`do-release-upgrade`コマンドでUbuntuを更新する方法

はい、承知いたしました。do-release-upgradeコマンドでUbuntuを更新する方法についての詳細な記事を作成します。


Ubuntuマスターへの道:do-release-upgradeによるOSアップグレード完全ガイド

はじめに

Ubuntuは、世界で最も人気のあるLinuxディストリビューションの一つであり、その使いやすさ、安定性、そして強力なコミュニティサポートで知られています。Ubuntuの大きな特徴の一つに、定期的なリリースサイクルがあります。通常、6ヶ月ごとに新しいバージョン(通常リリース)が、そして2年ごとに長期サポート(LTS: Long-Term Support)バージョンがリリースされます。

新しいリリースには、最新のソフトウェア、セキュリティパッチ、新機能、パフォーマンスの改善などが含まれており、システムを最新の状態に保つことは、セキュリティを確保し、最新の技術を活用する上で非常に重要です。このOS全体のバージョンを更新するプロセスを「リリースアップグレード」と呼びます。

WindowsやmacOSのメジャーアップデートに相当するこのプロセスを、Ubuntuでは主にコマンドラインツールである do-release-upgrade を用いて行います。このコマンドは、単にパッケージを更新する apt upgrade とは異なり、システムの設定ファイルやリポジトリ情報を新しいリリースのものに書き換え、OSの根幹からメジャーバージョンアップを行うための専用ツールです。

しかし、リリースアップグレードはシステムの根幹に関わる大きな変更であるため、軽い気持ちで実行すると、データの損失やシステムの起動不能といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。成功の鍵は、「徹底した準備」「プロセスの正しい理解」にあります。

この記事では、Ubuntuのリリースアップグレードを安全かつ確実に行うための包括的なガイドを提供します。初心者の方にも理解できるよう、以下の内容を詳細に解説していきます。

  1. アップグレード前の準備: バックアップからシステムのクリーンアップまで、失敗のリスクを最小限に抑えるための必須ステップ。
  2. アップグレードの実行: do-release-upgrade コマンドの実行から、対話形式で表示される各ステップの意味と適切な選択肢の解説。
  3. アップグレード後の確認: 新しいシステムが正常に動作しているかを確認し、最終的な調整を行うための手順。
  4. トラブルシューティング: アップグレード中に発生しがちな問題とその解決策。

この記事を最後まで読めば、あなたは自信を持って do-release-upgrade を実行し、お使いのUbuntuシステムを次のレベルへと引き上げることができるでしょう。デスクトップユーザーからサーバー管理者まで、すべてのUbuntuユーザーにとって必携の知識です。さあ、Ubuntuマスターへの道を一緒に歩み始めましょう。


第1章: 鉄壁の備え!アップグレード前の準備

リリースアップグレードは、いわばお使いのシステムに対する「開心術」のようなものです。成功すれば大きな恩恵がありますが、準備なしに行えば致命的な結果を招きかねません。この章で解説する準備作業は、アップグレードプロセス全体の中で最も重要です。時間をかけて、慎重に行ってください。

1.1. 最重要項目:データのバックアップ

これを怠ることは、シートベルトなしで高速道路を走るようなものです。絶対に、何があっても、最初にデータのバックアップを行ってください。

アップグレードプロセスが何らかの理由で失敗した場合、最悪のケースではシステムが起動しなくなり、データの復旧が困難になる可能性があります。バックアップさえあれば、たとえシステムが壊れても、OSをクリーンインストールした後にデータを復元できます。

何をバックアップすべきか?

  • ホームディレクトリ (/home/your_username): あなたの個人的なファイル(ドキュメント、写真、音楽、デスクトップの設定など)がすべてここにあります。最優先でバックアップしてください。
  • システム設定 (/etc): システム全体やアプリケーションの設定ファイルが格納されています。特にサーバーを運用している場合、ApacheやNginx、Sambaなどの設定は非常に重要です。
  • ウェブサイトのデータ (/var/www): ウェブサーバーを運用している場合は必須です。
  • データベース: MySQL/MariaDBやPostgreSQLなどを使用している場合、単にファイルをコピーするだけでは不十分です。各データベースのダンプツール(例: mysqldump)を使って、SQLファイルとしてバックアップを取るのが確実です。
  • インストール済みパッケージのリスト: 万が一クリーンインストールが必要になった際に、元の環境を再現するのに役立ちます。
    bash
    dpkg --get-selections > installed-packages.txt

どのようにバックアップするか?

  • GUIツール(デスクトップ向け):
    • Déjà Dup (バックアップ): Ubuntuに標準でインストールされていることが多い、シンプルで使いやすいバックアップツールです。Google Driveやローカルの外部ストレージに簡単にバックアップできます。
    • Timeshift: システム全体のスナップショットを作成するツールです。OSの状態を特定の時点に復元できるため、アップグレード前の状態に丸ごと戻したい場合に非常に強力です。
  • コマンドラインツール(デスクトップ・サーバー共通):
    • rsync: 高機能なファイル同期ツールです。差分バックアップが可能で、外部HDDやリモートサーバーへのバックアップに最適です。
      bash
      # 例: ホームディレクトリを外付けHDDにバックアップ
      sudo rsync -aAXv --exclude={"/dev/*","/proc/*","/sys/*","/tmp/*","/run/*","/mnt/*","/media/*","/lost+found"} / /path/to/backup/drive/
      # ホームディレクトリのみの場合
      rsync -avh /home/your_username/ /media/your_username/external_hdd/backup/
    • tar: 複数のファイルやディレクトリを一つのアーカイブファイル(.tar.gz)にまとめる古典的なツールです。
      bash
      # 例: ホームディレクトリとetcディレクトリをアーカイブ
      tar -cvzpf backup-$(date +%Y-%m-%d).tar.gz /home/your_username /etc

バックアップは、アップグレードするマシンとは物理的に別のメディア(外付けHDD、NAS、クラウドストレージ、別のサーバーなど)に保存してください。

1.2. システムの完全なアップデートとクリーンアップ

新しいリリースにアップグレードする前に、現在のシステムが完全に最新の状態であることが重要です。古いパッケージが残っていると、依存関係の問題を引き起こす原因となります。

ターミナルを開き、以下のコマンドを順番に実行します。

  1. パッケージリストの更新:
    bash
    sudo apt update
  2. インストール済みパッケージのアップグレード:
    bash
    sudo apt upgrade
  3. 不要になった依存関係の削除も考慮したアップグレード:
    bash
    sudo apt dist-upgrade
  4. 不要なパッケージの自動削除:
    bash
    sudo apt autoremove

これらのコマンドを実行後、システムに保留されている(hold状態の)パッケージがないか確認します。保留中のパッケージはアップグレードされないため、問題の原因となることがあります。

bash
apt-mark showhold

もし何か表示された場合は、なぜ保留されているのかを理解した上で、sudo apt-mark unhold <package-name> コマンドで保留を解除するか、そのままにしておくか判断してください。

1.3. サードパーティリポジトリ (PPA) の無効化

PPA (Personal Package Archive) は、公式リポジトリにはないソフトウェアをインストールするために非常に便利ですが、リリースアップグレードの際には最大の障害となり得ます。新しいUbuntuのリリースにPPAが対応していない場合、深刻な依存関係の競合を引き起こし、アップグレードを失敗させる可能性が非常に高いです。

アップグレード前には、すべてのサードパーティリポジトリを無効化、あるいは削除することを強く推奨します。

GUIでの無効化:

  1. 「ソフトウェアとアップデート」を起動します。
  2. 「他のソフトウェア」タブを開きます。
  3. 公式リポジトリ以外のすべてのエントリのチェックを外します。

コマンドラインでの確認と削除:

PPAは /etc/apt/sources.list.d/ ディレクトリに .list ファイルとして保存されています。

  1. 一覧表示:
    bash
    ls /etc/apt/sources.list.d/
  2. 無効化: 各 .list ファイルを開き、行の先頭に # を付けてコメントアウトします。
  3. 削除(推奨): ppa-purge ツールを使うのが最も安全です。これは、PPAを削除すると同時に、そのPPAからインストールされたパッケージを公式リポジトリのバージョンにダウングレードしてくれます。
    “`bash
    # ppa-purgeがなければインストール
    sudo apt install ppa-purge

    PPAをパージ

    sudo ppa-purge ppa:repository-name/ppa
    “`

アップグレードが完了した後、新しいリリースに対応していることを確認してから、必要なPPAを再度有効にしてください。

1.4. 電源とネットワークの安定確保

リリースアップグレードは数十分から数時間かかることがあります。この間に電源が落ちたり、ネットワーク接続が切断されたりすると、システムが中途半端な状態になり、起動不能に陥る危険性があります。

  • ノートPCの場合: 必ずACアダプタを接続してください。
  • ネットワーク: Wi-Fiよりも安定した有線LAN接続を使用することを強く推奨します。

1.5. SSH接続の維持(サーバー管理者向け)

サーバーをリモートのSSH経由でアップグレードする場合、これは極めて重要な注意点です。途中でSSHセッションが切断されると、アップグレードプロセスを制御できなくなり、最悪の場合サーバーにアクセスできなくなります。

このリスクを回避するために、screen または tmux といったターミナルマルチプレクサを必ず使用してください。これらは、SSH接続が切れてもサーバー上でセッション(と実行中のコマンド)を維持し続けてくれるツールです。

screen の使い方:

  1. screen のインストール:
    bash
    sudo apt install screen
  2. 新しい screen セッションの開始:
    bash
    screen -S ubuntu-upgrade
  3. セッション内でアップグレードコマンドを実行:
    bash
    sudo do-release-upgrade
  4. 切断(デタッチ): Ctrl+a を押してから d を押します。これでセッションから抜けられますが、プロセスはバックグラウンドで動き続けます。
  5. 再接続(アタッチ): 再びSSHでログインした後、以下のコマンドでセッションに戻れます。
    bash
    screen -r ubuntu-upgrade

また、アップグレードプロセスは、リカバリーのために一時的に新しいSSHポート(デフォルトは1022)を開くことがあります。ファイアウォール(ufwなど)を設定している場合は、このポートを一時的に許可しておく必要があります。

bash
sudo ufw allow 1022/tcp

1.6. ディスク空き容量の確認

アップグレードでは、新しいパッケージを大量にダウンロードし、展開する必要があります。そのため、十分なディスクの空き容量が必要です。特にルートパーティション (/) の容量を確認してください。

bash
df -h

一般的に、数GBの空き容量が推奨されます。容量が不足している場合は、不要なファイルを削除したり、古いカーネルを削除したりして容量を確保してください。

/boot パーティションが別にある場合、こちらも容量不足になりがちです。古いカーネルは sudo apt autoremove --purge で削除できます。

1.7. アップグレードポリシーの確認

Ubuntuがどのリリースにアップグレードしようとするかは、設定ファイルによって決まります。

bash
cat /etc/update-manager/release-upgrades

Prompt の行を確認してください。

  • Prompt=lts: LTS版を使用している場合、次のLTS版がリリースされた時のみアップグレードを通知します。LTSからLTSへのアップグレードを推奨します。
  • Prompt=normal: LTS版、通常版に関わらず、利用可能な新しいリリースがあれば常にアップグレードを通知します。
  • Prompt=never: リリースアップグレードを通知しません。

サーバーなど安定性を重視する場合は lts が、常に最新の機能を試したいデスクトップユーザーは normal が適しています。アップグレード前に、自分の意図とこの設定が一致しているか確認しましょう。


第2章: 実行!do-release-upgrade のステップ・バイ・ステップ解説

万全の準備が整ったら、いよいよアップグレードを実行します。ここからは、do-release-upgrade コマンドが実行するプロセスを、対話形式のプロンプトと共に詳しく見ていきましょう。

2.1. アップグレードの開始

ターミナルを開き(サーバーの場合は screen または tmux セッション内で)、以下のコマンドを実行します。

bash
sudo do-release-upgrade

オプション:

  • -d: 通常、このコマンドは公式にリリースされた安定版へのアップグレードのみを提案します。しかし、まだ開発中(ベータ版など)のリリースにアップグレードしたい場合は -d オプションを付けます。安定稼働しているシステムでは絶対に使用しないでください。
  • -c: アップグレードが可能かどうかをチェックするだけで、実際のアップグレードは行いません(ドライラン)。

コマンドを実行すると、アップグレードツールが起動し、一連のチェックを開始します。

2.2. プロセスの詳細解説

Step 1: 初期チェックとSSHセッションの警告

まず、ツールはシステムの基本的な状態(リポジトリへのアクセス、ディスク容量など)をチェックします。

SSH経由で実行している場合、以下のようなメッセージが表示されます。

“`
Reading cache

Checking package manager

Continue running under SSH?

This session appears to be running under ssh. It is not recommended
to perform an upgrade over ssh currently because in case of failure it
is often difficult to recover.

If you continue, an additional ssh daemon will be started at port
‘1022’.
Do you want to continue? (y/n)
“`

これは、「SSH経-由でのアップグレードはリスクがあるので、万が一の回復用にポート1022で予備のSSHサーバーを起動しますがいいですか?」という確認です。screentmux を使っていればリスクは低減されていますが、念のため y を入力して続行するのが賢明です。前述の通り、ファイアウォールでこのポートが開いていることを確認してください。

Step 2: リポジトリ情報の更新

次に、ツールは現在の sources.list を解析し、新しいリリースのリポジトリ情報を取得しようとします。インターネットへの接続が必要です。

Checking for a new Ubuntu release
...
Get:1 Upgrade tool signature [819 B]
...
Fetched 1,154 kB in 1s (1,118 kB/s)
authenticate 'focal.tar.gz' against 'focal.tar.gz.gpg'

“No new release found” と表示された場合は、前章の「アップグレードポリシーの確認」を見直すか、まだアップグレードパスが公式に提供されていない可能性があります(通常、LTSの最初のポイントリリース .1 が出るまでは、前のLTSからのアップグレードパスは開かれません)。

Step 3: アップグレードのサマリー確認

ツールはシステムのパッケージを分析し、アップグレードの詳細なサマリーを表示します。

“`
Do you want to start the upgrade?

12 packages are going to be removed. 102 new packages are going to
be installed. 450 packages are going to be upgraded.

You have to download a total of 350 M. This download will take about
2 minutes with your connection.

Installing the upgrade can take several hours. Once the download has
finished, the process cannot be cancelled.

Continue [yN] Details [d]
“`

ここには非常に重要な情報が含まれています。

  • 削除されるパッケージ (removed)
  • 新規インストールされるパッケージ (new)
  • アップグレードされるパッケージ (upgraded)
  • ダウンロードに必要なサイズと推定時間

ここで d を入力すると、影響を受けるパッケージの全リストを確認できます。特に削除されるパッケージに重要なものがないか、一度目を通しておくことをお勧めします。

内容を確認し、問題がなければ y を入力して続行します。ここから先は、プロセスを中断することはできません。

Step 4: パッケージのダウンロード

プログレスバーが表示され、必要なパッケージのダウンロードが始まります。ネットワークの速度に依存しますが、気長に待ちましょう。

Step 5: パッケージのインストールと設定(最重要対話フェーズ)

ダウンロードが完了すると、いよいよパッケージのインストールとシステムの更新が始まります。このフェーズでは、ユーザーの入力を求める対話的なプロンプトがいくつか表示されることがあります。これらは慎重に対応する必要があります。

最も重要な対話:設定ファイルの上書き

システムのアップグレード中、dpkg(パッケージ管理システムの根幹)は、あなたが変更した可能性のある設定ファイル(主に /etc ディレクトリ内のファイル)と、新しいパッケージに含まれるデフォルトの設定ファイルが異なることを検出することがあります。

その際、以下のような選択肢が表示されます。

Configuration file '/etc/ssh/sshd_config'
==> Modified (by you or by a script) since installation.
==> Package distributor has shipped an updated version.
What would you like to do about it? Your options are:
Y or I : install the package maintainer's version
N or O : keep the local version currently installed
D : show the differences between the versions
Z : start a shell to examine the situation
The default action is to keep your current version.
*** sshd_config (Y/I/N/O/D/Z) [default=N]?

これは sshd_config ファイルに関する質問ですが、他の多くの設定ファイル(GRUB、Samba、Apacheなど)でも同様の質問が表示される可能性があります。

  • Y or I: パッケージメンテナのバージョンをインストールする。
    • 選択するケース: その設定ファイルを自分で変更した覚えがなく、新しいバージョンのセキュリティ修正や新機能を取り込みたい場合。
    • 注意点: 独自の設定はすべて失われます。
  • N or O (デフォルト): 現在のローカルバージョンを保持する。
    • 選択するケース: 自分で重要なカスタマイズ(例: SSHのポート番号変更、セキュリティ設定の強化など)を加えており、その設定を維持したい場合。
    • 注意点: 新しいバージョンの重要な変更(特にセキュリティ関連)を見逃す可能性があります。
  • D: 両者の差分を表示する。
    • 最も推奨される行動: どちらかを選ぶ前に、まず D を押して差分(diff)を確認しましょう。これにより、どのような変更が加えられているかを理解し、より適切な判断ができます。
  • Z: シェルを起動する。
    • 上級者向け: 状況を詳しく調査したい場合に使います。

ベストプラクティス:
1. まず D を押して差分を確認する。
2. 変更点が軽微で、自分の設定が重要でない場合は Y を選択する。
3. 自分の加えた設定が不可欠な場合は N を選択する。この場合、アップグレード後に新しい設定ファイル(通常は .dpkg-new という拡張子で同じディレクトリに保存されます)の内容を確認し、必要な変更を手動でマージする必要があります。

よくわからない場合は、デフォルトの N を選択しておくのが安全ですが、後で必ず確認作業が必要です。

その他の対話プロンプト:

  • サービスの自動再起動: アップグレード中に libc などのコアライブラリが更新されると、それらを使用しているサービスを再起動する必要があるか尋ねられることがあります。通常は、自動的に再起動させる選択肢を選んで問題ありません。
  • キーボードレイアウト: デスクトップ環境のアップグレードでは、キーボードレイアウトの再設定を求められることがあります。
Step 6: 古いパッケージの削除

すべてのパッケージのインストールと設定が終わると、最後に不要になったパッケージを削除するかどうか尋ねられます。

“`
Remove obsolete packages?

58 packages are going to be removed.

Continue [yN] Details [d]
“`

これらは、新しいリリースでは使われなくなった、あるいは別のパッケージに置き換えられた古いパッケージです。通常、これらは安全に削除できます。d で詳細を確認後、y を入力して削除しましょう。これにより、システムがクリーンな状態に保たれます。

Step 7: 再起動の要求

すべてのプロセスが完了すると、システムを再起動してアップグレードを完了させるように促されます。

“`
System upgrade is complete.

Restart required

To complete the upgrade, a restart is required.
If you select ‘y’ the system will be restarted.

Continue [yN]
“`

y を入力してシステムを再起動します。この再起動で、新しいカーネルがロードされ、すべての新しいサービスが起動し、アップグレードが完全に適用されます。


第3章: アップグレード後の最終確認と調整

再起動後、新しいバージョンのUbuntuがあなたを迎えてくれるはずです。しかし、作業はまだ終わりではありません。システムが正常に、そして期待通りに動作しているかを確認し、いくつかの後片付けを行う必要があります。

3.1. システムバージョンの確認

まずは、アップグレードが成功したことを確認しましょう。ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。

bash
lsb_release -a

出力結果の DescriptionRelease の行に、アップグレード先のバージョン番号が表示されていれば成功です。

No LSB modules are available.
Distributor ID: Ubuntu
Description: Ubuntu 22.04.1 LTS
Release: 22.04
Codename: jammy

次に、カーネルのバージョンも確認しておきましょう。

bash
uname -r

新しいバージョンのカーネルがロードされているはずです。

3.2. システムの基本動作確認

  • デスクトップユーザーの場合:
    • ログイン画面やデスクトップ環境は正しく表示されますか?
    • 普段使っている主要なアプリケーション(Webブラウザ、メールクライアント、オフィススイートなど)は正常に起動・動作しますか?
    • 音は出ますか? Wi-Fiは接続できますか?
  • サーバー管理者の場合:
    • SSHで正常にログインできますか?
    • 稼働させている主要なサービス(ウェブサーバー、データベースサーバー、メールサーバーなど)が起動しているか確認します。
      bash
      sudo systemctl status apache2 # 例: Apacheの場合
      sudo systemctl status mysql
    • journalctl -u <service-name> で、サービス固有のログにエラーがないか確認します。
    • 外部からウェブサイトや提供しているサービスにアクセスできるか確認します。

3.3. サードパーティリポジトリ (PPA) の再有効化

アップグレード前に無効化したPPAを、必要に応じて再有効化します。ただし、注意が必要です。

  1. そのPPAが、アップグレード先のUbuntuバージョンに正式に対応しているか、開発元のウェブサイト(Launchpadなど)で確認してください。
  2. 対応していることが確認できたら、「ソフトウェアとアップデート」ツールを使うか、/etc/apt/sources.list.d/ 内のファイルのコメントアウトを解除して、リポジトリ情報を更新します。
    bash
    # PPAを再有効化した後
    sudo apt update

対応していないPPAを有効にすると、システムのパッケージに不整合が生じ、不安定になる原因となります。

3.4. 設定ファイルのマージ

アップグレード中に設定ファイルの上書きプロンプトで「N (keep the local version)」を選択した場合、システムは新しいデフォルト設定ファイルを .dpkg-new.ucf-new といった拡張子で保存している可能性があります。

これらのファイルを探し、現在の設定ファイルとの差分を確認して、必要な変更を手動でマージすることが重要です。これにより、自分のカスタマイズを維持しつつ、新しいバージョンの重要な設定(特にセキュリティ関連)を取り込むことができます。

“`bash

/etc ディレクトリ以下で .dpkg-new ファイルを探す

sudo find /etc -name “*.dpkg-new”

例: sshd_config の差分を確認

diff /etc/ssh/sshd_config /etc/ssh/sshd_config.dpkg-new
“`

diff コマンドの出力を注意深く読み、テキストエディタで自分の設定ファイル (sshd_config) を開き、新しいファイルから必要な行を追加・修正します。

3.5. 最終的なクリーンアップ

最後に、もう一度システムをクリーンアップしておきましょう。

bash
sudo apt autoremove --purge

これにより、アップグレードプロセスで見逃された可能性のある、不要になった依存パッケージや設定ファイルが完全に削除されます。

3.6. アップグレードログの確認

何か問題が発生した場合、アップグレードの詳細なログが /var/log/dist-upgrade/ ディレクトリに保存されています。特に main.logapt.log は、問題の原因を突き止める上で非常に役立つ情報を含んでいます。


第4章: 窮地を脱する!トラブルシューティング

リリースアップグレードは複雑なプロセスであり、時には問題が発生することもあります。ここでは、よくある問題とその対処法を紹介します。

問題1: “No new release found” と表示される

  • 原因A: /etc/update-manager/release-upgradesPrompt 設定が never になっている、またはLTS版で Prompt=lts になっていて、まだ次のLTSがリリースされていない。
    • 解決策: 設定を normal または lts に変更する。LTSから次のLTSへのアップグレードは、通常、新しいLTSの最初のポイントリリース(例: 22.04.1)がリリースされるまで提供されません。
  • 原因B: ミラーサーバーがまだ新しいリリースの情報に更新されていない。
    • 解決策: 「ソフトウェアとアップデート」でダウンロード元を「メインサーバー」に変更してみる。
  • 原因C: 必要なパッケージがインストールされていない。
    • 解決策: update-manager-core パッケージがインストールされていることを確認する。sudo apt install update-manager-core

問題2: アップグレードが途中で停止する、またはエラーで終了する

  • 原因A: 依存関係の競合。多くの場合、サードパーティのPPAが原因です。
    • 解決策: sudo apt -f installsudo dpkg --configure -a を試して、パッケージングシステムの状態を修復します。それでも解決しない場合は、エラーメッセージをよく読み、原因となっているパッケージを特定します。ppa-purge を使って関連するPPAを完全に削除する必要があるかもしれません。aptitudeapt よりも高度な依存関係解決機能を持っているため、sudo aptitude install <package> を試すのも有効です。
  • 原因B: ディスク容量不足。
    • 解決策: df -h で空き容量を確認し、sudo apt clean や不要なファイルの削除で容量を確保してから、再度 sudo apt -f install などを試します。

問題3: 再起動後にGUI(デスクトップ環境)が起動しない

  • 原因: グラフィックドライバの問題が最も一般的です。特にNVIDIAのプロプライエタリドライバを使用している場合に多く発生します。
    • 解決策:
      1. Ctrl+Alt+F3 などを押して、CUI(キャラクターユーザーインターフェース)のコンソールに切り替えてログインします。
      2. ネットワークに接続されていることを確認します (ping 8.8.8.8)。
      3. NVIDIAドライバを再インストールします。まず古いものをパージしてから、推奨バージョンをインストールするのが確実です。
        bash
        sudo apt purge nvidia-*
        sudo ubuntu-drivers autoinstall
      4. 再起動します (sudo reboot)。

問題4: 再起動後にシステムが全く起動しない(GRUBの問題など)

  • 原因: ブートローダーであるGRUBの設定が破損した可能性があります。
    • 解決策: UbuntuのインストールUSB/DVDを使って「レスキューモード」または「Ubuntuを試す」で起動します。その後、boot-repair という非常に優れたツールを使ってGRUBを自動修復するのが簡単です。
      bash
      # Live環境でターミナルを開き、boot-repairをインストールして実行
      sudo add-apt-repository ppa:yannubuntu/boot-repair
      sudo apt update
      sudo apt install -y boot-repair
      boot-repair

      推奨される修復オプションを選択して実行します。

まとめ

do-release-upgrade を使ったUbuntuのリリースアップグレードは、システムの健全性を保ち、最新の技術の恩恵を受けるための強力な手段です。しかし、その強力さゆえに、慎重なアプローチが求められます。

この記事で繰り返し強調してきたように、成功への道は以下の3つの柱で支えられています。

  1. 徹底した準備: 何よりもまずバックアップ。そしてシステムのクリーンアップとPPAの無効化。この段階に時間をかけることが、後の安心につながります。
  2. プロセスの理解: アップグレード中に表示されるメッセージ、特に設定ファイルの上書きに関する対話の意味を理解し、適切な選択を行うこと。
  3. 冷静な事後対応: アップグレード後の確認作業を怠らず、問題が発生しても慌てず、ログを確認し、適切なトラブルシューティングを行うこと。

サーバーを運用している場合は、screentmux の使用はもはや選択肢ではなく、必須の作法です。これらのツールは、あなたを最悪の事態から守ってくれる生命線となります。

リリースアップグレードは、最初は少し怖い作業に思えるかもしれません。しかし、このガイドに沿って一つ一つのステップを確実に実行すれば、あなたは自信を持ってこの重要なメンテナンス作業を遂行できるはずです。新しい機能、強化されたセキュリティ、そして改善されたパフォーマンスが、アップグレードの先であなたを待っています。

さあ、準備は整いました。あなたのUbuntuシステムを、次のステージへと進化させましょう。

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