修正が行われました。
- セキュリティ強化: 重要なセキュリティ脆弱性が修正され、システム全体のセキュリティが強化されました。
- パフォーマンス改善: 全体的なパフォーマンスが改善され、より効率的なシステム運用が可能になりました。
- ドライバの更新: 最新のハードウェアに対応するため、ドライバが更新されました。
1.3. CentOS 7.9 EOL (End-of-Life) について
CentOS 7.9 は、2024年6月30日に EOL を迎えました。EOL とは、開発元からのセキュリティアップデート、バグ修正、技術サポートの提供が終了することを意味します。EOL 後も CentOS 7.9 を利用することは可能ですが、セキュリティ上のリスクが高まるため、推奨されません。
2. CentOS 7.9 のダウンロード
CentOS 7.9 の ISO イメージは、以下の公式サイトからダウンロードできます。
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CentOS Vault: CentOS Vault は、EOL になったバージョンの CentOS がアーカイブされている場所です。CentOS 7.9 の ISO イメージもここに保存されています。
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アクセス先:
http://vault.centos.org/7.9.2009/isos/
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上記 URL にアクセスし、お使いの環境に合った ISO イメージを選択してダウンロードします。通常は x86_64 (64 ビット版) を選択します。
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ISO イメージには、以下の種類があります。
- Minimal: 最小限のパッケージのみが含まれているため、ネットワーク経由で必要なパッケージをインストールする場合に適しています。
- DVD ISO: 一般的な用途に適した ISO イメージで、多くのソフトウェアパッケージが含まれています。
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2.1. ダウンロード時の注意点
- ISO イメージの選択: 必要なソフトウェアパッケージに応じて、適切な ISO イメージを選択してください。最小限の構成で開始する場合は Minimal を、すぐに利用できる環境が必要な場合は DVD ISO を選択します。
- SHA256 チェックサム: ダウンロードした ISO イメージが破損していないことを確認するために、SHA256 チェックサムを検証してください。公式サイトには、各 ISO イメージに対応する SHA256 チェックサムが記載されています。
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ターミナルで以下のコマンドを実行して、ダウンロードした ISO イメージの SHA256 チェックサムを計算します。
bash
sha256sum CentOS-7-x86_64-DVD-2009.iso # ファイル名はダウンロードした ISO イメージに合わせてください。
* 計算された SHA256 チェックサムと公式サイトに記載されている値を比較し、一致することを確認します。
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3. CentOS 7.9 のインストール
CentOS 7.9 は、DVD からの起動、USB ドライブからの起動、ネットワーク経由での起動など、様々な方法でインストールできます。ここでは、DVD または USB ドライブからの起動によるインストール手順を解説します。
3.1. インストールメディアの作成
ダウンロードした ISO イメージを DVD または USB ドライブに書き込みます。
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DVD の作成:
- Windows の場合:標準の DVD 書き込みソフト(ImgBurn など)を使用して、ISO イメージを DVD に書き込みます。
- macOS の場合:標準の Disk Utility アプリケーションを使用して、ISO イメージを DVD に書き込みます。
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Linux の場合:
growisofs
コマンドを使用します。bash
growisofs -dvd-compat -Z /dev/dvd=CentOS-7-x86_64-DVD-2009.iso # /dev/dvd は DVD ドライブに合わせてください。
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USB ドライブの作成:
-
Linux:
dd
コマンドを使用します (注意: 間違ったデバイスを指定するとデータが消去される可能性があります)。bash
sudo dd if=CentOS-7-x86_64-DVD-2009.iso of=/dev/sdb bs=4M status=progress oflag=sync # /dev/sdb は USB ドライブに合わせてください。
*dd
コマンドを実行する前に、lsblk
コマンドで USB ドライブのデバイス名を確認することを推奨します。
* Windows: Rufus などのツールを使用すると、簡単に USB ドライブを作成できます。
* macOS: Etcher などのツールを使用すると、簡単に USB ドライブを作成できます。
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3.2. インストール手順
- 起動デバイスの設定: インストールメディアを挿入し、コンピューターを起動します。BIOS または UEFI の設定画面で、DVD ドライブまたは USB ドライブから起動するように設定します。
- CentOS 7 の起動: インストールメディアから起動すると、CentOS 7 のブートメニューが表示されます。
- インストールの開始: ブートメニューから「Install CentOS 7」を選択して、Enter キーを押します。
- 言語の選択: インストールに使用する言語を選択します。
-
インストールの概要: インストールの概要画面が表示されます。ここで、以下の項目を設定します。
- 日付と時刻: 正しい日付と時刻を設定します。
- キーボード: 使用するキーボードレイアウトを選択します。
- 言語サポート: 必要な言語サポートを追加します。
- インストール元: インストールメディアが自動的に認識されます。
- ソフトウェアの選択: インストールするソフトウェアのセットを選択します。サーバー向けの最小限のインストール、GUI 付きのサーバー、ワークステーションなど、様々なオプションがあります。
- インストール先: インストール先のディスクを選択します。ここでパーティションの設定を行います。
- ネットワークとホスト名: ネットワーク設定とホスト名を設定します。
-
パーティションの設定: インストール先のディスクを選択すると、パーティションの設定画面が表示されます。
- 自動パーティション: 自動的にパーティションが作成されます。初心者向けの簡単なオプションです。
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カスタムパーティション: 手動でパーティションを作成します。高度な設定が必要な場合に選択します。
-
推奨パーティション構成 (カスタムパーティションの場合):
/boot
パーティション (200MB): ブートローダーを格納します。ext4 ファイルシステムでフォーマットします。/
(ルート) パーティション (20GB 以上): システムファイルやアプリケーションを格納します。xfs ファイルシステムでフォーマットします。swap
パーティション (RAM の容量と同じくらい): スワップ領域として使用します。/home
パーティション (残りの容量): ユーザーのホームディレクトリを格納します。xfs ファイルシステムでフォーマットします。
-
ネットワークとホスト名の設定: ホスト名を設定し、必要に応じてネットワーク設定を行います。DHCP を使用する場合は、自動的に IP アドレスが割り当てられます。固定 IP アドレスを設定する場合は、IP アドレス、ネットマスク、ゲートウェイ、DNS サーバーなどを手動で入力します。
- インストールの開始: すべての設定が完了したら、「インストールの開始」ボタンをクリックします。
- ルートパスワードの設定: インストール中に、root ユーザーのパスワードを設定する必要があります。強力なパスワードを設定することを推奨します。
- ユーザーの作成: 必要に応じて、新しいユーザーアカウントを作成します。
- インストールの完了: インストールが完了すると、再起動を求められます。再起動後、CentOS 7.9 が起動します。
4. CentOS 7.9 の初期設定
インストール後、CentOS 7.9 を使用する前に、いくつかの初期設定を行うことを推奨します。
4.1. ネットワーク設定の確認
ネットワーク設定が正しく設定されていることを確認します。ターミナルで以下のコマンドを実行して、IP アドレス、ゲートウェイ、DNS サーバーなどを確認します。
bash
ip addr
route -n
cat /etc/resolv.conf
固定 IP アドレスを設定した場合は、/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-<インタフェース名>
ファイルを編集して、設定を調整できます。
4.2. システムアップデート
インストール後、最新のセキュリティアップデートとバグ修正を適用するために、システムをアップデートします。ターミナルで以下のコマンドを実行します。
bash
sudo yum update
4.3. ファイアウォールの設定
セキュリティを強化するために、ファイアウォールを設定します。CentOS 7.9 では、firewalld がデフォルトで有効になっています。
-
firewalld の起動と有効化:
bash
sudo systemctl start firewalld
sudo systemctl enable firewalld
sudo systemctl status firewalld -
サービスの許可:
bash
sudo firewall-cmd --permanent --add-service=ssh
sudo firewall-cmd --reload
上記は SSH サービスを許可する例です。必要なサービスに応じて、適切なサービス名 (http, https, mysql など) を指定してください。
4.4. SSH の設定
SSH (Secure Shell) は、リモートから安全にサーバーにアクセスするためのプロトコルです。SSH を有効にして、リモートからのアクセスを許可します。
-
SSH サービスの起動と有効化:
bash
sudo systemctl start sshd
sudo systemctl enable sshd
sudo systemctl status sshd -
SSH 設定の変更 (オプション):
/etc/ssh/sshd_config
ファイルを編集して、SSH の設定を変更できます。例えば、デフォルトのポート番号 (22) を変更したり、root ユーザーのログインを禁止したりすることができます。bash
sudo vi /etc/ssh/sshd_config設定を変更した場合は、SSH サービスを再起動する必要があります。
bash
sudo systemctl restart sshd
4.5. タイムゾーンの設定
正しいタイムゾーンを設定します。
bash
sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo # タイムゾーンは環境に合わせてください。
4.6. SELinux の設定
SELinux (Security-Enhanced Linux) は、セキュリティを強化するための Linux カーネルのセキュリティモジュールです。SELinux は、デフォルトで Enforcing モードで有効になっています。SELinux の設定を変更する場合は、/etc/selinux/config
ファイルを編集します。
5. CentOS 7.9 の EOL 後の選択肢
CentOS 7.9 は EOL を迎えているため、セキュリティ上のリスクを避けるためには、以下のいずれかのオプションを検討する必要があります。
5.1. より新しい CentOS Stream への移行
CentOS Stream は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) の開発版であり、RHEL の次のマイナーバージョンに先駆けてアップデートが提供されます。CentOS Stream は、継続的なアップデートと新しい機能を提供するため、EOL になった CentOS 7.9 からの移行先として適しています。ただし、RHEL と比較して、安定性や長期サポートの面で劣る場合があります。
5.2. RHEL への移行
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、エンタープライズ向けの商用 Linux ディストリビューションであり、Red Hat によってサポートされています。RHEL は、安定性、セキュリティ、長期サポートが特徴であり、EOL になった CentOS 7.9 からの移行先として最も推奨されます。ただし、RHEL は商用ライセンスが必要になります。
5.3. AlmaLinux への移行
AlmaLinux は、CentOS の創設者によって設立されたプロジェクトであり、RHEL との互換性を目指した Linux ディストリビューションです。AlmaLinux は、無償で利用でき、長期サポートが提供されるため、EOL になった CentOS 7.9 からの移行先として適しています。
5.4. Rocky Linux への移行
Rocky Linux は、CentOS の後継を目指した Linux ディストリビューションであり、RHEL との互換性があります。Rocky Linux は、無償で利用でき、長期サポートが提供されるため、EOL になった CentOS 7.9 からの移行先として適しています。
5.5. その他の Linux ディストリビューションへの移行
Debian、Ubuntu、SUSE Linux Enterprise Server など、他の Linux ディストリビューションへの移行も可能です。ただし、アプリケーションの互換性や移行作業の複雑さを考慮する必要があります。
6. CentOS 7.9 の移行に関する考慮事項
EOL になった CentOS 7.9 から別のディストリビューションに移行する際には、以下の点を考慮する必要があります。
- アプリケーションの互換性: 現在のアプリケーションが、移行先のディストリビューションで動作するかどうかを確認します。必要なライブラリや依存関係がインストールされているか、アプリケーションの設定を変更する必要があるかなどを検証します。
- データ移行: 既存のデータを移行先のディストリビューションに移行する必要があります。データのバックアップとリストアの手順を確立し、データの整合性を確認します。
- 移行手順のテスト: 移行手順を事前にテスト環境で検証し、問題点を洗い出します。本番環境での移行作業をスムーズに進めるために、入念な準備が必要です。
- ダウンタイム: 移行作業には、ダウンタイムが発生する可能性があります。ダウンタイムを最小限に抑えるために、移行計画を慎重に策定します。
- スタッフのトレーニング: 移行先のディストリビューションに関する知識やスキルを習得するために、スタッフへのトレーニングを実施します。
7. まとめ
CentOS 7.9 は、EOL を迎えたものの、現在でも多くのシステムで利用されています。EOL 後も CentOS 7.9 を使用することは可能ですが、セキュリティ上のリスクが高まるため、より新しい CentOS Stream、RHEL、AlmaLinux、Rocky Linux などのディストリビューションへの移行を検討することを推奨します。移行作業を行う際には、アプリケーションの互換性、データ移行、移行手順のテスト、ダウンタイム、スタッフのトレーニングなどを考慮し、慎重に計画を策定することが重要です。
本記事が、CentOS 7.9 に関する理解を深め、適切な移行計画を立てる一助となれば幸いです。