はい、承知いたしました。Spring Bootのバージョン確認方法について、初心者向けに、約5000語の詳細な説明を含む記事を作成します。
【初心者向け】Spring Bootのバージョン確認方法をイチからやさしく徹底解説!なぜ必要?どう確認する?(詳細解説)
Spring Bootを使った開発を始められた皆さん、こんにちは!
モダンなJavaアプリケーション開発において、Spring Bootは非常に人気が高く、多くの企業や開発者が利用しています。その理由は、Spring Frameworkの強力な機能を活かしつつ、面倒な設定の多くを自動化してくれることで、驚くほど簡単に、素早くアプリケーションを開発できる点にあります。
しかし、どんなソフトウェアにも言えることですが、Spring Bootも日々進化しており、新しい機能が追加されたり、バグが修正されたり、セキュリティが強化されたりしています。そのため、「自分が今使っているSpring Bootのバージョンは何か?」 を知ることは、開発を進める上で非常に重要になります。
特に、開発を始めたばかりの初心者の方にとっては、「バージョン?」「なぜ確認する必要があるの?」「どうやって確認するの?」と疑問に思われるかもしれません。
この記事では、そんなSpring Boot初心者の皆さんに向けて、
- そもそもSpring Bootの「バージョン」とは何か?
- なぜバージョンの確認が必要なのか?(その重要性)
- 具体的なSpring Bootのバージョン確認方法(複数の方法をイチから丁寧に解説)
- 各確認方法のメリット・デメリット、使い分け
- バージョンと開発環境(Java, Maven/Gradle)の関係
- 一歩進んで、バージョンアップについて
といった点を、専門用語を避けつつ、図(テキストベースですが)や具体的なコード例を交えながら、約5000語のボリュームで徹底的に、そしてやさしく解説していきます。
この記事を読めば、Spring Bootのバージョン確認方法がしっかりと理解でき、今後の開発に安心して取り組めるようになるはずです。ぜひ最後までお付き見合いください!
1. そもそもSpring Bootの「バージョン」とは? なぜ知る必要があるの?
まず、「バージョン」とは何か、そしてなぜSpring Boot開発でバージョン確認が重要なのかを理解しましょう。
1-1. ソフトウェアの「バージョン」とは?
私たちが普段使っているスマートフォンやパソコンのOS(Windows, macOS, iOS, Androidなど)、あるいはSNSやゲームなどのアプリケーションにも、必ず「バージョン」がありますよね?
バージョンとは、ソフトウェアの特定の時点での状態や、機能・性能を表す識別子です。開発が進むにつれて、新しい機能が追加されたり、見つかった不具合(バグ)が修正されたり、セキュリティ上の問題点が改善されたりします。これらの変更が積み重なった区切りごとに、バージョン番号が更新されるのが一般的です。
例えば、「Windows 10」から「Windows 11」へのメジャーアップデートや、「LINEアプリのバージョン 13.19.0」のようなマイナーアップデート、さらに細かいバグ修正だけのパッチアップデートなど、様々なレベルのバージョンアップがあります。
バージョン番号を見ることで、そのソフトウェアが「いつ頃開発されたものか」「どのような機能が含まれているか」「既知の不具合やセキュリティリスクがあるか」といった手がかりを得ることができます。
1-2. Spring Bootのバージョン体系
Spring Bootも同様にバージョンで管理されています。Spring Bootのバージョン番号は、一般的に 「メジャーバージョン.マイナーバージョン.パッチバージョン」 という形式で表されます。
例: 3.2.5
3
: メジャーバージョン (Major Version)- 後方互換性のない(古いバージョンから新しいバージョンにスムーズに移行できない可能性のある)大きな変更や新機能が含まれる場合に上がります。
- メジャーバージョンアップは、通常、大規模な機能追加やアーキテクチャの変更、非推奨になった機能の削除など、重要な変更を伴います。
2
: マイナーバージョン (Minor Version)- 後方互換性のある(古いバージョンから比較的スムーズに移行できる)新しい機能の追加や改善が含まれる場合に上がります。
- 既存の機能が大きく変わることは少ないですが、便利な機能が追加されたり、内部的な処理が効率化されたりします。
5
: パッチバージョン (Patch Version)- 後方互換性のある、主にバグ修正やセキュリティ上の問題点の修正が含まれる場合に上がります。
- 機能追加は基本的に含まれず、安定性や安全性を高めるための修正が中心です。
このように、バージョン番号を見るだけで、そのバージョンにどの程度の変更が含まれているのか、おおよその見当をつけることができます。
また、Spring Bootには「GA (General Availability) 版」と呼ばれる正式リリース版の他に、「M (Milestone) 版」や「RC (Release Candidate) 版」といった開発途中のバージョンも存在しますが、通常は安定しているGA版を使うのが推奨されます。
1-3. なぜSpring Bootのバージョン確認が必要なの? その重要性とは
さて、本題です。なぜ私たちはSpring Bootのバージョンを確認する必要があるのでしょうか? いくつか重要な理由があります。
① 最新機能の利用
新しいバージョンのSpring Bootには、開発をより効率的に、より高度に行うための新しい機能や改善が含まれています。例えば、特定の技術(新しいバージョンのJava、最新のデータベースドライバなど)への対応や、パフォーマンスの向上に繋がる変更などです。これらの最新の恩恵を受けるためには、自分が使っているバージョンがそれらの機能を含んでいるかを知る必要があります。
② バグ修正とセキュリティ対策
どんなソフトウェアにもバグはつきものです。Spring Bootも例外ではありません。開発チームは、見つかったバグを修正し、より安定したバージョンをリリースします。また、現代のソフトウェア開発において、セキュリティ対策は非常に重要です。新しいバージョンでは、発見されたセキュリティ上の脆弱性が修正されていることがよくあります。古いバージョンを使い続けることは、既知のバグやセキュリティリスクを抱えたまま開発・運用を続けることになり、予期せぬ不具合や攻撃の対象になる可能性が高まります。安全で安定したアプリケーションを作るためには、利用しているバージョンが最新の修正を含んでいるかを確認することが不可欠です。
③ 依存関係の管理
Spring Bootは、Spring Framework本体だけでなく、Tomcat(Webサーバー)、Hibernate(ORM)、Logback(ログ出力)など、アプリケーション開発に必要な様々な依存ライブラリ(他の開発者が作った便利な部品)をまとめて提供しています。Spring Bootのバージョンが変わると、それに合わせて含まれるこれらの依存ライブラリのバージョンも自動的に調整されます。
もしあなたが自分で特定のライブラリを追加して使いたい場合、そのライブラリが今使っているSpring Bootのバージョンや、Spring Bootに含まれる他の依存ライブラリのバージョンと互換性があるかを確認する必要があります。バージョンの衝突は、アプリケーションのビルドエラーや実行時エラーの一般的な原因の一つです。
④ 互換性の問題回避
- Javaバージョンとの互換性: Spring Bootのバージョンごとに、サポートするJavaのバージョンが決まっています。例えば、Spring Boot 3.x 系は Java 17 以降を要求します。使用しているSpring Bootのバージョンが、あなたの開発環境や実行環境のJavaバージョンと互換性がない場合、アプリケーションは正しくビルドまたは実行できません。
- 他のライブラリやミドルウェアとの互換性: あなたがアプリケーションで利用するデータベース、メッセージキュー、キャッシュシステムなどのミドルウェアや、Spring Boot以外で追加するライブラリも、特定のSpring Bootバージョンと組み合わせて使う際に、互換性の問題が発生する可能性があります。
これらの互換性を確認し、問題を回避するためにも、Spring Bootのバージョンを正確に把握しておく必要があります。
⑤ チーム開発での統一
複数の開発者で一つのSpring Bootプロジェクトに取り組む場合、開発者全員が同じバージョンのSpring Bootを使うことが非常に重要です。もしバージョンが異なると、「私の環境では動くのに、あの人の環境では動かない」「CI/CD (継続的インテグレーション/継続的デリバリー) 環境でビルドが失敗する」といった問題が発生しやすくなります。バージョンを統一することで、開発環境やビルドプロセスを安定させ、チーム全体の生産性を高めることができます。
⑥ トラブルシューティング
アプリケーションで予期しないエラーが発生した場合、その原因が利用しているSpring Bootの特定のバージョンに存在する既知の問題である可能性があります。エラーメッセージや挙動から問題を調査する際に、「Spring Boot バージョン X.Y.Z のバグ」といった情報が見つかることはよくあります。このように、トラブルの原因を特定し、解決策を見つけるためにも、正確なバージョン情報は不可欠です。誰かに質問する際にも、「Spring Bootのバージョンはいくつか」と聞かれることが多いでしょう。
このように、Spring Bootのバージョン確認は、単なる番号の確認ではなく、開発の効率性、アプリケーションの安定性・安全性、チーム開発の連携、そして問題解決に直結する、非常に重要なステップなのです。
次に、具体的なバージョン確認方法を見ていきましょう。
2. いよいよ実践!Spring Bootのバージョン確認方法 徹底解説
Spring Bootのバージョンを確認する方法はいくつかあります。状況に応じて最適な方法を選べるように、代表的な方法を5つご紹介します。
方法1: プロジェクトのビルド設定ファイルを確認する (Maven / Gradle)
これが 最も一般的で、かつ最も信頼できるSpring Bootのバージョン確認方法 です。
なぜなら、Spring Bootを使ったプロジェクトでは、どのバージョンのSpring Bootを使うかをプロジェクトの「設計図」とも言えるビルド設定ファイルに明示的に記述しているからです。このファイルを見れば、そのプロジェクトが意図して使っているSpring Bootのバージョンが確実に分かります。
Spring Bootプロジェクトのビルドには、主に Maven と Gradle というツールが使われます。あなたのプロジェクトがどちらを使っているかによって、確認するファイルが異なります。
- Mavenを使っている場合: プロジェクトのルートディレクトリにある
pom.xml
ファイル - Gradleを使っている場合: プロジェクトのルートディレクトリにある
build.gradle
(またはbuild.gradle.kts
) ファイル
それぞれのファイルでの確認方法を見ていきましょう。
2-1-1. Maven の場合 (pom.xml
)
Mavenを使っているプロジェクトでは、プロジェクトのルートディレクトリに pom.xml
という名前のファイルがあります。このファイルを開いてみてください。
pom.xml
はXML形式で書かれており、プロジェクトの基本的な情報(名前、バージョンなど)や、必要な依存ライブラリ、ビルドの方法などが記述されています。
Spring Bootのバージョンは、通常、このファイルの <parent>...</parent>
タグ内に記述されています。多くのSpring Bootプロジェクトでは、Spring Bootが提供する特別な親POM(Project Object Model)である spring-boot-starter-parent
を継承して使用します。この親POMを使うことで、Spring Bootのバージョンに合わせた様々な依存ライブラリのバージョンが自動的に管理されたり、Javaのソース/ターゲットバージョン、エンコーディングといった基本的な設定が自動的に行われたりします。
pom.xml
を開き、<parent>
タグを探してください。以下のような記述があるはずです。
“`xml
<!-- ここに注目! -->
<parent>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-starter-parent</artifactId>
<version>3.2.5</version> <!-- *** この <version> タグの値がSpring Bootのバージョンです! *** -->
<relativePath/> <!-- lookup parent from repository -->
</parent>
<groupId>com.example</groupId>
<artifactId>demo</artifactId>
<version>0.0.1-SNAPSHOT</version>
<name>demo</name>
<description>Demo project for Spring Boot</description>
<properties>
<java.version>17</java.version>
</properties>
<dependencies>
<dependency>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-starter-web</artifactId>
</dependency>
<dependency>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-starter-test</artifactId>
<scope>test</scope>
</dependency>
</dependencies>
<build>
<plugins>
<plugin>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-maven-plugin</artifactId>
</plugin>
</plugins>
</build>
“`
上記の例では、<parent>
タグの中にある <version>
タグの値が 3.2.5
となっています。これが、このMavenプロジェクトが使用しているSpring Bootのバージョンです。
spring-boot-starter-parent
を使っている場合、通常はSpring Bootが提供する他の依存ライブラリ(例:spring-boot-starter-web
)には <version>
タグを記述しません。これは、親POMである spring-boot-starter-parent
が、そのバージョン (3.2.5
など) に最適な子ライブラリのバージョンを全て管理してくれるためです。これにより、開発者は個々のライブラリのバージョン互換性を気にすることなく、Spring Bootのバージョンだけを意識すればよくなるという大きなメリットがあります。
ごくまれに、<properties>...</properties>
ブロック内で spring-boot.version
というプロパティを定義し、<parent>
タグのバージョンをそのプロパティで参照している場合や、<parent>
を使わずに個々の依存関係でバージョンを明示的に指定している場合など、上記と異なる記述方法がされているプロジェクトもありますが、初心者の方がSpring Initializrなどでプロジェクトを作成した場合、ほとんどの場合が上記の <parent>
タグ内にバージョンが記述されているパターンになります。
確認手順まとめ (Maven):
- プロジェクトのルートディレクトリにある
pom.xml
ファイルを開きます。 <parent>
タグを探します。<parent>
タグの中にある<version>
タグの値を読み取ります。それがSpring Bootのバージョンです。
メリット:
- 最も正確で信頼できる情報が得られます。プロジェクトが意図しているバージョンそのものです。
- プロジェクトの他の設定(Javaバージョン、依存ライブラリなど)と一緒に確認できます。
- IDE(統合開発環境、例: IntelliJ IDEA, Eclipse, VS Codeなど)で簡単に開いて確認できます。
デメリット:
- プロジェクトのファイルシステムにアクセスし、ファイルを開く必要があります。
2-1-2. Gradle の場合 (build.gradle
または build.gradle.kts
)
Gradleを使っているプロジェクトでは、プロジェクトのルートディレクトリに build.gradle
(Groovy DSL) または build.gradle.kts
(Kotlin DSL) という名前のファイルがあります。このファイルを開いてみてください。
Gradleのビルドスクリプトは、Groovy(またはKotlin)言語で書かれており、プロジェクトの設定やビルドタスクなどが記述されています。
Spring Bootのバージョンは、通常、このファイルの plugins {...}
ブロック内に記述されています。Spring BootのGradleプラグイン(org.springframework.boot
)を使うのが一般的です。このプラグインは、実行可能なJAR/WARファイルの作成、依存関係管理、ビルド情報生成など、様々なSpring Boot開発に便利な機能を提供してくれます。
build.gradle
を開き、plugins {...}
ブロックを探してください。以下のような記述があるはずです。(Groovy DSLの例)
“`gradle
plugins {
id ‘java’ // 標準的なJavaプラグイン
id ‘org.springframework.boot’ version ‘3.2.5’ // *** ここにバージョンが書かれている! ***
id ‘io.spring.dependency-management’ version ‘1.1.4’ // Spring Bootと連携する依存関係管理プラグイン
}
group = ‘com.example’
version = ‘0.0.1-SNAPSHOT’
java {
sourceCompatibility = ’17’
}
repositories {
mavenCentral() // 依存ライブラリを取得するリポジトリ
}
dependencies {
// spring-boot-starter-parent (Maven) と同様、バージョンはプラグインが管理するため指定不要
implementation ‘org.springframework.boot:spring-boot-starter-web’
testImplementation 'org.springframework.boot:spring-boot-starter-test'
}
tasks.named(‘test’) {
useJUnitPlatform()
}
“`
上記の例では、plugins {...}
ブロックの中で id 'org.springframework.boot' version '3.2.5'
と記述されています。この version '...'
の値が、このGradleプロジェクトが使用しているSpring Bootのバージョンです。3.2.5
がSpring Bootのバージョンです。
Mavenの場合と同様、Spring Bootプラグインと io.spring.dependency-management
プラグインを組み合わせることで、dependencies
ブロック内でSpring Boot系の依存ライブラリにバージョンを明示的に指定する必要がなくなります。
Mavenと同様に、プロパティを使ってバージョンを管理したり、プラグインを使わずに個々の依存関係でバージョンを指定したりすることも可能ですが、Spring Bootプラグインを使うのが一般的です。
確認手順まとめ (Gradle):
- プロジェクトのルートディレクトリにある
build.gradle
またはbuild.gradle.kts
ファイルを開きます。 plugins {...}
ブロックを探します。id 'org.springframework.boot' version '...'
という行を探し、version
の値を読み取ります。それがSpring Bootのバージョンです。
メリット:
- Mavenと同様、最も正確で信頼できる情報が得られます。
- プロジェクトの他の設定と一緒に確認できます。
- IDEで簡単に開いて確認できます。
デメリット:
- プロジェクトのファイルシステムにアクセスし、ファイルを開く必要があります。
補足: ビルド設定ファイルを使う方法のまとめ
ビルド設定ファイル(pom.xml
やbuild.gradle
)を見る方法は、プロジェクトがどのバージョンのSpring Bootを使うように設定されているかを直接確認できるため、開発者が最も頻繁に使う方法であり、常に最初に行うべき確認方法と言えます。IDEを使っている場合、プロジェクトを開けばこれらのファイルはすぐに確認できます。
方法2: 実行中のSpring Bootアプリケーションのログを確認する
Spring Bootアプリケーションを起動すると、多くの情報がコンソールやログファイルに出力されます。この起動ログの中に、Spring Bootのバージョン情報が含まれているのが一般的です。
この方法は、既にビルドされて実行されているアプリケーションのバージョンを知りたい場合に特に役立ちます。手元にソースコードやビルド設定ファイルがない場合でも、ログにアクセスできればバージョンを確認できます。
Spring Bootアプリケーションが起動する際、以下のようなログメッセージが出力されます。
``
| \ \ \ \
. ____ _ __ _ _
/\\ / ___'_ __ _ _(_)_ __ __ _ \ \ \ \
( ( )\___ | '_ | '_| | '_ \/ _
\/ )| |)| | | | | || (_| | ) ) ) )
‘ || .__|| ||| |_, | / / / /
=========|_|==============|/=///_/
:: Spring Boot :: (v3.2.5) <– ここにバージョン情報が出力される!
2023-10-27T10:30:00.123+09:00 INFO 12345 — [ restartedMain] c.example.demo.DemoApplication : Starting DemoApplication using Java 17.0.8 with PID 12345 (/path/to/your/application.jar started by user in /path/to/your/project)
2023-10-27T10:30:00.456+09:00 INFO 12345 — [ restartedMain] c.example.demo.DemoApplication : No active profile set, falling back to 1 default profile: “default”
… (他のログメッセージ) …
2023-10-27T10:30:02.100+09:00 INFO 12345 — [ restartedMain] o.s.b.SpringBootVersion : Spring Boot v3.2.5 <– ここにも出力されることが多い!
… (さらに他のログメッセージ) …
2023-10-27T10:30:03.200+09:00 INFO 12345 — [ restartedMain] c.example.demo.DemoApplication : Started DemoApplication in 4.567 seconds (process running for 5.000)
“`
上記のログ例のように、アスキーアートのロゴの下や、o.s.b.SpringBootVersion
というクラスからのINFOログとして、Spring Bootのバージョン情報(例: v3.2.5
)が出力されるのが標準的な挙動です。
確認手順まとめ (ログ):
- Spring Bootアプリケーションを起動します。
- コンソール出力、またはアプリケーションのログファイルを確認します。
- 起動時の一番最初のログ(アスキーアートのロゴ付近)や、
Spring Boot v...
というログメッセージを探します。 - そこに記載されているバージョン番号を読み取ります。
メリット:
- アプリケーションを実行するだけで手軽に確認できます。
- ビルド設定ファイルが見られない場合でも、ログにアクセスできれば確認可能です。
デメリット:
- アプリケーションを実際に起動する必要があります。
- ログの設定によっては、バージョン情報が出力されないようにカスタマイズされている場合があります。
- ログの量が非常に多い場合、目的のバージョン情報を見つけるのが少し手間になるかもしれません。
方法3: Spring Boot CLI を使う
Spring Boot CLI (Command Line Interface) は、Spring Bootアプリケーションをコマンドラインから素早く作成・実行するためのツールキットです。Groovyという言語を使って、Javaよりも簡潔にアプリケーションを書くこともできます。
Spring Boot CLI自体にもバージョンがあります。このCLIのバージョンを確認することで、そのCLIを使って新しくSpring Bootプロジェクトを作成した場合に、デフォルトでどのバージョンのSpring Bootが使われるかを知ることができます。
ターミナルやコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行してみてください。
bash
spring --version
もしSpring Boot CLIがインストールされていれば、以下のような出力が表示されるはずです。
Spring Boot CLI v3.2.5
この v3.2.5
が、このSpring Boot CLIツールのバージョンです。通常、このバージョンと同じバージョンのSpring Bootが、CLIで新しく作成されるプロジェクトのデフォルトバージョンとして設定されます。(ただし、設定で変更することも可能です。)
確認手順まとめ (Spring Boot CLI):
- お使いの環境にSpring Boot CLIがインストールされていることを確認します。(まだの場合は、公式ドキュメントなどを参考にインストールしてください。)
- ターミナルまたはコマンドプロンプトを開きます。
spring --version
コマンドを実行します。- 表示されたバージョン番号を読み取ります。
メリット:
- 簡単なコマンド一つで手軽に確認できます。
- 新しいプロジェクトを作成する際に、どのバージョンのSpring Bootがデフォルトで使われるかを知るのに役立ちます。
デメリット:
- お使いの環境にSpring Boot CLIがインストールされている必要があります。
- この方法で確認できるのは CLIツールのバージョン であり、既存のSpring Bootプロジェクトが実際に使っているバージョン とは異なる場合がある点に注意が必要です。既存プロジェクトのバージョンを確認したい場合は、方法1(ビルド設定ファイル)が推奨されます。
方法4: Spring Boot Actuator を使う
Spring Boot Actuator は、Spring Bootアプリケーションを本番環境などで監視したり、管理したりするための機能を提供するモジュールです。アプリケーションのヘルスチェック、メトリクス(性能情報)、環境設定情報などを、HTTPエンドポイントとして公開できます。
Actuatorをアプリケーションに組み込むことで、実行中のアプリケーションが使用しているSpring Bootを含む様々な依存ライブラリのバージョン情報を、リモートから確認できるようになります。
ただし、デフォルト設定のActuatorでは、Spring Boot自体のバージョンが直接表示されるわけではありません。ビルド時に生成される情報(プロジェクトのバージョンなど)をActuatorのエンドポイントで公開するように設定することで、間接的にバージョン情報を確認する方法が一般的です。
Actuatorを使ったバージョン確認の手順:
この方法は少し設定が必要なため、初心者の方には少し難しく感じるかもしれません。もし手軽な方法で十分な場合は、方法1や方法2をお試しください。
-
プロジェクトにActuatorの依存関係を追加する:
- Mavenの場合 (
pom.xml
) の<dependencies>
ブロックに以下を追加します。
xml
<dependency>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-starter-actuator</artifactId>
</dependency> - Gradleの場合 (
build.gradle
) のdependencies
ブロックに以下を追加します。
gradle
implementation 'org.springframework.boot:spring-boot-starter-actuator'
依存関係を追加したら、ビルドツール(Maven/Gradle)でプロジェクトを更新(リフレッシュ)してください。
- Mavenの場合 (
-
Actuatorエンドポイントを有効化する:
デフォルトでは、Actuatorのエンドポイントはほとんど公開されていません。アプリケーションの設定ファイル(src/main/resources/application.properties
またはapplication.yml
)に、公開したいエンドポイントを指定する設定を追加します。バージョン確認に関係する情報を見るために、ここでは例としてinfo
エンドポイントを公開します。(本番環境では、セキュリティのため公開するエンドポイントを適切に制限したり、認証を設定したりすることが強く推奨されます。)application.properties
の場合:
properties
management.endpoints.web.exposure.include=info,env # infoとenvエンドポイントを公開する例
# 全て公開する場合は以下
# management.endpoints.web.exposure.include=*application.yml
の場合:
yaml
management:
endpoints:
web:
exposure:
include: info,env # infoとenvエンドポイントを公開する例
# 全て公開する場合は以下
# include: "*"
-
ビルド情報を生成する設定を追加する (任意だが推奨):
Actuatorの/info
エンドポイントでプロジェクトのバージョンなどのビルド情報を表示させるには、ビルド時にその情報を生成する必要があります。MavenまたはGradleのビルドツールを使って、Spring Bootが提供する機能でビルド情報を生成するように設定します。- Mavenの場合 (
pom.xml
) の<build>
ブロックに以下を追加します。
xml
<build>
<plugins>
<plugin>
<groupId>org.springframework.boot</groupId>
<artifactId>spring-boot-maven-plugin</artifactId>
<executions>
<execution>
<goals>
<goal>build-info</goal> <!-- build-infoゴールを実行 -->
</goals>
</execution>
</executions>
</plugin>
</plugins>
</build> - Gradleの場合 (
build.gradle
) に以下を追加します。(通常はpluginsブロックより後に記述します)
gradle
tasks.named('bootBuildInfo') {
enabled = true // bootBuildInfoタスクを有効化
}
この設定を追加したら、プロジェクトをビルドし直してください (mvn package
またはgradle bootJar
など)。これにより、target/classes/META-INF/build-info.properties
またはbuild/resources/main/META-INF/build-info.properties
というファイルが生成され、プロジェクト名、バージョン、ビルド日時などの情報が記録されます。
- Mavenの場合 (
-
アプリケーションを起動し、エンドポイントにアクセスする:
上記の設定を行った後、Spring Bootアプリケーションを通常通り起動します。
アプリケーションが起動したら、ブラウザやcurl
コマンドなどのツールを使って、公開したActuatorのエンドポイントにアクセスします。デフォルトでアプリケーションが8080ポートで実行されている場合、/actuator/info
エンドポイントへのアクセスURLは通常http://localhost:8080/actuator/info
となります。curl
コマンドを使った例:
bash
curl http://localhost:8080/actuator/info成功すれば、以下のようなJSON形式の応答が得られるはずです。
json
{
"build": {
"version": "0.0.1-SNAPSHOT", // ここはプロジェクト自体のバージョン
"artifact": "demo",
"name": "demo",
"group": "com.example",
"time": "2023-10-27T05:30:00.000Z"
}
}重要な注意点: 上記の
/actuator/info
で表示されるbuild.version
は、Spring Bootのバージョンではなく、あなたのプロジェクト自身(あなたが開発しているアプリケーション)のバージョン です。ビルド設定ファイル(pom.xml
やbuild.gradle
)で指定した、プロジェクト独自のバージョン番号が表示されます。では、Spring Bootのバージョンはどう確認するのか? Actuatorには
/actuator/env
というエンドポイントもあります(上記の手順2で公開設定していればアクセス可能)。このエンドポイントは、アプリケーションが読み込んでいる全ての環境設定プロパティを表示します。ここから、Spring Bootに関連するプロパティを探すことで、バージョン情報を確認できる可能性があります。/actuator/env
エンドポイントは非常に多くの情報を表示するため、全てをここに記載することはできませんが、ブラウザでアクセスして表示されるJSONデータの中で、例えばspring.boot.version
という名前のプロパティや、spring-boot-starter-parent.version
のような名前のプロパティを探してみてください。ビルド設定ファイルでバージョンをどのように指定しているかによって、表示されるプロパティの名前や場所は異なります。Mavenのparent POMを使っている場合、configurationProperties.parent.version
のようなキーで見つかることもあります。Actuatorの
/actuator/env
エンドポイントは情報量が膨大で、目的の情報を探すのが初心者には難しいかもしれません。/actuator/info
エンドポイントにSpring Bootのバージョンを明示的に表示するようにカスタマイズすることも可能ですが、そのためにはさらにコードや設定の変更が必要になります。
確認手順まとめ (Actuator):
- プロジェクトにActuatorの依存関係を追加し、エンドポイントを有効化する設定を追加します。
- (推奨)ビルド情報生成プラグイン/タスクを設定し、プロジェクトをビルドします。
- アプリケーションを起動します。
- ブラウザや
curl
コマンドなどで/actuator/info
エンドポイントにアクセスし、ビルド情報(プロジェクトのバージョンなど)を確認します。 - 必要であれば
/actuator/env
エンドポイントにアクセスし、プロパティを検索してSpring Bootのバージョンに関連する情報を探します。(これは少し高度です)
メリット:
- 実行中のアプリケーションの状態をリモートから確認できます(ネットワーク経由でアクセスできるよう設定した場合)。
- 監視・管理ツールと連携して、継続的にアプリケーションの状態を把握できます。
デメリット:
- Spring Boot Actuatorの依存関係を追加し、設定を変更する必要があります。
- デフォルト設定では、Spring Boot自体のバージョンが直接的かつ簡単に表示されるわけではありません。
/actuator/env
エンドポイントは情報量が非常に多いため、初心者には目的の情報を探しにくい場合があります。- セキュリティに配慮してエンドポイントを公開する必要があります。
方法5: アプリケーションコードから取得する
Spring BootアプリケーションのJavaコードの中から、プログラム的にSpring Bootのバージョン情報を取得することも可能です。この方法は、アプリケーション内でバージョン情報を利用したい場合(例:アプリケーションの管理画面に表示する、起動時のログに明示的に出力するなど)に役立ちます。
Spring Bootは、バージョン情報を取得するための便利なクラスを提供しています。
一番簡単な方法は、org.springframework.boot.SpringBootVersion
クラスを使用することです。
“`java
import org.springframework.boot.SpringBootVersion;
import org.springframework.stereotype.Component;
@Component // Spring管理下のコンポーネントとして扱う場合
public class VersionChecker {
public void checkAndPrintVersion() {
// SpringBootVersion.getVersion() メソッドでバージョン文字列を取得
String springBootVersion = SpringBootVersion.getVersion();
if (springBootVersion != null) {
System.out.println(">>> アプリケーションが使用しているSpring Bootのバージョン: " + springBootVersion);
} else {
System.out.println(">>> Spring Bootのバージョン情報を取得できませんでした。");
}
}
// 例: アプリケーション起動時にバージョンを出力する
// @Autowired
// private VersionChecker versionChecker;
//
// @SpringBootApplication
// public class DemoApplication {
// public static void main(String[] args) {
// SpringApplication.run(DemoApplication.class, args);
// // アプリケーション起動後に呼び出す例
// // versionChecker.checkAndPrintVersion(); // @Autowiredが必要
// }
// }
}
“`
SpringBootVersion.getVersion()
メソッドを呼び出すだけで、実行中のSpring Bootアプリケーションのバージョン番号が文字列として取得できます。
このコードをアプリケーション内の適切な場所(例えば、起動時や特定のリクエスト処理時など)で呼び出すように組み込めば、アプリケーションの実行時にバージョン情報を確認できます。
確認手順まとめ (コード):
- Spring BootアプリケーションのJavaコードを開きます。
- バージョン情報を取得したい場所に、
SpringBootVersion.getVersion()
を呼び出すコードを追加します。 - アプリケーションをビルドし、実行します。
- コードの実行結果(この例では標準出力)を確認し、バージョン番号を読み取ります。
メリット:
- アプリケーションの内部でバージョン情報をプログラム的に利用できます。
- バージョン取得のコード自体は非常にシンプルです。
デメリット:
- アプリケーションのコードを変更する必要があります。
- コードの変更を反映させるためには、アプリケーションを再ビルドし、再起動する必要があります。
3. 各バージョン確認方法の比較と使い分け
ここまで5つのSpring Bootバージョン確認方法を見てきました。それぞれの方法には特徴があり、適したシチュエーションが異なります。以下に、それぞれの方法を比較し、どのような場合にどの方法を使うのが良いかのアドバイスをまとめます。
方法 | メリット | デメリット | 適した場面 |
---|---|---|---|
1. ビルド設定ファイル (pom.xml /build.gradle ) |
最も正確で信頼できる / プロジェクト設定全体を確認できる | ファイルを開く必要がある | 開発中、手元で確認したい場合 / プロジェクトの公式なバージョンを知りたい場合 |
2. 実行中のログ | アプリケーション実行中に手軽に確認できる / ファイルが見られない場合も確認可能 | 起動が必要 / 設定によっては出力されない場合がある / ログ量が多いと探しにくい | 既に実行されているアプリケーションのバージョンを知りたい場合 |
3. Spring Boot CLI | 簡単なコマンド一つで確認できる | CLIのインストールが必要 / 既存プロジェクトのバージョンとは異なる場合がある | CLIを使って新しいプロジェクトを作成する際 / CLIツール自体のバージョンを知りたい場合 |
4. Actuator | リモートから確認可能 / 監視・管理ツールと連携できる | 設定が必要 / Spring Bootバージョンが直接表示されない場合がある / 少し複雑 | デプロイ済みアプリケーションのバージョンを継続的に監視・管理したい場合 |
5. アプリケーションコード | アプリケーション内部でバージョンを利用できる / コード自体はシンプル | コード変更・再ビルド・再起動が必要 | アプリケーション内でバージョン情報を利用したい場合 |
初心者の方へのおすすめ:
まずは 方法1(ビルド設定ファイル) と 方法2(実行中のログ) の使い方を覚えるのがおすすめです。開発中に手元で確認するならビルド設定ファイル、とりあえず動かしてみてバージョンを知りたいなら起動ログ、というように使い分けられます。これらの方法でほとんどの場面でのバージョン確認は十分でしょう。
Spring Boot開発に慣れてきたら、Spring Boot CLIを試してみたり、Actuatorの機能を活用してみたりするのも良いでしょう。
4. Spring Bootのバージョンと開発環境 (Java, Maven/Gradle) の関係
Spring Bootのバージョンを確認するだけでなく、それがあなたの開発環境と互換性があるかどうかも重要なポイントです。特に、使用しているJavaのバージョン、そしてMavenまたはGradleのバージョンとの互換性には注意が必要です。
4-1. Javaバージョンとの互換性
Spring Bootの各バージョンは、サポートするJavaのバージョンが決まっています。これは非常に重要です。
- 例えば、Spring Boot 3.x 系 は、基本的に Java 17以降 を要求します。
- Spring Boot 2.x 系 は、Java 8または11以降 をサポートしていました。(バージョンによってサポート終了時期は異なります)
もし、使用しているSpring Bootのバージョンが、あなたの環境にインストールされているJavaのバージョンよりも新しいバージョンを要求する場合、アプリケーションは正しくビルドできなかったり、実行できなかったりします。
確認方法:
- Spring Boot公式ドキュメントの「System Requirements」の章を確認する:これが最も正確な情報源です。使用したいSpring Bootバージョンのドキュメントを開き、「System Requirements」という項目を探してください。そこに、そのバージョンが必要とするJavaの最小バージョンや推奨バージョンが記載されています。
- コマンドラインでJavaバージョンを確認する:
ターミナルやコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行すると、現在有効になっているJavaのバージョンが表示されます。
bash
java -version
表示されたバージョン番号と、Spring Bootドキュメントで確認したサポートバージョンを比較します。
例:
あなたがSpring Boot 3.2.5を使おうとしていて、java -version
の実行結果が Java version "11.0.12"
だったとします。Spring Boot 3.x 系はJava 17以降を要求するため、Java 11では動作しません。この場合、Javaをバージョン17以降にアップデートする必要があります。
4-2. Maven/Gradleバージョンとの互換性
Spring Bootは、MavenやGradleといったビルドツールと連携するためのプラグインを提供しています。これらのプラグインのバージョンも、Spring Boot本体のバージョンに合わせて更新されます。
特定のSpring Bootのバージョンで提供されるMaven/Gradleプラグインは、特定のバージョンのMavenまたはGradleツールを要求する場合があります。ビルドツールのバージョンが古すぎたり新しすぎたりすると、ビルド時にエラーが発生する可能性があります。
確認方法:
- Spring Boot公式ドキュメントの「System Requirements」の章を確認する:Javaバージョンと同様に、必要なMavenまたはGradleのバージョンが記載されています。
- コマンドラインでMaven/Gradleバージョンを確認する:
- Maven:
bash
mvn --version - Gradle:
bash
gradle --version
表示されたバージョン番号と、Spring Bootドキュメントで確認した推奨バージョンを比較します。
- Maven:
もし互換性の問題が見つかった場合は、Javaやビルドツールのバージョンを、使用したいSpring Bootのバージョンがサポートする範囲に調整する必要があります。
5. 一歩進んで:Spring Bootのバージョンアップについて
Spring Bootのバージョン確認ができるようになったら、次に考えるのは「バージョンアップ」です。古いバージョンのSpring Bootで開発を始めた場合、途中で新しいバージョンにアップデートする必要が出てくることがあります。
5-1. なぜバージョンアップが必要か?
バージョンアップが必要になる主な理由は、バージョン確認が必要な理由と共通しています。
- 新機能を利用したいから
- バグ修正やセキュリティ対策を取り込みたいから
- 新しいJavaバージョンやライブラリを使いたいから
- 古いバージョンがサポート終了 (End-of-Life – EOL) になったから
特に、EOLとなったバージョンを使い続けることは、セキュリティリスクが高まるため避けるべきです。
5-2. バージョンアップの注意点
バージョンアップは基本的に推奨されますが、いくつかの注意点があります。
- 後方互換性のない変更 (Breaking Changes):メジャーバージョンアップ時など、新しいバージョンで一部の機能が削除されたり、使い方が大きく変わったりすることがあります。これにより、既存のコードを修正しないと新しいバージョンで動作しなくなる可能性があります。
- 非推奨 (Deprecated) 機能の削除:古いバージョンで「将来的に削除される予定です」と警告が出ていた機能が、新しいバージョンで完全に削除されることがあります。
- 依存ライブラリの変更:Spring Bootに含まれる依存ライブラリのバージョンも更新されるため、それによって予期しない影響が出ることがあります。
5-3. 安全にバージョンアップするためのステップ
バージョンアップを安全に行うためには、以下のステップを踏むことが重要です。
- 対象バージョンのリリースノートや移行ガイドを読む: Spring Bootの公式ドキュメントには、各バージョンでの変更点や、以前のバージョンからスムーズに移行するためのガイド(Migration Guide)が必ず用意されています。バージョンアップを行う前に、必ずこれを熟読し、どのような変更が必要かを確認しましょう。これが最も重要なステップです。
- ビルド設定ファイルのバージョン番号を変更する:
pom.xml
またはbuild.gradle
ファイルを開き、Spring Bootのバージョン番号を新しいバージョンに書き換えます(方法1を参照)。 - Javaバージョンやビルドツールバージョンが互換性があるか確認・調整する: 使用するSpring Bootの新しいバージョンが要求するJavaやMaven/Gradleのバージョンを確認し、必要であればそれらもアップデートします(方法4を参照)。
- ビルドを実行し、コンパイルエラーがないか確認する: バージョン番号を変更したら、プロジェクトをビルドします(
mvn clean package
やgradle clean bootJar
など)。コードに互換性のない変更が含まれている場合、ここでコンパイルエラーが発生します。エラーメッセージを読んで、必要なコード修正を行います。 - テストを実行する: コードがコンパイルできたら、単体テスト、結合テスト、必要であればE2Eテストなど、作成済みのテストを全て実行します。テストが失敗しないことを確認します。バージョンアップによって予期せぬ不具合が発生していないかを確認するために、テストは非常に有効です。もしテストがない場合は、最低限、アプリケーションを起動し、主要な機能が正しく動作するかを手動で確認することをおすすめします。
- 小刻みにバージョンアップする (可能であれば):メジャーバージョンを飛び越えた大規模なバージョンアップ(例:2.x から 3.x へ)は、一度の変更量が大きくなり大変になりがちです。可能であれば、マイナーバージョンアップを少しずつ行い、最新のマイナーバージョンにしてから次のメジャーバージョンへ進むなど、段階的にアップデートする方が、問題発生時の原因特定がしやすくなります。
バージョンアップは少し手間がかかることもありますが、アプリケーションの安定性、安全性、将来性を保つためには避けて通れない道です。最初は大変に感じるかもしれませんが、公式ドキュメントの移行ガイドを参考に、テストを活用しながら進めれば、きっとスムーズに行えるようになります。
6. 初心者向け!Spring Bootバージョンに関するよくある疑問とアドバイス
最後に、Spring Boot初心者の方がバージョンに関してよく疑問に思うことや、開発を進める上でのアドバイスをまとめます。
Q1: どのSpring Bootバージョンを使えばいいですか?
A1: 新しいプロジェクトを始める場合は、基本的に最新のGA (General Availability) 版を使うのが最も推奨されます。最新版には、最新の機能、パフォーマンス改善、そして最も重要なセキュリティ修正が含まれています。
ただし、既存のプロジェクトに参加する場合や、使用したい特定の外部ライブラリが最新のSpring Bootバージョンに対応していない場合など、状況によっては古いバージョンを選ぶ必要があることもあります。また、長期サポート版 (LTS) が必要な場合は、現在のLTSバージョンを選択することも検討します。迷ったら、まずは最新のGA版から始めてみるのが良いでしょう。
Q2: 古いバージョンを使い続けても大丈夫ですか?
A2: プロジェクトの要件やリスク許容度によりますが、一般的には、サポートが続いているバージョン(特にセキュリティ修正が提供されているバージョン)を使うべきです。Spring Bootの公式ドキュメントで、各バージョンのサポート期間(EOL)を確認できます。
EOLとなった古いバージョンを使い続けることは、既知のセキュリティ脆弱性が修正されず、アプリケーションが攻撃の対象になりやすくなるという大きなリスクを伴います。また、新しいJavaバージョンやライブラリとの互換性がなくなり、開発やメンテナンスが困難になる可能性もあります。特別な理由がない限り、最新のサポートされているバージョン、またはLTSバージョンへの移行を検討しましょう。
Q3: バージョンアップは大変ですか?
A3: バージョンの種類(パッチ、マイナー、メジャー)や含まれる変更内容によります。パッチバージョンアップ(例: 3.2.4 から 3.2.5)は、通常、バグ修正が中心なので、コードの変更はほとんど必要なく比較的容易です。マイナーバージョンアップ(例: 3.1.x から 3.2.x)では新機能が追加されますが、後方互換性が保たれていることが多いため、大きな修正は不要なことが多いです。
一方、メジャーバージョンアップ(例: 2.x から 3.x へ)は、後方互換性のない変更や非推奨機能の削除が多く含まれるため、既存のコードを修正する必要があることがよくあります。特に大規模なアプリケーションの場合は、移行に時間がかかる可能性があります。しかし、公式の移行ガイドを参考に、テストをしっかり行えば、計画的に進めることができます。
Q4: チームでバージョンを揃えるにはどうすればいいですか?
A4: プロジェクトのビルド設定ファイル (pom.xml
または build.gradle
) でSpring Bootのバージョンを一元管理し、それをGitなどのバージョン管理システムでチーム全員が共有するのが最も確実な方法です。これにより、開発者全員が同じバージョンのSpring Bootを参照してビルド・実行することになります。
また、JavaのバージョンやMaven/Gradleのバージョンについても、プロジェクト内で使用するバージョンを明確にし、開発環境構築手順を標準化することも重要です。Dockerなどのコンテナ技術を使えば、開発環境自体を統一することも可能です。
7. まとめ
この記事では、Spring Bootのバージョン確認方法について、初心者向けに徹底的に解説しました。
- Spring Bootのバージョンは「メジャー.マイナー.パッチ」で管理されており、それぞれの番号が変更のレベルを示していること。
- バージョン確認は、最新機能、バグ・セキュリティ対策、依存関係、互換性、チーム開発、トラブルシューティングといった様々な理由から非常に重要であること。
- バージョン確認の主な方法として、ビルド設定ファイル(
pom.xml
/build.gradle
)、起動ログ、Spring Boot CLI、Actuator、アプリケーションコードの5つがあること。 - 特にビルド設定ファイルを確認する方法が最も一般的で信頼できること。
- 各方法にはメリット・デメリットがあり、状況に応じて使い分けることが重要であること。
- 使用するSpring BootバージョンとJavaやビルドツールのバージョン間の互換性にも注意が必要であること。
- バージョンアップは重要であり、公式ドキュメントやテストを活用して安全に行うべきであること。
Spring Boot開発の初期段階で、自分のプロジェクトがどのバージョンのSpring Bootを使っているのかを把握しておくことは、その後の学習や開発をスムーズに進めるための第一歩です。
この記事でご紹介した様々な確認方法を、ぜひ実際に皆さんのSpring Bootプロジェクトで試してみてください。バージョン確認の習慣を身につけることで、Spring Boot開発がさらに効率的で安心なものになるはずです。
もし途中で分からないことやエラーに遭遇した場合は、Spring Bootのバージョン情報が、解決策を見つけるための強力なヒントになることを思い出してください。公式ドキュメントやインターネット検索で情報を探す際にも、バージョン情報を添えることで、より的確な情報にたどり着きやすくなります。
この記事が、Spring Boot学習の旅を始めたばかりの皆さんの、確かな一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
Happy Coding!
8. 参考情報
- Spring Boot 公式ドキュメント (Versions): https://docs.spring.io/spring-boot/docs/current/reference/html/getting-started.html#getting-started.versions (※バージョンによってURLが異なりますので、ご自身のバージョンのドキュメントをご確認ください。「current」部分をバージョン番号に変更してください)
- Spring Boot 公式ドキュメント (Migration Guides): https://github.com/spring-projects/spring-boot/wiki/Spring-Boot-3.0-Migration-Guide (※これは3.0の移行ガイドです。他のバージョンへの移行ガイドはWikiのトップページなどから探してください)
- Spring Boot Actuator ドキュメント: https://docs.spring.io/spring-boot/docs/current/reference/html/actuator.html (※バージョンによってURLが異なります)
- Maven 公式サイト: https://maven.apache.org/
- Gradle 公式サイト: https://gradle.org/
注: 上記記事は約5000語のボリュームを目指して詳細に記述しましたが、厳密に5000語であることは保証できません。しかし、Spring Bootのバージョン確認方法について、初心者の方が理解できるように、関連知識や背景情報も含めて非常に詳しく解説することに重点を置いています。必要な情報が網羅され、十分なボリュームになっているはずです。