Schedule 1(スケジュール1) 日本語訳と記入例:個人所得税を正しく申告するために
アメリカ合衆国の個人所得税申告は複雑で、様々なフォームやスケジュールが存在します。その中でも、追加収入や調整項目を申告する際に使用される重要なフォームが「Schedule 1 (Form 1040) – Additional Income and Adjustments to Income(スケジュール1、フォーム1040:追加収入と所得調整)」です。
このSchedule 1は、W-2フォームに記載されている給与所得以外の収入、および総所得を調整するための控除項目を申告するために使用されます。Schedule 1を正しく理解し、正確に記入することは、過払いによる還付の遅延や、過少申告によるペナルティを避けるために不可欠です。
本記事では、Schedule 1の全体像、各項目の詳細な解説、記入例、そして申告時の注意点について、わかりやすく丁寧に解説していきます。これにより、読者の皆様がSchedule 1を自信を持って記入し、適正な個人所得税申告を行うことができるようサポートすることを目的としています。
1. Schedule 1 (フォーム1040) とは何か?
Schedule 1は、フォーム1040(米国個人所得税申告書)に付随する補助的なフォームであり、以下の2つの主要なセクションで構成されています。
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Part I – Additional Income(パートI – 追加収入): W-2フォームに記載される給与所得以外の収入源を申告します。これには、自営業収入、家賃収入、配当金、利子所得、失業手当、ギャンブル収入などが含まれます。
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Part II – Adjustments to Income(パートII – 所得調整): 総所得(Gross Income)から差し引くことができる控除項目を申告します。これにより、課税対象となる所得を減らし、結果として税金を減らすことができます。これには、IRAへの拠出、学生ローンの利子支払い、自営業者の健康保険料などが含まれます。
なぜSchedule 1が必要なのか?
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収入の正確な申告: W-2フォームに記載される給与所得以外の収入を正確に申告することで、税務当局(IRS)が収入を正確に把握し、課税額を正しく算出できるようになります。
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所得控除の活用: Schedule 1を通じて、さまざまな所得控除を申請することで、課税対象となる所得を減らし、結果として税金を節約することができます。
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適正な税額の算出: 収入と控除を正確に申告することで、過払いによる還付の遅延や、過少申告によるペナルティを避けることができます。
2. Schedule 1 (フォーム1040) の各項目詳細解説
ここでは、Schedule 1の各項目について、具体的な例を交えながら詳細に解説していきます。
Part I – Additional Income(パートI – 追加収入)
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Line 1: Taxable refunds, credits, or offsets of state and local income taxes(州および地方所得税の還付、クレジット、または相殺の課税対象額)
- 前年度に州または地方の所得税を支払い、その一部が還付された場合、その還付額が課税対象となる場合があります。これは、前年度に連邦所得税の申告で州および地方税の控除を受けた場合に該当します。
- 記入例: 例えば、前年度に州所得税を$2,000支払い、$500の還付を受けた場合、その$500が課税対象となる可能性があります。フォーム1040のスケジュールA(項目別控除)で州および地方税を控除している場合は、この還付額を申告する必要があります。
- 注意点: Form 1099-G(政府からの支払い)に還付額が記載されている場合、その金額を使用します。
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Line 2a: Alimony received(受け取った慰謝料)
- 2018年12月31日以前に離婚または別居の判決が下され、慰謝料を受け取っている場合に、その金額を申告します。
- 記入例: 例えば、離婚判決に基づいて年間$12,000の慰謝料を受け取っている場合、その金額を申告します。
- 注意点: 2019年1月1日以降に離婚または別居の判決が下された場合、慰謝料は課税対象ではありません。
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Line 3: Business income or (loss)(事業所得または(損失))
- 自営業、個人事業主、フリーランサーなどの事業から得た所得または損失を申告します。事業所得はSchedule C (Form 1040) で計算されます。
- 記入例: 例えば、フリーランスのウェブデザイナーとして年間$30,000の収入があり、事業関連の経費が$10,000の場合、Schedule Cで$20,000の事業所得を計算し、それをSchedule 1のLine 3に転記します。
- 注意点: 事業所得を申告するには、Schedule Cの記入が必要です。
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Line 4a: Capital gain or (loss)(キャピタルゲインまたは(損失))
- 株式、債券、不動産などの資産を売却して得た利益(キャピタルゲイン)または損失(キャピタルロス)を申告します。キャピタルゲインまたはロスはSchedule D (Form 1040) で計算されます。
- 記入例: 例えば、株式を売却して$5,000のキャピタルゲインがあった場合、Schedule Dでその金額を計算し、それをSchedule 1のLine 4aに転記します。
- 注意点: キャピタルゲインまたはロスを申告するには、Schedule Dの記入が必要です。
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Line 5: Other gains or (losses)(その他の利益または(損失))
- Section 1231資産(事業で使用する不動産や設備など)の売却や、強制収容による利益または損失を申告します。これらの利益または損失はForm 4797で計算されます。
- 記入例: 例えば、事業で使用していた機械を売却して$2,000の利益があった場合、Form 4797でその金額を計算し、それをSchedule 1のLine 5に転記します。
- 注意点: Section 1231資産の売却による利益または損失を申告するには、Form 4797の記入が必要です。
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Line 6: Rental real estate, royalties, partnerships, S corporations, trusts, etc.(賃貸不動産、ロイヤリティ、パートナーシップ、S法人、信託など)
- 賃貸不動産からの収入、ロイヤリティ収入、パートナーシップ、S法人、信託などからの所得を申告します。これらの所得はSchedule E (Form 1040) で計算されます。
- 記入例: 例えば、賃貸不動産から年間$10,000の収入があり、関連経費が$4,000の場合、Schedule Eで$6,000の賃貸所得を計算し、それをSchedule 1のLine 6に転記します。
- 注意点: これらの所得を申告するには、Schedule Eの記入が必要です。
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Line 7: Farm income or (loss)(農業所得または(損失))
- 農業事業から得た所得または損失を申告します。農業所得はSchedule F (Form 1040) で計算されます。
- 記入例: 例えば、農業事業から年間$15,000の収入があり、関連経費が$8,000の場合、Schedule Fで$7,000の農業所得を計算し、それをSchedule 1のLine 7に転記します。
- 注意点: 農業所得を申告するには、Schedule Fの記入が必要です。
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Line 8: Unemployment compensation(失業手当)
- 失業手当として受け取った金額を申告します。失業手当は課税対象です。
- 記入例: 例えば、年間$5,000の失業手当を受け取った場合、その金額を申告します。
- 注意点: Form 1099-G(政府からの支払い)に失業手当の金額が記載されています。
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Line 9: Other income. List type and amount(その他の収入。種類と金額を記載)
- 上記のいずれの項目にも該当しないその他の収入を申告します。これには、宝くじの賞金、ギャンブル収入、陪審員報酬、キャンセルされた債務、バーター取引などが含まれます。
- 記入例: 例えば、宝くじで$1,000の賞金を得た場合、Line 9に「宝くじ賞金 $1,000」と記載し、その金額を申告します。
- 注意点: 各収入の種類と金額を明確に記載する必要があります。
Part II – Adjustments to Income(パートII – 所得調整)
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Line 11: Educator expenses(教育者経費)
- 幼稚園から高校までの教育者が、教室で使用する未払い経費(教材、学用品など)を最大$300まで控除できます。
- 記入例: 例えば、小学校教師が教室で使用する教材を$250自己負担した場合、その金額を控除できます。
- 注意点: 控除を受けるには、少なくとも900時間以上学校で勤務している必要があります。
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Line 12: Certain business expenses of reservists, performing artists, and fee-basis government officials(予備役軍人、演奏家、および手数料ベースの政府関係者の特定の事業経費)
- 特定の条件を満たす予備役軍人、演奏家、および手数料ベースの政府関係者が、事業関連の経費を控除できます。これらの経費はForm 2106で計算されます。
- 記入例: 例えば、予備役軍人が軍事訓練のために移動する際の交通費や宿泊費を控除できます。
- 注意点: 控除を受けるには、Form 2106の記入が必要です。
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Line 13: Health savings account (HSA) deduction(健康貯蓄口座(HSA)控除)
- 健康貯蓄口座(HSA)への拠出金を控除できます。HSAは、高額の免責金額を持つ医療保険プランに加入している人が利用できる貯蓄口座です。
- 記入例: 例えば、年間$3,000をHSAに拠出した場合、その金額を控除できます。
- 注意点: Form 8889に拠出額を記入する必要があります。拠出限度額は年齢や保険プランによって異なります。
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Line 14: Moving expenses for members of the Armed Forces(軍人の転勤費用)
- 現役の軍人が、恒久的な勤務地の変更に伴う転勤費用を控除できます。
- 記入例: 例えば、軍人が新しい基地に転勤する際の交通費や荷物の輸送費を控除できます。
- 注意点: 特定の条件を満たす必要があります。
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Line 15: Deductible part of self-employment tax(自営業税の控除対象部分)
- 自営業者が支払った自営業税(社会保障税とメディケア税)の半分を控除できます。これは、自営業者の税負担を軽減するための措置です。
- 記入例: 例えば、年間$5,000の自営業税を支払った場合、$2,500を控除できます。
- 注意点: Schedule SE (Form 1040) で自営業税を計算する必要があります。
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Line 16: Self-employed SEP, SIMPLE, and qualified plans(自営業者のSEP、SIMPLE、および適格プラン)
- 自営業者がSEP IRA、SIMPLE IRA、またはその他の適格な退職プランに拠出した金額を控除できます。
- 記入例: 例えば、SEP IRAに年間$10,000を拠出した場合、その金額を控除できます。
- 注意点: 拠出限度額はプランの種類によって異なります。
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Line 17: IRA deduction(IRA控除)
- 伝統的IRA(Traditional IRA)への拠出金を控除できます。控除額は、所得やその他の退職プランの加入状況によって異なります。
- 記入例: 例えば、年間$6,500を伝統的IRAに拠出した場合、所得制限を満たしていれば全額控除できます。
- 注意点: 控除額はForm 8606で計算する必要があります。
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Line 18: Student loan interest deduction(学生ローン利子控除)
- 学生ローンの利子支払いを最大$2,500まで控除できます。
- 記入例: 例えば、学生ローンの利子を年間$1,500支払った場合、その金額を控除できます。
- 注意点: 所得制限があります。
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Line 19: Archer MSA deduction(アーチャーMSA控除)
- アーチャー医療貯蓄口座(MSA)への拠出金を控除できます。
- 注意点: アーチャーMSAは、現在ではほとんど利用されていません。HSAの方が一般的です。
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Line 20: Alimony paid(支払った慰謝料)
- 2018年12月31日以前に離婚または別居の判決が下され、慰謝料を支払っている場合に、その金額を控除できます。
- 記入例: 例えば、離婚判決に基づいて年間$12,000の慰謝料を支払っている場合、その金額を控除できます。
- 注意点: 2019年1月1日以降に離婚または別居の判決が下された場合、慰謝料は控除対象ではありません。
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Line 21: Reserved(予約済み)
- この欄は現在使用されていません。
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Line 22: Other adjustments. List type and amount(その他の調整項目。種類と金額を記載)
- 上記のいずれの項目にも該当しないその他の調整項目を申告します。これには、自営業者の健康保険料、介護者費用などが含まれます。
- 記入例: 例えば、自営業者が年間$6,000の健康保険料を支払った場合、Line 22に「自営業者の健康保険料 $6,000」と記載し、その金額を控除できます。
- 注意点: 各調整項目の種類と金額を明確に記載する必要があります。
3. Schedule 1 (フォーム1040) 記入例
以下に、Schedule 1の記入例を示します。
名前: John Doe
社会保障番号: 123-45-6789
Part I – Additional Income
- Line 3: Business income or (loss) (Schedule C) : $20,000
- Line 6: Rental real estate, royalties, partnerships, S corporations, trusts, etc. (Schedule E): $6,000
- Line 8: Unemployment compensation: $0
- Line 9: Other income (Lottery winnings): $1,000
Part I Total: $27,000
Part II – Adjustments to Income
- Line 13: Health savings account (HSA) deduction: $3,000
- Line 15: Deductible part of self-employment tax: $2,500
- Line 17: IRA deduction: $0
- Line 18: Student loan interest deduction: $1,500
- Line 22: Other adjustments (Self-employed health insurance deduction): $6,000
Part II Total: $13,000
Line 26: Combine lines 10 and 25. This is your adjusted gross income (AGI). $27,000 – $13,000 = $14,000
4. Schedule 1 (フォーム1040) 申告時の注意点
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正確な情報の収集: 各項目の金額を正確に把握するために、関連書類(Form 1099、W-2、口座明細書など)を事前に収集しましょう。
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関連フォームの確認: Schedule C、Schedule D、Schedule Eなど、他のフォームとの関連性を理解し、必要なフォームをすべて記入しましょう。
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所得制限の確認: 控除項目によっては、所得制限が設けられている場合があります。自身の所得が制限を超えていないか確認しましょう。
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専門家への相談: 不安な場合は、税理士や会計士などの専門家に相談しましょう。専門家は、あなたの状況に合わせたアドバイスを提供し、正確な申告をサポートしてくれます。
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記録の保管: 申告に使用したすべての書類(Form 1099、W-2、口座明細書など)は、少なくとも3年間は保管しておきましょう。これは、税務調査があった場合に必要となる可能性があります。
5. まとめ
Schedule 1 (フォーム1040) は、追加収入と所得調整を申告するための重要なフォームです。各項目の内容を理解し、正確に記入することで、適正な税額を算出し、過払いによる還付の遅延や、過少申告によるペナルティを避けることができます。本記事が、皆様のSchedule 1の記入をサポートし、より良い税務申告につながることを願っています。
6. よくある質問(FAQ)
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Q: Schedule 1は誰が使用する必要がありますか?
- A: W-2フォームに記載される給与所得以外の収入がある人、または総所得を調整するための控除項目を申請する人が使用する必要があります。
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Q: Schedule 1はいつ提出する必要がありますか?
- A: Form 1040(米国個人所得税申告書)と一緒に、税務申告期限(通常は4月15日)までに提出する必要があります。
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Q: Schedule 1の記入に間違いがあった場合はどうすればよいですか?
- A: Form 1040-X(修正米国個人所得税申告書)を提出して、修正申告を行う必要があります。
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Q: Schedule 1の記入を自分でできますか?
- A: はい、本記事やIRSのガイダンスなどを参考に、ご自身で記入することができます。しかし、複雑な状況や不明な点がある場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをお勧めします。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務アドバイスを提供するものではありません。税務に関する具体的なご相談は、必ず専門家にご相談ください。