EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM | ユーザーレビューと購入ガイド
はじめに:超望遠ズームの新基準、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMとは
キヤノンのEFレンズラインナップにおいて、「白レンズ」と呼ばれる高性能なLレンズは、多くの写真家にとって憧れの存在です。その中でも、超望遠域を手軽に、そして高いクオリティでカバーするズームレンズとして絶大な人気を誇るのが、EF100-400mmシリーズです。
2014年12月に発売されたEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM(以下、本レンズ、またはMark II)は、約16年ぶりにモデルチェンジを果たした二代目にあたります。先代のEF100-400mm F4.5-5.6L IS USM(Mark I)は、その利便性と描写性能からロングセラーとなりましたが、デジタルカメラの高画素化や技術の進歩に伴い、さらなる高性能化が求められていました。
本レンズは、光学設計を一新し、手ブレ補正機構も最新のIS IIへと進化。さらに、操作性や耐久性においても、Mark Iから大幅な改善が図られています。その結果、発売以来、野鳥、航空機、鉄道、モータースポーツといった動体撮影から、遠景風景、さらには圧縮効果を活かしたポートレートまで、幅広いジャンルで多くのプロ・アマチュア写真家から絶賛されています。
このレンズは、超望遠単焦点レンズのような圧倒的な明るさや描写には一歩譲るものの、100mmから400mmという非常に実用的なズーム範囲を持ちながら、Lレンズならではの妥協のない描写性能と、優れた機動性を両立しています。高価ではありますが、その価格に見合う、あるいはそれ以上の価値を提供するレンズと言えるでしょう。
この記事では、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMについて、その主な特徴から徹底的な描写・機能レビュー、実際のユーザーの声、競合レンズとの比較、そして購入を検討されている方への詳細なガイドまで、約5000語にわたり徹底的に解説します。この一本があなたの写真ライフにもたらす可能性を、ぜひこの記事を通じて感じ取ってください。
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの主な特徴とスペック
まずは、このレンズの基本となる特徴と仕様を見ていきましょう。その製品名には、キヤノンレンズの特性が凝縮されています。
- EF: キヤノンEFマウントレンズであることを示します。EOSデジタル一眼レフカメラ(フルサイズ、APS-H、APS-C)に対応します。EF-MマウントやRFマウントのカメラには、別途マウントアダプターが必要となる場合があります。
- 100-400mm: 焦点距離範囲を示します。広角端100mmから望遠端400mmまでをカバーするズームレンズです。フルサイズ機ではそのままの画角ですが、APS-C機(EOS KissシリーズやEOS 90Dなど)では、焦点距離が約1.6倍相当(キヤノン機の場合)となるため、160mmから640mm相当の超望遠レンズとして使用できます。
- F4.5-5.6: 開放F値(絞り値)を示します。これは可変F値であり、焦点距離によって最も明るい開放F値が変わります。100mm付近ではF4.5、焦点距離が長くなるにつれてF値は大きくなり、400mmではF5.6が開放絞りとなります。ズーム全域でF2.8などの固定F値を持つレンズに比べると明るさでは劣りますが、レンズを小型軽量化できるメリットがあります。
- L: Luxuryの頭文字で、キヤノンの高性能レンズシリーズであることを示します。優れた光学性能、堅牢な構造、防塵防滴構造などが特徴です。白レンズの外観が目印です。
- IS II: Image Stabilizer(手ブレ補正機構)の第二世代であることを示します。最新の高性能な手ブレ補正を内蔵しています。本レンズでは、シャッタースピード約4段分(400mm時)の効果を発揮します。
- USM: Ultrasonic Motor(超音波モーター)を搭載していることを示します。静かで高速かつ高精度なオートフォーカス駆動を実現します。
主要スペック表
項目 | 仕様 |
---|---|
レンズ構成 | 16群21枚 |
特殊レンズ | 蛍石レンズ1枚、UDレンズ1枚 |
絞り羽根枚数 | 9枚(円形絞り) |
最小絞り | F32-40 |
手ブレ補正効果 | 約4段分(400mm時、CIPA基準) |
最短撮影距離 | 0.98m |
最大撮影倍率 | 0.31倍(400mm時) |
フィルター径 | φ77mm |
最大径×長さ | φ94mm×193mm |
質量 | 約1,570g(三脚座を除く) |
防塵防滴 | 配慮された設計 |
コーティング | ASC、SWC、フッ素コーティング |
付属品 | レンズフード ET-83D、レンズキャップ E-77II、レンズダストキャップ E、レンズケース LZ1326、三脚座 Ring-PM |
対応エクステンダー | EXTENDER EF1.4x III, EXTENDER EF2x III |
Mark Iからの主な進化点
Mark Iと比較すると、本レンズは多くの点で改良されています。
- 光学性能の向上: レンズ構成が一新され、蛍石レンズとUDレンズの採用により、色収差が大幅に抑制され、ズーム全域で高解像・高コントラストな描写を実現しています。特に望遠端400mmでの性能向上は顕著です。
- 手ブレ補正の進化: IS効果が約2段分(Mark I)から約4段分(Mark II)へと向上しました。これにより、より遅いシャッタースピードでの手持ち撮影が可能になり、低照度下やフレーミングの自由度が向上しました。ISモード3も追加されています。
- AF性能の向上: より高速・高精度なAFを実現しています。最短撮影距離もMark Iの1.8mから0.98mへと大幅に短縮され、最大撮影倍率も向上しました。
- 操作性の改善: ズーム方式が直進式(Mark I)から回転式へと変更されました。ズームトルク調整リングも搭載されています。三脚座も改良され、操作性が向上しています。
- 耐久性と信頼性: 防塵防滴性能が向上し、過酷な環境下での撮影にも強くなりました。レンズ最前面と最後面にフッ素コーティングが施され、汚れが付きにくく、清掃が容易になっています。
- 特殊コーティングの採用: ASC(Air Sphere Coating)やSWC(Subwavelength Structure Coating)といった最新の反射防止コーティングが採用され、逆光時のフレアやゴーストを効果的に抑制します。
これらの進化点により、本レンズはMark Iとは全く別物と言えるほど、性能と使い勝手が向上しています。
徹底レビュー:描写性能
写真レンズの最も重要な要素の一つが描写性能です。EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、Lレンズの名に恥じない、非常に優れた描写性能を持っています。
解像力とシャープネス
本レンズの最大の魅力の一つが、その圧倒的な解像力です。特にMark Iからの進化は目覚ましく、ズーム全域、特に望遠端400mmでの描写は特筆に値します。
- 広角端 (100mm): F4.5開放から中心部は非常にシャープです。周辺部も良好な描写ですが、わずかに甘さが見られることもあります。F5.6〜F8程度に絞ると、画面全体で非常に高い解像力を発揮します。
- 中間域 (200-300mm): この領域でも高い解像力を維持します。開放から実用十分なシャープネスで、絞り込むことでさらに性能が向上します。
- 望遠端 (400mm): ここが本レンズの真骨頂です。F5.6開放から中心部は驚くほどシャープで、被写体の細部まで克明に描写します。Mark Iでは甘くなりがちだった400mm開放でも、本レンズは安心して使用できます。周辺部も中心部ほどではないものの、超望遠ズームとしては非常に良好な描写です。F8に絞ることで、画面全体の均一性がさらに高まります。
総じて、最新のLレンズにふさわしい、非常に高い解像力を持っています。特に高画素機との組み合わせで、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができるでしょう。
色収差
蛍石レンズ1枚とUDレンズ1枚を含むレンズ構成により、色収差は非常に良好に補正されています。
- 軸上色収差: 開放付近で発生しやすい軸上色収差(ボケた部分に色づきが見られる現象)は、特に望遠端の開放でわずかに見られることがありますが、非常に良く抑えられています。気になる場合は、わずかに絞ることで改善します。
- 倍率色収差: 画像周辺部で発生しやすい倍率色収差(被写体の輪郭に沿って異なる色のフリンジが見られる現象)も、ズーム全域で効果的に補正されており、実写で気になることはほとんどありません。
Lレンズらしい、クリアで色にじみの少ない描写が得られます。
歪曲収差
ズームレンズであるため、歪曲収差はゼロではありませんが、実用上問題ないレベルに抑えられています。
- 広角端 (100mm): わずかに糸巻き型の歪曲が見られることがあります。
- 望遠端 (400mm): こちらもわずかに糸巻き型の歪曲が見られることがあります。
風景撮影などで建物を画面の端に入れる場合などを除けば、後処理で簡単に補正できる範囲です。ポートレートや動体撮影などでは、まず気にならないでしょう。
周辺減光
開放F値で撮影した場合、周辺減光(画像の四隅が暗くなる現象、口径食とも関連)は多少見られます。
- 広角端 (100mm): F4.5開放でわずかに見られます。F5.6程度に絞るとほとんど解消されます。
- 望遠端 (400mm): F5.6開放で比較的周辺減光が見られます。F8に絞るとかなり軽減され、F11まで絞るとほぼ解消されます。
気になる場合は、撮影後にカメラ内RAW現像や現像ソフトで簡単に補正できます。超望遠レンズとしては、標準的なレベルと言えます。
ボケ味
超望遠レンズは、その圧縮効果と相まって、被写体を背景から分離し、大きなボケを作り出すのに適しています。本レンズのボケ味は、概ね良好です。
- 後ボケ: ピント面から滑らかに移行し、比較的柔らかいボケが得られます。しかし、高画素機で細かく見ると、わずかに二線ボケの傾向が見られる場合もあります。玉ボケは、絞り開放では比較的円形に近いですが、絞り込むと絞り羽根の形状(9枚円形絞り)が見えることがあります。
- 前ボケ: こちらも比較的自然なボケですが、極端に複雑な背景ではやや騒がしくなる可能性もあります。
開放F値がF5.6となる望遠端でも、400mmという焦点距離による圧縮効果と組み合わせることで、背景を大きくぼかすことが可能です。特に、背景と被写体の距離が離れているシチュエーションで効果を発揮します。
逆光性能
本レンズは、ASC(Air Sphere Coating)とSWC(Subwavelength Structure Coating)というキヤノンの最新の反射防止コーティング技術を採用しています。これにより、逆光時のフレアやゴーストの発生が効果的に抑制されています。
強い光源が画面内に入るような厳しい逆光条件でも、比較的クリアな描写が得られます。ゴーストの発生も少ないため、逆光を活かしたドラマチックな表現にも挑戦しやすいレンズです。フッ素コーティングも施されており、レンズ表面に付着した水滴や油分を拭き取りやすくなっています。
徹底レビュー:機能性と操作性
描写性能だけでなく、実写における機能性や操作性も、レンズの使い勝手を大きく左右します。
オートフォーカス (AF)
USM(超音波モーター)を搭載した本レンズのAFは、高速かつ高精度です。
- 速度: USMならではの非常に素早い合焦が可能です。特にEOS-1D X Mark II/IIIやEOS R3などのプロフェッショナルモデルや、EOS R5/R6などの高性能ミラーレス機との組み合わせでは、そのAF性能を最大限に引き出すことができます。瞬時に動く野鳥や航空機、モータースポーツなどの撮影において、被写体を的確に捉え続けることができます。
- 精度: 高画素機でもピントを合わせたい場所に正確に合焦します。
- 静粛性: USMは動作音が非常に静かです。動画撮影時や、音に敏感な被写体(野鳥など)を撮影する際にも有利です。
- AIサーボAFでの追従性: 動体撮影においては、AIサーボAFでの追従性能が非常に重要です。本レンズは、優れたAFアルゴリズムとUSMの組み合わせにより、画面内を高速で移動する被写体に対しても粘り強くピントを追従します。Mark Iからの進化点の一つであり、歩留まりの向上に大きく貢献します。
- フォーカスリミッター: レンズ側面に、AFの合焦範囲を制限するスイッチがついています。「FULL」と「3m-∞」の切り替えが可能です。「3m-∞」に設定すると、3メートルより遠い被写体に限定してAFが動作するため、近距離の不要な被写体にピントが迷うのを防ぎ、より素早い合焦が可能になります。特に遠距離の被写体のみを狙う場合に有効です。
- フルタイムマニュアルフォーカス (FTM): AFで合焦後も、AFモードのままでフォーカスリングを回すことで瞬時にマニュアルでの微調整が可能です。非常に便利で、特に動体撮影中に最終的なピント位置を追い込みたい場合などに重宝します。
- 最短撮影距離と最大撮影倍率: Mark Iの1.8mから0.98mへと大幅に短縮された最短撮影距離は、このレンズの隠れた(しかし非常に有用な)特徴です。これにより、望遠端400mmでも被写体から約1メートルまで近づいて撮影することが可能になり、最大撮影倍率0.31倍という、まるで簡易マクロレンズのような使い方もできます。小さな野鳥や昆虫などを、背景を大きくぼかしながらクローズアップで捉えるといった、新たな撮影表現が可能になりました。
手ブレ補正 (IS)
IS IIとして進化し、約4段分の効果を発揮する手ブレ補正機構は、超望遠レンズにおいては非常に重要な機能です。
- 効果: 400mmという超望遠域でシャッタースピード約4段分(CIPA基準)の効果は絶大です。例えば、手ブレしないとされるシャッタースピードの目安「1/焦点距離」(400mmなら1/400秒)に対し、4段分効果があれば、計算上は1/25秒でもブレずに撮影できる可能性があります(もちろん、個人の手ブレ具合や状況によります)。これにより、夕暮れ時や日陰など、光量の少ない環境での手持ち撮影の可能性が大きく広がります。
- ISモード:
- モード1 (通常): 静止した被写体を撮影する際に使用します。水平・垂直方向の両方のブレを補正します。
- モード2 (流し撮り): 動きのある被写体を追跡しながら撮影する「流し撮り」に使用します。レンズを振る方向(水平または垂直)以外のブレのみを補正します。
- モード3 (露出時のみ補正): ファインダー像のブレ補正は行わず、シャッターボタンを全押しして露光している間だけ手ブレ補正が働きます。動きの予測できない被写体(鳥の飛び立ちなど)をファインダーで追いかける際に、ファインダー像が不自然にカクつくのを防ぎ、フレーミングしやすくするためのモードです。プロを中心に好んで使われるモードです。
- 三脚使用時: 三脚に固定して撮影する場合は、原則としてISを切るのが推奨されています。ISをONにしたままだと、三脚の微細な振動をブレと誤認識し、かえって描写が甘くなる可能性があるためです。ただし、強力な手ブレ補正システムを持つMark IIでは、三脚に載せた状態でもISをONにしたままで問題ない場合もあります。しかし安全策としてはOFFが基本です。雲台や三脚の性能にも左右されます。
- 動画撮影: 動画撮影時にもISは有効です。手持ちでの安定した動画撮影を強力にサポートします。
操作性
Mark Iからの最も大きな変更点の一つが、ズーム方式です。
- ズーム方式: Mark Iが鏡筒を伸縮させる直進式ズームだったのに対し、本レンズは一般的な回転式ズームを採用しています。どちらが良いかは好みが分かれるところですが、回転式はズームリングを回すことで焦点距離を調整するため、より精密なフレーミングが可能と感じるユーザーが多いようです。ズームリングは滑らかに回転し、適度なトルク感があります。
- ズームトルク調整リング: ズームリングの根本には、ズームの重さ(トルク)を調整するリングがついています。「SMOOTH」側に回すと軽くなり、「TIGHT」側に回すと重くなります。これにより、意図しないズレを防いだり、ズーム操作の好みに合わせたりすることができます。動画撮影で滑らかなズーム操作を行いたい場合にも便利です。
- 各種スイッチ: AF/MF切り替えスイッチ、フォーカスリミッタースイッチ、ISのON/OFFスイッチ、ISモード切り替えスイッチがレンズ側面に配置されており、操作しやすい位置にあります。
- 三脚座: 標準で回転式の三脚座が付属します。縦位置・横位置の切り替えが容易で、クリック感のあるストッパーでしっかり固定できます。三脚座のリング自体は取り外し可能ですが、フット部分はレンズから分離できません(ただし、フット部分は交換可能な設計になっています。社外品でアルカスイス互換のフットなども販売されています)。付属の三脚座フットにはストラップ取り付け穴もついています。
- レンズフード (ET-83D): バヨネット式でしっかりと装着できます。フードには、PLフィルターなどを操作するための「操作窓」がついており、非常に便利です。
- 防塵防滴構造: Lレンズとして、マウント部、スイッチ部、操作リング部などにシーリングが施され、防塵防滴に配慮した設計となっています。厳しい撮影環境でも安心して使用できますが、完全に水没させたり、激しい雨の中で長時間使用したりすることは推奨されません。
- サイズと重量: φ94mm×193mm、約1,570g(三脚座を除く)というサイズと重量は、400mmまでカバーする超望遠ズームとしては比較的小型軽量と言えます。手持ちでの撮影も十分に可能ですが、長時間の撮影や、より安定した撮影のためには一脚や三脚の使用も検討すべきでしょう。カメラボディとのバランスも重要です。フラッグシップ機やバッテリーグリップ装着時など、ある程度重量のあるボディとの組み合わせでバランスが取りやすい傾向があります。
作例で見るEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの世界
(ここでは、文章でどのような作例が撮れるかを具体的に描写します。読者は自身の撮影イメージと重ね合わせながら読み進めることができます。)
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、その多様な焦点距離と高い性能を活かして、様々なシーンで活躍します。
- 野鳥撮影: 遥か遠くにいる小さな野鳥を、まるで目の前にいるかのように大きく写し撮ることができます。400mmの望遠端で、鳥の羽毛一本一本まで解像するシャープネスは圧巻です。素早いAFは、飛び立つ瞬間や飛行中の鳥も捉え続けます。ISモード3を使えば、予測不能な動きをする鳥を追いかけるのも容易になります。短い最短撮影距離を活かして、近くの枝にとまった鳥をクローズアップで狙うことも可能です。
- 航空機・鉄道撮影: 広大な空を飛ぶ航空機や、疾走する鉄道車両を迫力満点に切り取ります。望遠レンズならではの圧縮効果により、背景のビル群や山並みが引き寄せられ、写真に奥行きと密度を与えます。モード2の流し撮りISを使えば、背景をブレさせて速度感を強調した表現も得意です。高速AFは、迫ってくる被写体も正確に追従します。
- 風景撮影: 雄大な風景の中から、特定の山頂や滝、遠くの集落などをピンポイントで切り取る「望遠風景」に最適です。100mmから400mmのズームで、構図を細かく調整できます。朝焼けや夕焼けに染まる遠景を、クリアかつシャープに描写します。圧縮効果を活かして、重なり合う山々や手前の木々を凝縮させた表現も可能です。
- モータースポーツ: サーキットを駆け抜けるレーシングカーやバイクの高速な動きを捉えます。AIサーボAFの追従性能とISモード2の流し撮り機能は、動体撮影の強い味方です。ズームレンジを活かして、コーナーでのクローズアップや、直線での流し撮りなど、多様な表現が可能です。
- ポートレート(望遠端): 意外かもしれませんが、400mmの望遠端とF5.6の開放絞りを組み合わせることで、ポートレートにも活用できます。被写体から十分な距離をとる必要があるため、広い場所が必要ですが、望遠レンズならではの強い圧縮効果と、ピント面から背景への滑らかなボケにより、印象的なポートレートを撮影できます。特に、背景が複雑な場所でも、大きくぼかすことで被写体を際立たせることが可能です。
- クローズアップ撮影: 最短撮影距離が短いことを利用して、花や昆虫などを簡易マクロ的に撮影することも可能です。400mmで0.98mまで寄れば、被写体をかなり大きく写すことができ、背景も大きくぼかすことができます。本格的なマクロレンズには及びませんが、超望遠レンズの新たな楽しみ方を提供してくれます。
これらの例からもわかるように、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、単なる超望遠レンズにとどまらず、多様な被写体と撮影スタイルに対応できる、非常に柔軟性の高いレンズです。
競合レンズとの比較
本レンズの購入を検討する際に、比較対象となるレンズがいくつかあります。それぞれの特徴を理解することで、自分にとって最適な一本を選ぶ手助けとなるでしょう。
旧型 EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM (Mark I) との比較
先代モデルであるMark Iは、本レンズが登場するまで約16年間も販売されたロングセラーレンズです。中古市場でも多く流通しています。
- 光学性能: Mark IIはMark Iから圧倒的に向上しています。特に400mm開放でのシャープネス、色収差の補正能力はMark IIが大きく上回ります。高画素機を使用するなら、Mark IIを選ぶべきでしょう。
- 手ブレ補正: IS効果はMark Iの約2段分に対し、Mark IIは約4段分です。Mark IIの方がより低速シャッターでの手持ち撮影が容易です。ISモード3の有無も異なります。
- AF性能: Mark IIの方が高速かつ正確です。最短撮影距離もMark IIが大幅に短縮されています(1.8m vs 0.98m)。
- 操作性: Mark Iは直進ズーム、Mark IIは回転ズームです。これは好みが分かれる部分ですが、多くのユーザーは回転ズームとトルク調整リングを備えたMark IIの操作性を好みます。Mark IIは三脚座も改良されています。
- 耐久性・信頼性: Mark IIは防塵防滴性能やフッ素コーティングなど、より最新の技術が採用されています。
- 価格: Mark Iは中古市場で比較的安価に入手できます。Mark IIは新品・中古ともに高価です。
予算を抑えたい場合や、それほど高い解像度を求めない場合はMark Iも選択肢に入りますが、描写性能、AF性能、手ブレ補正など、あらゆる面でMark IIが優れており、特に高画素機ユーザーや動体撮影を頻繁に行うユーザーにはMark IIを強くお勧めします。
他のキヤノンL望遠ズームとの比較
- EF70-200mm F2.8L IS II/III USM: F2.8通しの明るさが最大の魅力です。焦点距離は短いですが、テレコンバーター(EXTENDER EF1.4x IIIやEF2x III)と組み合わせることで、280mm F4や400mm F5.6相当の焦点距離・明るさを得られます。明るい単体ズームが必要か、より長い焦点距離が必要かで選択が変わります。描写性能は非常に高いですが、400mm F5.6として使用する場合、本レンズの方が描写性能は優位な傾向があります(特に解像力や色収差)。
- EF70-300mm F4-5.6L IS USM: 本レンズより一段階短く、やや小型軽量なLズームです。描写性能はLレンズとして良好ですが、本レンズ(Mark II)には及びません。特に望遠端300mmでの性能や、手ブレ補正効果、AF速度で差があります。価格は本レンズより安価です。携帯性を重視し、300mmまでで十分という場合は検討の価値があります。
サードパーティ製レンズとの比較
タムロンやシグマからも、同様の焦点距離レンジやさらに長い望遠域をカバーするズームレンズが多数販売されています。これらは、価格面でキヤノン純正Lレンズよりも有利な場合が多いです。
- SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary: 本レンズに近い焦点距離レンジを持つ、比較的小型軽量で安価なモデルです。コストパフォーマンスに優れ、描写性能も良好ですが、開放F値がやや暗く、AF速度や手ブレ補正効果、耐久性・信頼性(防塵防滴性能など)ではLレンズである本レンズに一歩譲ります。しかし、価格差を考えると魅力的な選択肢です。
- Tamron SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 / SIGMA Sports 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sports: 焦点距離600mmまでカバーできるのが最大の魅力です。超望遠域をさらに伸ばしたい場合に有効です。ただし、サイズも重量も本レンズより大きく重くなり、価格も本レンズに近い、あるいはそれ以上になる場合もあります。描写性能も非常に高いですが、特に望遠端600mmでの描写は、個体差やボディとの相性なども影響します。本レンズの400mm開放の描写と、これらのレンズの600mm開放の描写を比較検討する必要があります。
本レンズは、価格は高めですが、純正Lレンズならではのカメラボディとの連携の良さ、堅牢性、信頼性、そしてズーム全域での安定して高い描写性能と、強力な手ブレ補正、高速AFが最大の強みと言えます。特に、最高の描写性能と信頼性を求めるプロやハイアマチュアにとって、最有力候補となる一本でしょう。
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMのメリット・デメリット
メリット
- 圧倒的に優れた描写性能: ズーム全域、特に望遠端400mmの開放F値から非常にシャープで、高解像度です。色収差も良く補正されています。
- 高速・高精度なAF: USMによる素早い合焦と優れた追従性能は、動体撮影に最適です。最短撮影距離の短縮も大きなメリットです。
- 強力な手ブレ補正 (IS II): 約4段分の手ブレ補正効果は、手持ち撮影の可能性を広げます。ISモード3も実用的です。
- 優れた操作性: 回転式ズームとトルク調整リング、使いやすいスイッチ配置など、実写での操作性が高いです。フードの操作窓も便利です。
- 堅牢性と信頼性: Lレンズらしいしっかりした造りで、防塵防滴に配慮された設計です。フッ素コーティングもメンテナンス性を向上させます。
- 比較的コンパクト軽量: 400mmまでカバーする超望遠ズームとしては、サイズも重量も比較的抑えられており、携帯性に優れます。手持ち撮影もある程度こなせます。
- 多様な焦点距離: 100mmから400mmまでのズーム範囲は非常に実用的で、様々な被写体やシーンに対応できます。
- テレコンバーターとの相性: EXTENDER EF1.4x IIIやEF2x IIIとの組み合わせでもAFが有効であり、さらに望遠域を伸ばすことができます。(ただし、開放F値は暗くなり、描写性能も単体よりは低下します。)
デメリット
- 価格: Lレンズの中でも比較的高価な部類に入ります。新品で購入するにはまとまった予算が必要です。
- 開放F値が可変・やや暗い: F4.5-5.6という開放F値は、特に望遠端ではF5.6となります。日陰や夕暮れ時など光量の少ない状況では、シャッタースピードを稼ぐためにISO感度を上げる必要が出てくる場合があります。F2.8通しのレンズに比べると、背景のボケ量もやや少なくなります。
- 重量: 超望遠レンズとしては軽量な部類ですが、約1.5kg超の重量は、長時間の手持ち撮影では負担になります。
- ズーム方式の好み: Mark Iの直進ズームに慣れているユーザーにとっては、回転式ズームへの変更がデメリットと感じられる可能性もあります(ただし、これは少数派でしょう)。
購入ガイド
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは決して安価なレンズではありません。購入を検討する際には、自身の撮影スタイルや予算、そして期待する性能を十分に考慮する必要があります。
このレンズは誰におすすめか?
- 本格的な動体撮影(野鳥、航空機、鉄道、モータースポーツなど)を行いたいユーザー: 高速・高精度AF、強力なIS、そして400mmまでの焦点距離は、これらのジャンルに最適です。
- 高画質を求める望遠撮影ユーザー: 特に高画素機との組み合わせで、本レンズの優れた描写性能を最大限に活かすことができます。
- 携帯性と望遠域のバランスを重視するユーザー: 600mmズームなどに比べれば小型軽量で、フットワークを活かした撮影が可能です。
- 純正Lレンズの信頼性と性能を重視するユーザー: 堅牢な造り、防塵防滴性能、そしてキヤノンボディとの連携の良さは純正ならではの安心感があります。
- Mark Iからの買い替えを検討しているユーザー: Mark IIはMark Iから劇的に進化しており、買い替える価値は十分にあります。
購入時のチェックポイント
- 予算: 新品の価格は30万円前後(実売価格)と高価です。中古市場では状態によって価格が変動しますが、人気レンズのため、程度の良いものは高値を維持する傾向があります。
- 中古市場: 予算を抑えたい場合は中古も選択肢に入ります。中古で購入する場合は、レンズの状態(傷、カビ、クモリ)、動作確認(AF、IS、ズーム、絞り)、付属品(フード、三脚座、ケース)をしっかりチェックしましょう。保証の有無も確認が必要です。
- 自身のカメラボディとの相性: 特に古いボディの場合、最新のレンズ性能を十分に引き出せない可能性があります。また、ボディのAF性能によってもレンズのAF追従性能は変わってきます。高性能なボディほど、本レンズの真価を発揮できます。APS-C機であれば、640mm相当の超望遠レンズとして活用できますが、画質的にはフルサイズ機の方が有利なことが多いです。
- 必要な付属品: レンズフード、三脚座、ケースは通常付属していますが、中古の場合は欠品していることもあります。必要なものが揃っているか確認しましょう。
アクセサリー
本レンズをさらに快適に、あるいは便利に使うためのアクセサリーも考慮しておきましょう。
- 保護フィルター: レンズ最前面を物理的な衝撃や汚れから守るために装着を推奨します。φ77mm径の高品質なフィルターを選びましょう。
- テレコンバーター: EXTENDER EF1.4x IIIを使用すれば、560mm F8のレンズとして、EF2x IIIを使用すれば800mm F11のレンズとして使用できます。どちらの場合も、本レンズとの組み合わせでAFが有効です(EF1.4x III使用時はAF精度はやや低下する可能性があり、EF2x III使用時はAFが遅くなる、あるいは特定のボディでしかAFが効かない場合があります。最新のボディとの組み合わせが推奨されます)。描写性能は単体より低下しますが、さらに望遠域が必要な場合に有効な選択肢です。
- 別売りの三脚座: 付属の三脚座フットはアルカスイス互換ではありません。アルカスイス互換の雲台を使用している場合は、社外品のアルカスイス互換フット(例: Really Right Stuff, Kirkなど)への交換を検討すると、雲台への装着が容易になります。
- レンズコート: レンズを傷や汚れから守るためのネオプレン製のカバーです。迷彩柄なども人気があり、野鳥撮影などで目立たなくする効果も期待できます。
ユーザーレビュー・口コミまとめ
インターネット上のレビューサイトやSNS、カメラ雑誌などでEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMのユーザーレビューを検索すると、多くの肯定的な意見を見つけることができます。
- 描写に関する声:
- 「開放からびっくりするくらいシャープ!特に400mmの描写がMark Iとは全然違う。」
- 「色収差がほとんど気にならない。クリアな写り。」
- 「背景のボケも思ったより綺麗。圧縮効果も効いて、被写体が浮き上がるよう。」
- 「高画素機でもしっかり解像してくれる。」
- 機能・操作性に関する声:
- 「AFが爆速で、動体撮影の歩留まりが格段に上がった。」
- 「ISが本当にすごい!4段分効果は伊達じゃない。手持ちで粘れるシーンが増えた。」
- 「回転ズームの方が使いやすい。トルク調整も便利。」
- 「最短撮影距離が短くなったのが地味に嬉しい。近くの被写体も撮れる。」
- 「フードの操作窓は考えられてる。」
- 「防塵防滴なので安心して使える。」
- サイズ・重量に関する声:
- 「超望遠としてはコンパクト。思ったより手持ちでもいける。」
- 「さすがに重いけど、性能を考えれば許容範囲。」
- 「ボディとのバランスが重要。しっかりしたボディと合わせたい。」
- 総評:
- 「値段は高いけど、買って後悔なし。」
- 「期待以上の性能。これ一本で超望遠の世界が広がる。」
- 「Mark Iから買い替えて正解だった。」
- 「一生ものレンズ。」
もちろん、価格や重量、開放F値に対するネガティブな意見も皆無ではありませんが、多くのユーザーがその高性能と使い勝手に満足しており、高評価を得ているレンズであることは間違いありません。特にMark Iからの性能向上は、ユーザーの期待を大きく上回ったようです。
まとめ:EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMがもたらす価値
キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、現代のデジタルカメラの性能を最大限に引き出すために設計された、高性能超望遠ズームレンズです。単に望遠域をカバーするだけでなく、Lレンズならではの妥協のない描写性能、高速・高精度なAF、強力な手ブレ補正、そして実用的な操作性を兼ね備えています。
特に、Mark Iからの劇的な進化により、ズーム全域でのシャープネス、色収差補正、AF追従性能、IS効果などが大幅に向上し、高画素機との組み合わせでもそのポテンシャルを遺憾なく発揮します。野鳥や航空機、鉄道といった動体撮影はもちろんのこと、風景やクローズアップ撮影にも対応できる汎用性の高さも魅力です。
価格は高価ですが、その性能は多くのプロ・ハイアマチュア写真家から支持されており、投資に見合う、あるいはそれ以上の価値を提供してくれるレンズと言えるでしょう。超望遠域での撮影に本気で取り組みたいと考えている方にとって、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、間違いなく最有力候補となる一本です。
もしあなたが、超望遠レンズ選びで迷っているのであれば、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMをぜひ候補に入れてみてください。この一本が、あなたの写真表現の世界を大きく広げてくれるはずです。高価な買い物だからこそ、この記事があなたの賢明な選択の一助となれば幸いです。素晴らしい超望遠の世界を、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMとともに楽しんでください。