JavaScript prompt の使い方を徹底解説【サンプルコード付き】
Webページを開発していると、ユーザーから簡単な情報を入力してもらいたい場面が出てきます。例えば、名前を入力してもらってパーソナルなメッセージを表示したり、数値を入力してもらって計算結果を返したり、といったインタラクションです。このようなユーザーからのちょっとした入力を受け付けるために、JavaScriptにはブラウザが提供する組み込み機能がいくつか用意されています。その中でも、テキスト入力を受け付ける機能として最もシンプルで手軽なのが prompt です。
この記事では、JavaScriptの prompt メソッドについて、その基本的な使い方から応用、注意点、そして現代のWeb開発における位置づけまで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。豊富なサンプルコードを通じて、prompt の挙動をしっかりと理解し、正しく使えるようになることを目指します。
この記事で学べること:
promptの基本的な構文と引数の意味promptの戻り値とその型(文字列またはnull)- ユーザーの入力に応じた処理の分岐方法
- 入力された文字列を数値などに変換する方法と注意点
promptを使った実践的なサンプルコード集promptを使う上での限界と注意点(UX、デザイン、同期処理など)- モダンなWeb開発における
promptの代替手段
それでは、JavaScriptの prompt の世界に深く入っていきましょう。
1. JavaScript prompt とは何か? なぜ学ぶのか?
prompt の定義
JavaScriptの prompt() メソッドは、ブラウザに組み込まれている機能の一つです。これを呼び出すと、ユーザーに対してメッセージとテキスト入力フィールド、そしてOKボタンとキャンセルボタンが含まれた小さなダイアログボックスが表示されます。ユーザーはテキストフィールドに何かを入力し、OKまたはキャンセルを選択することで、プログラムに情報を返すことができます。
このダイアログは、ブラウザのウィンドウの中で最前面に表示される「モーダルダイアログ」と呼ばれる形式です。モーダルダイアログが表示されている間は、ユーザーはWebページの他の部分をクリックしたり、操作したりすることができません。ダイアログを閉じるまで、ページの操作はブロックされます。
なぜ prompt を学ぶのか?
現代のWeb開発では、ユーザーからの入力を受け付ける主要な手段として、HTMLの <form> 要素と <input> 要素を組み合わせた、ページ内に表示される入力フォームが主流です。リッチなモーダルダイアログを表示したい場合でも、HTML/CSSとJavaScriptを組み合わせてカスタマイズ可能なダイアログを作成したり、専用のライブラリを使用したりするのが一般的です。
しかし、それでも prompt を学ぶことにはいくつかのメリットがあります。
- 手軽さ: HTML要素を用意したり、イベントリスナーを設定したりといった準備なしに、JavaScriptのコード一行でユーザー入力を受け付けることができます。特に、JavaScriptの学習初期段階で、DOM操作やイベント処理を深く理解していなくても、ユーザーとのインタラクションを手軽に実現したい場合に便利です。
- デバッグやテスト: 開発中にちょっとした値を手動で入力して、JavaScriptの関数やコードの断片の挙動を確認したい場合などに、デバッグツールの一部として
promptを一時的に利用することがあります。 - ブラウザ組み込み機能の理解:
promptはブラウザAPIの一部であり、JavaScriptがブラウザ環境でどのように動作し、ユーザーとインタラクションできるかを理解する上で基本的な要素です。alertやconfirmといった他のブラウザ組み込みダイアログと合わせて理解することで、ブラウザが提供する基本的な機能群への理解が深まります。 - 既存コードの理解: 過去に書かれたJavaScriptコードや、特定の用途(ブックマークレットなど)で
promptが使われている場面に遭遇することがあります。そのコードを理解するためには、promptの挙動を知っている必要があります。
このように、prompt は現代の複雑なWebアプリケーション開発でメインの入力手段として使われることは少ないですが、その手軽さやブラウザAPIの基本としての重要性から、JavaScript学習者や開発者にとって知っておくべき機能と言えます。
この記事では、prompt の手軽さを活用しつつ、その限界も踏まえて、適切な場面で活用するための知識を身につけることを目指します。
2. prompt の基本的な使い方と構文
prompt は、window オブジェクトのメソッドとして提供されていますが、通常は単に prompt() として呼び出すことができます。基本的な構文は以下の通りです。
javascript
result = prompt(message, defaultValue);
それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
message (省略可能)
ダイアログに表示されるテキストメッセージです。ユーザーに何を求めているのかを示すために使用します。この引数を省略することも可能ですが、その場合ダイアログのテキストフィールドの上に何も表示されず、ユーザーは何を入力すれば良いか分からなくなるため、通常は指定します。
message に指定した値は、自動的に文字列に変換されて表示されます。数値や他の型の値を渡しても問題ありませんが、意図したメッセージになるように文字列で指定するのが一般的です。
例: "お名前を入力してください"
defaultValue (省略可能)
テキスト入力フィールドにあらかじめ表示させておきたい初期値です。ユーザーが何も入力せずにOKボタンを押した場合、この defaultValue が prompt の戻り値として返されます。この引数を省略した場合、テキスト入力フィールドは空の状態で表示されます。
defaultValue に指定した値も、自動的に文字列に変換されて入力フィールドに表示されます。null や undefined を defaultValue として指定した場合、ほとんどのブラウザでは空文字列 ("") として扱われ、入力フィールドは空になります。
例: "名無しの権兵衛"
result (戻り値)
これが prompt の最も重要な部分です。ユーザーの操作によって、prompt は以下のいずれかの値を返します。
- ユーザーがOKボタンを押した場合:
- テキストフィールドにユーザーが入力した文字列が返されます。
- ユーザーが何も入力せずにOKを押した場合、
defaultValueが指定されていればその文字列が、defaultValueが省略されていれば空文字列 ("") が返されます。
- ユーザーがキャンセルボタンを押した場合:
- 入力フィールドの内容に関わらず、特殊な値である
nullが返されます。
- 入力フィールドの内容に関わらず、特殊な値である
重要: prompt の戻り値は、ユーザーが数値や真偽値を入力したつもりでも、常に文字列 ("" を含む) または null のいずれかです。この点を理解しておくことが、prompt の戻り値を正しく扱う上で非常に重要になります。
シンプルなサンプルコード
ユーザーに名前を入力してもらい、それを使ってメッセージを表示する簡単な例です。
“`javascript
// ユーザーに名前の入力を求める
let userName = prompt(“お名前を入力してください:”);
// 戻り値を確認してメッセージを表示
if (userName === null) {
// キャンセルが押された場合
console.log(“名前の入力がキャンセルされました。”);
alert(“名前の入力がキャンセルされました。”);
} else if (userName === “”) {
// 何も入力せずにOKが押された場合
console.log(“名前が入力されませんでした。”);
alert(“名前を入力してください。”);
} else {
// 名前が入力されてOKが押された場合
console.log(こんにちは、${userName}さん!);
alert(こんにちは、${userName}さん!);
}
“`
コードの解説:
prompt("お名前を入力してください:")を呼び出しています。これにより、「お名前を入力してください」というメッセージが表示された入力ダイアログが表示されます。defaultValueは指定していないため、入力フィールドは空です。- ユーザーがダイアログを操作し、閉じると、その結果が
userName変数に代入されます。 if-else if-else文を使って、userNameの値に応じた処理を行っています。userName === nullの場合:ユーザーがキャンセルボタンを押したことを意味します。userName === ""の場合:ユーザーがテキストフィールドに何も入力せずにOKボタンを押したことを意味します。(defaultValueが指定されていないため)- それ以外の場合:ユーザーが何かテキストを入力してOKボタンを押したことを意味します。その入力された文字列が
userNameに格納されています。
- それぞれのケースで、
console.logとalertを使って結果を表示しています。
この例からわかるように、prompt の戻り値が null か文字列か(そして文字列の場合は空文字列かそれ以外か)を適切にチェックすることが、prompt を使う上で非常に重要です。
3. prompt の振る舞いと戻り値の詳細
prompt の振る舞いをさらに掘り下げて理解しましょう。特に、戻り値の型と、ユーザーが取りうる操作(OK/キャンセル、入力の有無)と戻り値の関係性を明確にします。
ユーザーの操作と戻り値
以下の表は、ユーザーの操作と prompt の戻り値の関係をまとめたものです。
| ユーザーの操作 | defaultValue の状態 |
戻り値 | 型 |
|---|---|---|---|
| OK をクリックし、テキスト入力あり | 何を指定していても | 入力された文字列 | string |
| OK をクリックし、テキスト入力なし | 指定あり(例: "初期値") |
"初期値" |
string |
| OK をクリックし、テキスト入力なし | 指定なし or "" |
"" (空文字列) |
string |
| キャンセルをクリック | 何を指定していても | null |
object |
この表から、以下の重要なポイントが確認できます。
- キャンセルボタンを押すと、入力内容や
defaultValueに関わらず、必ずnullが返されます。 - OKボタンを押した場合、戻り値は常に
string型になります。入力内容が数値のように見えても、それはあくまで文字列として返されます。 - 入力がない状態でOKを押した場合の戻り値は、
defaultValueに依存します。defaultValueが指定されていればその値、指定されていなければ空文字列になります。空文字列も有効な文字列であることに注意してください。
戻り値が文字列であることの重要性(と型変換)
prompt の戻り値が常に文字列(または null)であるという事実は、特にユーザーに数値を入力して欲しい場合に問題となります。
例えば、ユーザーに年齢を入力してもらい、その年齢を使って計算をしたいとします。
“`javascript
let userAgeInput = prompt(“あなたの年齢を入力してください:”);
console.log(typeof userAgeInput); // => “string” または “object” (nullの場合)
// もしユーザーが “30” と入力した場合
// userAgeInput は文字列 “30” になる
// もしユーザーがキャンセルした場合
// userAgeInput は null になる
“`
userAgeInput が文字列 "30" であったとして、これに 5 を足し算しようとするとどうなるでしょうか?
“`javascript
let userAgeInput = prompt(“あなたの年齢を入力してください:”);
if (userAgeInput !== null) { // null の場合は処理しない
let calculatedAge = userAgeInput + 5;
console.log(calculatedAge); // => “305” と表示される! (文字列連結)
let anotherCalculation = userAgeInput * 2;
console.log(anotherCalculation); // => 60 と表示される (数値演算)
}
“`
JavaScriptでは、+ 演算子は数値の加算と文字列の連結の両方に使われます。どちらの操作になるかは、オペランドの型によって決定されます。片方でも文字列であれば、通常は文字列連結が行われます。上記の例で userAgeInput + 5 が "305" となるのはそのためです。
一方、-, *, /, % といった他の算術演算子の場合、オペランドのどちらかが数値であれば、もう一方のオペランドが数値に変換されてから計算が行われます。そのため、userAgeInput * 2 が "30" * 2 となり、"30" が数値 30 に変換されてから 30 * 2 = 60 という計算が行われます。
しかし、常に他の算術演算子を使うわけではありませんし、より安全に数値を扱いたい場合は、明示的な型変換を行うべきです。
明示的な型変換
prompt で取得した文字列を数値として扱いたい場合は、以下のいずれかの方法で数値に変換する必要があります。
parseInt(string, radix): 文字列の先頭から整数部分を解析して返します。第2引数radixは基数(何進数か)を指定します。通常は10進数なので10を指定します。parseFloat(string): 文字列の先頭から浮動小数点数部分を解析して返します。Number(value): 値全体を数値に変換しようとします。文字列全体が数値として解釈できない場合はNaNを返します。空文字列 ("") は0に変換されます。nullは0に変換されます。- 単項プラス演算子 (
+): 値の前に+を置くことで、数値を強制的に数値に変換しようとします。Number()と似ていますが、より簡潔です。
それぞれの例を見てみましょう。
“`javascript
let userInput = prompt(“数値を入力してください:”); // 例: ユーザーが “123a” と入力
let num1 = parseInt(userInput, 10);
console.log(num1); // => 123 (”a”より後ろは無視される)
console.log(typeof num1); // => “number”
let num2 = parseFloat(userInput);
console.log(num2); // => 123 (小数点以下や他の文字は無視される)
console.log(typeof num2); // => “number”
let num3 = Number(userInput);
console.log(num3); // => NaN (文字列全体が数値として解釈できない)
console.log(typeof num3); // => “number” (NaNもnumber型)
let num4 = +userInput;
console.log(num4); // => NaN (Number() と同じ)
console.log(typeof num4); // => “number”
“`
型変換の注意点: NaN と null
- ユーザーが数値を入力してほしいのに、数値として解釈できない文字列(例: “abc”, “”)を入力してOKを押した場合、
parseIntやparseFloatは途中まで数値として解釈できる部分があればそれを返しますが、Number()や単項プラスはNaN(Not-a-Number) を返します。 NaNは数値型ですが、有効な数値ではありません。計算結果がNaNになる場合が多く、NaNと他の値を比較しても、自分自身と比較しても (NaN === NaNはfalse) 基本的にfalseになります。数値として有効か確認するには、グローバル関数isNaN()を使います。- ユーザーがキャンセルした場合、
promptはnullを返します。nullを数値変換しようとすると、Number(null)は0になります。これはしばしば意図しない挙動を引き起こす可能性があります。例えば、キャンセルしたのに年齢が0歳として扱われる、などです。そのため、型変換を行う前に、まずpromptの戻り値がnullでないかを確認するのが最も安全な方法です。
以下のコードは、ユーザー入力が null でないことを確認し、かつ数値として有効であることを確認してから処理を進める、より安全な例です。
“`javascript
let userInput = prompt(“数値を入力してください:”); // 例: ユーザーが “30” または “abc” またはキャンセル
let numberValue;
if (userInput === null) {
// キャンセルされた場合
console.log(“入力がキャンセルされました。”);
numberValue = null; // または undefined など、適切な値に設定
} else {
// OKが押された場合(入力の有無に関わらず文字列)
numberValue = Number(userInput); // 数値または NaN に変換
if (isNaN(numberValue)) {
// 数値に変換できなかった場合 (例: “abc”, “”)
console.log("${userInput}" は有効な数値ではありません。);
numberValue = null; // または適切なエラー処理
} else {
// 有効な数値に変換できた場合 (例: “30” -> 30, “” -> 0)
console.log(入力された数値は ${numberValue} です。);
// ここで numberValue を使った数値計算などを行う
}
}
// numberValue の値に応じて後続処理を分岐
if (numberValue !== null && !isNaN(numberValue)) {
// 有効な数値がある場合の処理
console.log(数値として確定: ${numberValue});
} else {
// 数値が得られなかった場合の処理
console.log(“数値を扱う処理はスキップします。”);
}
“`
このように、prompt の戻り値は、ユーザーがOKを押したかキャンセルしたか (null か文字列か)、そしてOKを押した場合に入力内容が何だったか (空文字列か、数値に見える文字列か、それ以外の文字列か) によって複雑に変化します。これらの可能性を全て考慮してコードを書く必要があります。
4. prompt を使ったインタラクティブな例
ここでは、prompt を使ってユーザーとインタラクションする具体的なサンプルをいくつか紹介します。基本的な入力から、条件分岐やループと組み合わせた例までを見ていきましょう。
例1: ユーザー名を入力して挨拶する
これはセクション2で紹介した例の再掲ですが、defaultValue を指定した場合の挙動も確認してみましょう。
“`javascript
// デフォルト値を指定する場合
let userName = prompt(“お名前を入力してください:”, “ゲスト”);
if (userName === null) {
console.log(“挨拶はスキップされました。”);
} else if (userName.trim() === “”) { // .trim() で前後の空白を除去
console.log(“名前が入力されませんでした。ゲストとして扱います。”);
alert(“こんにちは、ゲストさん!”);
} else {
console.log(こんにちは、${userName}さん!);
alert(こんにちは、${userName}さん!);
}
“`
解説:
promptの第2引数に"ゲスト"を指定しています。ユーザーが何も入力せずにOKを押した場合、userNameは"ゲスト"になります。userName.trim() === ""のチェックは、ユーザーが空白文字だけを入力した場合も考慮するためのものです。.trim()メソッドは文字列の前後の空白文字を取り除きます。- キャンセルされた場合(
userName === null)は、何も表示しないようにしています。 - それ以外の場合(名前が入力されたか、デフォルト値が使われた場合)は、挨拶メッセージを表示します。
実行例:
- ダイアログが表示される。テキストフィールドには「ゲスト」と表示されている。
- ユーザーが「太郎」と入力してOK ->
userNameは"太郎"-> 「こんにちは、太郎さん!」と表示。 - ユーザーが何も入力せずにOK ->
userNameは"ゲスト"-> 「こんにちは、ゲストさん!」と表示。 - ユーザーが空白文字だけを入力してOK ->
userNameは" "(例えば) ->userName.trim()は""-> 「名前が入力されませんでした。ゲストとして扱います。」のメッセージが表示され、「こんにちは、ゲストさん!」と表示。 - ユーザーがキャンセル ->
userNameはnull-> 「挨拶はスキップされました。」と表示。
例2: 簡単な計算機(数値入力部分)
2つの数値をユーザーに入力してもらい、それらを足し合わせる計算機の入力部分を考えてみます。数値変換と NaN チェックが重要になります。
“`javascript
let num1Input = prompt(“最初の数値を入力してください:”);
let num2Input = prompt(“2番目の数値を入力してください:”);
let num1, num2;
// 最初の数値の処理
if (num1Input === null) {
console.log(“最初の数値の入力がキャンセルされました。”);
num1 = null;
} else {
num1 = Number(num1Input);
if (isNaN(num1)) {
console.log("${num1Input}" は有効な数値ではありません。);
num1 = null;
}
}
// 2番目の数値の処理
if (num2Input === null) {
console.log(“2番目の数値の入力がキャンセルされました。”);
num2 = null;
} else {
num2 = Number(num2Input);
if (isNaN(num2)) {
console.log("${num2Input}" は有効な数値ではありません。);
num2 = null;
}
}
// 両方の数値が有効な場合に計算を実行
if (num1 !== null && num2 !== null) {
let sum = num1 + num2;
console.log(${num1} + ${num2} = ${sum});
alert(${num1} + ${num2} = ${sum});
} else {
console.log(“計算に必要な数値が揃いませんでした。”);
alert(“有効な数値を2つ入力してください。”);
}
“`
解説:
promptを2回呼び出し、それぞれの戻り値をnum1Input,num2Inputに格納します。これらは文字列またはnullです。- それぞれの入力に対して、キャンセル (
nullチェック) と有効な数値かどうかのチェック (isNaNチェック) を行っています。 - 入力が有効な数値であれば、それを
num1,num2に格納します。無効な場合はnullを格納しています。 - 最後に、
num1とnum2の両方がnullでないことを確認し、計算を実行しています。どちらか一方がnullであれば、計算は行わずにエラーメッセージを表示します。 - このように、複数の
promptを連続して使用し、それぞれの戻り値を個別に処理し、全ての入力が揃ってから最終的な処理を行う、というパターンはよく使われます。
実行例:
- 「最初の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーが「10」と入力してOK。
- 「2番目の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーが「20」と入力してOK。
num1Inputは"10",num2Inputは"20"になる。num1はNumber("10")で10に、num2はNumber("20")で20になる。- 両方
nullでないので、10 + 20 = 30が計算・表示される。
- 「最初の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーが「abc」と入力してOK。
- 「2番目の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーが「20」と入力してOK。
num1Inputは"abc",num2Inputは"20"になる。num1はNumber("abc")でNaNになり、その後nullに設定される。num2はNumber("20")で20になる。num1がnullなので、計算はスキップされ、「計算に必要な数値が揃いませんでした。」と表示される。
- 「最初の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーがキャンセル。
- 「2番目の数値を入力してください:」ダイアログ。ユーザーが「20」と入力してOK。
num1Inputはnullになり、その後num1もnullに設定される。num2Inputは"20"になり、num2は20に設定される。num1がnullなので、計算はスキップされ、「計算に必要な数値が揃いませんでした。」と表示される。
例3: 特定の入力があるまでループする
prompt の戻り値を利用して、ユーザーが特定のキーワードを入力するまで入力を繰り返し求める例です。
“`javascript
let userInput = “”; // ループに入る前に初期化
// ユーザーが「終了」と入力するか、キャンセルするまで繰り返す
while (userInput !== “終了” && userInput !== null) {
userInput = prompt(“何か入力してください。「終了」と入力すると終了します。”);
if (userInput === null) {
console.log(“入力がキャンセルされました。”);
} else if (userInput === “終了”) {
console.log(“プログラムを終了します。”);
} else {
console.log(あなたが入力したのは: ${userInput});
}
}
console.log(“ループが終了しました。”);
“`
解説:
whileループを使っています。ループの条件はuserInput !== "終了" && userInput !== nullです。つまり、userInputが"終了"ではなく、かつnullでもない間はループが続行されます。- ループの最初に
promptを呼び出し、ユーザーからの入力をuserInputに代入します。 - その後の
if-else if-else文で、userInputの値に応じてメッセージを表示しています。特に、userInput === "終了"の場合は、次のループ条件判定でuserInput !== "終了"がfalseとなり、ループが終了します。userInput === nullの場合も、同様に次のループ条件判定でuserInput !== nullがfalseとなり、ループが終了します。 - このように、
promptの戻り値を直接ループの制御に使うことができます。
実行例:
- 「何か入力してください…」ダイアログ。ユーザーが「こんにちは」と入力してOK -> 「あなたが入力したのは: こんにちは」と表示され、ループが続く。
- 「何か入力してください…」ダイアログ。ユーザーが「次へ」と入力してOK -> 「あなたが入力したのは: 次へ」と表示され、ループが続く。
- 「何か入力してください…」ダイアログ。ユーザーが「終了」と入力してOK -> 「プログラムを終了します。」と表示され、ループが終了する。
- 「何か入力してください…」ダイアログ。ユーザーがキャンセル -> 「入力がキャンセルされました。」と表示され、ループが終了する。
これらの例から、prompt を使うことでユーザーからの入力を手軽に受け付け、その入力内容に応じてJavaScriptで様々な処理を実行できることが分かります。ただし、後述する prompt の限界も理解しておくことが重要です。
5. prompt の限界と注意点
prompt は非常に手軽な機能ですが、いくつかの重要な限界と注意点があります。これらを理解せずに多用すると、ユーザー体験(UX)の低下や開発上の問題を引き起こす可能性があります。
UX(ユーザー体験)の悪さ
- モーダルダイアログ:
promptはモーダルダイアログを表示します。これは、ユーザーがダイアログを閉じるまで、Webページの他の部分を一切操作できなくなることを意味します。複雑なタスクの途中で表示されると、ユーザーは作業を中断されてしまい、フラストレーションを感じる可能性があります。 - デザインのカスタマイズ不可:
promptダイアログの見た目はブラウザによって異なり、CSSを使ってデザインをカスタマイズすることは一切できません。Webサイトやアプリケーション全体のデザインと調和させることができません。 - 同期処理:
promptが表示されている間、JavaScriptの実行は完全に停止します。ダイアログが閉じられるまで、後続のコードは一切実行されません。これは、例えばアニメーションの途中でpromptを表示すると、アニメーションが一時停止してしまう、といった問題を引き起こします。また、現代の非同期処理が中心のWeb開発スタイルとは相性が悪いです。 - 入力タイプの制限: 入力フィールドは単なるテキストフィールドであり、数値専用のキーボードが表示されたり、日付ピッカーが表示されたりといった、入力タイプに応じた適切なUIを提供できません。
- バリデーションの難しさ:
promptダイアログ自体に入力値のバリデーション機能はありません。入力値が正しい形式か、期待される範囲内の値かなどは、promptが値を返した後にJavaScriptコード側でチェックし、問題があれば再度promptを表示するなど、複雑なロジックを組む必要があります。 - アクセシビリティ:
promptダイアログはブラウザのネイティブUIに依存するため、スクリーンリーダーなどの支援技術との連携や、キーボード操作によるアクセシビリティが限定的である可能性があります。
セキュリティ上の注意点
prompt 自体に直接的なセキュリティ脆弱性があるわけではありませんが、ユーザーからの入力を受け付けるという性質上、その入力値をどのように扱うかによってセキュリティリスクが発生する可能性があります。
最も一般的なリスクは、ユーザー入力をそのままHTML要素のコンテンツとしてページに表示してしまうことによるクロスサイトスクリプティング (XSS) です。
例えば、以下のようなコードは危険です。
javascript
// 危険な例:ユーザー入力をそのままHTMLに挿入
let userName = prompt("お名前を入力してください:");
if (userName !== null) {
// 注意!ユーザーが悪意のあるスクリプトを入力した場合、これが実行される可能性がある
document.body.innerHTML += `<h2>こんにちは、${userName}さん!</h2>`;
}
もしユーザーが userName として <script>alert('XSS')</script> のような文字列を入力した場合、これがページのHTMLの一部として挿入され、悪意のあるスクリプトが実行されてしまう可能性があります。
prompt で取得した値をHTMLに表示したり、サーバーに送信したりする場合は、必ず適切なサニタイズ(無害化)やエスケープ処理を行う必要があります。これは prompt に限らず、ユーザーからのあらゆる入力を扱う場合の基本的なセキュリティ対策です。
ブラウザによる表示の違い
基本的なOK/Cancelボタンや入力フィールドの構成は共通していますが、ダイアログの見た目(フォント、ボタンのスタイル、ウィンドウの角丸具合など)はブラウザやOSによってわずかに異なります。これはデザインの統一性を求める場合に問題となります。
モバイルでの使い勝手
モバイルブラウザで prompt を表示すると、画面全体を覆い隠すように表示されることが多く、デスクトップブラウザ以上にUXが悪化する傾向があります。また、ソフトウェアキーボードが表示されることで、さらに画面の大部分が隠れてしまいます。
6. 応用的な使い方(教育、デバッグ、ブックマークレットなど)
前述のように、prompt は現代の本格的なWebアプリケーションでユーザー入力のメイン手段として使われることは稀です。しかし、その手軽さから特定のニッチな用途では今でも便利に活用されることがあります。
JavaScript学習の初期段階
HTMLやCSSをまだ十分に学んでいない、あるいはJavaScript単体でインタラクションの概念を学びたいという初学者が、手軽にユーザーからの入力をプログラムに反映させるためのツールとして prompt を利用することがあります。複雑なUI構築なしに、入力 -> 処理 -> 出力 の基本的な流れを学ぶのに役立ちます。
デバッグやテスト目的
開発中、特定の変数に一時的にユーザーからの値を代入してコードの挙動を確認したい場合などに、コンソールやDevToolsから prompt() を呼び出すことがあります。簡単なテストケースを手動で試す際に便利です。
javascript
// DevToolsのコンソールで実行する場合
let testValue = prompt("テスト用の値を入力:", "初期値");
console.log("入力された値:", testValue);
// testValue を使ってコードの断片を実行し、挙動を確認...
ブックマークレット
ブックマークレットは、ブラウザのブックマークとして保存し、クリックするだけで現在のWebページに対してJavaScriptを実行できる小さなプログラムです。ブックマークレットでページ上の要素を操作する際などに、ユーザーにパラメータを入力してもらうために prompt が使用されることがあります。
例: 現在のページの見出しの色を変更するブックマークレット(簡単化のためエラー処理なし)
javascript
javascript:(function(){
let color = prompt("見出しの色を入力してください (例: red, #00ff00):", "blue");
if (color !== null && color !== "") {
document.querySelectorAll('h1, h2, h3').forEach(function(heading) {
heading.style.color = color;
});
}
})();
このコード全体をブックマークのURLとして保存しておけば、どのページを開いていても、ブックマークをクリックするだけで見出しの色を変更できます。このように、特定のページの操作を自動化する際に、必要なパラメータをユーザーから受け取る手段として prompt が利用されることがあります。
これらの応用例は、prompt の手軽さが活かせる場面です。ただし、これらの用途であっても、キャンセル時の処理や、予期しない入力に対する考慮は必要です。
7. prompt の代替手段
prompt の限界(特にUXやデザイン、同期処理)を踏まえると、本格的なWebアプリケーションでユーザーからの入力を受け付ける場合は、通常は prompt 以外の方法を選択すべきです。ここでは、prompt の代替となるモダンな手法をいくつか紹介します。
alert と confirm との比較
prompt と同じくブラウザの組み込みダイアログとして、alert() と confirm() があります。これらは prompt とは目的が異なります。
alert(message): ユーザーにメッセージを表示するだけです。OKボタンのみが表示され、ユーザーはメッセージを読んでOKを押すことしかできません。戻り値はありません (undefined)。confirm(message): ユーザーにメッセージを表示し、何らかの確認(はい/いいえ、OK/キャンセル)を求めるために使用します。OKボタンとキャンセルボタンが表示され、ユーザーがOKを押すとtrue、キャンセルを押すとfalseが戻り値として返されます。prompt(message, defaultValue): ユーザーにメッセージを表示し、テキスト入力を求めます。OKボタンとキャンセルボタンが表示され、入力された文字列またはnullが戻り値として返されます。
これらのダイアログは全てモーダルであり、デザインのカスタマイズができません。用途に応じて使い分けますが、インタラクションのレベルとしては prompt が最も複雑(入力+OK/Cancel)です。しかし、前述の通り prompt は推奨されない場面が多いです。
HTMLフォーム要素 (<input>, <button>など)
これが現代のWeb開発でユーザー入力を受け付ける最も一般的で基本的な方法です。
<input type="text">,<input type="number">,<textarea>など: 様々なタイプの入力フィールドを提供できます。デザインはCSSで自由にカスタマイズ可能です。<button type="submit">など: ユーザーが入力完了を知らせるボタンを提供します。- イベントリスナー: JavaScriptでこれらのHTML要素を取得し、
clickやsubmitといったイベントを監視することで、ユーザーの操作に応じてJavaScriptコードを実行できます。 - 非同期性: ユーザーがフォームを操作したり入力したりしても、JavaScriptの実行はブロックされません。入力された値はイベントハンドラ内でいつでも取得できます。
- バリデーション: HTML5の属性(
required,min,max,patternなど)を使ったブラウザ標準のバリデーションや、JavaScriptを使ったより高度なバリデーションを実装できます。 - アクセシビリティ: HTMLの標準要素なので、アクセシビリティが比較的高いです。適切なWAI-ARIA属性などを追加することで、さらに向上させることができます。
HTMLフォームを使った簡単な入力例:
“`html
“`
この方法は、prompt よりもコード量は増えますが、その分デザインの自由度が高く、非同期で動作し、UXやアクセシビリティに優れた入力UIを実現できます。
<dialog> 要素
<dialog> 要素はHTML5.1で導入された、インタラクティブなダイアログボックスを表す要素です。モーダルダイアログ(ページ操作をブロックするもの)としても、非モーダルダイアログとしても使用できます。
- セマンティクス: ダイアログボックスであることを意味的に示します。
- 制御: JavaScriptの
showModal(),show(),close()メソッドで表示/非表示を制御します。 - デザイン: CSSでスタイルを適用できます。
- アクセシビリティ: 標準機能として、フォーカスの管理などが考慮されています。
- 戻り値:
close()メソッドに引数を渡すことで、ダイアログを閉じた際の「戻り値」を設定することも可能です(dialog.returnValueプロパティ)。
<dialog> 要素を使った入力UIの例(簡単化のため、入力フィールドとボタンのみ):
“`html
お名前入力
“`
<dialog> 要素は、prompt のようにページ操作をブロックするモーダルUIを実現したいが、デザインや柔軟性が必要な場合に強力な選択肢となります。
ライブラリを使ったモーダル/ダイアログ
Bootstrap Modal, SweetAlert2, etc.
これらのJavaScriptライブラリを使用すると、さらにリッチでインタラクティブなダイアログを簡単に実装できます。
- 豊富なデザイン: あらかじめ用意されたテーマや、詳細なカスタマイズオプションがあります。
- 機能: アニメーション、入力値のバリデーション、非同期処理との連携、複数のボタンタイプ、タイマーによる自動クローズなど、高度な機能を提供します。
- 実装の手軽さ: 多くの場合、シンプルなAPIで複雑なダイアログを呼び出せます。
例(SweetAlert2の場合 – ライブラリの導入が必要です):
javascript
// SweetAlert2を使った入力ダイアログの例
Swal.fire({
title: 'お名前を入力してください',
input: 'text',
inputLabel: 'お名前',
inputPlaceholder: 'お名前を入力...',
showCancelButton: true,
inputValidator: (value) => {
if (!value) {
return '名前を入力する必要があります!'
}
}
}).then((result) => {
if (result.isConfirmed) {
// OKが押された場合
const userName = result.value; // 入力値は result.value に格納される
Swal.fire(`こんにちは、${userName}さん!`, '', 'success');
} else if (result.dismiss === Swal.DismissReason.cancel) {
// キャンセルが押された場合
Swal.fire('入力はキャンセルされました', '', 'error');
}
});
このように、ライブラリを使うと非常に洗練された入力ダイアログを、比較的短いコードで実現できます。特に複雑な入力やリッチなUIが必要な場合は、ライブラリの利用を検討すると良いでしょう。
これらの代替手段は、prompt よりも学習コストや実装の手間はかかりますが、現代のWebアプリケーションに求められる品質(UX、デザイン、アクセシビリティ、パフォーマンス)を実現するためには不可欠な技術と言えます。prompt は「手軽さ」が最大の利点であり、それが活きる場面は限定的であることを理解しておきましょう。
8. prompt と他のJavaScript機能の連携
prompt で取得した入力値は、単に表示するだけでなく、他のJavaScriptの機能と連携させて様々な処理に活用できます。
取得した値を元にDOMを操作する
取得したテキストをページの特定の要素に表示したり、要素の属性を変更したりすることができます。
“`javascript
let fontSizeInput = prompt(“文字サイズを何pxにしますか? (例: 16)”, “16”);
if (fontSizeInput !== null) {
let fontSize = parseInt(fontSizeInput, 10); // 数値に変換
// 有効な数値で、かつ大きすぎない値かチェック (簡単なバリデーション)
if (!isNaN(fontSize) && fontSize > 0 && fontSize < 100) {
document.body.style.fontSize = fontSize + ‘px’; // body要素の文字サイズを変更
console.log(文字サイズを ${fontSize}px に変更しました。);
} else {
console.log("${fontSizeInput}" は無効な文字サイズです。);
alert("${fontSizeInput}" は有効な文字サイズではありません。);
}
} else {
console.log(“文字サイズ変更はキャンセルされました。”);
}
“`
この例では、ユーザーが入力した数値(文字列として取得される)を parseInt で数値に変換し、その値をCSSスタイルとして document.body.style.fontSize に設定しています。
取得した値を関数に渡す
prompt で取得した値を、後続の処理を行うための関数に引数として渡すことができます。これにより、入力処理とその他の処理を分離して、コードの構造をきれいに保つことができます。
``javascriptこんにちは、${name}さん! (関数より)
function greetUser(name) {
if (name === null) {
console.log("挨拶はスキップされました。");
} else if (name.trim() === "") {
console.log("名前が入力されませんでした。");
alert("名前を入力してください。");
} else {
console.log();こんにちは、${name}さん! (関数より)`);
alert(
}
}
let userName = prompt(“お名前を入力してください:”);
greetUser(userName); // promptの戻り値を関数に渡す
“`
この例では、prompt で取得した userName を greetUser 関数に渡しています。関数の内部で、null や空文字列のチェックを含めた挨拶処理を行っています。
イベントハンドラ内での利用
ボタンのクリックなどのイベントが発生した際に、そのイベントハンドラ内で prompt を呼び出すことも可能です。ただし、前述の通り prompt は同期的に実行され、ダイアログ表示中は他の操作がブロックされるため、UIの応答性が損なわれる可能性があります。特に、頻繁に発生する可能性のあるイベントや、アニメーションを伴うイベントのハンドラ内での利用は避けるべきです。
“`html
“`
この例では、ボタンをクリックすると prompt ダイアログが表示され、ユーザーが入力した内容がページの要素に反映されます。このような単純なケースであれば大きな問題にはなりにくいかもしれませんが、より複雑なアプリケーションでは、prompt による処理停止が問題となる可能性があります。
9. 実践的なサンプル集
これまでの知識を活かして、prompt を使った少し実用的な(ただしあくまで prompt を使う範囲内での)サンプルコードをいくつか見ていきましょう。
サンプル1: 簡単な自己紹介ボット
名前、出身地、趣味の3つを順に prompt で質問し、最後にまとめて表示するボットです。
“`javascript
alert(“自己紹介ボットを始めます!”);
let name, origin, hobby;
let isCancelled = false; // キャンセルされたかどうかのフラグ
// 名前を尋ねる
name = prompt(“お名前を教えてください:”);
if (name === null) {
isCancelled = true;
}
// 出身地を尋ねる(名前がキャンセルされていない場合のみ)
if (!isCancelled) {
origin = prompt(${name}さんの出身地はどこですか?);
if (origin === null) {
isCancelled = true;
}
}
// 趣味を尋ねる(出身地がキャンセルされていない場合のみ)
if (!isCancelled) {
hobby = prompt(${name}さんの趣味は何ですか?);
if (hobby === null) {
isCancelled = true;
}
}
// 結果を表示
if (isCancelled) {
alert(“自己紹介は中断されました。”);
console.log(“自己紹介は中断されました。”);
} else if (name.trim() === “” || origin.trim() === “” || hobby.trim() === “”) {
// どれか一つでも空文字列の場合
alert(“全ての項目を入力してください。”);
console.log(“入力されていない項目がありました。”);
}
else {
let message = `
${name}さんの自己紹介:
出身地: ${origin}
趣味: ${hobby}
自己紹介してくれてありがとう!
`;
alert(message);
console.log(message);
}
“`
解説:
- 複数の
promptを連続して使用しています。 isCancelledフラグを使って、途中でキャンセルされた場合はそれ以降のpromptをスキップするようにしています。- 最後の結果表示では、全ての入力がキャンセルされずに完了した場合と、途中でキャンセルされた場合、あるいは入力が空だった場合でメッセージを分岐しています。
name.trim() === "" || origin.trim() === "" || hobby.trim() === ""は、OKボタンが押されたものの、入力が空文字列だった場合のチェックです。trim()を使うことで、空白のみの入力も空として扱えます。
サンプル2: 税込み価格計算機
価格と税率を prompt で入力させ、税込み価格を計算して表示します。数値変換とバリデーションをしっかり行います。
“`javascript
alert(“税込み価格を計算します。”);
let priceInput = prompt(“税抜き価格を入力してください:”);
let taxRateInput = prompt(“税率を入力してください (%) 例: 10”, “10”); // デフォルト税率 10%
let price, taxRate;
let isValid = true; // 入力が有効かどうかのフラグ
// 価格の処理
if (priceInput === null) {
alert(“価格の入力がキャンセルされました。”);
isValid = false;
} else {
price = Number(priceInput);
if (isNaN(price) || price < 0) {
alert("${priceInput}" は有効な価格ではありません。0以上の数値を入力してください。);
isValid = false;
}
}
// 税率の処理(価格入力が有効な場合のみ)
if (isValid) {
if (taxRateInput === null) {
alert(“税率の入力がキャンセルされました。”);
isValid = false;
} else {
taxRate = Number(taxRateInput);
if (isNaN(taxRate) || taxRate < 0 || taxRate > 100) { // 税率は0%から100%の範囲を想定
alert("${taxRateInput}" は有効な税率ではありません。0から100までの数値を入力してください。);
isValid = false;
}
}
}
// 両方の入力が有効な場合に計算を実行
if (isValid) {
// 税込み価格 = 価格 * (1 + 税率 / 100)
let taxIncludedPrice = price * (1 + taxRate / 100);
// 小数点以下を適切に処理(例: 四捨五入や切り捨てなど、ビジネスロジックによる)
// ここでは簡単のため小数点以下2桁で丸めます
taxIncludedPrice = Math.round(taxIncludedPrice * 100) / 100;
let resultMessage = 税抜き価格: ${price} 円;
税率: ${taxRate} %
税込み価格: ${taxIncludedPrice} 円
alert(resultMessage);
console.log(resultMessage);
} else {
console.log(“計算に必要な入力が不正だったため、計算をスキップしました。”);
}
“`
解説:
- 数値入力を期待する
promptを使用しています。 Number()を使って文字列を数値に変換し、isNaN()で有効な数値になったかを確認しています。- さらに、価格は0以上、税率は0から100の範囲内という、ビジネスロジックに基づいたバリデーションも追加しています。
isValidフラグを使って、途中の入力に問題があった場合に後続の計算をスキップするように制御しています。- 税込み価格の計算結果を
Math.round()を使って小数点以下第2位で丸める処理を入れています。実際の業務では、通貨計算の端数処理はより厳密な要件がある場合があります。
サンプル3: 簡単なクイズ
簡単なクイズを出題し、prompt で回答を受け付け、正誤を判定します。
“`javascript
alert(“簡単なクイズです!”);
let score = 0;
// 問題1
let answer1 = prompt(“Q1: JavaScriptはどのような種類の言語ですか?\n(例: コンパイラ言語, スクリプト言語)”);
if (answer1 !== null) {
// 大文字小文字を区別せず、前後の空白も無視して比較
if (answer1.trim().toLowerCase() === “スクリプト言語”) {
alert(“Q1: 正解!”);
console.log(“Q1: 正解”);
score++;
} else {
alert(“Q1: 不正解。正解は「スクリプト言語」です。”);
console.log(“Q1: 不正解”);
}
} else {
alert(“Q1の回答はスキップされました。”);
console.log(“Q1: スキップ”);
}
// 問題2
let answer2 = prompt(“Q2: JavaScriptで要素をIDで取得するメソッド名は?\n(例: getElementByName, getElementById)”);
if (answer2 !== null) {
// 大文字小文字を区別せず、前後の空白も無視して比較
if (answer2.trim().toLowerCase() === “getelementbyid”) {
alert(“Q2: 正解!”);
console.log(“Q2: 正解”);
score++;
} else {
alert(“Q2: 不正解。正解は「getElementById」です。”);
console.log(“Q2: 不正解”);
}
} else {
alert(“Q2の回答はスキップされました。”);
console.log(“Q2: スキップ”);
}
// 結果発表
alert(クイズ終了!あなたの正解数は ${score} 問でした!);
console.log(最終スコア: ${score} / 2);
“`
解説:
- クイズの質問を
promptのメッセージとして表示し、回答を受け付けます。 - ユーザーの回答文字列に対して、
trim()とtoLowerCase()メソッドを組み合わせて使用しています。これにより、ユーザーが回答の前後に入力した空白や、大文字/小文字の違いを無視して正解判定を行うことができます。これは、ユーザーの入力ミスを吸収し、より柔軟な判定を行うためによく使われるテクニックです。 - キャンセルされた場合は、その問題はスキップされたとして扱い、正解数には影響しません。
- 最後に、合計の正解数を表示します。
これらのサンプルコードからわかるように、prompt は様々な目的でユーザー入力を受け付けるために使用できます。しかし、それぞれのサンプルで見たように、キャンセル時の処理、入力値の型変換、そしてバリデーション(入力値が期待される形式や範囲であるかのチェック)が prompt を安全かつ適切に使う上で非常に重要になります。
10. prompt の詳細な仕様と挙動
さらに掘り下げて、prompt のより技術的な詳細や挙動について解説します。
グローバルオブジェクト window のメソッド
prompt は実際にはブラウザのウィンドウオブジェクト (window) のメソッドです。したがって、厳密には window.prompt(...) として呼び出されるものですが、JavaScriptのグローバルスコープでは window のプロパティやメソッドは接頭辞なしで呼び出せるため、単に prompt(...) と記述するのが一般的です。これは alert() や confirm()、setTimeout() など、他の多くのブラウザ組み込み関数やオブジェクトにも共通する特徴です。
引数の型変換
prompt に渡す message と defaultValue は、どのような型の値を渡しても、内部で自動的に文字列に変換されてからダイアログに表示されます。
javascript
prompt(123, true); // => メッセージ「123」、デフォルト値「true」として表示される
prompt(null, undefined); // => メッセージ「null」、デフォルト値は空として表示される
このように、引数の型を意識しすぎる必要はありませんが、意図した通りの表示になるように、基本的には文字列で渡すのが最も明確です。
defaultValue に null や undefined を指定した場合
多くのブラウザでは、prompt の defaultValue に null や undefined を指定した場合、テキストフィールドは空になります。これは、これらの特殊な値が「表示する初期値がない」と解釈されるためと考えられます。
prompt("メッセージ", null); および prompt("メッセージ", undefined); は、prompt("メッセージ", "") とほぼ同じ挙動になり、入力フィールドは空で表示されます。ユーザーが何も入力せずにOKを押した場合、戻り値は空文字列 "" になります。
したがって、明示的に入力フィールドを空にしたい場合は、defaultValue を省略するか、空文字列 "" を指定するのが最も意図が伝わりやすい方法です。
空文字列 ("") と null の厳密な比較 (===)
prompt の戻り値が文字列 ("" を含む) か null かを判定する際には、型の違いを厳密に比較できる === 演算子を使うのが推奨されます。
“`javascript
let userInput = prompt(“何か入力:”);
if (userInput === null) {
// キャンセルされた場合 (null は object 型)
} else if (userInput === “”) {
// 何も入力せずOKを押した場合 (空文字列は string 型)
} else {
// 何か入力してOKを押した場合 (入力された文字列は string 型)
}
“`
もし == 演算子を使って比較すると、予期しない挙動になる可能性があります。例えば、null == undefined は true になりますし、一部の緩やかな型変換が行われる可能性があるため、prompt の戻り値の型を正確に判定するには === を使うのが安全です。
入力可能な文字数や改行
prompt の入力フィールドは、ブラウザやOSのネイティブUIに依存します。一般的に、単一行のテキスト入力フィールドとして実装されるため、複数行のテキストを入力することはできません(Enterキーは通常、OKボタンのクリックとして扱われます)。また、入力可能な文字数にもブラウザによる制限がある場合がありますが、通常は非常に長い文字列も入力可能です。
Web標準としての位置づけ
prompt メソッドは、ECMAScript(JavaScript言語自体の標準)ではなく、ブラウザが実装すべき機能を定義するWHATWG (Web Hypertext Application Technology Working Group) の HTML Standard の一部として定義されています。これは、prompt がJavaScript言語の核となる機能ではなく、Webブラウザ環境でJavaScriptが利用できるAPI(Web API)であることを意味します。
11. prompt の未来
Web開発のトレンドは、よりリッチでシームレスなユーザー体験を提供する方向へと進化しています。このような状況において、prompt のような同期的なモーダルダイアログは、UXの観点から推奨されない傾向にあります。多くのモダンなWebサイトやアプリケーションで prompt が使われることはほとんどありません。
しかし、これは prompt がすぐに廃止されるという意味ではありません。prompt はシンプルで広く互換性がある機能であり、特定の用途(特に開発者向けのツールやシンプルなスクリプト)では今後も利用され続ける可能性があります。また、Web標準の議論では、既存の広く使われている機能を安易に廃止することは、後方互換性の問題から避ける傾向があります。
将来的に、非同期版の入力ダイアログAPIが提案されたり、既存の prompt に代わる新しい標準的な入力UI要素が登場する可能性はありますが、現時点では prompt はHTML Standardの一部として存在し続けています。
開発者としては、prompt の限界を理解し、一般的なWebアプリケーションではHTMLフォームや <dialog> 要素、ライブラリなどの代替手段を選択しつつ、prompt が適している限定的な場面(学習、デバッグ、単純なツールなど)ではその手軽さを活用するというスタンスが良いでしょう。
12. まとめ:prompt の適切な使いどころと次のステップ
この記事では、JavaScriptの prompt メソッドについて、その基本的な使い方、戻り値の型と挙動、型変換の方法、様々なサンプルコード、そして使う上での限界と注意点まで、詳細に解説しました。
prompt の主な特徴:
- ユーザーにメッセージを表示し、テキスト入力を求めるブラウザ組み込みのモーダルダイアログ。
- 構文:
prompt(message, defaultValue) - 戻り値は常に文字列 (
""を含む) またはnull。 - キャンセル時は
null、OK時は入力文字列(またはdefaultValueまたは"")が返る。 - 数値として扱いたい場合は、
Number(),parseInt(),parseFloat()などで明示的な型変換が必要。 - 型変換前には
nullチェックを、変換後にはisNaN()チェックを行うのが安全。
prompt の限界と注意点:
- モーダルであるため、他のページ操作をブロックしUXが悪い。
- デザインのカスタマイズが一切できない。
- 同期処理であり、JSの実行を停止させる。
- 入力タイプが限定的で、バリデーション機能がない。
- モバイルでの使い勝手が悪い場合がある。
- ユーザー入力の扱いにはXSSなどのセキュリティリスクに注意が必要(これは
promptに限らない)。
prompt の適切な使いどころ:
- JavaScript学習の初期段階で、手軽にユーザー入力を試す場合。
- ブラウザのデベロッパーツールで、一時的に値を入力してコードの挙動を確認する場合。
- ブックマークレットなど、特定の限定的な用途でシンプルな入力を求める場合。
現代のWeb開発における代替手段:
- HTMLフォーム要素 (
<input>,<button>) + JavaScriptイベント処理 - HTML
<dialog>要素 - JavaScriptライブラリ(例: SweetAlert2, Bootstrap Modalなど)
これらの代替手段は、実装に少し手間はかかりますが、デザインの自由度が高く、非同期で動作し、優れたUXとアクセシビリティを提供できるため、一般的なWebアプリケーションでは推奨されます。
prompt はJavaScriptの学習において最初に触れる入力機能の一つかもしれませんが、その限界を早期に理解し、より強力で柔軟な代替手段があることを知っておくことが重要です。
この記事を通じて、prompt の仕組みとその適切な使いどころを理解できたことと思います。次のステップとして、HTMLフォーム要素とJavaScriptを使ったユーザー入力処理、そして <dialog> 要素やサードパーティライブラリを使ったダイアログの実装方法について学ぶことをお勧めします。これらの技術を習得することで、よりユーザーフレンドリーで洗練されたWebアプリケーションを開発できるようになるでしょう。