デルタルーン スノーグレイブ ルート徹底解説:凍てつく選択が紡ぐ悲劇
『DELTARUNE(デルタルーン)』は、『UNDERTALE(アンダーテール)』のクリエイター、トビー・フォックス氏が手掛ける新作RPGです。チャプター1、そして待望のチャプター2が公開され、多くのプレイヤーをその魅力的なキャラクター、心に響く音楽、そして予測不能な物語で惹きつけています。しかし、『DELTARUNE』チャプター2には、通常プレイとは一線を画す、極めて暗く、倫理的に重い「隠されたルート」が存在します。それが、プレイヤーの間で「スノーグレイブ ルート(SnowGrave Route)」あるいは「ジェノサイドルート」と呼ばれているものです。
本記事では、このスノーグレイブ ルートについて、その突入条件から進行、キャラクターへの影響、システム、そしてこのルートがプレイヤーに投げかける深い問いかけまで、徹底的に解説します。このルートは、作品の持つ可能性と、プレイヤーの選択の重さを最も痛烈に示唆するものであると同時に、非常に衝撃的で、倫理的に問題のある内容を含みます。プレイを検討されている方、あるいは既にプレイしてその衝撃から抜け出せない方のために、詳細かつ網羅的な情報を提供することを目指します。
【警告】 本記事は『DELTARUNE』チャプター2のスノーグレイブ ルートに関する内容を完全にネタバレします。また、ゲーム内で描写される行為は、倫理的に非常に重く、精神的に辛いと感じる可能性があります。これらの点を十分にご理解の上、読み進めてください。
はじめに:スノーグレイブ ルートとは何か?
『DELTARUNE』は、人間の少年クリス、モンスターの少女スージー、そしてダークワールドの王子ラズルという3人組を中心に展開される物語です。プレイヤーはクリスの「心臓」である光るソウルとして、彼を操作します。チャプター1では、彼らが初めてダークワールドを訪れ、危機を乗り越える冒険が描かれました。チャプター2では、新たなダークワールドである「サイバースペース」を舞台に、物語がさらに深く進んでいきます。
通常ルートの『DELTARUNE』は、敵と戦うことも可能ですが、基本的には「こうどう」や「みのがす」といった非暴力的な手段で問題を解決していくことが推奨されます。敵を倒しても「EXP(経験値)」や「LV(レベル)」は上昇せず、代わりに「TP(Tension Points)」を溜めて強力な技を使うことが戦闘の主軸となります。このシステムは、『UNDERTALE』の戦闘システムを踏襲しつつも、「誰も死ななくていい」というテーマをさらに推し進めたかのようです。
しかし、スノーグレイブ ルートは、この原則を根本から覆します。このルートは、特定の条件下で進行することで発生する「隠しルート」であり、プレイヤーが意図的に、特定のキャラクターに対して非人道的な行動を強いることによってのみ到達可能です。
なぜ「スノーグレイブ(SnowGrave)」と呼ばれるのでしょうか? これは、このルートで重要な役割を果たすキャラクター「ノエル(Noelle)」と、彼女が習得する強力な魔法「フリーズ(Freeze)」に由来すると推測されています。ノエル(Noelle)とフリーズ(Freeze)を組み合わせたアナグラム、あるいはこれらの単語が想起させる「雪(Snow)」と「墓(Grave)」というイメージが、このルートの暗く悲劇的な性質を象徴していると考えられています。ゲーム内ではこのルートを示す明確な名称は提示されませんが、特定のイベントで登場するセリフや、ルートの性質から、プレイヤーコミュニティによってこの名称が定着しました。
スノーグレイブ ルートは、単なるゲームの分岐ではありません。それは、プレイヤーがキャラクターの自由意志をどれだけ操作できるのか、そしてその操作がキャラクターと世界にどれほど取り返しのつかない影響を与えるのかを、プレイヤー自身に問いかける実験でもあります。通常ルートとは異なり、このルートの進行は、プレイヤーに強い罪悪感や不快感を抱かせるように設計されています。それは、ゲームキャラクターとはいえ、彼らの感情や運命を弄ぶことの倫理的な重さをプレイヤーに突きつけるためです。
この徹底解説では、スノーグレイブ ルートがどのように発生し、どのように進行し、そしてどのような悲劇的な結末を迎えるのかを詳細に追っていきます。
スノーグレイブ ルートへの突入条件と分岐点
スノーグレイブ ルートは、『DELTARUNE』チャプター2の特定のポイントで、プレイヤーが意図的に、繰り返し特定の行動をとることで発生します。その全ての始まりは、サイバースペースの「図書館(Library)」エリアにあります。
チャプター2の序盤、クリスとスージーはサイバースペースに迷い込み、クイーンの城を目指して進みます。図書館エリアに入ると、ノエルがパーティーに加わるイベントが発生します。ノエルはクリスの同級生であり、以前から病弱な父を心配している心優しいモンスターです。チャプター1では短い登場でしたが、チャプター2では主要キャラクターの一人として物語に深く関わります。
スノーグレイブ ルートへの最初の、そして最も重要な分岐点は、ノエルがパーティーに加わった後、プレイヤーがノエルに対して特定の行動を強いることから始まります。
突入のための具体的な手順:
- 図書館エリアでノエルをパーティーに加える。 これは通常プレイでも発生するイベントです。
- ノエルがパーティーにいる状態で、戦闘において彼女に特定の行動を指示する。
- 通常、ノエルの「こうどう」には「おもいだす(Heal Prayer)」や「たたかう(IceShock)」などがあります。
- しかし、スノーグレイブ ルートに突入するためには、敵との戦闘中にノエルに対し、メニューから「こうどう」ではなく「ノエル」というキャラクター名そのものを選択し、表示される選択肢の中から「すすむ(Proceed)」を指示する必要があります。
- この「すすむ(Proceed)」というコマンドは、本来クリスに対して表示されることが多い「進む」という意味合いのコマンドですが、ここではノエルに対して表示され、彼女に通常とは異なる行動を促します。
- 「すすむ(Proceed)」を選択すると、ノエルは通常よりも強力な魔法である「フリーズ(Freeze)」を使用することが可能になります。
- 敵を「フリーズ(Freeze)」で倒す。
- 通常ルートでは敵を「みのがす」ことで戦闘を終了させますが、スノーグレイブ ルートではノエルの「フリーズ」魔法を使って敵を戦闘不能にします。「フリーズ」を受けた敵は、文字通り凍りつき、崩れ去ります。
- これを特定の敵に対して、繰り返し行うことが、スノーグレイブ ルートを確定させる条件となります。特に、図書館エリアに登場するアディソンズ(Addisons)やヴルーグ(Virovirokun)といった敵を「フリーズ」で「倒す」ことが重要です。
- TP(Tension Points)を効率的に溜める。
- 「フリーズ」魔法はTPを消費します。このルートでは頻繁に「フリーズ」を使う必要があるため、クリスやスージーの「こうどう」(特に防御や挑発)でTPを効率的に溜めることが進行の鍵となります。
- TPを溜めるために、通常ルートでは避けるような行動(敵の攻撃をあえて受けるなど)をとる必要が出てくる場合もあります。
重要な分岐点:図書館の車パズル
スノーグレイブ ルートへの突入を決定的にするイベントの一つに、図書館の奥にある車を使ったパズルがあります。通常ルートでは、このパズルを解くことで先に進みますが、スノーグレイブ ルートでは、ノエルを操作して車を「フリーズ」によって強引に破壊することが求められます。この行動が成功すると、進行方向の障害が排除され、ルートが確定します。
このパズルをクリアした直後、スージーがパーティーに合流しますが、彼女はクリスとノエルの間に漂う異様な空気、特に凍りついた車に対して疑問を呈します。ここでクリス(プレイヤー)がどのような反応をするか(あるいは何も反応しないか)が、スージーの認識に影響を与える可能性があります。しかし、スージーはクリスとノエルの行動の本当の異常性に気づくことなく、先を急ぐことが多いようです。
このように、スノーグレイブ ルートは、プレイヤーがノエルに対し、彼女の本来の性格や能力とはかけ離れた「フリーズ」による破壊を繰り返し強いることで発生します。この段階ではまだ通常ルートに戻ることも可能ですが、車を破壊するなど、決定的な行動を取った後は、ルートはほぼ固定されます。プレイヤーの「選択」が、この悲劇の物語の幕を開けるのです。
スノーグレイブ ルートの進行:主要イベントと変化
スノーグレイブ ルートは、プレイヤーの凍てつくような選択によって、チャプター2の物語を通常ルートから大きく逸脱させます。ここからは、スノーグレイブ ルートでの主要なイベント、通常ルートとの違い、そしてキャラクターたちの反応の変化を追っていきます。
図書館エリアの変貌
ルートに突入すると、図書館エリアの雰囲気は一変します。以前は賑やかだった場所から人々が消え、敵が凍りついた状態で配置されるようになります。プレイヤーは、ノエルに「フリーズ」を指示しながら進みます。
- アディソンズの「フリーズ」: 図書館エリアには複数のアディソンズがいますが、通常ルートでは彼らとの会話やミニゲームを通じて進みます。しかしスノーグレイブでは、彼らを「フリーズ」で無力化していきます。彼らが凍りつき、苦しむ様子を見ることになります。
- ヴルーグの「フリーズ」: ヴルーグも同様に「フリーズ」で処理します。彼らは「愛を広めたい」と主張するキャラクターですが、容赦なく凍らされます。
- パズルの強行突破: 前述の車パズルだけでなく、他のパズルもノエルの「フリーズ」で強引に突破することが多くなります。これは、問題解決よりも破壊や回避を優先するという、このルートの性質を象徴しています。
ノエルは、これらの行動に対して最初は戸惑い、恐れを抱きます。「これ、本当にやらなきゃいけないの?」「なんだか、ひどいことしてるみたい…」と、彼女の良心がプレイヤー(クリス)の指示に抵抗しようとします。しかし、プレイヤーが「すすむ(Proceed)」を繰り返し選択することで、ノエルは次第にプレイヤーの指示に従順になっていきます。彼女のセリフは次第に弱々しくなり、罪悪感と混乱が深まっていく様子が描写されます。
バロウズとの対峙(図書館)
スノーグレイブ ルート最初の大きな山場は、図書館エリアの最後でライバルのバロウズと対峙する場面です。通常ルートでは、バロウズとの最初の戦闘は純粋な対決ですが、スノーグレイブ ルートでは様相が異なります。
バロウズは、ノエルがクリスと一緒にいることに気づき、クリスからノエルを「救い出そう」とします。彼はノエルを「人質」と呼び、攻撃を仕掛けてきます。戦闘中、バロウズはノエルに対し、クリスから離れるように説得を試みます。
しかし、プレイヤーはノエルに「フリーズ」を指示します。ノエルは躊躇しますが、プレイヤーの強い指示に逆らえず、「フリーズ」を使用します。バロウズは強力な「フリーズ」魔法を受けて動けなくなります。完全に凍りつく前に、バロウズはノエルに向かって何かを言おうとしますが、最後まで言葉を発することができず、凍りついたままその場に固定されます。
このイベント後、バロウズはパーティーから離脱し、物語への関与は一時的に途絶えます。ノエルは、バロウズを傷つけたことに大きな衝撃を受け、精神的なダメージがさらに深まります。
クイーンの館への進行と変化
図書館を抜けたクリス、スージー、ラズル、そしてノエル(ただしノエルの精神状態は不安定)は、クイーンの館へと向かいます。通常ルートでもクイーンの館は主要な舞台ですが、スノーグレイブ ルートでは館内の構造やイベント、敵の配置が通常とは異なります。
- 異常な敵配置: 館内では、通常ルートでは見かけないような場所に敵が配置されていたり、特定のイベントで登場するはずの敵が先に登場したりします。そして、プレイヤーはこれらの敵に対しても、容赦なくノエルの「フリーズ」を指示します。
- 強制ショップ: 館内の特定の場所では、ダークナーのNPCたちが店を開いています。スノーグレイブ ルートでは、これらの店への立ち寄りが強制される場合があります。ノエルは「こんなところで何してるの…?」「早くここから出たい…」と、周囲の状況に強い不快感を示します。
- ノエルの精神的悪化: 進行中、ノエルのセリフはさらに追い詰められたものになります。「もう何も考えられない…」「クリス、次に何をすればいいの…?」「わたし、強くなりたい… もっと強くなれたら…」といったセリフは、プレイヤーによる操作によって彼女の自我が失われ、プレイヤーへの依存と歪んだ願望が芽生えていることを示唆します。
- ノエル単独行動パート: 館の特定のフロアでは、ノエルがクリスと離れて一人で進む場面があります。このパートでは、プレイヤーはノエルを操作して進みます。途中で敵と遭遇すると、ノエルは躊躇しながらも、以前クリスに指示された通りに「フリーズ」魔法を使います。「あなたは…何かを売りつけようとしてた? ごめんね…」などと、凍らせた相手に謝罪したり、自己正当化しようとする彼女の姿が描かれます。このパートの最後に、ノエルは何かを決心したかのように、「わたし、もっと強くなりたい。IceShock(フリーズの強化版)を使えるようにならなきゃ…」といった決意を口にします。これは、彼女の精神が完全に歪んでしまったことを示唆する、最も痛ましいセリフの一つです。
バロウズとの最終対決
スノーグレイブ ルートの最大の、そして最も悲劇的なイベントは、クイーンの館の奥で待っているバロウズとの最終対決です。図書館で凍らされたバロウズは、何らかの形で生きており、館のさらに奥で再びクリスとノエルの前に立ちはだかります。
バロウズは、完全にクリス(プレイヤー)に操られているノエルの姿を見て、事態の異常さを悟ります。「ノエル…! 一体どうしたんだ!?」と叫び、彼女を助けようと最後の抵抗を試みます。彼は以前よりも強力な攻撃を繰り出してきます。
しかし、プレイヤーはノエルに「すすむ(Proceed)」コマンドを選択させます。バロウズは驚愕し、「やめろ、ノエル!」と必死に止めようとします。ノエルは苦悩の表情を浮かべながらも、プレイヤーの命令に従って、究極の「フリーズ」魔法を使おうとします。バロウズは、その魔法の力を感じ取り、それが自分にとって致命傷となることを理解します。
バロウズは最後の力を振り絞り、ノエルに話しかけます。彼のセリフは、彼がノエルにとってどのような存在でありたかったか、そして彼女をどれほど大切に思っていたかを示唆します。「ノエル… 僕は… 君の…」と、彼は最後まで言葉にしようとしますが、プレイヤーが最後の「すすむ(Proceed)」を指示すると、ノエルは「スノーグレイブ(SnowGrave)」という名のついた究極の魔法を発動します。
「スノーグレイブ」
この魔法は画面全体を白い光で覆い尽くし、極寒の嵐が吹き荒れるようなエフェクトが発生します。バロウズは、その力によって完全に凍結し、砕け散ってしまいます。彼の最後のセリフは中断され、その存在は文字通り消滅します。
この瞬間、ノエルは「何を… 何をしたの…?」と呟き、完全に精神的に崩壊します。彼女は自分が何をしたのか理解できないまま、深い混乱と罪悪感に囚われます。プレイヤーによって、彼女の心は回復不能なほど傷つけられてしまったのです。
この後、クイーンと対面するイベントがありますが、バロウズを「倒した」ことによって通常ルートとは異なる展開になります。クイーンはバロウズの不在に気づき、プレイヤー(クリス)の行動に一定の警戒心を示す可能性があります。しかし、館の目標は達成され、一行はダークワールドからライトワールドへと戻ることになります。
エンディングとチャプター2の結末
スノーグレイブ ルートを完了すると、チャプター2のエンディングは通常ルートとは大きく異なります。
ダークワールドから戻ったクリスとノエルは、ノエルの家に向かいます。ノエルはまだ精神的なショックから立ち直れておらず、完全にプレイヤー(クリス)の指示に依存した状態になっています。彼女のセリフは短く、覇気がなく、プレイヤーの許可なく行動できなくなっているかのようです。
ノエルはクリスに、自分の部屋のベッドで休むように勧めます。そこでクリス(プレイヤー)は、ノエルのベッドに横たわります。ノエルは「あなたがここにいると… 暖かいね…」と、奇妙な安堵感を示します。これは、彼女がプレイヤーの存在(操作)を、苦痛であると同時に唯一の拠り所として感じていることを示唆しているのかもしれません。
この後、ノエルはクリスのそばを離れます。プレイヤーはノエルを操作して、彼女の父親(フォントおじさん)の病室を訪れることができます。しかし、父親は眠っており、ノエルは何も話すことができません。
チャプター2の最後、クリスが自らの「ソウル」を抜き取るシーンは通常ルートと同様に発生しますが、その描写には細かな違いが見られることがあります。また、セーブデータに表示されるチャプター2のクリア状況を示す画像やテキストが、通常ルートとは異なる、より不穏なものに変化する場合があります(例:「DARKER, YET DARKER」のような文字が表示される可能性)。
このルートの結末は、バロウズの死という物理的な損失だけでなく、ノエルの精神的な破壊という、より深刻な傷跡を残します。そして、プレイヤーはこれらの悲劇の直接的な原因として、重い後悔や罪悪感を抱くことになります。
スノーグレイブ ルートが与える影響
スノーグレイブ ルートは、関わる全てのキャラクター、そしてプレイヤー自身に深い影響を与えます。それは、ゲームのシステムや物語の構造を無視した、倫理的に問題のある行為の結果として生じるものです。
キャラクターへの影響:
- ノエル(Noelle): このルートの最大の被害者と言えるでしょう。プレイヤーによる操作によって、彼女は自分の意志に反して敵を「フリーズ」で無力化し、最終的には友人のバロウズを殺害してしまいます。この経験は、彼女の精神を完全に破壊します。
- 精神的崩壊と罪悪感: 彼女は自分が何をしたのか理解できず、深い罪悪感と混乱に苛まれます。「何を… 何をしたの…?」というセリフは、彼女の心の叫びです。
- 自己否定と依存: 彼女は自分自身を否定し、プレイヤー(クリス)の指示なくして何もできなくなります。これは、プレイヤーの操作が彼女の自由意志を完全に奪い去ったことを示唆します。
- 歪んだ「強さ」への願望: 「もっと強くならなきゃ」というセリフは、プレイヤーに都合の良い「強さ」(すなわち、他者を無力化する力)を求めてしまうという、彼女の精神が歪んでしまった証拠です。
- ノエルの背景にある、父親の病気や姉の行方不明といったトラウマも、彼女が精神的に不安定になりやすく、プレイヤーの操作に付け込まれやすい状態にあったことを示唆しています。
- クリス(Kris): プレイヤーが操作するアバターであるクリスもまた、このルートでは複雑な存在となります。プレイヤーはクリスの身体を乗っ取ってノエルを操作しているかのようです。クリス自身の意思はどこにあるのか?
- プレイヤーの指示を実行する身体:クリスは、プレイヤーのコマンドに従って行動しますが、その行動には自らの意志が反映されているようには見えません。特に、ノスグラルートでノエルに「すすむ(Proceed)」を強制する際のクリスの無表情は、プレイヤーの操り人形と化している様子を強調します。
- 「ソウル」を抜き取る行為:チャプターの最後にクリスが自らのソウル(プレイヤー)を物理的に抜き取るシーンは、プレイヤーによる支配から逃れようとするクリス自身の抵抗、あるいは別の何者かによる意図的な行為であることを示唆します。スノーグレイブ ルートでのプレイヤーの行動が、クリスのこの行動にどのような影響を与えたのかは不明ですが、プレイヤーの暴力的支配を経験したクリスが、より強くプレイヤーを拒絶するようになる可能性はあります。
- バロウズ(Berdly): このルートのもう一人の悲劇的な被害者。彼はノエルを救おうとして、彼女自身によって凍らされ、消滅させられます。
- 彼の性格との対比:通常ルートでは傲慢ながらも根は真面目で、ノエルに好意を抱いていることが示唆されるバロウズが、最も悲惨な結末を迎えます。彼の死は、このルートの非情さを際立たせます。
- 彼の最後のセリフ:ノエルに語りかけようとした最後の言葉が途切れる演出は、彼の死がどれほど理不尽で、救いのないものであるかを強調します。
- スージー(Susie)& ラズル(Ralsei): 通常ルートではクリスと協力して冒険を進める彼らですが、スノーグレイブ ルートでは、クリスとノエルの間に起こっている異常性、特にノエルの精神的な変化やバロウズの運命について、十分な理解が追いついていないように見えます。
- 彼らの反応:スージーは凍りついた車を見て訝しんだり、バロウズが消えたことに疑問を持ったりしますが、クリスとノエルの行動の真意までは見抜けないようです。ラズルも、このルートの進行を止める力や、プレイヤーの行動を直接咎めることができません。
- 無力感:彼らの存在は、このルートにおいてはプレイヤーの暴走を止める抑止力とならないことを示唆します。彼らは悲劇の傍観者、あるいは巻き込まれる存在にすぎません。
世界観への影響:
スノーグレイブ ルートで「フリーズ」された敵や物体は、文字通り凍りつき、崩れ去ります。これは、彼らが物語から完全に排除されたことを意味します。ダークナーたちはライトナーの創造物であるため、完全に消滅するのか、それとも別の形で存在するのかは不明ですが、少なくとも彼らの役割は失われます。
このルートは、ダークワールドに住む人々の運命が、プレイヤーの選択によっていとも簡単に弄ばれてしまう可能性を示唆しています。それは、ダークワールドという世界の不安定さ、そしてプレイヤーという外部からの力によって容易に破滅へと導かれる危うさを浮き彫りにします。
プレイヤーへの問いかけ:
スノーグレイブ ルートは、プレイヤーに対して非常に重く、倫理的な問いを投げかけます。
- ゲームにおける「選択」と「結果」の重み: 通常ルートで推奨される「みのがす」という選択肢が、このルートでは「フリーズ」という破壊的な選択肢に置き換えられます。ゲームという仮想空間とはいえ、他者の運命を弄ぶことの倫理的な責任を痛感させられます。
- プレイヤーはどこまで「ゲーム」として割り切れるのか: 多くのゲームでは、キャラクターはプレイヤーの指示に従う存在です。しかし、ノエルの苦悩やバロウズの悲劇的な結末を目の当たりにすることで、プレイヤーは「これはただのゲームだ」と割り切ることが難しくなります。キャラクターへの共感が強いほど、罪悪感は増します。
- プレイヤーの操作がキャラクターの「自由意志」をどれだけ侵害するか: ノエルは明確にこの行動を嫌がり、止めたいと願っています。しかし、プレイヤーは彼女の願いを無視し、強制的に行動させます。これは、ゲームにおけるプレイヤーとキャラクターの関係性、特にプレイヤーによる一方的な操作が、キャラクターの「自由意志」をどれだけ侵害しうるのかという、ゲームデザインにおける深い問題を提起します。
- 「楽しさ」とは何か: スノーグレイブ ルートの進行は、多くのプレイヤーにとって「楽しい」体験ではありません。むしろ、不快感、罪悪感、悲しみといった負の感情を伴います。これは、ゲームの「楽しさ」とは何か、そしてゲームが単なるエンターテイメントを超えて、プレイヤーに倫理的な反省や内省を促すものである可能性を示唆します。
スノーグレイブ ルートのゲームシステムと演出
スノーグレイブ ルートは、ゲームシステムと演出の面でも通常ルートとは異なる特徴を持ち、プレイヤー体験をより強烈なものにしています。
戦闘システム:「フリーズ」とTP管理
- 「フリーズ」コマンド: このルートの根幹を成すのが、ノエルの「フリーズ」コマンドです。これは「こうどう」メニューからではなく、ノエルのキャラクター選択肢から「すすむ(Proceed)」を選ぶことで使用可能になる特殊な技です。
- 効果: 敵単体を対象とし、通常攻撃や魔法よりもはるかに高い威力でダメージを与え、戦闘不能にします。成功すると敵は凍りつき、崩壊します。
- TP消費: 強力な魔法であるため、大量のTPを消費します。ルートの進行には、いかに効率的にTPを溜めるかが重要になります。クリスやスージーの「こうどう」や、敵の攻撃を受けることでTPを溜める必要があります。
- 演出: 「フリーズ」の演出は、単なる攻撃魔法とは異なり、対象を冷気で包み込み、凍結させる不穏なものです。特にボス敵に対する「スノーグレイブ」の演出は、その破壊力と悲劇性を強調しています。
- EXP/LVの概念の曖昧さ: 『DELTARUNE』全体に共通する特徴ですが、敵を倒してもEXPやLVは直接的には上昇しません。しかし、スノーグレイブ ルートを進めることで、ノエルの「レベル」が上昇したかのような示唆(例:彼女のセリフの変化や、より強力な「IceShock」魔法の習得)があります。これは、『UNDERTALE』の虐殺ルートでモンスターを殺すことでプレイヤーの「LOVE(Level Of Violence)」が上昇したこととの関連性を強く感じさせます。DELTARUNEでは、EXPやLVがどのように機能するのか、あるいは機能しないのかが大きな謎の一つですが、このルートは「暴力的行為によって何かが変化する」という可能性を強く示唆しています。
UI/UXの変化
- ノエルへのコマンド選択時のUI: ノエルに「すすむ(Proceed)」を指示する際、通常のコマンド選択画面とは異なる、より直接的で強制的なUIが表示されることがあります。特に、プレイヤーが「すすむ(Proceed)」を繰り返し選択するにつれて、その選択肢が強調されたり、画面が不穏な色合いになったりする演出があります。これは、プレイヤーがノエルの自由意志を無視し、強引に操作していることを視覚的に表現しています。
- メニュー画面/セーブデータ: ルート完了後のセーブデータ画面やメニュー画面が、通常とは異なるテキストや画像(例:「DARKER, YET DARKER」)に変化することがあります。これは、このルートでの出来事がゲームの世界に永続的な、あるいは非常に重い影響を与えたことを示唆しています。チャプター1クリア後のセーブデータが変化したことと同様に、DELTARUNEにおけるセーブシステムの意味合いや、プレイヤーの行動が世界に刻み込まれるというテーマを示唆しています。
BGMとグラフィック、演出
- BGM: スノーグレイブ ルート専用のBGMは多くありませんが、既存のBGMが不穏なアレンジになったり、特定の場面で寂寥感や恐怖感を煽るような楽曲が使用されたりします。特に、ノエルの単独行動パートやバロウズとの最終戦では、キャラクターの心情や状況の異常性を際立たせる音楽が効果的に使用されています。
- グラフィック: 凍りついた敵や背景のグラフィックは、このルートの寒々しく非情な雰囲気を強調します。バロウズが凍りつき、崩れ去る瞬間のグラフィックは、彼の死の衝撃を視覚的に伝えます。ノエルの表情変化も重要な演出要素であり、彼女の精神的な苦痛や崩壊が繊細に描かれています。
- 演出: プレイヤーがノエルに「すすむ(Proceed)」を指示する際、ノエルが躊躇したり、苦悩する表情を見せたりする演出が挟まれます。これは、プレイヤーの操作とキャラクターの感情との間に明確な乖離があることを示し、プレイヤーに罪悪感を抱かせるための重要な手法です。また、バロウズの最後のセリフが中断される演出や、「スノーグレイブ」魔法の発動シーンなど、このルートの悲劇性を強調する演出が随所に盛り込まれています。
これらのシステムと演出は、単に物語を進行させるだけでなく、プレイヤーにこのルートの異常性、倫理的な重さ、そしてキャラクターたちの苦痛を強く体感させることを目的としています。
『アンダーテール』の虐殺ルートとの比較
『DELTARUNE』のスノーグレイブ ルートは、その非人道的な内容やプレイヤーへの倫理的問いかけという点で、『UNDERTALE』の「虐殺ルート(Genocide Route)」とよく比較されます。どちらも、プレイヤーがゲームの基本的なルールや推奨されるプレイスタイルを無視し、意図的にキャラクターを傷つけ、殺害することで到達する隠しルートです。しかし、両者には重要な違いも存在します。
共通点:
- 非人道的な行為とキャラクターへの極端な影響: どちらのルートも、プレイヤーがゲーム世界の住人に対し、明確な悪意や無関心をもって接し、彼らを「ゲームの敵」として排除していきます。その結果、主要なキャラクターは悲劇的な運命をたどるか、あるいは精神的に変貌を遂げます。
- プレイヤーへの倫理的問いかけ: どちらのルートも、ゲームという仮想空間におけるプレイヤーの行動の倫理的な側面、操作されるキャラクターの尊厳、そしてゲームにおける「選択」と「結果」の重さをプレイヤーに突きつけます。プレイヤーに強い罪悪感や不快感を抱かせるように意図的に設計されています。
- 隠しルートとしての性質: どちらも通常プレイでは到達しない、あるいは到達しにくいルートであり、意図的な行動によってのみ発生します。これは、これらのルートが「誰もがたどり着くべき道ではない」という開発者のメッセージを示唆している可能性があります。
違い:
- EXP/LV vs. Freeze/ノエルのレベル:
- 『UNDERTALE』の虐殺ルートでは、敵を倒すことでEXPを獲得し、LV(LOVE)が上昇します。これはプレイヤー自身の暴力性がレベルアップするというシステムであり、プレイヤーは強くなることをモチベーションの一つとすることができます。
- 『DELTARUNE』では、通常プレイではEXPやLVの概念が表面化しません。しかしスノーグレイブ ルートでは、ノエルが「フリーズ」を使うことで敵を戦闘不能にし、彼女のセリフが「レベルアップ」したかのように変化したり、より強力な魔法「IceShock」を習得したりします。これは、直接的なLV上昇システムではないものの、「他者を無力化する行為」がノエルの内面に何らかの変化をもたらし、「強く(しかし歪んだ意味で)」なったことを示唆しています。この違いは、『DELTARUNE』におけるEXP/LVの概念が、『UNDERTALE』とは異なる、あるいはより複雑な意味合いを持っていることを示唆します。
- プレイヤーキャラクターの主体性:
- 『UNDERTALE』の虐殺ルートを進行するフリスク(プレイヤー)は、表面上は無表情ですが、物語が進むにつれて明確な意思をもって虐殺を実行しているように見えます。プレイヤーとフリスクの意思が一体化しているようにも、あるいはフリスクがプレイヤーに乗っ取られて虐殺に走っているようにも解釈できます。
- 『DELTARUNE』では、プレイヤーはクリスというキャラクターを操作しますが、スノーグレイブ ルートでは特に、プレイヤーがクリスの身体を通してノエルを操作している、という構造が強調されます。ノエルはプレイヤーの指示に明確に抵抗し、苦悩します。これは、プレイヤーが「クリス」というキャラクターを介して、別のキャラクターである「ノエル」の自由意志を侵害しているという、よりレイヤーの多い構造になっています。クリス自身の意思はプレイヤーによって抑制されているように見え、チャプターの最後にソウルを抜き取る行為は、その反抗と解釈できます。
- 「倒す」方法:
- 『UNDERTALE』の虐殺ルートでは、敵に物理的な「たたかう」を選択し、殺害します。これは直接的な暴力です。
- 『DELTARUNE』のスノーグレイブ ルートでは、ノエルの「フリーズ」魔法で敵を「無力化」「凍結」させます。これは直接的な殺害とは異なる描写ですが、結果として対象を物語から排除し、バロウズのように砕け散らせることもあります。この「凍結」という方法は、対象の「動き」「自由」を奪う行為であり、このルートでプレイヤーがノエルの自由意志を奪ったことのメタファーとも解釈できます。
- 対抗者の存在:
- 『UNDERTALE』の虐殺ルートでは、サンズという強力な存在がプレイヤーの前に立ちはだかり、プレイヤーの行動を非難し、阻止しようとします。彼の存在は、プレイヤーの暴力に対する世界の抵抗を象徴しています。
- 『DELTARUNE』のスノーグレイブ ルートでは、バロウズがノエルを救おうと試みますが、彼はサンズのような圧倒的な力を持つ存在ではなく、最終的にノエル自身によって倒されてしまいます。スージーやラズルもプレイヤーの行動を阻止できません。このルートには、プレイヤーの暴走を止められる存在がいないかのように見え、そのことがルートの絶望感を高めています。
- セーブ・ロードの重み:
- 『UNDERTALE』では、プレイヤーは自由にセーブ・ロードを繰り返すことで、異なるルートを試したり、失敗を取り消したりできます。ただし、虐殺ルートを進めた後の世界は、リセットしても完全に元に戻らないという示唆があります。
- 『DELTARUNE』では、セーブシステムがチャプター単位で上書きされる性質を持ち、『UNDERTALE』ほど気軽にセーブ・ロードができません。特に、スノーグレイブ ルートを完了した場合、チャプター2のセーブデータにはその痕跡が残ります。これは、このルートでの選択がより取り返しのつかないものであり、プレイヤーの行動が世界に深く刻み込まれるというテーマを強調しています。
これらの比較から、『DELTARUNE』のスノーグレイブ ルートは、『UNDERTALE』の虐殺ルートが提起した問題をさらに掘り下げ、特に「プレイヤーによるキャラクター操作」と「キャラクターの自由意志」というテーマに焦点を当てていることがわかります。それは、プレイヤーがゲームキャラクターに対して持つ「力」の性質とその危険性を、より複雑な構造で示唆していると言えるでしょう。
考察:スノーグレイブ ルートの目的と示唆
トビー・フォックス氏がスノーグレイブ ルートを『DELTARUNE』チャプター2に実装した意図は、おそらく一つではありませんが、いくつかの重要な目的と示唆が考えられます。
- プレイヤーを倫理的なジレンマに陥れること: 最も明白な目的は、プレイヤーに強い倫理的な問いを投げかけることです。ゲームという「フィクション」の中で、他者(キャラクター)の苦痛を無視し、自己の目的(ゲームの進行、隠しルートの探索)のために非人道的な行為を強いることの重さを、プレイヤー自身に体感させることです。ノエルの苦悩やバロウズの悲劇的な死を詳細に描写することで、プレイヤーは自分の行動がゲームの世界の住人にとってどれほど現実的な苦痛をもたらすのかを思い知らされます。
- ゲームにおける「自由」と「強制」の境界線を探ること: 『DELTARUNE』は、プレイヤーの選択が物語に影響を与えるという『UNDERTALE』のテーマを引き継ぎつつも、「あなたの選択は関係ない」というメッセージを序盤から提示しています。しかし、スノーグレイブ ルートは、プレイヤーの特定の、極端な選択が、物語を完全に異なる方向へ導くことを示しています。これは一見「プレイヤーの選択が重要である」ことを示しているようですが、同時にプレイヤーがキャラクターに対して持つ「力」が、いかに簡単に彼らの自由を奪い、悲劇をもたらす強制力となりうるかを示しています。プレイヤーは「自由に」このルートを選べますが、その自由はキャラクターにとっては「強制」であり、破滅へと繋がります。
- プレイヤーがキャラクターに対して持つ「力」の危険性を示すこと: ゲームにおいて、プレイヤーはキャラクターの運命を握る絶対的な存在です。多くのゲームでは、この力は当然のものとして受け入れられますが、スノーグレイブ ルートは、この力がどれほど危険で、倫理的に問題のあるものであるかを示唆します。特に、ノエルという感情豊かで脆弱なキャラクターを意のままに操ることは、プレイヤーがゲームキャラクターを単なる道具として扱うことへの強烈な批判を含んでいます。
- 『DELTARUNE』全体のテーマとの関連性:
- 選択と運命: 「あなたの選択は関係ない」というメッセージにも関わらず、このルートはプレイヤーの選択が極めて重要な結果をもたらすことを示します。これは、物語全体における「運命」や「定められた役割」と「個人の選択」の関係性というテーマに深く関わってきます。プレイヤーの選択が、定められた物語の流れを壊すことができると同時に、それが悲劇しかもたらさない可能性を示唆しています。
- 繋がりと孤独: 通常ルートではキャラクター間の「繋がり」が強調されますが、スノーグレイブ ルートではその繋がりが断ち切られ、キャラクターは孤独な苦痛に沈みます(ノエル)。プレイヤーはキャラクターとの繋がりを築くのではなく、彼らを道具として利用します。
- 闇と光: ダークワールドとライトワールドという対比の中で、このルートはダークワールドが持つ潜在的な危険性、そして光(プレイヤー)が闇に堕ちたときに何が起こるのかを示唆しています。
- 今後のチャプターへの伏線: スノーグレイブ ルートで発生した出来事は、チャプター3以降の物語にどのような影響を与えるのでしょうか。バロウズの不在、ノエルの精神状態、そしてクリス(プレイヤー)の行動は、間違いなく今後の展開に影を落とすでしょう。特に、クリスがソウルを抜き取る行為や、チャプター2のラストシーン(クリスがナイフを取り出すなど)は、プレイヤーの行動がクリス自身の闇を深くしたり、別の何者かの計画を進行させたりする可能性を示唆しています。スノーグレイブ ルートは、物語の破滅的な可能性の一つを示し、今後の展開に対するプレイヤーの不安を煽る役割を果たしているのかもしれません。
スノーグレイブ ルートは、単なる「ハードモード」や「悪役プレイ」の選択肢ではありません。それは、『DELTARUNE』という作品が、プレイヤーとゲーム、そしてキャラクターとの関係性について、極めて深遠かつ倫理的なレベルで問いかけていることの証左です。それは、ゲームというメディアの可能性と、その限界、そしてそれを楽しむプレイヤーの責任について、真剣に考えさせられる体験です。
結論:忘れられないゲーム体験として
『DELTARUNE』チャプター2のスノーグレイブ ルートは、プレイヤーに強烈な印象と深い後悔を残す、忘れられないゲーム体験です。それは、通常ルートの温かい雰囲気や希望とは対照的な、寒々しく、倫理的に重い悲劇の物語です。
このルートをプレイすることは、ゲームキャラクターという存在に対して、プレイヤーがどれほど大きな力を持っているのか、そしてその力が容易にキャラクターの自由意志や幸福を奪い去る可能性があることを痛感させられます。ノエルの苦悩、バロウズの悲劇的な最期を目の当たりにすることは、多くのプレイヤーにとって精神的に辛い経験となるでしょう。
しかし、スノーグレイブ ルートは、単にプレイヤーを不快にさせるためだけに存在するわけではありません。『DELTARUNE』、そして前作『UNDERTALE』が探求してきた「ゲームにおける選択の自由と責任」「プレイヤーとキャラクターの関係性」「物語における善と悪、希望と絶望」といったテーマを、最も尖った形で提示する重要な要素です。このルートを経験することで、『DELTARUNE』という作品の持つ深みや、トビー・フォックス氏がプレイヤーに伝えようとしているメッセージの重さをより深く理解することができるかもしれません。
全てのプレイヤーにこのルートを推奨するわけではありません。その内容は非常にデリケートであり、人によっては強い不快感や精神的な負担を感じる可能性があるからです。しかし、『DELTARUNE』という作品を多角的に理解するためには、この「凍てつく選択が紡ぐ悲劇」が何であるかを知ることは、非常に有意義であると言えるでしょう。
スノーグレイブ ルートは、ゲームプレイの面白さという側面だけでなく、プレイヤー自身の倫理観や、ゲームというメディアに対する向き合い方を問い直させるルートです。それは、仮想世界における一つの選択が、どれほど現実的な感情的な影響をプレイヤー自身に、そしてゲーム世界のキャラクターたちに与えうるのかを示す、強力な事例と言えるでしょう。このルートの存在は、『DELTARUNE』が単なるゲームではなく、プレイヤーとキャラクター、そして物語の間にある、複雑で時には痛みを伴う関係性を描く、一つの芸術作品であることを強く示唆しています。