balenaEtcherの使い方を徹底解説!3ステップで簡単OS書き込み

はい、承知いたしました。
balenaEtcherの使い方を徹底解説する、約5000語の詳細な記事を作成します。以下、記事本文です。


balenaEtcherの使い方を徹底解説!3ステップで簡単OS書き込み

パソコンやシングルボードコンピュータ(SBC)の世界に足を踏み入れたとき、多くの人が最初に直面する作業の一つが「OSイメージの書き込み」です。特に、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)で新しいプロジェクトを始めたり、古いパソコンにLinuxをインストールして蘇らせたり、あるいは自作PCにOSをクリーンインストールしたりする際には、この作業が不可欠となります。

しかし、「OSイメージをUSBメモリやSDカードに書き込む」と聞くと、何やら専門的で難しそうな印象を受けるかもしれません。「ISOイメージって何?」「ただファイルをコピーするだけじゃダメなの?」といった疑問が浮かぶのも無理はありません。

そんなOSイメージ書き込みのハードルを劇的に下げ、誰でも直感的かつ安全に作業できるようにしてくれるのが、今回ご紹介する「balenaEtcher(バレナ・エッチャー)」です。

この記事では、balenaEtcherとは何かという基本から、具体的なインストール方法、そして核となる「3ステップでのOS書き込み手順」まで、スクリーンショットがあるかのように一つ一つの操作を丁寧に解説します。さらに、発生しがちなトラブルの解決策や、一歩進んだ応用テクニックまで網羅し、この記事を読めば誰でも自信を持ってbalenaEtcherを使いこなせるようになることを目指します。

この記事を読むことで、あなたは以下のことができるようになります。

  • balenaEtcherの概要と、なぜ多くの人に選ばれているのかがわかる。
  • お使いのPC(Windows, macOS, Linux)にbalenaEtcherをインストールできる。
  • たった3つのステップで、OSイメージをUSBメモリやSDカードに確実に書き込める。
  • 書き込み時に起こりうるエラーの原因を理解し、自力で解決できる。
  • OS書き込み後の次のステップ(Raspberry Piの初期設定など)への見通しが立つ。

さあ、難しそうだと敬遠していたOSイメージ書き込みの世界へ、balenaEtcherという最高のガイドと共に飛び込んでいきましょう!


第1章: balenaEtcherの準備 – インストールと基本画面

何事もまずは準備から。この章では、balenaEtcherをあなたのパソコンに導入し、その基本的な画面構成を理解するところから始めます。

1-1. balenaEtcherとは? なぜ人気なのか?

balenaEtcherは、balena社が開発・提供しているオープンソースのOSイメージ書き込みツールです。その最大の特徴は、「シンプルさ」と「安全性」にあります。

なぜbalenaEtcherが選ばれるのか?

  1. 洗練されたUIと簡単な3ステップ操作: 専門的な知識は一切不要です。画面に表示される「①イメージ選択」「②ドライブ選択」「③書き込み実行」の3ステップに従うだけで、誰でも迷うことなく作業を完了できます。
  2. 高い安全性(ドライブ選択保護): OSイメージ書き込みで最も怖いのが、誤ってPCのシステムドライブや大切なデータが入った外付けHDDをフォーマットしてしまう事故です。balenaEtcherは、システムドライブを書き込み先候補から自動的に隠す「ドライブ保護機能」を備えており、この種のヒューマンエラーを未然に防いでくれます。
  3. 書き込み後の自動検証機能: 書き込みが本当に正しく行われたかを確認する「検証(Validation)」プロセスが自動で実行されます。これにより、SDカードやUSBメモリの不良、書き込み中のエラーなどを見逃すことがなく、「書き込んだはずなのに起動しない」といったトラブルを大幅に減らすことができます。
  4. マルチプラットフォーム対応: Windows, macOS, Linuxという主要なデスクトップOSすべてに対応しています。どのPC環境でも同じ使い勝手で作業できるのは大きなメリットです。
  5. 幅広いイメージ形式に対応: .iso, .img といった標準的なイメージファイルはもちろん、.zip, .gz, .bz2 などの圧縮されたファイルも解凍せずに直接選択できます。ツール側で自動的に展開してくれるため、ユーザーの手間が一つ省けます。

これらの特徴により、balenaEtcherは初心者からプロの開発者まで、世界中の幅広いユーザーに愛用されています。

1-2. balenaEtcherの入手とインストール

それでは早速、balenaEtcherをお使いのPCにインストールしましょう。

公式サイトからダウンロード

まず、WebブラウザでbalenaEtcherの公式サイトにアクセスします。

公式サイト: https://etcher.balena.io/

サイトにアクセスすると、あなたのOSを自動で判別し、最適なバージョンのダウンロードボタンが大きく表示されているはずです。例えば、Windows PCでアクセスすれば「Download for Windows (x64)」といったボタンが表示されます。

もし異なるOS用のインストーラーが必要な場合は、ダウンロードボタンの横にある下向き矢印(▼)をクリックすると、Windows, macOS, Linuxの各バージョン(Installer版やPortable版など)を選択できます。

Installer版とPortable版の違い

  • Installer(インストーラー)版: PCにプログラムをインストールして使用する一般的な形式です。スタートメニューやアプリケーションフォルダに登録され、手軽に起動できます。特別な理由がなければこちらを選ぶのがおすすめです。
  • Portable(ポータブル)版: PCにインストールする必要がなく、ダウンロードしたファイルを解凍(展開)するだけで直接実行できる形式です。USBメモリなどに入れて持ち運び、別のPCで一時的に使いたい場合に便利です。

ここでは、最も一般的なInstaller版を基準に解説を進めます。

OS別インストール手順

【Windowsの場合】

  1. 公式サイトから「Download for Windows (x64)」をクリックし、balenaEtcher-Setup-x.x.x.exe という形式のファイルをダウンロードします。(x.x.xはバージョン番号)
  2. ダウンロードした.exeファイルをダブルクリックして実行します。
  3. ライセンス契約: 「I Agree(同意する)」ボタンが表示されます。ライセンス内容を確認し、「I Agree」をクリックします。
  4. インストールオプション: インストール先などを設定する画面は通常表示されず、すぐにインストールが開始されます。完了すると、自動的にbalenaEtcherが起動し、デスクトップにショートカットが作成されます。

これだけでインストールは完了です。非常にシンプルですね。

【macOSの場合】

  1. 公式サイトから「Download for macOS」をクリックし、balenaEtcher-x.x.x.dmg という形式のファイルをダウンロードします。
  2. ダウンロードした.dmgファイルをダブルクリックして開きます。
  3. ウィンドウが表示され、左側に「balenaEtcher」のアイコン、右側に「Applications」フォルダのエイリアス(ショートカット)が表示されます。
  4. 左側の「balenaEtcher」アイコンを、右側の「Applications」フォルダへドラッグ&ドロップします。これでインストールは完了です。
  5. 初回起動時の注意: LaunchpadやApplicationsフォルダからbalenaEtcherを初めて起動する際、「”balenaEtcher”は、開発元が未確認のため開けません。」という警告が表示されることがあります。これはmacOSのセキュリティ機能によるものです。
    • その場合は、一度「キャンセル」をクリックします。
    • 次に、「システム設定」(古いmacOSでは「システム環境設定」)を開き、「プライバシーとセキュリティ」へ進みます。
    • 画面を下にスクロールすると、「”balenaEtcher”は開発元を確認できないため、使用がブロックされました。」というメッセージと共に「このまま開く」ボタンがあります。これをクリックし、パスワードを入力すれば起動できるようになります。次回以降はこの操作は不要です。

【Linuxの場合 (Debian/Ubuntu系を例に)】

Linuxではいくつかのインストール方法がありますが、最も手軽なのはAppImageを使用する方法です。

  1. 公式サイトのダウンロード選択画面から「Linux x64 (AppImage)」を選び、.AppImage という拡張子のファイルをダウンロードします。
  2. ダウンロードしたAppImageファイルは、そのままでは実行できません。実行権限を付与する必要があります。
    • GUIでの設定: ファイルを右クリック →「プロパティ」→「アクセス権」タブを開き、「プログラムとして実行可能にする」といった趣旨のチェックボックスをオンにします。
    • ターミナルでの設定: ファイルを保存したディレクトリでターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
      bash
      chmod +x balenaEtcher-x.x.x.AppImage

      balenaEtcher-x.x.x.AppImage は実際のファイル名に置き換えてください)
  3. 実行権限を付与したら、ファイルをダブルクリックするか、ターミナルから ./balenaEtcher-x.x.x.AppImage と入力して実行すれば、balenaEtcherが起動します。

1-3. balenaEtcherのインターフェース解説

無事にインストールが完了し、balenaEtcherを起動すると、非常にクリーンで分かりやすい画面が表示されます。

(この部分は記事の読者がイメージしやすいように記述)

画面は大きく3つのセクションに分かれており、これがそのまま書き込みの3ステップに対応しています。

  1. Flash from file / Flash from URL / Clone drive: 書き込みたいOSイメージを選択するエリア。
  2. Select target: 書き込み先のUSBメモリやSDカードを選択するエリア。
  3. Flash!: 書き込みを開始するボタン。

また、画面右上の歯車アイコンをクリックすると、設定画面(Settings)が開きます。

設定(Settings)画面の主要項目

通常はデフォルト設定のままで問題ありませんが、各項目が何をしているかを知っておくと、より安心して使えます。

  • Validate write on success (成功時に書き込みを検証): 非常に重要な機能で、デフォルトでオンになっています。書き込み完了後、書き込んだデータが元のイメージファイルと完全に一致するかをチェックします。これにより、メディアの不良による書き込みエラーを検知できます。必ずオンのままにしておきましょう。
  • Unmount on success (成功時にアンマウント): 書き込みと検証が成功した後、ドライブをOSから安全に取り外せる状態(アンマウント)にします。これもオンのままが便利です。
  • Trim: SSDやeMMCなどのフラッシュストレージに対して書き込みを行う際に、パフォーマンスと寿命を向上させるためのTrimコマンドを有効にします。SDカードやUSBメモリでは通常不要ですが、オンでも問題ありません。
  • Report errors and usage statistics (エラーと使用統計を報告): balenaEtcherの品質向上のために、匿名のデータを開発元に送信します。プライバシーが気になる場合はオフにしても構いません。
  • Show dangerous targets (危険なターゲットを表示): デフォルトでは、balenaEtcherはシステムドライブ(WindowsのCドライブなど)を書き込み先候補として表示しません。この設定をオンにすると、それらの「危険な」ドライブも選択肢に表示されるようになります。初心者の方は絶対にオンにしないでください。

これで準備は万端です。次の章では、いよいよ実際にOSイメージを書き込む手順を詳しく見ていきましょう。


第2章: 実践!3ステップでOSイメージを書き込む

この章では、balenaEtcherの真骨頂であるOSイメージの書き込みプロセスを、具体的な例を交えてステップ・バイ・ステップで解説します。今回は、最も一般的なユースケースである「Raspberry Pi OSのイメージをmicroSDカードに書き込む」というシナリオで進めていきます。

もちろん、UbuntuのイメージをUSBメモリに書き込む場合や、Windowsのインストールメディアを作成する場合でも、手順は全く同じです。

始める前に準備するもの:

  • balenaEtcherをインストールしたPC
  • 書き込み先のメディア(今回はmicroSDカード)
  • PCにmicroSDカードを接続するためのカードリーダー
  • 書き込みたいOSのイメージファイル(今回はRaspberry Pi公式サイトからダウンロードしたRaspberry Pi OSのイメージ)

準備ができたら、PCにカードリーダー経由でmicroSDカードを接続し、balenaEtcherを起動してください。

ステップ1: イメージファイルの選択 (Select image)

最初のステップは、これから書き込むOSの「設計図」であるイメージファイルを選ぶことです。balenaEtcherには、主に3つの選択方法があります。

2-1-1. Flash from file (ファイルから書き込む)

これが最も基本的な使い方です。PC上にダウンロードしておいたイメージファイルを選択します。

  1. balenaEtcherの画面左側にある「Flash from file」ボタンをクリックします。
  2. ファイル選択ダイアログが開きます。あらかじめダウンロードしておいたRaspberry Pi OSのイメージファイル(例: 2023-12-05-raspios-bookworm-arm64-full.img.xz)を探して選択し、「開く」をクリックします。

ポイント: balenaEtcherの賢い点は、.img.iso といった生のイメージファイルだけでなく、.zip, .gz, .xz のように圧縮された状態のままでも直接選択できることです。内部で自動的に解凍処理を行ってくれるため、ユーザーが事前にファイルを解凍する手間を省けます。これは地味ながら非常に便利な機能です。

ファイルを選択すると、ボタンの表示が選択したファイル名に変わり、ステップ1は完了です。

2-1-2. Flash from URL (URLから書き込む) – 応用

もし、イメージファイルをPCに保存せず、直接インターネット上からダウンロードしつつ書き込みたい場合は、この機能が便利です。

  1. 「Flash from file」ボタンの横にあるプルダウンメニューをクリックし、「Flash from URL」を選択します。
  2. 入力欄が表示されるので、そこにOSイメージファイルの直接ダウンロードリンク(URL)を貼り付け、「OK」をクリックします。

この方法は、PCのストレージ容量を節約したい場合や、常に最新版のイメージを書き込みたい場合に役立ちます。ただし、安定したインターネット接続が必要です。

2-1-3. Clone drive (ドライブを複製する) – 応用

これはOSイメージからではなく、すでにあるSDカードやUSBメモリの内容を、別のメディアに丸ごとコピー(クローン)する機能です。

  1. プルダウンメニューから「Clone drive」を選択します。
  2. 「Select source」という画面に切り替わるので、コピー元となるドライブを選択します。
  3. この機能は、例えばセットアップ済みのRaspberry Pi環境をバックアップしたり、同じ設定の環境を複数台作成したりする場合に非常に強力です。

今回は「Flash from file」で進めますので、Raspberry Pi OSのイメージファイルが選択されている状態にしてください。

ステップ2: 書き込み先ドライブの選択 (Select target)

次に、OSイメージを書き込むメディア、つまりmicroSDカードを選択します。このステップは、全工程の中で最も注意を払うべき部分です。

2-2-1. ドライブの自動認識と確認

PCにmicroSDカード(またはUSBメモリ)を1つだけ接続している場合、多くの場合balenaEtcherがそれを自動的に認識し、中央の「Select target」セクションに表示してくれます。

例えば、「SDHC Card (16 GB)」のように、デバイスの種類と容量が表示されます。

【最重要注意喚起】
ここで必ず、表示されているドライブが、これから書き込みを行うつもりの正しいメディアであるかを、その名前と容量から二重、三重に確認してください。 もし誤って、データが入った外付けHDDや、ましてやPCの内部ストレージを選択してしまうと、次のステップでそのドライブのデータはすべて完全に消去されます。

幸いなことに、前述の通りbalenaEtcherはシステムドライブを候補から除外する安全機能を備えていますが、データ保存用のDドライブやEドライブなどが接続されている場合は候補に表示される可能性があります。細心の注意を払いましょう。

2-2-2. ドライブの手動選択

もし自動で選択されたドライブが違う場合や、複数のドライブが接続されていて選択し直したい場合は、「Change」リンクをクリックします。

すると、書き込み可能なドライブの一覧が表示されます。

  • 各ドライブの名前、容量が表示されます。
  • システムドライブは「System drive」と明記され、通常は選択できないようにロックされています。

このリストの中から、間違いなく書き込み対象のmicroSDカードであることを確認して、チェックボックスをオンにし、「Select」ボタンをクリックします。

正しいイメージファイルと、正しい書き込み先ドライブが選択されていることを最終確認してください。

ステップ3: 書き込みの実行 (Flash!)

いよいよ最後のステップです。OSイメージをmicroSDカードに書き込みます。

  1. 画面右側の大きな青いボタン「Flash!」をクリックします。

  2. 管理者権限の要求:

    • Windowsの場合: 「ユーザーアカウント制御(UAC)」のポップアップが表示され、「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」と尋ねられます。「はい」をクリックしてください。
    • macOS / Linuxの場合: ユーザーアカウントのパスワードを入力するよう求められます。パスワードを入力して「OK」をクリックしてください。
    • なぜ管理者権限が必要か?
      OSイメージの書き込みは、ファイルシステムのレベルではなく、もっと低レベルな物理デバイス全体に直接アクセスする必要があります。これはシステムの根幹に関わる操作のため、OSはユーザーに本当にその操作を実行する権限があるかを確認する必要があるのです。
  3. 書き込みプロセスの開始:
    管理者権限を許可すると、すぐに書き込みプロセスが始まります。画面にはプログレスバーと現在の状態が表示され、処理が進んでいく様子を確認できます。

    プロセスは主に3つの段階で進みます。

    • Decompressing (解凍中): 圧縮ファイル(.zipや.xzなど)を選択した場合、最初にこのステップが表示されます。
    • Flashing (書き込み中): イメージデータをブロックごとにmicroSDカードへ書き込んでいます。進行状況がパーセンテージで表示されます。書き込み速度は、イメージのサイズ、PCの性能、そして何よりmicroSDカードやUSBメモリ自体の書き込み速度に大きく依存します。数分から、場合によっては10分以上かかることもあります。
    • Validating (検証中): 書き込みが100%に達すると、自動的に検証プロセスが始まります。これは、書き込んだデータが元のイメージファイルと寸分違わず同じであるかを確認する、非常に重要な工程です。もしここでエラーが出た場合、メディアが不良品であるか、寿命を迎えている可能性が高いです。
  4. 書き込み完了!
    検証も100%に達すると、「Flash Complete!」というメッセージと、緑色の大きなチェックマークが表示されます。

    おめでとうございます! これで、OSが書き込まれた起動可能なmicroSDカードが完成しました。

書き込み完了後の注意点 (特にWindowsユーザー)

書き込みが完了すると、balenaEtcherは設定に従ってメディアをアンマウントします。その直後、Windows PCを使用している場合、「ドライブ X: を使うにはフォーマットする必要があります。」というポップアップが表示されることがよくあります。

これはエラーではありません。絶対に「ディスクのフォーマット」をクリックしないでください。

これは、WindowsがRaspberry Pi OSなどで使われるLinuxのファイルシステム(ext4など)を標準で認識できないために起こる正常な現象です。Windowsから見ると「不明な形式のドライブ」と映るため、親切心(?)でフォーマットを提案してくるのです。

ここでは冷静に「キャンセル」をクリックして、ダイアログを閉じてください。作成したmicroSDカードは、Raspberry Piに挿入すれば問題なく起動します。


第3章: トラブルシューティングと応用テクニック

balenaEtcherは非常に安定したツールですが、それでも時には予期せぬ問題に遭遇することがあります。この章では、よくあるトラブルとその解決策、そしてbalenaEtcherをさらに便利に使うための応用テクニックをご紹介します。

3-1. よくあるエラーとその解決策

ケース1: “Flash Failed!” (書き込み失敗)

プロセスの途中で赤いエラーメッセージと共に書き込みが失敗する場合があります。原因は多岐にわたるため、以下の点を順番に確認してみてください。

  • 物理的な接続を確認する:
    • USBポートの接触不良が原因かもしれません。PCの別のUSBポートにカードリーダーを挿し直してみてください。
    • 可能であれば、別のカードリーダーやUSBケーブルを試してみましょう。安価な周辺機器は故障しやすい部分です。
  • メディア(SDカード/USBメモリ)を疑う:
    • メディア自体が物理的に破損しているか、寿命を迎えている可能性があります。特に安価なノーブランド品のSDカードは品質にばらつきがあります。別の、できれば信頼できるメーカーの新しいメディアで試してみてください。
  • イメージファイルを疑う:
    • ダウンロード中にファイルが破損した可能性があります。公式サイトからOSイメージファイルを再度ダウンロードし直してください。
  • ソフトウェアの干渉を疑う:
    • お使いのアンチウイルスソフトが、balenaEtcherによる低レベルなディスクアクセスを脅威とみなし、ブロックしていることがあります。一時的にアンチウイルスソフトの保護を無効にしてから、再度書き込みを試してみてください。(作業後は必ず有効に戻しましょう)
  • 管理者権限で実行する:
    • (特にWindowsで)balenaEtcherのショートカットを右クリックし、「管理者として実行」を選択してから起動してみてください。権限の問題が解決することがあります。

ケース2: “Validation Error” (検証エラー)

Flashingは100%完了したものの、その後のValidatingでエラーになるケースです。

これは、「書き込みはできたように見えたが、正しく書き込めていなかった」ことを意味します。主な原因は、書き込み先のメディアの品質にあります。

  • メディアの不良: セルの一部が劣化・破損しており、特定の場所にデータを書き込めない、あるいは書き込んでもすぐにデータが化けてしまう状態です。
  • 対処法: このエラーが出たメディアは、信頼性が著しく低いと考えられます。無理に使い続けようとせず、潔く新しいメディアに交換することを強く推奨します。検証機能は、このような不良メディアを早期に発見するための重要なセーフガードなのです。

ケース3: ドライブが認識されない

balenaEtcherを起動しても、接続したはずのSDカードやUSBメモリが書き込み先候補(Select target)に表示されない場合があります。

  • PCがドライブを認識しているか確認:
    • まず、WindowsのエクスプローラーやmacOSのFinderで、ドライブがマウントされているか確認します。
    • もしOSレベルでも認識されていない場合は、抜き差しやPCの再起動を試します。
    • Windowsの場合は「ディスクの管理」、macOSの場合は「ディスクユーティリティ」を開き、OSが物理的にデバイスを認識しているか確認してください。パーティションが破損している場合など、ここにだけ表示されることがあります。
  • balenaEtcherの再起動: 単純なソフトウェアの不具合かもしれません。balenaEtcherを一度完全に終了し、再度起動してみてください。

3-2. 応用テクニック

3-2-1. コマンドラインインターフェース (CLI) の利用

balenaEtcherには、GUIだけでなくCUI(コマンドライン)で操作するためのツールも用意されています。これは主に上級者や開発者向けですが、作業を自動化したい場合に非常に便利です。

balena-cli というツールをインストールすることで、ターミナルやコマンドプロンプトからEtcherの機能を利用できます。

例えば、以下のようなコマンドでイメージの書き込みが可能です。
(※コマンドの詳細はbalena-cliの公式ドキュメントを参照してください)
“`bash

balena-cliをインストール (Node.js/npmが必要)

npm install -g balena-cli

利用可能なドライブをリスト

balena util available-drives

イメージを書き込む (対話形式でイメージとドライブを選択)

balena os initialize /path/to/image.img –drive /dev/sdX
“`
スクリプトに組み込むことで、複数のイメージを順番に書き込んだり、特定の条件下で自動的に書き込みを開始したりといった高度な使い方が可能になります。

3-2-2. OS書き込み後の次のステップ (Raspberry Piの例)

OSの書き込みは、あくまでスタートラインです。特にRaspberry PiのようなSBCでは、書き込み後に一手間加えることで、最初の起動をスムーズにできます。

これはbalenaEtcherの機能ではありませんが、書き込みが完了したSDカードの「boot」という名前のパーティション(Windowsでも読み書き可能)に対して行う便利な設定です。

  • SSHを有効にする:
    ディスプレイやキーボードを接続せずにRaspberry Piを操作したい場合(ヘッドレスセットアップ)、SSH接続が必須です。これを有効にするには、「boot」パーティションの直下に、ssh という名前の空のファイル(拡張子なし)を作成するだけです。
  • Wi-Fi設定を事前に行う:
    有線LANがない環境でも最初からWi-Fiに接続できるように設定できます。「boot」パーティションの直下に、wpa_supplicant.conf という名前のファイルを作成し、以下の内容を記述して保存します。

    “`
    country=JP
    ctrl_interface=DIR=/var/run/wpa_supplicant GROUP=netdev
    update_config=1

    network={
    ssid=”あなたのWi-Fiネットワーク名”
    psk=”あなたのWi-Fiパスワード”
    }
    ``“あなたのWi-Fiネットワーク名”“あなたのWi-Fiパスワード”`を、ご自身の環境に合わせて書き換えてください。

これらの設定をしておけば、SDカードをRaspberry Piに挿して電源を入れるだけで、自動的にWi-Fiに接続され、他のPCからSSHでログインできるようになります。


まとめ

この記事では、OSイメージ書き込みツールの決定版ともいえる「balenaEtcher」について、その基本からインストール、具体的な3ステップの操作方法、そしてトラブルシューティングまで、徹底的に解説しました。

最後に、balenaEtcherの素晴らしさをもう一度振り返ってみましょう。

  • とにかく簡単: 複雑なオプションは一切なし。画面の指示に従うだけの3ステップで誰でも操作できます。
  • 非常に安全: システムドライブを保護する機能により、最も恐ろしい「誤フォーマット」のリスクを最小限に抑えてくれます。
  • 確実な書き込み: 自動検証機能が、メディアの不良や書き込みエラーを見逃さず、起動しないメディアを作ってしまう失敗を防ぎます。

かつてはコマンドラインを駆使したり、専門的なツールをいくつも試したりする必要があったOSイメージの書き込み作業は、balenaEtcherの登場によって、驚くほど手軽で安心なものになりました。

あなたがこれからRaspberry Piで電子工作の冒険を始めるのであれ、古いPCにLinuxを導入して新たな命を吹き込むのであれ、balenaEtcherはあなたの力強い味方となってくれるはずです。

この記事が、あなたのデジタルライフにおける新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば、これ以上嬉しいことはありません。さあ、イメージファイルをダウンロードして、あなたのプロジェクトを始めましょう!

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