一次関数の公式とグラフの書き方:高校数学の入門
一次関数は、高校数学における基礎であり、その理解は後の様々な分野、例えば二次関数、三角関数、微分積分、統計学などに繋がります。この記事では、一次関数の基本的な公式、グラフの書き方、そして重要な概念を丁寧に解説し、高校数学への入門をサポートします。
1. 一次関数とは
一次関数とは、一般的に y = ax + b
という形で表される関数のことです。ここで、
y
は従属変数(出力、目的変数)と呼ばれ、x
の値によって変化します。x
は独立変数(入力、説明変数)と呼ばれ、自由に値を取ることができます。a
は傾き(変化の割合、勾配)と呼ばれ、x
が 1 増加したときにy
がどれだけ増加するかを表します。b
は切片(y切片)と呼ばれ、グラフが y 軸と交わる点の y 座標を表します。つまり、x = 0
のときのy
の値です。
例:
y = 2x + 3
(傾き 2, 切片 3)y = -x + 1
(傾き -1, 切片 1)y = 0.5x - 2
(傾き 0.5, 切片 -2)y = 5
(傾き 0, 切片 5) これは特別な一次関数であり、定数関数と呼ばれます。
一次関数の特徴:
- グラフは直線になります。
x
の値が一定量増加すると、y
の値も一定量増加(または減少)します。この「一定量」が傾きa
にあたります。
一次関数ではないもの:
y = x^2
(二次関数)y = √x
(平方根の関数)y = 1/x
(反比例の関数)y = sin(x)
(三角関数)
2. 一次関数の公式
一次関数を理解する上で重要な公式は、主に以下の3つです。
2.1 一般形:
y = ax + b
これは最も基本的な形で、傾き a
と切片 b
が分かれば、一次関数を定義できます。
2.2 傾きと1点を通る形:
y - y₁ = a(x - x₁)
これは、傾き a
と、グラフが通る1点 (x₁, y₁)
が分かっている場合に、一次関数を定義できる公式です。
導出:
ある点 (x, y)
がこの直線上にあるとします。傾き a
は、任意の2点間の y の変化量と x の変化量の比で表されます。したがって、点 (x₁, y₁)
と点 (x, y)
を用いると、
a = (y - y₁) / (x - x₁)
両辺に (x - x₁)
を掛けると、
y - y₁ = a(x - x₁)
となります。
2.3 2点を通る形:
y - y₁ = ((y₂ - y₁) / (x₂ - x₁))(x - x₁)
これは、グラフが通る2点 (x₁, y₁)
と (x₂, y₂)
が分かっている場合に、一次関数を定義できる公式です。
導出:
この公式は、まず2点 (x₁, y₁)
と (x₂, y₂)
から傾き a
を求め、その傾きと1点 (x₁, y₁)
を用いて、傾きと1点を通る形の公式に代入することで導出できます。傾き a
は、
a = (y₂ - y₁) / (x₂ - x₁)
となります。これを傾きと1点を通る形の公式 y - y₁ = a(x - x₁)
に代入すると、
y - y₁ = ((y₂ - y₁) / (x₂ - x₁))(x - x₁)
となります。
公式の使い分け:
- 傾きと切片が分かっている場合: 一般形
y = ax + b
- 傾きとグラフが通る1点が分かっている場合: 傾きと1点を通る形
y - y₁ = a(x - x₁)
- グラフが通る2点が分かっている場合: 2点を通る形
y - y₁ = ((y₂ - y₁) / (x₂ - x₁))(x - x₁)
3. 一次関数のグラフの書き方
一次関数のグラフは直線なので、基本的に2点が分かれば描画できます。ここでは、いくつかの方法を紹介します。
3.1 傾きと切片を利用した書き方:
- 切片 (y切片) を見つける:
y = ax + b
のb
が y切片なので、y 軸上の点(0, b)
を見つけ、そこに点を打ちます。 - 傾きを利用してもう1点を見つける: 傾き
a
は、x
が 1 増加したときのy
の増加量を表します。したがって、y切片からx
軸方向に 1 進み、y
軸方向にa
だけ進んだ点を見つけ、そこに点を打ちます。 - 2点を直線で結ぶ: 見つけた2点を定規で結び、直線を引きます。この直線が、一次関数のグラフになります。
例: y = 2x + 3
- 切片は 3 なので、y 軸上の点
(0, 3)
に点を打ちます。 - 傾きは 2 なので、
x
軸方向に 1 進み、y
軸方向に 2 進んだ点(1, 5)
に点を打ちます。 (0, 3)
と(1, 5)
を直線で結びます。
3.2 2点を利用した書き方:
x
に適当な値を代入してy
の値を計算する: 2つの異なるx
の値を選び、それぞれに対応するy
の値を計算します。これにより、グラフ上の2点の座標(x₁, y₁)
と(x₂, y₂)
が得られます。- 2点を座標平面上にプロットする: 計算した2点の座標を座標平面上にプロットします。
- 2点を直線で結ぶ: プロットした2点を定規で結び、直線を引きます。この直線が、一次関数のグラフになります。
例: y = -x + 1
x = 0
のとき、y = -0 + 1 = 1
なので、点(0, 1)
x = 1
のとき、y = -1 + 1 = 0
なので、点(1, 0)
(0, 1)
と(1, 0)
を直線で結びます。
3.3 切片とx切片を利用した書き方:
- y切片を見つける:
x = 0
を代入してy
の値を求めます。これが y切片です。 - x切片を見つける:
y = 0
を代入してx
の値を求めます。これが x切片です。 - y切片とx切片を座標平面上にプロットする: 計算した y切片と x切片を座標平面上にプロットします。
- 2点を直線で結ぶ: プロットした2点を定規で結び、直線を引きます。この直線が、一次関数のグラフになります。
例: y = 2x - 4
x = 0
のとき、y = 2(0) - 4 = -4
なので、y切片は(0, -4)
y = 0
のとき、0 = 2x - 4
よりx = 2
なので、x切片は(2, 0)
(0, -4)
と(2, 0)
を直線で結びます。
グラフを描く際の注意点:
- 定規を必ず使う: 手書きで直線を描くと、正確なグラフになりません。
- 軸の目盛りを均等にする:
x
軸とy
軸の目盛りの間隔が異なると、グラフの傾きが実際と異なって見えます。 - グラフを延長する: 特に指示がない限り、グラフは可能な限り延長して描きましょう。
- 関数名を明記する: グラフの近くに、関数名(例:
y = 2x + 3
)を記載しましょう。
4. 傾きと切片の意味
傾きと切片は、一次関数の性質を理解する上で非常に重要です。
4.1 傾き (a):
傾き a
は、x
が 1 増加したときの y
の増加量を表します。
- a > 0 の場合:
x
が増加するとy
も増加します。グラフは右上がりになります。 - a < 0 の場合:
x
が増加するとy
は減少します。グラフは右下がりになります。 - a = 0 の場合:
x
が変化してもy
は変化しません。グラフは水平な直線になります(定数関数)。 - |a| が大きいほど: 傾きが急になります。
|a|
が小さいほど、傾きは緩やかになります。
現実世界での例:
- 距離と時間の関係: 傾きは速度を表します。正の傾きは加速、負の傾きは減速を意味します。
- 商品の価格と需要の関係: 傾きは需要の価格弾力性を表します。負の傾きは、価格が上がると需要が減ることを意味します。
4.2 切片 (b):
切片 b
は、x = 0
のときの y
の値を表します。つまり、グラフが y
軸と交わる点の y
座標です。
現実世界での例:
- 初期費用: 例えば、あるサービスを利用する際の初期費用は、
x = 0
のときのy
の値として表されます。 - 基本的な需要: 商品の価格が 0 円でも需要がある場合、その需要量が y切片として表されます。
5. 一次関数の応用例
一次関数は、様々な問題を解決するために利用できます。
5.1 方程式を解く:
一次関数を利用して、一次方程式を解くことができます。例えば、2x + 3 = 7
という方程式を解く場合、y = 2x + 3
と y = 7
という2つの一次関数のグラフを描き、その交点の x
座標を求めることで、方程式の解を得ることができます。
5.2 連立方程式を解く:
2つの一次関数の式を連立方程式として解くことで、2つのグラフの交点の座標を求めることができます。この交点の座標は、連立方程式の解となります。
5.3 文章問題を解く:
文章問題を一次関数でモデル化することで、問題を解決できます。例えば、
- 「A地点からB地点まで、時速50kmで車を走らせると2時間かかる。A地点からB地点までの距離はいくらか?」
この場合、距離を y
、時間を x
とすると、y = 50x
という一次関数で表すことができます。x = 2
を代入すると、y = 100
となり、A地点からB地点までの距離は100kmであることがわかります。
5.4 比例・反比例との関係:
- 比例:
y = ax
(切片が0の一次関数) - 反比例:
y = a/x
(一次関数ではない)
比例は一次関数の特別な場合であり、反比例は一次関数ではありません。
6. まとめ
一次関数は、数学の基礎であり、様々な分野に応用できます。この記事では、一次関数の公式、グラフの書き方、傾きと切片の意味、そして応用例について解説しました。一次関数を理解することで、より高度な数学の概念を理解しやすくなります。この記事が、高校数学への入門の一助となれば幸いです。
練習問題:
- 以下の一次関数のグラフを描きなさい。
y = 3x - 1
y = -2x + 4
y = 0.5x + 2
- 傾きが 2 で、点 (1, 3) を通る一次関数の式を求めなさい。
- 2点 (2, 5) と (4, 9) を通る一次関数の式を求めなさい。
- 時速 60km で走る車の走行距離を、時間
x
の一次関数として表しなさい。 - ある商品の価格が 100 円のとき、需要は 50 個である。価格が 120 円に上がると、需要は 40 個に減る。この商品の需要を、価格
x
の一次関数として表しなさい。
これらの練習問題を通して、一次関数の理解を深めてください。