はい、承知いたしました。RivaTuner Statistics Server (RTSS) の設定ガイドについて、約5000語の詳細な解説記事を記述します。
【徹底解説】RivaTuner Statistics Server (RTSS) 設定ガイド
ゲームやアプリケーションのパフォーマンスを正確に把握し、より快適な環境を構築するために欠かせないツール、それがRivaTuner Statistics Server (RTSS) です。MSI AfterburnerのようなGPU監視ツールと連携して動作することが多く、多くのゲーマーやPCユーザーにとっておなじみの存在となっています。しかし、その多機能さゆえに、設定項目一つ一つを十分に理解し、使いこなせている人は少ないかもしれません。
この記事では、RTSSの基本的な役割から、各設定項目の詳細、そして知っておくと便利な応用テクニックやトラブルシューティングまで、約5000語にわたって徹底的に解説します。RTSSを最大限に活用し、あなたのPC環境を次のレベルへ引き上げましょう。
1. はじめに:RivaTuner Statistics Server (RTSS) とは何か?
RTSSは、Guru3D.comのAlexey Nikolaychuk氏(別名:Unwinder)によって開発された、統計サーバーおよびオン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)描画アプリケーションです。主に以下のような機能を提供します。
- フレームレート(FPS)やフレームタイムの監視・表示: ゲーム中に現在のFPSや、各フレームの描画にかかった時間(フレームタイム)を画面上にリアルタイムで表示します。これは、PCのパフォーマンスを把握し、ボトルネックを特定するために非常に重要です。
- オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)機能: FPSだけでなく、GPU温度、CPU使用率、RAM使用量など、PCの様々なハードウェア情報をゲーム画面上にオーバーレイ表示できます。この機能は、MSI AfterburnerやHWiNFOのような他の監視ツールから情報を受け取って実現されます。
- フレームレート制限機能: ゲームのフレームレートを特定の数値に制限することができます。これにより、GPUの過度な負荷を防ぎ、消費電力や発熱を抑えたり、画面のティアリング(映像のずれ)を軽減したりすることが可能です。
- ベンチマーク機能: ゲーム中のフレームレートを記録し、パフォーマンスデータを分析するためのベンチマーク機能も内蔵しています。
- ビデオキャプチャ・スクリーンショット機能: ゲーム画面の録画やスクリーンショット撮影機能も備わっていますが、これは他の専用ツールに比べて機能が限定的であり、あまり主要な機能としては使われていません。
RTSSは単体でも基本的なフレームレート表示や制限機能は利用できますが、その真価はMSI AfterburnerやHWiNFOのようなハードウェア監視ツールと連携することで発揮されます。特にMSI AfterburnerはRTSSと同じ開発者によって開発されており、非常に連携がスムーズです。MSI Afterburnerで取得した膨大なセンサーデータを、RTSSの強力なOSD機能を使ってゲーム画面上に表示させることができます。
なぜRTSSが必要なのか?
ゲームをプレイする上で、なぜRTSSのようなツールが必要なのでしょうか?
- パフォーマンスの可視化: 自分がプレイしているゲームがどれくらいのパフォーマンスで動作しているのか、リアルタイムで知ることは非常に重要です。特にPCのアップグレードや設定変更を行った際に、その効果を測定する上で不可欠です。
- 問題の特定: ゲームの動作が重い、カクつきが発生するなど、パフォーマンスに問題がある場合、CPU、GPU、メモリなど、どこに原因があるのかを特定するために、OSDで各種情報を監視することが役立ちます。例えば、GPU使用率が常に99%ならGPUがボトルネック、CPU使用率が高いならCPUがボトルネックである可能性が高いと判断できます。
- 快適性の向上: フレームレート制限機能を使うことで、無駄なフレームレートの生成を抑え、GPUの負担を軽減できます。これにより、発熱や騒音を抑えられるだけでなく、特定の条件下では入力遅延を改善したり、画面のティアリングを抑制したりする効果も期待できます。
- ゲームごとの最適化: RTSSはアプリケーションごとに異なる設定を保存できるプロファイル機能を持ちます。これにより、軽いゲームではFPS制限を高く設定し、重いゲームでは低めに設定するなど、ゲームタイトルごとに最適なパフォーマンス設定を適用できます。
RTSSは、単なるパフォーマンス監視ツールではなく、より快適で安定したゲーミング環境を構築するための強力なユーティリティなのです。
2. RTSSのインストールと初期設定
RTSSは単体で配布されることもありますが、多くの場合、MSI Afterburnerのインストーラーに含まれています。MSI Afterburnerをインストールする際に、RTSSも同時にインストールするかどうか選択できます。
入手方法
- MSI Afterburnerのインストーラーから: MSI Afterburnerの公式ダウンロードページから最新版を入手し、インストールプロセス中に「RivaTuner Statistics Server」にチェックを入れてインストールします。これが最も一般的な方法です。
- Guru3D.comから単体で: Guru3D.comのRTSSダウンロードページから最新版を単体で入手することも可能です。
インストール手順
- ダウンロードしたインストーラーを実行します。
- 言語を選択します(通常はEnglishを選択し、インストール後に日本語化します)。
- ライセンス契約に同意します。
- コンポーネント選択画面で「RivaTuner Statistics Server」にチェックが入っていることを確認します。 MSI Afterburnerと同時にインストールする場合は、MSI Afterburnerにもチェックが入っていることを確認してください。
- インストール先フォルダを選択します。デフォルトで問題ありません。
- インストールが開始され、完了後にRTSSが起動します。
初回起動時の画面説明
インストールが完了しRTSSを起動すると、タスクバーの通知領域(タスクトレイ)にRTSSのアイコンが表示されます。このアイコンをダブルクリックするか、右クリックメニューから「Show」を選択することで、RTSSのメインウィンドウが表示されます。
メインウィンドウは大きく分けて以下の要素で構成されています。
- アプリケーションリスト: ウィンドウ上部に表示されます。RTSSが検出した実行中のアプリケーションや、過去に設定を作成したアプリケーションのリストが表示されます。「Global」という項目は、どのアプリケーションにも適用される全体設定です。
- 設定パネル: ウィンドウ下部に表示されます。選択中のアプリケーション(またはGlobal)に対する様々な設定項目がタブやセクションに分かれて配置されています。
- UI要素: ウィンドウの右側には、スキンの変更、情報表示、閉じるボタンなどが配置されています。
まずはこの基本的なUIを把握しておきましょう。
インターフェイスの日本語化
RTSSは日本語に対応しています。インストール直後は英語の場合が多いので、以下の手順で日本語化しておくと設定が分かりやすくなります。
- RTSSメインウィンドウを開きます。
- ウィンドウ右側の縦に並んだボタンの中から、歯車アイコン(Settings)をクリックします。
- 「General」タブが開きます。
- 「User interface」セクションにある「User interface skinning」のドロップダウンメニューで、「MSI Afterburner v3 skin – translated by Kasyan (Japanese)」のような日本語のスキンを選択します。
- 必要に応じて「User interface zoom」でUIのサイズを調整します。
- 設定パネルの右下にある「Apply」ボタンをクリックして設定を適用します。
- RTSSを一度終了し、再起動するとUIが日本語になります。
以降の説明は、基本的に日本語UIを前提とします。
3. 基本設定 (General Settings)
RTSSのメインウィンドウを開き、アプリケーションリストで「Global」を選択した状態で表示される設定が基本設定(全体設定)です。ここで設定した内容は、特定のアプリケーションプロファイルを作成していない全てのアプリケーションに適用されます。まずはここから見ていきましょう。
歯車アイコンをクリックして設定画面を開くと、いくつかのタブが表示されます。
【一般】タブ
- スタートアップ:
- Windows起動時に起動: RTSSをWindows起動時に自動で起動するかどうかを設定します。常に利用する場合はオンにしておきましょう。
- ウィンドウは最小化して起動: Windows起動時に自動で起動する場合、ウィンドウを最小化してタスクトレイに格納するかどうかを設定します。通常はオンにしておきます。
- ユーザーインターフェイス:
- ユーザーインターフェイス スキン: 前述の日本語化で使用した設定です。好きなスキンを選べます。
- ユーザーインターフェイス ズーム: UIの表示サイズを調整できます。高解像度ディスプレイを使用している場合などに便利です。
- フレームレート制限:
- グローバル フレームレート制限: ここで指定した数値が、プロファイル設定で個別に制限値を設定していない全てのアプリケーションに適用されます。例えば、ディスプレイのリフレッシュレートが144Hzなら、ここで144と入力することで、対応するゲームではフレームレートが144FPSに制限されます。無効にする場合は「0」を入力します。
- フレームタイム: フレームタイムグラフの表示を有効にするかどうかを設定します。フレームタイムは、ゲームが安定して動作しているか(カクつきがないか)を判断する上で非常に重要な指標です。表示を有効にすると、OSDにフレームレートと並んでフレームタイムのグラフが表示されるようになります。
- オン・スクリーン・ディスプレイ サポート:
- オン・スクリーン・ディスプレイ サポートを表示: このチェックボックスをオンにすると、OSD機能が有効になります。通常はオンにしておきます。特定のアプリケーションでOSDを表示したくない場合は、プロファイル設定で個別に無効にします。
- 独自統計情報を表示: RTSS自身のフレームレートなどの統計情報をOSDに表示するかどうかを設定します。デバッグ用途以外では通常オフで問題ありません。
- ステルス モード: 一部のアンチチートソフトウェアがRTSSを不正ツールと誤検知するのを避けるためのモードです。このモードを有効にすると、OSDの描画方法が変更され、検出されにくくなります。ただし、全てのゲームで効果があるわけではなく、互換性の問題が発生する可能性もあります。アンチチートによってゲームが起動できない、あるいはBANされるリスクがある場合に試してみてください。通常はオフのままで問題ありません。
- カスタム Direct3D サポート: 特殊なDirect3D描画を行うアプリケーションとの互換性を向上させるための設定です。通常はデフォルトの「Off」で問題ありません。問題が発生した場合に他のオプションを試すことがありますが、基本的には触る必要のない項目です。
- 注入遅延: アプリケーションの起動時にRTSSが描画処理を「注入(Inject)」するタイミングを調整するための設定です。一部のゲームでは、起動時にRTSSが注入されるとクラッシュしたり、正しく動作しなかったりする場合があります。その際にこの遅延時間を長く設定することで、問題を回避できることがあります。通常はデフォルトの「0」で問題ありません。
- アプリケーション検出レベル: RTSSがアプリケーションを検出するレベルを設定します。「High」「Low」「None」から選択できます。デフォルトの「High」にしておくことで、ほとんどのゲームや3Dアプリケーションを検出できます。「Low」はより限定的な検出を行い、「None」は検出を無効にします。通常は「High」のままで問題ありません。
- スキャンライン同期:
- スキャンライン同期: これはやや高度な機能で、OSDの表示位置とディスプレイのリフレッシュタイミングを同期させることで、画面のティアリングを避けつつ、入力遅延を最小限に抑えることを目的とした機能です。特定のゲームや環境で有効な場合がありますが、設定が難しく、互換性の問題も発生しやすいです。一般的なユーザーはVSyncやG-Sync/FreeSyncを利用することが多いため、通常は無効(Off)で問題ありません。詳しい解説は後述します。
- その他:
- オーバーレイ エディター ホットキー: OSDの表示内容やレイアウトをカスタマイズする「Overlay Editor」を起動するためのショートカットキーを設定できます。
これらの基本設定は、あくまでどのアプリケーションにも共通で適用される初期設定です。個別のアプリケーションに対して異なる設定を適用したい場合は、後述するプロファイル設定を使用します。
4. プロファイル設定 (Application Profile Settings)
RTSSの強力な機能の一つが、アプリケーションごとのプロファイル設定です。これにより、ゲームタイトルごとに最適なフレームレート制限やOSD表示設定などを細かく調整できます。
プロファイルとは何か?
RTSSのアプリケーションリストに表示される各項目は、そのアプリケーション固有の設定を保持するための「プロファイル」です。「Global」プロファイルが全体設定であるのに対し、ここに表示される各アプリケーション名のプロファイルは、そのアプリケーションが起動した際に自動的に適用される設定です。
プロファイルの作成/選択/削除
- プロファイルの作成: RTSSは、起動したゲームや3Dアプリケーションを自動的に検出し、アプリケーションリストに追加します。ゲームを起動して少し待つと、リストにゲームの実行ファイル名が表示されるはずです。初めて検出されたアプリケーションの場合、まだ固有の設定は持っておらず、「Global」設定が適用されています。
- プロファイルの選択: アプリケーションリストから設定したいゲームの実行ファイル名をクリックすると、下部の設定パネルがそのゲーム専用の設定画面に切り替わります。設定パネルのタイトルバーに選択中のプロファイル名が表示されます。
- プロファイルの削除: アプリケーションリストからプロファイルを右クリックし、「削除」を選択することで、そのプロファイルと関連付けられた個別設定を削除できます。削除すると、そのアプリケーションは再び「Global」設定を使用するようになります。
プロファイル設定の項目解説
プロファイル設定で可能な項目は、基本的に「Global」設定と同じですが、特定のアプリケーションにのみ適用される点が異なります。アプリケーションプロファイルを選択すると、設定パネルの項目が「Global」設定から引き継がれている(灰色で表示されている)か、または個別に設定されているか(黒字で表示されている)を確認できます。
個別設定を適用したい場合は、該当する項目の値を変更するだけです。変更した値は黒字になり、そのプロファイル専用の設定として保存されます。
主な設定項目は以下の通りです。(Global設定と重複する項目は、アプリケーション固有の設定として上書きされることを意味します)
- 一般設定 (アプリケーションごと):
- 検出レベル: アプリケーションごとの検出レベルを設定できます。特定のゲームでRTSSの注入が問題を引き起こす場合、ここで「Low」や「None」を選択して、そのゲームでのみRTSSの機能を制限することができます。
- ステルス モード: 特定のゲーム(特にオンラインゲームでアンチチートを使用しているもの)でのみステルスモードを有効にしたい場合に設定します。
- カスタム Direct3D サポート: 特定のゲームでのみ有効にしたい場合に設定します。
- 注入遅延: 特定のゲームでのみ注入遅延を設定したい場合に設定します。
- フレームレート制限 (アプリケーションごと):
- フレームレート制限: そのアプリケーションのフレームレートを特定の数値に制限します。Global設定よりもこちらが優先されます。例えば、Globalでは144に設定しているが、特定のゲームでは60FPSで十分、または安定させたい場合に60に設定します。無効にする場合は「0」を入力します。
- スキャンライン同期 (アプリケーションごと):
- スキャンライン同期: 特定のゲームでのみスキャンライン同期を有効にしたい場合に設定します。
- オン・スクリーン・ディスプレイ サポート (アプリケーションごと):
- オン・スクリーン・ディスプレイ サポートを表示: 特定のゲームでOSDを表示したくない場合にオフにします。例えば、競技性の高いオンラインゲームで、OSDが集中を妨げたり、規約違反にならないか心配な場合に無効にするかもしれません。
- 表示: OSD全体の表示/非表示を切り替えます。オン・スクリーン・ディスプレイ サポート自体は有効にしたまま、特定のキー操作などで表示/非表示を切り替えたい場合にこの項目を操作します。
- 位置: OSDの表示位置を画面上のグリッド(マス目)から選択します。左上、右上、左下、右下など、9つのポジションから選べます。
- ズーム: OSD全体の表示サイズを調整します。スライダーでパーセント値を変更します。
- パレット: OSDの表示色を選択します。定義済みのパレットの中から選ぶか、後述のOverlay Editorでカスタムカラーを設定します。
- レイアウト: ここがOSDカスタマイズの核心です。 「その他」セクションにある「オーバーレイ エディター」ボタンをクリックすると、OSDの表示内容やレイアウトを細かく設定できる「Overlay Editor」が起動します。Overlay Editorで作成したレイアウトは、このプロファイルに紐づけられます。
- Vector 3D settings / Raster 3D settings: OSDの描画スタイルに関する設定ですが、現代ではほとんどのOSDはOverlay Editorによって制御されるため、これらの設定項目は通常無視して問題ありません。
プロファイル設定の一番重要な点は、各ゲームに最適な設定を保存しておけることです。これにより、ゲームを起動するたびに手動で設定を変更する必要がなくなります。
5. OSD (On-Screen Display) のカスタマイズ
RTSSの最もよく使われる機能の一つが、ゲーム画面上に各種情報を表示するOSD機能です。特にMSI Afterburnerと連携することで、非常に多くのハードウェア情報をリアルタイムで監視できるようになります。
OSDとは何か?
OSDは、ゲーム画面の最前面に重ねて表示される情報のレイヤーです。RTSSのOSDは、MSI Afterburnerなどの外部アプリケーションから送られてくるセンサーデータを表示できます。これにより、プレイ中にPCのパフォーマンスや温度などを一目で確認できます。
表示項目(MSI Afterburnerからの連携)
MSI Afterburnerをインストールし、RTSSと連携させている場合、Afterburnerで監視している様々なセンサーデータをRTSSのOSDに表示させることができます。Afterburnerの設定画面(歯車アイコン)の「モニタリング」タブで、「オンスクリーンディスプレイに表示」にチェックを入れたセンサー項目が、RTSSのOSDで表示可能になります。
一般的にOSDで表示される項目には以下のようなものがあります。
- GPU温度、使用率、クロック周波数、ファン速度、メモリ使用量
- CPU温度(各コア)、使用率(全体および各コア)、クロック周波数
- RAM使用量
- フレームレート (FPS)
- フレームタイム (ms)
- GPU電源消費量
- ファン速度(CPU、ケースファンなど)
これらの情報をどのように表示するかをカスタマイズするのが、RTSSのOverlay Editorです。
OSDの表示位置、サイズ、色設定
これらの基本的な設定は、前述のプロファイル設定で調整できます。
- 位置: プロファイル設定の「位置」で、画面上の9つのグリッドから選択します。
- ズーム: プロファイル設定の「ズーム」で、OSD全体のサイズを調整します。
- パレット: プロファイル設定の「パレット」で、OSDの表示色を選択します。ただし、Overlay Editorで個別に色を設定した場合はそちらが優先されます。
Overlay Editorの詳細解説
OSDの表示内容、レイアウト、フォント、色、表示フォーマットなどを細かくカスタマイズするための強力なツールがOverlay Editorです。
Overlay Editorの起動方法:
RTSSメインウィンドウで、設定したいアプリケーションプロファイルを選択します。設定パネルの「オン・スクリーン・ディスプレイ サポート」セクションにある「レイアウト」の横にある「その他」ボタンをクリックし、表示されるメニューから「オーバーレイ エディター」を選択します。
Overlay Editorの画面構成:
Overlay Editorは独立したウィンドウで表示されます。主な構成要素は以下の通りです。
- プレビューエリア: ウィンドウの左側に表示されます。ここでOSDの実際の表示イメージを確認できます。背景色やグリッド線の表示/非表示を切り替えられます。
- レイヤーリスト: ウィンドウの中央上部に表示されます。OSDを構成する個々の表示要素(テキスト、グラフ、画像など)が「レイヤー」としてリスト表示されます。表示順や有効/無効を管理できます。
- プロパティパネル: ウィンドウの中央下部に表示されます。選択中のレイヤーの詳細設定(表示内容、フォント、色、サイズ、位置など)を行います。
- ツールバー: ウィンドウ上部に配置されています。レイヤーの追加、削除、コピー、ペースト、並べ替え、保存、読み込みなどの機能があります。
- データソースパネル: ウィンドウ右側に表示されます。MSI AfterburnerなどからRTSSに送られてきているセンサーデータ(統計情報)のリストが表示されます。このリストからセンサーを選んで、OSDに表示するテキストやグラフに紐付けます。
レイヤーの概念:
Overlay Editorでは、OSDは複数の「レイヤー」を重ね合わせることで構成されます。それぞれのレイヤーは独立した要素であり、テキスト、グラフ、画像など、様々なタイプの情報を表示できます。
- テキスト レイヤー: 最も基本的なレイヤーです。静的なテキストや、センサーデータの値を文字列として表示できます。
- グラフ レイヤー: センサーデータの履歴を折れ線グラフとして表示できます。CPU/GPU使用率や温度などの変動を視覚的に把握するのに便利です。
- 画像 レイヤー: 特定の画像をOSDとして表示できます。ロゴマークなどを表示するのに使えます。
センサーデータの表示方法(MSI Afterburnerからの連携):
MSI Afterburnerで「オンスクリーンディスプレイに表示」にチェックを入れたセンサーデータは、Overlay Editorのデータソースパネルにリスト表示されます。このデータを使って、テキストレイヤーやグラフレイヤーを作成します。
- テキストレイヤーでセンサーデータを表示:
- ツールバーの「レイヤーを追加」ボタンをクリックし、「テキスト レイヤー」を選択します。
- 追加されたテキストレイヤーをレイヤーリストで選択します。
- プロパティパネルの「内容」セクションにある入力欄に、表示したいテキストを入力します。静的なテキスト(例: “FPS:”)とセンサーデータの値を組み合わせられます。
- センサーデータの値を挿入するには、データソースパネルから表示したいセンサー項目(例: 「GPU 使用率」)をドラッグ&ドロップするか、データソース項目の横に表示される
{}のようなコードをコピーして入力欄に貼り付けます。例えば、GPU使用率 {gpu_usage}%と入力すると、「GPU使用率 99%」のように表示されます。 - 入力欄の下にあるチェックボックスで、センサー名の表示(例: “GPU 使用率”)、値の表示(例: “99”)、単位の表示(例: “%”)、グラフの表示(テキストレイヤーでも簡易的なグラフ表示が可能)などを細かくオン/オフできます。
- プロパティパネルの「フォント」セクションでフォント、サイズ、太さ、斜体、影などを設定できます。
- 「色」セクションでテキストの色を設定できます。
- 「位置」セクションで、レイヤーの絶対的な位置(ピクセル単位)や、他のレイヤーとの相対的な位置を調整できます。グリッド表示を参考にすると配置しやすいです。
- グラフレイヤーでセンサーデータを表示:
- ツールバーの「レイヤーを追加」ボタンをクリックし、「グラフ レイヤー」を選択します。
- 追加されたグラフレイヤーをレイヤーリストで選択します。
- プロパティパネルの「内容」セクションで、このグラフに表示するセンサーデータを設定します。データソースパネルから表示したいセンサー項目をドラッグ&ドロップするか、リストに追加します。複数のセンサーを同じグラフに表示することも可能です。
- グラフの表示範囲(最小値、最大値)、更新頻度、グラフの色などを設定できます。
- 「サイズ」セクションでグラフの表示サイズを設定します。
- 「位置」セクションでグラフの位置を設定します。
表示項目の追加、削除、並べ替え:
- 追加: ツールバーの「レイヤーを追加」ボタンから行います。
- 削除: レイヤーリストで削除したいレイヤーを選択し、ツールバーの「レイヤーを削除」ボタンをクリックします。
- 並べ替え: レイヤーリストでレイヤーを選択し、ツールバーの上下矢印ボタンで表示順を変更できます。リストの上にあるレイヤーほど前面に表示されます。
表示フォーマットのカスタマイズ:
センサーデータの表示形式は細かくカスタマイズできます。
- 値の表示: 小数点以下の桁数、単位の表示/非表示などを設定できます。
- グラフの表示: グラフの色、線の太さ、塗りつぶしの有無、表示範囲などを設定できます。
- 条件付き表示: Overlay Editorの非常に強力な機能の一つとして、特定の条件に基づいて表示内容や色を変える設定があります。例えば、「GPU温度が80度を超えたら、GPU温度のテキストの色を赤くする」といった設定が可能です。これは、プロパティパネルの「内容」セクションにあるセンサー項目の設定で、「条件付き書式」や「警告」「危険」といった項目を設定することで実現します。
レイアウトの保存と読み込み:
作成したOSDレイアウトは、プロファイル設定の「レイアウト」で「その他」ボタンをクリックし、「レイアウトを保存」または「レイアウトを読み込み」を選択することで、ファイルとして保存・読み込みできます。これにより、異なるゲームプロファイル間で同じレイアウトを使い回したり、他のユーザーとレイアウト設定を共有したりすることが可能です。
Overlay Editorは非常に多機能であり、最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、慣れれば自由自在にOSDをカスタマイズできます。自分にとって必要な情報だけを見やすく配置することで、ゲーム中のパフォーマンス監視が格段に効率的になります。
6. フレームレート制限機能の詳細
RTSSのフレームレート制限機能は、単にFPSに上限を設けるだけでなく、いくつかの高度な側面を持っています。その目的と仕組みを理解することで、より効果的に活用できます。
なぜフレームレート制限が必要なのか?
- GPU負荷の軽減: ディスプレイのリフレッシュレートを超える高いフレームレートでゲームを実行しても、ディスプレイに表示されるフレーム数はリフレッシュレートが上限となります。上限を超えて生成されたフレームは無駄になり、GPUに不要な負荷をかけます。RTSSでフレームレートを制限することで、GPUの負荷を抑え、消費電力、発熱、ファン騒音を低減できます。
- ティアリングの抑制: VSync(垂直同期)を使用しない場合、ディスプレイのリフレッシュ中に新しいフレームの描画が開始されると、画面が上下にずれる「ティアリング」が発生します。VSyncはティアリングを防ぎますが、入力遅延を増大させるという欠点があります。RTSSのフレームレート制限をディスプレイのリフレッシュレート以下(例えば、144Hzディスプレイなら143FPSや142FPS)に設定することで、ティアリングを効果的に抑制しつつ、VSyncよりも入力遅延を抑えることができる場合があります。特にG-SyncやFreeSyncのような可変リフレッシュレート技術を使用していない環境で有効です。
- 入力遅延の安定化/軽減: フレームレートが不安定に変動したり、ディスプレイのリフレッシュレートを大きく超えたりすると、入力遅延が増大したり不安定になったりすることがあります。RTSSでフレームレートを安定した値に制限することで、入力遅延を改善・安定化できる場合があります。特に、VSyncをオフにした状態でフレームレートを制限する手法は、低遅延を重視する競技性の高いゲームで利用されることがあります(ただし、トレードオフとしてティアリングが発生する可能性は残ります)。
- フレームタイムの安定: フレームレートが制限されることで、フレーム間の描画時間(フレームタイム)もより安定しやすくなります。フレームタイムの変動が少ないほど、画面のカクつきが少なく、滑らかな映像になります。
グローバル制限とアプリケーション別制限の使い分け
- グローバル制限: ほとんどのゲームで共通して適用したい上限値を設定する場合に使用します。例えば、お使いのディスプレイが144Hzなら、Global設定で144または143に設定しておけば、特に設定しないゲームでもティアリング抑制や負荷軽減の効果が得られます。
- アプリケーション別制限: 特定のゲームに対して異なる制限値を設定したい場合に使用します。例えば、非常に軽いゲームでは240FPSまで出したい、逆に非常に重いゲームでは安定性を重視して60FPSに制限したい、といった場合に便利です。また、ゲームによってはRTSSによる制限がうまく機能しない場合や、逆に問題を引き起こす場合があるため、特定のゲームでのみ制限を無効にしたい場合にもプロファイル設定を利用します。
適切な制限値の選び方
- ディスプレイのリフレッシュレートを考慮: ティアリング抑制を重視する場合、ディスプレイのリフレッシュレートから1~数フレーム低い値に制限するのが一般的です(例: 144Hzなら143 or 142)。これにより、垂直同期を有効にした場合に近いティアリング抑制効果が得られますが、VSyncの入力遅延は回避できます。リフレッシュレートと全く同じ値(例: 144Hzなら144)に制限すると、VSyncが有効になった場合と同様に軽い入力遅延が発生することがあります。
- 安定性を重視: ゲームが不安定な場合、フレームレートの上限を下げることで、最低フレームレートの向上やフレームタイムの安定化につながることがあります。自分が快適と感じる最低限のFPSを維持できる範囲で上限を設定します。
- GPU負荷を考慮: GPU使用率が常に100%に近い状態が続くと、GPUの温度が上昇し、サーマルスロットリング(性能低下)を引き起こす可能性があります。上限を設定してGPU使用率に余裕を持たせることで、安定したパフォーマンスを維持しやすくなります。GPU使用率が常に70~80%程度になるように制限値を調整するのも一つの方法です。
- ゲームの種類: 競技性の高いFPSゲームでは、可能な限り入力遅延を減らしたい場合が多いです。この場合、VSyncをオフにして、フレームレートをリフレッシュレートより十分に高くし、RTSSでその上限を制限する、あるいはRTSSによる制限も行わない(ただしティアリングは発生しやすくなる)といった選択肢があります。一方で、シングルプレイのRPGなどでは、多少の入力遅延よりも滑らかな映像や安定性を重視するため、VSyncを有効にしたり、RTSSでリフレッシュレート以下の値に制限したりすることが一般的です。
様々な設定値を試してみて、OSDでフレームレートやフレームタイム、そしてゲームの応答性を確認しながら、自分の環境とプレイスタイルに最適な値を見つけることが重要です。
フレームタイムの重要性
フレームレート(FPS)は1秒間に描画されるフレーム数を示しますが、フレームタイム(ms)は1フレームを描画するのにかかった時間を示します。例えば60FPSは平均して約16.6msのフレームタイムに相当しますが、実際のゲームではフレームごとに描画負荷が変動するため、フレームタイムも常に一定ではありません。
OSDでフレームタイムのグラフを有効にすると、時間の経過とともにフレームタイムがどのように変動しているかが視覚的に分かります。
- 安定したフレームタイム: グラフの線が平坦に近いほど、フレームタイムが安定しており、滑らかな映像が得られています。
- 不安定なフレームタイム: グラフの線が大きく上下に変動している場合、フレームタイムが不安定であり、ゲーム画面がカクついたり、滑らかさが失われたりしている可能性があります。例え平均FPSが高くても、フレームタイムが不安定だと快適性は損なわれます。
RTSSのフレームレート制限は、平均FPSだけでなく、フレームタイムの安定化にも寄与することがあります。ゲームがカクつく場合、単にFPSを見るだけでなく、フレームタイムのグラフを確認し、その変動が大きいかどうかをチェックすることが、原因特定や設定改善のヒントになります。
Scanline Syncについて
Scanline Syncは、RTSSのフレームレート制限機能と関連する、より高度な同期技術です。その名の通り、ディスプレイの走査線(スキャンライン)とOSDの描画タイミングを同期させることで、ティアリングを避けつつ、VSyncよりも入力遅延を抑えることを目指した機能です。
- 仕組み: ディスプレイは上から順に走査線を更新して画面を描画します。Scanline Syncは、ゲームのフレーム描画が特定の走査線(指定した数値)に達した時点で完了するように調整します。これにより、新しいフレームの描画がディスプレイの走査線と同期し、ティアリングが発生しにくくなります。
- メリット: VSyncをオフにした状態に近い低遅延を維持しつつ、ティアリングを効果的に抑制できる可能性があります。特に、フレームレートがリフレッシュレートを大きく超えるような場合に、VSyncの入力遅延増大を防ぎたい場合に有効です。
- デメリット: 設定が難しく、ゲームや環境によってはうまく機能しなかったり、かえってカクつきが発生したりする場合があります。Scanline Syncの設定値(スキャンライン番号)は、ゲームのフレームレートとディスプレイのリフレッシュレート、そして表示される走査線数との関係によって調整が必要であり、最適な値を見つけるのが難しいです。また、フレームレートが大幅に変動する場合、安定した効果が得られないこともあります。
Scanline Syncは、VSync、G-Sync、FreeSyncといった他の同期技術とは異なるアプローチを取ります。多くのユーザーはG-Sync/FreeSyncや、それらが利用できない場合のVSync+RTSSフレームレート制限で十分な結果が得られるため、Scanline Syncは特定の状況で試す上級者向けの機能と言えます。通常は「Off」で問題ありません。
7. その他の詳細設定
RTSSには、上記以外にもいくつかの詳細設定やモジュール機能が搭載されています。
【互換性】タブ
- Compatibility properties (互換性プロパティ): 特定のゲームでOSDが正しく表示されない、ゲームがクラッシュするなど、互換性の問題が発生した場合に調整する項目です。
- Custom Direct3D support: General設定やプロファイル設定にもありましたが、ここでさらに細かくAPIバージョン(D3D9, D3D10, D3D11, D3D12, OpenGL, Vulkanなど)ごとに強制的に特定のサポートモード(例えば、Compatibility Level、Hooking Modeなど)を適用できます。
- OSD rendering mode: OSDの描画方法を変更できます。通常は「Vector 2D」や「Raster 3D」などのデフォルト設定で問題ありませんが、特定のゲームでOSD表示に問題がある場合に他のモードを試すことがあります。
これらの項目は、問題発生時のトラブルシューティング以外では基本的に触る必要はありません。
【ベンチマーク】タブ
- Benchmark module: ゲーム中のフレームレート統計を記録するための機能です。
- 開始/終了 ホットキー: ベンチマーク記録を開始/停止するためのショートカットキーを設定します。
- 統計情報のファイル名/フォルダ: 記録されたデータが保存されるファイル名とフォルダを設定します。
- 遅延: ホットキーを押してから記録が開始されるまでの遅延時間を設定します。
ゲーム内のベンチマーク機能がない場合や、特定の区間を測定したい場合に便利です。記録されたデータはテキストファイルとして保存され、平均FPS、最低FPS、最高FPSなどの統計情報を後から確認できます。
【スクリーンショット】タブ
- Screenshot module: ゲーム画面のスクリーンショットを撮影するための機能です。
- ホットキー: スクリーンショット撮影のショートカットキーを設定します。
- ファイル形式: 保存する画像ファイルの形式(BMP, PNG, JPG)を選択します。PNGがロスレスで最も一般的です。
- ファイル名/フォルダ: 保存されるファイル名とフォルダを設定します。
- キャプチャする画面: メインモニターのみ、全てのモニターなどを選択できます。
Windows標準機能やSteamなどのオーバーレイ機能でもスクリーンショットは撮影できますが、RTSSでもこの機能を利用できます。
【ビデオキャプチャ】タブ
- Video capture module: ゲーム画面をビデオとして録画するための機能です。
- ホットキー: 録画開始/停止のショートカットキーを設定します。
- コンテナ形式: 出力されるビデオファイルの形式(AVI, MP4など)を選択します。
- ビデオ形式: 録画に使用するコーデックや品質を設定します。
- フレームレート: 録画するフレームレートを設定します。
- オーディオ形式: オーディオの設定を行います。
このビデオキャプチャ機能は、Obs Studioなどの専用録画ソフトウェアに比べると機能や設定項目が限定的であり、パフォーマンスへの影響も大きいため、あまり積極的に利用されることはありません。特別な理由がない限り、より高機能で安定した録画ソフトを使用することをおすすめします。
【プラグイン】タブ
- Plugins: RTSSの機能を拡張するためのプラグインを管理します。デフォルトではあまり多くのプラグインは含まれていませんが、カスタムプラグインを導入することで、特定のハードウェア情報の表示を強化したり、新しい機能を追加したりできる可能性があります。一般的な使用では触れる機会は少ないでしょう。
これらの追加モジュールは、RTSSのコア機能(OSDとフレームレート制限)に比べると利用頻度は低いかもしれませんが、必要に応じて活用できます。
8. よくある問題とトラブルシューティング
RTSSは強力なツールですが、PC環境やゲームの種類によっては予期せぬ問題が発生することもあります。ここでは、よくある問題とその解決策をいくつか紹介します。
OSDが表示されない
最も一般的な問題の一つです。以下の点を確認してください。
- RTSSが起動しているか?: タスクトレイにRTSSのアイコンが表示されているか確認してください。表示されていなければRTSSを起動してください。
- OSDサポートが有効か?: Global設定またはアプリケーションプロファイル設定の「オン・スクリーン・ディスプレイ サポートを表示」にチェックが入っているか確認してください。
- アプリケーションが検出されているか?: RTSSのアプリケーションリストにゲームの実行ファイル名が表示されているか確認してください。表示されていない場合は、RTSSがそのアプリケーションを検出できていない可能性があります。
- アプリケーション検出レベル: Global設定またはプロファイル設定で「アプリケーション検出レベル」が「High」になっているか確認してください。
- ゲームの起動タイミング: RTSSを起動してからゲームを起動してみてください。
- ゲームが特殊なAPIを使用している: カスタムDirect3DサポートやOSD rendering modeの設定を変更する必要があるかもしれません。これは高度なトラブルシューティングなので、検索などで具体的なゲーム名とRTSSの互換性情報を調べてみるのが良いでしょう。
- ステルスモードが有効か?: ステルスモードは互換性の問題を解決する場合もありますが、逆に問題を発生させることもあります。ステルスモードを有効にしている場合は一度無効にしてみてください。
- アンチチートソフトウェアとの競合: 一部のオンラインゲームで使用されているアンチチートソフトウェアは、RTSSを不正ツールと誤検知し、OSDの表示をブロックしたり、ゲームの起動を妨げたり、最悪の場合アカウントBANの原因となることがあります。
- アンチチートのホワイトリスト: アンチチートソフトウェアの設定で、RTSSの実行ファイル(RivaTunerStatisticsServer.exe)をホワイトリストや例外リストに追加できないか確認してください。
- ステルスモード: 前述のように、ステルスモードが有効な場合があります。
- OSDの無効化: 問題が発生するゲームでは、RTSSのプロファイル設定でそのゲームのOSDサポートを無効にするのが最も安全な対策です。ゲームをプレイする際にOSD表示を諦めることになりますが、BANのリスクを避けることができます。
- ゲーム側の設定: ゲームによっては、フルスクリーンモードでのみOSDが正しく表示される、あるいはウィンドウモードでのみ表示されるといった制限がある場合があります。
- MSI Afterburnerとの連携: OSDでGPUやCPU情報が表示されない場合は、MSI Afterburnerが起動しており、RTSSと正しく連携しているか確認してください。
- Afterburnerのモニタリング設定: Afterburnerの設定で、表示したいセンサー項目の「オンスクリーンディスプレイに表示」にチェックが入っているか確認してください。
- AfterburnerのShared Memory: Afterburnerの設定の「モニタリング」タブに「RivaTuner Statistics Serverとの共有メモリ連携を有効にする」のような項目があれば、それにチェックが入っているか確認してください。
- AfterburnerとRTSSのバージョン: 互換性のために、両方のソフトウェアを最新版にアップデートしてみてください。
フレームレート制限が効かない
- 制限値が0になっていないか?: Global設定またはアプリケーションプロファイル設定の「フレームレート制限」が0以外になっているか確認してください。
- プロファイルが正しく適用されているか?: アプリケーションリストで、設定したいゲームのプロファイルが選択されているか、あるいはGlobal設定が適用される状態になっているか確認してください。
- 他のフレームレート制限機能との競合:
- ゲーム内の設定: ゲーム自体の設定でフレームレート制限やVSyncが有効になっている場合、RTSSの制限よりも優先されることがあります。ゲーム内の制限を無効にして、RTSSのみで制限をかけてみてください。
- グラフィックドライバーの設定: NVIDIA Control PanelやAMD Radeon Softwareでグローバルなフレームレート制限やVSync設定が有効になっている場合も競合の原因となります。ドライバー側の設定を「アプリケーション設定を使用」などにして、RTSSに制御を任せるようにしてみてください。
- ゲームとの互換性: 一部のゲームでは、RTSSによるフレームレート注入がうまく機能しない場合があります。その場合は、ドライバー側の制限機能を使うか、ゲーム内の制限機能を使うか、あるいはOSD表示のみに留めるなどの対応が必要です。
ゲームがクラッシュする、起動しない
これは最も深刻な問題です。RTSSが原因でゲームが不安定になることがあります。
- 注入遅延: 前述の「注入遅延」設定を長くしてみてください。ゲームの初期化処理が完了してからRTSSが機能を注入することで、問題が回避されることがあります。
- カスタム Direct3D サポート: この設定を変更することで互換性が改善される場合があります。ただし、無闇に変更するとかえって問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。
- ステルスモード: ステルスモードが有効な場合に試してみてください。
- OSDサポートの無効化: 問題が発生するゲームのプロファイルで、OSDサポートを無効にしてみてください。OSDの描画処理がゲームの描画処理と干渉している可能性があります。
- RTSSの無効化: RTSSを完全に終了させた状態でゲームが問題なく起動・動作するか確認してください。RTSSが原因であることが確実であれば、そのゲームではRTSSの使用を控えるか、特定の互換性設定を見つける必要があります。
- アンチチートソフトウェアとの競合: 最も可能性の高い原因の一つです。前述のように、アンチチートによってRTSSがブロックされている可能性があります。
MSI Afterburnerの情報が表示されない
- Afterburnerが起動しているか?: MSI Afterburnerが起動しており、センサーデータが正しく取得できているか確認してください。Afterburnerのメインウィンドウで各種グラフが動いているか確認できます。
- Afterburnerのモニタリング設定: Afterburnerの設定(歯車アイコン)の「モニタリング」タブで、OSDに表示したいセンサー項目の「オンスクリーンディスプレイに表示」にチェックが入っているか確認してください。
- AfterburnerとRTSSの連携: Afterburnerの設定の「モニタリング」タブにある「RivaTuner Statistics Serverとの共有メモリ連携を有効にする」のような項目にチェックが入っているか確認してください。
- Overlay Editorでの設定: RTSSのOverlay Editorで、表示したいセンサーデータがテキストレイヤーやグラフレイヤーに正しく紐付けられているか確認してください。データソースリストにセンサーデータ自体が表示されていない場合は、Afterburnerとの連携に問題がある可能性が高いです。
これらのトラブルシューティング手順を試しても問題が解決しない場合は、RTSSとAfterburnerの再インストール、グラフィックドライバーのクリーンインストール、あるいは特定のゲームとRTSSの既知の問題に関する情報をインターネットで検索してみることをおすすめします。
9. 応用的な使い方
複数のモニターでのOSD表示
RTSSは、複数のモニターを使用している環境でもOSDを表示できます。Overlay Editorの「位置」設定や、プロファイル設定の「位置」で、OSDを表示したいモニターの端(左上、右上など)を指定することで、目的のモニターにOSDを表示できます。ただし、ゲームが特定のモニターでフルスクリーン表示されている場合に限定されるなど、環境やゲームによっては制約がある場合もあります。
異なるOSDプロファイルの切り替え
Overlay Editorで複数のレイアウト(OSD表示内容と配置のセット)を作成しておき、状況に応じて切り替えることができます。例えば、「詳細な情報が表示されるゲーミング用レイアウト」と「最低限のFPSだけが表示される競技用レイアウト」などです。
プロファイル設定の「レイアウト」で、使用するレイアウトファイルを指定できます。また、RTSS本体には直接的なレイアウト切り替えホットキーはありませんが、Overlay Editorで作成したレイヤーの表示/非表示をショートカットキーに割り当てる(プロパティのVisibilityセクション)などして、簡易的な表示内容の切り替えを行うことは可能です。
キーボードショートカットの活用
RTSSはいくつかの機能に対してホットキー(ショートカットキー)を設定できます。
- オーバーレイ エディター起動ホットキー
- ベンチマーク開始/終了ホットキー
- スクリーンショット撮影ホットキー
- (ビデオキャプチャ開始/停止ホットキー)
これらのホットキーを割り当てておくことで、RTSSのメインウィンドウを開くことなく、ゲーム中に必要な機能(特にベンチマークやスクリーンショット)をすぐに実行できます。
10. まとめ
RivaTuner Statistics Server (RTSS) は、単なるフレームレート表示ツールではなく、ゲームのパフォーマンスを詳細に監視し、フレームレートを制御することで、より快適で安定したゲーミング環境を構築するための非常に強力で多機能なユーティリティです。MSI Afterburnerなどのハードウェア監視ツールと連携することで、その真価を発揮します。
この記事では、RTSSの基本的な設定から、アプリケーションプロファイル、そしてOSDカスタマイズの要であるOverlay Editorの詳細、フレームレート制限機能の目的と仕組み、そしてトラブルシューティングまで、幅広く解説しました。
RTSSの豊富な設定項目を理解し、適切に設定することで、以下のメリットが得られます。
- ゲーム中のパフォーマンス状況をリアルタイムで正確に把握できる。
- PCのボトルネックや問題を特定しやすくなる。
- フレームレートを制限することで、GPU負荷、消費電力、発熱、騒音を低減できる。
- ティアリングや入力遅延を改善し、より滑らかな映像や応答性を実現できる。
- ゲームタイトルごとに最適な設定を保存し、手間なく適用できる。
RTSSの設定は最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、この記事を参考に一つ一つの項目を理解し、実際に設定を試してみてください。あなたのPC環境が、より快適でパワフルなものになるはずです。RTSSをマスターして、最高のゲーミング体験を追求しましょう!