Amazon Aurora PostgreSQL構築ガイド|クラスター作成から接続まで

はい、承知いたしました。
Amazon Aurora PostgreSQLの構築ガイドについて、クラスター作成から接続までを詳細に解説した約5000語の記事を作成します。


Amazon Aurora PostgreSQL構築ガイド|クラスター作成から接続まで徹底解説

はじめに

クラウド技術の進化に伴い、データベースの選択肢も多様化しています。その中でも、AWSが提供する「Amazon Aurora」は、従来のエンタープライズデータベースが持つパフォーマンスと可用性、そしてオープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性を兼ね備えた、クラウドネイティブなリレーショナルデータベースとして注目を集めています。

本記事は、これからAmazon Aurora PostgreSQLを導入しようと考えているエンジニア、オンプレミスのデータベースからクラウドへの移行を検討しているデータベース管理者(DBA)、そして高性能なデータベースを求めるすべての開発者を対象としています。AWSの基本的な知識がある方を想定していますが、初心者の方でも理解できるよう、一つ一つのステップを丁寧に、スクリーンショットを補う形で詳細に解説していきます。

この記事を最後まで読めば、以下のスキルを習得できます。

  • Amazon Aurora PostgreSQLの基本的なアーキテクチャとメリットの理解
  • セキュアなネットワーク環境(VPC)の準備
  • AWSマネジメントコンソールを使用したAurora PostgreSQLクラスターの作成手順
  • EC2インスタンスやローカルPCのGUIツールから作成したデータベースへ接続する方法

クラウドデータベースの構築は、一見複雑に思えるかもしれません。しかし、AuroraはAWSの強力なマネージドサービスであり、多くの複雑な作業を自動化してくれます。このガイドを参考に、ぜひクラウドネイティブデータベースの世界への第一歩を踏み出してください。

Amazon Auroraとは? なぜPostgreSQL互換エディションを選ぶのか?

Amazon Auroraは、MySQLおよびPostgreSQLと完全な互換性を持つ、クラウド向けに再設計されたリレーショナルデータベースエンジンです。その最大の特徴は、データベースエンジンとストレージ層が分離された独自のアーキテクチャにあります。

Auroraの主な特徴:

  • 高いパフォーマンスとスループット: 標準的なPostgreSQLと比較して最大3倍のスループットを実現します。ストレージ層がSSDベースで並列処理に最適化されているため、高速な読み書きが可能です。
  • 高い可用性と耐久性: データは3つのアベイラビリティーゾーン(AZ)にわたり6つのコピーが自動的に作成され、高い耐久性(99.999999999%)を誇ります。AZ障害時にも、通常は30秒以内にAuroraレプリカへの自動フェイルオーバーが完了し、サービスのダウンタイムを最小限に抑えます。
  • 柔軟なスケーラビリティ:
    • ストレージ: ストレージは10GBから最大128TiBまで、使用量に応じて自動的に拡張されます。容量を事前にプロビジョニングする必要はありません。
    • コンピューティング: 数クリックでインスタンスサイズを変更(スケールアップ/ダウン)したり、最大15個の低レイテンシーなリードレプリカを追加(スケールアウト)して読み取り性能を向上させたりできます。
  • フルマネージドサービス: ハードウェアのプロビジョニング、データベースのセットアップ、パッチ適用、バックアップといった時間のかかる管理タスクはAWSによって自動化されます。これにより、開発者やDBAはアプリケーションの開発やデータの最適化といった、より価値の高い作業に集中できます。

なぜPostgreSQL互換エディションか?

PostgreSQLは、その堅牢性、拡張性、標準SQLへの準拠、豊富な機能セットから「世界で最も先進的なオープンソースリレーショナルデータベース」として広く支持されています。Aurora PostgreSQLは、このPostgreSQLのすべての利点を享受しながら、さらにクラウドネイティブなパフォーマンス、可用性、スケーラビリティを手に入れることができる、非常に強力な選択肢です。既存のPostgreSQLアプリケーションからの移行も容易であり、多くの企業で採用が進んでいます。

準備編:Aurora PostgreSQLクラスター作成の前に

データベースクラスターをいきなり作成する前に、安全で適切な環境を準備することが重要です。ここでは、AWSアカウントの準備から、セキュアなネットワーク環境であるVPCの構築まで、事前に行うべきステップを解説します。

1. AWSアカウントとIAMユーザーの作成

まず、AWSを利用するためのアカウントが必要です。まだお持ちでない場合は、AWS公式サイトからアカウントを作成してください。

AWSアカウント作成後、日常的な作業はルートアカウント(アカウント作成時に使用したメールアドレスとパスワード)で行うべきではありません。ルートアカウントはすべてのサービスに対して無制限の権限を持っており、誤操作や認証情報の漏洩が起きた場合のリスクが非常に高いためです。

代わりに、IAM (Identity and Access Management) ユーザーを作成し、必要な権限のみを付与して作業を行います。これを「最小権限の原則」と呼び、セキュリティの基本となります。

IAMユーザー作成手順:

  1. AWSマネジメントコンソールにルートアカウントでサインインします。
  2. サービス検索で「IAM」と入力し、IAMダッシュボードに移動します。
  3. 左側のナビゲーションペインで「ユーザー」を選択し、「ユーザーを作成」をクリックします。
  4. ユーザー名を決め(例: aurora-admin)、「AWS マネジメントコンソールへのアクセス」にチェックを入れます。
  5. コンソールのパスワードを設定します(自動生成またはカスタム)。
  6. 次の「許可を設定」画面で、「ポリシーを直接アタッチする」を選択します。
  7. ポリシーの検索ボックスに AmazonRDSFullAccess と入力し、表示されたポリシーにチェックを入れます。これにより、RDS(Auroraを含む)に関するすべての操作権限が付与されます。
    • 本番環境のベストプラクティス: 本番環境では、より厳格なカスタムポリシーを作成し、本当に必要な操作(例: データベースの作成、変更、削除は許可するが、IAMユーザーの管理は許可しないなど)のみを許可することが推奨されます。
  8. 残りのステップはデフォルトのまま進み、ユーザーを作成します。
  9. 作成が完了したら、一度サインアウトし、今作成したIAMユーザーでサインインし直してください。今後の作業はすべてこのIAMユーザーで行います。

2. VPC(Virtual Private Cloud)の準備

VPCは、AWSクラウド内に構築するプライベートな仮想ネットワーク空間です。データベースのような重要なリソースは、インターネットから直接アクセスできない安全なネットワーク(プライベートサブネット)に配置するのがセキュリティの鉄則です。

ここでは、一般的なWebアプリケーションの構成を想定したVPCを準備します。

構成要素:

  • VPC: ネットワーク全体の論理的なコンテナ。(例: 10.0.0.0/16
  • サブネット: VPCを分割した小さなネットワーク。AZごとに作成します。
    • パブリックサブネット: インターネットゲートウェイへのルートがあり、外部と直接通信できる。Webサーバーや踏み台サーバー(後述)を配置します。
    • プライベートサブネット: インターネットゲートウェイへのルートがなく、外部と直接通信できない。データベースをここに配置します。
  • インターネットゲートウェイ (IGW): VPCとインターネットを接続するためのゲートウェイ。
  • NATゲートウェイ: プライベートサブネット内のインスタンスが、外部(例: OSアップデートのダウンロード)にアクセスするためのゲートウェイ。外部からプライベートサブネットへのアクセスは許可しません。
  • ルートテーブル: サブネット内のトラフィックがどこに向かうべきかを定義するルールブック。
  • セキュリティグループ: インスタンスレベルで通信を制御する仮想ファイアウォール。

VPC作成の簡易手順(VPCウィザード利用):

  1. AWSマネジメントコンソールで「VPC」サービスに移動します。
  2. 「VPCを作成」をクリックします。
  3. 「作成するリソース」で「VPCなど」を選択します。
  4. 「名前タグの自動生成」にプロジェクト名(例: aurora-guide)を入力すると、各リソースに分かりやすい名前が自動で付きます。
  5. アベイラビリティーゾーンの数(通常は2つ以上)、パブリックサブネットの数、プライベートサブネットの数を指定します。
  6. NATゲートウェイは「1 AZ あたり」を選択すると可用性が高まりますが、コストを抑えたい場合は「なし」または「1」を選択します(開発環境なら「なし」でも可)。
  7. 「VPCを作成」をクリックします。

これで、データベースを配置するための安全なネットワーク基盤が整いました。

3. セキュリティグループの作成

次に、データベースへのアクセスを厳密に制御するためのセキュリティグループを作成します。

  1. VPCダッシュボードの左側メニューから「セキュリティグループ」を選択し、「セキュリティグループを作成」をクリックします。
  2. データベース用セキュリティグループ (aurora-db-sg) の作成:
    • セキュリティグループ名: aurora-db-sg
    • 説明: Security group for Aurora PostgreSQL cluster
    • VPC: 先ほど作成したVPCを選択。
    • インバウンドルール:
      • 「ルールを追加」をクリックします。
      • タイプ: PostgreSQL(ポート5432が自動で選択されます)
      • ソース: 後ほど作成する踏み台サーバー用のセキュリティグループID (sg-xxxxxxxx) または、特定のIPアドレスを指定します。ここでは、先に踏み台サーバー用のセキュリティグループを作成してから、そのIDを指定します。
  3. 踏み台サーバー用セキュリティグループ (aurora-bastion-sg) の作成:
    • セキュリティグループ名: aurora-bastion-sg
    • 説明: Security group for Bastion Host
    • VPC: 同じVPCを選択。
    • インバウンドルール:
      • 「ルールを追加」をクリックします。
      • タイプ: SSH(ポート22)
      • ソース: マイIP を選択。これにより、現在作業しているあなたのPCのグローバルIPアドレスからのみSSH接続が許可されます。
  4. 再度、データベース用セキュリティグループ (aurora-db-sg) の編集画面に戻り、インバウンドルールのソースに、今作成した踏み台サーバー用セキュリティグループ (aurora-bastion-sg) を指定します。これにより、「踏み台サーバーからのみデータベースへのアクセスを許可する」というルールが完成します。

これで、クラスター作成の準備は万全です。

実践編:Aurora PostgreSQLクラスターの作成

いよいよAurora PostgreSQLクラスターを作成します。AWSマネジメントコンソールのウィザードに従って、各設定項目を詳しく見ていきましょう。

  1. AWSマネジメントコンソールにIAMユーザーでログインし、サービス検索から「RDS」を選択してRDSダッシュボードに移動します。
  2. 左側のナビゲーションペインから「データベース」を選択し、「データベースの作成」ボタンをクリックします。

1. データベース作成方法の選択

  • 標準作成: すべての構成オプションを自分で設定します。本番環境の構築や、詳細なカスタマイズを行いたい場合に選択します。今回はこちらを選択します。
  • 簡易作成: AWSが推奨するベストプラクティス設定が自動で適用されます。開発やテスト用途で手早く作成したい場合に便利です。

選択: 標準作成

2. エンジンのオプション

  • エンジンタイプ: Amazon Aurora を選択します。
  • Amazon Aurora のエディション: Amazon Aurora PostgreSQL 互換エディション を選択します。
  • 利用可能なバージョン: PostgreSQLのバージョンを選択します。特別な理由がない限り、LTS(Long-Term Support)対象のバージョンか、最新のメジャーバージョンを選択するのが一般的です。バージョンによって利用できる機能や拡張機能が異なるため、アプリケーションの要件を確認してください。

3. テンプレート

  • 本番稼働用: 高可用性と高速なパフォーマンスのために、デフォルトでマルチAZ配置(インスタンスが2つ)やプロビジョンドIOPSなどの設定が選択されます。
  • 開発/テスト: コストを抑えるための設定がデフォルトになります。インスタンスは1つで、小規模なインスタンスクラスが選択されます。

選択: 開発/テスト (このガイドではコストを考慮)

4. 設定

このセクションでは、クラスターの識別情報と認証情報を設定します。

  • DB クラスター識別子: クラスターの一意な名前を入力します(例: aurora-pg-cluster-demo)。プロジェクト名や環境名(dev, stg, prod)を含めると管理しやすくなります。
  • マスターユーザー名: データベースの管理者ユーザー名です。デフォルトは postgres ですが、セキュリティ上、別の名前に変更することも推奨されます(例: aurora_admin)。
  • マスターパスワード: 管理者ユーザーのパスワードを設定します。
    • パスワードの管理: パスワードを自動生成する にチェックを入れると、強固なパスワードが自動で生成されます。生成されたパスワードは必ず安全な場所に保管してください。手動で設定する場合は、推測されにくい複雑なパスワードを設定しましょう。
    • ベストプラクティス: 本番環境では、パスワードを直接管理する代わりに AWS Secrets Manager を利用して認証情報を安全に保管・ローテーションすることが推奨されます。

5. DB インスタンスクラス

データベースのコンピューティング性能(CPU、メモリ)を決定します。

  • インスタンスクラスの選択:
    • 標準クラス (r系): メモリ最適化インスタンス。一般的な本番ワークロードに適しています。例: db.r6g (Graviton2), db.r5 (Intel)。
    • バースト可能パフォーマンスクラス (t系): ベースライン性能を持ち、必要に応じてCPU性能をバースト(一時的に向上)できます。開発、テスト、小規模な本番ワークロードに適しています。例: db.t4g, db.t3

選択: db.t3.medium など、無料利用枠の対象か、低コストのインスタンスを選択します。

6. 可用性と耐久性

Auroraの大きな特徴である高可用性の設定です。

  • マルチ AZ 配置: Aurora レプリカを作成する または Aurora レプリカを作成しない を選択します。
    • Aurora レプリカを作成する: プライマリ(ライター)インスタンスとは異なるAZに、読み取り専用のレプリカ(リーダー)インスタンスが作成されます。これにより、読み取り性能のスケールアウトが可能になるほか、ライターインスタンスに障害が発生した場合、このレプリカが新しいライターに昇格し、迅速なフェイルオーバーが実現します。本番環境では必須の選択です。
    • Aurora レプリカを作成しない: ライターインスタンスのみが作成されます。コストは抑えられますが、インスタンス障害時の復旧に時間がかかります。

選択: 開発/テスト テンプレートを選択したため、デフォルトで Aurora レプリカを作成しない になっています。このままで進めます。

7. 接続

データベースを配置するネットワーク環境を設定します。

  • Virtual Private Cloud (VPC): 準備編で作成したVPC (aurora-guide-vpcなど) を選択します。
  • DB サブネットグループ: Auroraクラスターを配置するサブネットのグループです。
    • 通常は自動で作成されますが、手動で作成することも可能です。
    • 重要なのは、複数のAZにまたがるプライベートサブネットを選択することです。これにより、AZ障害時にもデータベースの可用性を維持できます。
  • パブリックアクセス: なし を選択します。これを「あり」にすると、データベースにパブリックIPアドレスが割り当てられ、インターネットから直接アクセス可能になり、非常に危険です。
  • VPC セキュリティグループ: 既存のものを選択 を選び、準備編で作成したデータベース用セキュリティグループ (aurora-db-sg) を選択します。
  • データベースポート: PostgreSQLのデフォルトポートである 5432 のままにします。

8. データベース認証

  • データベース認証オプション: パスワード認証 を選択します。
    • パスワードとIAMデータベース認証: IAMユーザーやロールを使用してデータベースに接続できるようになります。アプリケーションがAWSサービス上で動作する場合などに便利です。
    • Kerberos 認証: Active Directoryなどと連携して認証を行う場合に選択します。

9. 追加設定

このセクションには、運用上重要な設定項目が多く含まれています。

  • データベースオプション:
    • 初期データベース名: クラスター作成時に同時に作成するデータベースの名前を指定します(例: myapp_db)。指定しない場合、手動で CREATE DATABASE を実行する必要があります。
    • DB クラスターのパラメータグループ: データベースエンジンの設定(メモリ割り当て、タイムゾーン、ログ設定など)を管理するコンテナです。デフォルトのパラメータグループは変更できないため、カスタム設定を行いたい場合は、事前に独自のパラメータグループを作成して適用します。
  • 暗号化:
    • 保管時の暗号化: 暗号化を有効にする がデフォルトで選択されており、無効にはできません。Auroraは保存されるすべてのデータ(データファイル、スナップショット、ログなど)を自動的に暗号化します。
    • マスターキー: AWSが管理するデフォルトのキー (aws/rds) を使用するか、KMSで作成した独自のカスタマーマスターキー (CMK) を使用するか選択できます。
  • バックアップ:
    • バックアップ保持期間: 1〜35日の間で設定します。Auroraは継続的にバックアップを取得しており、この期間内であれば任意の秒単位でのポイントインタイムリカバリ(PITR)が可能です。
  • ログのエクスポート:
    • Postgresql ログアップグレードログ などを Amazon CloudWatch Logs に転送する設定です。ログを一元管理し、監視やアラーム設定を行いたい場合に有効にします。運用上、Postgresqlログのエクスポートは強く推奨されます。
  • メンテナンス:
    • マイナーバージョン自動アップグレードの有効化: チェックを入れると、AWSが新しいマイナーバージョンをリリースした際に、メンテナンスウィンドウ中に自動で適用されます。
    • メンテナンスウィンドウ: パッチ適用などのメンテナンス作業が行われる時間帯を指定します。サービスの利用が最も少ない時間帯(例: 日曜の早朝)を選択するのが一般的です。
  • 削除保護:
    • 削除保護を有効にする に必ずチェックを入れます。これにより、コンソールやAPIからの誤ったデータベース削除操作を防ぐことができます。データベースを削除するには、この保護設定を明示的に無効にする必要があります。本番環境では必須の機能です。

作成の実行と完了確認

すべての設定を確認したら、「データベースの作成」ボタンをクリックします。
作成には10〜15分程度の時間がかかります。データベースの一覧画面で、新しく作成したクラスターのステータスが「作成中」から「利用可能」に変わるのを待ちます。

作成が完了すると、クラスター(aurora-pg-cluster-demo)と、その配下にライターインスタンスが1つ作成されていることが確認できます。クラスター名をクリックして詳細画面を開き、「エンドポイントとポート」セクションを確認してください。ここに、後ほど接続で使用する重要な情報(クラスターエンドポイント)が表示されています。

接続編:作成したAurora PostgreSQLに接続する

クラスターが正常に作成されたら、実際に接続して動作を確認してみましょう。
データベースはプライベートサブネットに配置されているため、直接ローカルPCから接続することはできません。ここでは、2つの代表的な接続方法を紹介します。

エンドポイントの理解

接続する前に、Auroraの3種類のエンドポイントについて理解しておくことが重要です。

  • クラスターエンドポイント (ライターエンドポイント):
    • 常に現在のプライター(書き込み可能)インスタンスを指し示すエンドポイントです。
    • 書き込み処理(INSERT, UPDATE, DELETE)や、DDL(CREATE TABLEなど)は、必ずこのエンドポイントに対して行います。
    • フェイルオーバーが発生すると、このエンドポイントが指すインスタンスが自動的に新しいプライターに切り替わるため、アプリケーション側で接続先を変更する必要がありません。
  • リーダーエンドポイント:
    • クラスター内に存在するすべてのAuroraレプリカ(読み取り専用インスタンス)に対する単一のエンドポイントです。
    • 接続すると、複数のレプリカ間でコネクションが負荷分散(ラウンドロビン)されます。
    • 読み取り処理(SELECT)の負荷を分散させたい場合に使用します。
  • インスタンスエンドポイント:
    • クラスター内の各インスタンス(プライター、レプリカ)に固有のエンドポイントです。
    • 特定のインスタンスに接続してパフォーマンス分析やデバッグを行いたい場合など、特殊なケースで使用します。

通常、アプリケーションは書き込み用にクラスターエンドポイント読み取り用にリーダーエンドポイントを使い分けます。

接続方法1:EC2インスタンス(踏み台サーバー)経由での接続

最も一般的でセキュアな方法が、パブリックサブネットに配置したEC2インスタンスを踏み台(Bastion Host / Jump Host)として経由し、そこからデータベースに接続する方法です。

1. 踏み台用EC2インスタンスの作成

  1. AWSマネジメントコンソールで「EC2」サービスに移動し、「インスタンスを起動」をクリックします。
  2. AMI: Amazon Linux 2(またはAmazon Linux 2023)を選択します。
  3. インスタンスタイプ: t2.micro など、無料利用枠の対象インスタンスを選択します。
  4. キーペア: 新しいキーペアを作成し、pem ファイルをダウンロードして安全な場所に保管します。このファイルはSSH接続に必須です。
  5. ネットワーク設定:
    • VPC: Auroraクラスターと同じVPCを選択します。
    • サブネット: パブリックサブネットを選択します。
    • パブリック IP の自動割り当て: 有効化 にします。
    • ファイアウォール (セキュリティグループ): 既存のセキュリティグループを選択 を選び、準備編で作成した踏み台サーバー用セキュリティグループ (aurora-bastion-sg) を選択します。
  6. 設定を確認し、「インスタンスを起動」をクリックします。

2. PostgreSQLクライアントのインストール

  1. インスタンスの起動が完了したら、ターミナル(Windowsの場合はPowerShellやWSL)を開き、先ほどダウンロードしたキーペアを使ってEC2インスタンスにSSHで接続します。

    “`bash

    pemファイルの権限を変更

    chmod 400 /path/to/your-key.pem

    SSH接続 (パブリックIPアドレスはEC2コンソールで確認)

    ssh -i /path/to/your-key.pem ec2-user@
    “`

  2. 接続後、PostgreSQLのクライアントツール (psql) をインストールします。

    “`bash

    Amazon Linux 2の場合

    sudo yum update -y
    sudo yum install -y postgresql
    “`

3. psqlコマンドでの接続

EC2インスタンスの中から、psql コマンドを使ってAurora PostgreSQLに接続します。

  1. RDSコンソールで、作成したAuroraクラスターのクラスターエンドポイントをコピーします。
  2. 以下のコマンドを実行します。

    “`bash
    psql -h <コピーしたクラスターエンドポイント> -U <設定したマスターユーザー名> -d <作成した初期データベース名>

    例:

    psql -h aurora-pg-cluster-demo.cluster-xxxxxxxxxxxx.ap-northeast-1.rds.amazonaws.com -U aurora_admin -d myapp_db

    “`

  3. Password for user ...: と表示されたら、クラスター作成時に設定したマスターパスワードを入力します。

  4. myapp_db=> のようなプロンプトが表示されれば、接続成功です。

簡単なSQLを実行して、動作を確認してみましょう。

“`sql
— PostgreSQLのバージョンを確認
SELECT version();

— データベースの一覧を表示
\l

— 接続しているユーザーを確認
SELECT current_user;

— テスト用のテーブルを作成
CREATE TABLE employees (
id SERIAL PRIMARY KEY,
name VARCHAR(100),
email VARCHAR(100)
);

— テーブル一覧を表示
\dt
“`

接続方法2:ローカルPCからGUIツール(DBeaverなど)で接続

開発作業では、psql よりもGUIツールを使いたい場面が多いでしょう。ローカルPCのGUIツールからプライベートサブネット内のデータベースに接続するには、SSHトンネリングという技術を使います。

SSHトンネリングは、踏み台サーバーへのSSH接続をトンネル(通り道)として利用し、そのトンネルを通じてローカルPCとプライベートなリソース(今回はAurora)間の通信を安全に行う仕組みです。

ここでは、人気の無料GUIツール「DBeaver」を例に手順を解説します。

DBeaverでのSSHトンネリング設定手順

  1. DBeaverを起動し、左上の「新しい接続」アイコンをクリックします。
  2. 接続タイプとして「PostgreSQL」を選択し、「次へ」をクリックします。
  3. 「メイン」タブの設定:
    • ホスト: localhost と入力します。SSHトンネルを通じて、ローカルPC上のポートがデータベースに転送されるためです。
    • ポート: 5432 (またはローカルで未使用の他のポート番号)
    • データベース: 初期データベース名(例: myapp_db
    • ユーザー名/パスワード: Auroraのマスターユーザー名とパスワード
  4. 次に、「SSH」タブに切り替えます。これがSSHトンネリング設定の核心部分です。
    • SSHトンネルを使用する にチェックを入れます。
    • ホスト/IP: 踏み台EC2インスタンスのパブリックIPアドレスを入力します。
    • ポート: 22
    • ユーザー名: ec2-user
    • 認証方法: 公開鍵 を選択します。
    • 秘密鍵: EC2作成時にダウンロードした .pem ファイルへのパスを指定します。
  5. すべての設定が完了したら、左下の「接続テスト」ボタンをクリックします。
    • 「接続済み」というダイアログが表示されれば成功です。
  6. 「完了」ボタンを押して接続設定を保存します。

これで、DBeaverのデータベースナビゲーターにAurora PostgreSQLが表示され、ローカルのデータベースを操作するのと同じ感覚で、テーブルの表示、SQLの実行、データの編集などが行えるようになります。

運用・発展編:知っておきたいAurora PostgreSQLの機能

クラスターを作成し接続できたところで、最後に、実際の運用で役立つAuroraの主要な機能について簡単に触れておきます。

モニタリング

データベースの健全性を保つためには、継続的なモニタリングが不可欠です。

  • Amazon CloudWatch Metrics: RDSコンソールの「モニタリング」タブで、CPU使用率、DB接続数、読み書きのIOPS、レイテンシーといった重要なメトリクスをグラフで確認できます。特定の閾値を超えた場合にアラームを通知する設定も可能です。
  • Performance Insights: データベースの負荷をリアルタイムで可視化し、パフォーマンスのボトルネックとなっているSQLクエリや待機イベントを特定できる強力なツールです。無料で利用できる範囲もあるため、ぜひ有効にしておくことをお勧めします。
  • 拡張モニタリング: CPU使用率の内訳(ユーザー、システム、アイドルなど)やメモリ使用状況といった、より詳細なOSレベルのメトリクスを収集できます。

スケーリング

ワークロードの増減に応じて、データベースの性能を柔軟に調整できます。

  • 垂直スケーリング(スケールアップ/ダウン): DBインスタンスを選択し、「変更」からインスタンスクラスをより大きい(または小さい)ものに変更します。変更中は数分程度の短いダウンタイムが発生する場合があります。
  • 水平スケーリング(スケールアウト): クラスターにAuroraレプリカを追加することで、読み取り処理の性能を向上させます。レプリカの追加はダウンタイムなしで行えます。
  • Aurora Serverless v2: ワークロードに応じてコンピューティングとメモリのキャパシティを自動的かつ瞬時にスケーリングするオプションです。アクセスが断続的・不規則なアプリケーションや、開発・テスト環境に最適で、コスト効率に優れています。

高可用性とディザスタリカバリ

  • 自動フェイルオーバー: プライマリインスタンスに障害が発生した場合、Auroraは自動的に障害を検知し、Auroraレプリカをプライマリに昇格させます。このプロセスは通常30秒以内に完了します。
  • 高速データベースクローニング: 既存のクラスターのデータをコピーすることなく、数分で新しいクラスター(クローン)を作成できます。本番データを元にした開発・テスト環境の準備や、分析クエリの実行に非常に便利です。
  • バックトラック: データベースを過去の特定の時点に「巻き戻す」機能です。例えば、誤ってテーブルをDROPしてしまった場合に、スナップショットからリストアするよりもはるかに高速に復旧できます。

まとめ

本記事では、Amazon Aurora PostgreSQLの構築手順について、準備段階のネットワーク設定から、詳細なクラスター作成オプションの解説、そして実際にデータベースへ接続する方法までを網羅的に解説しました。

この記事で学んだキーポイント:

  1. 準備の重要性: 安全なデータベース環境のためには、IAMユーザーによる権限管理と、VPCおよびセキュリティグループによる厳密なネットワーク制御が不可欠です。
  2. 詳細な作成オプション: クラスター作成時には、用途(本番/開発)、パフォーマンス、可用性、セキュリティ、運用方法などを考慮し、各設定項目を適切に選択する必要があります。特に「パブリックアクセスなし」と「削除保護有効化」はセキュリティと安全性の観点から非常に重要です。
  3. セキュアな接続: プライベートサブネットに配置したデータベースへは、踏み台サーバーを経由するか、SSHトンネリングを利用して安全に接続します。
  4. Auroraの豊富な機能: Auroraは単なるデータベースではなく、モニタリング、スケーリング、高可用性といった運用を支える機能が統合された強力なプラットフォームです。

Amazon Aurora PostgreSQLは、クラウドのメリットを最大限に活かした高性能かつ高可用なデータベースサービスです。運用管理の多くをAWSに任せることができるため、開発者はアプリケーションの価値向上に、より多くの時間を費やすことができます。

今回作成した環境はあくまで第一歩です。今後は、コスト最適化のためのインスタンス選定、より高度なセキュリティ設定(IAMデータベース認証など)、CloudWatchを利用した本格的な監視体制の構築など、さらなるステップに進んでいくことができます。

このガイドが、あなたのAurora PostgreSQL習得の一助となれば幸いです。ぜひ、実際に手を動かして、そのパワフルな機能を体験してみてください。

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