【2024年最新】Cursor CLIの使い方まとめ|AIがあなたのコーディングを支援
はじめに
現代のソフトウェア開発において、AI(人工知能)の活用はもはや無視できないトレンドとなっています。数あるAIコーディングツールの中でも、特に注目を集めているのが「Cursor」です。VS Codeのフォークとして開発されたこのAIネイティブなコードエディタは、その直感的で強力な機能により、多くの開発者の生産性を劇的に向上させてきました。
しかし、Cursorの真の力は、その美しいGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)だけに留まりません。熟練した開発者であればあるほど、日々の作業の多くをコマンドライン、つまりターミナル上で行っていることでしょう。Gitの操作、スクリプトの実行、ファイルの操作など、キーボードから手を離さずに高速なオペレーションを実現するCUI(キャラクターユーザーインターフェース)環境は、開発ワークフローの中核をなします。
もし、その強力なターミナル環境から、CursorのAI機能を直接呼び出すことができたらどうでしょうか?
それを実現するのが、本記事で徹底解説する「Cursor CLI (Command Line Interface)」です。
Cursor CLIは、ターミナルからCursorのAIと対話し、ファイルやプロジェクト全体に対してコードの生成、編集、リファクタリング、レビューなどを実行できる強力なツールです。GUIを開くことなく、使い慣れたコマンドラインのワークフローにAIの力をシームレスに統合することができます。
この記事では、2024年現在の最新情報に基づき、Cursor CLIのインストール方法から基本的な使い方、そしてGitやシェルスクリプトと連携させた高度な応用例まで、その全貌を徹底的に解説します。
この記事を読むことで、あなたは以下の知識とスキルを習得できます。
- Cursor CLIの概要と、GUI版との違いや利点
- 簡単なインストールとセットアップ手順
- 基本的なコマンドからAI機能を活用するための主要なオプションの使い方
- Gitと連携し、コードレビューやリファクタリングを自動化するテクニック
- シェルスクリプトに組み込んで、定型作業をAIで効率化する方法
- 実践的なシナリオに基づいた具体的なワークフローの例
あなたがターミナルを愛する開発者であれ、日々のコーディングをさらに効率化したいと考えているCursorユーザーであれ、この記事はあなたの開発体験を次のレベルへと引き上げるための一助となるはずです。さあ、コマンドラインから始まるAIコーディング革命の世界へ、一緒に飛び込んでいきましょう。
1. Cursor CLIとは? ― ターミナルに宿るAIアシスタント
Cursor CLIを深く理解するために、まずはその概念と、GUI版との比較における利点について掘り下げていきましょう。
1.1. CLI (Command Line Interface) の基本
CLIとは、コマンド(文字列)を入力してコンピュータを操作するインターフェースのことです。黒い画面に文字を打ち込む、いわゆる「ターミナル」や「コマンドプロンプト」がこれにあたります。GUIがマウスで直感的に操作するのに対し、CLIはキーボード主体で高速かつ自動化に適した操作を可能にします。git
, docker
, npm
など、現代の開発に不可欠なツールの多くがCLIを基本としています。
1.2. Cursor CLIの目的と利点
Cursor CLIは、このCLIの哲学をCursorのAI機能に持ち込むものです。その目的は、「開発者がターミナルから離れることなく、AIの支援を受けられるようにすること」にあります。これにより、以下のような強力な利点が生まれます。
-
ワークフローの中断がない: コードを書いている最中、あるいはGitでブランチを切り替えている最中に、わざわざマウスに持ち替えてCursorのウィンドウを探し、プロンプトを入力する…といった操作は不要です。ターミナルのコマンド一つで、AIに指示を出すことができます。このコンテキストスイッチの削減は、集中力の維持と生産性の向上に直結します。
-
スクリプト化と自動化: これがCursor CLI最大の強みと言えるでしょう。CLIコマンドであるため、シェルスクリプト(Bash, Zshなど)に簡単に組み込むことができます。例えば、「新しいReactコンポーネントを作成し、定型のボイラープレートコードをAIに生成させ、対応するテストファイルの雛形も作る」といった一連の作業を、一つのスクリプトとして自動化できます。
-
既存ツールとの強力な連携: CLIの世界は、パイプ(
|
)やxargs
といった機能を通じて、コマンド同士を連携させる文化が根付いています。Cursor CLIもその例外ではありません。git diff
の結果をAIにレビューさせたり、grep
で検索したファイル群に対して一括でリファクタリングを指示したりと、既存のコマンドラインツールと組み合わせることで、その可能性は無限に広がります。 -
高速なオペレーション: 単純なファイル編集やプロジェクト全体への一括変更など、特定のタスクにおいては、GUIで一つ一つファイルを開いて操作するよりも、コマンド一発で実行する方が圧倒的に高速です。
1.3. GUI版との違いと比較
CursorのGUI版とCLI版は、競合するものではなく、互いに補完しあう関係にあります。
特徴 | Cursor GUI | Cursor CLI |
---|---|---|
操作方法 | マウスとキーボードによる直感的な操作 | キーボードによるコマンド入力 |
主な用途 | コーディング、デバッグ、複雑な対話 | 一括処理、自動化、既存ワークフローへの統合 |
対話性 | チャット形式でAIと対話を重ねながらコードを洗練させることが得意 | 一度のコマンドで明確な指示を与えるワンショットな操作が得意 |
コンテキスト | 開いているファイルや選択範囲を自動でコンテキストとして認識 | 操作対象のファイルやディレクトリを明示的に指定する必要がある |
自動化 | 限定的 | シェルスクリプト等で高度な自動化が可能 |
実行環境 | デスクトップアプリケーション | ターミナル |
GUI版は、AIとじっくり対話しながら新しいアイデアを練ったり、複雑なコードのデバッグを行ったりする際に非常に強力です。一方、CLI版は「このプロジェクト内の全てのconsole.log
を削除して」「この関数のドキュメントをJSDoc形式で生成して」といった、明確で定型的なタスクを高速に、あるいは自動で実行する場面でその真価を発揮します。
優れた開発者は、これらのツールを適材適所で使い分けることで、開発プロセス全体を最適化することができるのです。
2. インストールとセットアップ
Cursor CLIを使い始めるのは非常に簡単です。数ステップで、あなたのターミナルにAIアシスタントを常駐させることができます。
2.1. 前提条件
Cursor CLIを利用するための唯一の前提条件は、Cursorのデスクトップアプリケーションがインストールされていることです。CLIは単体で動作するわけではなく、バックグラウンドでCursorアプリ本体と連携してAI機能を利用します。
まだCursorをインストールしていない場合は、公式サイトからダウンロードしてインストールを済ませておきましょう。
2.2. インストール方法
インストールは、Cursorアプリ内から行うのが最も簡単で確実です。
-
コマンドパレットを開く: Cursorアプリを開き、
Cmd + Shift + P
(Mac) またはCtrl + Shift + P
(Windows/Linux) を押してコマンドパレットを表示します。 -
Install 'cursor' command
を実行: コマンドパレットにshell
と入力すると、「Shell Command: Install ‘cursor’ command in PATH」という項目が表示されます。これを選択してEnterキーを押してください。(画像はイメージです)
-
管理者パスワードの入力: システムのPATHにコマンドをインストールするため、管理者(sudo)パスワードの入力を求められる場合があります。パスワードを入力して許可してください。
-
インストールの確認: 成功すると、右下に「Shell command ‘cursor’ successfully installed in PATH.」といった通知が表示されます。
これでインストールは完了です。
2.3. セットアップと動作確認
正しくインストールされたかを確認するために、ターミナルを開いて以下のコマンドを実行してみましょう。
bash
cursor --version
以下のように、Cursorのバージョン情報が表示されれば成功です。(バージョン番号はご自身の環境によって異なります)
Cursor 0.33.1
... (その他の情報)
もし cursor: command not found
といったエラーが表示される場合は、以下の点を確認してください。
- ターミナルを再起動する: PATHの変更を反映させるために、一度ターミナルを再起動してみてください。
- PATHの確認:
echo $PATH
コマンドを実行し、出力に/usr/local/bin
など、cursor
コマンドがインストールされたディレクトリが含まれているか確認します。含まれていない場合、シェルの設定ファイル(.zshrc
,.bash_profile
など)にPATHを追加する必要があります。 - 手動でのインストール: どうしてもうまくいかない場合は、
cursor
コマンドの本体(シンボリックリンク)をPATHが通っているディレクトリに手動で配置することも可能です。cursor
コマンドは通常、Cursor.appの内部に存在します。
これで、Cursor CLIを使用する準備が整いました。次のセクションから、いよいよ具体的な使い方を見ていきましょう。
3. 基本的な使い方 ― Core Commands
まずは、日常的に最もよく使うであろう基本的なコマンドからマスターしていきましょう。これらのコマンドは、VS Codeのcode
コマンドを使ったことがある方なら、すぐに馴染めるはずです。
3.1. ファイルやディレクトリを開く
最も基本的な機能は、指定したファイルやディレクトリをCursorのGUIで開くことです。
特定のファイルを開く:
bash
cursor a_file.js
複数のファイルを同時に開く:
bash
cursor package.json README.md src/index.js
カレントディレクトリをプロジェクトとして開く:
bash
cursor .
特定のディレクトリを開く:
bash
cursor ./src/components
これらのコマンドは、ターミナルでファイル構造を移動しながら、編集したいファイルを見つけたら即座にGUIで開く、というスムーズなワークフローを実現します。
3.2. ヘルプを表示する
Cursor CLIが持つ全ての機能やオプションを一度に覚える必要はありません。困ったときは、--help
オプションを使いましょう。
bash
cursor --help
このコマンドを実行すると、利用可能な全てのコマンド、オプション、そして簡単な説明が一覧で表示されます。新しい機能が追加された際や、特定のオプションの使い方を忘れてしまった際に、非常に役立ちます。
“`
Usage: cursor [options] [paths…]
Options:
-v, –version Output the version number.
–prompt
-m, –message
–auto-accept Apply the changes without confirmation.
–ai-level
-h, –help Display help for command.
“`
基本的なファイル操作はこれだけです。しかし、Cursor CLIの真価は、ここから紹介するAI機能との連携にあります。
4. AI機能の活用 ― プロンプトでコードを操る
ここからがCursor CLIの核心部分です。ターミナルから直接AIに指示を出し、コードを自在に操る方法を学びましょう。主要なオプションは--prompt
です。
4.1. --prompt
: AIへの指示
--prompt
(またはエイリアスの -m
) オプションを使うと、指定したファイルやディレクトリに対して、自然言語でAIに指示(プロンプト)を与えることができます。
構文:
cursor <対象ファイル/ディレクトリ> --prompt "<あなたの指示>"
実行すると、Cursorは指定されたファイルの内容をコンテキストとしてAIに渡し、プロンプトに基づいてコードの変更案を生成します。そして、変更内容の差分(diff)がターミナルに表示され、適用するかどうかを尋ねられます。y
を押せば変更がファイルに書き込まれ、n
を押せば破棄されます。
使用例1: 関数のリファクタリング
utils.js
というファイルに、以下のような古いスタイルのJavaScript関数があるとします。
javascript
// utils.js
function getUserData(userId) {
return fetch('https://api.example.com/users/' + userId)
.then(function(response) {
return response.json();
});
}
この関数を、モダンなasync/await
構文に書き換えてもらいましょう。
bash
cursor utils.js --prompt "Refactor this function to use async/await syntax."
実行すると、ターミナルに以下のような差分が表示されます。
diff
--- a/utils.js
+++ b/utils.js
@@ -1,6 +1,5 @@
-function getUserData(userId) {
- return fetch('https://api.example.com/users/' + userId)
- .then(function(response) {
- return response.json();
- });
+async function getUserData(userId) {
+ const response = await fetch(`https://api.example.com/users/${userId}`);
+ const data = await response.json();
+ return data;
}
Apply this change? (y/n)
と聞かれるので、y
と入力すれば、utils.js
ファイルが実際に書き換えられます。
使用例2: コメントと型定義の追加
Pythonのファイルdata_processor.py
があるとします。
“`python
data_processor.py
def process_data(data):
if not data:
return []
processed = [item * 2 for item in data]
return processed
“`
この関数に、ドキュメント(docstring)と型ヒントを追加してみましょう。
bash
cursor data_processor.py --prompt "Add a detailed docstring and type hints to this Python function."
AIは以下のような変更を提案してくるでしょう。
diff
--- a/data_processor.py
+++ b/data_processor.py
@@ -1,6 +1,14 @@
-def process_data(data):
- if not data:
- return []
- processed = [item * 2 for item in data]
- return processed
+from typing import List, Union
+
+def process_data(data: List[Union[int, float]]) -> List[Union[int, float]]:
+ """
+ Processes a list of numbers by multiplying each element by 2.
+
+ Args:
+ data: A list of integers or floats.
+
+ Returns:
+ A new list with each element multiplied by 2. Returns an empty list if the input is empty.
+ """
+ if not data:
+ return []
+ processed = [item * 2 for item in data]
+ return processed
y
で承認すれば、コードがより堅牢で読みやすくなります。
使用例3: ディレクトリ全体への一括操作
--prompt
はディレクトリに対しても機能します。例えば、プロジェクトの./src
ディレクトリ内にあるすべてのコンポーネントの文言を、英語から日本語に翻訳したい場合。
bash
cursor ./src --prompt "Translate all user-facing strings in these files from English to Japanese."
Cursorは./src
以下のファイルを解析し、翻訳が必要な箇所を特定して、一括で変更を提案してくれます。この機能は、国際化(i18n)対応や、プロジェクト全体にわたる命名規則の変更などに絶大な効果を発揮します。
4.2. --auto-accept
: 変更の自動承認
AIによる変更を毎回確認するのが面倒な場合や、信頼性の高い単純なタスクを実行する場合には、--auto-accept
オプションが便利です。このオプションを付けると、AIが生成した変更が確認なしで即座にファイルに適用されます。
構文:
cursor <対象> --prompt "<指示>" --auto-accept
使用例: デバッグ用のconsole.log
をすべて削除する
bash
cursor ./src --prompt "Remove all console.log statements from all files in this directory." --auto-accept
このコマンドは、src
ディレクトリ内の全ファイルからconsole.log
を検索し、確認なしで削除します。
注意: --auto-accept
は非常に強力ですが、諸刃の剣でもあります。AIが予期せぬ変更や誤った変更を加える可能性もゼロではありません。必ずGitなどのバージョン管理システムで変更を追跡できる状態にしてから使用し、実行後にはgit diff
などで変更内容を確認することを強く推奨します。
4.3. --ai-level
: AIモデルの選択
Cursorは、複数の強力なLLM(大規模言語モデル)をバックエンドで利用しています。--ai-level
オプションを使うことで、タスクに応じて最適なAIモデルを選択できます。利用可能なモデルはCursorのバージョンやプランによって変わりますが、代表的なものには以下があります(2024年時点)。
claude-3-opus
: Anthropic社の最上位モデル。複雑な推論、長文のコンテキスト理解に優れる。claude-3-sonnet
: Opusより高速で、コストパフォーマンスに優れたモデル。gpt-4o
: OpenAI社の最新フラッグシップモデル。高速かつ高性能で、マルチモーダルな能力を持つ。gpt-4-turbo
: GPT-4の高速版。
構文:
cursor <対象> --prompt "<指示>" --ai-level <モデル名>
使用例: 最高性能のモデルで複雑なアルゴリズムを実装する
bash
cursor path/to/algorithm.js --prompt "Implement the A* search algorithm in this file. Provide clear comments explaining each part of the implementation." --ai-level claude-3-opus
複雑なロジックや高度なリファクタリングを要求する場合はclaude-3-opus
やgpt-4o
を、単純なテキスト修正や高速な応答が欲しい場合はclaude-3-sonnet
を選ぶなど、タスクの性質に応じてモデルを使い分けることで、コストとパフォーマンスのバランスを取ることができます。
4.4. @
シンボルによるリポジトリ全体のコンテキスト活用
CursorのAIが他のツールと一線を画すのは、リポジトリ全体を理解する能力です。CLIでも、@
シンボルをプロンプトに含めることで、特定のファイルやディレクトリをAIのコンテキストとして明示的に参照させることができます。
構文:
cursor <対象> --prompt "Do something with @/path/to/another/file.ts"
これにより、AIは<対象>
ファイルだけでなく、@
で指定されたファイルの内容も踏まえて、より精度の高いコードを生成できます。
使用例: API定義を参考にしたクライアントコードの生成
APIの型定義ファイルsrc/types/api.ts
があるとします。これをもとに、APIを呼び出すためのクライアント関数src/utils/apiClient.ts
を生成してみましょう。
“`bash
まずは空のファイルを作成
touch src/utils/apiClient.ts
AIに生成を指示
cursor src/utils/apiClient.ts –prompt “Create a TypeScript function to fetch user data based on the types defined in @/src/types/api.ts. The function should handle loading and error states.”
“`
このプロンプトにより、AIはsrc/types/api.ts
を読み込み、そこに定義されているUser
型やApiResponse
型などを正確に理解した上で、apiClient.ts
に関数を生成します。これにより、手作業での型情報のコピー&ペーストや、それに伴うミスを防ぐことができます。
@
シンボルは、プロジェクト内の複数のコンポーネントがどのように連携しているかをAIに伝え、一貫性のある変更を行う上で不可欠な機能です。
5. 高度な使い方と応用例 ― ワークフローの自動化
Cursor CLIの真価は、他のコマンドラインツールやスクリプトと組み合わせることで飛躍的に高まります。ここでは、より実践的で高度な使い方を見ていきましょう。
5.1. Gitとの連携
開発者のワークフローに最も密接に関わっているツールの一つがGitです。Cursor CLIとGitを組み合わせることで、日々のバージョン管理作業をAIで強化できます。
git diff
の結果をAIにレビューさせる
git diff
で表示された変更点について、AIにコードレビューを依頼することができます。
bash
git diff HEAD^ | cursor --prompt "Review the following code changes. Point out any potential bugs, style issues, or suggest improvements. The changes are provided as a diff."
このコマンドは、最新のコミットとの差分をパイプ(|
)でcursor
コマンドに渡しています。cursor
は標準入力を受け取ることができるため、差分情報をコンテキストとしてAIに渡し、レビューコメントを生成させることが可能です。(※この機能はcursor
のバージョンや実装に依存する場合があります。標準入力が直接プロンプトの一部として扱われない場合は、一度ファイルに保存するなどの工夫が必要です)
より確実な方法として、レビューしたいファイルを直接指定する方法があります。
“`bash
ステージングされている変更があるファイルリストを取得
FILES_TO_REVIEW=$(git diff –name-only –cached)
ファイルリストが空でなければ、レビューを実行
if [ -n “$FILES_TO_REVIEW” ]; then
cursor $FILES_TO_REVIEW –prompt “Please act as a senior software engineer and review these code changes. Focus on code quality, performance, and adherence to best practices. Provide your feedback in a markdown list.”
fi
“`
Gitフックによるコミット前の自動レビュー
Gitフックを使えば、特定のGitアクション(例: git commit
)の前に自動的にスクリプトを実行できます。pre-commit
フックにCursor CLIを組み込むことで、コミット前にAIによるコードチェックを強制することができます。
.git/hooks/pre-commit
ファイルを作成し、以下の内容を記述します(実行権限をchmod +x .git/hooks/pre-commit
で付与するのを忘れずに)。
“`bash
!/bin/sh
echo “Running AI code review before commit…”
ステージングされた.jsファイルと.tsファイルのみを対象
STAGED_FILES=$(git diff –cached –name-only –diff-filter=ACM | grep -E ‘.(js|ts)$’)
if [ -z “$STAGED_FILES” ]; then
echo “No relevant files to review. Skipping.”
exit 0
fi
Cursor CLIを使ってレビューを実行
–auto-acceptは使わず、提案のみを表示させる
REVIEW_SUGGESTIONS=$(cursor $STAGED_FILES –prompt “Briefly review these staged changes for critical issues like bugs or security vulnerabilities. If you find any, list them. If not, respond with ‘LGTM’.”)
echo “— AI Review —”
echo “$REVIEW_SUGGESTIONS”
echo “—————–“
LGTM (Looks Good To Me) が含まれていなければ、コミットを中止するか確認
if ! echo “$REVIEW_SUGGESTIONS” | grep -q “LGTM”; then
read -p “AI has pointed out potential issues. Do you want to continue with the commit? (y/n) ” -n 1 -r
echo
if [[ ! $REPLY =~ ^[Yy]$ ]]; then
exit 1
fi
fi
exit 0
“`
このスクリプトは、コミットしようとしているJS/TSファイルの内容をAIにレビューさせ、もし「LGTM」以外の返答(つまり何らかの指摘)があった場合に、コミットを続けるかどうかの確認を求めます。
5.2. シェルスクリプトとの連携
定型的な作業をシェルスクリプトにまとめることで、生産性は劇的に向上します。Cursor CLIは、こうしたスクリプトにAIの知性を吹き込むための完璧なツールです。
Reactコンポーネント生成スクリプト
新しいReactコンポーネントを作成する際、毎回同じようなファイル(Component.jsx
, Component.module.css
, Component.test.jsx
)を作成するのは手間です。これを自動化するスクリプトを考えます。
create-component.sh
というファイルを作成します。
“`bash
!/bin/bash
引数がなければ使い方を表示して終了
if [ -z “$1” ]; then
echo “Usage: $0
exit 1
fi
COMPONENT_NAME=$1
COMPONENT_DIR=”src/components/$COMPONENT_NAME”
ディレクトリを作成
mkdir -p “$COMPONENT_DIR”
echo “Created directory: $COMPONENT_DIR”
ファイルパスを定義
JSX_FILE=”$COMPONENT_DIR/index.jsx”
CSS_FILE=”$COMPONENT_DIR/style.module.css”
TEST_FILE=”$COMPONENT_DIR/test.jsx”
ファイルを作成
touch “$JSX_FILE” “$CSS_FILE” “$TEST_FILE”
echo “Generating boilerplate code with AI…”
JSXファイルの雛形をAIに生成させる
cursor “$JSX_FILE” –prompt “Create a basic React functional component named ‘$COMPONENT_NAME’. It should import its styles from ‘./style.module.css’ and render a simple div with a placeholder text.” –auto-accept
CSSファイルの雛形を生成
cursor “$CSS_FILE” –prompt “Create a basic CSS module file with a root class for the ‘$COMPONENT_NAME’ component.” –auto-accept
テストファイルの雛形を生成
cursor “$TEST_FILE” –prompt “Create a basic Jest and React Testing Library test file for the ‘$COMPONENT_NAME’ component located at ‘./index.jsx’. It should have a simple test that checks if the component renders without crashing.” –auto-accept
echo “✅ Component ‘$COMPONENT_NAME’ created successfully!”
“`
このスクリプトを実行可能にし(chmod +x create-component.sh
)、PATHの通った場所に置けば、ターミナルから以下のように実行できます。
bash
./create-component.sh UserProfile
すると、src/components/UserProfile
ディレクトリが作成され、その中にAIが生成した基本的なコンポーネント、CSSモジュール、テストファイルの雛形が自動的に配置されます。
5.3. パイプとxargs
による一括処理
Unix/Linuxの哲学の一つに「小さなツールを組み合わせて大きな仕事を成し遂げる」というものがあります。find
, grep
といったコマンドと、パイプ(|
)、xargs
を組み合わせることで、Cursor CLIのパワーをプロジェクト全体に適用できます。
特定のパターンに一致するファイルすべてにリファクタリングを適用
プロジェクト内で古いAPI oldApi.fetch()
を使っているファイルをすべて探し出し、新しいnewApi.call()
に置き換えたいとします。
bash
grep -r -l "oldApi.fetch" ./src | xargs cursor --prompt "In these files, replace all instances of 'oldApi.fetch()' with the new 'newApi.call()'. Ensure that if the old call was awaited, the new one is as well. Also, update any related imports if necessary." --auto-accept
このコマンドの動作は以下の通りです。
1. grep -r -l "oldApi.fetch" ./src
: src
ディレクトリ以下を再帰的に検索し、oldApi.fetch
という文字列を含むファイルのパスをリストアップします。
2. |
: grep
の出力(ファイルパスのリスト)を次のコマンドであるxargs
に渡します。
3. xargs cursor ...
: xargs
は受け取ったファイルパスのリストをcursor
コマンドの引数として渡し、コマンドを実行します。これにより、該当するすべてのファイルに対して一括でリファクタリングの指示が送られます。
このように、既存の強力なコマンドラインユーティリティと組み合わせることで、手作業では何時間もかかるような大規模な変更を、わずか数秒で完了させることが可能になります。
6. 実践的なワークフローの例
理論を学んだところで、より具体的なシナリオを通して、Cursor CLIが日々の開発でどのように役立つかを見ていきましょう。
シナリオ1: 新機能の追加
タスク: ユーザープロフィールを表示するための新しいReactコンポーネントを作成する。
-
ディレクトリとファイルの準備:
bash
mkdir -p src/features/UserProfile
cd src/features/UserProfile
touch UserProfile.jsx styles.js -
コンポーネントの骨格をAIで生成:
bash
cursor UserProfile.jsx --prompt "Create a React functional component named 'UserProfile'. It should accept 'user' as a prop, which is an object with 'name', 'avatarUrl', and 'bio' properties. Display these properties. Use styled-components for styling, importing from './styles.js'."
AIがpropsを受け取り、基本的なJSX構造を持つコンポーネントを生成します。 -
スタイルの生成:
bash
cursor styles.js --prompt "Create styled-components for the UserProfile component. Define styles for a container, an avatar image, a user name, and a bio text. Use a clean and modern design."
UserProfile.jsx
で使われることを想定したスタイル定義が生成されます。@./UserProfile.jsx
をプロンプトに含めると、より精度の高いスタイルが期待できます。 -
Storybookのストーリーを追加:
bash
touch UserProfile.stories.jsx
cursor UserProfile.stories.jsx --prompt "Create a Storybook story for the 'UserProfile' component from '@./UserProfile.jsx'. Include a default story with mock user data."
AIがUserProfile.jsx
を読み込み、対応するStorybookのファイルを作成します。
このワークフローでは、ターミナルから離れることなく、コンポーネントのロジック、スタイル、ドキュメント(Storybook)の雛形を高速に作成できました。
シナリオ2: 技術的負債の返済
タスク: プロジェクト全体で使われているコールバックベースの古い非同期処理を、Promise
ベースのasync/await
に統一する。
-
対象ファイルの特定:
bash
grep -r -l "function(err, data)" ./src > files_to_refactor.txt
古いコールバックスタイルの非同期処理(function(err, data)
のようなシグネチャ)が含まれるファイルを検索し、リストをファイルに保存します。 -
一括リファクタリングの実行:
bash
cat files_to_refactor.txt | xargs cursor --prompt "Refactor all callback-based asynchronous functions in these files to use async/await with try/catch blocks for error handling. Make sure the overall logic remains the same." --ai-level gpt-4o
ファイルリストをxargs
に渡し、各ファイルに対してリファクタリングを指示します。複雑なロジックの書き換えなので、高性能なモデルを指定します。 -
変更内容の確認:
リファクタリングは--auto-accept
せず、1ファイルずつ差分を確認しながら適用(y
)または拒否(n
)します。
すべての適用が終わったら、git diff
でプロジェクト全体の変更を最終確認し、テストを実行してデグレードがないことを確かめます。
このシナリオでは、手作業ではミスが発生しやすく時間のかかる大規模リファクタリングを、半自動化されたプロセスで安全かつ効率的に進めることができました。
7. トラブルシューティングとFAQ
Q1: cursor: command not found
と表示されます。
A1: 最も一般的な原因は、cursor
コマンドへのPATHが通っていないことです。
1. まず、ターミナルを完全に再起動してみてください。
2. それでも解決しない場合は、Cursorアプリのコマンドパレットから「Shell Command: Install ‘cursor’ command in PATH」を再度実行してください。
3. .zshrc
や.bash_profile
などのシェルの設定ファイルを確認し、PATHが正しく設定されているか確認してください。
Q2: AIが期待通りの変更をしてくれません。プロンプトのコツは?
A2: プロンプトの質がAIの出力の質を決めます。以下の点を試してみてください。
* より具体的に: 「コードをきれいにして」ではなく、「この関数にJSDoc形式のコメントを追加し、変数をより意味のある名前にリネームしてください」のように、具体的に指示します。
* コンテキストを与える: @
シンボルを使って、関連する他のファイル(型定義ファイル、親コンポーネントなど)をプロンプトに含めましょう。
* 役割を与える: 「あなたは熟練のGoエンジニアです。このコードをGoの慣用的なスタイルにリファクタリングしてください」のように、AIにペルソナ(役割)を与えると、出力の質が向上することがあります。
* ステップ・バイ・ステップ: 複雑なタスクは一度にやらせようとせず、「まずこの部分をリファクタリングして」「次にテストコードを書いて」のように、複数のコマンドに分割します。
Q3: --auto-accept
で意図しない変更が加えられてしまいました。どうすれば元に戻せますか?
A3: これがGitを使うことが非常に重要な理由です。
* git status
で変更されたファイルを確認します。
* 特定のファイルの変更を元に戻すには、git restore <ファイル名>
を実行します。
* すべての変更を元に戻すには、git restore .
を実行します。
* --auto-accept
は、信頼できる単純なタスクにのみ使用し、実行後は必ずgit diff
で変更内容を確認する習慣をつけましょう。
Q4: CLIのAIとGUIのAIで挙動が違うことはありますか?
A4: 基本的に同じAIモデルを使用しているため、能力に差はありません。しかし、GUIでは現在開いているタブや選択範囲といった豊富なコンテキストが「暗黙的に」AIに提供されることがあります。一方、CLIではコンテキストを「明示的に」(対象ファイルの指定や@
シンボルで)与える必要があります。このコンテキストの差が、出力の差として現れることがあります。精度の高い結果を得るためには、CLIではより意識的にコンテキストを提供することが重要です。
まとめ ― コマンドラインは新たな創造の場へ
この記事では、Cursor CLIの基本から応用まで、その強力な機能を多角的に解説してきました。
Cursor CLIは、単なる便利なツールではありません。それは、私たちが長年慣れ親しんできたコマンドラインという強力な環境に、AIという新たな知性を融合させる、新しい開発スタイルの提案です。
- ワークフローの統合: ターミナルから離れることなく、ファイル操作、バージョン管理、そしてAIによるコード生成・編集をシームレスに行うことができます。
- 強力な自動化: シェルスクリプトやGitフックと組み合わせることで、これまで手作業で行っていた多くの定型作業を自動化し、開発者はより創造的なタスクに集中できます。
- 大規模な変更の効率化: プロジェクト全体にわたるリファクタリングやコード修正を、
xargs
などのツールと連携して、安全かつ高速に実行できます。
Cursor CLIを使いこなすことは、あなたの生産性を飛躍的に向上させるだけでなく、コーディングという行為そのものの質を変える可能性を秘めています。面倒な作業はAIに任せ、あなたは設計やアルゴリズム、そしてユーザー体験の向上といった、本質的な課題解決に時間を使うことができるようになるのです。
もちろん、AIは万能ではありません。その提案を鵜呑みにせず、最終的な判断を下すのは常に開発者自身です。しかし、Cursor CLIという優れた副操縦士を隣に置くことで、あなたの開発の旅は、より速く、より安全で、そして何より楽しいものになるでしょう。
さあ、今すぐターミナルを開き、cursor --prompt "..."
と打ち込んでみてください。コマンドラインから始まる、未来のコーディング体験があなたを待っています。