最新はSonoma!macOSの歴代バージョンとコードネームの一覧

はい、承知いたしました。
最新バージョン「Sonoma」を含む、macOSの歴代バージョンとコードネームに関する詳細な記事を作成します。約5000語のボリュームで、各バージョンの特徴、技術的な背景、そしてユーザー体験に与えた影響を深く掘り下げて解説します。


最新はSonoma!macOSの歴代バージョンとコードネームの一覧【詳細解説】

はじめに:進化し続けるMacの心臓部

AppleのMacintoshコンピュータに搭載されているオペレーティングシステム、macOS。その歴史は、単なるソフトウェアのアップデートの連続ではありません。それは、コンピュータと人間の関わり方、デザインの哲学、そしてテクノロジーの限界を押し広げてきた、壮大な進化の物語です。

2001年に登場したMac OS X 10.0 “Cheetah”から、最新のmacOS 14 “Sonoma”に至るまで、その道のりは革新と洗練の繰り返しでした。初期のバージョンでは、美しい「Aqua」インターフェイスが世界を驚かせ、その後もSpotlightによる検索革命、Time Machineによる手軽なバックアップ、そしてiPhoneとのシームレスな連携など、私たちのデジタルライフを根底から変える機能が次々と生み出されてきました。

この記事では、macOSの歴代バージョンを、その象徴的なコードネームと共に一つひとつ紐解いていきます。ネコ科の動物からカリフォルニアの美しい地名へと移り変わったコードネームの背景にも触れながら、各バージョンがどのような新機能をもたらし、どのような技術的ブレークスルーを達成し、そしてユーザー体験をどう変えていったのかを、詳細にわたって探求します。

PowerPCからIntelへ、そしてIntelからApple Siliconへ。二度の大規模なアーキテクチャ移行を乗り越え、常に時代の最先端を走り続けてきたmacOS。その軌跡を辿る旅に、さあ、出かけましょう。


第1章:OS Xの夜明け – NeXTの魂とAquaの衝撃 (2000-2001)

Mac OS X Public Beta “Kodiak” (2000年9月13日)

すべての始まりは、この公開ベータ版でした。1997年にAppleに復帰したスティーブ・ジョブズがもたらした、彼が創業したNeXT社の先進的なOS「NeXTSTEP」の技術。これが、古いMac OS 9から脱却し、現代的なOSへと生まれ変わるための礎となりました。コードネーム “Kodiak”(コディアックヒグマ)と名付けられたこのベータ版は、29.95ドルで販売され、未来のOSの姿をいち早く体験したい熱心なユーザーたちのための、いわば壮大な公開実験でした。

最大の特徴は、なんといっても「Aqua」と名付けられた新しいユーザーインターフェイスです。水滴のような透明感を持つボタン、滑らかなアニメーション、そして画面下部に鎮座する「Dock」。これらは当時のコンピュータの常識を覆すほど美しく、未来的でした。しかし、その美しさの代償は大きく、当時のハードウェアでは動作が非常に重く、多くの機能が未実装で不安定でした。メニューバーのAppleメニューが中央に移動していた(後に左端に戻る)など、試行錯誤の跡も見られます。

Kodiakは完成品ではありませんでしたが、Appleが目指す未来を明確に示す羅針盤でした。ユーザーからのフィードバックを元に、翌年の正式リリースへと繋がっていく重要な一歩となったのです。

Mac OS X 10.0 “Cheetah” (2001年3月24日)

ついに、Mac OS Xが正式に産声を上げました。コードネームは地上最速の動物 “Cheetah”(チーター)。その名とは裏腹に、パフォーマンスは依然として大きな課題でした。多くのユーザーは、軽快に動作する従来のMac OS 9を使い続け、OS Xは「美しく、先進的だが、仕事には使えない」と評価されることも少なくありませんでした。

しかし、”Cheetah”が搭載していた要素は、その後のmacOSの根幹を形成するものばかりです。

  • Aquaインターフェイス: Kodiakからさらに洗練され、正式にMacの顔となりました。
  • Dock: アプリケーションやファイルへの素早いアクセスを提供する、OS Xの象C的な機能。
  • Terminal: UNIXベースであることの証。開発者やパワーユーザーに強力なコマンドライン環境を提供。
  • Darwin: OSの中核をなすオープンソースのコンポーネント。安定性と信頼性の基盤。
  • Classic環境: 過去のMac OS 9用アプリケーションを、OS X上で動作させるための互換レイヤー。このおかげで、ユーザーは少しずつ新しいOSへ移行することができました。

“Cheetah”は、完璧なスタートではありませんでしたが、Macの歴史における最も重要なパラダイムシフトの始まりを告げる、記念碑的なバージョンでした。

Mac OS X 10.1 “Puma” (2001年9月25日)

“Cheetah”のリリースからわずか半年。Appleは矢継ぎ早に次のバージョン “Puma”(ピューマ)をリリースします。これは新機能の追加よりも、”Cheetah”で露呈したパフォーマンス問題の改善と安定性の向上に全力が注がれた、いわば「修正版」でした。

“Puma”は、”Cheetah”のユーザーに対して無償で提供されました。これは、Appleが初期のユーザーの不満に真摯に耳を傾け、OS Xを本気で「使えるOS」にしようとしている姿勢の表れでした。ファイルコピーの高速化、UIのレスポンス向上など、体感できるレベルでの改善が随所に施されました。また、DVDの再生やCDの書き込み機能がFinderに統合されるなど、マルチメディア機能も強化されました。

この”Puma”の登場により、Mac OS Xはようやく日常的な使用に耐えうるOSとなり、多くのユーザーが本格的にOS Xへの移行を始めるきっかけとなったのです。


第2章:熟成と進化の時代 – ネコ科最強軍団の登場 (2002-2009)

Mac OS X 10.2 “Jaguar” (2002年8月24日)

コードネーム “Jaguar”(ジャガー)は、OS Xが「速く、そして賢く」なったことを象徴するバージョンです。パフォーマンスはさらに向上し、多くのユーザーが満足するレベルに達しました。

“Jaguar”は、その後のMacのコミュニケーションとグラフィック能力を方向づける重要な新機能を搭載しました。

  • iChat: インスタントメッセージングアプリ。AIMとの互換性を持ち、友人や同僚との手軽なコミュニケーションを実現しました。
  • Address Book: システム全体で共有される連絡先管理アプリ。他のアプリとの連携がスムーズでした。
  • Quartz Extreme: グラフィック処理をCPUからGPU(グラフィックプロセッサ)にオフロードする技術。これにより、ウィンドウの描画やアニメーションが劇的に高速化し、UIの滑らかさが格段に向上しました。
  • Universal Access: 視覚や聴覚に障がいを持つユーザーのためのアクセシビリティ機能を大幅に強化。ズーム機能や読み上げ機能などが搭載されました。

また、起動画面が従来の「Happy Mac」アイコンから、現在まで続くシンプルなAppleロゴに変更されたのもこのバージョンからです。 “Jaguar”は、OS Xが単なる先進的なOSから、誰にとっても快適でパワフルなプラットフォームへと成熟したことを示す、大きなマイルストーンでした。

Mac OS X 10.3 “Panther” (2003年10月24日)

“Panther”(パンサー)は、日々の使い勝手を劇的に向上させる、数々の洗練された機能を搭載して登場しました。特にFinderの刷新は、多くのユーザーに歓迎されました。

  • 新しいFinder: iTunesのようなブラッシュドメタルの外観と、よく使う場所を登録できるサイドバーが導入され、ファイル操作が格段に効率化されました。
  • Exposé(エクスポゼ): 画面上に散らばった多数のウィンドウを、キー一発でサムネイル表示し、目的のウィンドウを一瞬で見つけ出せる画期的な機能。Macのウィンドウ管理に革命をもたらしました。
  • Fast User Switching(高速ユーザ切り替え): ログアウトせずに、他のユーザーアカウントに素早く切り替えられる機能。家族で一台のMacを共有する際に非常に便利でした。
  • FileVault: ホームフォルダ全体を強力なAES-128暗号化で保護する機能。セキュリティ意識の高まりに応えました。
  • Safari 1.1: このバージョンから、Apple自社開発のウェブブラウザ「Safari」がデフォルトブラウザとなり、Internet Explorer for Macに取って代わりました。

“Panther”は、ユーザーインターフェイスの細部にまでこだわり、日々の作業効率を追求したバージョンとして、高く評価されました。Exposéの衝撃は特に大きく、Macの優位性を象徴する機能の一つとなりました。

Mac OS X 10.4 “Tiger” (2005年4月29日)

Mac OS Xの歴史において、最も重要かつ完成度の高いバージョンの一つが “Tiger”(タイガー)です。200以上の新機能を携えて登場し、その後のコンピュータのあり方を予見させるような、革新的なアイデアが満載でした。

  • Spotlight: OS全体を横断して、ファイル、メール、連絡先、アプリケーションなどを瞬時に検索できるシステム。もはやファイルがどこにあるかを覚えておく必要がない、という新しいファイル管理の概念を提示しました。現代の検索機能の基礎を築いた、まさに革命的な機能です。
  • Dashboard: 天気、株価、計算機といった小さなミニアプリ「ウィジェット」を、オーバーレイ表示する機能。必要な情報に素早くアクセスできる便利な機能として親しまれました。
  • Automator: プログラミング知識がなくても、繰り返し行う作業をブロックを繋ぎ合わせるように自動化できるツール。パワーユーザーの生産性を飛躍的に高めました。
  • iChat AVの進化: 最大4人でのビデオチャット、10人でのオーディオチャットに対応し、コミュニケーションの可能性を広げました。

そして”Tiger”が歴史的に重要なのは、もう一つの側面があるからです。2005年、AppleはCPUをPowerPCからIntelプロセッサへ移行することを発表。その移行期を支えたのが”Tiger”でした。PowerPC向けに書かれたアプリケーションをIntel Mac上で動作させるための互換技術「Rosetta」が搭載され、スムーズなプラットフォーム移行を実現したのです。”Tiger”は非常に安定しており、長期間にわたって多くのユーザーに愛された、まさに名作と呼ぶにふさわしいOSでした。

Mac OS X 10.5 “Leopard” (2007年10月26日)

iPhoneの登場と同じ年にリリースされた “Leopard”(レパード)は、見た目も中身も大きく進化したバージョンです。Intel Macへの移行が完了し、新たな時代の到来を告げる機能が数多く搭載されました。

  • Time Machine: Macの歴史における最大の発明の一つ。外付けHDDを接続するだけで、OS全体を自動でバックアップし、過去の任意の時点のファイルやシステムの状態に、まるでタイムマシンのように遡って復元できる機能。バックアップの概念を根本から変え、多くのユーザーをデータ喪失の恐怖から解放しました。
  • 新しいデスクトップ: 半透明のメニューバーと、立体的なデザインになった3D Dockが特徴。Dockにフォルダを入れると扇状やグリッド状に中身を展開する「Stacks」も導入されました。
  • Finderの進化: Cover Flowビューでファイルをアルバムジャケットのようにめくって閲覧したり、「Quick Look」でアプリケーションを開かずにファイルの中身をプレビューしたりできるようになりました。
  • Spaces: 複数の仮想デスクトップを作成し、作業内容ごとにアプリを整理できる機能。
  • Boot Camp: Intel Mac上で、Mac OS XとWindowsを切り替えて起動できる機能を正式に搭載。Macの利用シーンを大きく広げました。

“Leopard”は、64bitに完全対応した最初のバージョンでもあり、システムの基盤も大きく強化されました。”Time Machine”というキラーアプリケーションの登場により、Macを選ぶ強力な理由がまた一つ増えたのです。

Mac OS X 10.6 “Snow Leopard” (2009年8月28日)

派手な新機能の追加が続いた後、Appleはここで一度立ち止まります。”Snow Leopard”(スノーレパード)のキャッチコピーは「新機能は、ゼロ。」。これは、ユーザーに見える新機能の追加よりも、OSの内部的な洗練、パフォーマンスの向上、そして安定化に注力したことを意味していました。

しかし、その言葉とは裏腹に、水面下ではMacの未来を支える重要な技術革新が行われていました。

  • 完全64bit化: Finderを含む主要なシステムアプリケーションが64bitで書き直され、大量のメモリを効率的に扱えるようになりました。
  • Grand Central Dispatch (GCD): マルチコアCPUの性能を最大限に引き出すための技術。アプリケーションが複数のコアを簡単に、そして効率的に利用できるようになりました。
  • OpenCL: CPUだけでなく、GPUの強力な並列処理能力を、グラフィック以外の汎用的な計算にも利用するためのフレームワーク。
  • インストールサイズの削減: OSの最適化により、インストールに必要なディスク容量が前バージョンより約7GBも削減されました。

価格も29ドルと、従来のOSアップデートより大幅に安価に設定されました。”Snow Leopard”は、いわば「OSの大掃除」。目に見える変化は少なくとも、Macをより速く、より安定させ、将来の進化のための強固な土台を築き上げた、玄人好みの名バージョンとして記憶されています。また、このバージョンのアップデート(10.6.6)で「Mac App Store」が導入され、アプリの購入とインストールが劇的に簡単になりました。


第3章:iOSとの融合 – Macの再定義 (2011-2015)

Mac OS X 10.7 “Lion” (2011年7月20日)

iPhoneとiPadの大成功を受け、Appleはそこで培われた素晴らしいアイデアをMacに持ち帰る「Back to the Mac」というテーマを掲げました。”Lion”(ライオン)は、その思想を色濃く反映した、iOSとの融合を目指す最初のバージョンです。

  • Launchpad: iPhoneのホーム画面のように、インストールされたアプリをアイコン一覧で表示する機能。
  • フルスクリーンアプリケーション: アプリが画面全体を占有し、作業に集中できるモード。
  • Mission Control: Exposé、Spaces、Dashboardを統合した新しいウィンドウ管理機能。
  • オートセーブとバージョン: 書類を自動で保存し、Time Machineのように過去のバージョンに遡れる機能。
  • マルチタッチジェスチャの拡充: トラックパッドでの操作性が大幅に向上。
  • ナチュラルスクロール: iPhoneのように、コンテンツを指の動きに合わせて動かす「逆スクロール」。当初は多くのユーザーを戸惑わせましたが、今では標準となりました。

“Lion”は、Mac App Storeからのダウンロード販売が基本となり、物理メディアでの提供が終了した最初のOSでもあります。また、PowerPCアプリを動かすための「Rosetta」が廃止され、一つの時代の終わりを告げました。iOSとの融合は一部で賛否両論を呼びましたが、Macの操作体系に新たな風を吹き込んだ意欲作でした。

OS X 10.8 “Mountain Lion” (2012年7月25日)

“Lion”で示された方向性をさらに推し進めたのが “Mountain Lion”(マウンテンライオン)です。このバージョンから、名称が “Mac OS X” から “OS X” へと短縮されました。iOSとの連携がさらに強化され、MacがAppleエコシステムの一部であることがより明確になりました。

  • iCloudの統合: システムレベルでiCloudが深く統合され、書類、メール、カレンダー、連絡先などが複数のデバイス間でシームレスに同期されるようになりました。
  • Messages: iChatに代わる新しいメッセージングアプリ。iPhoneやiPadのiMessageと直接やりとりが可能になりました。
  • Notification Center(通知センター): iOSでおなじみの通知機能がMacにも登場。
  • RemindersとNotes: iOSの標準アプリがMacにも移植されました。
  • Gatekeeper: 開発元が未確認のアプリの実行を制限し、マルウェアからの保護を強化するセキュリティ機能。

“Mountain Lion”から、OSのアップデートは1年ごとの年次サイクルとなり、価格もさらに手頃になりました。細かな改良を重ね、iOSとの親和性を高めることで、Macはよりパーソナルで使いやすいデバイスへと進化していきました。

OS X 10.9 “Mavericks” (2013年10月22日)

“Mavericks”(マーベリックス)は、二つの大きな転換点となったバージョンです。一つは、コードネーム。10年以上にわたって続いたネコ科動物のシリーズが終わりを告げ、スティーブ・ジョブズも愛したカリフォルニア州の地名シリーズが始まりました。その第一弾が、ビッグウェーブで知られるサーフィンの名所「Mavericks」です。

もう一つの、そしてより重要な転換点は、OSの無料化です。これ以降、macOSのメジャーアップデートはすべてのユーザーに無償で提供されるようになり、常に最新のOSを誰もが利用できる環境が整いました。

機能面では、派手なUIの変更よりも、内部的なパフォーマンスとバッテリー持続時間の改善に焦点が当てられました。

  • Timer CoalescingとApp Nap: CPUの動作を効率化し、非アクティブなアプリの消費電力を抑えることで、ノートブックのバッテリー駆動時間を大幅に延長。
  • 圧縮メモリ: 非アクティブなメモリをリアルタイムで圧縮し、メモリ不足を解消してシステム全体の応答性を向上させました。
  • Finderタブとタグ: Finderにタブ機能が導入され、複数のフォルダを一つのウィンドウで管理できるようになりました。また、ファイルに色分けされたタグを付けて整理する機能も追加されました。
  • iBooksとMaps: iOSの人気アプリがMacにも登場しました。

“Mavericks”は、Macの基盤を強化し、ユーザーにとって最も価値のある「バッテリー寿命」という課題に正面から取り組んだ、実直で評価の高いOSでした。

OS X 10.10 “Yosemite” (2014年10月16日)

“Mavericks”が内部の改善に注力したのに対し、カリフォルニア州の国立公園から名付けられた “Yosemite”(ヨセミテ)は、外観に大きなメスを入れました。前年にiOS 7で採用されたフラットデザインの哲学が、ついにMacにももたらされたのです。

  • デザインの刷新: 立体感や光沢感を排したフラットなデザインへ。ウィンドウは半透明の「すりガラス」効果(Vibrancy)が多用され、アイコンやフォントも刷新されました。このデザイン変更は、当初、賛否両論を巻き起こしました。
  • Continuity(連携機能): MacとiOSデバイスの連携を、魔法のようなレベルにまで高めました。
    • Handoff: iPhoneで書き始めたメールを、Macで引き継いで完成させる、といったデバイスをまたいだ作業の継続が可能に。
    • Instant Hotspot: MacからiPhoneのテザリングを自動でオンにできる機能。
    • 電話機能: iPhoneにかかってきた電話をMacで受けたり、Macから電話をかけたりすることが可能に。
  • 通知センターのウィジェット: 通知センターが拡張され、カレンダーや天気などのウィジェットを配置できるようになりました。
  • Spotlightの強化: Spotlightが画面中央に表示されるようになり、WikipediaやWeb検索の結果も直接表示できるようになりました。

“Yosemite”は、Macのデザイン言語を現代的にアップデートし、Appleエコシステムの真価である「連携」を新たな次元へと引き上げた、エポックメイキングなバージョンでした。

OS X 10.11 “El Capitan” (2015年9月30日)

“El Capitan”(エル・キャピタン)は、Yosemite国立公園内にある巨大な一枚岩の名前です。その名の通り、”Yosemite”という大きな土台の上に、さらなる安定性とパフォーマンス向上を築き上げることを目指した、”Snow Leopard”的な位置づけのOSでした。

  • パフォーマンス向上: アプリの起動や切り替え、PDFの表示などが高速化され、全体的な体感速度が向上しました。
  • Metal: iOSで先行導入されていた低レベルグラフィックAPI「Metal」がMacにもたらされました。これにより、GPUの性能を最大限に引き出し、ゲームやプロ向けアプリのグラフィックパフォーマンスが飛躍的に向上しました。
  • Split View: 2つのアプリを画面分割して、フルスクリーンで同時に表示できる機能。
  • Mission Controlの改良: ウィンドウが重ならず、より見やすく整理されるように改善されました。
  • メモアプリの強化: チェックリストの作成、写真やマップの埋め込みなどが可能になり、より高機能なアプリへと進化しました。
  • Safariのピン留めタブ: よく使うサイトをタブバーの左端に小さく固定できるようになりました。

“El Capitan”は、派手さはないものの、日々の使い心地を確実に向上させる堅実なアップデートであり、多くのユーザーから安定したOSとして高い評価を受けました。


第4章:macOSの誕生とプラットフォームの未来 (2016-現在)

macOS 10.12 “Sierra” (2016年9月20日)

このバージョンで、名称が “OS X” から「macOS」へと変更されました。これは、Appleが持つ他のOS(iOS, watchOS, tvOS)と命名規則を統一し、ブランドとしてのまとまりを強化する意図がありました。”Sierra”(シエラ)は、カリフォルニア州のシエラネバダ山脈に由来します。

  • Siri on Mac: ついに、音声アシスタントSiriがMacに搭載されました。ファイルを探したり、情報を調べたり、システム設定を変更したりと、声でMacを操作する新たな道が開かれました。
  • ユニバーサルクリップボード: iPhoneでコピーしたテキストを、Macでペーストする(またはその逆)といった、デバイス間でクリップボードを共有できる機能。
  • Apple Watchによる自動ロック解除: Apple Watchを身につけていれば、Macのスリープをパスワード入力なしで解除できるようになりました。
  • ストレージの最適化: 使用頻度の低いファイルを自動でiCloudに移動させ、Macのストレージ空き容量を確保する機能。
  • Picture in Picture: ビデオを小さなウィンドウで再生し、他の作業をしながら視聴を続けられる機能。

“macOS Sierra”は、Siriの搭載と連携機能の強化により、Macをよりインテリジェントで便利なパートナーへと進化させました。

macOS 10.13 “High Sierra” (2017年9月25日)

“El Capitan”が”Yosemite”の改良版であったように、”High Sierra”(ハイ・シエラ)は”Sierra”の上に築かれた、基盤技術の刷新に焦点を当てたバージョンです。ユーザーが直接目にする変化は少ないものの、Macの心臓部は大きく進化しました。

  • Apple File System (APFS): 長年使われてきたHFS+に代わる、全く新しい最新のファイルシステム。SSDに最適化されており、ファイルのコピーが瞬時に完了するなど、高いパフォーマンスと堅牢なセキュリティ、信頼性を実現しました。この移行は、OSアップデートの裏で自動的に行われました。
  • Metal 2: グラフィックAPIがさらに進化。VR(仮想現実)や機械学習、外部GPU(eGPU)のサポートが強化され、Macのプロフェッショナルな用途を大きく広げました。
  • HEVC (H.265) / HEIFのサポート: 従来のH.264/JPEGに比べて、約半分のファイルサイズで同等の画質を実現する新しいビデオ/画像フォーマットをネイティブサポート。4Kビデオの扱いや写真ライブラリの容量削減に貢献しました。
  • Safariのインテリジェント・トラッキング防止: 機械学習を利用して、ユーザーを追跡する広告などをブロックし、プライバシー保護を強化しました。

“High Sierra”は、未来のMacのための土台を再構築する、非常に重要なアップデートでした。

macOS 10.14 “Mojave” (2018年9月24日)

カリフォルニアのモハーヴェ砂漠から名付けられた “Mojave”(モハベ)は、プロユーザーや開発者から長年待望されていた機能を搭載し、再び大きな話題を呼びました。

  • ダークモード: メニューバーやDockだけでなく、アプリのウィンドウもすべてが黒を基調とした表示に切り替わる、システムワイドなダークモードを導入。目に優しく、コンテンツに集中できる環境を提供しました。
  • ダイナミックデスクトップ: 時刻の経過に合わせて、壁紙が朝、昼、夕方、夜と変化していく機能。
  • スタック: 散らかったデスクトップ上のファイルを、種類や日付ごとに自動で整理してくれる機能。
  • Finderの強化: ギャラリービューが追加され、写真などのプレビューが容易になりました。また、プレビューパネルにはファイルのメタデータが表示され、画像回転などの「クイックアクション」も実行可能に。
  • スクリーンショット機能の強化: スクリーンショット撮影後に、iOSのようにサムネイルが表示され、そのままマークアップや共有ができるようになりました。
  • iOSアプリのMac移植: 「News」「株価」「ボイスメモ」「ホーム」といったiOSアプリが、新しいフレームワーク(コードネーム:Marzipan)を使ってMacに移植されました。これは、将来のアプリ開発のあり方を示唆する重要な一歩でした。

“Mojave”は、多くのユーザーが待ち望んだダークモードを筆頭に、日々の使い勝手を向上させる便利な機能を満載した、魅力的なOSでした。

macOS 10.15 “Catalina” (2019年10月7日)

サンタカタリナ島にちなんだ “Catalina”(カタリナ)は、Macの歴史における大きな節目となる、大胆な変更を伴うバージョンでした。

  • iTunesの解体: 長年Macの音楽・メディア管理を担ってきた巨大アプリiTunesが、ついにその役目を終え、「ミュージック」「Podcast」「TV」という3つの新しいアプリに分割されました。iPhoneの管理はFinderに統合されました。
  • 32bitアプリケーションのサポート終了: このバージョンから、古い32bitアプリは一切動作しなくなりました。これにより、OSは完全に64bit環境に最適化されましたが、一部の古いソフトウェアやゲームが使えなくなり、ユーザーは対応を迫られました。
  • Sidecar: iPadをMacの2台目のディスプレイとして無線/有線で利用したり、Apple Pencil対応の液晶タブレットとして使ったりできる機能。クリエイターにとって非常に強力なツールとなりました。
  • Project Catalyst: “Mojave”で試みられたiOSアプリの移植プロジェクトが本格化。多くのiPadアプリ開発者が、比較的容易にアプリをMac向けに提供できるようになりました。
  • スクリーンタイムと”Find My”: iOSでおなじみのアプリ利用時間管理機能「スクリーンタイム」と、デバイスを探す「探す」(Find My)アプリがMacにも搭載されました。

“Catalina”は、32bitアプリの廃止という痛みを伴いながらも、Macのアーキテクチャを未来に向けて整理し、iPadとの連携を新たなレベルへと引き上げた、変革のOSでした。


第5章:新時代の幕開け – Apple Siliconとデザイン革命

macOS 11 “Big Sur” (2020年11月12日)

“Big Sur”(ビッグサー)は、あらゆる意味で「巨大な」アップデートでした。まず、バージョン番号が約20年ぶりに “10.x” から “11” へとメジャーアップデート。そして、Macの心臓部がIntelから自社開発の「Apple Silicon (M1チップ)」へと移行する、歴史的な転換点となったOSです。

  • デザインの大幅な刷新: iOS/iPadOSとの統一感をさらに強めた、全く新しいデザイン言語を採用。半透明のメニューバー、再設計されたDock、角の丸いウィンドウ、そしてiOSライクなアプリのアイコンなど、見た目が大きく変わりました。
  • コントロールセンター: iOSでおなじみのコントロールセンターがMacにも登場。Wi-FiやBluetooth、音量、輝度などを素早く調整できるようになりました。
  • 通知センターの刷新: 通知とウィジェットが一体化した新しいデザインになり、よりインタラクティブになりました。
  • Safariの大幅アップデート: 史上最大のアップデートと銘打たれ、パフォーマンスの向上、電力効率の改善、カスタマイズ可能なスタートページ、そしてサイトがユーザーをどう追跡しているかを示す「プライバシーレポート」機能などが追加されました。
  • Apple Siliconへの対応: M1チップ搭載Macのために最適化され、驚異的なパフォーマンスとバッテリー寿命を実現。IntelアプリをApple Silicon Mac上で動作させるための変換技術「Rosetta 2」も搭載し、スムーズな移行を支えました。

“Big Sur”は、Macの見た目、操作性、そして心臓部のすべてを刷新し、Apple Silicon時代の幕開けを華々しく飾った、革命的なOSでした。

macOS 12 “Monterey” (2021年10月25日)

カリフォルニア州の美しい沿岸都市の名を冠した “Monterey”(モントレー)は、”Big Sur”で示された新しい方向性をさらに深め、デバイス間の連携とコミュニケーションを強化する機能に焦点を当てました。

  • ユニバーサルコントロール: 一つのキーボードとマウス(またはトラックパッド)で、MacとiPadをシームレスに行き来して操作できる魔法のような機能。デバイスの境界線を曖昧にしました。
  • 集中モード (Focus): 「仕事」や「パーソナル」など、状況に応じて通知や連絡をフィルタリングする機能。作業への集中を助けます。
  • SharePlay: FaceTime通話をしながら、参加者全員で映画を観たり、音楽を聴いたり、画面を共有したりできる機能。
  • ショートカットアプリ: iOS/iPadOSで強力な自動化ツールとして知られていた「ショートカット」が、ついにMacに登場。Automatorを置き換える、よりモダンでパワフルな自動化環境を提供します。
  • Live Text(テキスト認識表示): 画像の中に写っているテキストを、コピー&ペーストしたり、翻訳したり、検索したりできる機能。
  • Safariのタブグループ: 関連するタブをグループにまとめて保存・管理できる機能。

“Monterey”は、特に「ユニバーサルコントロール」によって、Appleエコシステムの連携がいかに強力であるかを改めて世界に示しました。

macOS 13 “Ventura” (2022年10月24日)

“Ventura”(ベンチュラ)は、Macの基本的な操作であるウィンドウ管理に、新たなアプローチを提案した意欲的なバージョンです。

  • ステージマネージャ: 現在使っているアプリのウィンドウを中央に表示し、他のアプリのウィンドウを画面左側にサムネイルとして整理する、新しいマルチタスクの方法。
  • 連携カメラ (Continuity Camera): iPhoneをMacのウェブカメラとして利用できる機能。iPhoneの優れたカメラ性能をビデオ会議などで活用できるほか、「センターフレーム」や「デスクビュー」(手元を俯瞰で映す)といった高度な機能も利用できます。
  • FaceTimeのHandoff: iPhoneで始めたFaceTime通話を、Macに近づけるだけでシームレスに引き継げる機能。
  • メールアプリの強化: 送信の取り消し、予約送信、リマインダー設定など、待望の機能が追加されました。
  • システム設定の刷新: 長年親しまれてきた「システム環境設定」が、iOS/iPadOSライクな「システム設定」に完全にリニューアルされました。

「ステージマネージャ」や「システム設定」の刷新は、一部で学習コストを要する変更でしたが、”Ventura”はMacの使い方そのものに一石を投じる、挑戦的なアップデートでした。

macOS 14 “Sonoma” (2023年9月26日)

そして、最新のバージョンが、ワインの産地として名高い “Sonoma”(ソノマ)です。”Sonoma”は、Macをよりパーソナルで、より楽しく、そして生産的なツールにするための、洗練された機能を追加しました。

  • デスクトップウィジェット: これまで通知センターにあったウィジェットを、デスクトップ上の好きな場所に配置できるようになりました。iPhoneのウィジェットも、連携機能によってMacのデスクトップに表示できます。
  • ビデオ会議の強化: 共有中の画面に自分の映像を重ねて表示する「発表者オーバーレイ」や、ジェスチャーで花火などの3Dエフェクトを画面に表示する「リアクション」機能が追加され、オンラインプレゼンテーションがより魅力的になりました。
  • ゲームモード: ゲームをプレイする際に、CPUとGPUのパフォーマンスをゲームに優先的に割り当て、入力遅延を低減させることで、よりスムーズで没入感のあるゲーム体験を提供します。
  • Safariのプロファイル: 「仕事用」「プライベート用」など、目的ごとに閲覧履歴、Cookie、機能拡張などを分離できるプロファイル機能を追加。
  • ウェブアプリ: どんなウェブサイトでも、Dockに追加してアプリのように手軽に起動できるようになりました。
  • 美しいスクリーンセーバー: 世界各地の美しい風景をスローモーションで撮影した、Apple TVのような高品質なスクリーンセーバーが多数追加され、ログイン画面の壁紙としても機能します。

“Sonoma”は、ウィジェットやゲームモードといった新機能でMacの新たな可能性を切り拓きつつ、日々の体験をより豊かにする、バランスの取れたアップデートと言えるでしょう。


結論:終わらない進化の旅

Mac OS X “Cheetah”の登場から20年以上。macOSの歴史は、絶え間ない革新の歴史でした。

Aquaインターフェイスの衝撃から始まり、SpotlightやTime Machineのような概念を変える機能、PowerPCからIntel、そしてApple Siliconへのアーキテクチャの大転換、iOSとの融合によるエコシステムの深化、そして”Big Sur”でのデザインとプラットフォームの全面的な刷新。その一つひとつのステップが、現在のMacの姿を形作っています。

コードネームはネコ科の猛獣からカリフォルニアの雄大な自然へと移り変わりましたが、その根底に流れる哲学は一貫しています。それは、先進的なテクノロジーを、誰もが直感的に使える、美しく洗練された形で提供すること。そして、ユーザーの創造性を解き放ち、生産性を高め、日々のデジタルライフをより豊かにすることです。

最新の “Sonoma” もまた、その旅の途中の一つの地点に過ぎません。Appleはこれからも、ハードウェアとソフトウェアの緊密な統合という最大の強みを活かし、私たちを驚かせるような新しい体験を生み出し続けるでしょう。macOSの次なる一章が、今から楽しみでなりません。

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