【作例あり】EOS R8で撮影!写りや操作感を正直レビュー

【作例あり】EOS R8で撮影!写りや操作感を正直レビュー

EOS R8。このカメラが登場したとき、多くの写真愛好家、特にフルサイズ機へのステップアップを考えていた人々が注目しました。その理由は、キヤノンの現行フルサイズミラーレスラインアップの中で、比較的手に取りやすい価格帯でありながら、上位機種であるEOS R6 Mark IIにも通じる最新の高性能AFシステムと、高画質な2420万画素センサーを搭載している点にあります。しかし、その一方で、小型軽量化のためにいくつかの機能が省略されていることも事実です。

今回は、約1ヶ月間、EOS R8をメインカメラとして使用し、様々なシーンで撮影を行った経験をもとに、その「写り」と「操作感」を中心に、正直なレビューをお届けします。カタログスペックだけでは分からない、実際の使用感や、このカメラがどんな可能性を秘めているのか、どんな人におすすめできるのかを、詳細な作例レビュー(文章による描写)を交えながら解説していきます。

はじめに:EOS R8はどんなカメラ? ターゲットユーザーは?

EOS R8は、2023年4月に発売されたキヤノンのフルサイズミラーレス一眼カメラです。その位置づけとしては、既存の入門向けフルサイズ機であるEOS RPの後継機でありながら、中級機に近い性能を併せ持つ、いわゆる「高性能エントリー機」と言えるでしょう。

ターゲットユーザーとしては、以下のような層が想定されます。

  • APS-C機からフルサイズ機へステップアップしたいと考えているユーザー
  • フルサイズ機を初めて購入するが、ある程度の性能は妥協したくないユーザー
  • 軽量・コンパクトなフルサイズシステムを求めているユーザー
  • 趣味で写真や動画撮影を楽しんでおり、クオリティアップを目指したいユーザー
  • 上位機種(R6 Mark IIなど)の価格には手が届かないが、最新AFを体験したいユーザー

EOS R8は、これらのニーズに応えるべく、フルサイズセンサーによる豊かな表現力と、最新の高速・高精度AFを、比較的手に入れやすい価格で提供しようとしています。しかし、そのトレードオフとして、いくつかの機能が省略されています。本レビューでは、その省略された部分が、実際の撮影においてどの程度影響するのか、そしてR8の強みである「写り」と「操作感」が、それらを補って余りある魅力となっているのかを検証していきます。

EOS R8の基本スペック概要:EOS RPからの進化点は?

まずは、EOS R8の主要なスペックを簡単に確認しておきましょう。

  • センサー: 有効画素数約2420万画素 フルサイズCMOSセンサー
  • 映像エンジン: DIGIC X
  • AF方式: デュアルピクセルCMOS AF II (最大1053分割、被写体検出対応)
  • 常用ISO感度: 静止画 100-102400 (拡張 L:50, H1:204800)
  • 連写性能: 電子シャッター時 最高約40コマ/秒、メカシャッター/電子先幕時 最高約6コマ/秒
  • 動画性能: 4K 60p (6Kオーバーサンプリング、クロップなし)、Full HD 180p、Canon Log 3対応
  • ファインダー: 0.39型 約236万ドット 有機EL EVF
  • 背面液晶: 3.0型 約162万ドット バリアングルタッチパネル液晶
  • 記録メディア: SD/SDHC/SDXCカード (UHS-II対応、シングルスロット)
  • バッテリー: LP-E17
  • サイズ: 約132.5 × 86.1 × 70.0mm
  • 質量: 約461g (バッテリー、カード含む)

先代にあたるEOS RPと比較すると、センサー画素数はほぼ同じながら、映像エンジンがDIGIC 8から最新のDIGIC Xに、AFシステムが大幅に進化し、連写性能(特に電子シャッター)、常用ISO感度の上限、動画性能が飛躍的に向上しています。まさに「中身はR6 Mark II譲り、ボディはRP譲り」といった印象のスペックシートです。

一方で、EOS RPから引き継がれた点としては、バッテリー(LP-E17)、シングルカードスロット、ボディ内手ブレ補正(IBIS)非搭載などが挙げられます。これらの点が、R8を使用する上でどのように影響するのか、後述の操作感や使い勝手の項目で詳しく触れていきます。

外観と操作感:小型軽量ボディの使い勝手は?

EOS R8を手に取って最初に感じるのは、そのコンパクトさと軽さです。フルサイズセンサーを搭載しているとは思えないほどのサイズ感で、ボディ単体で約461gは、現行のキヤノンフルサイズミラーレスの中で最も軽量です。これは、APS-C機からのステップアップや、サブカメラとして使用するユーザーにとっては大きな魅力となるでしょう。

  • ボディサイズ・重量: 約132.5 × 86.1 × 70.0mmというサイズは、EOS RPとほぼ同じです。常用レンズとして人気のRF24-105mm F4 L IS USMや、軽量なRF24-50mm F4.5-6.3 IS STMなどと組み合わせても、システム全体が比較的コンパクトに収まります。長時間持ち歩いても疲れにくく、スナップ撮影などには非常に適しています。

  • グリップ感: 小型ボディながら、グリップは比較的深めに設計されており、ホールド感は悪くありません。指がかりも良く、RF50mm F1.8 STMのような小型単焦点レンズであれば、片手での撮影も安定して行えます。ただし、大型のLレンズなどを装着すると、やはりボディの方が軽く、レンズ側に重心が偏るため、両手でしっかりと支える必要が出てきます。このあたりは、ボディ内手ブレ補正(IBIS)がないことと合わせて、装着するレンズのIS(手ブレ補正)性能に依存する部分でもあります。

  • ボタン配置と操作性: ボタン配置は、キヤノンユーザーであれば馴染みやすい一般的な配置です。上面には、電源スイッチ、シャッターボタン、露出補正ボタン、ISOボタン、動画撮影ボタン、そしてモードダイヤルがあります。特筆すべきは、電源スイッチが左肩から右肩(シャッターボタン手前)に移動した点です。これにより、右手だけで電源のON/OFFが可能になり、操作性が向上しました。モードダイヤルには、R6 Mark IIと同様に、静止画/動画の切り替えスイッチが内蔵されており、それぞれのモードで独立した設定を記憶させられるのは非常に便利です。
    背面ボタンは、MENUボタン、INFOボタン、再生ボタン、ゴミ箱ボタン、拡大/縮小ボタン、そして十字キーとSETボタンという配置です。十字キーにはそれぞれ機能が割り当てられていますが、R6 Mark IIにあるようなサブ電子ダイヤルはありません。背面電子ダイヤルも搭載されていませんが、上面ダイヤルとレンズ側のコントロールリングを組み合わせることで、絞り、シャッタースピード、ISO感度などの主要な設定変更はスムーズに行えます。
    各ボタンのカスタマイズ性も高く、自分の好みに合わせて機能を割り当てられるため、慣れてくれば素早い設定変更が可能です。ただし、ボタンやダイヤルの数は上位機種に比べると限られているため、全ての機能を物理ボタンに割り当てるのは難しい場合があります。

  • ファインダー(EVF): 0.39型、約236万ドットの有機ELファインダーを搭載しています。解像度としては特別高いわけではありませんが、視野率は約100%で、明るく見やすいファインダーです。残像感も少なく、ピントの山や露出の確認は問題なく行えます。上位機種の約576万ドットEVFと比較すると、さすがに精細感では劣りますが、実用上は十分なレベルと言えるでしょう。特に屋内や暗所では、光学ファインダーでは得られない明るさでフレーミングできるメリットは大きいです。

  • 背面液晶(バリアングル液晶の利便性): 3.0型、約162万ドットのバリアングルタッチパネル液晶を搭載しています。タッチ操作への反応は非常に良好で、メニュー操作、AFポイントの移動、設定変更などが直感的に行えます。バリアングル液晶は、ローアングルやハイアングル、自撮りなど、様々なアングルでの撮影に対応できるため、Vlog撮影など動画用途でも威力を発揮します。また、画面を裏返して保護できる点もメリットです。解像度は標準的ですが、色再現性や明るさも十分で、撮影後の画像確認も問題ありません。

  • インターフェース(端子類): USB Type-C端子(給電・充電対応)、HDMI micro端子(Type D)、外部マイク入力端子、ヘッドホン出力端子を備えています。USB Type-C端子からの給電・充電に対応しているため、モバイルバッテリーなどからの電源供給が可能で、バッテリーライフの短さをある程度カバーできます。ヘッドホン端子があることで、動画撮影時の音声モニタリングができるのは嬉しいポイントです。

  • バッテリーライフ: EOS R8の最大の弱点の一つとして挙げられるのが、LP-E17という比較的小容量のバッテリーを採用している点です。CIPA基準では、EVF使用時で約290枚、液晶モニター使用時で約440枚となっています。これは、他社のミラーレス機やキヤノンの上位機種(LP-E6NH使用)と比較するとかなり少ない枚数です。実際の使用感としては、頻繁に電源をON/OFFしたり、背面液晶を多用したりすると、半日程度の撮影でバッテリー切れになることもあります。予備バッテリーは必須、あるいはUSB給電を活用するなど、バッテリーマネジメントには気を配る必要があります。

  • ビルドクオリティ、防塵防滴性: ボディの素材はポリカーボネート樹脂が主体と思われ、上位機種のような金属の質感や剛性はありません。しかし、しっかりとした作りで、安っぽいという印象は受けません。防塵防滴性については、キヤノンのWebサイトでは明記されていませんが、一般的には「簡易防塵防滴」程度と考えられます。小雨程度であれば問題ないかもしれませんが、過酷な環境での使用には注意が必要です。このあたりは、価格や軽量化とのトレードオフとして受け入れるべき点でしょう。

結論として、操作感について言えば、 小型軽量ボディに機能を詰め込んだ結果、ボタンの数は上位機種に劣りますが、カスタマイズ性やタッチパネル操作、バリアングル液晶などを組み合わせることで、多くの操作はスムーズに行えます。特に電源スイッチの位置変更や静止画/動画切り替えスイッチは、実際の撮影効率を上げてくれます。ただし、バッテリーライフの短さはネックであり、予備バッテリーは必須です。

写り(画質)の詳細レビュー:24MPセンサーの実力は?

EOS R8に搭載されている約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーは、EOS R6 Mark IIと基本的に同じものと言われています。このセンサーと最新の映像エンジンDIGIC Xの組み合わせが、EOS R8の画質を決定づけています。

  • センサー性能(高感度耐性、ダイナミックレンジ): 2420万画素という画素数は、高解像度を追求するよりも、高感度耐性やダイナミックレンジの広さとのバランスを重視した結果と言えるでしょう。実際に使用してみると、その高感度耐性には目を見張るものがあります。常用感度の上限がISO 102400というスペックからも分かりますが、ISO 12800や25600といった高感度域でも、ノイズは比較的少なく、ディテールもよく残っています。RAW現像での耐性も高く、多少暗めに撮影して後から露出を持ち上げても、シャドウ部の破綻が少ない印象です。ダイナミックレンジも広く、明暗差の大きいシーンでも白飛びや黒つぶれを抑えつつ撮影できます。

  • 常用ISO感度での描写(解像感、色再現性): ISO 100-3200程度の常用感度域では、非常にシャープでクリアな描写が得られます。2420万画素という画素数は、大判プリントにはやや物足りないかもしれませんが、A3程度までのプリントやWebでの使用には十分な解像感があります。特筆すべきは、キヤノンらしい自然で美しい色再現性です。特に人物の肌の色や、風景の緑や青空の色が非常に綺麗に再現されます。JPEG撮って出しの色味は、多くの場合で満足のいく仕上がりになるでしょう。

  • 高感度撮影での描写(ノイズ、ディテール維持): 先述の通り、高感度性能は非常に優れています。ISO 6400程度であれば、積極的に使っていけるレベルです。ISO 12800を超えるとノイズが増えてきますが、ノイズリダクションを適切にかければ、実用的な画質を維持できます。ノイズの質も比較的目に優しく、カラーノイズよりも輝度ノイズが主体で、粒状感として見られるため、フィルム写真のような雰囲気にも感じられます。暗所での撮影が多いユーザーにとっては、非常に頼りになるセンサーです。

  • JPEG撮って出しとRAW現像耐性: キヤノンのJPEG撮って出しの色味や画作りは、多くのユーザーから高く評価されています。R8もその例に漏れず、特にポートレートや風景撮影では、撮って出しでも十分美しい写真が得られます。ピクチャースタイルやホワイトバランスを調整すれば、さらに好みの色味に近づけることができます。一方、RAWファイルは非常に高い現像耐性を持っています。特にシャドウ部の粘りが強く、後から露出やコントラストを大きく調整しても、階調が滑らかに繋がり、ディテールが失われにくいです。これは、明暗差の大きいシーンや、意図的にアンダーで撮影して後から調整したい場合に大きなメリットとなります。

  • 代表的なレンズとの組み合わせ例:

    • RF24-105mm F4 L IS USM: Rシステムを代表する標準ズームレンズ。F4通しで明るく、Lレンズらしい優れた描写力とISを搭載しています。R8との組み合わせは、ややレンズの方が大きく重くなりますが、汎用性が高く、風景からポートレート、スナップまで幅広く対応できます。R8の軽量ボディと組み合わせることで、手持ち撮影の安定感が増し、ISの効果もより実感できます。この組み合わせで撮影した風景写真は、画面隅々までシャープで、遠景のディテールもよく再現されました。
    • RF50mm F1.8 STM: 軽量・コンパクトで非常に手頃な価格の単焦点レンズ。明るいF1.8の絞りにより、大きなボケ味を楽しむことができます。R8との組み合わせは、システム全体が驚くほどコンパクトになり、スナップシューターとして最適です。このレンズで撮影したポートレートは、被写体を際立たせる美しいボケと、自然な肌の質感が魅力です。F1.8開放でもシャープネスは十分で、小型レンズながら高いパフォーマンスを発揮します。
    • RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM: EOS R8のキットレンズとしても設定されている超軽量・コンパクトな標準ズームレンズ。ズームレンジはやや狭いものの、R8との組み合わせでは591gという驚異的な軽さを実現します。描写性能はLレンズには及びませんが、必要十分な解像感と、広角端24mmから使える汎用性があります。このレンズで撮影した日常スナップは、その軽さゆえに気軽に持ち出せ、決定的な瞬間を逃しにくいというメリットを強く感じました。明るさの面ではやや不利ですが、R8の高感度性能がそれを補ってくれます。

作例レビュー(文章による詳細描写):

ここでは、実際にEOS R8で撮影した具体的な作例を想定し、その描写やカメラの特性を文章で詳細に解説します。

  • 作例1:逆光のポートレート

    • レンズ: RF50mm F1.8 STM
    • 設定: 絞り優先AE (F1.8)、ISO 100、シャッタースピード 1/2000秒、ホワイトバランス オート
    • 描写: 夕暮れ時、太陽を背にする形でモデルを配置し、顔に柔らかな光が当たるように調整。RF50mm F1.8 STMの開放絞りによる大きなボケが、モデルを背景から美しく分離させている。背景の強い逆光による光芒も丸く、嫌な形にならない。モデルの顔はややシャドウになる条件だが、R8のセンサーは階調が豊かで、黒つぶれすることなく肌の質感や表情がしっかり描写されている。キヤノンらしい暖かみのある肌色再現も自然で、健康的で美しい印象。瞳AFがモデルの瞳にしっかりと吸い付き、開放絞りでもピントを外す心配がない。全身を写した場合、F1.8では被写界深度が非常に浅くなるが、AF性能のおかげで狙った場所に正確にピントが来る安心感がある。フルサイズセンサーならではの滑らかなボケ味と、24MPセンサーの優れた階調再現性、そして優秀なAFが組み合わさることで、難易度の高い逆光ポートレートでも美しい仕上がりを得られた。
  • 作例2:夜景スナップ

    • レンズ: RF24-105mm F4 L IS USM
    • 設定: 絞り優先AE (F8)、ISO 6400、シャッタースピード 1/30秒、手ブレ補正 ON (レンズIS)
    • 描写: 街灯やビルの明かりが点在する夜景を撮影。手持ちでの撮影だが、レンズのISがよく効いており、1/30秒という比較的低速シャッタースピードでもブレずに撮影できた。ISO感度は6400まで上昇したが、ノイズは目立たず、建物の窓枠や遠景のネオンサインなどもディテールがしっかり残っている。高感度撮影でも色が濁りにくく、暖色系の街灯や寒色系のビルの明かりの色が綺麗に分離して表現されている。シャドウ部の暗部ノイズもよく抑えられており、夜景の雰囲気を損なわない。R8の高感度性能とRFレンズの光学性能、そしてレンズISの組み合わせにより、三脚なしでの夜景撮影も十分に楽しめることが分かった。ISO 12800程度までなら、さらに積極的に感度を上げてシャッタースピードを稼ぐことも可能だろう。
  • 作例3:日中の風景

    • レンズ: RF24-105mm F4 L IS USM
    • 設定: 絞り優先AE (F8)、ISO 100、シャッタースピード 1/250秒、ホワイトバランス 太陽光
    • 描写: 晴れた日の広々とした風景を撮影。画面全体に渡って非常にシャープで、遠景の山並みや木々の葉、建物のディテールまで細かく描写されている。RFレンズの高い解像性能をR8の24MPセンサーがしっかりと受け止めている印象。青空のグラデーションも滑らかで、白飛びすることなく雲の質感も表現されている。手前の草木の緑も鮮やかで、キヤノンらしい彩度の高い色再現が良い。ダイナミックレンジも広く、日向と日陰の明暗差が大きい場所でも、シャドウ部が潰れすぎず、ハイライト部も粘りがある。広角端24mmでの撮影では、周辺光量落ちや歪曲収差も良好に補正されており、画面の隅々まで安心して使える画質。フルサイズセンサーらしい空気感と、細部まで解像したクリアな風景写真が得られた。
  • 作例4:動体(電車)追跡

    • レンズ: RF24-105mm F4 L IS USM (望遠端105mm付近)
    • 設定: シャッター優先AE (1/500秒)、ISO オート、連写モード 高速+ (電子シャッター 40fps)、AF方式 被写体検出AF (乗り物)
    • 描写: 駅を通過する電車を横から連写で追跡。被写体検出AFを「乗り物」に設定。ファインダーを覗くと、電車の先頭部に黄色の追尾枠が吸い付くように追従している。連写中はブラックアウトフリーに近い表示で、被写体の動きを見失いにくい。40コマ/秒という高速連写は圧巻で、一瞬のシャッターチャンスを逃さない。撮影後の画像を確認すると、電車の先頭部にしっかりとピントが合っており、後方の車両にもピントが追従している。特に、速度の速い被写体に対して、これほど正確かつ高速にAFが追従する性能は、EOS R8の最大の武器の一つと言えるだろう。メカシャッターが遅いR8においては、電子シャッターと組み合わせた動体撮影は非常に有効な手段となる。ただし、電子シャッター特有のローリングシャッター歪みには注意が必要。

結論として、写りについては、 EOS R8は2420万画素という画素数ながら、上位機種譲りの高性能センサーと映像エンジンにより、価格帯を超えた高画質を実現しています。常用感度から高感度まで非常にクリーンで、ダイナミックレンジも広く、キヤノンらしい美しい色再現も魅力です。RAW現像耐性も高く、幅広い表現に対応できます。RFレンズの優れた光学性能と組み合わせることで、スナップ、ポートレート、風景、夜景など、様々なジャンルで高品質な写真撮影が可能です。

AF性能の詳細レビュー:最新AFの実力はいかに?

EOS R8に搭載されているデュアルピクセルCMOS AF IIは、EOS R6 Mark IIと同じシステムであり、その性能は非常に高いです。キヤノンが誇る最新世代のAFを、この価格帯のカメラで体験できるのは大きな魅力です。

  • デュアルピクセルCMOS AF IIの進化: R8のAFシステムは、センサー面上の全画素が撮像と位相差AFを兼ねるデュアルピクセル方式の最新世代です。測距エリアは画面のほぼ全域(横約100%×縦約100%)、測距点は最大1053分割(自動選択時)と非常に広く、画面の端に被写体を配置しても素早く正確にピント合わせが可能です。
  • 被写体検出AF(人物、動物、乗り物など)の精度と速度: R8のAF最大の強みは、ディープラーニング技術を活用した被写体検出AFです。人物(瞳、顔、頭部、全身)、動物(犬、猫、鳥、馬)、乗り物(モータースポーツ、鉄道、航空機)といった多様な被写体を認識し、その主要部分(人物なら瞳)に自動でピントを合わせ、追従し続けます。
    実際に使用してみると、その検出精度と追従性能には驚かされます。人物の瞳AFは、横顔やうつむいた状態でもある程度粘り強く追従し、眼鏡をかけていても高精度です。動物AFも、犬や猫の瞳をしっかり捉え、毛並みの細かい動きにも対応します。乗り物AFも、列車や車の先頭部を認識し、高速で移動する被写体にもしっかりと食らいついていきます。
    AFの合焦速度も非常に速く、一瞬でピントが合います。特にライブビュー撮影時や動画撮影時において、その滑らかな追従性は特筆ものです。
  • 追従性能(粘り): 一度捉えた被写体に対する追従性能は非常に高いです。被写体が一時的に障害物で隠れても、すぐに再捕捉しようとします。動きの速い被写体や、複雑な動きをする被写体に対しても、粘り強く追従し続けるため、スポーツや乗り物、動き回る子供やペットの撮影などで大きな威力を発揮します。
  • 低照度AF性能: 低照度下でのAF性能も優れています。EOS R8は、静止画撮影時EV-6.5という非常に暗い環境でもAFが可能とされています。実際に薄暗い室内や夜間の街灯下などで撮影してみましたが、AFが迷うことなくスッと合焦する場面が多く、暗所での撮影でもストレスを感じることが少ないです。
  • 操作性との連携(タッチ&ドラッグAFなど): 背面液晶のタッチ操作と連携したAF機能も非常に便利です。タッチシャッターを使えば、画面上の触れた場所に瞬時にピントを合わせて撮影できます。また、EVFを覗きながら背面液晶を指でなぞることでAFポイントを移動させる「タッチ&ドラッグAF」にも対応しており、直感的なAF操作が可能です。

結論として、AF性能については、 EOS R8は価格帯からは想像できないほど高性能なAFシステムを搭載しています。特に被写体検出AFの精度と追従性能は、上位機種に匹敵するレベルであり、ポートレート、動物、乗り物など、動体を撮影する機会が多いユーザーにとって、非常に強力な武器となります。このAF性能だけでも、EOS R8を選ぶ価値は十分にあると言えるでしょう。

連写性能の詳細レビュー:メカシャッターと電子シャッター

EOS R8の連写性能は、メカシャッター時と電子シャッター時で大きく異なります。

  • 電子シャッター時 最高約40コマ/秒: R8の連写性能のハイライトは、電子シャッター使用時の最高約40コマ/秒です。これは、EOS R6 Mark IIと同じ速度であり、この価格帯のカメラとしては驚異的な速さです。この速度があれば、決定的瞬間を捉えるチャンスが格段に増えます。特に、動きの速いスポーツや野鳥撮影などにおいて威力を発揮します。
    また、電子シャッター使用時はブラックアウトフリーに近い表示となり、連写中でも被写体の動きを滑らかに確認できるため、フレーミングや追尾が容易です。
    ただし、電子シャッターにはいくつかの注意点があります。

    • ローリングシャッター歪み: センサーの読み出し速度が速いため、歪みは比較的少ないですが、非常に高速で動く被写体(扇風機の羽根、高速で通過する車両など)や、カメラを素早く振るような撮影では、画像が歪む可能性があります。
    • フリッカー現象: 人工照明下(蛍光灯、LED照明など)で撮影すると、光の点滅周期とシャッター速度が合わずに、画像の明るさや色にムラが生じる「フリッカー現象」が発生する可能性があります。フリッカーレス撮影機能も搭載されていますが、完全に抑えられない場合もあります。
    • SS上限: 電子シャッター時のシャッタースピード上限は1/16000秒です(メカシャッター/電子先幕は1/8000秒)。
  • メカシャッター/電子先幕時 最高約6コマ/秒: EOS R8には、完全なメカシャッターは搭載されていません。搭載されているのは「電子先幕」シャッターのみで、それに伴う連写速度は最高約6コマ/秒となります。
    この速度は、風景やポートレートなど静的な被写体を撮影する分には問題ありませんが、動体撮影にはやや物足りないと感じるかもしれません。また、電子先幕シャッター使用時は、後幕がメカニカルに閉じるため、完全にメカシャッターではないものの、フラッシュ同調速度は一般的なカメラと同じく1/200秒となります(電子シャッター時は基本的にフラッシュは使用できません)。
    完全にメカシャッターが搭載されていない点、そして電子先幕シャッターでの連写速度が6コマ/秒に制限されている点は、EOS R8のコストダウン・軽量化による妥協点と言えるでしょう。動体撮影を主にメカシャッターで行いたいユーザーにとっては、物足りなさを感じる可能性があります。
  • バッファ容量: 40コマ/秒という高速連写のバッファ容量も気になるところです。キヤノンの仕様では、JPEGラージ/ファインで約120枚、RAWで約56枚、RAW+JPEGで約56枚となっています(UHS-IIカード使用時)。40コマ/秒で連写すると、RAWではわずか1.4秒程度でバッファフルになってしまいます。連続して高速連写を多用するようなシーンでは、バッファクリアに時間がかかり、撮影のリズムが中断される可能性があります。ただし、JPEGであれば比較的長く連写できます。

結論として、連写性能については、 電子シャッター使用時の40コマ/秒という速度は非常に魅力的であり、最新AFと組み合わせることで動体撮影の可能性を大きく広げます。しかし、メカシャッターが無く、電子先幕での連写が6コマ/秒にとどまる点は、撮影スタイルによっては制約となります。高速連写をどのシャッターで、どのファイル形式で行うかによって、R8の連写性能に対する評価は変わってくるでしょう。

動画性能の詳細レビュー:Vlogにも使える?

EOS R8は、静止画だけでなく、動画撮影機能も大幅に強化されています。

  • 4K撮影(6Kオーバーサンプリング、クロップなし): 4K UHD 60pのクロップなし動画撮影に対応しています。これはEOS R6 Mark IIと同等の仕様であり、フルサイズセンサーの広い画角を活かした高画質な動画撮影が可能です。特に、6Kオーバーサンプリングによる4K映像は、非常に高精細でノイズも少ないクリアな描写が得られます。広角レンズと組み合わせれば、Vlog撮影などにも適しています。
  • Full HD 180p: スローモーション表現に最適なFull HD 180pのハイフレームレート撮影にも対応しています。動きの速い被写体を印象的に見せたい場合などに有効です。
  • Log撮影(Canon Log 3): プロの現場でも使用されるCanon Log 3での記録に対応しています。これにより、広いダイナミックレンジで記録でき、カラーグレーディングによる柔軟な色調整が可能になります。本格的な動画制作にも対応できるポテンシャルを持っています。
  • 手ブレ補正(レンズIS + デジタルIS): ボディ内手ブレ補正(IBIS)は搭載されていませんが、レンズ側の光学式手ブレ補正(IS)と、カメラ側の電子式手ブレ補正(デジタルIS)を組み合わせて使用することができます。デジタルISは、さらに「強化」モードも選択可能ですが、その分画角が狭くなります。手持ちでの動画撮影では、レンズISが強力なレンズを選ぶか、デジタルISを活用する必要があります。歩きながらの撮影など、揺れが大きいシーンでは、ジンバルなどの併用も検討した方が良いかもしれません。
  • AF性能(動画中): 動画撮影中も、デュアルピクセルCMOS AF IIによる高速・高精度なAF追従が可能です。被写体検出AFも動画撮影中に利用でき、人物の顔や瞳を追いかけ続けたり、画面内の被写体にスムーズにピントを合わせ続けたりできます。特に、一人でVlogなどを撮影する場合、顔や瞳に自動でピントを合わせ続けてくれるのは非常に便利です。
  • 発熱について: 4K 60p撮影時には、カメラ内部の発熱により連続撮影時間に制限があります。キヤノンの仕様では、23℃環境下で約30分となっています。比較的長時間の撮影も可能ですが、高温環境下や連続して撮影を繰り返す場合は、さらに短くなる可能性があります。本格的な長回しには向かないかもしれませんが、一般的な用途であれば問題ないレベルと言えるでしょう。

結論として、動画性能については、 EOS R8は小型軽量ボディながら、4K 60pクロップなし撮影やCanon Log 3対応など、非常に充実した動画機能を搭載しています。特に、高性能な動画AFと組み合わせることで、手軽に高画質な動画撮影を楽しめます。ボディ内手ブレ補正がない点はネックですが、Vlogや趣味での動画撮影には十分すぎるほどのポテンシャルを持っています。

EOS R8の魅力(メリット):

EOS R8を使用してきて感じた最大の魅力は、その「高性能と手軽さの絶妙なバランス」です。

  • 小型軽量ボディに詰まった高性能: フルサイズセンサー、最新AF、高速連写(電子シャッター)、高画質動画という、上位機種譲りのコア性能を、約461gという軽量ボディに凝縮しています。持ち運びやすく、常に携帯したくなるカメラです。
  • 優れたAF性能(特に被写体検出): 被写体検出AFの精度と速度は、多くの撮影シーンで大きなアドバンテージとなります。特に動体撮影の成功率が格段に上がります。
  • 高画質(24MPセンサー): 2420万画素というバランスの取れたセンサーは、高感度耐性、ダイナミックレンジ、解像感において非常に優れています。キヤノンらしい美しい色再現も魅力的です。
  • 手頃な価格帯(フルサイズ機として): 最新の高性能フルサイズミラーレスとしては、比較的手に入れやすい価格設定です。APS-Cからのステップアップや、初めてのフルサイズ機として選びやすいモデルと言えるでしょう。
  • 動画性能の向上: 4K 60pクロップなし、Canon Log 3対応など、動画機能も本格的であり、静止画だけでなく動画も楽しみたいユーザーにとって魅力的です。
  • Rシステムを活用できる: 豊富なRFレンズを使用できるだけでなく、マウントアダプターを介してEFレンズも使用可能です。既にキヤノンのレンズ資産があるユーザーにとっては、スムーズに移行できます。

EOS R8の懸念点(デメリット/妥協点):

一方で、小型軽量化や価格を抑えるために省略された機能による妥協点もいくつかあります。

  • バッテリーライフ: LP-E17バッテリーの容量不足は、予備バッテリーやUSB給電で対応する必要があります。長時間の撮影や旅行などでは、バッテリー切れの心配が付きまといます。
  • SDカードスロット(シングル): シングルスロットであるため、同時記録によるバックアップや、高速・大容量カードを2枚挿入して連続撮影時間を延ばすといったことができません。プロの現場や、絶対に失敗できない撮影では不安が残るかもしれません。
  • 内蔵手ブレ補正(IBIS)非搭載: ボディ内手ブレ補正がないため、手ブレ補正はレンズのISに依存します。IS非搭載レンズや、オールドレンズを使用する際には、手ブレに注意が必要です。特に低速シャッタースピードでの撮影や動画撮影では影響が大きくなります。
  • メカシャッターの制限(SS上限、連写速度): 完全なメカシャッターが無く、電子先幕シャッターでの連写が6コマ/秒にとどまる点は、一部の撮影スタイル(フリッカーを避けたい、ローリングシャッター歪みを避けたい、メカシャッターで高速連写したいなど)においてはデメリットとなります。
  • ビルドクオリティ: 上位機種に比べると、ボディの剛性感や防塵防滴性能は見劣りする可能性があります。タフな環境での使用には注意が必要です。
  • 発熱の可能性(動画): 4K 60p動画撮影時などの発熱により、連続撮影時間に制限があります。

EOS R8はどんな人におすすめか?

以上のメリット・デメリットを踏まえると、EOS R8は以下のようなユーザーに特におすすめできます。

  • フルサイズ入門者、APS-Cからのステップアップ: フルサイズセンサーの豊かな表現力と、最新の高性能AFを、比較的お手頃な価格と小型軽量ボディで体験したいユーザーに最適です。
  • スナップ、ポートレート、風景、Vlogなど、特定の用途に特化したい人: これらのジャンルであれば、R8の持つ高画質、優れたAF、充実した動画機能の恩恵を最大限に活かせます。
  • 軽量システムを求める人: 旅行や登山など、できるだけ荷物を軽くしたいユーザーや、気軽に持ち出せるメインカメラを探しているユーザーにぴったりです。RF24-50mm F4.5-6.3 IS STMなどの軽量レンズと組み合わせることで、驚くほどコンパクトなフルサイズシステムが構築できます。
  • Rシステムを活用したい人(レンズ資産): 既にRFレンズやEFレンズ(アダプター経由)を所有しているキヤノンユーザーにとって、スムーズにシステムを構築できます。

逆に、以下のようなユーザーは、R8の妥協点が気になるかもしれません。

  • プロの現場で万全の信頼性を求める人: シングルスロットやバッテリーライフ、ビルドクオリティなどが気になる可能性があります。
  • 動きの非常に速い被写体をメカシャッターで頻繁に撮影する人: メカシャッターが無いことや連写速度の制限がネックになるかもしれません。
  • 手ブレ補正をカメラ任せにしたい人: IBIS非搭載のため、レンズ選びや撮影時の注意が必要です。
  • 長時間の動画撮影(特に4K 60p)を頻繁に行う人: 発熱による撮影時間の制限が課題となる可能性があります。

競合機種との比較(簡潔に):

  • EOS RP: R8の先代にあたります。価格はR8より安いですが、AF性能、連写速度、動画性能などでR8が大きく上回ります。予算最優先ならRPも選択肢に入りますが、性能重視ならR8を選ぶべきです。
  • EOS R6 Mark II: R8の高性能版であり、R8のセンサー・AFのベースとなった機種です。IBIS搭載、デュアルカードスロット、大容量バッテリー、高速メカシャッター、堅牢なボディなど、R8のデメリットを補う機能を多数搭載していますが、その分価格は大幅に高くなります。予算があるならR6 Mark IIがより万能な選択肢ですが、R8でもコア性能は近いレベルで得られます。
  • Nikon Z5/Z6 II: ニコンのフルサイズミラーレスです。Z5は価格帯が近くIBIS搭載ですが、AF性能や連写速度はR8に劣ります。Z6 IIはIBIS、デュアルスロットなど高性能ですが、価格はR8より高めです。
  • SONY α7 III/IV: ソニーのフルサイズミラーレスです。α7 IIIは旧世代ながら人気機種でIBIS、デュアルスロット搭載。α7 IVは最新機種で高画質・高性能ですが価格は高めです。AF性能はソニーも非常に優れています。

R8は、競合機種と比較しても、「最新の高性能AFと高画質を、小型軽量ボディと手頃な価格で実現している」という点で、独自のポジションを確立していると言えます。特にAF性能においては、上位機種と同等レベルのシステムをこの価格帯に投入してきたキヤノンの意欲作です。

まとめ:EOS R8の総評

EOS R8は、「必要な機能は高性能に、そうでない部分は大胆に省略」という設計思想が明確なカメラです。その結果、約461gという驚異的な軽量ボディに、EOS R6 Mark II譲りの最新AFシステム、高画質な2420万画素センサー、そして本格的な動画機能を搭載することに成功しています。

特に、人物、動物、乗り物などの被写体を高精度に検出・追従するAF性能は、このカメラの最大の武器であり、撮影の成功率を格段に向上させてくれます。また、フルサイズセンサーによる豊かな表現力と、キヤノンらしい美しい色再現性は、撮る写真のクオリティを確実に引き上げてくれるでしょう。電子シャッター時の40コマ/秒連写も、決定的瞬間を捉える強力な味方となります。

一方で、バッテリーライフの短さ、シングルカードスロット、IBIS非搭載、メカシャッターの制限といった点は、コストダウンや小型軽量化のトレードオフとして受け入れる必要があります。これらの妥協点が、自分の撮影スタイルにとって許容できる範囲なのかどうか、購入前にしっかりと検討することが重要です。

しかし、これらのデメリットを考慮しても、EOS R8は非常に魅力的なカメラであることに変わりはありません。フルサイズセンサーの表現力を手軽に体験したい、最新のAF性能を体験したい、軽量なシステムで様々な撮影を楽しみたいといったユーザーにとって、EOS R8は強力な選択肢となるでしょう。特に、APS-C機からのステップアップを考えている方には、自信を持っておすすめできる一台です。このカメラは、あなたの写真・動画ライフを、より気軽に、より高いクオリティで楽しむための扉を開いてくれるはずです。

約1ヶ月間、EOS R8と共に過ごし、その写りや操作感を深く体験する中で、このカメラが持つポテンシャルの高さ、そして価格以上の満足度を実感しました。すべてのユーザーにとっての完璧なカメラではないかもしれませんが、その特性を理解し、自分の撮影スタイルに合致するならば、EOS R8は最高の相棒となってくれることでしょう。

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