オフィスの担当者必見!複合機のIPアドレスを特定する方法まとめ


オフィスの担当者必見!複合機のIPアドレスを特定する方法まとめ

オフィスの円滑な業務運営に欠かせない複合機。しかし、「新しいPCから印刷設定ができない」「スキャンしたデータをPCに送れない」「突然印刷できなくなった」といったトラブルが発生した際、その原因の多くがネットワーク設定、特に「IPアドレス」に関連しています。

オフィスのIT担当者や総務担当者、あるいは複合機の管理を任された方にとって、複合機のIPアドレスを迅速かつ正確に特定するスキルは、もはや必須と言えるでしょう。

この記事では、初心者の方でも安心して実践できるよう、複合機のIPアドレスを特定するためのあらゆる方法を、基本的な操作から少し応用的なテクニックまで、網羅的かつ詳細に解説します。この記事を最後まで読めば、いかなる状況でも落ち着いてIPアドレスを突き止め、問題を解決に導くことができるようになるはずです。

1. はじめに:なぜ複合機のIPアドレスが必要なのか?

本題に入る前に、そもそもなぜ複合機のIPアドレスを知る必要があるのか、そしてIPアドレスとは何なのかを簡単におさらいしておきましょう。

1.1. IPアドレス特定が必要になる具体的なシーン

以下のような場面で、複合機のIPアドレス情報が不可欠となります。

  • 新しいPCへのプリンタードライバー設定:
    新しいPCを導入した際、複合機で印刷できるようにするためには、プリンタードライバーをインストールし、接続先として複合機のIPアドレスを指定する必要があります。
  • スキャン to PC / スキャン to フォルダー設定:
    複合機でスキャンしたデータを、ネットワーク経由で特定のPCやサーバーの共有フォルダーに直接保存する機能です。この設定を行う際にも、送信先となるPCやサーバーのIPアドレス、そして場合によっては複合機自身のIPアドレス設定の確認が必要です。
  • Webブラウザからの管理画面アクセス:
    最近の複合機は、Webブラウザ経由でアクセスできる管理画面(Web Image Monitorなどと呼ばれる)を備えています。この画面から、カウンターの確認、各種設定の変更、トナー残量の確認、アドレス帳の編集などが遠隔で行えます。この管理画面にアクセスするために、複合機のIPアドレスをブラウザのアドレスバーに入力します。
  • トラブルシューティング:
    「印刷できない」「オフラインになる」といったトラブルが発生した際、まず確認すべきはPCと複合機が正常に通信できているかです。pingコマンドなどを使ってIPアドレス宛に通信テストを行うことで、ネットワーク的な問題なのか、それ以外の問題なのかを切り分けることができます。
  • ファームウェアのアップデート:
    複合機の機能追加やセキュリティ脆弱性の修正のために、ファ-ムウェアをアップデートする際、IPアドレスを指定して実行することがあります。

1.2. IPアドレスの基礎知識

IPアドレス(Internet Protocol Address)とは、一言で言えば「ネットワーク上の住所」です。オフィス内のPC、複合機、サーバー、ルーターなど、ネットワークに接続されたすべての機器には、それぞれを識別するための一意のIPアドレスが割り当てられています。

オフィス内で一般的に使われるのは「プライベートIPアドレス」と呼ばれるもので、192.168.1.10 のような形式をしています。これらはオフィスという閉じたネットワーク(LAN)内でのみ通用する住所です。

IPアドレスの割り当て方には、主に2つの方式があります。

  • DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol):
    ネットワークに接続された機器に対し、IPアドレスを自動的に割り当てる仕組みです。ルーターなどがDHCPサーバーの役割を担い、空いているIPアドレスを貸し出します。管理は楽ですが、機器の再起動時などにIPアドレスが変わってしまう可能性があります。
  • 固定IPアドレス (静的IPアドレス):
    各機器に、手動で特定のIPアドレスを固定して設定する方式です。IPアドレスが変わることがないため、サーバーや複合機のように、常に同じ住所であることが求められる機器に適しています。設定には手間がかかり、IPアドレスの重複(他の機器と同じアドレスを設定してしまうミス)に注意が必要です。

一般的に、オフィスの複合機はトラブルを避けるために固定IPアドレスで運用されることが推奨されます。

それでは、本題であるIPアドレスの特定方法を、簡単なものから順に見ていきましょう。


2. 【基本編】複合機本体からIPアドレスを確認する方法

最も確実で手っ取り早いのが、複合機本体の操作パネルから直接確認する方法です。物理的に複合機の前にいるのであれば、まずこの方法を試してください。

2.1. 方法1:操作パネルのメニューから確認する

最近の複合機は、タッチパネル式の大きなディスプレイを備えており、直感的に操作できます。メーカーや機種によってメニューの名称や階層は異なりますが、基本的な考え方は同じです。「設定」や「ネットワーク」といったキーワードを頼りに探していけば、必ず見つかります。

一般的な操作手順:

  1. 複合機の操作パネルにある「設定/登録」「メニュー」「環境設定」「仕様設定/登録」といったボタンを押します。
  2. メニューの中から「ネットワーク設定」「インターフェース設定」「プロトコル設定」といった項目を探して選択します。
  3. 次に「TCP/IP設定」という項目を探します。(IPv4とIPv6がある場合は、通常「IPv4設定」を選択します)
  4. 表示された画面に「IPアドレス」「サブネットマスク」「デフォルトゲートウェイ」などの情報が表示されます。

主要メーカーごとの操作例:

以下に、代表的なメーカーの一般的なメニュー階層の例を挙げます。機種やファームウェアのバージョンによって異なる場合があるため、あくまで参考としてください。

  • 富士フイルム (旧Fuji Xerox) ApeosPort / DocuCentreシリーズ:

    1. 認証画面で機械管理者IDとパスワードを入力してログインします。
    2. 【仕様設定/登録】を押します。
    3. 【設定】→【ネットワーク設定】→【プロトコル設定】を選択します。
    4. 【TCP/IP – ネットワーク設定】を選択します。
    5. 「IPアドレス」の項目で確認できます。
  • Canon imageRUNNER ADVANCEシリーズ:

    1. 【設定/登録】ボタンを押します。
    2. 【環境設定】→【ネットワーク】を選択します。
    3. 【TCP/IP設定】→【IPv4設定】を選択します。
    4. 【IPアドレス設定】を選択すると、現在のIPアドレスが表示されます。
  • RICOH imagio / MPシリーズ:

    1. 【利用者ツール】または【設定】ボタンを押します。
    2. 【システム設定】→【インターフェース設定】タブを選択します。
    3. 【IPv4】の項目に現在のIPアドレスが表示されています。または【ネットワーク】→【本機IPv4アドレス】で確認できます。
  • Konica Minolta bizhubシリーズ:

    1. 【メニュー】→【ユーティリティー】→【管理者設定】を選択し、パスワードを入力します。
    2. 【ネットワーク設定】→【TCP/IP設定】→【IPv4設定】を選択します。
    3. IPアドレスが表示されます。
  • SHARP MXシリーズ:

    1. 【システム設定】(歯車のアイコンなど)をタッチします。
    2. 管理者パスワードを入力してログインします。
    3. 【ネットワーク設定】→【管理者用】タブを選択します。
    4. 【TCP/IP設定】を選択すると、IPアドレスが確認できます。
  • KYOCERA TASKalfaシリーズ:

    1. 【システムメニュー/カウンター】ボタンを押します。
    2. 【システム/ネットワーク】→【ネットワーク】を選択します。(管理者ログインが必要な場合があります)
    3. 【TCP/IP】→【IPv4】を選択すると、ステータス画面でIPアドレスが表示されます。

もしメニューの場所がわからなければ、「カウンター」や「機器情報」といったボタンからステータス画面を表示させると、そこにネットワーク情報が記載されていることもあります。

2.2. 方法2:設定情報(コンフィグレーション)を印刷して確認する

操作パネルでの確認が難しい場合(メニュー階層が複雑、画面が小さいなど)や、設定情報を紙媒体で記録として残しておきたい場合には、設定情報リストを印刷する方法が非常に有効です。

このリストには、IPアドレスだけでなく、MACアドレス、ホスト名、各種プロトコルの設定状況など、複合機のネットワークに関するあらゆる情報が詳細に印刷されます。

一般的な印刷手順:

  1. 複合機の操作パネルにある「設定/登録」「メニュー」「レポート」といったボタンを押します。
  2. メニューの中から「レポート印刷」「リスト出力」「設定リスト印刷」といった項目を探して選択します。
  3. 印刷するリストの一覧が表示されるので、「設定情報ページ」「コンフィグレーションページ」「ネットワーク設定リスト」「プロトコルページ」といった名称のものを選択して印刷を実行します。

印刷されたレポート用紙の中から、「TCP/IP」や「Network Information」、「IPv4」といったセクションを探してください。そこに「IP Address」として、192.168.x.x のような形式で記載されているはずです。

この方法は、IPアドレスだけでなく、後述するトラブルシューティングでも役立つMACアドレスなどの情報も一度に手に入るため、IT担当者にとっては非常に重宝する手段です。


3. 【応用編】PCから複合機のIPアドレスを特定する方法

複合機が離れた場所にある、操作パネルが管理者によってロックされていて操作できない、といった場合には、自分のPCからネットワークを介してIPアドレスを探し出す方法が役立ちます。

3.1. 方法1:すでに印刷設定済みのPCから確認する (Windows)

オフィス内で、すでにその複合機への印刷設定が完了しているPCがあれば、そこからIPアドレスを確認するのが最も手軽な応用編の方法です。

手順 (Windows 10/11 の場合):

  1. 「コントロールパネル」を開く:
    • スタートメニューを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択。「control」と入力してEnterキーを押します。
    • または、スタートメニューから「Windows システム ツール」→「コントロールパネル」を選択します。
  2. 「デバイスとプリンター」を表示:
    • コントロールパネルの表示方法が「カテゴリ」になっている場合は、「ハードウェアとサウンド」の下にある「デバイスとプリンターの表示」をクリックします。
    • 表示方法が「大きいアイコン」または「小さいアイコン」の場合は、「デバイスとプリンター」を直接クリックします。
  3. プリンターのプロパティを開く:
    • 表示されたプリンターの一覧から、該当する複合機のアイコンを探します。
    • アイコンを右クリックし、表示されたメニューから「プリンターのプロパティ」を選択します。(※「プロパティ」と間違えないように注意してください)
  4. ポート情報を確認する:
    • プロパティのウィンドウが開いたら、上部にある「ポート」タブをクリックします。
    • ポートの一覧が表示されます。チェックが入っているポートの行を探してください。
    • ポートの種類が「Standard TCP/IP Port」となっていれば、その行を選択した状態で右側にある「ポートの構成」ボタンをクリックします。
  5. IPアドレスの表示:
    • 「ポートの構成」ウィンドウが開きます。上部にある「プリンター名またはIPアドレス」という欄に、探していたIPアドレスが表示されています。

【注意点】WSDポートについて
ポートの種類が「WSD Port」となっている場合があります。これはWindowsがネットワーク上のプリンターを自動検出した際に作成されるポートで、この場合、上記の方法ではIPアドレスを直接確認できないことがあります。WSDは便利な反面、通信が不安定になることがあるため、可能であればIPアドレスを特定し、「Standard TCP/IP Port」を新規作成して設定し直すことをお勧めします。

3.2. 方法2:すでに印刷設定済みのPCから確認する (macOS)

Macユーザーの場合も同様に、設定済みのPCから確認できます。

手順 (macOS Ventura以降の場合):

  1. 「システム設定」を開く:
    • Appleメニューから「システム設定」を選択します。
  2. 「プリンタとスキャナ」を選択:
    • 左側のサイドバーをスクロールし、「プリンタとスキャナ」をクリックします。
  3. プリンターを選択:
    • 右側に表示されるプリンターの一覧から、該当する複合機を選択します。
  4. 情報を確認:
    • プリンターの詳細画面が表示されます。機種名の下にある「場所」や「種類」の欄にIPアドレスが表示されていることがあります。
    • 表示されていない場合は、「オプションとサプライ」ボタンをクリックし、「一般」タブなどで確認できる場合があります。

上級者向け: ターミナルを使う方法
ターミナルを開き、lpstat -v (プリンター名) と入力することでも、接続先の情報(IPアドレスが含まれていることが多い)を確認できます。

3.3. 方法3:コマンドプロンプトやターミナルを使う方法

ここからは少し技術的なアプローチになりますが、非常に強力な特定手段です。Windowsでは「コマンドプロンプト」または「PowerShell」、macOSでは「ターミナル」を使用します。

a) ping (ホスト名) コマンドを使う

もし複合機に「MFP-3F-EAST」や「Kyocera-Lobby」のような分かりやすい名前(ホスト名)が設定されていると分かっている場合、この方法が最も簡単です。

  1. コマンドプロンプト(またはターミナル)を起動します。
  2. ping (複合機のホスト名) と入力してEnterキーを押します。
    • 例: ping MFP-3F-EAST
  3. コマンドが成功すると、以下のような応答が返ってきます。

    Pinging MFP-3F-EAST [192.168.1.100] with 32 bytes of data:
    Reply from 192.168.1.100: bytes=32 time<1ms TTL=64
    ...

    この [192.168.1.100] の部分が、探しているIPアドレスです。ただし、ホスト名が不明な場合や、ネットワークの名前解決(DNSやNetBIOS)がうまく機能していない環境では、この方法は使えません。

b) arp -a コマンドとMACアドレスを駆使する方法

これは、ネットワーク内の機器の「IPアドレス」と「MACアドレス(物理アドレス)」の対応表(ARPテーブル)を利用する、探偵のような方法です。

【ステップ1】ARPテーブルを充実させる
PCは、自身が通信したことのある機器の情報しかARPテーブルに持っていません。そのため、まずネットワーク内の機器と広く通信を行い、テーブルの情報を充実させる必要があります。
(注意:以下のコマンドはネットワーク環境によっては管理者に確認してから実行してください)

一番手軽なのは、ネットワークのブロードキャストアドレスにpingを送ることです。
まず、ipconfig (Windows) または ifconfig (Mac) コマンドで自分のPCのIPアドレスとサブネットマスクを確認します。

  • 例: IPアドレスが 192.168.1.50、サブネットマスクが 255.255.255.0 の場合、ネットワークアドレスは 192.168.1.0、ブロードキャストアドレスは 192.168.1.255 になります。

ping 192.168.1.255 を実行すると、ネットワーク内の応答可能な全デバイスから返事が来て、ARPテーブルが更新されます。(環境によってはこのブロードキャストpingはブロックされます)

もしブロードキャストpingが使えない場合は、後述するネットワークスキャンツールを使うのが効率的です。

【ステップ2】ARPテーブルを表示する
コマンドプロンプトで arp -a と入力し、Enterキーを押します。すると、以下のような一覧が表示されます。

インターフェイス: 192.168.1.50 --- 0x10
インターネット アドレス 物理アドレス 種類
192.168.1.1 00-1a-2b-3c-4d-5e dynamic
192.168.1.25 a0-b1-c2-d3-e4-f5 dynamic
192.168.1.100 00-00-de-12-34-56 dynamic
192.168.1.255 ff-ff-ff-ff-ff-ff static
...

【ステップ3】MACアドレスからメーカーを特定する
この一覧の中から複合機を探します。「物理アドレス」と書かれているのがMACアドレスです。MACアドレスの先頭6桁(例: 00-00-de)は「ベンダーコード」と呼ばれ、製造したメーカーを識別できます。

複合機メーカーの主なベンダーコードは以下の通りです。

  • Fuji Xerox / FujiFilm: 00:00:DE, 00:01:4B
  • Canon: 00:00:85, 00:1E:8F
  • RICOH: 00:00:E8, 00:13:43
  • Konica Minolta: 00:20:6B, 00:00:5E
  • SHARP: 00:80:5C, 00:00:E7
  • KYOCERA: 00:17:C8, 00:04:9F
  • Brother: 00:80:77, 00:1B:A9
  • Epson: 00:00:48, 00:0B:AB

arp -a の結果を見て、これらのベンダーコードに一致するMACアドレスを持つ行を探します。その左側に書かれている「インターネット アドレス」が、目的の複合機のIPアドレスである可能性が非常に高いです。

3.4. 方法4:ルーターの管理画面から確認する

オフィスのネットワークを管理するルーターやL3スイッチには、自身がIPアドレスを割り当てた機器(DHCPクライアント)や、ネットワークに接続されている機器の一覧を確認する機能があります。ネットワーク管理者であれば、この方法が確実です。

手順:

  1. ルーターのIPアドレスを調べる:
    コマンドプロンプトで ipconfig を実行し、「デフォルト ゲートウェイ」のアドレスを確認します。これがルーターのIPアドレスです(例: 192.168.1.1)。
  2. 管理画面にアクセス:
    Webブラウザのアドレスバーに、調べたルーターのIPアドレスを入力してアクセスします。
  3. ログイン:
    管理者用のユーザー名とパスワードを入力してログインします。
  4. 接続デバイス一覧を確認:
    メニューから「DHCPクライアントリスト」「接続デバイス一覧」「LAN側設定」などの項目を探します。
  5. 複合機を探す:
    接続されているデバイスの一覧(ホスト名、IPアドレス、MACアドレス)が表示されます。ホスト名やMACアドレス(前述のベンダーコードがヒントになります)から複合機を特定し、割り当てられているIPアドレスを確認します。

3.5. 方法5:ネットワークスキャンツールを使う

より高度な方法として、ネットワーク全体をスキャンして接続されている機器をリストアップする専用ツールを使う方法があります。フリーソフトも多く存在し、非常に高機能です。

代表的なツール:

  • Advanced IP Scanner (Windows): 日本語にも対応しており、直感的なインターフェースで使いやすい人気のツールです。
  • Angry IP Scanner (Windows/Mac/Linux): クロスプラットフォームで動作する軽量なスキャナーです。

基本的な使い方:

  1. ツールをダウンロードし、インストールします。
  2. ツールを起動し、スキャンするIPアドレスの範囲を指定します。通常は 192.168.1.1 から 192.168.1.254 のように、自分のネットワークセグメント全体を指定します。
  3. スキャンを開始すると、指定した範囲内で応答があったデバイスの一覧が、IPアドレス、ホスト名、MACアドレス、メーカー名などの情報とともに表示されます。
  4. 一覧の中から、メーカー名(例: Fuji Xerox, Ricoh Co., Ltd.)や、開いているポート情報(プリンター関連のポートは80, 443(Web管理画面), 515(LPR), 9100(RAW)など)をヒントに、複合機を特定します。

この方法は、ネットワークに詳しくない人でも視覚的に機器を特定しやすく、IPアドレス管理表を作成する際にも役立つため、担当者であれば使い方を覚えておくと非常に便利です。


4. 【トラブルシューティング】IPアドレスが見つからない・接続できない場合

上記の方法を試してもIPアドレスが特定できない、あるいはIPアドレスは分かったのに接続できない、という場合のよくある原因と対処法を解説します。

4.1. ケース1:IPアドレスが「0.0.0.0」や「169.254.x.x」になっている

複合機本体でIPアドレスを確認した際に、0.0.0.0 になっていたり、169.254.x.x という見慣れないアドレスになっていたりすることがあります。

  • 原因:
    これは、複合機がDHCPサーバー(ルーターなど)からIPアドレスを正常に取得できていない状態です。169.254.x.x はAPIPA (Automatic Private IP Addressing) と呼ばれる、WindowsなどがIPアドレスを自動取得できなかった場合に自分自身に割り当てる応急処置的なアドレスです。
  • 対処法:
    1. 物理的な接続を確認:
      複合機に接続されているLANケーブルが抜けていないか、カチッと音がするまでしっかり差し込まれているか確認します。ケーブルの断線や、接続先のハブ/スイッチのポートが故障している可能性も考えられます。別のポートに差し替えてみましょう。
    2. 複合機のネットワーク機能の再起動:
      複合機の電源を一度切り、数分待ってから再度電源を入れます。これにより、再度DHCPサーバーへIPアドレスの取得を試みます。
    3. DHCPサーバー(ルーター)の再起動:
      ルーターやハブが一時的に不調をきたしている可能性もあります。他の業務に影響がないことを確認した上で、再起動を試みてください。
    4. 複合機の設定確認:
      複合機のネットワーク設定で、DHCP(IPアドレス自動取得)が無効になっていないか確認します。もし手動設定(固定IP)になっていて、かつ設定値が空欄や不正な値になっている場合は、正しい設定を入力するか、一時的に自動取得に切り替えてみましょう。

4.2. ケース2:PCと複合機のネットワークセグメントが違う

IPアドレスは分かっているのに、PCからpingが通らない、印刷ができないという場合、PCと複合機が異なるネットワークに接続されている可能性があります。

  • 原因:
    IPアドレスは、192.168.1.10 のように4つの数字で構成されていますが、通常、オフィスでは最初の3つの数字(192.168.1 の部分)が同じグループ(=ネットワークセグメント)になります。例えば、PCのIPアドレスが 192.168.1.50 なのに、複合機が 192.168.10.100 となっていると、特別な設定(ルーティング)がない限り通信できません。
    よくあるのが、PCはWi-Fi(192.168.1.x)、複合機は有線LAN(192.168.10.x)で、セグメントが分離されているケースです。
  • 対処法:
    1. 両方のIPアドレスとサブネットマスクを確認:
      PCと複合機の両方のIPアドレスとサブネットマスクを確認します。サブネットマスクが両方とも 255.255.255.0 の場合、IPアドレスの最初の3つの数字の組が一致している必要があります。
    2. 同じセグメントに設定:
      ネットワーク管理者に相談の上、複合機のIPアドレスをPCと同じセグメントに設定し直すか、PCの接続先を複合機と同じセグメントのネットワークに変更してください。

4.3. ケース3:固定IPアドレスを忘れてしまった

DHCPではなく固定IPで運用していたが、設定したアドレスを誰も覚えていない、記録も残っていない、というケースです。

  • 対処法:
    1. 基本に立ち返る:
      まずは【基本編】で紹介した、複合機本体の操作パネルや設定リストの印刷で確認するのが最も確実です。
    2. ネットワークスキャンツールで探す:
      本体での確認が不可能な場合は、【応用編】のネットワークスキャンツールを使って、ネットワーク全体をくまなくスキャンしてみるのが有効です。
    3. 最終手段:ネットワーク設定の初期化:
      どうしても見つからない場合の最終手段として、複合機のネットワーク設定を工場出荷時の状態に初期化する方法があります。しかし、これはIPアドレス以外のネットワーク関連設定(スキャン設定、認証設定など)もすべて消去されてしまうため、実行には細心の注意が必要です。実行前には必ず複合機のマニュアルを確認し、再設定に必要な情報が手元にあることを確認してください。

4.4. ケース4:ファイアウォールやセキュリティソフトにブロックされている

IPアドレスもセグメントも正しいのに通信できない場合、PC側のセキュリティ機能が通信を遮断している可能性があります。

  • 原因:
    Windows Defender ファイアウォールや、市販のセキュリティソフトが、プリンターとの通信(特定のポート)を脅威と誤認してブロックしていることがあります。
  • 対処法:
    1. 一時的に無効化して切り分け:
      問題の切り分けのため、一時的にファイアウォールやセキュリティソフトを無効にし、その状態でpingが通るか、印刷できるか試します。これで通信できるようになったら、原因はセキュリティ機能で確定です。
    2. 通信を許可するルールを追加:
      原因が特定できたら、すぐにセキュリティ機能を有効に戻します。その後、ファイアウォールやセキュリティソフトの設定画面で、プリンタードライバーのプログラムや、印刷に使用するポート(Standard TCP/IP Portなど)の通信を許可する例外ルールを追加してください。

5. 【コラム】知っておくと便利!IPアドレスの運用と管理のヒント

IPアドレスを特定できるようになったら、次は一歩進んで、トラブルを未然に防ぐための「運用・管理」について考えてみましょう。

5.1. DHCP vs 固定IP:複合機はどちらを選ぶべきか?

結論から言うと、オフィスの複合機は「固定IPアドレス」での運用を強く推奨します。

  • DHCP(自動取得)のデメリット:
    ルーターの再起動やリース期間の満了時に、複合機のIPアドレスが変わってしまう可能性があります。IPアドレスが変わると、全社員のPCのプリンター設定をすべてやり直さなければならなくなり、膨大な手間と業務の混乱を招きます。
  • 固定IPのメリット:
    一度設定すればIPアドレスが変わることがないため、接続が安定します。PCからの参照先が常に同じなので、「昨日まで印刷できたのに今日はできない」といったトラブルが激減します。

ただし、固定IPには「どのIPアドレスが使用済みか」を人間が管理する必要があり、誤って他の機器と同じIPアドレスを設定してしまう「IPアドレスの重複」というリスクが伴います。

そこで、両者の良いとこ取りをした「DHCP予約(IPアドレス固定割り当て)」という方法もあります。これは、ルーター(DHCPサーバー)側で「このMACアドレス(複合機)には、常にこのIPアドレスを割り当てる」と設定するものです。複合機側は自動取得設定のままで、実質的にIPアドレスを固定化できるため、管理がしやすくお勧めの方法です。

5.2. IPアドレス管理表を作成しよう

「あの複合機のIPアドレス、何番だっけ?」
「このIPアドレス、もう何かに使ってたかな?」

こうした事態を防ぐために、ExcelやGoogleスプレッドシートで簡単な「IPアドレス管理表」を作成しておくことを強くお勧めします。担当者の交代や不在時にも、この表があれば誰でも迅速に対応できます。

管理表に記載すべき項目例:

機器名 設置場所 IPアドレス サブネットマスク デフォルトゲートウェイ MACアドレス ホスト名 設定日 担当者 備考
富士フイルムC3373 3F 執務室東側 192.168.1.100 255.255.255.0 192.168.1.1 00:00:DE:.. MFP-3F-EAST 2023/04/01 鈴木 スキャン設定済
Canon iR-ADV C5540 4F 役員フロア 192.168.1.101 255.255.255.0 192.168.1.1 00:1E:8F:.. EXEC-MFP-4F 2023/05/15 田中 FAX機能あり

このような一覧があれば、ネットワークの全体像が把握でき、トラブルシューティングや新規機器の導入が格段にスムーズになります。


6. まとめ

今回は、オフィスの複合機のIPアドレスを特定するための、多岐にわたる方法を解説しました。

最後に、手順をもう一度おさらいしましょう。

  1. 【最優先】まずは複合機本体で確認する。

    • 操作パネルのメニューを辿るか、設定情報リストを印刷するのが最も確実で早い方法です。
  2. 【次に】設定済みのPCから確認する。

    • すでに印刷できるPCがあれば、プリンターのプロパティからポート情報を確認します。
  3. 【PCしかない場合】コマンドやツールを駆使する。

    • pingコマンドやarp -aコマンド、ルーターの管理画面、ネットワークスキャンツールなど、状況に応じて最適な方法を選択します。
  4. 【困ったら】トラブルシューティングを試す。

    • IPアドレスが異常な値になっていないか、ネットワークセグメントは合っているか、物理的な接続は問題ないか、基本的な点から一つずつ確認していきましょう。

複合機のIPアドレスは、オフィスネットワークにおける重要な情報です。その特定方法をマスターし、さらに一歩進んだ管理・運用を心掛けることで、日々の業務で発生するネットワーク関連のトラブルを未然に防ぎ、迅速に解決することができます。

この記事が、オフィスの担当者の皆様の業務の一助となれば幸いです。

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