はい、承知いたしました。
AWSの始め方について、特に管理コンソールに焦点を当てた約5000語の詳細な記事を作成します。以下、記事本文です。
AWSの始め方:管理コンソールの基本と使い方をゼロから学ぶ
はじめに:クラウドの世界へようこそ
現代のIT業界でその名を聞かない日はないほど、圧倒的な存在感を放つ「AWS(Amazon Web Services)」。あなたが今見ているWebサイトや、日常的に使っているスマートフォンアプリの裏側でも、AWSが動いている可能性は非常に高いです。
「クラウドって難しそう…」「プログラマーじゃないと使えないのでは?」そんな風に感じている方も多いかもしれません。しかし、AWSは専門家だけのものではありません。その中心的な操作画面である「AWSマネジメントコンソール」は、直感的なグラフィカルインターフェース(GUI)を提供しており、初心者でも基本的なサービスを動かすことができます。
この記事は、AWSに初めて触れる方、ITインフラの知識に自信がない方、そしてクラウドの世界に足を踏み入れたいと考えているすべての方を対象としています。目的はただ一つ、「AWSマネジメントコンソールをゼロから理解し、自信を持って使いこなせるようになること」。
この記事を読み終える頃には、あなたは以下のことができるようになっています。
- 安全なAWSアカウントを作成し、初期設定を完了できる。
- AWSマネジメントコンソールの画面構成を理解し、目的のサービスへ迷わずアクセスできる。
- EC2(仮想サーバー)、S3(ストレージ)といった主要なサービスを実際に立ち上げ、操作できる。
- 意図しない課金を防ぎ、コストを管理するための基本的な知識を身につけている。
さあ、準備はいいですか?あなたの手で、世界最大のクラウドプラットフォームの扉を開きましょう。
第1章:AWSアカウントの作成 – クラウドへの第一歩
AWSを利用するためには、まず「AWSアカウント」を作成する必要があります。これは、あなたのクラウド上の拠点となるもので、すべてのサービス利用や請求情報がこのアカウントに紐づきます。
1.1 アカウント作成の前に準備するもの
スムーズに登録を進めるために、以下の3点を手元に用意してください。
- メールアドレス: AWSからの通知やログインに使用します。普段お使いのもので構いませんが、このアカウントの管理者(ルートユーザー)情報となるため、安全に管理できるアドレスを選びましょう。
- クレジットカードまたはデビットカード: AWSは従量課金制のため、支払い情報の登録が必須です。登録時に有効性を確認するために少額(例: 1ドル)の請求が発生することがありますが、これは後で返金されます。
- 電話番号: 本人確認のために使用します。SMSが受信できるスマートフォンか、自動音声が受けられる電話番号が必要です。
1.2 知っておきたい「AWS無料利用枠(Free Tier)」
「クラウドは使った分だけお金がかかる」と聞いて、不安になる方もいるでしょう。しかし、ご安心ください。AWSには「無料利用枠」という素晴らしい制度があります。
これは、アカウント作成から12ヶ月間、特定のサービスを一定量まで無料で利用できるというものです。例えば、
* Amazon EC2(仮想サーバー): t2.micro
または t3.micro
インスタンスを毎月750時間(約1ヶ月分)
* Amazon S3(ストレージ): 標準ストレージを5GB
* Amazon RDS(データベース): db.t2.micro
インスタンスを毎月750時間
など、主要なサービスを試すには十分な枠が用意されています。この記事のハンズオンも、この無料利用枠の範囲内で実施します。ただし、無料枠を超過した分は課金対象となるため、後述するコスト管理の知識も合わせて身につけておくことが重要です。
1.3 ステップ・バイ・ステップ!アカウント作成手順
それでは、実際にアカウントを作成していきましょう。
-
AWS公式サイトへアクセス:
https://aws.amazon.com/ にアクセスし、画面右上にある「コンソールにサインイン」または「AWSアカウントを作成」ボタンをクリックします。 -
ルートユーザー情報の入力:
サインイン画面の下部にある「AWSアカウントを新規作成」をクリックします。- ルートユーザーのEメールアドレス: 準備したメールアドレスを入力します。
- AWSアカウント名: あなたの名前や会社名など、アカウントを識別するための名前を入力します。これは後から変更可能です。
入力後、「Eメールアドレスを検証」ボタンをクリックすると、入力したアドレスに確認コードが送信されます。メールを確認し、コードを入力して検証を完了してください。
-
パスワードの作成:
ルートユーザーのパスワードを設定します。大文字、小文字、数字、記号を含む、強固なパスワードを設定してください。このパスワードは非常に重要なので、安全な場所に保管しましょう。 -
連絡先情報の入力:
- アカウントの種類: 個人で利用する場合は「パーソナル」、法人利用の場合は「ビジネス」を選択します。
- 氏名、電話番号、国、住所などを入力します。すべて英語(ローマ字)で入力するのが基本です。
-
請求情報(クレジットカード)の入力:
準備したクレジットカードまたはデビットカードの情報を入力します。この情報に基づいて、無料枠を超えた利用料金が請求されます。 -
本人確認:
電話番号による本人確認が行われます。- 国コードを選択し、電話番号を入力します。
- 確認方法として「テキストメッセージ(SMS)」または「音声通話」を選択します。
- セキュリティチェックの文字を入力し、「SMSを送信する」または「電話を受ける」をクリックします。
すぐに指定した方法で確認コードが届くので、画面に入力して本人確認を完了します。
-
サポートプランの選択:
AWSのサポートプランを選択します。ここでは「ベーシックサポート – 無料」を選択すれば問題ありません。技術的なサポートが必要になった際に、有料プランへアップグレードできます。 -
登録完了:
「登録が完了しました」という画面が表示されたら、アカウント作成は成功です。「コンソールへ進む」ボタンをクリックしましょう。
初回ログイン時は、先ほど登録した「ルートユーザー」としてログインします。メールアドレスを入力し、次の画面でパスワードを入力すれば、いよいよAWSマネジメントコンソールの世界が広がります。
第2章:セキュリティの要!IAMの初期設定
アカウントを作成したばかりのあなたは、現在「ルートユーザー」としてログインしています。ルートユーザーは、そのAWSアカウントにおける全ての権限を持つ、いわば「神」のような存在です。建物の例で言えば、全ての部屋を開けられる「マスターキー」です。
便利に思えるかもしれませんが、このマスターキーを日常的に使うのは非常に危険です。万が一、IDとパスワードが漏洩してしまえば、攻撃者はあなたのアカウントで何でもできてしまいます。高額なサービスを勝手に利用されたり、大切なデータを削除されたりするリスクがあるのです。
そこで、AWS利用の鉄則として「ルートユーザーは日常的な作業に使わない」というルールがあります。ルートユーザーは、アカウントの解約や支払い情報の変更など、ごく限られた操作にのみ使用し、普段は厳重に保管します。
では、普段の作業はどうするのか?ここで登場するのが「IAM(Identity and Access Management)」です。
2.1 IAMとは? – 安全なアクセスのための鍵管理
IAMは、AWSリソースへのアクセスを安全に管理するためのサービスです。建物の例えを続けるなら、各部屋(サービス)にアクセスするための個別の鍵(ユーザー)を作成し、その鍵で開けられる扉(権限)を細かく設定する「鍵管理システム」のようなものです。
IAMの主要な構成要素を理解しておきましょう。
- IAMユーザー: AWSを操作する「人」または「アプリケーション」です。個別のIDとパスワード(またはアクセスキー)を持ちます。これが普段使いの「鍵」になります。
- IAMグループ: IAMユーザーの集合体です。例えば「開発者グループ」「管理者グループ」のように、役割ごとにユーザーをまとめることができます。
- IAMポリシー: 「何(どのサービス)に対して」「何(読み取り、書き込みなど)を」「許可するか/拒否するか」を定義した権限設定のルールブックです。JSON形式で記述されます。
- IAMロール: 特定のAWSサービスや別のAWSアカウントなどが、一時的に権限を引き受けるための仕組みです。今回は深く触れませんが、高度な連携で重要な役割を果たします。
これから行うのは、日常作業用の「IAMユーザー」を作成し、それに強力な権限を与え、そのユーザーでAWSを操作する、というセキュリティのベストプラクティスです。
2.2 実践!管理者IAMユーザーの作成とMFA設定
それでは、あなた自身の分身となる管理者権限を持ったIAMユーザーを作成しましょう。
-
IAMダッシュボードへ移動:
マネジメントコンソール上部の検索バーに「IAM」と入力し、表示された「IAM」サービスをクリックします。 -
IAMユーザーの作成:
左側のナビゲーションペインから「ユーザー」を選択し、「ユーザーを作成」ボタンをクリックします。- ステップ1: ユーザー詳細の指定
- ユーザー名: ログイン時に使用する名前を入力します(例:
my-admin-user
)。 - AWS マネジメントコンソールへのユーザーアクセスを提供する: このチェックボックスをオンにします。これにチェックを入れることで、パスワードでコンソールにログインできるようになります。
- 「IAM ユーザーを作成します」を選択します。
- コンソールパスワード: 「カスタムパスワード」を選択し、推測されにくい強固なパスワードを設定します。
- パスワードのリセットが必要: チェックを外しておきましょう。オンにすると、初回ログイン時にパスワード変更が求められます。
- ユーザー名: ログイン時に使用する名前を入力します(例:
- 「次へ」をクリックします。
- ステップ1: ユーザー詳細の指定
-
アクセス許可の設定:
- ステップ2: 許可を設定
- 「ポリシーを直接アタッチする」を選択します。
- ポリシーのリストが表示されるので、検索ボックスに
AdministratorAccess
と入力します。 - 表示された「AdministratorAccess」ポリシーの左にあるチェックボックスをオンにします。これは、ルートユーザーとほぼ同等の強力な権限を持つポリシーです。
- 「次へ」をクリックします。
- ステップ2: 許可を設定
-
確認と作成:
- ステップ3: 確認して作成
- 設定内容(ユーザー名、アタッチしたポリシーなど)を確認し、問題がなければ「ユーザーの作成」ボタンをクリックします。
- ステップ3: 確認して作成
-
成功画面とログイン情報の確認:
「ユーザーが正常に作成されました」という画面が表示されます。この画面には、コンソールサインインURLが表示されています。このURLは、https://<アカウントID>.signin.aws.amazon.com/console
のような形式です。このURLをブックマークしておきましょう。IAMユーザーでログインする際は、この専用URLからアクセスするのが便利です。
2.3 セキュリティ強化の切り札「MFA(多要素認証)」
パスワードだけでは、まだ不十分です。セキュリティを盤石にするために、MFA(Multi-Factor Authentication)を設定します。これは、ID/パスワードに加えて、スマートフォンアプリなどが生成する一時的なコード(ワンタイムパスワード)を要求することで、不正ログインを強力に防ぐ仕組みです。
-
MFA設定画面へ:
先ほど作成したIAMユーザー(例:my-admin-user
)の名前をクリックし、ユーザー詳細画面に移動します。
「セキュリティ認証情報」タブをクリックし、「多要素認証 (MFA)」のセクションにある「MFAを割り当てる」をクリックします。 -
MFAデバイスの設定:
- デバイス名: 識別しやすい名前を入力します(例:
my-smartphone
)。 - 認証アプリケーション: 「認証アプリケーション」を選択します。スマートフォンに「Google Authenticator」や「Microsoft Authenticator」などの認証アプリを事前にインストールしておいてください。
- 「次へ」をクリックします。
- デバイス名: 識別しやすい名前を入力します(例:
-
QRコードのスキャンとコード入力:
- 画面にQRコードが表示されます。スマートフォンの認証アプリを起動し、このQRコードをスキャンします。
- アプリにAWSアカウントが登録され、6桁のコードが生成されるようになります。
- 画面の「MFAコード1」に、アプリに表示されているコードを入力します。
- コードが更新されるのを待ち、「MFAコード2」に新しいコードを入力します。
- 「MFAを追加」をクリックします。
これでMFAの設定は完了です。「MFAデバイスが正常に割り当てられました」と表示されれば成功です。
2.4 IAMユーザーでの再ログイン
すべての設定が終わったら、一度ルートユーザーからサインアウトし、今作成したIAMユーザーでログインし直してみましょう。
- コンソール右上のアカウント名をクリックし、「サインアウト」を選択します。
- 先ほどブックマークしたコンソールサインインURLにアクセスします。
- アカウントID(またはエイリアス)が既に入力されているはずです。
- 作成したIAMユーザーの「ユーザー名」と「パスワード」を入力してサインインします。
- MFAコードの入力を求められるので、スマートフォンの認証アプリに表示されているコードを入力します。
無事にログインできれば、IAMの初期設定は完璧です!これ以降、日常的な作業はすべてこのIAMユーザーで行います。
第3章:AWSマネジメントコンソールの探検 – 画面の見方と基本操作
IAMユーザーでログインすると、広大なAWSの世界の玄関口である「AWSマネジメントコンソール」のホーム画面が表示されます。一見すると情報量が多くて圧倒されるかもしれませんが、構造を理解すれば非常に使いやすいツールです。
コンソール画面は、大きく分けて「ヘッダーナビゲーションバー」と「メインコンテンツエリア」の2つで構成されています。
3.1 ヘッダーナビゲーションバーの徹底解説
画面上部に常に表示されている黒い帯がヘッダーナビゲーションバーです。ここには、AWSを操作する上で最も重要な機能が集約されています。
-
① AWSロゴ:
左端にあるオレンジ色の「aws」ロゴ。どのサービスの画面を開いていても、ここをクリックすればコンソールのホーム画面に戻ることができます。迷子になったときの帰る場所です。 -
② サービスメニュー:
ロゴの隣にある「サービス」をクリックすると、AWSが提供する200以上のサービスが一覧で表示されます。- 検索バー: 使いたいサービス名がわかっていれば、ここに入力するのが最も早いです(例:
EC2
,S3
)。 - 最近アクセスしたサービス: あなたが最近使ったサービスがリストアップされ、素早く再アクセスできます。
- カテゴリ別: 「コンピューティング」「ストレージ」「データベース」など、カテゴリ別にサービスが分類されています。どんなサービスがあるか眺めてみるだけでも面白いでしょう。
- 検索バー: 使いたいサービス名がわかっていれば、ここに入力するのが最も早いです(例:
-
③ リソース検索バー:
中央にある大きな検索バーです。これはサービスを探すだけでなく、作成済みのリソース(EC2インスタンスやS3バケットなど)を名前やIDで直接検索できます。大規模な環境で特定のサーバーを探す際に非常に便利です。 -
④ CloudShell:
雲の形をしたターミナルのアイコン。これをクリックすると、ブラウザ内でコマンドラインインターフェース(CLI)が起動します。ちょっとしたコマンドを実行したいときに、わざわざ自分のPCにツールをインストールしなくても済む便利な機能です。 -
⑤ 通知(ベルアイコン):
AWSからの重要なお知らせや、あなたが設定したアラーム(後述するCloudWatchアラームなど)の通知がここに表示されます。定期的にチェックする習慣をつけましょう。 -
⑥ アカウント名メニュー:
右端に表示されている、あなたのIAMユーザー名(ユーザー名@アカウントID
)です。ここをクリックすると、重要なメニューが表示されます。- アカウント: アカウント設定ページへ移動します。
- 請求ダッシュボード: 料金の確認や支払い設定を行うページへ移動します。非常に重要です。
- セキュリティ認証情報: パスワードの変更やMFAの管理など、IAM関連の設定画面へ移動します。
- サインアウト: コンソールからログアウトします。
-
⑦ リージョンセレクター:
アカウント名の左隣にある地名(例:米国東部 (バージニア北部)
)が表示されている部分です。これはAWSを操作する上で最も重要な概念の一つです。- リージョンとは?: AWSは世界中の様々な地域にデータセンター群を設置しており、その地理的な拠点を「リージョン」と呼びます。東京、大阪、バージニア、オレゴン、フランクフルトなど、多数のリージョンが存在します。
- なぜ重要か?:
- レイテンシー(遅延): ユーザーに近いリージョンでサービスを動かすほど、応答速度が速くなります。日本のユーザーを対象とするなら、東京リージョンや大阪リージョンを選ぶのが基本です。
- 料金: サービス料金はリージョンごとに異なります。一般的に、新しいリージョンは少し高価な傾向があります。
- サービス提供状況: 最新のサービスは、まず特定のリージョン(バージニア北部など)で提供が開始され、その後他のリージョンに展開されることがあります。
- 注意点: EC2やRDSなど多くのサービスはリージョンに閉じています。例えば、東京リージョンで作成したEC2インスタンスは、リージョンセレクターをオレゴンに切り替えても表示されません。「リソースが見当たらない!」と焦ったら、まずリージョンが合っているかを確認しましょう。
-
⑧ サポートメニュー:
「?」マークのアイコン。クリックすると、ドキュメント、チュートリアル、サポートセンターへのリンクなどが表示されます。困ったときの助けになります。
3.2 メインコンテンツエリアの解説
ヘッダーの下に広がる白いエリアがメインコンテンツエリアです。コンソールホームでは、便利な情報がウィジェット形式で表示されています。
- AWSへようこそ: 現在のリージョンや、基本的なサービスの起動ボタンが配置されています。
- 最近アクセスしたサービス: ヘッダーのサービスメニューと同じく、最近使ったサービスへのショートカットです。
- コストと使用状況: 現時点での利用料金の概算が表示されます。常に意識しておきたい情報です。
- AWS Health: あなたのアカウントに関連するサービスの障害情報やメンテナンス通知などが表示されます。
- Trusted Advisor: AWSのベストプラクティスに基づいて、あなたの環境を自動でチェックし、コスト削減、パフォーマンス向上、セキュリティ強化などの観点で推奨事項を提示してくれます。
これらのウィジェットは、右上の「ウィジェットを追加」ボタンで追加したり、ドラッグ&ドロップで位置を入れ替えたり、不要なものを削除したりと、自由にカスタマイズが可能です。
第4章:主要サービスを触ってみよう – 実践ハンズオン
コンソールの見方がわかったところで、いよいよAWSの心臓部とも言える主要なサービスを実際に動かしてみましょう。ここでは、以下の3つのサービスを無料利用枠の範囲で作成し、削除するまでを体験します。
- EC2 (Elastic Compute Cloud): 仮想サーバー
- S3 (Simple Storage Service): オブジェクトストレージ
- RDS (Relational Database Service): マネージドデータベース
【重要】ハンズオンを終えたら、課金を防ぐために必ず作成したリソースを削除してください。削除手順も各セクションの最後に記載します。
4.1 EC2 – クラウド上に仮想サーバーを立ち上げる
EC2は、AWSで最も基本的かつ重要なサービスです。数分で仮想的なコンピューター(サーバー)を起動し、Webサーバーやアプリケーションサーバーとして利用できます。
-
リージョンの確認:
まず、ヘッダー右上のリージョンセレクターが「アジアパシフィック (東京)」になっていることを確認してください。なっていなければ変更します。 -
EC2ダッシュボードへ:
上部の検索バーに「EC2」と入力し、サービスを選択してEC2ダッシュボードに移動します。 -
インスタンスの起動:
ダッシュボード中央にある「インスタンスを起動」ボタンをクリックします。新しいインスタンス起動ウィザードが開きます。 -
名前とタグ:
- 名前: インスタンスを識別するための名前を入力します(例:
my-first-server
)。
- 名前: インスタンスを識別するための名前を入力します(例:
-
AMIの選択:
- AMI (Amazon Machine Image) とは、OSやソフトウェアを含むサーバーのテンプレートです。
- 「クイックスタート」の中から「Amazon Linux」を選択します。その下にあるAMIが「Amazon Linux 2 AMI (HVM) – Kernel 5.10」などになっていることを確認します。「無料利用枠の対象」というラベルが付いているはずです。
-
インスタンスタイプの選択:
- インスタンスタイプは、サーバーのCPU、メモリ、性能を決定します。
- リストから「t2.micro」を選択します。これも「無料利用枠の対象」ラベルが付いています。もし
t2.micro
がなければ、t3.micro
でも構いません。
-
キーペアの作成:
- キーペアは、作成したサーバーに安全にログイン(SSH接続)するための「鍵」です。
- 「キーペア (ログイン)」セクションで、「新しいキーペアの作成」をクリックします。
- キーペア名: 任意の名前を入力します(例:
my-tokyo-key
)。 - キーペアのタイプは「RSA」、プライベートキーファイル形式は「.pem」のままでOKです。
- 「キーペアを作成」ボタンをクリックすると、
my-tokyo-key.pem
というファイルがダウンロードされます。このファイルは再ダウンロードできない非常に重要なものです。絶対に紛失しないように、安全な場所に保管してください。
-
ネットワーク設定:
- 「ネットワーク設定」セクションの「編集」をクリックします。
- ここでは、ファイアウォールの設定を行います。「セキュリティグループのルールを追加」で、以下の設定がされていることを確認します。
- タイプ:
SSH
- ソースタイプ:
マイIP
- タイプ:
マイIP
を選択すると、現在あなたが接続しているIPアドレスが自動で入力されます。これにより、あなたのPCからのみこのサーバーにSSH接続が許可され、セキュリティが高まります。
-
ストレージの設定:
- デフォルトの8GiBのままでOKです。無料利用枠では最大30GiBまで利用できます。
-
起動!:
右側の「概要」パネルで設定内容を確認し、問題がなければ「インスタンスを起動」ボタンをクリックします。 -
状態の確認:
EC2ダッシュボードの「インスタンス」メニューに戻ると、今作成したインスタンスが表示されます。「インスタンスの状態」が「保留中(pending)」から「実行中(running)」に変われば、サーバーの起動は完了です。
【重要】EC2インスタンスの終了(削除)
EC2インスタンスは、停止(Stop)しているだけではストレージ(EBSボリューム)の料金がかかり続けます。完全に課金を止めるには、終了(Terminate)する必要があります。
- EC2ダッシュボードの「インスタンス」画面で、終了したいインスタンスのチェックボックスをオンにします。
- 画面上部の「インスタンスの状態」プルダウンメニューから「インスタンスを終了」を選択します。
- 確認ダイアログが表示されるので、「終了」をクリックします。
- インスタンスの状態が「シャットダウン中」→「終了済み(terminated)」に変われば完了です。終了したインスタンスはしばらくリストに残りますが、やがて表示されなくなります。
4.2 S3 – 無限に使えるデータ保管庫
S3は、画像、動画、ログファイルなど、あらゆるデータを容量無制限で保管できるオブジェクトストレージサービスです。非常に安価で高い耐久性を誇ります。
-
S3ダッシュボードへ:
上部の検索バーに「S3」と入力し、サービスを選択してS3ダッシュボードに移動します。 -
バケットの作成:
- S3では、データを「バケット」という入れ物(フォルダのようなもの)に格納します。
- 「バケットを作成」ボタンをクリックします。
- バケット名: 世界中の全AWSユーザーで一意(ユニーク)な名前を付ける必要があります。他の人と重複しないよう、自分の名前や日付などを組み合わせましょう(例:
my-unique-bucket-20231027-tky
)。小文字、数字、ハイフンのみ使用可能です。 - AWSリージョン: 「アジアパシフィック (東京) ap-northeast-1」を選択します。
- パブリックアクセスをすべてブロック: デフォルトのチェックが入ったままにしておきます。これにより、意図せずファイルがインターネット上に公開されるのを防ぎます。セキュリティ上、非常に重要な設定です。
- その他の設定はデフォルトのままで、「バケットを作成」をクリックします。
-
オブジェクト(ファイル)のアップロード:
- 作成したバケット名をクリックして、バケット内に入ります。
- 「アップロード」ボタンをクリックします。
- 「ファイルを追加」ボタンからPC上の適当なファイル(画像やテキストファイルなど)を選択するか、ファイルをドラッグ&ドロップします。
- 画面を下にスクロールし、「アップロード」ボタンをクリックします。
- アップロードが完了すると、バケット内にファイルが表示されます。
-
オブジェクトの確認:
- アップロードしたファイル名をクリックすると、オブジェクトの詳細画面が表示されます。オブジェクトURLなどが確認できますが、現在はパブリックアクセスをブロックしているため、このURLにアクセスしてもエラーになります。
【重要】S3リソースの削除
-
オブジェクトの削除:
- まず、バケットの中身を空にする必要があります。
- 削除したいオブジェクトのチェックボックスをオンにし、上部の「削除」ボタンをクリックします。
- 確認画面で、テキストボックスに「
permanently delete
」と入力し、「オブジェクトの削除」ボタンをクリックします。
-
バケットの削除:
- バケットが空になったら、S3のバケット一覧画面に戻ります。
- 削除したいバケットのラジオボタンを選択し、「削除」ボタンをクリックします。
- 確認画面で、テキストボックスにバケット名を入力し、「バケットを削除」ボタンをクリックします。
これでS3リソースは完全に削除され、課金は発生しません。
第5章:コスト管理と監視 – 安心してAWSを使い続けるために
AWSを学ぶ上で、誰もが不安に思うのが「意図しない高額請求」です。しかし、AWSが提供するツールを正しく使えば、コストをしっかり管理し、安心して利用することができます。ここでは、初心者が絶対に知っておくべき3つのサービスを紹介します。
5.1 AWS Budgets – 予算超過をアラートでお知らせ
AWS Budgetsは、設定した予算額を超過しそうになったり、超過したりした際に、メールなどで通知してくれるサービスです。これは最初に必ず設定すべき機能です。
-
Budgetsダッシュボードへ:
コンソール右上のアカウント名メニューから「請求ダッシュボード」を選択し、左側のナビゲーションから「Budgets」をクリックします。 -
予算の作成:
- 「予算を作成」ボタンをクリックします。
- 予算設定の選択: 「テンプレートを使用 (推奨)」を選択します。
- ゼロ消費予算: これが最もシンプルで強力です。AWSで1セントでも料金が発生した瞬間に通知が届きます。学習目的であれば、まずはこれを設定するのがおすすめです。「ゼロ消費予算」を選択します。
- 予算の詳細:
- 予算名:
Zero-Spend-Budget
など分かりやすい名前を付けます。 - 受信者のEメールアドレス: 通知を受け取りたいメールアドレスを入力します。
- 予算名:
- 「予算を作成」ボタンをクリックします。
これで、もし無料枠を超えるなどして料金が発生した場合、すぐにメールで知ることができます。慣れてきたら、月額10ドルなど、自分なりの予算を設定する「コスト予算」も試してみましょう。
5.2 Cost Explorer – コストの可視化と分析
Cost Explorerは、あなたのAWS利用料金をグラフで可視化し、詳細に分析できるツールです。
-
Cost Explorerへ:
請求ダッシュボードの左側ナビゲーションから「Cost Explorer」をクリックします。
※初回アクセス時は、有効化が必要です。「Cost Explorerを有効化」ボタンをクリックすると、データが収集されるまで24時間ほどかかります。 -
レポートの確認:
有効化されると、コストの推移がグラフで表示されます。- 右側のフィルター機能が強力です。「サービス」で絞り込めば、どのサービスにどれくらいコストがかかっているか(EC2、S3など)が一目瞭然です。
- 「リージョン」で絞り込めば、どの地域での利用料が高いかを確認できます。
- 「日別(Daily)」表示にすれば、コストが急増した日を特定できます。
定期的にCost Explorerをチェックして、自分のコスト傾向を把握する癖をつけましょう。
5.3 CloudWatch – リソースの監視とアラーム
CloudWatchは、AWSリソースとアプリケーションを監視するためのサービスです。EC2インスタンスのCPU使用率や、ネットワークトラフィックなどを監視し、異常があれば通知させることができます。
ここでは、請求アラームを設定してみましょう。これは、推定請求額が設定したしきい値を超えた場合に通知する機能で、Budgetsと合わせて設定しておくとより安心です。
-
CloudWatchダッシュボードへ:
検索バーから「CloudWatch」を検索して移動します。
※リージョンを「米国東部 (バージニア北部) us-east-1」に変更してください。請求関連のメトリクスは、このリージョンに集約されています。 -
請求アラームの作成:
- 左側ナビゲーションから「すべてのアラーム」を選択し、「アラームの作成」をクリックします。
- 「メトリクスの選択」をクリックします。
- 「請求」→「概算合計請求額」を選択します。
EstimatedCharges
というメトリクス名のチェックボックスをオンにし、「メトリクスの選択」をクリックします。- 条件:
- しきい値の種類: 「静的」
- 次の時…: 「より大きい/等しい (>=)」
- しきい値: 通知を受けたい金額を入力します(例:
10
ドル)。
- 「次へ」をクリックします。
- 通知:
- 「新しいトピックを作成」を選択します。
- トピック名と通知先のメールアドレスを入力し、「トピックの作成」をクリックします。
- ※入力したメールアドレスに確認メールが届くので、必ず承認リンクをクリックしてください。
- 「次へ」をクリックし、アラーム名(例:
Billing-Alarm-Over-10USD
)を入力してアラームを作成します。
これで、AWSの推定請求額が10ドルを超えた時点でメール通知が届くようになりました。
まとめ:あなたのクラウドジャーニーは始まったばかり
ここまで、本当にお疲れ様でした。この記事を通して、あなたはAWSの世界への確かな一歩を踏み出しました。振り返ってみましょう。
- 安全なアカウント作成: ルートユーザーのリスクを理解し、日常作業用のIAMユーザーを作成、MFAで保護しました。これは、AWSを安全に使う上で最も重要な基礎です。
- コンソールの習熟: どこに何があるのか、もう迷うことはありません。サービス検索、リージョン選択、コスト確認など、基本的な操作をマスターしました。
- 主要サービスの体験: EC2で仮想サーバーを起動し、S3にファイルを保存しました。クラウドの「コンピューティング」と「ストレージ」という根幹技術に実際に触れました。
- コスト管理の徹底: BudgetsとCloudWatchアラームを設定し、「知らないうちに高額請求」という恐怖から解放されました。
しかし、これは壮大なAWSの世界のほんの入り口に過ぎません。今日学んだ知識を土台として、あなたの興味の赴くままに、さらに学びを深めていきましょう。
次は何を学ぶ?
- AWS公式ドキュメントとチュートリアル: AWSが提供する公式ドキュメントは、情報の宝庫です。少し難しく感じるかもしれませんが、正確な情報が載っています。「AWS チュートリアル」で検索すれば、様々なハンズオンが見つかります。
- AWS認定資格への挑戦: 学んだ知識を形にするなら、認定資格がおすすめです。まずは最も基本的な「AWS認定クラウドプラクティショナー」を目指してみましょう。AWSの全体像を体系的に学ぶ絶好の機会になります。
- 小さなアプリケーションを構築してみる: 静的なWebサイトをS3でホスティングしてみる、EC2にWordPressをインストールしてみるなど、実際に何かを作ってみることが、最も効果的な学習方法です。
クラウド技術は、これからの社会を動かす原動力です。今日、あなたがAWSマネジメントコンソールを開き、最初のインスタンスを起動したその経験は、未来のあなたにとって間違いなく価値ある財産となるでしょう。
あなたのクラウドジャーニーが、実り多きものになることを心から願っています。さあ、もっとたくさんのサービスを探検し、あなただけのアイデアを形にしてみてください!