【入門】Elasticsearchをダウンロードして始めよう
はじめに:Elasticsearchの世界へようこそ
テクノロジーの世界では、毎日膨大な量のデータが生み出されています。ウェブサイトのログ、センサーデータ、顧客情報、SNSの投稿、製品カタログなど、その種類は多岐にわたります。これらのデータを効率的に「検索」し、「分析」し、そこから価値ある洞察を得ることは、現代のビジネスや研究において非常に重要です。
Elasticsearchは、そのような「検索」と「分析」のニーズに応えるために生まれた、強力で柔軟なオープンソースの分散型検索・分析エンジンです。全文検索、構造化検索、リアルタイム分析、データ可視化など、幅広い機能を備えています。その高速性、スケーラビリティ、そしてRESTful APIによる使いやすさから、世界中の多くの企業や開発者に利用されています。
「Elasticsearchって名前は聞いたことあるけど、どうやって使うんだろう?」「プログラミングの経験はあまりないけど、少し触ってみたい」「自分の持っているデータを検索できるようにしたい」
この記事は、そんな思いを持ったElasticsearchの入門者の方々に向けて書かれています。Elasticsearchを実際に自分のコンピューターにダウンロードし、起動し、基本的な動作を確認するまでの手順を、できる限り分かりやすく丁寧に解説していきます。専門的な知識はほとんど必要ありません。この記事を読みながら、一緒にElasticsearchを動かしてみましょう。
この記事では、以下のステップでElasticsearchを始めていきます。
- Elasticsearchを動かすための前提条件を確認する。
- Elasticsearchを公式ウェブサイトからダウンロードする。
- ダウンロードしたファイルを展開し、インストールする。
- Elasticsearchの基本的な設定を確認する。
- Elasticsearchを起動する。
- Elasticsearchが正しく動作しているか確認する。
- (少しだけ)関連ツールであるKibanaにも触れてみる。
- 基本的なデータの操作方法を知る。
- もしもの時のトラブルシューティング。
- 次に何を学べばよいかのステップを示す。
さあ、Elasticsearchのダウンロードから始めて、検索エンジンの世界に第一歩を踏み出しましょう!
ステップ1:前提条件の確認 – Javaが必要です
Elasticsearchは、Java Virtual Machine (JVM) 上で動作するように設計されています。そのため、Elasticsearchを起動する前に、Java Development Kit (JDK) があなたのコンピューターにインストールされている必要があります。
Elasticsearchのバージョンによって推奨されるJDKのバージョンが異なります。最新のElasticsearchでは、通常、比較的新しいバージョンのJDKが推奨されます。公式ドキュメントであなたのダウンロードしようとしているElasticsearchのバージョンに対応するJDKバージョンを確認するのが最も確実ですが、一般的にはJDK 11以降が推奨されることが多いです(この記事執筆時点では、Elasticsearch 8.x系はJDK 11または17以降を推奨しています)。
JDKがインストールされているか確認する方法
コマンドプロンプト(Windows)またはターミナル(macOS/Linux)を開き、以下のコマンドを入力してEnterキーを押してください。
bash
java -version
または
bash
javac -version
もしJavaがインストールされていれば、以下のようなバージョン情報が表示されます。
openjdk version "17.0.8" 2023-07-18
OpenJDK Runtime Environment (build 17.0.8+7-Debian-1deb12u1)
OpenJDK 64-Bit Server VM (build 17.0.8+7-Debian-1deb12u1, mixed mode, sharing)
または
java version "1.8.0_382"
Java(TM) SE Runtime Environment (build 1.8.0_382-b06)
Java HotSpot(TM) 64-Bit Server VM (build 25.382-b06, mixed mode)
表示されるバージョンが、Elasticsearchが必要とするバージョンを満たしていればOKです。もし、Javaがインストールされていない、またはバージョンが古すぎる場合は、新しくインストールする必要があります。
JDKのインストール方法(簡単な案内)
JDKはOracle JDKやOpenJDKなど、いくつかの種類があります。一般的にはOpenJDKが無償で利用できるため広く使われています。Adoptium (旧AdoptOpenJDK) や Azul Zulu、Amazon Corretto などからダウンロードできます。
- Javaのダウンロードサイトにアクセスする:
- Adoptium: https://adoptium.net/
- Amazon Corretto: https://aws.amazon.com/jp/corretto/
- Oracle JDK: https://www.oracle.com/java/technologies/downloads/ (ライセンスに注意が必要な場合があります)
- OSとアーキテクチャに合ったJDKをダウンロードする: Windows、macOS、Linuxなど、あなたのOSを選択し、インストーラーまたはZIP/TAR.GZ形式のファイルをダウンロードします。推奨バージョン(例: JDK 17)を選ぶと良いでしょう。
- JDKをインストールする:
- Windows: ダウンロードした
.exe
ファイルを実行し、画面の指示に従ってインストールします。インストール時に「環境変数PATH
に追加する」のようなオプションがあればチェックを入れておくと、コマンドプロンプトからjava
コマンドが使えるようになります。手動で設定が必要な場合もあります。 - macOS: ダウンロードした
.dmg
ファイルを開き、インストーラーを実行します。 - Linux: ディストリビューションのパッケージマネージャー(
apt
,yum
,dnf
など)を使うのが一般的で簡単です。例えばDebian/Ubuntu系ならsudo apt update && sudo apt install openjdk-xx-jdk
(xxはバージョン番号) のように実行します。または、TAR.GZファイルをダウンロードして展開し、環境変数PATH
やJAVA_HOME
を設定する方法もあります。
- Windows: ダウンロードした
インストール後、再度コマンドプロンプト/ターミナルを開き直し(新しい環境変数が反映されるように)、java -version
を実行して、正しくインストールされたか、バージョンが適切かを確認してください。
JDKのインストール自体で記事が一つ書けるほどのボリュームがあるため、ここでは詳細なインストール手順は割愛しますが、もしJDKのインストールで詰まった場合は、「[お使いのOS] JDK [バージョン番号] インストール」などのキーワードで検索して、詳しい解説記事や公式ドキュメントを参照してください。
Javaのインストールが完了したら、Elasticsearchをダウンロードする準備が整いました。
ステップ2:Elasticsearchのダウンロード
Elasticsearchは、Elastic社(旧Elasticsearch BV)によって開発されており、公式ウェブサイトからダウンロードできます。
-
公式ダウンロードページへアクセスする:
ウェブブラウザを開き、以下のElasticsearch公式ダウンロードページにアクセスします。
https://www.elastic.co/downloads/elasticsearch -
ダウンロードする形式を選択する:
ダウンロードページには、様々なオペレーティングシステムやパッケージ管理システムに対応した形式が提供されています。- ZIP (Windows向け): Windows環境で最も手軽に始められる形式です。ファイルをダウンロードして展開するだけで使えます。
- TAR.GZ (macOS, Linux向け): macOSやLinux環境で手軽に始められる形式です。ファイルをダウンロードして展開するだけで使えます。
- DEB (Debian/Ubuntu向け): DebianやUbuntuなどのLinuxディストリビューションで、aptパッケージマネージャーを使ってインストールする場合に利用します。
- RPM (CentOS/RHEL/Fedora向け): CentOS, RHEL, FedoraなどのLinuxディストリビューションで、yum/dnfパッケージマネージャーを使ってインストールする場合に利用します。
- Dockerイメージ: Docker環境を利用している場合に便利です。
- Cloud: Elastic Cloudというマネージドサービスを利用することもできます。
この記事では、入門者向けに、ダウンロードしてすぐに使える ZIP形式 (Windows) または TAR.GZ形式 (macOS/Linux) を使用します。これらの形式は、システム全体にインストールするのではなく、指定したディレクトリに展開されるため、環境を汚さずに試すのに適しています。
-
ダウンロードするバージョンを選択する:
通常、最新の安定版(Latest stable version)が推奨されます。新しい機能や改善、セキュリティ修正が含まれています。ダウンロードページには、最新のバージョンが大きく表示されています。特定の古いバージョンをダウンロードしたい場合は、「Older versions」のリンクをクリックして選択することも可能です。ここでは、特に理由がなければ最新安定版を選びましょう。 -
ZIP または TAR.GZ ファイルをダウンロードする:
ダウンロードページで、あなたのOSに対応する形式(ZIPまたはTAR.GZ)のリンクをクリックして、ファイルをダウンロードします。ファイルサイズは数百MB程度です。ダウンロードが完了するまでしばらく待ちます。例:
* Windowsをお使いなら、「ZIP」のリンクをクリックします。
* macOSまたはLinuxをお使いなら、「TAR.GZ」のリンクをクリックします。
ダウンロードしたファイルは、elasticsearch-{version}-windows-x86_64.zip
のような名前(Windowsの場合)や elasticsearch-{version}-linux-x86_64.tar.gz
のような名前(Linuxの場合)になっています。{version}
の部分はダウンロードしたバージョン番号です。
これで、Elasticsearch本体のダウンロードが完了しました。次に、このファイルを展開して「インストール」を行います。
ステップ3:Elasticsearchのインストール(ファイルの展開)
ダウンロードしたZIPまたはTAR.GZファイルは、圧縮されています。これを使用するためには、適切な場所に展開する必要があります。
インストール(展開)先の決定
特に制約はありませんが、システムファイルが置かれている場所(Program Filesなど)ではなく、ユーザーディレクトリ内の任意の場所や、開発用のディレクトリなど、あなたがアクセスしやすい場所に展開するのが良いでしょう。例えば、C:\ElasticStack
(Windows) や ~/elastic-stack
(macOS/Linux) のようなディレクトリを作成し、その中に展開するのも良い方法です。ここでは、例として C:\ElasticStack\elasticsearch-{version}
または ~/elastic-stack/elasticsearch-{version}
のようなディレクトリに展開することにします。
ファイルの展開方法
-
Windows (ZIPファイル):
- ダウンロードした
elasticsearch-{version}-windows-x86_64.zip
ファイルを右クリックします。 - コンテキストメニューから「すべて展開…」を選択します。
- 展開先のフォルダを指定します。(例:
C:\ElasticStack
) - 「展開」ボタンをクリックします。
- 展開が完了すると、指定したフォルダ内に
elasticsearch-{version}
という名前の新しいフォルダが作成されます。このフォルダの中にElasticsearchのファイル一式が入っています。
- ダウンロードした
-
macOS / Linux (TAR.GZファイル):
- ターミナルを開きます。
- ダウンロードしたファイルが保存されているディレクトリに移動します。
- 以下のコマンドを実行してファイルを展開します。(
{version}
はダウンロードしたバージョン番号に置き換えてください)
bash
tar -zxvf elasticsearch-{version}-linux-x86_64.tar.gz
または
bash
tar -zxvf elasticsearch-{version}-darwin-x86_64.tar.gz # macOSの場合- 展開が完了すると、カレントディレクトリに
elasticsearch-{version}
という名前の新しいディレクトリが作成されます。このディレクトリの中にElasticsearchのファイル一式が入っています。展開先を指定したい場合は、-C
オプションを使います。例えば、~/elastic-stack
に展開したい場合は以下のようになります。
bash
mkdir ~/elastic-stack # 展開先のディレクトリがなければ作成
tar -zxvf elasticsearch-{version}-linux-x86_64.tar.gz -C ~/elastic-stack
この場合、~/elastic-stack
の中にelasticsearch-{version}
ディレクトリが作成されます。
展開後のディレクトリ構造の確認
展開された elasticsearch-{version}
ディレクトリの中には、Elasticsearchを構成する様々なファイルやディレクトリがあります。主なものを紹介します。
bin/
: 実行可能なスクリプトやコマンドが入っています。elasticsearch
(Linux/macOS) やelasticsearch.bat
(Windows) というファイルがあり、これがElasticsearchサーバーを起動するためのコマンドです。config/
: 設定ファイルが入っています。最も重要なのはelasticsearch.yml
というファイルで、Elasticsearchの動作に関する様々な設定を行います。lib/
: Elasticsearchが依存するJavaライブラリ(JARファイル)が入っています。logs/
: Elasticsearchのログファイルが出力されるディレクトリです。問題が発生した際の原因調査に非常に重要です。modules/
: Elasticsearchのコア機能を提供するモジュールが入っています。plugins/
: プラグインをインストールするためのディレクトリです。追加機能が必要な場合に利用します。data/
: Elasticsearchがインデックス化したデータ(検索対象のデータやメタデータ)を保存するディレクトリです。デフォルトではElasticsearchディレクトリの直下に作成されますが、設定で変更できます。このディレクトリはElasticsearchの停止・起動を跨いで永続化されます。
これらのディレクトリ構造を理解しておくと、後々の設定変更やトラブルシューティングに役立ちます。入門段階では、特に bin/
と config/
ディレクトリの場所を覚えておきましょう。
これでElasticsearchの「インストール」(ファイルの展開)は完了です。次に、起動前に必要に応じて設定ファイルを確認します。
ステップ4:Elasticsearchの設定
Elasticsearchの設定は、config/
ディレクトリにある elasticsearch.yml
ファイルで行います。これはYAML形式のテキストファイルです。
ローカル環境でElasticsearchを単一ノードで試すだけであれば、デフォルト設定のままで起動できることが多いです。しかし、いくつかの重要な設定項目について知っておくと、後々役立ちます。
elasticsearch.yml
ファイルをテキストエディタで開いてみましょう。(メモ帳、VS Code, Sublime Text, Vimなど、普段使い慣れているエディタで構いません)
ファイルを開くと、多くの行が #
でコメントアウトされていることがわかります。これは、デフォルト値が適用されることを意味します。設定を変更したい場合は、行頭の #
を削除して、値を変更します。
いくつかの主要な設定項目を簡単に説明します。
cluster.name
: Elasticsearchは複数のノードでクラスタを構成できます。この設定は、そのクラスタの名前を定義します。同じクラスタ名を持つノード同士が連携しようとします。デフォルトはelasticsearch
です。ローカルで単一ノードで試す場合は、デフォルトのままで構いません。node.name
: クラスタ内の各ノードの名前です。デフォルトではホスト名が使われます。任意に設定できます。これもローカルで単一ノードの場合はデフォルトで構いません。path.data
: Elasticsearchがインデックスデータを保存するディレクトリを指定します。デフォルトでは、Elasticsearchのルートディレクトリ直下のdata
ディレクトリが使われます。本番環境では、高速で十分な容量のあるストレージを持つ専用の場所に設定することが推奨されます。ローカルで試す場合はデフォルトのままで構いません。path.logs
: Elasticsearchのログファイルが出力されるディレクトリを指定します。デフォルトでは、Elasticsearchのルートディレクトリ直下のlogs
ディレクトリが使われます。network.host
: Elasticsearchがネットワーク上でどのIPアドレス/ホスト名でリッスンするかを指定します。- デフォルトは
_local_
または_site_
など、環境によって異なります。多くの場合、ローカルホスト(127.0.0.1
)からのアクセスのみを受け付けるようになっています。 localhost
または127.0.0.1
と設定すると、自分のPC上からのアクセスのみを受け付けます。0.0.0.0
と設定すると、すべてのネットワークインターフェースからのアクセスを受け付けますが、これはセキュリティ上のリスクがあるため、本番環境では推奨されません。- 入門段階で、自分のPC上のブラウザやツールからアクセスするだけであれば、デフォルト設定のままで問題ないことが多いです。もし、他のPCからアクセスしたい場合は、この設定を変更する必要がありますが、その際はセキュリティ対策も考慮が必要です。
- デフォルトは
http.port
: ElasticsearchのRESTful APIがリッスンするポート番号を指定します。デフォルトは9200
です。通常はこのポートを使います。もし他のサービスが9200番ポートを使用している場合は、別のポート番号に変更する必要があります。discovery.seed_hosts
: クラスタを構成する際に、他のノードを見つけるための初期ノードリストを指定します。ローカルで単一ノードのみを起動する場合は、この設定は必要ありません。cluster.initial_master_nodes
: 初めてクラスタを起動する際に、マスターノードとなるノードリストを指定します。ローカルで単一ノードのみを起動する場合は、この設定は必要ありません(起動したノードが自動的にマスターになります)。
セキュリティ関連の設定(注意)
Elasticsearch 7.x系まではデフォルトでセキュリティ機能(認証やTLS/SSLなど)が無効でしたが、Elasticsearch 8.x系からはデフォルトで有効になっています。 これは本番環境でのセキュリティを考慮した変更ですが、入門者がローカルで試す際には少し手順が増える可能性があります。
8.x系を初めて起動する際、Elasticsearchはセキュリティを有効化し、いくつかの認証情報(elastic
ユーザーのパスワードなど)や証明書を自動生成し、それらをコンソールに表示します。これらの情報は、後述するKibanaや各種クライアントからElasticsearchに接続する際に必要になるため、必ずメモしておいてください。
もし、認証なしで手軽に試したい場合は、elasticsearch.yml
でセキュリティ関連の設定を無効にすることも可能ですが、これはあくまでローカル環境での評価目的のみに限定し、本番環境では絶対に無効にしないでください。 セキュリティを無効にする具体的な設定はバージョンによって異なる場合があるため、公式ドキュメントを参照するか、生成された情報を使って接続することをお勧めします。この記事では、生成された認証情報を使って接続することを前提とします。
ローカル環境で試すだけであれば、まずはデフォルト設定のまま起動してみるのが一番手軽です。必要に応じてポート番号やネットワーク設定のみを変更することを検討しましょう。
ステップ5:Elasticsearchの起動
さあ、いよいよElasticsearchを起動します!コマンドライン(WindowsならコマンドプロンプトまたはPowerShell、macOS/Linuxならターミナル)を使用します。
-
コマンドラインを開く:
- Windows: スタートメニューから「cmd」と入力してコマンドプロンプトを開くか、「powershell」と入力してPowerShellを開きます。
- macOS: 「アプリケーション」->「ユーティリティ」->「ターミナル」を選択して開きます。
- Linux: Ctrl+Alt+Tを押すか、アプリケーションメニューからターミナルを開きます。
-
Elasticsearchの実行ディレクトリに移動する:
先ほどファイルを展開したディレクトリの中にあるbin
ディレクトリに移動します。cd
コマンドを使用します。
例:あなたがElasticsearchをC:\ElasticStack\elasticsearch-{version}
(Windows) または~/elastic-stack/elasticsearch-{version}
(macOS/Linux) に展開した場合。- Windows:
bash
cd C:\ElasticStack\elasticsearch-{version}\bin - macOS / Linux:
bash
cd ~/elastic-stack/elasticsearch-{version}/bin
ディレクトリ名は、あなたがダウンロードした正確なバージョン番号に合わせてください。
- Windows:
-
Elasticsearchを起動する:
bin
ディレクトリに移動したら、以下のコマンドを実行してElasticsearchを起動します。- Windows:
bash
elasticsearch.bat - macOS / Linux:
bash
./elasticsearch
コマンドを実行すると、Elasticsearchが起動処理を開始し、たくさんのログメッセージがコンソールに表示され始めます。
- Windows:
起動中のコンソール出力について
起動中は、Elasticsearchが初期化処理を行っている様子を示すログメッセージが次々と表示されます。これらのログは、Elasticsearchが正しく起動しているか、または問題が発生していないかを確認するために重要です。
ログメッセージには、タイムスタンプ、ログレベル(INFO, WARN, ERRORなど)、どのコンポーネントからのメッセージか、そして具体的な内容が含まれます。
例:
[2023-10-27T10:00:00,123][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] version[8.x.y], pid[12345], build[zip/abcdefg/2023-10-27T09:00:00Z], OS[Windows 10/10.0], jvm[HotSpot(TM) 64-Bit Server VM/Oracle Corporation/17.0.8]
[2023-10-27T10:00:01,456][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] JVM home [C:\Program Files\Java\jdk-17]
[2023-10-27T10:00:05,789][INFO ][o.e.p.PluginsService ] [your-node-name] loaded module [aggs-matrix-stats]
... (様々なモジュールやプラグインの読み込みログ) ...
[2023-10-27T10:00:15,012][INFO ][o.e.x.s.SecurityStatusChangeListener] [your-node-name] Security is enabled
[2023-10-27T10:00:16,345][INFO ][o.e.h.AbstractHttpServerTransport] [your-node-name] publish_address {127.0.0.1:9200}, bound_addresses {127.0.0.1:9200}
[2023-10-27T10:00:16,400][INFO ][o.e.m.j.JvmGcMonitorService] [your-node-name] Heap memory [..., ...]
[2023-10-27T10:00:16,500][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] started
特に重要なのは、最後に [o.e.n.Node ] [your-node-name] started
のようなログが出力されることです。これは、Elasticsearchノードの起動処理が完了し、APIリクエストを受け付けられる状態になったことを示します。
Elasticsearch 8.x系では、起動時に以下のようなセキュリティ関連の情報も出力されます。これらはKibanaや他のクライアントから接続する際に必要なので、必ず控えてください。
-> Elasticsearch security features have been automatically configured!
-> Authentication is enabled and configured for realms [file, native].
-> TLS is enabled and configured for http traffic
-> To access Elasticsearch in a browser run:
-> https://127.0.0.1:9200
->
-> User: elastic, Password: <自動生成されたパスワード>
->
-> To authenticate to Elasticsearch with curl use:
-> curl --cacert <証明書パス> -u elastic:<自動生成されたパスワード> https://localhost:9200
->
-> To access Kibana run:
-> https://localhost:5601
->
-> To enroll Kibana with this Elasticsearch instance use:
-> /path/to/kibana/bin/kibana enroll --url https://localhost:9200 --ca-cert <証明書パス>
->
-> To enroll a Beat with this Elasticsearch instance use:
-> /path/to/beats/binary enroll https://localhost:9200 <トークン>
この自動生成されたパスワードや証明書のパスは非常に重要です。失くさないようにメモしておきましょう。HTTPアクセスがデフォルトでHTTPS (https://127.0.0.1:9200
) になっていること、ユーザー名が elastic
であることに注意してください。
コンソールに started
のログが表示されるか、またはセキュリティ情報が表示されたら、Elasticsearchの起動は完了です。コンソールはこのまま起動した状態にしておいてください。Elasticsearchはフォアグラウンドで実行されており、このウィンドウを閉じるとElasticsearchも停止します。
ステップ6:Elasticsearchの動作確認
Elasticsearchが起動したら、正しく動作しているかを確認してみましょう。ElasticsearchはRESTful APIを提供しているので、ウェブブラウザやcURL
コマンドなどのHTTPクライアントを使ってアクセスできます。
ElasticsearchのデフォルトHTTPポートは9200です。ローカル環境で起動した場合、http://localhost:9200
または https://localhost:9200
(8.x以降) でアクセスできるはずです。
確認方法1:ウェブブラウザを使う
- ウェブブラウザ(Chrome, Firefox, Edgeなど)を開きます。
-
アドレスバーに以下を入力してEnterキーを押します。
- 7.x以前 または セキュリティを無効にした8.x:
http://localhost:9200/
- デフォルト設定の8.x以降:
https://localhost:9200/
もし、セキュリティが有効な8.x系の場合、ブラウザは証明書に関する警告を表示するかもしれません。これは、Elasticsearchが自己署名証明書を生成して使用しているためです。一時的に接続を許可するか、警告を無視して続行してください(ブラウザによって手順が異なります)。
次に、認証を求められる場合があります。ユーザー名に
elastic
、パスワードに先ほどElasticsearch起動時にコンソールに表示された自動生成パスワードを入力してログインします。 - 7.x以前 または セキュリティを無効にした8.x:
-
正しくアクセスできると、ブラウザに以下のようなJSON形式のデータが表示されます。
json
{
"name" : "your-node-name",
"cluster_name" : "elasticsearch",
"cluster_uuid" : "...",
"version" : {
"number" : "8.x.y",
"build_flavor" : "default",
"build_type" : "zip",
"build_hash" : "...",
"build_date" : "...",
"build_snapshot" : false,
"lucene_version" : "...",
"minimum_wire_compatibility_version" : "...",
"minimum_index_compatibility_version" : "..."
},
"tagline" : "You Know, for Search"
}
表示される内容はバージョンによって少し異なりますが、name
, cluster_name
, version
, tagline
(おなじみの「検索のためのね」というフレーズ) などが含まれていれば、Elasticsearchは正しく起動し、HTTPリクエストを受け付けられる状態になっています。
確認方法2:cURLコマンドを使う
cURL
は、コマンドラインからHTTPリクエストを送信するためのツールです。多くのOSに標準でインストールされているか、簡単に追加できます。
コマンドプロンプト/ターミナルで以下のコマンドを実行します。
-
7.x以前 または セキュリティを無効にした8.x:
bash
curl http://localhost:9200/ -
デフォルト設定の8.x以降:
セキュリティが有効な場合、ユーザー名、パスワード、そして(必要に応じて)証明書を指定する必要があります。Elasticsearch起動時に表示されたcurl
コマンドの例を参考にすると良いでしょう。bash
curl --cacert <証明書パス> -u elastic:<自動生成されたパスワード> https://localhost:9200/
<証明書パス>
と<自動生成されたパスワード>
は、あなたの環境でElasticsearch起動時に表示されたものに置き換えてください。macOSやLinuxでは、自己署名証明書を使っている場合に
-k
オプション(証明書の検証を無効にする)を使うこともできますが、これはセキュリティリスクを伴うため推奨されません。8.xで推奨されるのは、生成された証明書(多くの場合、config/certs/http_ca.crt
のようなパスにある)を--cacert
で指定する方法です。
どちらの方法でも、ブラウザで見たのと同じJSONデータが表示されれば成功です。
他の基本的なAPIで確認
Elasticsearchには、クラスタの状態を確認するための様々なAPIがあります。入門者向けにいくつか紹介します。これらもブラウザやcURL
でアクセスできます。
-
クラスタの状態 (Health):
GET /_cat/health?v
このAPIは、クラスタが正常(green
)、警告状態(yellow
)、または異常(red
)かを示します。ローカルで単一ノードの場合、通常はgreen
になります。?v
を付けるとヘッダー付きで見やすくなります。“`bash
7.x以前 または セキュリティを無効にした8.x
curl “http://localhost:9200/_cat/health?v”
8.x以降 (セキュリティ有効時)
curl –cacert <証明書パス> -u elastic:<自動生成されたパスワード> “https://localhost:9200/_cat/health?v”
出力例:
epoch timestamp cluster status index nodes data_nodes tiebreak_nodes max_task_wait_time active_shards active_primary_shards relocating_shards initializing_shards unassigned_shards pending_tasks max_task_waiting_time active_gid_shards
1698375600 10:00:00 elasticsearch green 0 1 1 1 – 0 0 0 0 0 0 – 0
``
statusが
green`であれば、クラスタは正常です。 -
ノードリスト:
GET /_cat/nodes?v
クラスタを構成するノードの一覧を表示します。ローカルで単一ノードの場合、自分のPCのホスト名を持つノードが一つ表示されるはずです。“`bash
7.x以前 または セキュリティを無効にした8.x
curl “http://localhost:9200/_cat/nodes?v”
8.x以降 (セキュリティ有効時)
curl –cacert <証明書パス> -u elastic:<自動生成されたパスワード> “https://localhost:9200/_cat/nodes?v”
出力例:
ip heap.percent ram.percent cpu load_1m load_5m load_15m node.role master ip node
127.0.0.1 20 50 5 0.50 0.40 0.30 dilmrt * 127.0.0.1 your-node-name
``
node.roleが
*` となっているノードがマスターノードです。
これらのAPIが応答を返せば、Elasticsearchは正常に動作しています。おめでとうございます!これであなたはElasticsearchを起動することができました。
ステップ7:Elasticsearchの停止
Elasticsearchを停止するには、起動時に使ったコマンドラインに戻り、Ctrl+C(Windows/macOS/Linux共通)を押します。
Ctrl+Cを押すと、Elasticsearchは停止処理を開始し、その過程を示すログメッセージが出力されます。
[2023-10-27T10:15:00,123][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] stopping ...
[2023-10-27T10:15:01,456][INFO ][o.e.x.w.WatcherService ] [your-node-name] watcher service has stopped
... (様々なサービスの停止ログ) ...
[2023-10-27T10:15:05,789][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] stopped
[2023-10-27T10:15:06,000][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] closing ...
[2023-10-27T10:15:07,000][INFO ][o.e.n.Node ] [your-node-name] closed
stopped
および closed
のログが表示されたら、Elasticsearchは正常に停止しました。これで、そのコマンドラインウィンドウは閉じても構いません。
注意:Ctrl+C以外の方法(例えば、ウィンドウを直接閉じたり、kill -9
コマンドを使ったり)でElasticsearchプロセスを強制終了すると、インデックスデータが破損する可能性があります。必ずCtrl+Cで停止するようにしましょう。
ステップ8:Kibanaの導入(Elasticsearchを使いやすくするツール)
ElasticsearchはREST APIで操作できますが、コマンドラインやcURL
だけで複雑な検索や分析を行うのは大変です。そこで登場するのが Kibana です。
Kibanaは、Elasticsearchのデータを探索、可視化、管理するための強力なウェブインターフェースです。以下のような機能を提供します。
- Discover: Elasticsearchのデータ(ドキュメント)を検索、フィルタリング、調査できます。
- Visualize: データをグラフやチャートなど様々な形式で可視化し、ダッシュボードを作成できます。
- Dashboards: 作成した可視化を組み合わせて、インタラクティブなダッシュボードを作成できます。
- Dev Tools: ElasticsearchのREST APIを直接実行できるコンソール機能(ConsoleまたはDev Tools)があり、ここからデータの投入や検索、設定変更などが簡単に行えます。入門者がAPIを試すのに非常に便利です。
- Management: インデックスの管理、ユーザー管理(セキュリティ有効時)、スナップショット/リストア、ロールアップなど、Elasticsearchクラスタ全体の管理ができます。
KibanaはElasticsearchと同じElastic Stackの一部であり、Elasticsearchと組み合わせて使用することが強く推奨されます。Kibanaもオープンソースであり、Elasticsearchと同様にダウンロードしてローカル環境で実行できます。
Elasticsearchを起動できた今、次にKibanaも起動してみましょう。手順はElasticsearchとよく似ています。
-
Kibanaをダウンロードする:
- Elasticsearchと同じバージョンのKibanaをダウンロードすることが重要です。バージョンの互換性が保証されます。
- Kibanaダウンロードページにアクセスします: https://www.elastic.co/downloads/kibana
- Elasticsearchと同様に、OSに合った形式(ZIP, TAR.GZなど)をダウンロードします。入門者向けにはZIPまたはTAR.GZを推奨します。
-
Kibanaを展開する:
ダウンロードしたファイルを、Elasticsearchを展開した場所と同じような場所に展開します。
例:C:\ElasticStack\kibana-{version}
(Windows) または~/elastic-stack/kibana-{version}
(macOS/Linux) -
Kibanaを設定する(オプション):
Kibanaの設定ファイルは、展開したディレクトリのconfig/kibana.yml
です。デフォルトでは、Kibanaはlocalhost:5601
で起動し、elasticsearch.hosts: ["http://localhost:9200"]
(7.x以前) またはelasticsearch.hosts: ["https://localhost:9200"]
(8.x以降) に接続しようとします。- Elasticsearchのポート番号をデフォルトの9200から変更した場合や、ElasticsearchがHTTPSで動いている場合は、
kibana.yml
のelasticsearch.hosts
の行のコメントを外し、適切なURLに変更する必要があります。8.x以降でHTTPSで動いている場合、デフォルトでコメントアウトされているelasticsearch.ssl.verificationMode: none
の行もコメントを外すと、自己署名証明書でも検証なしで接続できるようになります(これも開発/検証環境限定です)。 - 8.x以降でElasticsearchがセキュリティ有効の場合、KibanaからElasticsearchに接続するためにAPIキーや認証情報の設定が必要になります。最も簡単な方法は、Elasticsearch起動時にコンソールに表示された「KibanaをEnrollするコマンド」(
kibana enroll ...
)を使用することです。Kibanaを一度起動して、コマンドラインの指示に従う方法もあります。詳しい手順はKibanaのバージョンや設定によりますが、Kibanaのセットアップ画面やコンソールメッセージに表示される案内に従うのが最も確実です。
- Elasticsearchのポート番号をデフォルトの9200から変更した場合や、ElasticsearchがHTTPSで動いている場合は、
-
Kibanaを起動する:
Kibanaディレクトリのbin
ディレクトリに移動し、以下のコマンドを実行します。- Windows:
bash
kibana.bat - macOS / Linux:
bash
./kibana
Kibanaも起動処理中に多くのログを出力します。Server running at http://localhost:5601/
のようなメッセージが表示されたら起動完了です。
- Windows:
-
Kibanaにアクセスする:
ウェブブラウザを開き、アドレスバーにhttp://localhost:5601/
(またはhttps://localhost:5601/
、Kibanaの設定による)と入力してアクセスします。8.x以降でElasticsearchがセキュリティ有効の場合、KibanaはElasticsearchに接続しようとし、接続設定を促す画面が表示される場合があります。「Configure Elastic to work with Kibana」のような画面が表示されたら、Elasticsearch起動時に表示された
kibana enroll
コマンドを使うか、手動で設定(ElasticsearchのURL、ユーザー名、パスワードなど)を入力して連携設定を完了させます。この手順もバージョンによって異なるため、画面の指示や公式ドキュメントを参考にしてください。正しく連携が完了すると、Kibanaのホーム画面が表示されます!
これで、Elasticsearchを操作するための便利なツールであるKibanaも使えるようになりました。以降の操作は、KibanaのDev Toolsを使うと非常に簡単です。
ステップ9:Kibana Dev Toolsを使った基本的な操作例
Kibanaが起動し、Elasticsearchと連携できたら、KibanaのDev Toolsを使ってElasticsearchの基本的な操作(インデックスの作成、ドキュメントの投入、検索など)を試してみましょう。
Kibanaの左側のナビゲーションメニューから「Management」(またはStack Management)セクションを探し、その中にある「Dev Tools」(またはConsole)を選択します。すると、左側にリクエストを記述するエディタ、右側にレスポンスが表示される画面が開きます。
Dev ToolsのエディタにElasticsearchのREST APIリクエストを記述して実行できます。HTTPメソッド(GET, POST, PUT, DELETEなど)とパス、そして必要に応じてリクエストボディ(JSON形式)を記述します。
例1:インデックスの作成
インデックスは、関連するドキュメント(データレコード)の集まりです。リレーショナルデータベースでいうテーブルのようなものです。データをElasticsearchに投入する前に、まずインデックスを作成する必要があります。
以下のリクエストをエディタに記述し、実行ボタン(緑色の三角形)をクリックします。
json
PUT /my_first_index
{
"settings": {
"index": {
"number_of_shards": 1,
"number_of_replicas": 0
}
}
}
PUT /my_first_index
:PUT
メソッドで/my_first_index
というパスにリクエストを送っています。これはmy_first_index
という名前のインデックスを作成するAPIです。{ ... }
: リクエストボディで、インデックスの設定を指定しています。number_of_shards
: インデックスを物理的に分割する単位(シャード)の数。デフォルトは通常1ですが、ここでは明示的に1に設定しています。入門段階では1で十分です。number_of_replicas
: シャードのレプリカ(複製)の数。高可用性のためにはレプリカが必要ですが、ローカルの単一ノード環境ではレプリカを持つことができないため、0に設定します。デフォルトは1なので、ローカルで試す場合は必ず0に設定しないとインデックスが正常な状態(green)になりません。
実行後、右側のレスポンス画面に { "acknowledged": true, "shards_acknowledged": true, "index": "my_first_index" }
のような成功を示すJSONが表示されれば、インデックス作成成功です。
例2:ドキュメントの投入
ドキュメントは、Elasticsearchに保存する個々のデータ単位です。JSON形式で表現されます。リレーショナルデータベースでいう行(レコード)のようなものです。
作成したインデックスmy_first_index
にドキュメントを投入してみましょう。ドキュメントを投入すると、Elasticsearchは自動的にインデックス付け(検索しやすいように加工)を行います。
json
POST /my_first_index/_doc
{
"title": "Elasticsearch入門記事",
"author": "初心者さん",
"publish_date": "2023-10-27",
"content": "Elasticsearchをダウンロードしてインストール、起動、確認する手順を解説しました。"
}
POST /my_first_index/_doc
:POST
メソッドで/my_first_index/_doc
というパスにリクエストを送っています。これはmy_first_index
インデックスに新しいドキュメントを追加するAPIです。_doc
はドキュメントタイプを指定していますが、Elasticsearch 7.x以降では単一のデフォルトタイプ_doc
を使用するのが一般的です。{ ... }
: リクエストボディが追加するドキュメントのデータです。JSONオブジェクトで、キーと値のペアで構成されます。Elasticsearchはスキーマレス(厳密な構造定義なし)にデータを扱えますが、内部的にはマッピング(各フィールドのデータ型や検索方法の定義)を自動的に行います。
実行後、右側のレスポンス画面に { "_index": "my_first_index", "_type": "_doc", "_id": "...", "_version": 1, "result": "created", "_shards": { ... }, "_seq_no": ..., "_primary_term": ... }
のような成功を示すJSONが表示されれば、ドキュメント投入成功です。_id
はElasticsearchが自動生成したドキュメントの一意なIDです。
続けて、もう一つドキュメントを投入してみましょう。
json
POST /my_first_index/_doc
{
"title": "Kibana入門",
"author": "学びたいさん",
"publish_date": "2023-10-28",
"content": "Kibanaを使ってElasticsearchのデータを可視化する方法を学びます。"
}
これも同様に成功すれば、2つのドキュメントがインデックスに保存されました。
例3:基本的な検索
インデックスにデータが入ったので、検索をしてみましょう。
json
GET /my_first_index/_search
{
"query": {
"match": {
"content": "Elasticsearch"
}
}
}
GET /my_first_index/_search
:GET
メソッドで/my_first_index/_search
というパスにリクエストを送っています。これはmy_first_index
インデックスを検索するAPIです。{ "query": { ... } }
: リクエストボディで検索クエリを指定しています。これはQuery DSL (Domain Specific Language) と呼ばれるElasticsearch独自のクエリ言語です。"match": { "content": "Elasticsearch" }
:match
クエリは、指定したフィールド(ここではcontent
)に対して、指定したキーワード(ここではElasticsearch
)を含むドキュメントを検索します。Elasticsearchは全文検索エンジンなので、「Elasticsearch」という単語を様々な形で検索対象から見つけ出してくれます(単語の分割、大文字小文字の区別なし、場合によっては類義語など)。
実行すると、右側のレスポンス画面に検索結果が表示されます。
json
{
"took" : ...,
"timed_out" : false,
"_shards" : { ... },
"hits" : {
"total" : {
"value" : 2,
"relation" : "eq"
},
"max_score" : ...,
"hits" : [
{
"_index" : "my_first_index",
"_type" : "_doc",
"_id" : "...",
"_score" : ...,
"_source" : {
"title" : "Elasticsearch入門記事",
"author" : "初心者さん",
"publish_date" : "2023-10-27",
"content" : "Elasticsearchをダウンロードしてインストール、起動、確認する手順を解説しました。"
}
},
{
"_index" : "my_first_index",
"_type" : "_doc",
"_id" : "...",
"_score" : ...,
"_source" : {
"title" : "Kibana入門",
"author" : "学びたいさん",
"publish_date" : "2023-10-28",
"content" : "Kibanaを使ってElasticsearchのデータを可視化する方法を学びます。"
}
}
]
}
}
took
: 検索にかかった時間(ミリ秒)。Elasticsearchの検索がいかに高速か分かります。hits.total.value
: 検索条件に一致したドキュメントの総数。ここでは2件が表示されています。hits.hits
: 検索結果として返されたドキュメントのリスト。各ドキュメントには_index
,_id
, 関連度スコアである_score
、そして元のデータである_source
が含まれます。_source
を見ることで、検索で見つかったドキュメントの内容を確認できます。
この例では、投入した2つのドキュメント両方に「Elasticsearch」という単語が含まれているため、両方が検索結果として返されました。
別の検索クエリも試してみましょう。
json
GET /my_first_index/_search
{
"query": {
"match": {
"author": "初心者さん"
}
}
}
これはauthor
フィールドが「初心者さん」であるドキュメントを検索します。結果として1件目のドキュメントのみが返されるはずです。
このように、KibanaのDev Toolsを使えば、ElasticsearchのAPIを簡単に試すことができます。データの投入、検索、そして様々な設定変更なども、ここでAPIを直接実行して行えます。
ステップ10:トラブルシューティング
Elasticsearchの起動や実行中に問題が発生した場合の、いくつかの一般的な原因と対処法を紹介します。
エラー1:Javaが見つからない、またはバージョンが違う
- エラーメッセージ例:
Error: JAVA_HOME is not set or could not be found.
,could not find java in JRE_HOME or JAVA_HOME
, またはElasticsearch起動直後にJava関連のエラーが表示される。 - 原因: Javaがインストールされていない、環境変数
JAVA_HOME
が設定されていない、またはPATH
にJava実行ファイル(java
コマンド)が含まれていない、あるいはインストールされているJavaのバージョンがElasticsearchの要求するバージョンと異なる。 - 対処法:
- ステップ1に戻り、JDKが正しくインストールされているか、
java -version
コマンドで確認してください。 - インストールされているJavaのバージョンがElasticsearchのバージョンに対応しているか確認してください。
- Windowsの場合、環境変数
JAVA_HOME
にJDKのインストールディレクトリ(例:C:\Program Files\Java\jdk-17
)が設定されているか、Path
環境変数にJDKのbin
ディレクトリ(例:%JAVA_HOME%\bin
またはC:\Program Files\Java\jdk-17\bin
)が追加されているか確認してください。環境変数を変更した場合は、コマンドプロンプト/ターミナルを一度閉じて開き直す必要があります。 - macOS/Linuxの場合、
.bash_profile
,.zshrc
,.profile
などのシェル設定ファイルでJAVA_HOME
が正しく設定され、PATH
に$JAVA_HOME/bin
が追加されているか確認してください。設定ファイルを変更した場合は、source ~/.bash_profile
などのコマンドを実行して設定を反映させるか、新しいターミナルを開いてください。
- ステップ1に戻り、JDKが正しくインストールされているか、
エラー2:ポート番号の競合
- エラーメッセージ例:
java.net.BindException: Address already in use: bind
,Failed to bind to [9200]
など、特定のポート番号(特に9200や9300)を使用できないという内容のメッセージがログに含まれる。 - 原因: Elasticsearchが使用しようとしているポート番号(デフォルトではHTTP用が9200、ノード間通信用が9300)が、既に他のアプリケーションによって使用されている。
- 対処法:
- Elasticsearchが使用しようとしているポート番号(ログメッセージに表示されているはずです)を、他のアプリケーションが使っていないか確認します。Windowsでは
netstat -ano
、macOS/Linuxではnetstat -tuln
やlsof -i :<ポート番号>
などのコマンドで確認できます。 - もし他のアプリケーションがそのポートを使用している場合は、そのアプリケーションを停止するか、Elasticsearchの設定ファイル
config/elasticsearch.yml
を編集して、http.port
やtransport.port
の設定値を未使用の別のポート番号に変更してください。変更後はElasticsearchを再起動する必要があります。
- Elasticsearchが使用しようとしているポート番号(ログメッセージに表示されているはずです)を、他のアプリケーションが使っていないか確認します。Windowsでは
エラー3:メモリ不足
- エラーメッセージ例:
There is insufficient memory for the Java Runtime Environment to continue.
,java.lang.OutOfMemoryError
,JVM arguments: ...
といったログメッセージが表示される。 - 原因: ElasticsearchがJVMに割り当てられているメモリ(ヒープサイズ)が不足している。Elasticsearchはメモリを多く使用する傾向があります。
- 対処法:
config/jvm.options
ファイルを編集して、JVMヒープサイズの最小値 (-Xms
) と最大値 (-Xmx
) を増やします。例えば、デフォルトが1GBなら2GBや4GBに増やしてみてください。ただし、サーバーの物理メモリの半分を超えないように設定することが推奨されます。例えば、PCに8GBのメモリが搭載されているなら、-Xms4g
-Xmx4g
のように設定します。- または、物理メモリ自体が不足している可能性があります。不要なアプリケーションを終了してメモリを解放するか、より多くのメモリを搭載したPCで実行する必要があります。
エラー4:セキュリティ関連のエラー (8.x以降)
- エラーメッセージ例: ブラウザや
cURL
からアクセスした際に「Authentication required」や、SSL/TLSに関するエラーが表示される。Kibanaからの接続に失敗する。 - 原因: Elasticsearch 8.x以降でデフォルトで有効になったセキュリティ機能により、認証やTLS/SSL検証が必要になっている。
- 対処法:
- Elasticsearch起動時にコンソールに表示された、自動生成されたユーザー名 (
elastic
) とパスワード、そして証明書パス(--cacert
オプションで指定するもの)を正確にメモしておき、それらを使って接続する。 - KibanaをElasticsearchに連携させる際、Elasticsearch起動時に表示された
kibana enroll
コマンドを実行するか、Kibanaのセットアップ画面やconfig/kibana.yml
で認証情報(APIキー、ユーザー名/パスワードなど)とElasticsearchのURL、SSL設定を正しく設定する。 - あくまでローカル環境で手軽に試したいだけで、セキュリティが不要な場合は、
config/elasticsearch.yml
でセキュリティ関連の設定(xpack.security.enabled: false
など)をコメント解除してfalse
に設定する(推奨されません)。ただし、設定方法はバージョンによって異なるため、公式ドキュメントを確認してください。
- Elasticsearch起動時にコンソールに表示された、自動生成されたユーザー名 (
一般的なトラブルシューティングのヒント
- ログファイルをチェックする: 問題が発生した際は、必ずElasticsearchディレクトリの
logs
サブディレクトリにあるログファイル(elasticsearch.log
など)を確認してください。ここにエラーや警告の詳細な情報が記録されています。 - 公式ドキュメントを参照する: Elastic社の公式ドキュメントは非常に詳細で正確です。特定のエラーメッセージやバージョンに関する情報は、公式ドキュメントで検索するのが最も効果的です。
- コミュニティを活用する: Elastic社のフォーラムやStack Overflowなどには、同じような問題に遭遇した人々の情報や解決策が豊富にあります。「Elasticsearch [バージョン] [エラーメッセージの一部]」などのキーワードで検索してみましょう。
これらのトラブルシューティングの情報は、Elasticsearchを使っていく上で必ず役に立つでしょう。
ステップ11:次のステップ – さらに学ぶために
Elasticsearchのダウンロード、起動、そしてKibanaを使った基本的な操作までを行うことができました。これはElasticsearchの世界への第一歩にすぎません。Elasticsearchは非常に奥深く、様々な機能を持っています。
次に学ぶべきこと、または興味に応じて掘り下げていくべきトピックをいくつか紹介します。
-
Elasticsearch REST APIの詳細:
KibanaのDev Toolsで少し触れましたが、Elasticsearchの操作はすべてREST APIを通じて行われます。APIの設計思想、HTTPメソッドの使い分け、各種エンドポイント(/_cat
,/_cluster
,/_nodes
,/_indices
など)の意味や使い方を学ぶことは、Elasticsearchをより深く理解するために必須です。 -
Query DSL:
データの検索にはQuery DSLを使用します。match
クエリ以外にも、term
クエリ、range
クエリ、複合クエリ(bool
クエリ)など、様々なクエリタイプがあります。これらを組み合わせて、より複雑で高度な検索条件を指定する方法を学ぶ必要があります。 -
MappingとAnalysis:
Elasticsearchは、投入されたドキュメントのフィールドごとに「マッピング」(データ型やインデックス方法の定義)を自動で行いますが、明示的に定義することも重要です。特にテキストデータの検索性を高めるためには、「アナリシス」(テキストを単語に分解したり、正規化したりする処理)の仕組みを理解し、適切なアナライザーを選択したり、カスタムアナライザーを定義したりする必要があります。日本語の検索には、日本語に特化したアナライザー(例: Kuromoji)が必要です。 -
Aggregations:
Elasticsearchは検索だけでなく、分析も得意です。Aggregations(集計)機能を使うと、検索結果のデータを様々な切り口で集計し、傾向を把握したり、統計情報を得たりできます。KibanaのVisualize機能は、内部でAggregationsを使用しています。 -
Elastic Stackの他のコンポーネント:
Elasticsearchは、単体で使うこともありますが、多くの場合、他のコンポーネントと組み合わせて「Elastic Stack」として利用されます。- Kibana: すでに紹介しましたが、データの可視化や管理に必須です。
- Logstash: 様々なデータソース(ログファイル、データベース、メッセージキューなど)からデータを収集、変換し、Elasticsearchに投入するためのパイプラインツールです。
- Beats: Logstashよりも軽量で、特定の種類のデータを収集してElasticsearchやLogstashに転送するためのツール群(Filebeat, Metricbeat, Packetbeatなど)です。
これらのツールを組み合わせることで、データの収集、変換、保存、検索、分析、可視化という一連のワークフローを構築できます。
-
単一ノードと複数ノード(クラスタリング):
この記事ではローカルで単一ノードを起動しましたが、Elasticsearchの真価は複数ノードでクラスタを組むことで発揮されます。データの分散(シャーディング)や高可用性(レプリケーション)、ノード間の連携、マスター選出などのクラスタリングの仕組みを学ぶと、Elasticsearchのスケーラビリティと耐障害性が理解できます。 -
プロダクション環境での考慮事項:
ローカルで試すのと、実際にサービスで利用するプロダクション環境では考慮すべき点が大きく異なります。セキュリティ(認証、認可、TLS)、監視(モニタリング)、バックアップとリストア、パフォーマンスチューニング(JVM設定、ハードウェア選択)、構成管理、デプロイ方法(Docker, Kubernetesなど)など、運用に関わる知識が必要になります。
学習リソース
- Elastic公式ドキュメント: 最も信頼できる情報源です。機能の網羅性、正確性ともに優れていますが、初心者には少し難しく感じるかもしれません。目的別に探すと良いでしょう。(https://www.elastic.co/guide/)
- Elastic公式チュートリアル: 公式サイトには、特定のタスク(例えばログ分析、メトリック監視など)をElastic Stackで行うためのチュートリアルが豊富に用意されています。
- Elasticウェビナー/イベント: Elastic社は定期的にオンラインやオフラインでイベントを開催しており、最新情報やハンズオン形式のセッションが提供されます。
- オンライン学習プラットフォーム: Udemy, Coursera, Udacity, Pluralsightなど、様々なオンラインプラットフォームでElasticsearchやElastic Stackに関するコースが提供されています。体系的に学びたい場合に有効です。
- 書籍: Elasticsearchに関する書籍も出版されています。特定のバージョンに注意して選ぶと良いでしょう。
- ブログや技術記事: Qiita, Zenn, Mediumなど、様々な技術ブログでもElasticsearchに関する記事が日々公開されています。実践的な情報や特定の課題の解決策を探すのに役立ちます。
- コミュニティ: ElasticのフォーラムやStack Overflowなどのコミュニティで質問したり、他のユーザーの質問を見たりすることで、多くの学びがあります。
まとめ
この記事では、Elasticsearchの入門として、ダウンロードからローカル環境での起動、そして基本的な動作確認までの手順を詳細に解説しました。
- Elasticsearchが必要とするJava環境を確認し、準備しました。
- Elasticsearchの公式ウェブサイトから、あなたの環境に適した形式のファイルをダウンロードしました。
- ダウンロードしたファイルを展開し、Elasticsearchの実行可能な状態にしました。
- 設定ファイル
elasticsearch.yml
の場所や主要な設定項目について学びました。 - コマンドラインからElasticsearchを起動し、その際のログ出力やセキュリティ情報について理解しました。
- ブラウザや
cURL
、KibanaのDev Toolsを使って、Elasticsearchが正しく起動しているか、基本的なAPIで確認しました。 - Elasticsearchの停止方法を学びました。
- Elasticsearchをより使いやすくするためのツールKibanaについても導入し、基本的な操作方法を体験しました。
- 一般的なトラブルシューティングについても触れました。
Elasticsearchの起動は、その広大な機能のほんの入り口です。しかし、この記事を通して、あなた自身のコンピューターでElasticsearchを動かすという最初の一歩を踏み出すことができました。
次にあなたがすることは、興味を持ったトピック(Query DSL、Mapping、Aggregationsなど)をさらに深く学び、実際にデータを投入して様々な検索や分析を試してみることです。KibanaのDiscover機能で投入したデータを探索したり、Visualize機能でグラフを作成したりするのも良いでしょう。
Elasticsearchは、あなたのデータから新しい発見をもたらし、アプリケーションに強力な検索機能を追加し、リアルタイムな洞察を提供するための素晴らしいツールです。
この記事が、あなたのElasticsearch学習の旅の良いスタートとなることを願っています。Happy Elastic Stack-ing!