b接点とは?用途や使い方を解説


b接点とは?電気回路の基本を理解する:用途と使い方を徹底解説

電気回路の制御において、リレーやスイッチといった機器は欠かせない存在です。これらの機器の根幹をなすのが「接点」であり、その中でも「b接点」は特定の重要な役割を担っています。電気制御の現場では、a接点、b接点、そしてそれらを組み合わせたc接点(切替接点)といった異なる種類の接点が、回路の目的に応じて適切に使い分けられています。

本記事では、この電気制御の基礎でありながら、応用範囲の広い「b接点」に焦点を当て、その定義から動作原理、様々な用途、種類、a接点やc接点との違い、さらには選定や使用上の注意点に至るまで、詳細かつ網羅的に解説します。約5000語にわたるこの解説を通じて、b接点に関する深い理解を得ていただき、実際の回路設計や保守に役立てていただくことを目指します。

1. はじめに:接点の基本とb接点の位置づけ

現代の産業機械や自動化システム、さらには身近な家電製品に至るまで、電気による回路制御は不可欠です。この制御の中核を担うのが、電気の流れを「開いたり(遮断したり)」、「閉じたり(通電させたり)」する役割を持つ「接点」です。

接点は、物理的な機械接点を持つリレーやスイッチ、または半導体を用いて電気的にこの開閉を行うソリッドステートリレーなど、様々な形で実現されます。接点の状態によって、回路に電流が流れるか、あるいは遮断されるかが決まるため、接点の動作は回路全体の挙動に直接影響を与えます。

接点には主に以下の3種類があります。

  • a接点(常開接点 / Normally Open / NO): スイッチやリレーが無操作・非励磁状態のときに開いており、操作・励磁時に閉じる接点。
  • b接点(常閉接点 / Normally Closed / NC): スイッチやリレーが無操作・非励磁状態のときに閉じており、操作・励磁時に開く接点。
  • c接点(切替接点 / Changeover / CO または Transfer / TR): 共通端子(COM)を持ち、無操作・非励磁時にb接点側に、操作・励磁時にa接点側に切り替わる接点。a接点とb接点の機能を兼ね備えています。

これらの接点の中でも、b接点は特に「通常状態」で電流を流しておき、「操作された時」に電流を遮断したいという特定の制御ニーズに応えるために使用されます。この特性は、特に「フェールセーフ」の考え方と深く関連しており、安全に関わる回路で重要な役割を果たすことがあります。

本記事では、このb接点に焦点を当て、その詳細なメカニズム、具体的な用途例、そして回路設計者が知っておくべき重要なポイントを深掘りしていきます。

2. 接点の基本概念の再確認

b接点の詳細に入る前に、改めて接点に関する基本的な概念を確認しておきましょう。

接点とは何か?

接点(Contact)とは、電気回路において電流の通り道を開閉する役割を担う部分です。物理的な金属同士が接触・離反することで電気的な接続を切り替えるものが一般的ですが、半導体を利用して電気的に開閉を行うものもあります。リレーやスイッチといった制御機器は、この接点を内部に備えています。

無操作状態と操作状態

接点の種類を定義する上で重要になるのが、「無操作状態」と「操作状態」です。

  • スイッチの場合:
    • 無操作状態:ボタンが押されていない、レバーが倒れていないなど、人や物による物理的な力が加わっていない状態。
    • 操作状態:ボタンが押されている、レバーが倒れているなど、物理的な力が加わっている状態。
  • リレーの場合:
    • 無励磁状態:リレーのコイルに電圧が印加されておらず、電流が流れていない状態。
    • 励磁状態:リレーのコイルに電圧が印加され、電流が流れている状態。

接点は、この「無操作/無励磁状態」での電気的な接続状態と、「操作/励磁状態」での電気的な接続状態によって分類されます。

開いている状態(Open)と閉じている状態(Closed)

  • 開いている状態(Open): 接点間で電気的な接続が断たれている状態。電流は流れません(理想的には無限大の抵抗)。
  • 閉じている状態(Closed): 接点間で電気的な接続が確立されている状態。電流が流れます(理想的にはゼロまたは非常に低い抵抗)。

接点表示記号

電気回路図では、接点の種類を区別するためにJIS(日本工業規格)やIEC(国際電気標準会議)などで定められた記号が用いられます。b接点は以下のような記号で表されます。

----o/---- (JIS記号の例)

この記号は、斜めの線が接点を表し、通常の状態(無操作/無励磁時)で接点が閉じている(線がつながっている状態)ことを示しています。操作/励磁時にはこの線が離れ、開いた状態になります。

3. b接点(常閉接点)とは?定義と特徴

いよいよ本題のb接点について詳しく見ていきましょう。

b接点の定義

b接点は「常閉接点(じょうへいせってん)」と呼ばれ、英語では Normally Closed (NC) と表記されます。その定義はシンプル明快です。

「スイッチやリレーが無操作状態(または非励磁状態)のときに閉じており、操作状態(または励磁状態)になったときに開く接点」

これがb接点の基本的な定義です。

  • 無操作/無励磁時: 接点は閉じている(通電状態)。
  • 操作/励磁時: 接点は開く(遮断状態)。

この動作は、一般的にイメージされる「スイッチを入れると電気が流れる(a接点)」という動きとは逆になります。

「b」の由来

「b接点」の「b」が何を意味するのか、実は明確な国際的な定義はありません。いくつかの説がありますが、代表的なものとして以下のようなものがあります。

  • Break: 操作によって回路が「ブレーク(遮断)」されるため。
  • Before Make: c接点において、共通端子がa接点側に切り替わる「前 (Before)」にb接点側が「開く (Break)」という動作順序から。(ただしこれはブレーク・ビフォア・メイク型のc接点の場合であり、メイク・ビフォア・ブレーク型のc接点もあるため、これも断定はできません。)

いずれにせよ、日本では慣習的に「a接点」「b接点」という呼び方が広く使われており、それぞれ「常開」「常閉」として認識されています。英語圏では主にNO (Normally Open) と NC (Normally Closed) が使用されます。

b接点の基本的な特徴

  • 通常時通電: 何も操作しない状態、リレーが電源を供給されていない状態で電流が流れます。
  • 操作時遮断: スイッチを押す、リレーに電源を入れるといった操作をすると電流が遮断されます。
  • フェールセーフへの応用: 後述しますが、この「通常時通電、操作(異常)時遮断」という特性は、異常発生時や電源喪失時など、システムが意図しない状態になったときに回路を遮断する(安全側へ移行する)という「フェールセーフ」の考え方と非常に相性が良いです。
  • 自己診断性: 回路が断線したり、接点が接触不良を起こしたりして開いてしまった場合、無操作/無励磁時にも電流が流れなくなります。これにより、本来流れるべき電流が流れないことで異常を検出できる場合があります。

4. b接点の動作原理

b接点がどのように「無操作/無励磁時に閉じて、操作/励磁時に開く」という動作を実現しているのか、具体的な構造を伴って見ていきましょう。ここでは代表的なスイッチとリレーを例に挙げます。

4.1. スイッチにおけるb接点の原理

物理的な力を加えて操作するスイッチにおけるb接点は、その内部構造によって実現されます。

  • プッシュボタンスイッチ(モーメンタリ形):

    • 通常、ボタンが押されていない状態では、接点同士が物理的に接触しており、回路が閉じています。
    • ボタンを押すと、その動きが内部の機構(ばねやレバーなど)を介して接点部に伝わり、接点が離れて回路が開きます。
    • ボタンから指を離すと、ばねの力などで接点が元の閉じた状態に戻ります。
    • 非常停止ボタンなど、押している間だけ回路を遮断したい用途でよく使われます。
  • リミットスイッチ:

    • 通常、物体が検出部に触れていない状態では、内部の機構(例えばプランジャーやローラーレバー)が元の位置にあり、接点が閉じています。
    • 物体が検出部に触れて機構を押し込むと、接点部が動作して接点が開き、回路が遮断されます。
    • 物体が離れると、ばねの力で機構が戻り、接点も元の閉じた状態に戻ります。
    • ドアが閉じていることを検出して機械の動作を許可する(ドアが開くと機械停止)といった用途で、安全インターロックによく使用されます。
  • トグルスイッチ/ロッカースイッチ(オルタネイト形):

    • これらのスイッチは、レバーやボタンを操作するたびに状態が保持されるタイプです。b接点として使用する場合、例えば「ON」の位置で接点が開き、「OFF」の位置で接点が閉じるように内部配線されています。
    • 一般的にはa接点やc接点として使われることが多いですが、製品によってはb接点単体、またはc接点として内部にb接点を持つ形で利用可能です。

これらのスイッチは、外部からの物理的な力が直接的または間接的に内部の可動接点を動かし、固定接点との接触・離反を切り替えることでb接点の機能を実現しています。ばねの力が、操作力を取り除いた際に接点を元の「常閉」状態に戻す役割を担います。

4.2. リレーにおけるb接点の原理

電磁リレーにおけるb接点は、コイルの励磁・非励磁による電磁力の発生と、接点の物理的な動きを組み合わせることで実現されます。

電磁リレーの主要な構成要素は以下の通りです。

  • コイル: 電圧を印加すると磁界を発生させる部分。
  • 鉄心(コア): コイルによって発生した磁界を効率よく集める磁性体。
  • アーマチュア(可動鉄片): 鉄心に引き付けられることで動き、接点部を駆動する磁性体の部品。
  • ばね: アーマチュアを鉄心から引き離す方向、すなわち接点を無励磁時の状態(b接点の場合は閉じた状態)に戻そうとする力を与える部品。
  • 固定接点: 動かない側の接点。
  • 可動接点: アーマチュアの動きに伴って移動する接点。b接点機能を持つ可動接点は、無励磁時に固定接点(b接点側)と接触しています。

b接点の動作は以下のようになります。

  1. 非励磁状態(コイルに電圧なし):

    • コイルには電流が流れていないため、磁界は発生しません。
    • アーマチュアはばねの力によって鉄心から離れた位置に保持されます。
    • このとき、可動接点はばねの力によってb接点側の固定接点に押し付けられており、接点は閉じている状態です。回路は通電しています。
  2. 励磁状態(コイルに電圧印加):

    • コイルに電圧を印加すると電流が流れ、鉄心に強い磁界が発生します。
    • 発生した磁力はアーマチュアを鉄心に向かって強く引き付けます。
    • 磁力がばねの力に打ち勝つと、アーマチュアが移動し、それにつながった可動接点がb接点側の固定接点から離れます。
    • 接点は開いた状態となり、回路は遮断されます。
  3. 非励磁状態へ戻る(コイルの電圧除去):

    • コイルへの電圧印加を止めると、電流が流れなくなり磁界が消滅します。
    • アーマチュアへの磁力がなくなり、ばねの力によってアーマチュアと可動接点が元の非励磁状態の位置に戻ります。
    • 可動接点が再びb接点側の固定接点に接触し、接点が閉じて回路は通電状態に戻ります。

このように、リレーのb接点は、コイルの磁力とばねの力のバランスを利用して、電気信号(コイルの励磁)を機械的な接点の開閉動作に変換し、無励磁時を基準とした「常閉」の機能を実現しています。

c接点を持つリレーの場合、1つの可動接点が、非励磁時にはb接点側の固定接点に、励磁時にはa接点側の固定接点に切り替わるように構成されています。b接点は、このc接点において、共通端子が無励磁時に接続される側の端子として存在します。

5. b接点の多彩な用途と具体的な使い方

b接点の「通常時通電、操作/励磁時遮断」という特性は、様々な制御回路で有効に活用されます。特に、特定の条件が「満たされていない間」に回路を動作させたい場合や、異常発生時に安全側へ移行させたい場合に適しています。ここでは、b接点の代表的な用途と具体的な使い方を解説します。

5.1. 停止・非常停止回路

最も一般的で直感的なb接点の用途の一つが、機械やシステムの停止ボタン、特に非常停止ボタンです。

  • 使い方: 非常停止ボタンにはb接点付きのスイッチを使用します。通常運転中はボタンが押されていないため、b接点は閉じており、制御回路(例えばリレーコイルやPLCの入力など)に通電しています。この通電状態が「運転可能」であることを示します。
  • 動作: 非常事態が発生し、作業員がボタンを「押す」と、b接点が開いて制御回路への通電が遮断されます。これにより、機械の動力源が遮断されたり、危険な動作が停止されたりします。
  • b接点を使う理由: フェールセーフの観点からb接点が適しています。もしa接点(押すと閉じる)を停止ボタンに使用した場合、ボタンや配線が断線すると、ボタンを押しても接点が閉じず、停止信号が出せなくなります。しかしb接点であれば、断線した場合、ボタンが押されていなくても「閉じて通電している」という通常の状態が失われ、「開いて通電しない」という停止時と同じ状態になるため、断線が即座に停止につながり、安全性が高まります。非常停止ボタンに関する安全規格では、b接点(またはそれに準ずる強制開離機構付きの接点)の使用が推奨されています。

5.2. 安全ドア/カバーインターロック

産業機械の安全カバーやドアが開いている間に機械が危険な動作をしないようにするインターロック回路にも、b接点付きのリミットスイッチなどが広く使われます。

  • 使い方: 安全カバーやドアが閉じている状態を検出する位置に、b接点付きのリミットスイッチを設置します。カバーが閉じている間、スイッチは操作されずb接点は閉じており、機械の運転を許可する信号(または機械の動力回路を保持する回路)が通電しています。
  • 動作: カバーやドアが「開けられる」(スイッチが操作される)と、b接点が開いて信号が遮断され、機械は停止または動作不能になります。
  • b接点を使う理由: こちらもフェールセーフの思想に基づいています。スイッチの故障(接点溶着以外)や配線断線などでb接点が閉じたままになるリスクよりも、開いたまま(つまり常時停止状態)になるリスクの方が一般的に安全側と考えられます。カバーが閉じていることを検出するスイッチが断線した場合、b接点が開いた状態となり、機械は起動できない、または停止するという安全な状態になります。安全関連の用途では、溶着時にも強制的に開離する構造を持つ安全スイッチのb接点を使用することが必須となる場合があります。

5.3. 異常検出・警報回路

機械の異常状態を検出して警報を鳴らしたり、関連する動作を停止させたりする回路で、b接点を利用することがあります。

  • 使い方: センサーが通常状態のときにON信号(または特定のレベルの信号)を出力し、異常状態のときにOFF信号になるようなセンサーを使用します。このセンサー出力でb接点を持つリレーのコイルを励磁します。
  • 動作:
    • 通常時: センサーはON信号を出力。リレーのコイルが励磁され、b接点は開いています。警報回路は遮断されており、警報は鳴りません。
    • 異常時: センサーはOFF信号を出力。リレーのコイルへの励磁が停止され、b接点が閉じます。警報回路が閉じ、警報ランプが点灯したりブザーが鳴ったりします。同時に、このb接点で機械の運転回路を遮断し、停止させることも可能です。
  • バリエーション: 逆に、センサーが異常時にON信号を出す場合でも、途中にリレーを介して反転させたい場合などにb接点を使用できます。あるいは、通常時は電気が流れていることで監視し、断線やセンサー故障、異常発生(いずれも非通電になる場合)を検出したい場合にもb接点が適しています。

5.4. ランプ表示回路

機械の状態をランプの色などで表示する場合にも、b接点が役立ちます。

  • 使い方例1(異常発生ランプ): 通常運転中は消灯、異常発生時に点灯させたい場合。異常検出リレーのb接点をランプ回路に直列に入れます。
    • 通常時: 異常検出リレーは励磁され、b接点は開いています。ランプ回路は遮断され消灯。
    • 異常時: 異常検出リレーは非励磁となり、b接点が閉じます。ランプ回路が通電し、ランプが点灯して異常を知らせます。
    • この使い方は、異常が継続している間ランプが点灯し続けるため、異常状態の確認に役立ちます。
  • 使い方例2(準備完了ランプ): 特定の条件が全て満たされている(準備完了)間、ランプを点灯させておき、いずれかの条件が外れたら消灯させたい場合。全ての条件が満たされたときに非励磁となるリレーを用意し、そのb接点をランプ回路に直列に入れます。
    • 準備中(条件が一つでも満たされていない): リレーは励磁され、b接点は開いています。ランプは消灯。
    • 準備完了(全ての条件が満たされた): リレーは非励磁となり、b接点が閉じます。ランプが点灯。

5.5. 自己保持回路の解除

シーケンス制御で頻繁に用いられる自己保持回路(a接点を利用して一度ONになった状態を保持する回路)を解除するために、b接点が使われます。

  • 使い方: スタートボタン(a接点)でリレー(例:R1)を自己保持させ、ストップボタン(b接点)でその自己保持を解除するという基本的な回路構成です。R1のコイル回路に、スタートボタンのa接点(並列に自己保持用のR1のa接点)と、ストップボタンのb接点を直列に接続します。
  • 動作:
    • 待機状態: スタートボタンは押されておらずa接点開、ストップボタンは押されておらずb接点閉。R1コイルへの回路は開いており非励磁。
    • スタート: スタートボタンを押すとa接点が閉じ、R1コイルが励磁されます。R1のa接点が閉じて自己保持回路が成立。スタートボタンを離してもR1は励磁状態を保持。
    • ストップ: ストップボタンを「押す」とb接点が開きます。R1コイルへの回路が遮断され非励磁となります。R1のa接点も開き、自己保持が解除されます。ストップボタンを離してもR1は非励磁状態のままとなります。
  • b接点を使う理由: ストップボタンにb接点を使うことで、断線した場合に自己保持が解除され(停止側に倒れ)、危険な連続運転を防ぐことができます。これもフェールセーフの考えに基づいています。

5.6. タイマー回路との組み合わせ

タイマーリレーのb接点を使用することで、特定時間経過後に回路を遮断したり、特定の条件が解除されてから一定時間後に回路を動作させたりといった時間要素を含む制御が可能です。

  • オンディレイタイマーリレー: コイル励磁から設定時間経過後に接点が動作するタイプ。b接点(オンディレイ常閉接点)は、励磁後設定時間経過するまで閉じており、経過後に開きます。励磁が停止すると即座に元の閉状態に戻ります。
  • オフディレイタイマーリレー: コイル非励磁から設定時間経過後に接点が動作するタイプ。b接点(オフディレイ常閉接点)は、非励磁後設定時間経過するまで開いており、経過後に閉じます。励磁すると即座に元の開状態に戻ります。
  • 使い方例: オフディレイタイマーリレーのb接点を使い、機械停止(タイマーコイル非励磁)後、一定時間ファンを回し続ける(ファン回路を閉じ続ける)といった制御が可能です。

5.7. 優先制御・インターロック

複数の動作が同時に起こらないように制御するインターロック回路で、b接点が使われます。

  • 使い方例: モーターを正転・逆転させたい場合、正転中に逆転信号が入っても逆転しないように、正転リレーのb接点を逆転回路に直列に入れ、逆転リレーのb接点を正転回路に直列に入れます。
  • 動作:
    • 正転指令: 正転リレー(R正)が励磁され、R正のa接点でモーターを正転させると同時に、R正のb接点が開きます。このb接点は逆転リレー(R逆)のコイル回路に直列に入っているため、R逆のコイルへの通電が遮断され、逆転指令が入ってもR逆は励磁されません。
    • 逆転指令: 同様に、逆転リレー(R逆)が励磁されると、R逆のb接点が開いて正転リレー(R正)のコイルへの通電を遮断します。
  • これにより、正転・逆転が同時に起こることを防ぎ、ショート事故などを防止します。

このように、b接点は単に回路を開閉するだけでなく、「通常状態」や「安全側」、「禁止条件」などを表現するために非常に有効なツールとなります。回路設計においては、a接点、b接点、c接点を適切に組み合わせることで、複雑な制御や安全対策を実現します。

6. b接点の種類と特徴

b接点は、それが組み込まれている機器の種類や、接点自身の構造、機能によって様々なタイプが存在します。主な種類とそれぞれの特徴を見ていきましょう。

6.1. 機器の種類による分類

  • 電磁リレー (Electromagnetic Relay):

    • 最も一般的なタイプです。コイルへの励磁・非励磁によって接点が開閉します。
    • 構造がシンプルで信頼性が高い。
    • 多様な接点構成(1a, 1b, 1c, 2a, 2b, 2cなど)や定格、サイズのものがあります。
    • コイルと接点が電気的に絶縁されているため、異なる電圧・電流の回路を制御できます。
    • 機械接点のため、寿命(機械的・電気的)があり、チャタリング(ON/OFF時の微細な振動による断続)が発生します。応答速度は比較的遅いです。
    • b接点は、可動接点が無励磁時に常閉側に接触する構造で実現されます。
  • ソリッドステートリレー (Solid State Relay / SSR):

    • 半導体(サイリスタ、トライアック、トランジスタなど)を用いて回路の開閉を行います。物理的な可動接点はありません。
    • 物理的な接点がないため、チャタリングがなく、高速応答が可能で、寿命は半永久的(適切な使用条件下で)。動作音もありません。
    • 「b接点相当」の動作をする製品も存在します。これは、制御入力がないときに導通し、制御入力があるときに非導通となるように内部回路が設計されています。
    • 一般的に電磁リレーに比べて価格が高い傾向があります。また、オン抵抗やオフ時の漏れ電流がある、過電流・過電圧に弱いといった特性もあります。直流用と交流用で構造が異なります。
  • スイッチ類 (各種スイッチ):

    • プッシュボタンスイッチ: 操作力を加えている間だけ状態が変わるモーメンタリ形、状態を保持するオルタネイト形など。非常停止用としては、操作力が解放されても状態を保持し、リセット操作で復帰するラッチング式のb接点付きがよく使われます。
    • リミットスイッチ: 物体との接触によって動作するスイッチ。安全カバーや位置検出用として、b接点付きが多用されます。その検出部に物体がない通常状態で閉じており、物体が触れると開く動作をします。
    • トグルスイッチ、ロッカースイッチ、スライドスイッチ: レバーやノブを操作して状態を切り替えるスイッチ。製品仕様により、b接点単体やc接点として利用可能です。
    • マイクロスッチ: 小型のスナップアクション(急激な開閉)接点を持つスイッチ。微小な動きで確実に接点を切り替えたい場合に使用され、b接点タイプも多くあります。
    • 圧力スイッチ、温度スイッチ、フロートスイッチなど: 特定の物理量(圧力、温度、液面レベルなど)が設定値に達すると接点が動作するスイッチ。これらのスイッチにも、通常時の状態を基準としてa接点、b接点、またはc接点のタイプがあります。例えば、圧力低下で異常を検出したい場合に、通常圧力で閉じており、圧力が低下すると開くb接点付きの圧力スイッチを使用するといった使い方をします。
  • 安全リレー (Safety Relay):

    • 非常停止回路や安全インターロック回路といった、人体の安全に関わる用途に特化したリレーです。
    • IEC 60947-5-1などの安全規格に基づき設計されています。
    • 最も重要な特徴の一つに「強制開離機構 (Forcibly Guided Contacts / Mechanically Linked Contacts)」があります。これは、万が一接点が溶着して閉じっぱなしになった場合でも、リレーが非励磁状態に戻った際には、他の接点(通常はa接点)の動きに機械的に連動して、b接点(安全回路に使用される常閉接点)を強制的に引き離す構造です。これにより、接点溶着による危険な状態を防止し、安全性を高めます。
    • 安全関連のb接点を使用する場合は、この強制開離機構を持つ安全リレーのb接点を選定することが極めて重要です。

6.2. 接点自身の構造や特徴による分類

  • 機械接点: 物理的な接触によって電気回路を開閉します。
    • スナップアクション接点: 開閉時に接点が急激に移動する構造。微小な動きでも大きなストロークが得られ、チャタリングを抑制し、開閉容量を大きくしやすい特徴があります(マイクロスイッチなど)。
    • バット接点: 棒状の接点が垂直に接触・離反する構造。リレーなどで一般的です。
    • ブリッジ接点: U字型の可動接点が2つの固定接点間をブリッジする構造。リレーのc接点などに使われます。
  • 半導体接点 (SSR): 半導体素子の電気的特性を利用して開閉します。物理的な接触・摩耗がありません。

6.3. 機能による分類

  • 標準リレー: 一般的な制御用途に使用されます。
  • 安全リレー: 安全規格に適合し、強制開離機構などを備えています。
  • タイマーリレー: 時間遅延機能を持つリレー。オンディレイまたはオフディレイのb接点があります。
  • ラッチングリレー: 励磁・非励磁状態を保持するタイプ。電源が断たれても直前の状態を維持できます。停電保持が必要な回路などで使用されます。
  • インターフェースリレー: PLCなどの制御機器と、実際の負荷(モーター、ランプなど)の間の信号レベルや容量の違いを調整するために使用される小型リレー。b接点タイプもあります。

7. a接点、b接点、c接点の比較と組み合わせ

電気制御回路では、a接点、b接点、c接点がそれぞれの特性を生かして使い分けられます。それぞれの違いを改めて整理し、どのように組み合わせて使うのかを見ていきましょう。

7.1. 定義と動作の比較

接点種類 英語略称 日本語呼称 無操作/無励磁時の状態 操作/励磁時の状態 主な用途 記号 (JIS/IEC)
a接点 NO 常開接点 開いている 閉じている 運転、起動、表示(ON)、出力 ----o/---- (開)
b接点 NC 常閉接点 閉じている 開いている 停止、非常停止、表示(OFF)、インターロック、安全 ----o/---- (閉)
c接点 CO/TR 切替接点 COM-NC間が閉じている COM-NO間が閉じている 切り替え、選択、反転 (図を参照、COM端子とNO/NC端子を持つ)

7.2. 組み合わせの例:c接点の活用

c接点は、共通端子(COM)とa接点側端子(NO)、b接点側端子(NC)の3つの端子を持ちます。これにより、「一方の回路を遮断すると同時に、もう一方の回路を通電させる」といった切り替え動作が可能になります。実質的には、1つの可動接点が2つの固定接点(a側とb側)の間を切り替わる構造になっています。

  • 用途例1:ランプの色表示切り替え

    • モーター運転中に緑ランプを点灯、停止中に赤ランプを点灯させたい場合。
    • モーター運転リレー(R1)のc接点を使用します。
    • c接点のCOM端子に電源、NO端子に緑ランプ、NC端子に赤ランプを接続します。
    • モーター停止時(R1非励磁): COM-NC間が閉じており、赤ランプが点灯。
    • モーター運転時(R1励磁): COM-NO間が閉じており、緑ランプが点灯。同時にCOM-NC間は開くため、赤ランプは消灯。
  • 用途例2:動力源の切り替え

    • 主電源から非常用電源への切り替えなどにc接点(または専用の切替スイッチ)が使われます。
    • 通常は主電源から供給されるリレーのb接点側を経由して負荷に通電し、停電などでリレーが非励磁になるとb接点側が開き、非常用電源からのa接点側が閉じる、といった回路構成が考えられます。(実際には専用の切替スイッチやATS: Automatic Transfer Switch が使用されることが多いですが、基本原理はc接点の応用です)。
  • 用途例3:排他的制御(インターロック)

    • 前述のモーター正逆運転のインターロックは、それぞれの運転リレーのb接点を相手のコイル回路に直列に入れる方法(電気的インターロック)が一般的ですが、c接点を使って物理的に相手の回路を遮断する構成も考えられます。

b接点を単体で使用する場合と、c接点の一部として使用する場合

b接点単体のリレーやスイッチも存在しますが、多くの場合はa接点、b接点、またはc接点の中から必要なものを選んで使用します。c接点を持つリレーやスイッチは、内部にa接点とb接点の機能が一体化しているため、切り替え用途だけでなく、単にa接点だけが必要な場合、あるいはb接点だけが必要な場合にも使用できます。(例えば、2cのリレーがあれば、2つの独立したa接点としても、2つの独立したb接点としても、あるいは1つのa接点と1つのb接点としても使用可能です。)

回路設計においては、必要な機能(常時通電か、常時遮断か、切り替えか)に応じて適切な接点タイプを選択し、それに応じた機器(リレー、スイッチなど)を選定することが重要です。

8. b接点使用上の重要な注意点と選定ポイント

b接点を適切に選び、安全かつ信頼性の高い回路を構築するためには、いくつかの重要な注意点と選定ポイントがあります。

8.1. 定格の確認

接点の選定において最も基本的ながら重要なのが、定格です。電圧、電流、負荷の種類などを必ず確認し、回路の要求を満たす製品を選びましょう。

  • 接点定格電圧: 接点が開いている間に耐えられる電圧、および閉じた状態で印加できる電圧の上限値です。回路電圧がこれを超えていないことを確認します。
  • 接点開閉容量 (最大開閉電流): 接点を開閉する際に安全に遮断できる最大電流値です。特に負荷が誘導負荷(コイル、モーターなど)や容量性負荷(コンデンサなど)の場合、開閉時に大きなサージ電圧や突入電流が発生するため、抵抗負荷の場合よりも開閉容量が低下します。製品カタログには、負荷の種類ごとの開閉容量が記載されていますので、必ず確認してください。定格を超える電流を開閉すると、接点の劣化(消耗、溶着、アーク発生)が早まり、故障や火災の原因となります。
  • 接点通電容量 (最大通電電流): 接点が閉じた状態で継続して流すことができる最大電流値です。この値を超えると、接点が発熱して劣化や溶着を引き起こす可能性があります。

8.2. 負荷の種類と特性

前述の通り、負荷の種類によって接点にかかる負担は大きく異なります。

  • 抵抗負荷 (Resistive Load): ヒーター、白熱灯など。電流・電圧波形に大きなずれがなく、開閉時のサージや突入電流が比較的小さい。接点にとっては比較的穏やかな負荷です。
  • 誘導負荷 (Inductive Load): モーター、ソレノイド、リレーコイル、電磁石、トランスなど。開回路時に大きな逆起電圧(サージ電圧)が発生し、接点間で大きなアーク(放電)を引き起こしやすい。接点の消耗が激しくなります。サージ吸収素子(ダイオード、バリスタ、CRサージキラーなど)を併用するなどの対策が必要です。
  • 容量性負荷 (Capacitive Load): コンデンサ、長いケーブルなど。閉回路時に大きな突入電流が発生し、接点が溶着する可能性があります。
  • ランプ負荷: 白熱灯は点灯時に定常電流の10~15倍程度の突入電流が流れます。LEDランプや蛍光灯も回路方式によっては大きな突入電流が発生します。
  • モーター負荷: 起動時に定常電流の数倍~10倍程度の突入電流が流れます。

b接点は、回路を「開く」際に特に大きな電流を遮断することが多くなります(例えば運転中のモーターを停止させる場合)。誘導負荷の遮断時には接点間にアークが発生し、接点材質の消耗や表面荒れ、そして最終的には溶着や導通不良の原因となります。適切な定格を持つ製品を選ぶこと、必要に応じてサージ対策を行うことが重要です。

8.3. 寿命(機械的寿命と電気的寿命)

機械接点式のb接点には寿命があります。

  • 機械的寿命: 接点を開閉できる物理的な操作回数の限界を示します。定格電流以下での開閉や無負荷での開閉の場合に参照されます。
  • 電気的寿命: 定格負荷(特に最大開閉容量)を開閉できる回数の限界を示します。接点の消耗は開閉電流の大きさに大きく依存するため、電気的寿命は機械的寿命よりも一般的に短くなります。

頻繁に開閉する用途では、電気的寿命を考慮して適切な接点容量を持つ製品を選定する必要があります。寿命回数に余裕を持たせるか、より高寿命な製品(SSRなど)の検討も必要です。

8.4. 応答速度とチャタリング

  • 応答速度: 信号が入力されてから接点が切り替わるまでの時間。電磁リレーは数ms~数十ms程度の応答時間があります。高速な応答が必要な場合は、応答速度の速いリレーを選ぶか、SSRを検討します。
  • チャタリング: 機械接点が閉じたり開いたりする際に、微細な振動によって接点が瞬間的に接触・離反を繰り返す現象。特にデジタル回路への入力として使用する場合、チャタリングが複数のパルスとして誤認識され、誤動作の原因となります。
    • 対策: ハードウェア的にチャタリング防止回路(RC吸収回路など)を設ける、ソフトウェア(PLCやマイコン)でチャタリング除去処理を行う(一定時間安定した状態を検出してから信号を確定する)などの対策が必要です。

8.5. 環境条件

使用環境も接点の信頼性に影響を与えます。

  • 温度・湿度: 使用温度範囲、湿度範囲に適合しているか確認します。結露するような環境では絶縁性能が低下したり、接点が腐食したりする可能性があります。
  • 雰囲気: 腐食性ガス(硫化水素など)、粉塵、塩分などが存在する環境では、接点や可動部の劣化が早まります。耐環境性に優れた密閉型の製品などを選ぶ必要があります。
  • 振動・衝撃: 振動や衝撃が大きい環境では、接点が意図せず開閉したり(誤動作)、接点溶着のリスクが高まったりします。耐振動・耐衝撃性に優れた製品を選定します。

8.6. 安全規格への適合

非常停止回路や安全インターロックなど、人体の安全に関わる用途に使用するb接点(特に常閉接点)は、IEC 60947-5-1などの関連する安全規格に適合していることが求められます。これらの規格では、接点の溶着防止や、万が一溶着した場合でも危険側にならないための「強制開離機構」を持つ接点(安全リレーなど)の使用が規定されています。安全関連の回路設計においては、コストよりも安全性を最優先し、適切な安全規格に適合した製品(特に強制開離機構付きのb接点)を選定することが絶対条件です。

8.7. 配線と端子

配線材の太さ、端子の種類(ねじ端子、タブ端子、基板実装端子など)、配線方法(適切な圧着端子の使用、ねじの締め付けトルク管理など)も重要です。不適切な配線は、接触抵抗の増加による発熱、断線、短絡などの原因となります。特に制御電源と主回路電源を混同しないように注意が必要です。

8.8. フェールセーフ設計

b接点はフェールセーフ思想と親和性が高いですが、b接点を使うだけで安全が保証されるわけではありません。断線以外の故障モード(例: 接点溶着)も考慮し、システム全体として安全が確保されるように冗長化や監視機能などを組み合わせた設計が必要です。安全関連の用途では、単一の部品故障が危険状態に直結しないように、リスクアセスメントに基づいた適切な安全方策(インターロック、ガード、非常停止など)と、それに適合した部品(安全リレーなど)を選定することが必須です。

9. よくある質問 (FAQ)

Q1: b接点とa接点を間違えて回路を組むとどうなりますか?

回路の意図と異なる動作をします。例えば、本来「押すと停止」させたいボタンにa接点を使ってしまうと、「押すと起動」または「押すと別の動作」になってしまう可能性があります。また、「断線時に停止させたい」という目的でb接点を選んだのにa接点を使ってしまうと、断線しても回路は停止せず、危険な状態が継続する可能性があります。回路の論理と安全性を考慮して、a接点とb接点を正しく使い分けることが不可欠です。

Q2: b接点は必ずリレーにあるのですか? スイッチにもありますか?

いいえ、必ずしもリレーにしかありません。前述の通り、様々な種類のスイッチ(プッシュボタン、リミットスイッチ、トグルスイッチなど)にもb接点単体またはc接点の一部としてb接点が存在します。リレーは電気信号で接点を制御し、スイッチは物理的な力で接点を制御するという違いがありますが、どちらもb接点という機能を持つ製品があります。

Q3: b接点は「ブレーク接点」のことですか?

俗称として「ブレーク接点」と呼ばれることがありますが、これは非励磁時に閉じていて励磁時に開く(ブレークする)という動作を表しています。「b接点」は日本で広く使われる呼び方であり、「常閉接点(Normally Closed / NC)」が正式な名称です。「ブレーク接点」という呼び方は、特にc接点の動作において「ブレーク・ビフォア・メイク(切り替わる際に一旦両方の回路を開く)」という動作特性を表す場合にも使われることがあり、混乱を招く可能性があるため、「b接点」または「常閉接点(NC)」と呼ぶのがより正確です。

Q4: チャタリングとは何ですか? b接点でも起こりますか? 対策は?

チャタリングは、機械接点が開閉する際に、接点が瞬間的に複数回ON/OFFを繰り返す微細な振動現象です。機械的な構造やばねの反発などが原因で発生します。b接点も機械接点であればチャタリングは発生します。開く時にも閉じる時にも発生する可能性があります。デジタル回路(PLCの入力など)がこれを拾うと、意図しない複数回の信号変化として認識され、誤動作の原因になります。

対策としては、以下の方法があります。
1. ハードウェア対策:
* RC吸収回路やシュミットトリガ回路などを接点信号ラインに挿入し、チャタリングによるノイズを平滑化または波形整形する。
* スナップアクション機構を持つスイッチ(マイクロスイッチなど)を使用する。
2. ソフトウェア対策:
* PLCの入力フィルタ機能を使用する。
* プログラム内で、入力信号が安定した状態が一定時間(チャタリング時間より長く)継続した後にのみ、信号を確定として認識するような遅延処理やカウンタ処理を行う。

Q5: 安全リレーのb接点は何が違うのですか?

安全リレーのb接点(特に安全関連回路に使用される常閉接点)の最大の違いは、「強制開離機構 (Forcibly Guided Contacts)」を備えていることです。これは、リレーが非励磁状態(安全側)に戻った際、たとえb接点自体が溶着して閉じっぱなしになっていたとしても、他の接点(特に監視用のa接点など)の動きに機械的に連動して、溶着したb接点を強制的に物理的に引き剥がす構造です。これにより、通常の電磁リレーでは防げない「接点溶着による常時通電」という危険な状態を回避できます。安全関連の規格に適合した回路設計では、この強制開離機構を持つ安全リレーや安全スイッチのb接点を使用することが必須となります。

10. まとめ:b接点理解の重要性

b接点、すなわち常閉接点(Normally Closed / NC)は、電気回路制御において非常に重要な役割を担う接点の一つです。スイッチやリレーが操作されていない「通常の状態」で閉じて(通電して)おり、操作された時に開く(遮断する)というその独自の動作特性は、特に以下のような場面で威力を発揮します。

  • 安全回路: 非常停止や安全インターロックなど、異常発生時や無操作時に「遮断」したい場合。断線などの故障時にも安全側(停止側)に倒れるようにしたいフェールセーフ設計に不可欠です。
  • 監視・表示回路: 特定の条件が「解除されていない間」に状態を表示したり、回路を構成したりしたい場合。
  • 排他制御・インターロック: 一方の動作中に他方の動作を禁止したい場合。
  • 自己保持解除: 一度ONになった状態を、特定の操作でOFFに戻したい場合。

b接点の動作原理は、リレーの電磁力とばねの力のバランス、あるいはスイッチの機械的な機構によって実現されています。その種類は、組み込まれる機器(電磁リレー、SSR、各種スイッチ、安全リレーなど)や構造、機能によって多岐にわたります。

回路設計や機器選定にあたっては、b接点の「定格(電圧、電流、負荷種類ごとの開閉容量・通電容量)」、「寿命(機械的・電気的)」、「応答速度とチャタリング」、「使用環境条件」、そして何よりも「安全規格への適合性(特に安全関連用途)」を十分に考慮することが重要です。不適切な選定や使用は、機器の早期故障だけでなく、重大な事故につながる可能性もあります。

a接点、b接点、そしてc接点の特性を理解し、それぞれの長所を生かして適切に組み合わせることで、より複雑で信頼性の高い、そして安全な電気制御システムを構築することが可能になります。本記事を通じて、b接点に関する知識を深め、電気制御の設計・保守・運用の現場での一助となれば幸いです。

電気回路の制御は、接点の機能と特性を正しく理解することから始まります。b接点は、その中でも特に安全と「通常状態」の維持に関わる重要な要素であり、その理解は電気技術者にとって不可欠なスキルと言えるでしょう。


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