はい、承知いたしました。【初心者向け】Vue.jsにおける@vuepic/vue-datepickerの詳細な導入ガイドを、約5000語を目標に記述します。記事の内容をそのまま出力します。
【初心者向け】Vue.jsで始める日付選択!@vuepic/vue-datepicker 徹底導入ガイド
ウェブアプリケーションにおいて、ユーザーに特定の日付を入力してもらう場面は数多く存在します。イベントの予約、旅行の計画、誕生日入力、レポート期間の指定など、挙げればきりがありません。
しかし、テキストフィールドに手動で「YYYY-MM-DD」のような形式で日付を入力してもらうのは、ユーザーにとって非常に面倒であり、入力ミス(例: 存在しない日付「2月30日」、形式間違い、うるう年の間違いなど)の原因にもなります。
ここで活躍するのが「Datepicker(日付選択コンポーネント)」です。カレンダー形式で直感的に日付を選択できるため、入力の手間を省き、ミスの発生を防ぎ、ユーザーエクスペリエンス(UX)を大幅に向上させることができます。
Vue.jsを使ってモダンなWebアプリケーションを開発している皆さんにとって、高品質なDatepickerコンポーネントの導入は避けて通れない道のりでしょう。市場には様々なVue Datepickerライブラリが存在しますが、この記事では、機能が豊富でカスタマイズ性が高く、Vue 3にも対応している人気ライブラリの一つである @vuepic/vue-datepicker
に焦点を当て、その導入から基本的な使い方、応用的な設定までを徹底的に解説します。
この記事は、Vue.jsの基本的な使い方(コンポーネントの作成、データのバインディングなど)を理解している方を対象としていますが、Datepickerコンポーネントの導入が初めての方でも安心して読み進められるよう、詳細かつ丁寧に解説を行います。
さあ、Vue.jsアプリケーションに洗練された日付選択機能を追加し、ユーザーにとってより使いやすいインターフェースを構築しましょう!
このガイドで学ぶこと
- Datepickerの必要性とメリット
@vuepic/vue-datepicker
ライブラリの紹介と選定理由- プロジェクトへのライブラリのインストール方法
- 最も基本的なDatepickerの表示とデータバインディング (
v-model
) - 日付データの形式と取り扱い
- 表示フォーマットや言語(ロケール)のカスタマイズ
- 選択可能な日付の制限方法 (最小/最大日付、無効化)
- 日付範囲選択、時間選択などの応用機能
- イベントハンドリングによる操作の検知
- フォーム連携と基本的なバリデーション
- 国際化(i18n)への対応
- パフォーマンスに関する考慮事項
- よくある質問とトラブルシューティング
- その他のVue Datepickerライブラリ紹介
前提条件
- Vue.jsプロジェクトがセットアップ済みであること (Vue CLI, Vite, Nuxtなど)
- Node.jsとnpmまたはyarnがインストール済みであること
- Vue.jsの基本的な構文(コンポーネント、テンプレート、スクリプト、スタイル、props, events, v-modelなど)を理解していること
それでは、早速始めていきましょう!
第1章: Datepickerの基本と導入準備
この章では、Datepickerがなぜ必要とされるのか、そして今回使用する @vuepic/vue-datepicker
ライブラリの概要、そしてプロジェクトへの導入方法について解説します。
1.1 Datepickerとは?なぜ必要?
Datepickerは、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)上でカレンダーを表示し、ユーザーがマウスやタップ操作で直感的に日付を選択できるようにするUIコンポーネントです。テキストフィールドに日付を手入力する代わりにDatepickerを使用することで、以下のような多くのメリットが得られます。
- 入力ミスの削減: ユーザーは有効な日付の中から選択するだけなので、「2月30日」のような存在しない日付や、形式間違い(例:
2023/12/1
vs2023-12-01
)といったミスを防ぐことができます。 - 入力負荷の軽減: キーボードで日付を正確に入力するよりも、カレンダーからクリックする方が多くのユーザーにとって簡単で迅速です。
- 視覚的な確認: カレンダーを見ることで、日付と曜日の関係などを一目で確認できます。
- ユーザーエクスペリエンスの向上: 直感的で使いやすいインターフェースは、アプリケーション全体の満足度を高めます。
- 選択可能な範囲の制限: 予約システムなどで「今日以降の日付のみ選択可能」といった制約を簡単に実装できます。
これらの理由から、日付入力を伴う機能にはDatepickerの導入が強く推奨されます。
1.2 @vuepic/vue-datepicker
の紹介
Vue.js用のDatepickerライブラリはいくつか存在しますが、今回なぜ @vuepic/vue-datepicker
を選ぶのでしょうか?
@vuepic/vue-datepicker
は、比較的新しいライブラリでありながら、非常に多くの機能を持ち、活発にメンテナンスされています。主な特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 豊富な機能: 日付選択はもちろん、日付範囲選択、時間選択、月/年のみの選択、無効化設定、様々なカスタマイズオプション(フォーマット、ロケール、UIテーマなど)を提供します。
- Vue 3対応: Vue 3のComposition APIや
<script setup>
構文にも対応しており、モダンなVue開発に適しています。 - カスタマイズ性: CSS変数を使用したテーマ変更や、スロットを使ったUI要素の置き換えなど、柔軟なカスタマイズが可能です。
- 国際化(i18n)対応: 多言語環境での利用も容易です。
- レスポンシブデザイン: 様々なデバイスサイズに対応しています。
これらの特徴から、多くのプロジェクトで柔軟に対応できる強力な選択肢と言えます。
1.3 プロジェクトへのインストール方法
@vuepic/vue-datepicker
を使用するためには、まずプロジェクトにライブラリをインストールする必要があります。npmまたはyarnを使用してインストールできます。
ターミナルを開き、Vue.jsプロジェクトのルートディレクトリに移動して、以下のコマンドのいずれかを実行してください。
npmの場合:
bash
npm install @vuepic/vue-datepicker
yarnの場合:
bash
yarn add @vuepic/vue-datepicker
このコマンドにより、@vuepic/vue-datepicker
パッケージとその依存関係がプロジェクトの node_modules
ディレクトリにインストールされ、package.json
ファイルに記録されます。
インストールが完了したら、Datepickerコンポーネントを使用する準備は完了です。次の章では、実際にアプリケーションに組み込んでみましょう。
第2章: 基本的な使い方
この章では、インストールした @vuepic/vue-datepicker
をVueコンポーネント内で使用し、基本的な表示とデータバインディングを行う方法を学びます。
2.1 コンポーネントのインポートと登録
@vuepic/vue-datepicker
を使用したいVueコンポーネント内で、まずDatepickerコンポーネントと必須のCSSファイルをインポートします。
例えば、src/components/MyDatePickerForm.vue
のような単一ファイルコンポーネント(SFC)でDatepickerを使用する場合、<script setup>
構文を使用すると以下のようになります。
“`vue
日付選択
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
import Datepicker from '@vuepic/vue-datepicker';
:@vuepic/vue-datepicker
パッケージからDatepicker
コンポーネント自体をインポートします。import '@vuepic/vue-datepicker/dist/main.css';
: Datepickerの基本的なスタイルを提供するために、付属のCSSファイルをインポートします。このCSSがないと、カレンダーの表示などが崩れます。アプリケーションのエントリポイント(例:main.js
やApp.vue
)で一度だけインポートすることも可能ですが、そのコンポーネントだけで使用する場合は、そのコンポーネント内でインポートする方がモジュールバンドラーによって効率的に処理される場合があります。今回は練習として、使用するコンポーネント内でインポートする方法を採用します。
<script setup>
を使用しないOptions API形式の場合は、components
オプションに登録します。
“`vue
日付選択
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
どちらの構文を使用しても構いませんが、Vue 3では<script setup>
が推奨されています。この記事では<script setup>
を主に使って解説を進めます。
2.2 最もシンプルな表示方法
Datepickerコンポーネントをインポートし、CSSを読み込んだら、テンプレート内でコンポーネントタグを配置するだけで、最低限のDatepickerが表示されます。
先ほどのテンプレートのコメント部分を置き換えます。
“`vue
日付選択
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
これでブラウザでこのコンポーネントを表示すると、日付入力用のテキストフィールドが表示され、それをクリックするとカレンダーのポップアップが表示されるはずです。カレンダーから日付を選択すると、テキストフィールドに選択した日付が表示されます。
しかし、この時点では選択した日付がアプリケーションのデータ(上記の例では selectedDate
)に反映されていません。これを実現するのが次で解説する v-model
によるデータバインディングです。
2.3 v-model
によるデータバインディング (重要!)
Vue.jsにおける v-model
ディレクティブは、フォーム要素とアプリケーションの状態(データ)の間で双方向データバインディングを簡単に実現するための仕組みです。Datepickerのようなカスタムコンポーネントに対しても v-model
を使用できます。
コンポーネントが v-model
に対応するためには、主に以下の2つの規約に従う必要があります。
value
という名前のprop
で親からデータを受け取る。- データが変更されたときに
input
という名前のイベント(Vue 3.4以降はupdate:modelValue
イベント)を発行し、そのイベントのペイロードとして新しいデータを渡す。
@vuepic/vue-datepicker
はこの規約に従っており、デフォルトでは v-model
は modelValue
prop と update:modelValue
イベントに対応しています。
先ほどのシンプルな表示方法のコードでは、すでに v-model="selectedDate"
を使用しています。
“`vue
日付選択
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
この v-model="selectedDate"
は、以下の省略記法です。
“`vue
日付選択
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
つまり、v-model="selectedDate"
を使用することで、以下の処理が自動的に行われます。
- 親コンポーネントの
selectedDate
の値がmodelValue
という名前の prop として Datepicker コンポーネントに渡されます。これにより、Datepickerは初期値としてselectedDate
に格納されている日付(最初はnull
)を表示します。 - Datepicker内でユーザーが日付を選択するなどして内部データが変更されると、Datepickerは新しい日付データをペイロードとして
update:modelValue
イベントを発行します。 - 親コンポーネントはその
update:modelValue
イベントをリッスンしており、イベントから受け取った新しい日付データで自身のselectedDate
の値を更新します。
この双方向のデータの流れにより、Datepickerで選択された日付はリアルタイムに親コンポーネントの selectedDate
データに同期されます。テンプレート内の <p>選択された日付: {{ selectedDate }}</p>
の表示が、Datepickerで日付を選択するたびに更新されることを確認してみてください。
2.4 日付データの形式
@vuepic/vue-datepicker
が v-model
を通じて受け渡しする日付データの形式は、デフォルトでは JavaScriptの Date
オブジェクト です。
上記の例で selectedDate
が null
から日付を選択した後の値を見てみると、以下のような形式になっているはずです(日付は選択したものによります)。
Wed Dec 13 2023 00:00:00 GMT+0900 (日本標準時)
これはJavaScriptの Date
オブジェクトを文字列化したものです。実際の selectedDate
の型は Date
オブジェクトです。
アプリケーションによっては、Date
オブジェクトではなく、特定の文字列形式(例: "2023-12-13"
)や、UNIXタイムスタンプ(ミリ秒)で日付を扱いたい場合があります。
@vuepic/vue-datepicker
は、v-model
で扱うデータの形式を柔軟に設定できます。主に以下の形式に対応しています。
Date
オブジェクト (デフォルト): JavaScript標準のDateオブジェクトです。日付の計算や比較が容易ですが、タイムゾーンの問題に注意が必要です。- String: 特定のフォーマット(例: “YYYY-MM-DD”, “MM/DD/YYYY”)の文字列として扱います。バックエンドとの連携などでよく使われます。
- Timestamp (Number): UNIXタイムスタンプ(エポックからの経過ミリ秒)として扱います。データベースへの保存などで使われることがあります。
- Array of Dates/Strings/Timestamps: 日付範囲選択などの場合に使用します(後述)。
v-model
で受け渡しするデータの形式を変更したい場合は、value-format
という prop を使用します。例えば、”YYYY-MM-DD” 形式の文字列で扱いたい場合は、以下のように設定します。
“`vue
日付選択 (文字列形式)
>
選択された日付 (文字列): {{ selectedDateString }}
型: {{ typeof selectedDateString }}
“`
この場合、selectedDateString
には "2023-12-13"
のような文字列が格納されるようになります。
value-format
prop に指定できるフォーマット文字列は、基本的に date-fns ライブラリのフォーマット規則に従います。よく使うものをいくつか挙げます。
'yyyy/MM/dd'
->2023/12/13
'MM/dd/yyyy'
->12/13/2023
'yyyy-MM-dd'
->2023-12-13
'yyyy年MM月dd日'
->2023年12月13日
't'
-> UNIXタイムスタンプ (ミリ秒)'T'
-> UNIXタイムスタンプ (秒)
注意点:
value-format
はあくまで v-model
で受け渡しするデータの形式を指定するものです。Datepickerの入力ボックスに表示される日付のフォーマットは、別の format
という prop で指定します(次章で解説)。この2つは混同しやすいので注意しましょう。
また、value-format
に文字列形式を指定した場合、初期値を設定する際はその形式に合った文字列を ref
の初期値として指定する必要があります(例: ref('2023-12-13')
)。null
や空文字列も有効な初期値として扱われます。
これで、Datepickerの基本的な表示と、選択した日付をデータとして取得する方法が理解できたはずです。次の章では、Datepickerの見た目や表示形式をカスタマイズする方法を見ていきます。
第3章: 表示とフォーマットのカスタマイズ
@vuepic/vue-datepicker
は、多くのカスタマイズオプションを提供しています。この章では、入力ボックスの表示形式、カレンダーの言語、UIテーマなどを変更する方法を学びます。
3.1 入力ボックスの表示フォーマット (format
prop)
前述の通り、value-format
は v-model
のデータ形式を指定するものでした。一方、ユーザーが直接目にする入力ボックスや、カレンダー内で表示される日付の表示フォーマットを指定するのが format
prop です。
デフォルトでは、format
は value-format
の設定に依存して自動的に決定されますが、明示的に指定することで、v-model
で扱うデータ形式とは異なる表示形式にできます。
例えば、v-model
では “YYYY-MM-DD” 形式の文字列で扱いたいが、ユーザーには “YYYY年MM月DD日” の形式で見せたい場合、以下のように設定します。
“`vue
日付選択 (表示フォーマットカスタマイズ)
:format=”format”
>
選択された日付 (文字列): {{ selectedDateString }}
入力ボックスの表示: 関数で定義したフォーマット
日付選択 (表示フォーマット文字列)
>
選択された日付 (文字列): {{ selectedDateString }}
入力ボックスの表示: yyyy/MM/dd 形式
“`
format
propには、以下のいずれかを指定できます。
- フォーマット文字列:
'yyyy/MM/dd'
のような文字列。value-format
と同様に date-fns 形式の文字列が使えます。 - 関数:
(date) => { /* return formatted string */ }
のような関数。引数としてDate
オブジェクト(または日付範囲の場合はDate
オブジェクトの配列)を受け取り、表示したい文字列を返すように実装します。関数を使用すると、より複雑な表示要件にも対応できます。
重要: value-format
と format
は、指定方法と役割が異なります。
* value-format
: v-model
でやり取りする日付データの内部的な形式(Date
オブジェクト、文字列、タイムスタンプ)
* format
: UIに表示する日付の書式(文字列)
多くの場合、value-format
と format
は同じフォーマット文字列を指定することが多いですが、ユーザーに見せる形式とアプリケーション内部で扱う形式を分けたい場合に、format
prop を使用して表示形式をカスタマイズします。
3.2 カレンダーの表示言語 (locale
prop, i18n)
Datepickerのカレンダーの曜日名や月名を日本語で表示したい場合、locale
prop を使用します。
@vuepic/vue-datepicker
は多くの言語に対応しており、使用したいロケールファイルをインポートして設定します。日本語の場合は ja
ロケールを使用します。
“`vue
日付選択 (日本語ロケール)
format=”yyyy年MM月dd日”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
locale
prop には、date-fns/locale
からインポートしたロケールオブジェクトをバインドします (:
を付けてプロパティバインディングすることに注意)。
これにより、カレンダーの曜日(日, 月, 火…)や月名(1月, 2月…)が日本語で表示されるようになります。表示フォーマットも format="yyyy年MM月dd日"
のように日本語に合わせると、より自然な表示になります。
国際化 (i18n) ライブラリとの連携:
Vue I18nのような国際化ライブラリを使用している場合、現在のアクティブなロケールを動的に locale
prop にバインドすることで、アプリケーション全体の言語設定とDatepickerの表示言語を同期させることができます。
“`vue
日付選択 (動的ロケール)
format=”yyyy年MM月dd日”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
このように、アプリケーションのロケール管理に合わせてDatepickerの表示言語を切り替えることができます。
3.3 UIテーマの変更 (theme
prop, CSS variables)
@vuepic/vue-datepicker
は、デフォルトでシンプルなデザインを提供しますが、アプリケーションのブランドに合わせて見た目をカスタマイズできます。主な方法は以下の2つです。
theme
prop:'light'
または'dark'
のテーマを簡単に切り替えることができます。- CSS Variables: カスタムCSSを使用して、Datepickerの各要素の色やフォント、ボーダーなどを詳細に制御できます。
theme
prop の使用:
“`vue
日付選択 (ダークテーマ)
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
これにより、Datepickerの背景色や文字色がダークモードに適した配色に切り替わります。
CSS Variables によるカスタマイズ:
より詳細なカスタマイズは、CSS変数(Custom Properties)を使用して行います。Datepickerコンポーネントのスタイルを記述する <style>
ブロック内で、特定のCSS変数を上書きすることで見た目を変更できます。
例えば、プライマリカラーやテキストカラーを変更する場合:
“`vue
日付選択 (カスタムテーマ)
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
@vuepic/vue-datepicker
が提供するCSS変数の完全なリストは、公式ドキュメントを参照してください。多くの要素の色、フォントサイズ、パディング、ボーダーなどを細かく調整できます。
Scoped CSS (<style scoped>
) を使用している場合、CSS変数を上書きするには、Datepickerコンポーネントのルート要素にクラス(dp__theme_light
または dp__theme_dark
)を付与する必要があります。これはライブラリによって自動的に行われます。
3.4 ポップアップ表示位置の調整 (position
prop)
Datepickerの入力フィールドをクリックした際に表示されるカレンダーポップアップは、デフォルトで入力フィールドの下に表示されます。しかし、画面の端に近い位置にある場合や、特定のレイアウト要件がある場合、表示位置を調整したいことがあります。
position
prop を使用すると、ポップアップの表示位置を指定できます。指定できる値は以下の通りです。
'left'
'center'
(デフォルト)'right'
'top-left'
'top-center'
'top-right'
'bottom-left'
'bottom-center'
'bottom-right'
“`vue
日付選択 (ポップアップ位置調整)
左寄せ選択: {{ selectedDateLeft }}
右寄せ選択: {{ selectedDateRight }}
“`
position
prop を設定することで、ポップアップが入力フィールドのどの辺に揃えて表示されるかを制御できます。ただし、画面のスペースによっては自動的に位置が調整される場合があります。
3.5 アイコンのカスタマイズ
入力フィールドの右側に表示されるカレンダーアイコンや、クリアボタンのアイコンもカスタマイズ可能です。これは、スロット (slot
) を使用して実現します。
@vuepic/vue-datepicker
は、以下のスロットを提供しています。
dp-input-icon
: 入力フィールドの左側(または右側、CSSによる)に表示されるアイコンdp-calendar-icon
: 入力フィールドの右側に表示されるカレンダーアイコン(デフォルト)dp-clear-icon
: クリアボタンのアイコン
これらのスロットの中に独自のアイコン要素(例: SVGアイコン、<i>
タグとフォントアイコン)を配置することで、デフォルトのアイコンを置き換えることができます。
“`vue
日付選択 (アイコンカスタマイズ)
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
この例では、Font Awesome
というアイコンフォントを使用していますが、お好みのアイコンライブラリやSVGアイコンを使用できます。スロットの中に配置した要素が、対応する場所で描画されます。
これで、Datepickerの見た目や表示形式を様々にカスタマイズする方法を学びました。次は、ユーザーが選択できる日付を制限する方法を見ていきましょう。
第4章: 選択可能な日付の制御
アプリケーションによっては、ユーザーが選択できる日付に制限を設けたい場合があります。例えば、「予約は今日以降しか受け付けない」「過去の日付は選択できない」「週末は選択できない」「特定の祝日は選択できない」などです。@vuepic/vue-datepicker
は、これらの要件に対応するための様々な prop を提供しています。
4.1 最小/最大日付の設定 (min-date
, max-date
)
選択できる日付の範囲を制限するには、min-date
prop と max-date
prop を使用します。これらの prop には、有効な開始日と終了日を Date
オブジェクトまたはフォーマットされた文字列で指定します。
例: 今日から30日後までの範囲で選択可能にする
“`vue
日付選択 (範囲制限: 今日から30日後まで)
:max-date=”thirtyDaysLater”
format=”yyyy/MM/dd”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
min-date
と max-date
は単独でも使用できます。例えば、min-date
だけを指定すれば、それ以降の全ての日付が選択可能になります(未来の日付も含む)。max-date
だけを指定すれば、それ以前の全ての日付が選択可能になります(過去の日付も含む)。
日付を文字列で指定する場合、value-format
で指定した形式ではなく、デフォルトの 'yyyy-MM-dd'
形式で指定する必要があります。または、enable-time-picker
を有効にしている場合は 'yyyy-MM-dd HH:mm'
形式になります。明確にするため、Date
オブジェクトを使用するのが推奨されます。
4.2 特定の日付を無効化 (disabled-dates
)
特定の日付(例: 祝日、既に予約済の日付など)を選択不可にするには、disabled-dates
prop を使用します。
disabled-dates
には、無効にしたい日付の配列を指定します。配列の要素は Date
オブジェクト、フォーマットされた文字列、またはタイムスタンプのいずれでも構いません。ただし、value-format
の設定に関わらず、文字列の場合は 'yyyy-MM-dd'
形式がデフォルトです。
例: 特定の休日を選択不可にする
“`vue
日付選択 (特定日無効化)
format=”yyyy/MM/dd”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
カレンダー上で disabled-dates
に含まれる日付は薄く表示され、選択できなくなります。
また、disabled-dates
には関数を指定することも可能です。この関数は、カレンダーに表示される各日付について呼び出され、その日付が選択可能かどうかを true
(無効) または false
(有効) で返します。引数として検査対象の Date
オブジェクトが渡されます。
例: 未来の土曜日を選択不可にする
“`vue
日付選択 (特定ルールに基づく無効化)
format=”yyyy/MM/dd”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
関数を使うことで、日付の範囲や曜日、その他のカスタムロジックに基づいて動的に無効化する日付を決定できます。これは非常に強力な機能です。
4.3 特定の曜日を無効化 (disabled-week-days
)
特定の曜日全体を選択不可にする場合は、disabled-week-days
prop を使用します。この prop には、無効にしたい曜日の番号(日曜日=0, 月曜日=1, …, 土曜日=6)を配列で指定します。
例: 週末(土曜日と日曜日)を選択不可にする
“`vue
日付選択 (曜日無効化)
format=”yyyy/MM/dd”
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
カレンダー上で、指定した曜日の日付は全て選択できなくなります。
4.4 その他の無効化設定
@vuepic/vue-datepicker
は、他にも以下のような無効化に関する prop を提供しています。
disable-month-year-select
: 月や年のドロップダウン選択を無効化します。disable-year-select
: 年のドロップダウン選択のみ無効化します。disabled
: Datepicker全体を無効化し、入力や操作を受け付けなくします(通常のHTMLフォーム要素のdisabled属性と同様)。
これらの prop を適切に組み合わせることで、アプリケーションの要件に合わせて細かく選択可能な日付を制御できます。
第5章: 高度な機能
@vuepic/vue-datepicker
は、単一の日付選択だけでなく、様々な高度な選択モードや追加機能を提供しています。この章では、それらの使い方を見ていきます。
5.1 日付範囲選択 (range
prop)
旅行期間の予約やレポート対象期間の指定など、開始日と終了日の両方を選択する必要がある場面はよくあります。@vuepic/vue-datepicker
は、range
prop を true
に設定するだけで、日付範囲選択モードに切り替えることができます。
範囲選択モードでは、v-model
でバインドするデータは、開始日と終了日の2つの日付を含む配列になります。配列の要素は、指定された value-format
に従います。
“`vue
日付範囲選択
format=”yyyy/MM/dd”
value-format=”yyyy-MM-dd”
>
選択された日付範囲: {{ selectedDateRange }}
開始日: {{ selectedDateRange[0] }}
終了日: {{ selectedDateRange[1] }}
“`
range
prop を追加すると、Datepickerの入力フィールドが2つの日付を表示できるようになり、カレンダー上で最初にクリックした日付が開始日、次にクリックした日付が終了日として選択されます。v-model
にバインドされた selectedDateRange
は、['YYYY-MM-DD', 'YYYY-MM-DD']
のような形式の配列になります(value-format
が 'yyyy-MM-dd'
の場合)。
配列の要素は、選択が完了すると2つになります。選択途中の場合(開始日のみ選択済みなど)は、[Date, null]
や [String, null]
のようになる場合があります。選択をクリアした場合は null
または [null, null]
になります。
範囲選択モードでも、min-date
, max-date
, disabled-dates
, disabled-week-days
などの無効化設定は有効です。例えば、max-date
を設定すると、選択範囲の終了日もその日付を超えることはできません。
5.2 時間選択 (time-picker
prop)
日付だけでなく、時刻(時、分、秒)も選択したい場合は、enable-time-picker
prop を使用します。
“`vue
日付と時間選択
format=”yyyy/MM/dd HH:mm”
value-format=”yyyy-MM-dd HH:mm:ss”
>
選択された日時: {{ selectedDateTime }}
“`
enable-time-picker
を true
にすると、カレンダーの下に時刻を選択するためのUI(時、分、秒、AM/PMなどのセレクター)が表示されます。format
や value-format
も、時刻部分(HH
, mm
, ss
, a
など)を含むように指定する必要があります。
enable-time-picker
と range
は組み合わせて使用することも可能です。その場合、開始日時と終了日時をそれぞれ選択できるようになります。
5.3 月/年のみ選択 (month-picker
, year-picker
props)
日付ではなく、特定の月や年のみを選択させたい場合があります。
month-picker
: 月と年を選択します。v-model
の値は、Date
オブジェクトまたは{ month: number, year: number }
のようなオブジェクトになります。year-picker
: 年のみを選択します。v-model
の値は、Date
オブジェクトまたは年を表すnumber
になります。
例: 月のみ選択
“`vue
月選択
format=”yyyy年MM月”
value-format=”{ ‘month’: ‘M’, ‘year’: ‘yyyy’ }”
>
選択された月と年: {{ selectedMonthYear }}
年: {{ selectedMonthYear.year }}, 月: {{ selectedMonthYear.month }}
“`
month-picker
や year-picker
を使用する場合、value-format
も適切に設定することが重要です。オブジェクト形式で受け取りたい場合は、上記のように { 'month': 'M', 'year': 'yyyy' }
のような構造で指定します。
5.4 インライン表示 (inline
prop)
Datepickerをポップアップではなく、最初からページ内に固定表示させたい場合は、inline
prop を true
に設定します。
“`vue
日付選択 (インライン表示)
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
inline
モードでは入力フィールドは表示されず、カレンダー部分が直接ページに埋め込まれます。これは、特定のコンポーネント内で常にカレンダーを表示しておきたい場合などに便利です。
5.5 その他の便利な機能
clearable
prop: 入力フィールドに選択された日付をクリアするためのボタンを表示します。デフォルトはtrue
です。auto-apply
prop: 日付を選択した直後にカレンダーポップアップを自動的に閉じます。デフォルトはfalse
です。close-on-auto-apply
prop:auto-apply
がtrue
の場合に、日付を選択した直後にカレンダーを閉じるかどうかを制御します。デフォルトはtrue
です。text-input
prop: テキスト入力フィールドを有効/無効にします。デフォルトはtrue
です。無効にすると、カレンダーからのみ選択できるようになります。readonly
prop: 入力フィールドを読み取り専用にします。クリックするとカレンダーは開きますが、直接入力はできません。disabled
prop: Datepicker全体を無効化します。クリックしてもカレンダーは開きません。
これらのプロパティを組み合わせることで、ユーザーの操作性やアプリケーションの要件に合わせた柔軟なUIを実現できます。
第6章: イベントハンドリング
Datepickerコンポーネントで発生する様々なイベントをリッスンすることで、ユーザーの操作に対応した処理を実行できます。最も重要なイベントは update:modelValue
ですが、他にもいくつかの有用なイベントがあります。
@update:modelValue
:v-model
でバインドされた値が変更されたときに発生します。新しい値がイベントペイロードとして渡されます。@open
: カレンダーポップアップが開いたときに発生します。@closed
: カレンダーポップアップが閉じたときに発生します。@cleared
: クリアボタンがクリックされ、値がクリアされたときに発生します。@text-input
: ユーザーが入力フィールドにテキストを入力したときに発生します (ただし、通常はv-model
で扱われるため直接このイベントをリッスンすることは少ないかもしれません)。@invalid
: ユーザーが無効な日付(例:disabled-dates
に含まれる日付)を選択しようとしたときに発生します。ただし、このイベントは選択自体を防ぐわけではなく、主に情報提供用です。無効な日付は通常UIで選択できないようになっています。
これらのイベントは、v-on:
ディレクティブ(または省略記法の @
)を使用してリッスンできます。
“`vue
イベントハンドリング
@open=”handleOpen”
@closed=”handleClosed”
@cleared=”handleCleared”
clearable
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
@update:modelValue
イベントハンドラは、v-model
を使用している場合でも、値が変更された際に特定の副作用処理を実行したい場合に役立ちます。例えば、日付が選択されたらすぐにフォームの他の部分を更新したり、特定のバリデーションチェックを実行したりするなどの処理に使えます。
@open
や @closed
イベントは、ポップアップの表示状態に応じてUIの他の要素を操作したい場合などに利用できます。
第7章: フォーム連携とバリデーション
Datepickerは通常、ユーザー入力フォームの一部として使用されます。フォームの送信時に選択された日付データを取得したり、入力値のバリデーション(検証)を行ったりする方法を見ていきます。
7.1 フォーム内での使用
HTMLの <form>
要素内に Datepicker を配置し、他の入力フィールドと同様に扱うことができます。
“`vue
イベント登録フォーム
“`
フォームの submit
イベントハンドラ (handleSubmit
) 内で、eventDate.value
としてDatepickerで選択された日付データを取得できます。v-model
を使用しているため、常に最新の値がリアクティブに同期されています。
7.2 シンプルな必須入力バリデーション
簡単なバリデーションであれば、Datepickerコンポーネント自体が提供する機能や、HTMLの属性を利用できます。
required
属性: HTMLの<input>
要素のように、Datepicker
コンポーネントにもrequired
属性を付与できます。これにより、ブラウザ標準のフォームバリデーション機能が利用され、値が空の状態でフォームを送信しようとすると警告が表示されます。
“`vue
フォーム (必須入力バリデーション)
``
required` 属性はブラウザの標準機能に依存するため、デザインのカスタマイズが難しかったり、複雑なバリデーションには対応できなかったりします。
- 手動でのバリデーション: より柔軟なバリデーションを行うには、フォームの送信前にJavaScriptで手動でチェックするのが一般的です。
“`vue
フォーム (手動バリデーション)
```
この方法では、エラーメッセージの表示や入力フィールドのスタイリングを完全に制御できます。
7.3 バリデーションライブラリとの連携
VuelidateやVeeValidateのようなVue向けのバリデーションライブラリを使用している場合でも、Datepickerは他のフォーム要素と同様に簡単に連携できます。これらのライブラリは、v-model
でバインドされたデータを検証するため、Datepickerの値(Date
オブジェクト、文字列、配列など)も問題なく検証できます。
バリデーションライブラリとの連携の詳細は、各ライブラリのドキュメントを参照する必要がありますが、基本的な流れは以下のようになります。
- バリデーションライブラリをインストールし、設定を行います。
- Datepickerでバインドするデータプロパティに対して、検証ルール(例:
required
,minValue
,maxValue
など)を定義します。 - テンプレート内で、定義したバリデーションの状態(例:
vuelidate$.eventDate.$error
)に基づいてエラーメッセージを表示したり、スタイルを適用したりします。
```vue
フォーム (Vuelidate連携例)
```
このように、DatepickerはVueの標準的なフォーム要素と同様に、様々なバリデーション手法と連携して使用できます。
第8章: 国際化 (Internationalization)
第3章でカレンダーの表示言語を locale
prop で設定する方法を学びました。ここでは、国際化(i18n)についてもう少し詳しく見ていきましょう。
アプリケーションを多言語対応させる場合、Datepickerも選択されている言語に合わせて表示を切り替える必要があります。@vuepic/vue-datepicker
は date-fns
ライブラリを使用してロケールを管理しており、date-fns
がサポートする言語であれば、簡単にDatepickerを多言語化できます。
8.1 ロケールファイル (locale
) の設定の再確認
繰り返しになりますが、ロケールを設定するには date-fns/locale
から該当するロケールオブジェクトをインポートし、:locale
prop にバインドします。
```vue
日付選択 (多言語対応)
:format="dateFnsLocale === ja ? 'yyyy年MM月dd日' : 'MM/dd/yyyy'"
value-format="yyyy-MM-dd"
>
選択された日付: {{ selectedDate }}
```
この例のように、アプリケーションの言語設定を示すデータ(currentLanguage
)に応じて、バインドする dateFnsLocale
を切り替えることで、Datepickerの表示言語も連動して切り替わります。
また、日付の表示フォーマット (format
prop) も、言語によって適切なものに切り替える必要があります。日本の場合は「YYYY年MM月DD日」が自然ですが、英語圏では「MM/DD/YYYY」や「DD/MM/YYYY」が一般的です。上記の例では三項演算子を使って簡単に切り替えていますが、より多くの言語に対応する場合は、ロケールに対応したフォーマット文字列を管理する仕組み(Vue I18nなど)と連携するのが効率的です。
8.2 カスタムロケール
date-fns
に含まれていない言語や、既存のロケールをカスタマイズしたい場合は、独自のロケールオブジェクトを作成して :locale
prop にバインドできます。date-fns
のロケールオブジェクトの構造に従って、月名や曜日名などを定義します。
javascript
// カスタムロケールオブジェクトの例 (簡略化)
const myCustomLocale = {
localize: {
month: (n) => ['Jan', 'Feb', 'Mar', 'Apr', 'May', 'Jun', 'Jul', 'Aug', 'Sep', 'Oct', 'Nov', 'Dec'][n],
// ... 他のlocalizeプロパティ (day, weekdayなど)
},
formatLong: {
// ... 日付フォーマットの定義
},
match: {
// ... 日付文字列のパース定義
},
options: {
// ... その他のオプション
}
};
このように定義したカスタムロケールオブジェクトを :locale="myCustomLocale"
のようにバインドすることで、Datepickerに適用できます。カスタムロケールの作成方法は date-fns
のドキュメントを参照してください。
8.3 日付フォーマットのロケール対応の重要性
前述の通り、日付の表示フォーマットは言語によって大きく異なります。ユーザーにとって自然な形式で日付が表示されることは、使いやすさに直結します。format
prop を適切に設定するか、ロケールに応じて動的に切り替えることで、真に国際化されたDatepickerを提供できます。
@vuepic/vue-datepicker
の format
prop は、文字列だけでなく関数も受け付けます。関数形式を使用すると、より複雑なロケール固有のフォーマット要件にも対応しやすくなります。
第9章: パフォーマンスと注意点
@vuepic/vue-datepicker
は高機能ですが、場合によってはパフォーマンスに影響を与えたり、特定の環境で問題が発生したりすることがあります。ここでは、いくつかの注意点と対策について解説します。
9.1 大量のDatepickerを使用する場合
一つのページ上に Datepicker コンポーネントを大量に(例えば、数十個以上)配置すると、初期表示のパフォーマンスが低下したり、メモリー使用量が増加したりする可能性があります。これは、Datepickerコンポーネントがそれぞれ独自の内部状態やDOM要素を持つためです。
このようなケースでは、以下の対策を検討してください。
- 遅延ロード (Lazy Loading): ユーザーが実際にDatepickerを操作する(クリックしてカレンダーを開く)まで、コンポーネントの描画や初期化を遅延させます。例えば、入力フィールドだけを表示しておき、フォーカスされたりクリックされたりしたタイミングで、Datepickerコンポーネント自体を動的に読み込んで表示する、といった手法が考えられます。
- 単一インスタンスの再利用: リスト状のアイテムそれぞれにDatepickerが必要な場合、各アイテムにDatepickerコンポーネントを配置するのではなく、ページ全体で単一のDatepickerコンポーネントを用意し、ユーザーがリストアイテムの入力フィールドをクリックした際に、その単一のDatepickerを適切な位置に表示し、対象アイテムのデータとバインドするという手法が考えられます。これは実装がやや複雑になりますが、コンポーネントインスタンスの数を大幅に削減できます。
- 仮想リスト (Virtual Scrolling): 大量のデータリスト(テーブルなど)でDatepickerが必要な場合、Vue Virtuaal Scroller や vue-virtual-scroll-list などの仮想リストライブラリを使用して、画面に表示されているリストアイテムのみを描画するようにします。これにより、DOM要素の数を減らし、パフォーマンスを向上させることができます。
9.2 モーダルやタブ内での使用
モーダルウィンドウやタブコンポーネント内にDatepickerを配置した場合、ポップアップカレンダーの表示位置がずれるなどの問題が発生することがあります。これは、Datepickerのポップアップが、親要素のスクロールやオーバーフロー設定、position設定などの影響を受けることがあるためです。
多くの場合、これはCSSの問題です。以下の点を確認してください。
- コンテナ要素の
overflow
: Datepickerの親コンテナ要素にoverflow: hidden;
などが設定されていると、ポップアップがコンテナ内で切り取られてしまうことがあります。 - コンテナ要素の
position
: ポップアップは通常、position: absolute で表示されますが、親要素に position: relative や position: fixed が設定されていると、その親要素を基準に位置が計算されます。意図しない基準位置になっている可能性があります。 - モーダルコンポーネントの実装: 使用しているモーダルコンポーネントによっては、内部的にDOM構造を操作していたり、特定のCSSを適用していたりすることがあります。Datepickerのポップアップが
<body>
の直下など、DOMツリーの高い位置に追加されるように設定できるモーダルライブラリもあります。 teleport
プロパティ:@vuepic/vue-datepicker
は、ポップアップ要素を指定したセレクターの要素内にテレポート(移動)させるためのteleport
prop を提供しています。これを#app
やbody
のような全体をカバーする要素に設定することで、親コンポーネントのCSSやDOM構造の影響を受けにくくし、表示位置の問題を回避できる場合があります。
```vue
``
teleport` は強力な機能ですが、使用する際はアクセシビリティやフォーカス管理に注意が必要です。
9.3 CSSの競合
グローバルに定義されたCSSや、他のライブラリのCSSが、Datepickerのスタイルに影響を与え、表示が崩れることがあります。
- Reset CSS / Normalize CSS: これらはブラウザ間のデフォルトスタイルの差異を吸収するもので、通常問題ありません。
- UIフレームワークのCSS: Bootstrap, Tailwind CSS, VuetifyなどのUIフレームワークを使用している場合、それらのグローバルCSSがDatepickerの要素(input, button, tableなど)に予期しないスタイルを適用することがあります。
scoped
CSS: Datepickerコンポーネント自体や、その親コンポーネントのスタイルを記述する際は、<style scoped>
を使用してスタイルが他の要素に漏れ出さないようにすることが推奨されます。- CSS変数の上書き:
@vuepic/vue-datepicker
はCSS変数でスタイリングされているため、競合が発生した場合でも、公式ドキュメントを参考に必要なCSS変数を明示的に上書きすることで、見た目を修正できることが多いです。 - 詳細度の調整: 競合するスタイルがある場合、より詳細度の高いセレクターを使用してDatepickerの要素にスタイルを適用することで、意図したスタイルを優先させることができます。
9.4 モバイルでの挙動
モバイルデバイスでは、画面サイズが小さく、タッチ操作が中心となります。@vuepic/vue-datepicker
はレスポンシブに対応していますが、特定の挙動や表示について確認が必要です。
- ポップアップの表示: 画面下部に表示しようとすると画面外に出てしまう場合など、自動的に適切な位置に調整されるか確認しましょう。
- タッチ操作: 日付の選択、月の移動、年の選択などがタッチ操作でスムーズに行えるか確認しましょう。
- キーボード表示: テキスト入力が有効な場合、入力フィールドをタップした際に不要なソフトウェアキーボードが表示されないか確認しましょう(多くの場合、
readonly
と組み合わせてカレンダーからの選択のみを許可する方がモバイルでは使いやすいかもしれません)。 - フォーム内のスクロール: フォーム内でDatepickerを開いた際、ページのスクロールがカレンダーのスクロールと競合しないか確認しましょう。
これらの点に注意し、実際のデバイスでテストを行うことが重要です。
第10章: よくある質問 (FAQ) とトラブルシューティング
ここでは、@vuepic/vue-datepicker
を使用する際によく遭遇する問題と、その解決策についてまとめます。
Q1: Datepickerが表示されない、またはスタイルが崩れる
- A:
- 必須のCSSファイルをインポートしていますか?
javascript
import '@vuepic/vue-datepicker/dist/main.css';
これが読み込まれていないと、コンポーネントの構造はあってもスタイルが適用されません。 - コンポーネントを正しくインポートし、使用していますか? (Options APIの場合は
components
に登録していますか?) - ブラウザの開発者ツールを開き、コンソールにエラーが出ていないか確認してください。
- DatepickerのDOM要素が正しく生成されているか、Elementsタブで確認してください。
- 他のCSSとの競合がないか確認してください(第9.3章参照)。特に、グローバルなリセットCSSやフレームワークのCSSが影響している可能性があります。
- 必須のCSSファイルをインポートしていますか?
Q2: 日付を選択しても v-model
にバインドしたデータが更新されない
- A:
v-model
ディレクティブを正しく使用していますか?v-model="yourDataProperty"
と記述されているか確認してください。v-model
にバインドしているデータプロパティが、Vueのリアクティブなデータであること(例:ref()
やdata()
内で定義されていること)を確認してください。v-model
と同時に@update:modelValue
イベントをリッスンしている場合、イベントハンドラ内で手動でデータを更新するコード(例:selectedDate = newValue
)は不要です。v-model
が自動的に処理します。副作用として処理を加えたい場合のみイベントハンドラを使用してください。value-format
を使用している場合、初期値がそのフォーマットに合っているか確認してください。不適切な初期値は、v-model
の双方向バインディングの開始を妨げる可能性があります。
Q3: 日付フォーマットが期待通りにならない
- A:
- 入力ボックスなどの表示フォーマットは
format
prop で指定します。value-format
と混同していませんか? format
prop に指定した文字列や関数が、date-fns
のフォーマット規則に従っているか確認してください。大文字/小文字(例:MM
vsmm
)の違いは重要です。format
prop に文字列を指定する場合、日付、時間、日付と時間の両方で使える記号が異なります。例えば、時間を表示したい場合はHH:mm:ss
などを含める必要があります。locale
prop を設定している場合、それが正しく適用されているか確認してください。言語によってデフォルトのフォーマットが異なる場合があります。
- 入力ボックスなどの表示フォーマットは
Q4: 選択できないはずの日付が選択できてしまう、または選択できるはずの日付が選択できない
- A:
min-date
,max-date
,disabled-dates
,disabled-week-days
などの prop を正しく設定していますか?min-date
やmax-date
にDate
オブジェクトを渡す場合、時刻情報を含めずに「その日の始まり」を示すDate
オブジェクトを作成しているか確認してください(例:new Date(year, month, day)
やdate.setHours(0, 0, 0, 0)
を使用)。時刻情報が含まれていると、意図した境界からずれることがあります。disabled-dates
に文字列の配列を渡す場合、デフォルトの'yyyy-MM-dd'
形式に従っているか確認してください。disabled-dates
に関数を渡す場合、その関数が正しくtrue
/false
を返しているか、引数として渡されるdate
オブジェクトの時刻情報などを考慮して正確な判定を行っているかデバッグしてください。
Q5: モバイルでの挙動がおかしい(ポップアップ位置など)
- A:
- 第9.2章で解説したように、親要素のCSS (
overflow
,position
) や、モーダル/タブコンポーネントの実装が影響している可能性があります。 teleport
prop を使用して、ポップアップ要素をDOMツリーの最上位近くに移動させてみてください。position
prop を調整して、ポップアップの基準位置を変更してみてください。- 実機でテストを行い、具体的な挙動を確認することが重要です。
- 第9.2章で解説したように、親要素のCSS (
Q6: Timepickerがうまく表示されない、または時刻の選択ができない
- A:
enable-time-picker
prop をtrue
に設定していますか?format
prop に、時間を示す記号 (HH
,mm
,ss
など) が含まれていますか?value-format
prop にも、時間を示す記号を含めるか、Date
オブジェクト形式を使用していますか?文字列形式で時間を含まないフォーマットを指定すると、Timepickerで選択した時刻がv-model
に反映されません。
これらのFAQと解決策は一般的なものですが、個別の問題については、ブラウザの開発者ツールでのデバッグ、公式ドキュメントの参照、コミュニティフォーラムやGitHub Issuesでの検索や質問が有効です。
第11章: その他のVue Datepickerライブラリ
@vuepic/vue-datepicker
は非常に優れたライブラリですが、Vue.js向けのDatepickerライブラリは他にもいくつか存在します。プロジェクトの要件や好みに応じて、他のライブラリも検討してみる価値があります。代表的なものをいくつか紹介します。
11.1 vuejs-datepicker
- GitHub: https://github.com/charliekasin/vuejs-datepicker
- 特徴:
- 歴史があり、広く使われているライブラリの一つです。
- シンプルで軽量です。
- 基本的な日付選択機能を提供します。
- 注意点:
- 近年はメンテナンスがあまり活発ではないようです。
- Vue 3のComposition APIや
<script setup>
との連携においては、やや古い書き方になります。 - 日付範囲選択などの高度な機能は提供されていません。
- こんな場合におすすめ: シンプルな日付選択機能のみが必要で、ライブラリのサイズを最小限に抑えたい場合。
11.2 v-calendar
- GitHub: https://github.com/nathanreyes/v-calendar
- 特徴:
- 単なるDatepickerにとどまらず、高機能なカレンダーコンポーネントとしても使用できます。
- 日付のハイライト、イベントマーカー、属性(例: 特定の日付にラベルやドットを表示)などの機能が豊富です。
- 日付範囲選択にも対応しています。
- カスタマイズ性が高いです。
- 注意点:
- 高機能な分、ライブラリサイズは比較的大きめです。
- Datepickerとして使う場合は、カレンダー表示がメインとなり、入力フィールドは付随的なものとして提供されることが多いです。
- こんな場合におすすめ: 日付選択だけでなく、カレンダー上に特定の情報を表示したり、複雑な日付に関するUIを構築したりする必要がある場合。
11.3 その他の選択肢
他にも element-plus
(Element UI の Vue 3 版) や quasar
などの包括的なUIフレームワークにもDatepickerコンポーネントが含まれています。既にこれらのフレームワークをプロジェクトで使用している場合は、フレームワーク付属のDatepickerを利用するのが手軽で、アプリケーション全体でのデザインの一貫性も保ちやすくなります。
どのライブラリを選択するかは、必要な機能、ライブラリのサイズ、メンテナンス状況、APIの使いやすさ、デザイン要件などを総合的に判断して決定してください。@vuepic/vue-datepicker
は、多くのモダンなアプリケーションの要求に応えられるバランスの取れた選択肢と言えるでしょう。
まとめ
この記事では、Vue.jsアプリケーションに洗練された日付選択機能を追加するための @vuepic/vue-datepicker
ライブラリについて、インストールから基本的な使い方、様々なカスタマイズ、高度な機能、イベント処理、フォーム連携、国際化、注意点、トラブルシューティングまで、初心者の方にも分かりやすいように詳細に解説してきました。
Datepickerコンポーネントの導入は、ユーザーエクスペリエンスを向上させる上で非常に効果的です。手動入力によるミスをなくし、直感的で快適な操作を提供することで、アプリケーションの使いやすさは格段に向上します。
@vuepic/vue-datepicker
は、その豊富な機能と高いカスタマイズ性により、様々な要件に対応できます。この記事で学んだことを活かせば、あなたのアプリケーションにぴったりのDatepickerを実装できるはずです。
学んだことの振り返り:
- Datepickerは日付入力を容易にし、ミスを防ぎます。
@vuepic/vue-datepicker
は高機能でモダンなVue Datepickerライブラリです。npm install
またはyarn add
で簡単にインストールできます。v-model
を使用して、コンポーネントとデータの双方向バインディングを行います。value-format
で内部的なデータ形式、format
で表示形式を指定します。locale
prop やdate-fns
のロケールオブジェクトで表示言語を設定できます。- CSS変数や
theme
prop でUIの見た目をカスタマイズできます。 min-date
,max-date
,disabled-dates
,disabled-week-days
で選択可能な日付を制御できます。range
,enable-time-picker
,month-picker
,year-picker
で様々な選択モードを有効化できます。- イベントハンドリングでユーザーの操作を検知し、処理を実行できます。
- フォーム内で他の入力要素と同様に扱え、バリデーションも連携できます。
- 多言語対応には
locale
と表示フォーマットの調整が重要です。 - 大量使用時のパフォーマンスや、特定の環境での挙動には注意が必要です。
次のステップ:
この記事を参考に、実際にあなたのVue.jsプロジェクトで @vuepic/vue-datepicker
を使ってみてください。最初はシンプルな日付選択から始めて、徐々に必要なカスタマイズや機能を追加していくのがおすすめです。公式ドキュメントにはさらに多くのオプションやスロットに関する情報が掲載されていますので、必要に応じて参照してください。
日付選択機能の実装は、多くのWebアプリケーション開発で遭遇する一般的なタスクです。この記事が、あなたがVue.js開発のスキルをさらに高め、より良いアプリケーションを構築するための一助となれば幸いです。
Happy Coding!