今すぐ始めるVMware Workstation!導入から基本操作まで
はじめに:仮想化の世界への扉を開くVMware Workstation
テクノロジーの世界は日々進化しており、新しいソフトウェア、オペレーティングシステム(OS)、開発環境などが次々と登場します。これらの多様な環境を一台の物理的なコンピューター上で手軽に試したり、共存させたりできる技術が「仮想化」です。仮想化は、ハードウェアの上にソフトウェア的に複数の仮想的なコンピューター(仮想マシン)を構築する技術であり、私たちのPCの使い方を大きく変革しました。
その仮想化技術の中でも、デスクトップ環境向けの製品として広く知られているのが、VMware社が提供する「VMware Workstation」です。VMware Workstationを利用すれば、現在お使いのWindowsやLinuxのPC上で、別のWindows、Linux、さらには古いバージョンのOSなど、様々なOSを同時に実行することができます。
本記事では、VMware Workstationに興味はあるけれど、どこから手をつければいいのか分からない、という初心者の方から、基本的な使い方をマスターしたい方までを対象に、VMware Workstationの導入方法から、仮想マシンの作成、ゲストOSのインストール、そして基本的な操作方法や便利な機能までを、約5000語の詳細な説明で徹底解説します。
VMware Workstationを使いこなせるようになれば、以下のような様々なメリットを享受できます。
- 安全な検証環境の構築: 新しいソフトウェアやOSのアップデートをインストールする前に、仮想マシン上で安全に動作確認ができます。物理マシンに影響を与える心配はありません。
- 複数OS環境の同時利用: Windows上でLinuxを動かしたり、あるいは古いバージョンのWindowsが必要なソフトウェアのために共存させたりと、物理的な制約なく複数のOSを切り替えて使用できます。
- 開発・テスト環境の整備: 特定のOSや環境に依存するアプリケーションの開発やテストを、必要な環境をいくつでも用意して効率的に行えます。
- 古いOSやソフトウェアの実行: サポートが終了した古いOSや、最新環境では動作しないレガシーソフトウェアを実行するための環境を維持できます。
- 学習とスキルの向上: 様々なOSやサーバー環境を実際に構築し、操作することで、ITに関する知識やスキルを実践的に学ぶことができます。
本記事を読み進めることで、VMware Workstationの導入から、仮想マシンを自由に操作できるようになるまでをしっかりと理解できるでしょう。さあ、一緒に仮想化の世界への第一歩を踏み出しましょう!
VMware Workstation ProとPlayerの違い
VMware Workstationには、主に「VMware Workstation Pro」と「VMware Workstation Player」の二つの製品があります。これらは同じVMware Workstationという名前を冠していますが、機能やライセンス形態に違いがあります。どちらを選ぶべきかは、利用目的によって異なります。
VMware Workstation Pro
- 対象: 開発者、ITプロフェッショナル、企業ユーザー
- ライセンス: 有償
- 主な機能:
- 仮想マシンの作成、実行、管理: 基本的な機能に加え、高度な設定や管理オプションが豊富です。
- スナップショット: 仮想マシンの状態を任意の時点で保存し、いつでもその状態に戻すことができます。複数のスナップショットを管理する機能も強力です。
- クローン: 既存の仮想マシンを複製することができます。ディスク容量を節約するリンククローンと、完全に独立したフルクローンがあります。
- 仮想ネットワークエディタ: カスタムの仮想ネットワークを作成し、複雑なネットワーク構成をシミュレーションできます。
- チーム機能: 複数の仮想マシンをグループ化して、同時に管理できます。
- リモート接続: VMware vSphereやESXiサーバー上の仮想マシンに接続して操作できます。
- 仮想マシンの暗号化: 仮想マシンファイルを暗号化してセキュリティを強化できます。
- ユニティモード: ゲストOSのウィンドウをホストOSのデスクトップ上に表示させ、シームレスに統合できます。
- 多数の仮想マシンの同時実行: より多くの仮想マシンを同時に実行するための最適化がされています。
- 特徴: 高度な機能が多く、開発、テスト、デモンストレーション、トレーニングなど、プロフェッショナルな用途に適しています。定期的なアップデートとサポートが提供されます。
VMware Workstation Player
- 対象: 個人ユーザー、学生、仮想マシンの実行が主目的のユーザー
- ライセンス: 個人利用および非商用利用は無償です。商用利用の場合は有償ライセンスが必要です。
- 主な機能:
- 既存の仮想マシンの実行: VMware製品(Workstation Pro, Fusion, vSphere/ESXi)や、サードパーティ製(VirtualBoxなど一部形式)で作成された仮想マシンを実行できます。
- 新規仮想マシンの作成: 新しい仮想マシンを作成し、OSをインストールして実行できます。
- VMware Toolsのインストール: ゲストOSのパフォーマンスと操作性を向上させるVMware Toolsをインストールできます。
- USBデバイスの接続: ホストPCに接続したUSBデバイスをゲストOSで使用できます。
- 基本的な設定変更: メモリ、CPU、ハードディスクなどの仮想ハードウェア設定を変更できます。
- Playerでは利用できない主な機能:
- スナップショット機能
- クローン機能
- 仮想ネットワークエディタ
- チーム機能
- リモート接続
- 仮想マシンの暗号化
- ユニティモード
- 多数の仮想マシンの最適化
どちらを選ぶべきか?
- 個人的に、趣味や学習のために、シンプルに一つのOS環境を仮想化して試したい → Workstation Player (無償) がおすすめです。
- 開発環境やテスト環境を複数構築したい、スナップショットを使って様々な状態を保存・復元したい、クローンで効率的に同じ環境を量産したい、複雑なネットワーク構成を組みたい → Workstation Pro (有償) が必要になります。
本記事では、Workstation Proをベースに説明を進めますが、Playerでも共通する基本的な操作や仮想マシンの作成・実行については、Playerユーザーにも役立つ内容となっています。特に断りのない限り、以下の説明はPro版の機能を含みますが、Playerでも可能な操作については併記または補足します。
システム要件の確認
VMware Workstationをインストールして快適に利用するためには、ホストコンピューター(Workstationをインストールする物理PC)が特定のシステム要件を満たしている必要があります。仮想マシンはホストコンピューターのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を消費するため、十分なスペックが必要です。
以下に一般的なシステム要件を示しますが、VMwareの公式サイトで常に最新の情報をご確認ください。
ハードウェア要件
- CPU:
- 64ビット Intel または AMD プロセッサーが必要です。
- Intel Core i3以降、または同等のAMDプロセッサーが推奨されます。
- 仮想化支援機能(Intel VT-xまたはAMD-V)に対応している必要があります。最近のほとんどのCPUはこの機能に対応していますが、古いPCの場合はBIOS設定で有効にする必要がある場合があります。
- メモリ (RAM):
- 最低 4GB が必要ですが、8GB 以上を強く推奨します。
- 複数の仮想マシンを同時に実行したり、メモリを多く消費するOS (Windows 10/11など) をゲストOSとして使用したりする場合、ホストOSに必要なメモリに加えて、ゲストOSに割り当てるメモリの合計が必要になります。例えば、ホストOSに4GB、ゲストOSに4GB割り当てるなら、合計8GB以上のメモリが必要です。
- ストレージ:
- VMware Workstation自体のインストールには、数GBの空き容量が必要です。
- 最も重要なのは、仮想ディスク用の空き容量です。 仮想マシンごとに、インストールするOSの種類や、保存するデータ量に応じて数十GBから数百GBの空き容量が必要になります。例えば、Windows 10をインストールする場合、最低でも60GB以上の仮想ディスク容量を割り当てるのが一般的です。これに加えて、スナップショット機能を利用する場合、さらに多くの空き容量が必要になります。
- パフォーマンスを重視する場合、SSD (Solid State Drive) へのインストールを強く推奨します。仮想マシンの起動や操作、ファイルアクセス速度が劇的に向上します。
- グラフィック:
- DirectX 11 または OpenGL 4.1 に対応したビデオカードが推奨されます。
- ゲストOSでAeroや3Dグラフィックスを使用する場合、ホストPCのグラフィック性能と、ゲストOSに割り当てるビデオメモリが重要になります。VMware Toolsをインストールすることで、グラフィックパフォーマンスが向上します。
ホストOS要件
VMware WorkstationをインストールできるホストOSは限られています。
- Windows: 64ビット版の Windows 8, Windows 10, Windows 11 などがサポートされています。(Homeエディションも多くの場合インストール可能ですが、Pro以上のエディションが推奨される場合があります。最新のサポートOSは公式サイトをご確認ください。)
- Linux: 64ビット版の主要なLinuxディストリビューション(Ubuntu, CentOS/RHEL, Fedoraなど)がサポートされています。
互換性チェック
ご自身のPCが要件を満たしているか不安な場合は、VMwareの公式サイトで詳細な互換性リストや、互換性チェックツールが提供されている場合がありますので、確認してください。特にCPUの仮想化支援機能が有効になっているかは、BIOS/UEFI設定で確認または変更が必要な場合があります。
ダウンロードとインストール
システム要件を満たしていることが確認できたら、VMware Workstationのダウンロードとインストールに進みます。
1. VMware公式サイトからのダウンロード
- ウェブブラウザを開き、「VMware Workstation」で検索するか、直接VMwareの公式サイトにアクセスします。
- Workstation ProまたはWorkstation Playerの製品ページを探します。
- 製品ページ内にダウンロードリンクがありますので、クリックします。通常、「Download Now」や「トライアル版ダウンロード」といったボタンがあります。
- 使用しているホストOS(WindowsまたはLinux)に合ったインストーラーを選択してダウンロードします。
- Windows版は通常、
VMware-workstation-full-xxxx-xxxx.exe
のようなファイル名です。 - Linux版は通常、
VMware-Workstation-xxxx-xxxx.x86_64.bundle
のようなファイル名です。
- Windows版は通常、
- Pro版の場合は、購入後にライセンスキーが発行されます。Playerの商用利用版も同様です。個人・非商用利用のPlayerはライセンスキーは不要です。
2. インストーラーの実行(Windows版の例)
ダウンロードしたEXEファイルを実行します。管理者権限が必要な場合があります。
- セットアップウィザードの開始:
VMware-workstation-full-xxxx-xxxx.exe
ファイルをダブルクリックして実行します。ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログが表示されたら、「はい」をクリックして続行します。 - インストーラーの準備: インストーラーが起動し、初期化処理を行います。
- ようこそ画面: セットアップウィザードのようこそ画面が表示されます。「次へ」をクリックします。
- エンドユーザーライセンス契約: ソフトウェアの利用規約が表示されます。内容を確認し、「使用許諾契約の条項に同意します(I accept the terms in the license agreement)」にチェックを入れて、「次へ」をクリックします。
- インストールの種類の選択:
- 標準 (Typical): 推奨されるオプションです。ほとんどのユーザーはこの選択肢で問題ありません。必要なコンポーネントがデフォルト設定でインストールされます。
- カスタム (Custom): インストール先のフォルダ、インストールするコンポーネント(VMware Workstation Console, VIX APIなど)、仮想ネットワークエディタなどの追加機能を選択したい場合に選びます。通常は「標準」で十分です。
「標準」を選択して「次へ」をクリックします。
- インストール先のフォルダ: (カスタムインストールの場合) インストール先のフォルダを指定します。デフォルトで問題なければそのまま「次へ」をクリックします。
- 製品のアップデート確認: VMware Workstationの起動時に製品のアップデートを確認するかどうかを設定します。チェックを入れておくと、常に最新の状態に保てますが、手動で確認したい場合はチェックを外します。通常はチェックを入れたままで良いでしょう。「次へ」をクリックします。
- VMware Customer Experience Improvement Program (CEIP): VMwareの改善プログラムに参加するかどうかを選択します。製品の品質向上に協力したい場合はチェックを入れたままにします。プライバシーが気になる場合はチェックを外しても構いません。「次へ」をクリックします。
- ショートカット: デスクトップやスタートメニューにショートカットを作成するかどうかを選択します。必要に応じてチェックを入れ、「次へ」をクリックします。
- インストールの準備完了: 設定内容が表示されます。問題なければ「インストール」をクリックします。
- インストール: インストールが開始されます。完了までしばらく待ちます。
- ライセンスキー入力 (Pro版/Player商用版): インストール完了後、または初回起動時にライセンスキーの入力を求められます。購入したライセンスキーを入力します。後で入力することも可能ですが、機能をフルに利用するためにはライセンス認証が必要です。Playerの個人・非商用利用の場合は、この画面はスキップされるか、「スキップ」を選択できます。
- セットアップ完了: インストールが完了しました。「完了」をクリックしてウィザードを閉じます。必要に応じてPCの再起動を求められる場合があります。
3. インストール後の確認
スタートメニューやデスクトップに作成されたショートカットからVMware Workstationを起動してみましょう。メインウィンドウが表示されれば、インストールは成功です。
仮想マシンの作成
VMware Workstationのインストールが完了したら、いよいよ仮想マシンを作成します。仮想マシンは、OSをインストールするための「空のコンピューター」のようなものです。
1. 新規仮想マシン作成ウィザードの起動
VMware Workstationを起動します。
- メインウィンドウが表示されたら、「ホーム」タブにある「新しい仮想マシンの作成」をクリックします。
- または、メニューバーから「ファイル(File)」→「新しい仮想マシン(New Virtual Machine…)」を選択します。
「新規仮想マシン作成ウィザード」が起動します。
2. インストール方法の選択
どの方法でゲストOSをインストールするかを選択します。
- Typical (推奨): 標準的なインストール方法です。ウィザードの質問に答えていくだけで、多くの設定が自動的に行われます。初心者はこちらを選択するのが良いでしょう。
- Custom (Advanced): より詳細な仮想ハードウェア設定(SCSIコントローラの種類、仮想ディスクのフォーマット、ネットワークアダプタの種類など)を行いたい場合に選択します。上級者向けです。
ここでは「Typical (推奨)」を選択して「次へ」をクリックします。
3. ゲストOSインストーラーディスクまたはISOイメージの選択
インストールするOSのインストーラーを指定します。以下の3つの方法があります。
- Installer disc: ホストPCの物理的なCD/DVDドライブにOSのインストールメディアを挿入している場合に選択します。
- Installer disc image file (iso): OSのインストールメディアをISOイメージファイルとして持っている場合に選択します。これが最も一般的で推奨される方法です。「参照(Browse…)」ボタンをクリックして、ISOファイルの場所を指定します。
- I will install the operating system later: 仮想マシンだけを先に作成し、OSのインストールは後で行う場合に選択します。OSのインストールメディアが手元にない場合や、特定の構成を持つ仮想マシンテンプレートを作成したい場合などに利用します。
ここでは、ISOイメージファイルを使用する方法を例に説明します。「Installer disc image file (iso)」を選択し、「参照」ボタンをクリックして、ダウンロードしておいたOSのISOファイルを選択します。
VMware Workstationは、選択したISOファイルを分析し、インストールするOSの種類(例: Windows 10、Ubuntu 64-bitなど)を自動的に検出します。
4. ゲストOSの情報入力 (Easy Install)
VMware Workstationには「Easy Install」という機能があり、対応OSの場合はインストール中の多くの設定(プロダクトキー入力、ユーザーアカウント作成、タイムゾーン設定など)を自動化してくれます。選択したISOがEasy Installに対応している場合、この画面が表示されます。
- Windowsの場合: プロダクトキー、フルネーム、パスワードを入力します。ここで入力した情報に基づいて、OSのインストールが自動的に進みます。
- Linuxの場合: フルネーム、ユーザー名、パスワードを入力します。
Easy Installを利用しない場合(または対応していないOSの場合)は、この画面は表示されず、通常のOSインストール手順に進みます。
情報を入力したら「次へ」をクリックします。
5. 仮想マシンの名前と保存場所
作成する仮想マシンの名前と、仮想マシンファイル(仮想ハードディスク、設定ファイルなど)を保存する場所を指定します。
- Virtual machine name: 仮想マシンを識別するための名前を入力します。デフォルトは選択したOS名ですが、自由に分かりやすい名前(例:
Windows10-Test
,Ubuntu-Dev
)に変更できます。 - Location: 仮想マシンファイルを保存するフォルダを指定します。デフォルトはドキュメントフォルダ内の「Virtual Machines」フォルダなどですが、十分な空き容量のあるストレージ(特にSSD)上の任意の場所に変更できます。「参照」ボタンからフォルダを選択できます。このフォルダには数十GB〜数百GBの空き容量が必要になることに注意してください。
指定したら「次へ」をクリックします。
6. ディスク容量の指定
仮想マシンに割り当てる仮想ハードディスクの容量を指定します。
- Maximum disk size (GB): 仮想ハードディスクの最大容量をGB単位で指定します。インストールするOSやアプリケーション、保存するデータ量を考慮して決定します。Windows 10なら最低60GB、Linuxなら20GB〜40GB程度から始めるのが一般的ですが、用途に合わせて調整してください。後から容量を増やすことも可能ですが、手間がかかるため、ある程度余裕を持たせて設定することをおすすめします。
- Store virtual disk as a single file or split into multiple files: 仮想ハードディスクファイルをどのように保存するかを選択します。
- Store virtual disk as a single file: 仮想ハードディスク全体を一つの大きなファイルとして保存します。パフォーマンスが良い反面、ファイルサイズが大きいため、他のPCへの移動やコピーが大変になる場合があります。
- Split virtual disk into multiple files: 仮想ハードディスクを2GBごとの複数のファイルに分割して保存します。ファイルの移動やコピーは容易になりますが、パフォーマンスは若干低下する可能性があります。ほとんどの場合、「Store virtual disk as a single file」が推奨されます。 FAT32ファイルシステムを使用している古いストレージに保存する場合など、特別な理由がなければ単一ファイルを選択しましょう。(最近のOSは通常NTFSなどを使用しており、大きなファイルを扱えます)
設定したら「次へ」をクリックします。
7. 設定内容の確認と仮想マシンの作成
これまでに設定した内容の要約が表示されます。
- 仮想マシン名
- 保存場所
- OSの種類
- 仮想ハードディスク容量
- メモリ容量(後述の設定で変更可能)
- ネットワークタイプ(後述の設定で変更可能)
内容を確認し、問題なければ「完了(Finish)」をクリックします。
「Customize Hardware…」 ボタンをクリックすると、仮想マシンの作成が完了する前に、メモリ容量、CPUコア数、ネットワークアダプタ、CD/DVDドライブ、USBコントローラなどの仮想ハードウェア設定を細かく変更できます。通常は後から変更できますが、ここでまとめて設定することも可能です。
「完了」をクリックすると、仮想マシンファイルが指定した場所に作成されます。
ゲストOSのインストール
仮想マシンの作成が完了したら、次にその仮想マシンにオペレーティングシステム(ゲストOS)をインストールします。
1. 仮想マシンの起動
作成した仮想マシンを選択し、ツールバーの緑色の再生ボタン(▶ Power on this virtual machine)をクリックするか、メニューから「仮想マシン(VM)」→「パワー(Power)」→「パワーオン(Power On)」を選択して起動します。
2. OSインストーラーの起動
仮想マシンが起動すると、指定したISOイメージファイルまたは物理ディスクから起動処理が始まります。通常の物理PCにOSをインストールするのと同じ画面が表示されます。
- Windowsの場合: 「Press any key to boot from CD or DVD…」のようなメッセージが表示されたら、すぐにキーボードのいずれかのキーを押します。Windowsセットアップが起動します。
- Linuxの場合: ディストリビューションによって異なりますが、インストーラーのブートメニューが表示されることが多いです。通常、「Install [ディストリビューション名]」のような項目を選択してEnterキーを押します。
注意点: 仮想マシンのウィンドウ内でマウスカーソルを操作するには、ウィンドウ内をクリックしてフォーカスを移動させる必要があります。仮想マシンからホストOSにマウスカーソルを戻すには、デフォルトでは Ctrl + Alt
キーを同時に押します。このキーの組み合わせは設定で変更可能です。VMware Toolsをインストールすると、マウスカーソルの行き来がシームレスになります。
3. OSインストール手順
ここからの手順は、物理PCにOSをインストールするのと基本的に同じです。
- 言語、キーボードレイアウト、タイムゾーンの選択
- プロダクトキーの入力(Windowsの場合)
- インストールするOSのエディション選択
- インストール先のディスク選択(仮想ハードディスクが一つだけ表示されるはずです)
- ユーザーアカウント作成(ユーザー名、パスワードの設定)
- ネットワーク設定(DHCPで自動取得されることが多い)
- 各種同意事項や設定
画面の指示に従って進めてください。
Easy Installを利用した場合: OSのインストールはほとんど自動的に行われます。プロダクトキーやユーザー情報入力のステップはスキップされ、ユーザーはインストール完了を待つだけです。インストール完了後、自動的にユーザーアカウントが作成され、デスクトップ画面が表示されます。
Easy Installを利用しない場合: 手動でこれらの項目を設定していく必要があります。仮想ハードディスクのパーティション設定なども、必要であれば手動で行います。(通常は仮想ディスク全体を一つのパーティションとして使用します)
OSのインストールが完了すると、仮想マシンが再起動し、ゲストOSのデスクトップ画面が表示されます。
VMware Toolsのインストール
ゲストOSのインストールが完了したら、VMware Toolsをインストールすることが非常に重要です。 VMware Toolsは、ゲストOSのパフォーマンス、操作性、および機能性を向上させるためのユーティリティ群です。
VMware Toolsの機能とメリット
VMware Toolsをインストールすることで、以下のようなメリットが得られます。
- グラフィックパフォーマンスの向上: ゲストOSの解像度をホストOSのウィンドウサイズに合わせて自動調整したり、高解像度設定を可能にします。また、グラフィック処理のパフォーマンスが向上します。
- マウスカーソルのシームレスな移動: 仮想マシンのウィンドウ内外でのマウスカーソルの移動がスムーズになり、
Ctrl + Alt
キーを押す必要がなくなります。 - ドラッグ&ドロップとコピー&ペースト: ホストOSとゲストOS間でファイルやテキストをドラッグ&ドロップしたり、コピー&ペーストしたりできるようになります。
- 共有フォルダ機能: ホストOS上の特定のフォルダをゲストOSからアクセスできるように設定できます。
- 時刻同期: ゲストOSの時刻をホストOSの時刻と同期させることができます。
- 仮想ハードウェアドライバーの最適化: 仮想ネットワークアダプタや仮想ストレージコントローラなどのドライバーが最適化され、パフォーマンスが向上します。
- シャットダウン、リセット操作の改善: VMware Workstationのパワー操作が、ゲストOSのOSレベルのシャットダウン/再起動として正確に機能するようになります。
VMware Toolsをインストールしないと、仮想マシンは非常に使いにくく、パフォーマンスも低下します。必ずインストールしましょう。
VMware Toolsのインストール手順
VMware Toolsは、ゲストOS上で実行されるソフトウェアです。ゲストOSが起動している状態で以下の手順を行います。
- VMware Workstationのメニューバーから「仮想マシン(VM)」→「VMware Toolsのインストール(Install VMware Tools…)」を選択します。
- この操作により、仮想マシンのCD/DVDドライブにVMware Toolsのインストーラーイメージ(ISOファイル)が仮想的に挿入されます。
- ゲストOS上で操作:
- Windowsの場合: 通常、自動再生機能によってVMware Toolsのインストーラーの実行を促すダイアログが表示されます。「VMware Toolsをインストール」のようなオプションを選択してインストーラーを起動します。自動再生が機能しない場合は、「エクスプローラー」などで仮想CD/DVDドライブを開き、セットアップファイル(
setup.exe
またはsetup64.exe
)を手動で実行します。 - Linuxの場合: ディストリビューションによって手順が異なりますが、一般的には以下のステップです。
- デスクトップ環境の場合、仮想CD/DVDドライブのマウントを促すダイアログが表示されたり、ファイルマネージャーにドライブが表示されます。その中のアーカイブファイル(例:
VMwareTools-x.x.x-xxxx.tar.gz
)をデスクトップなどにコピーし、展開します。 - 展開したフォルダ内でターミナルを開き、インストールスクリプト(
vmware-install.pl
)を管理者権限(sudo
コマンドなど)で実行します。 - インストーラーの質問には、基本的にEnterキーを押してデフォルト設定で進めるのが一般的です。
- デスクトップ環境の場合、仮想CD/DVDドライブのマウントを促すダイアログが表示されたり、ファイルマネージャーにドライブが表示されます。その中のアーカイブファイル(例:
- Windowsの場合: 通常、自動再生機能によってVMware Toolsのインストーラーの実行を促すダイアログが表示されます。「VMware Toolsをインストール」のようなオプションを選択してインストーラーを起動します。自動再生が機能しない場合は、「エクスプローラー」などで仮想CD/DVDドライブを開き、セットアップファイル(
- インストーラーが起動したら、画面の指示に従ってインストールを進めます。特に設定を変更する必要がなければ、「標準(Typical)」または「完全(Complete)」インストールを選択し、インストールを完了させます。
- インストール完了後、通常はゲストOSの再起動を求められます。ゲストOSを再起動することで、VMware Toolsの機能が有効になります。
再起動後、ゲストOSの画面解像度が自動的に調整されたり、マウスカーソルの移動がスムーズになったりするはずです。これでVMware Toolsのインストールは完了です。
仮想マシンの基本操作
仮想マシンの作成とゲストOSのインストールが完了したら、次に基本的な操作方法を覚えましょう。
1. パワー操作
仮想マシンは、物理コンピューターと同じように電源の状態を持ちます。
- パワーオン (Power On): 仮想マシンを起動します。物理PCの電源を入れる操作に相当します。
- パワーオフ (Power Off): 仮想マシンを強制的にシャットダウンします。物理PCの電源ボタンを長押しして強制終了するのに相当します。ゲストOSの状態に関わらずすぐに停止しますが、データが失われる可能性があります。緊急時以外は使用しません。
- シャットダウンゲスト (Shut Down Guest): ゲストOSのシャットダウンコマンドを実行します。ゲストOSが正常にシャットダウン処理を行います。物理PCのシャットダウン操作に相当します。推奨される停止方法です。
- サスペンド (Suspend): 仮想マシンの現在の状態(メモリの内容、実行中のプログラムなど全て)をファイルに保存し、一時停止します。次に起動する際は、保存した状態からすぐに再開できます。物理PCの休止状態(ハイバネーション)に似ています。
- リセット (Reset): 仮想マシンを強制的に再起動します。物理PCのリセットボタンを押す操作に相当します。ゲストOSのシャットダウン処理を行わずに強制的に再起動するため、データが失われる可能性があります。緊急時以外は使用しません。
- 再起動ゲスト (Restart Guest): ゲストOSの再起動コマンドを実行します。ゲストOSが正常に再起動処理を行います。物理PCの再起動操作に相当します。
これらの操作は、VMware Workstationのツールバーのボタンや、「仮想マシン(VM)」メニューから実行できます。
2. 表示モード
仮想マシンの表示方法を切り替えることができます。
- フィットゲスト (Fit Guest Now / Fit Window Now): ゲストOSの画面解像度をVMware Workstationのウィンドウサイズに合わせたり、逆にウィンドウサイズをゲストOSの解像度に合わせたりします。VMware Toolsがインストールされている場合に利用できます。
- フルスクリーンモード (Fullscreen): 仮想マシンの画面をホストPCのディスプレイ全体に表示します。没入感のある操作ができます。
Ctrl + Alt + Enter
でフルスクリーンモードの切り替えができます。 - ユニティモード (Unity – Workstation Proのみ): ゲストOSのアプリケーションウィンドウをホストOSのデスクトップ上に直接表示させ、ホストOSのアプリケーションとゲストOSのアプリケーションをシームレスに混在させて使用できます。ゲストOSのデスクトップ画面自体は表示されなくなります。
Ctrl + Shift + U
でユニティモードの切り替えができます。
表示モードの切り替えは、ツールバーのボタンや、「表示(View)」メニューから行えます。
3. スナップショット機能 (Workstation Proのみ)
スナップショットは、仮想マシンの特定時点の状態(仮想ハードディスクの内容、メモリの内容、設定など全て)を保存する機能です。この機能を使うことで、いつでも保存した状態に仮想マシンを戻すことができます。
- スナップショットの作成 (Take Snapshot): 仮想マシンの現在の状態に名前をつけて保存します。例えば、「OSインストール直後」や「ソフトウェアAインストール前」といった名前をつけておくと便利です。
- 「仮想マシン(VM)」→「スナップショット(Snapshot)」→「スナップショットの作成(Take Snapshot…)」を選択します。
- スナップショットの名前と説明を入力して「OK」をクリックします。
- スナップショットへの復元 (Revert to Snapshot / Go to Snapshot): 保存しておいたスナップショットの状態に仮想マシンを戻します。
- 「仮想マシン(VM)」→「スナップショット(Snapshot)」→「最新のスナップショットに戻る(Revert to Snapshot)」を選択すると、最後に作成したスナップショットの状態に戻ります。
- 複数のスナップショットがある場合は、「仮想マシン(VM)」→「スナップショット(Snapshot)」→「スナップショットマネージャー(Snapshot Manager…)」を開き、戻したいスナップショットを選択して「実行(Go To)」をクリックします。
- スナップショットの削除 (Delete Snapshot): 不要になったスナップショットを削除します。ディスク容量を節約できます。
- 「スナップショットマネージャー」を開き、削除したいスナップショットを選択して「削除(Delete)」をクリックします。
スナップショット機能は、新しいソフトウェアのインストールや設定変更を行う前に状態を保存しておき、問題が発生した場合に簡単に元に戻すといった用途に非常に役立ちます。また、複数のスナップショットを作成して、開発やテストにおける様々な段階を記録することも可能です。
4. ドラッグ&ドロップとコピー&ペースト
VMware Toolsがインストールされていれば、ホストOSとゲストOSの間でファイルをドラッグ&ドロップしたり、テキストをコピー&ペーストしたりできます。特別な操作は不要で、通常のファイル操作やテキスト編集と同じように行えます。
5. USBデバイスの接続/切断
ホストPCに接続したUSBデバイス(USBメモリ、HDD、プリンター、スマートフォンなど)をゲストOSで使用することができます。
- ホストPCにUSBデバイスを接続します。
- VMware Workstationの仮想マシンのウィンドウ下部に、接続されたUSBデバイスが検出されたことを示すメッセージが表示されることがあります。「Connect to guest」のようなリンクをクリックするか、自動的にゲストOSに接続されることがあります。
- または、「仮想マシン(VM)」→「リムーバブルデバイス(Removable Devices)」メニューから、目的のUSBデバイスを選択し、「接続(Connect)」を選択します。
- ゲストOS側でデバイスが認識され、使用できるようになります。ホストOSからは切断されます。
- ゲストOSからUSBデバイスを切断してホストOSに戻したい場合は、同じメニューから対象のデバイスを選択し、「切断(Disconnect)」を選択します。
6. CD/DVDドライブの設定
仮想マシンのCD/DVDドライブは、ホストPCの物理ドライブ、またはISOイメージファイルを割り当てることができます。
- 「仮想マシン(VM)」→「設定(Settings…)」を選択します。
- 「ハードウェア」タブで「CD/DVD (IDE)」または「CD/DVD (SATA)」を選択します。
- 右側の設定項目で、以下のいずれかを選択します。
- Use physical drive: ホストPCの物理CD/DVDドライブを使用します。ドロップダウンリストから使用したいドライブを選択します。
- Use ISO image file: ISOイメージファイルを使用します。「参照(Browse…)」ボタンをクリックしてISOファイルを選択します。OSのインストールなどでよく使用します。
- 「パワーオン時に接続(Connected at power on)」にチェックを入れておくと、仮想マシン起動時に自動的にデバイスが接続されます。
設定後、「OK」をクリックして閉じます。
仮想マシンの設定変更
仮想マシンの作成後でも、仮想ハードウェアや様々な設定を変更することができます。仮想マシンがシャットダウンしている状態で変更するのが一般的ですが、一部の設定は実行中でも変更可能です。
設定を変更するには、VMware Workstationのメインウィンドウで仮想マシンを選択し、ツールバーの「仮想マシン設定の編集(Edit virtual machine settings)」をクリックするか、メニューから「仮想マシン(VM)」→「設定(Settings…)」を選択します。
設定ウィンドウが開いたら、「ハードウェア(Hardware)」タブと「オプション(Options)」タブで様々な設定が行えます。
ハードウェアタブ
仮想マシンに搭載されている仮想ハードウェアの構成を変更できます。
- メモリ (Memory): ゲストOSに割り当てるメモリ容量を変更します。仮想マシンのパフォーマンスに最も影響を与える項目の一つです。ホストOSが必要とするメモリを残しつつ、ゲストOSが快適に動作するのに十分な量を割り当ててください。棒グラフが表示され、推奨される範囲や最大割り当て可能量が視覚的に確認できます。
- プロセッサー (Processors): 仮想マシンに割り当てる仮想CPUコア数と、各CPUに割り当てるコア数を設定します。物理CPUの性能と、ゲストOSの要求に応じて設定します。例えば、物理CPUが4コアなら、ゲストに1コア、2コア、4コアなどを割り当てられます。ゲストOSがマルチコアCPUをサポートしている必要があります。
- ハードディスク (Hard Disk): 仮想ハードディスクの設定を変更します。
- 容量の拡張 (Expand): 仮想ハードディスクの容量を増やすことができます。ただし、増やした容量はゲストOSのディスク管理ツールなどでパーティションを拡張しないと使用できません。容量を減らすことは通常できません。
- ディスクの種類 (SCSI/SATA): 使用するコントローラの種類を選択できます。特別な理由がなければデフォルト設定で問題ありません。
- 仮想ディスクファイルの場所: 仮想ハードディスクファイルが保存されている場所を確認できます。
- CD/DVD (IDE/SATA): 前述の通り、使用するドライブ(物理ドライブまたはISOファイル)を選択します。
- フロッピー (Floppy): 仮想フロッピーディスクドライブの設定です。現在ではほとんど使用されません。
- ネットワークアダプタ (Network Adapter): 仮想マシンのネットワーク接続方法を設定します。最も重要な設定の一つです。詳細は後述します。
- USBコントローラー (USB Controller): 仮想マシンに割り当てるUSBのバージョン(USB 1.1, 2.0, 3.x)を設定します。接続したいUSBデバイスの種類に合わせて選択します。
- サウンドカード (Sound Card): サウンドカードの設定です。デフォルトで有効になっていればゲストOSで音を出すことができます。
- ディスプレイ (Display): ディスプレイ設定です。割り当てるグラフィックメモリ容量や、3Dアクセラレーションを有効にするかなどを設定します。VMware Toolsをインストールすると「Automatically adjust user interface size in the virtual machine」などのオプションが有効になり、解像度調整が容易になります。
- プリンター (Printer): ホストPCに接続されたプリンターをゲストOSから利用できるように設定します。
「追加(Add…)」 ボタンをクリックすると、新しい仮想ハードウェア(ハードディスク、ネットワークアダプタ、CD/DVDドライブなど)を追加できます。
オプションタブ
仮想マシンの動作に関する詳細設定や、VMware Workstation固有の機能に関する設定を行います。
- 全般 (General): 仮想マシンの名前、ゲストOSの種類、バージョンなどを確認・変更できます。
- パワー (Power): 仮想マシンのパワーオン/オフ時の動作などを設定します。
- 共有フォルダ (Shared Folders): ホストOS上のフォルダをゲストOSと共有する設定を行います。これにより、ホストとゲスト間で簡単にファイルをやり取りできます。
- 「Add…」をクリックして、共有したいホストOS上のフォルダを指定し、ゲストOS上でどのようにマウントするかなどを設定します。VMware Toolsがインストールされている必要があります。
- スナップショット (Snapshots – Workstation Proのみ): スナップショットファイルの保存場所などを設定します。
- アクセス制御 (Access Control – Workstation Proのみ): 仮想マシンにパスワードを設定して、不正な操作を防ぎます。
- 暗号化 (Encryption – Workstation Proのみ): 仮想マシンファイルを暗号化してセキュリティを強化します。
- VMware Tools: VMware Toolsに関する詳細設定(スクリプト実行など)を行います。
- オートプロテクト (Autoprotect – Workstation Proのみ): 定期的に自動でスナップショットを作成するように設定できます。
- Unity (Workstation Proのみ): Unityモードに関する設定を行います。
- 共有仮想マシン (Shared VMs – Workstation Proのみ): 作成した仮想マシンを他のユーザーと共有する設定を行います。
- リモートディスプレイ (Remote Display): VNCなどを利用して仮想マシンにリモート接続する設定を行います。
設定変更が完了したら、「OK」をクリックして設定ウィンドウを閉じます。
ネットワーク設定の詳細
仮想マシンのネットワーク設定は、ホストOSとの連携やインターネット接続において非常に重要です。VMware Workstationでは、いくつかの異なるネットワーク接続モードを提供しています。これらのモードは、仮想マシンがどのようにホストPCのネットワークアダプタや仮想ネットワークスイッチに接続されるかを定義します。
設定は、仮想マシンの設定(「仮想マシン」→「設定」)の「ネットワークアダプタ」項目で行います。
主なネットワーク接続モードは以下の通りです。
-
NAT (Network Address Translation)
- 仕組み: 仮想マシンは、ホストOSのネットワークアドレス変換機能(NAT)を利用してインターネットや外部ネットワークに接続します。ゲストOSから見ると、ホストOSがルーターのように振る舞います。ゲストOSには、VMwareが内部的に作成するプライベートネットワーク(デフォルトで
192.168.x.x
のようなセグメント)からIPアドレスが割り当てられます。 - 特徴:
- 最も手軽にインターネットに接続できるモードです。ホストOSがネットワークに接続されていれば、ゲストOSもほとんど設定なしでインターネットに接続できます。
- ゲストOSは外部から直接アクセスされることはありません。ホストOSが壁のような役割を果たします。セキュリティ面で有利な場合があります。
- 外部からゲストOSに特定のポートでアクセスしたい場合は、ポートフォワーディング設定が必要です(VMware Workstationの設定またはゲストOSのファイアウォール設定など)。
- 使い分け: 個人的なインターネット利用、Web閲覧、アップデート、ホストOSを介した外部ネットワークへのアクセスなど、ゲストOSがクライアントとして外部と通信する場合に最適です。
- 仕組み: 仮想マシンは、ホストOSのネットワークアドレス変換機能(NAT)を利用してインターネットや外部ネットワークに接続します。ゲストOSから見ると、ホストOSがルーターのように振る舞います。ゲストOSには、VMwareが内部的に作成するプライベートネットワーク(デフォルトで
-
Bridged (ブリッジ接続)
- 仕組み: 仮想マシンが、ホストOSのネットワークアダプタと同じネットワークセグメントに直接接続されます。仮想マシンは、物理ネットワーク上の他のデバイス(物理PC、ルーター、サーバーなど)と対等な立場で通信できます。ゲストOSは、物理ネットワークのDHCPサーバーからIPアドレスを取得するか、手動でIPアドレスを設定します。
- 特徴:
- 仮想マシンが物理ネットワーク上の一員として振る舞います。同じネットワーク上の他の物理/仮想マシンから直接アクセスできます。
- ホストOSのネットワーク設定にあまり依存しません。
- 物理ネットワークのIPアドレスを消費します。
- 無線LAN環境でゲストOSが固定IPアドレスを設定している場合などに、ホストPCが別のネットワークに移動すると通信できなくなることがあります。
- 使い分け: 仮想マシンをサーバーとして公開したい場合、同じネットワークセグメント上の他の物理/仮想マシンと直接通信したい場合、物理ネットワーク上の一員として振る舞わせたい場合に適しています。
-
Host-only (ホストオンリー接続)
- 仕組み: 仮想マシンは、ホストOSとの間でのみ通信できるプライベートネットワークに接続されます。外部ネットワークやインターネットには接続できません。VMwareが内部的に作成する専用の仮想ネットワークアダプタと仮想スイッチを介して、ホストOSとゲストOS間でのみ通信が行われます。
- 特徴:
- 完全に閉じたプライベートネットワーク環境を構築できます。外部から隔離された安全な環境で作業したい場合に適しています。
- ホストOSとゲストOS間、またはHost-onlyネットワークに接続された複数のゲストOS間で通信できます。
- 外部ネットワークへのアクセスはできません。
- 使い分け: 外部ネットワークから隔離された開発・テスト環境、ホストOSとゲストOS間の安全な通信、複数の仮想マシンを内部ネットワークで連携させる場合などに適しています。
-
Custom (カスタム接続)
- 仕組み: VMware Workstationは内部的に複数の仮想ネットワークスイッチ(VMnet0, VMnet1, VMnet8など)を持っています。NATは通常VMnet8、Host-onlyは通常VMnet1に割り当てられています。Customモードでは、仮想マシンをこれらの既存の仮想ネットワークスイッチ、または仮想ネットワークエディタで作成したカスタムの仮想ネットワークスイッチ(VMnet2〜VMnet7など)に接続することができます。
- 特徴:
- より複雑なネットワーク構成を柔軟に構築できます。
- 複数の仮想マシンを異なる仮想ネットワークスイッチに接続し、ルーター仮想マシンを介して通信させるといった高度な構成が可能です。
- 使い分け: 複数のサブネットを持つ仮想ネットワークを構築したい場合、ルーターやファイアウォールのテストを行いたい場合など、高度なネットワーク構成が必要な場合に利用します。
仮想ネットワークエディタ (Virtual Network Editor – Workstation Proのみ)
VMware Workstation Proには「仮想ネットワークエディタ」というツールが付属しています。これを使うと、VMnet1, VMnet8などの既存の仮想ネットワークの設定を変更したり、新しい仮想ネットワーク(VMnet2〜VMnet7など)を作成・削除したり、それぞれのネットワークのIPアドレス範囲、DHCP設定、NAT設定、ブリッジ設定などを細かくカスタマイズできます。
- メニューバーから「編集(Edit)」→「仮想ネットワークエディタ(Virtual Network Editor…)」を選択して起動します。
- 管理者権限が必要な場合があります。
- 変更を適用するには、サービスを再起動する必要がある場合があります。
ネットワーク設定の選び方まとめ
- インターネット接続だけできれば良い、外部からアクセスされる必要はない: NAT が最も簡単で推奨されます。
- 仮想マシンを物理ネットワーク上の他のPCやデバイスから直接アクセスできるようにしたい、仮想マシンをサーバーとして公開したい: Bridged を選択します。
- 外部ネットワークから完全に隔離された環境を作りたい、ホストPCや他の仮想マシンとの間でだけ通信したい: Host-only を選択します。
- 複数の仮想マシンで複雑なネットワーク構成を組みたい: Custom モードと仮想ネットワークエディタを組み合わせて使用します。
ほとんどの個人利用や一般的な用途では、NATまたはBridgedのどちらかを選択することになるでしょう。
便利な機能(Proに特化したものも含む)
VMware Workstation Proには、Playerにはない便利な機能が多数搭載されています。これらの機能を活用することで、仮想マシンをより効率的かつ柔軟に管理・運用できます。
1. クローン機能 (Clone – Workstation Proのみ)
既存の仮想マシンを複製する機能です。同じ環境を複数用意したい場合に非常に便利です。クローンには2種類あります。
- Linked Clone (リンククローン): 元の仮想マシン(親)とストレージを共有する形でクローンを作成します。クローン作成時のディスク容量は非常に少なく済み、クローン元の仮想マシンを更新すると、リンククローンにも影響があります。複数の仮想マシンで同じOSイメージを共有しつつ、それぞれ異なる設定やデータを保持したい場合に適しています。ただし、親の仮想マシンを削除するとリンククローンは動作しなくなります。
- Full Clone (フルクローン): 元の仮想マシンから完全に独立した複製を作成します。クローン作成時に、元の仮想マシンのディスク内容全てがコピーされるため、ディスク容量を多く消費しますが、クローン元とクローン後に依存関係はありません。作成後は完全に別の仮想マシンとして扱えます。
使い方:
1. クローンしたい仮想マシンを選択します。(シャットダウンまたはサスペンド状態である必要があります)
2. 「仮想マシン(VM)」→「管理(Manage)」→「クローン(Clone…)」を選択します。
3. クローンウィザードが開きますので、クローンの種類(リンククローンまたはフルクローン)や、クローン先の名前、保存場所などを指定して作成します。
2. スナップショットマネージャーの詳細な使い方 (Snapshot Manager – Workstation Proのみ)
前述のスナップショット機能ですが、スナップショットマネージャーを使うと、複数のスナップショットの関係をツリー構造で視覚的に確認し、管理できます。
使い方:
1. スナップショットを管理したい仮想マシンを選択します。
2. 「仮想マシン(VM)」→「スナップショット(Snapshot)」→「スナップショットマネージャー(Snapshot Manager…)」を選択します。
3. ウィンドウには、現在の状態(You Are Here)と、これまでに作成したスナップショットがツリー形式で表示されます。
4. 各スナップショットを選択すると、作成日時や説明が表示されます。
5. 選択したスナップショットに対して、以下の操作が可能です。
* 実行(Go To): 選択したスナップショットの状態に仮想マシンを戻します。注意: 現在の状態は破棄されます。必要であれば、戻る前に現在の状態のスナップショットを作成しておくことを推奨します。
* 新規作成(Take Snapshot): 選択したスナップショットの状態から新しい子スナップショットを作成します。(現在の状態から作成する場合は「You Are Here」を選択した状態で作成します)
* 削除(Delete): 選択したスナップショットを削除します。子スナップショットを持つスナップショットを削除すると、他のスナップショットや仮想マシンの動作に影響を与える可能性があります。削除時には注意が必要です。
* 名前変更(Rename): スナップショットの名前を変更します。
* 説明(Details): スナップショットの説明を編集します。
スナップショットマネージャーを効果的に使うことで、開発やテストの様々な段階を記録したり、失敗してもすぐに元の状態に戻せるようにしたりと、非常に柔軟な環境管理が可能になります。
3. 仮想ネットワークエディタ (Virtual Network Editor – Workstation Proのみ)
前述のネットワーク設定で触れたツールです。カスタムな仮想ネットワーク環境を構築するのに役立ちます。
使い方:
1. 「編集(Edit)」→「仮想ネットワークエディタ(Virtual Network Editor…)」を選択します。
2. 表示されたウィンドウで、既存の仮想ネットワーク(VMnet0, VMnet1, VMnet8など)の設定を確認・変更したり、新しい仮想ネットワーク(VMnet2~VMnet7など)を追加したりできます。
3. 各VMnetに対して、以下の設定が可能です。
* タイプ: Bridged, Host-only, NATから選択します。
* Bridged to: Bridgedの場合、ホストPCのどの物理ネットワークアダプタとブリッジするかを選択します。
* サブネットIP: 仮想ネットワークのIPアドレス範囲(例: 192.168.100.0)を設定します。
* NAT設定(NAT Settings): NATの場合、ポートフォワーディングの設定などを行います。
* DHCP設定(DHCP Settings): 仮想ネットワーク内でDHCPサーバーを有効にするか、そのIPアドレス範囲を設定します。
4. 設定変更後は「適用(Apply)」をクリックし、必要であれば「サービスを復元(Restore Default)」から初期設定に戻すことも可能です。
4. 仮想マシンの暗号化 (Encrypt – Workstation Proのみ)
仮想マシンファイル(設定ファイルや仮想ディスクファイル)を暗号化することで、仮想マシンのセキュリティを強化できます。特に機密性の高いデータを扱う仮想マシンや、仮想マシンファイルをUSBメモリなどで持ち運びたい場合に有効です。
使い方:
1. 暗号化したい仮想マシンを選択します。(シャットダウン状態である必要があります)
2. 「仮想マシン(VM)」→「設定(Settings…)」を選択します。
3. 「オプション(Options)」タブの「暗号化(Encryption)」を選択します。
4. 「暗号化(Encrypt…)」ボタンをクリックします。
5. 暗号化パスワードを設定します。このパスワードは、仮想マシンを起動したり、設定を変更したりする際に必要になります。パスワードを忘れると仮想マシンにアクセスできなくなるので注意してください。
6. 暗号化処理が開始されます。仮想ディスクのサイズによっては時間がかかる場合があります。
暗号化された仮想マシンは、パスワードを入力しないと起動できません。また、仮想マシンファイルをコピーしても、パスワードがなければ内容を読み取れません。
5. チーム機能 (Teams – Workstation Proのみ)
複数の仮想マシンを一つの「チーム」としてグループ化し、同時に管理できる機能です。例えば、Webサーバー、データベースサーバー、クライアントPCといった複数の仮想マシンで構成されるシステム全体をまとめて起動/停止したり、特定の順番で起動させたりすることができます。
使い方:
1. 「ファイル(File)」→「新規(New)」→「チーム(Team…)」を選択します。
2. チームウィザードに従って、チームの名前と保存場所を指定します。
3. 作成したチームに、既存の仮想マシンをドラッグ&ドロップで追加したり、「チーム設定の編集(Edit Team Settings)」から仮想マシンを追加したりします。
4. チームの設定画面で、各仮想マシンの起動順序などを設定できます。
チーム機能は、複数のサーバーで構成されるシステム環境のデモやテスト、トレーニングなどで特に威力を発揮します。
6. リモート接続 (Connect to Server – Workstation Proのみ)
VMware Workstation Proから、VMware vSphereやESXiサーバー上で稼働している仮想マシンに接続し、コンソール操作などを行うことができます。
使い方:
1. 「ファイル(File)」→「サーバーに接続(Connect to Server…)」を選択します。
2. 接続先のサーバー名またはIPアドレス、ユーザー名、パスワードを入力して接続します。
3. 接続に成功すると、サーバー上の仮想マシンリストが表示され、Workstation Pro上から操作できるようになります。
この機能は、集中管理された仮想化環境を利用している場合に便利です。
トラブルシューティング
VMware Workstationを使用していると、いくつかの問題に遭遇する可能性があります。ここでは、一般的なトラブルとその対処法をいくつか紹介します。
1. 仮想マシンが起動しない、エラーメッセージが表示される
- システム要件の確認: ホストPCのCPUが仮想化支援機能(Intel VT-x / AMD-V)に対応しており、BIOS/UEFI設定で有効になっているか確認してください。メモリやディスク容量が不足していないかも確認します。
- エラーメッセージの確認: 表示されたエラーメッセージの内容を正確に読み取ります。メッセージに具体的な原因(例: “Insufficient memory”)や解決策が示されている場合があります。エラーメッセージで検索すると、VMwareのKB(Knowledge Base)やコミュニティで情報が見つかることが多いです。
- 仮想マシン設定の確認: 仮想マシンの設定(VM→設定)で、割り当てられているメモリやCPUコア数がホストPCのスペックに対して過剰でないか確認します。
- 仮想ディスクファイルの確認: 仮想ディスクファイル(
.vmdk
)が破損していないか確認します。ストレージの空き容量が十分にあるか確認します。 - VMwareサービスの確認: ホストOSでVMware関連のサービスが正しく実行されているか確認します。(Windowsの場合、サービス管理ツールで「VMware ~」という名前のサービスを確認)
- VMware Workstationの再インストール: 一度VMware Workstationをアンインストールし、再度クリーンインストールしてみます。
2. VMware Toolsがインストールできない、正しく動作しない
- ゲストOSがサポートされているか確認: インストールしようとしているゲストOSのバージョンが、使用しているVMware Workstationのバージョンでサポートされているか確認します。
- インストール手順の再確認: 「VMware Toolsのインストール」を選択した後、ゲストOS側で正しくインストーラーが起動しているか、管理者権限で実行しているか確認します。
- 以前のバージョンの残骸がないか確認: 以前にインストールされたVMware Toolsの残骸がゲストOSに残っていると、新しいバージョンのインストールが失敗することがあります。ゲストOSのプログラムの追加と削除から、VMware Toolsを完全にアンインストールしてから再試行します。
- ISOイメージの確認: VMware Toolsのインストーラーイメージが正しく仮想CD/DVDドライブにマウントされているか確認します。
- ゲストOSの依存関係: Linuxなどでは、VMware Toolsのインストールに必要なカーネルヘッダーなどの開発ツールがゲストOSにインストールされている必要があります。必要なパッケージを事前にインストールしておきます。
- セキュリティソフトウェアの干渉: ゲストOS上で動作しているアンチウイルスソフトなどのセキュリティソフトウェアが、VMware Toolsのインストールを妨害している可能性があります。一時的に無効にして試します。
3. ネットワークに接続できない
- 仮想マシンのネットワークアダプタ設定: 仮想マシンの設定(VM→設定)の「ネットワークアダプタ」で、適切な接続モード(NAT, Bridgedなど)が選択されているか確認します。
- ホストOSのネットワーク接続: NATやBridgedモードの場合、ホストOSがインターネットや目的のネットワークに接続できているか確認します。
- ゲストOSのIP設定: ゲストOSがDHCPから正しくIPアドレスを取得できているか確認します。固定IPアドレスを設定している場合は、設定値がネットワーク構成に合っているか確認します。pingコマンドなどで疎通確認を行います。
- VMwareの仮想ネットワークサービス: ホストOSでVMware関連のネットワークサービス(VMware NAT Service, VMware DHCP Serviceなど)が正しく実行されているか確認します。仮想ネットワークエディタで設定が変更されていないか確認します。
- ゲストOSのファイアウォール: ゲストOSのファイアウォール設定で通信がブロックされていないか確認します。
- ホストOSのファイアウォール: ホストOSのファイアウォール設定で、VMware Workstationや関連サービスの通信が許可されているか確認します。
4. パフォーマンスが遅い
- ホストPCのリソース不足: 最も一般的な原因です。ホストPCのCPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/Oが高負荷になっていないか確認します。タスクマネージャー(Windows)や
top
/htop
(Linux)などで確認できます。 - 仮想マシンへのリソース割り当て: 仮想マシンに割り当てられているメモリやCPUコア数が不足している可能性があります。仮想マシン設定でこれらの値を増やしてみてください。ただし、ホストOSの動作に必要なリソースは確保してください。
- ストレージの速度: 仮想マシンファイルがHDDに保存されている場合、アクセス速度がボトルネックになっている可能性があります。可能であればSSDに移動することを強く推奨します。また、仮想ディスクファイルが断片化している場合もパフォーマンスが低下します。
- VMware Toolsの未インストール: VMware Toolsがインストールされていないと、グラフィックやディスクアクセスなどのパフォーマンスが著しく低下します。必ずインストールしてください。
- アンチウイルスソフト: ホストOSまたはゲストOS上で動作しているアンチウイルスソフトが、仮想マシンのファイルアクセスをスキャンすることでパフォーマンスを低下させることがあります。スキャン対象から仮想マシンフォルダを除外すると効果がある場合があります。(ただしセキュリティリスクを考慮してください)
- 仮想ディスクの種類: 仮想ディスクを分割ファイルで保存している場合、単一ファイルに変更することでパフォーマンスが向上する可能性があります。(変更には手間がかかります)
5. 仮想ディスク容量がいっぱいになった
- ゲストOS内部の不要ファイル削除: ゲストOSにログインし、一時ファイル、ごみ箱、ダウンロードフォルダ内の不要ファイルなどを削除します。
- 仮想ディスクの最適化/シュリンク (Shrink): VMware Toolsがインストールされていれば、ゲストOSで不要領域をゼロフィルし、ホストOS側で仮想ディスクファイルを圧縮(シュリンク)することができます。
- ゲストOSで、VMware Toolsのプロパティなどから「Shrink」を実行します。
- または、VMware Workstationのメニューから「仮想マシン(VM)」→「管理(Manage)」→「仮想ディスクのクリーンアップ(Clean Up Disks for this Virtual Machine)」を選択します。
- 仮想ハードディスク容量の拡張: 仮想マシン設定で仮想ハードディスクの最大容量を増やします。(前述の「設定変更」参照)容量を増やした後、ゲストOSのディスク管理ツール(Windowsのディスクの管理、Linuxの
gparted
など)でパーティションを拡張して、増やした容量を使用できるようにします。 - 不要なスナップショットの削除 (Workstation Proのみ): スナップショットはディスク容量を消費します。不要なスナップショットはスナップショットマネージャーから削除します。
これらの対処法はあくまで一般的なものです。個別のエラーや状況に応じて、より詳細な情報収集や専門的な知識が必要になる場合があります。
応用編へのステップ
VMware Workstationの導入と基本操作をマスターすれば、様々な応用が可能になります。以下にいくつかの例を挙げ、さらなるステップへの指針を示します。
- 複数OS環境の構築と連携: Windows、Linux、macOS (VMware Fusionが必要) など、異なるOSを複数インストールし、それぞれを連携させる環境を構築できます。例えば、Linux上にWebサーバーを構築し、Windows上の仮想マシンからアクセスして動作確認を行う、といった使い方ができます。
- 開発・検証環境としての利用: 特定のOSバージョンやライブラリが必要な開発プロジェクトのために、クリーンな環境を素早く構築できます。スナップショットやクローン機能を活用すれば、様々なテストケースや環境差異に対応した検証を効率的に行えます。本番環境に近い構成を仮想マシンで再現することも可能です。
- 古いソフトウェアの実行: 最新OSでは動作しない古いアプリケーションのために、互換性のある古いバージョンのOSを仮想マシンにインストールして実行できます。
- セキュリティテスト環境: 疑わしいファイルやマルウェアを、ホストOSに影響を与えることなく安全に実行・分析する隔離環境として仮想マシンを利用できます。重要な操作の前にスナップショットを作成しておけば、いつでもクリーンな状態に戻すことができます。
- サーバー環境のシミュレーション: 複数の仮想マシンを組み合わせて、実際のサーバー環境(Active Directoryドメイン、WebサーバーとDBサーバーの連携など)を構築し、学習やテストを行うことができます。仮想ネットワークエディタを活用すれば、複雑なネットワーク構成も再現可能です。
- VMwareの他の製品へのステップアップ: VMware Workstationで培った仮想化の知識は、VMware vSphereやESXiといったエンタープライズ向けの仮想化プラットフォームにも応用できます。Workstation Proのリモート接続機能を使えば、ESXiサーバーに接続して操作を試すことも可能です。
これらの応用を行う上で、メモリ、CPU、ストレージといったリソース管理の重要性が増してきます。ホストPCのスペックと、同時に実行する仮想マシンの数や要求スペックを考慮し、最適なリソース配分を計画することが、快適な仮想化環境を維持する鍵となります。
また、VMwareの公式ドキュメントや、オンライン上の様々な技術記事、コミュニティフォーラムなども、さらに深く学ぶ上で非常に役立つ情報源となります。
まとめ:仮想化技術と共に広がる可能性
本記事では、VMware Workstationの導入から、仮想マシンの作成、ゲストOSのインストール、VMware Toolsの導入、そして基本的な操作方法や設定変更、ネットワーク設定、便利な機能、トラブルシューティングまでを詳細に解説しました。
VMware Workstationは、一台の物理的なコンピューター上で複数の仮想マシンを同時に実行できる、非常に強力で柔軟なツールです。これにより、安全な検証環境の構築、多様なOS環境の共存、効率的な開発・テスト環境の整備、古いソフトウェアの実行など、様々な目的を実現できます。
特にVMware Workstation Proは、スナップショット、クローン、仮想ネットワークエディタ、チーム機能といった高度な機能を備えており、プロフェッショナルな用途や複雑な環境構築においてその真価を発揮します。一方、無償で利用できるVMware Workstation Playerも、基本的な仮想マシンの実行や作成には十分な機能を提供しており、仮想化を手軽に始めたい個人ユーザーにとって最適な選択肢です。
仮想化技術は、現代のIT環境において不可欠な要素となっています。VMware Workstationを通じて仮想化の基本を理解し、実際に仮想マシンを操作する経験は、ITエンジニアを目指す方にとっても、単にPCの可能性を広げたい方にとっても、非常に価値のあるものとなるでしょう。
この記事が、あなたがVMware Workstationを使い始め、仮想化の世界の扉を開くための一助となれば幸いです。さあ、VMware Workstationであなただけの仮想環境を構築し、新しい可能性を探索し始めてください!