基礎から学ぶSLAMアルゴリズム:自己位置推定と環境地図作成の協奏曲
はじめに
現代のロボティクス、自動運転、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)といった分野において、中心的な役割を担う技術の一つに「SLAM(スラム)」があります。SLAMとは、「Simultaneous Localization and Mapping」の頭文字を取ったもので、「自己位置推定と環境地図作成の同時実行」と訳されます。これは、未知の環境を移動しながら、自分自身がどこにいるかを推定しつつ、同時にその環境の地図を作成するという、人間にとっては当たり前のように行っている認知タスクを、コンピュータやロボットに行わせるための技術です。
なぜSLAMが重要なのでしょうか?例えば、自律移動ロボットが工場内を移動して荷物を運ぶ場合、ロボットは自分が今いる場所を正確に知る必要があり、同時に初めて訪れる場所であれば、将来的なナビゲーションのためにその場所の地図を作る必要があります。ARアプリケーションが現実空間に仮想オブジェクトを重ねて表示する場合、スマートフォンのカメラは自分がどの位置で、どの方向を向いているかをリアルタイムに知る必要があり、同時にその場の幾何学的構造(壁や床の位置など)を把握する必要があります。自動運転車が複雑な市街地を走行する場合、高精度な自己位置推定は必須であり、事前の高精細地図がない場所では地図を作成しながら走行することも求められます。
このように、SLAMは様々な応用分野で不可欠な基盤技術となっています。しかし、このタスクは非常に困難です。なぜなら、正確な地図がなければ自分の位置を正確に知ることは難しく、また、自分の位置が正確に分からなければ正確な地図を作成することも難しいという、まさに「鶏と卵」のような相互依存の関係にあるからです。SLAMは、この問題を同時に解決しようとするものです。
この記事では、SLAMの基本的な概念から始め、その処理パイプライン、主要なアルゴリズムのカテゴリ(フィルタリングベース、グラフベース)、そしてSLAMを構成する重要な技術要素(特徴点、データ関連付け、オドメトリ、ループ閉じ込み、最適化)について、基礎から詳細に解説します。さらに、代表的なVisual SLAMやLiDAR SLAMの種類、そして現在の課題と今後の展望にも触れます。
SLAMの基本的な概念
SLAMを理解するためには、まず自己位置推定(Localization)と地図作成(Mapping)という二つの要素を分けて考えることから始めます。
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自己位置推定(Localization):
これは、既知の地図が手元にある状態で、その地図上のどこに自分がいるかを推定するタスクです。例えば、カーナビがGPS情報と地図情報を使って現在地を表示するのも、一種の自己位置推定と言えます。ロボットの場合、センサー(カメラやLiDARなど)で周囲の環境を観測し、その観測データと事前に与えられた地図を照合することで自己位置を推定します。これは「位置決め」とも呼ばれます。 -
地図作成(Mapping):
これは、自分がどこにいるかが正確に分かっている状態で、周囲の環境をセンサーで観測し、その観測データを統合して環境の地図を作成するタスクです。自分がまっすぐ1メートル進んだことが分かっていれば、その分だけ観測データを移動させて地図上に配置していくことができます。
SLAMは、この「既知の地図上での自己位置推定」と「既知の自己位置での地図作成」を同時に行うものです。ロボットは未知の環境に放り込まれ、最初は自分の位置も環境の形も知りません。移動を開始すると、センサーは周囲の情報を捉えます。この情報を使って、ごく短い時間での自分の移動量(オドメトリ)を推定し、それに基づいて仮の自己位置と仮の地図を更新します。しかし、このオドメトリは必ず誤差を含んでおり、移動を続けるにつれてその誤差は蓄積し、自己位置も地図もどんどん不正確になっていきます。SLAMのアルゴリズムは、この誤差蓄積に対処し、より正確な自己位置と地図を同時に得ることを目指します。
SLAMに使用されるセンサー
SLAMシステムは、環境を観測するための様々なセンサーに依存しています。主要なセンサーには以下のようなものがあります。
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カメラ (Camera):
- 単眼カメラ (Monocular Camera): 1つのカメラ。安価で軽量ですが、深度情報(奥行き)を直接取得できません。連続する画像間の動きから深度やスケールを推定する必要があります。
- ステレオカメラ (Stereo Camera): 左右に配置された2つのカメラ。人間の両目のように、視差を利用して深度情報を取得できます。計算コストは単眼より高くなります。
- RGB-Dカメラ (RGB-D Camera): Microsoft KinectやIntel RealSenseなど。カラー画像(RGB)と深度情報(Depth)を同時に取得できます。比較的近距離での使用に適しています。
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LiDAR (Light Detection and Ranging):
レーザー光を照射し、その反射光が戻ってくるまでの時間から対象物までの距離を計測するセンサーです。- 2D LiDAR: 平面状にレーザーをスキャンし、周囲の障害物までの距離を2次元的に計測します。屋内ロボットなどでよく使用されます。
- 3D LiDAR: 立体的にレーザーをスキャンし、周囲の環境の3次元点群データを取得します。自動運転車などで広く使用されています。
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慣性計測ユニット (IMU – Inertial Measurement Unit):
加速度センサーとジャイロセンサーを含み、物体の加速度と角速度を計測します。短時間であれば高頻度かつ正確な動きの情報を提供しますが、時間経過とともにドリフト(誤差蓄積)が発生します。SLAMでは、カメラやLiDARのデータと組み合わせて、高速な動きや一時的なセンサーの欠損を補うためによく使用されます。 -
GPS (Global Positioning System):
屋外であれば比較的正確な位置情報を提供しますが、屋内や都市の峡谷(ビルに囲まれた場所)では使用できません。また、精度も数メートル程度であり、高精度なSLAMには単独では不十分です。 -
その他:
車輪エンコーダー(移動距離の計測)、ソナー(音波による距離計測)なども補助的に使用されることがあります。
これらのセンサーから得られるデータは、環境の様々な側面を捉えています。SLAMシステムは、これらのセンサー情報を適切に処理・統合(センサーフュージョン)して、自己位置と地図を構築します。
データ表現
SLAMにおいて、自己位置と環境地図をどのように表現するかは重要な要素です。
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自己位置(Pose):
通常、3次元空間における位置(x, y, z)と姿勢(回転:ロール、ピッチ、ヨー、またはクォータニオン、回転行列など)で表現されます。これは時間経過とともに変化するシステムの状態として扱われます。 -
環境地図(Map):
環境地図の表現方法は、使用するセンサーやSLAMの目的に応じて様々です。- Occupancy Grid Map: 環境を格子状(グリッド)に分割し、各セルが占有されているか(障害物があるか)、空いているか、未知かを示す2次元または3次元の地図。2D LiDAR SLAMでよく使用されます。
- Point Cloud Map: 3D LiDARやRGB-Dカメラで取得した点群データをそのまま、あるいはフィルタリングして蓄積した3次元地図。LiDAR SLAMやDense Visual SLAMでよく使用されます。
- Feature Map: 環境中の特徴点(Structure-from-Motionで推定された3次元点や、事前に配置されたマーカーなど)の位置の集合。Feature-based Visual SLAMでよく使用されます。
- Graph Map: 自己位置の軌跡をノードとし、連続する自己位置間の関係や、既知の場所に戻った際の関係をエッジで表現したグラフ。グラフベースSLAMの中間表現として重要です。
SLAMのパイプライン
多くのSLAMシステムは、いくつかの処理ステージからなるパイプライン構造を持っています。一般的なパイプラインは、大きくフロントエンド、バックエンド、そしてマッピングの3つの部分に分けられます。
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フロントエンド (Frontend):
センサーから入力される生のデータを処理し、連続するフレーム(時刻)間でのロボットの相対的な動き(オドメトリ)を推定し、バックエンドで利用するためのデータ(特徴点、対応関係、ローカルな地図断片など)を準備する役割を担います。- センサーデータ処理: カメラ画像の前処理(歪み補正、ノイズ除去など)、LiDAR点群のフィルタリングなどを行います。
- 特徴点抽出と追跡/マッチング: 画像であれば特徴点(SIFT, ORBなど)や直線、面などを抽出し、連続する画像間で対応する特徴点を見つけます。点群であれば、エッジ点や平面点などの特徴を抽出・マッチングします。ダイレクト法の場合は、特徴点ではなく画素値そのものを使用します。
- 相対姿勢推定(オドメトリ): 連続するフレーム間で見つかった特徴点や画素値の対応関係、あるいは点群のマッチング(ICPなど)を用いて、ロボットの相対的な位置と姿勢の変化(ローカルモーション)を推定します。これを視覚的オドメトリ(Visual Odometry, VO)や点群オドメトリ(Point Cloud Odometry)と呼びます。オドメトリは短距離では精度が高いですが、誤差が累積するため長距離の移動では信頼性が低下します。
- データ関連付け (Data Association): 現在のセンサー観測が、これまでに構築された地図上のどの部分に対応するか(例えば、現在の画像中の特徴点が地図上のどの3D点に対応するか)を見つけます。これはバックエンドでの最適化やループ閉じ込みに不可欠な情報です。
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バックエンド (Backend):
フロントエンドから送られてくる相対的な動きの推定値(オドメトリ)や、環境に関する観測データ(特徴点、ローカルマップなど)、そしてデータ関連付けの結果を受け取ります。これらの情報を基に、全体的な自己位置の軌跡と環境地図の整合性を最も高めるように、グローバルな最適化を行います。バックエンドの主な目的は、フロントエンドで発生した誤差の蓄積を抑え、一貫性のある自己位置と地図を生成することです。- 最適化 (Optimization): 全体的な自己位置の軌跡と、必要に応じて地図上の特徴点位置などを、観測データとの整合性が最大になるように調整します。これは通常、非線形最小二乗問題として定式化され、解かれます。
- 誤差蓄積とループ閉じ込み (Loop Closure): オドメトリの誤差は移動距離が長くなるにつれて蓄積し、ロボットの推定位置は実際の位置からどんどんずれていきます(ドリフト)。しかし、もしロボットが過去に訪れたことのある場所に戻ってきたことを検出できれば、その場所の過去の推定位置と現在の推定位置を結びつける「ループ閉じ込み」という制約を追加できます。バックエンドは、この新しい制約を用いて全体を再最適化し、誤差を空間全体に分散させることで、ドリフトを大幅に抑制し、グローバルに一貫性のある地図を生成します。
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マッピング (Mapping):
バックエンドで最適化された自己位置の軌跡と、フロントエンドからのセンサー観測データを用いて、最終的な環境地図を構築または更新します。地図の表現形式は、使用するSLAMアルゴリズムや目的に応じて異なります(点群地図、グリッド地図、特徴点地図など)。デンス(密)な地図が必要な場合は、バックエンドで得られた正確な自己位置情報を使って、複数のセンサー観測データを統合して高密度な地図を生成します。
主要なSLAMアルゴリズムのカテゴリ
SLAMアルゴリズムは、その問題をどのように定式化し、解くかによっていくつかの主要なカテゴリに分けられます。代表的なのは、フィルタリングベースの手法とグラフベースの手法です。
フィルタリングベース SLAM (Filtering-based SLAM)
フィルタリングベースの手法では、ロボットの現在の自己位置と(特徴点ベースの場合)環境中の特徴点位置を合わせたものを「システムの状態」とみなし、この状態を確率分布(通常はガウス分布)で表現します。そして、時間とともにシステムの状態がどのように変化するか(状態遷移モデル)と、センサーが環境をどのように観測するか(観測モデル)を用いて、ベイズフィルタの枠組みで逐次的に状態推定を行います。
最も古典的で代表的なフィルタリングベースSLAMは、Extended Kalman Filter (EKF) SLAMです。
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EKF SLAMの概要:
カルマンフィルタは、線形システムにおいて、ノイズを含む観測値から状態を推定するための最適なフィルタです。EKFは、このカルマンフィルタを非線形システムに拡張したもので、非線形な状態遷移モデルや観測モデルを、現在の推定値の周りで線形近似(ヤコビアンを使用)してカルマンフィルタを適用します。 -
EKF SLAMへの適用:
EKF SLAMでは、システムの状態ベクトルx_k
を、ロボットの自己位置x_v,k
と、地図上のM
個の特徴点の位置f_1,k, ..., f_M,k
を連結したものとして定義します。
x_k = [x_v,k^T, f_1,k^T, ..., f_M,k^T]^T
この状態ベクトルは、平均μ_k
と共分散行列Σ_k
を持つガウス分布で表現されます。処理は、時間ステップ
k
からk+1
に進む際に、以下の二つのステップを繰り返します。
1. 予測 (Prediction):
前回の状態推定値μ_k
,Σ_k
と、ロボットの制御入力またはオドメトリ情報を用いて、次の時刻k+1
でのシステムの状態を予測します。
μ_k+1 = f(μ_k, u_k)
(状態遷移モデル)
Σ_k+1 = F_k Σ_k F_k^T + Q_k
(共分散行列の更新)
ここでf
は非線形な状態遷移関数、u_k
は制御入力またはオドメトリ、F_k
はf
のヤコビアン、Q_k
はプロセスノイズの共分散行列です。- 更新 (Update):
時刻k+1
でセンサーが環境を観測します。この観測z_k+1
を用いて、予測された状態を補正し、より正確な状態推定値μ_k+1
,Σ_k+1
を得ます。
まず、現在の予測された状態μ_k+1
から、期待される観測h(μ_k+1)
を計算します(観測モデル)。
y = z_k+1 - h(μ_k+1)
(観測残差)
S = H_k+1 Σ_k+1 H_k+1^T + R_k+1
(観測予測共分散)
K = Σ_k+1 H_k+1^T S^-1
(カルマンゲイン)
ここでh
は非線形な観測関数、H_k+1
はh
のヤコビアン、R_k+1
は観測ノイズの共分散行列です。
カルマンゲインK
を用いて、状態の平均と共分散行列を更新します。
μ_k+1 = μ_k+1 + K y
Σ_k+1 = (I - K H_k+1) Σ_k+1
- 更新 (Update):
-
EKF SLAMの課題:
EKF SLAMは概念的にシンプルですが、いくつかの大きな課題があります。- 計算コスト: 状態ベクトルにはロボットの自己位置とすべての特徴点の位置が含まれるため、地図上の特徴点数
M
が増えるにつれて、状態ベクトルのサイズはO(M)
、共分散行列のサイズはO(M^2)
となります。共分散行列の更新にはO(M^2)
の計算が必要となり、大規模環境では計算負荷が非常に大きくなります。 - 線形性仮定: EKFは非線形関数を線形近似するため、非線形性が強い場合に精度が低下したり、発散したりする可能性があります。
- データ関連付け: どの観測がどの特徴点に対応するかを正確に判断する必要がありますが、これが誤ると大きく推定がずれる可能性があります。
- 単一仮説: 状態が単一のガウス分布で表現されるため、複数の可能性が存在する場合(例:データ関連付けに曖昧さがある場合)に対応が難しいです。
- 計算コスト: 状態ベクトルにはロボットの自己位置とすべての特徴点の位置が含まれるため、地図上の特徴点数
EKFの課題を克服するために、Unscented Kalman Filter (UKF) やParticle Filter (FastSLAMなど) を用いたSLAM手法も研究されましたが、一般的に大規模な環境でのスケーラビリティに限界がありました。
グラフベース SLAM (Graph-based SLAM)
グラフベースの手法は、特に大規模環境でのSLAMにおいて主流となっています。この手法では、SLAM問題をグラフとして表現し、そのグラフ全体の整合性を最適化することで解きます。
-
グラフの構造:
グラフベースSLAMにおけるグラフは、ノードとエッジから構成されます。- ノード (Nodes): 通常、ロボットが特定の場所を訪れた際の自己位置(姿勢)を表します。あるいは、キーフレームと呼ばれる重要な画像フレームのカメラ姿勢などです。
- エッジ (Edges): 二つのノード間の「拘束条件(Constraint)」を表します。これは、ある場所から別の場所へのロボットの相対的な動き(オドメトリ)や、同じ場所を異なる視点から観測した際の対応関係(ループ閉じ込み)から得られる相対的な位置・姿勢関係です。各エッジには、その拘束条件の推定値と、その信頼度(共分散行列)が付与されます。
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最適化問題の定式化:
グラフベースSLAMの目的は、すべてのノード(自己位置)の未知の値を、すべてのエッジ(拘束条件)をできるだけ満たすように決定することです。これは、拘束条件からの誤差の二乗和を最小化する非線形最適化問題として定式化されます。
argmin Σ_i,j || f(x_i, x_j) - z_i,j ||^2_Σ_i,j
ここでx_i
,x_j
はノードi
,j
の未知の自己位置(姿勢)、z_i,j
はノードi
からノードj
への観測された相対的な拘束条件、f
はx_i
とx_j
から予測される相対的な拘束条件を計算する関数、||v||^2_Σ = v^T Σ^-1 v
は誤差v
に共分散行列Σ
で重み付けをしたノルムです。
この問題は、制約付き非線形最小二乗問題であり、Levenberg-Marquardt法やGauss-Newton法といった反復最適化アルゴリズムを用いて解かれます。 -
ポーズグラフ最適化 (Pose Graph Optimization):
グラフベースSLAMの代表的な形式の一つです。ノードはロボットの自己位置(姿勢)のみを表し、環境地図上の特徴点の位置は直接最適化の対象とはしません(地図作成は最適化された姿勢を使って別途行われます)。エッジは、連続する姿勢間のオドメトリや、ループ閉じ込みによって得られた遠隔の姿勢間の相対的な拘束条件です。
ポーズグラフ最適化の利点は、最適化される変数の数が自己位置の数(フロントエンドで処理したキーフレーム数など)に比例するため、特徴点数に依存するEKF SLAMよりも大規模な環境にスケーラブルであることです。 -
バンドル調整 (Bundle Adjustment, BA):
主にVisual SLAMで使用される、より高精度なグラフベース最適化手法です。ノードはカメラ姿勢と環境中の3次元点(特徴点)位置の両方を含みます。エッジは、特定のカメラ姿勢から特定の3次元点が画像中のどの位置に観測されたか、という観測データです。BAは、すべてのカメラ姿勢とすべての3次元点位置を同時に最適化することで、観測データとの整合性を最も高めるように調整します。
BAは非常に高い精度が得られますが、最適化される変数の数(カメラ姿勢数 + 3D点数)が多くなるため、計算コストが高くなりがちです。しかし、問題の構造(観測行列のスパース性)を利用することで、効率的な計算が可能となっています(Schur Complementなど)。 -
フィルタリングベースとグラフベースの比較:
| 特徴 | フィルタリングベース SLAM | グラフベース SLAM |
| :———— | :————————————– | :—————————————— |
| 表現 | 状態を確率分布(単一のピーク)で表現 | 関係性をグラフで表現(拘束条件) |
| 計算 | 逐次処理(新しいデータが来るたびに更新) | バッチ処理(ある程度のデータをまとめて最適化) |
| スケーラビリティ | 特徴点数に対してO(M^2)
で計算コスト増加 | 自己位置数に対して比較的スケーラブル |
| ループ閉じ込み | 困難(状態空間が広がりすぎるため) | 自然に制約として組み込める |
| 計算効率 | 各ステップは一定時間だが、全体でコスト増 | バッチ最適化に時間がかかることがある |
| 精度 | 非線形性が強い場合に低下する可能性がある | 大域的な最適化で高い精度が得やすい |
現在では、グラフベースの手法が大規模環境や高精度なSLAMの主流となっています。多くの最先端のSLAMシステムは、フロントエンドで相対オドメトリを推定し、バックエンドでその結果をグラフとして構築・最適化するという、両者の利点を組み合わせたハイブリッドなアプローチを取っています。
SLAMの重要技術要素
SLAMシステムを構築する上で、いくつかの重要な技術要素があります。これらはフロントエンドやバックエンドの各ステージで利用されます。
特徴点抽出と追跡/マッチング (Feature Extraction and Tracking / Matching)
Visual SLAMにおいて特に重要です。画像中から安定して検出・追跡できる特徴的なパターン(コーナー、エッジ、テクスチャなど)を「特徴点」として利用します。
* 特徴点検出器 (Feature Detector): FAST, Harris Corner, Shi-Tomasi Cornerなどのアルゴリズムを用いて、画像中の特徴点の位置を検出します。
* 特徴量記述子 (Feature Descriptor): 検出された特徴点の周囲の画素情報から、その特徴点を一意に識別できるような数値ベクトル(記述子)を計算します。SIFT, SURF, ORB (Oriented FAST and Rotated BRIEF) などが代表的です。ORBはリアルタイム処理に適した高速な記述子です。
* 特徴点追跡 (Feature Tracking): 連続する画像間で、同じ特徴点が画像のどこに移動したかを追跡します。Lucas-Kanade法などのオプティカルフローベースの手法や、記述子のマッチングによって行われます。
* 特徴点マッチング (Feature Matching): 異なる画像間(例:現在の画像と地図上の特徴点、あるいは現在の画像と過去のキーフレーム)で、対応する特徴点ペアを見つけます。記述子の類似度に基づいてマッチングを行い、RANSAC (Random Sample Consensus) などのロバスト推定手法を用いて、誤った対応(外れ値)を除去します。
LiDAR SLAMでも、点群データからエッジ点や平面点といった幾何学的な特徴を抽出し、フレーム間で対応を見つける手法が用いられます(LOAMなど)。
データ関連付け (Data Association)
現在のセンサー観測が、過去の観測や既存の地図上のどの要素に対応するかを特定するタスクです。これが誤ると、地図に歪みが生じたり、自己位置推定が大きくずれたりします。
* 最近傍探索: 観測された特徴量の記述子と、地図上の特徴量の記述子との距離が最も近いものを見つける基本的な方法です。
* 検証ステップ: 最近傍が見つかった後、幾何学的な制約(例:エピポーラ幾何)などを用いて、その対応が正しいかどうかを検証します。
* 確率的データ関連付け (Probabilistic Data Association): 複数の可能性を考慮し、それぞれの対応の確率を計算して加重平均などで状態を更新する手法です(フィルタリングベースSLAMで利用されることが多い)。
* Multi-hypothesis Tracking (MHT): データ関連付けの曖昧さに対して、複数の可能性のある対応仮説を追跡する手法。計算コストが高いです。
データ関連付けは、特に見た目が類似した場所が多い環境や、動的な物体が多い環境では非常に困難な課題となります。
相対姿勢推定(オドメトリ)(Relative Pose Estimation / Odometry)
連続するセンサーデータから、その間のロボットの相対的な動き(位置と姿勢の変化)を推定する技術です。
* 視覚的オドメトリ (Visual Odometry, VO): 連続するカメラ画像ペアから相対姿勢を推定します。
* 2D-to-2D: モノラル画像ペアの場合。特徴点対応からEssential MatrixまたはFundamental Matrixを計算し、それらから相対姿勢を分解します。スケールが不定となるという課題があります。
* 3D-to-3D: ステレオ画像やRGB-Dカメラ、または過去のキーフレームから得られた3D点と現在のフレームで検出された3D点との対応がある場合。対応する3D点群間で相対的な剛体変換を求めます。ICP (Iterative Closest Point) アルゴリズムなどが使用されます。
* 2D-to-3D: 現在の画像中の特徴点が、地図上の既知の3D点に対応する場合。PnP (Perspective-n-Point) 問題として解かれ、カメラの絶対姿勢が計算できます。これが絶対自己位置推定やループ閉じ込み後の姿勢調整に利用されます。
* 点群オドメトリ (Point Cloud Odometry): 連続するLiDAR点群データ間で相対姿勢を推定します。ICPや、点群から抽出した特徴(エッジ、平面)のマッチングなどが用いられます。
* 慣性オドメトリ: IMUの加速度・角速度積分により、短時間での相対運動を推定します。ドリフトしやすいため、他のセンサーと組み合わせて使用されます。
オドメトリはフロントエンドの主要な出力であり、バックエンドのグラフを構築する際のエッジとして利用されます。
ループ閉じ込み (Loop Closure)
ロボットが過去に訪れたことのある場所に戻ってきたことを検出し、その情報を利用して全体的な地図と自己位置の誤差を修正するプロセスです。SLAMにおいて、広範囲での正確な地図構築と自己位置推定を実現するために最も重要な要素の一つです。
* 検出 (Detection):
* Place Recognition: 現在の観測データ(画像や点群)が、過去に訪れたどの場所のデータと似ているかを検出します。Bag of Visual Words (BoW) モデルなどの画像記述子や、SeqSLAMのようなシーケンス比較手法、または学習ベースの手法が用いられます。
* Geometric Verification: Place Recognitionで候補が見つかった場合、その候補場所のデータと現在のデータとの間で特徴点や点群の幾何学的な対応を詳細に確認し、実際に同じ場所であるかどうかを検証します(例:相対姿勢を計算し、その変換でどれだけ一致するかを見る)。
* 実行 (Execution):
ループ閉じ込みが検出・検証されたら、それは現在の自己位置と過去の自己位置の間に新しい「拘束条件」としてバックエンドのグラフに追加されます。バックエンドの最適化器は、この新しい制約を用いて自己位置の軌跡と地図全体を再計算し、ループに含まれる誤差を空間全体に分散させます。これにより、長時間の移動で蓄積した誤差が解消され、地図の歪みが修正されます。
バックエンド最適化 (Backend Optimization)
フロントエンドで得られた相対的な動き(オドメトリ)やループ閉じ込みの情報から構築されたグラフを最適化し、グローバルに整合性の取れた自己位置の軌跡と地図を計算します。
* 姿勢グラフ最適化 (Pose Graph Optimization): 前述の通り、自己位置の軌跡をノード、相対的な拘束条件をエッジとしたグラフを構築し、非線形最適化によってノード(姿勢)の最適な値を求めます。姿勢はSO(3)やSE(3)といった特殊なリー群の要素として扱われることが多く、これらの群上での最適化手法が用いられます。g2oやCeres Solverといったライブラリがよく使用されます。
* バンドル調整 (Bundle Adjustment, BA): Visual SLAMにおける最も強力な最適化手法の一つです。カメラ姿勢と3D点位置を同時に最適化し、すべての観測が理想的なピンホールカメラモデルに従うと仮定した場合に生成される画像上の点位置と、実際の観測位置との差(再投影誤差)の総和を最小化します。BAは計算コストが高いですが、高い精度が得られるため、精度が重視される場合にバックエンドやループ閉じ込み後の全体最適化に使用されます。問題のスパース性を利用した効率的なソルバーが存在します。
多くの現代的なVisual SLAMシステム(ORB-SLAMなど)では、高速なオドメトリ推定(VO)を行うフロントエンド、ループ閉じ込み検出と姿勢グラフ最適化を行うバックエンド、そして局所的なBAや大域的なBAを実行するスレッドなど、複数のスレッドでこれらの処理を並行して実行する構成が一般的です。
Visual SLAMの種類
Visual SLAMはカメラを主要センサーとして使用するSLAMです。主に以下のような種類があります。
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Sparse SLAM (Feature-based SLAM):
画像中の少数の「特徴点」のみを使用して、自己位置推定と地図作成を行います。地図はこれらの特徴点の3次元位置の集合(Feature Map)で構成されることが多いです。- 代表的なアルゴリズム: PTAM (Parallel Tracking and Mapping), ORB-SLAM, LSD-SLAM (Semi-Denseだが特徴点も利用)
- 特徴: 計算コストが比較的低い、リアルタイム性に優れる。しかし、テクスチャが少ない環境や繰り返しパターンの多い環境に弱い。地図がスパース(疎)なので、ナビゲーションや障害物回避には不十分な場合がある。
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Dense SLAM:
画像中のすべての画素の輝度値や深度値(RGB-Dカメラの場合)を使用して、自己位置推定と密な環境地図(Occupancy Grid MapやPoint Cloud Map)を作成します。- 代表的なアルゴリズム: KinectFusion, LSD-SLAM (一部), DSO (Direct Sparse Odometry)
- 特徴: 密な地図が得られるため、ロボットの操作やナビゲーションに有用。テクスチャレスな場所でも比較的安定しやすい(ダイレクト法の場合)。しかし、計算コストが非常に高い(GPU利用が一般的)。RGB-Dカメラに依存する場合が多く、対応距離に制限がある。
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Semi-Dense SLAM:
Dense SLAMとSparse SLAMの中間的なアプローチです。画像中の勾配が強い部分(エッジなど)のみを利用して自己位置推定と地図作成を行います。- 代表的なアルゴリズム: SVO (Semi-Direct Visual Odometry), LSD-SLAM
- 特徴: Sparse SLAMよりも密な情報を使用し、Dense SLAMよりも計算コストが低い。Sparse SLAMの弱点であるテクスチャレスに比較的強い。
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Direct Method vs. Feature-based Method:
Visual SLAMのフロントエンドにおけるオドメトリ推定手法は、大きく特徴点ベースの手法とダイレクト法に分けられます。- Feature-based Method: 前述の通り、画像から特徴点を抽出し、特徴点間の対応関係から幾何学的な計算(Fundamental/Essential Matrix計算、PnP、ICPなど)によって相対姿勢を推定します。誤った対応にロバストな手法(RANSACなど)と組み合わせやすいです。
- Direct Method: 特徴点抽出・記述子計算を行わず、画像間の画素値の輝度変化や勾配情報そのものを直接使用して、推定された相対姿勢によって画像がどのように変化するかを予測し、実際の画像との差(輝度誤差)が最小になるように姿勢を最適化します。LSD-SLAMやDSOが代表的です。特徴点抽出が不要な分、テクスチャレスな場所でも動きを捉えやすい、画像がブレて特徴点が検出できない場合にも対応しやすいといった利点があります。しかし、急激な輝度変化(照明の変化など)に弱いです。
多くの最新のVisual SLAMシステムは、これらの手法を組み合わせて、ロバスト性と精度、リアルタイム性をバランスさせています。例えばORB-SLAMは特徴点ベースの手法ですが、フロントエンドでのトラッキングには予測位置からの局所探索や光学的フローも組み合わせ、バックエンドではグラフ最適化とBAを使用しています。
LiDAR SLAMの種類
LiDAR SLAMはLiDARセンサーを主要センサーとして使用するSLAMです。
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2D LiDAR SLAM:
2D LiDARセンサーを使用し、主に2次元平面上の自己位置推定と地図作成を行います。- 代表的なアルゴリズム: gmapping, Hector SLAM, Karto SLAM
- 地図表現: 通常、Occupancy Grid Map(占有格子地図)が使用されます。
- 特徴: 計算コストが比較的低い、屋内環境のナビゲーションに広く利用される。しかし、3次元的な環境変化には対応できない、地面からの反射やガラス面などに弱い場合がある。Hector SLAMのようにIMUと組み合わせて高速な動きにも対応するものもあります。
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3D LiDAR SLAM:
3D LiDARセンサーを使用し、3次元空間における自己位置推定と地図作成を行います。- 代表的なアルゴリズム: LOAM (LiDAR Odometry and Mapping), LeGO-LOAM (LOAM on Ground Optimizaion), HDL SLAM, LIO-SAM (LiDAR-IMU-Odometry-SLAM)
- 地図表現: Point Cloud Mapが一般的です。環境全体の3次元形状を密に捉えることができます。
- 特徴: 高精度な3次元地図を構築できる、奥行き情報に強い、照明変化に影響されない。しかし、センサーが高価、点群処理の計算コストが高い。点群がスパースになりやすい遠距離や、反射率の低い物体には弱い場合がある。LOAM系アルゴリズムは、点群からエッジや平面といった特徴を抽出し、これらを利用して高精度なオドメトリとマッピングを実現しています。
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Visual-LiDAR SLAM (マルチセンサーフュージョン):
Visual SLAMとLiDAR SLAMの利点を組み合わせたものです。カメラはテクスチャ情報に強く、LiDARは正確な距離情報や3次元形状に強いという、互いに補完的な情報を利用します。- 特徴: 両センサーの弱点を補い合い、よりロバストで正確なSLAMを実現できる可能性が高い。しかし、センサー間のキャリブレーション(位置合わせ)が必要、異なる種類のデータを統合するフュージョン手法が複雑になる。最近の研究で活発な分野です。
課題と今後の展望
SLAM技術は目覚ましい発展を遂げていますが、まだ解決すべき課題も多く、研究開発が続けられています。
課題 (Challenges):
- 動的環境 (Dynamic Environments): 人や車、ドアの開閉など、環境中に動く物体が存在する場合、それらを静的な背景と区別し、地図作成や自己位置推定から除外する必要があります。動体は誤ったデータ関連付けや地図の歪みの原因となります。
- 視覚的な変化 (Lighting Changes, Textureless Areas): カメラベースのSLAMは、照明条件の変化やテクスチャが少ない場所(白い壁など)に弱いです。これにより特徴点の検出や追跡が困難になります。
- 計算リソースの制約(リアルタイム処理): スマートフォンや小型ドローンなど、計算能力が限られたプラットフォームで、大規模環境における高精度なSLAMをリアルタイムで実行することは依然として挑戦です。
- スケール、漂流 (Scale Drift, Drift): モノラルVisual SLAMではスケールが不定となるため、正確な大きさが分かりません。また、オドメトリ誤差は常に蓄積(ドリフト)し、ループ閉じ込みがないと地図や自己位置が歪んでいきます。
- ロバスト性 (Robustness): 外れ値の観測、センサーの一時的な故障、急激な動き、未知の環境変化など、様々な困難な状況下でも安定して動作する必要があります。
- 長期的な安定性 (Long-term Stability): 数週間、数ヶ月といった長期間にわたって同じ地図を使用する場合、環境の変化(家具の移動、工事など)に対応し、地図を維持・更新していく必要があります。
- セマンティック情報 (Semantic SLAM): 単に環境の幾何学的形状だけでなく、それが何であるか(壁、床、椅子、人など)といった意味論的な情報も同時に理解し、活用するセマンティックSLAMへの関心が高まっています。これにより、より高度なナビゲーションや人間とのインタラクションが可能になります。
今後の展望 (Future Directions):
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ディープラーニングの活用 (Deep Learning in SLAM):
ディープラーニングは、画像認識や特徴抽出、セマンティックセグメンテーションなどで大きな成果を上げており、SLAMの様々な要素技術に応用されています。- 特徴点検出・記述子の高性能化。
- データ関連付けやループ閉じ込みにおけるPlace Recognitionの精度向上。
- 学習ベースの視覚的オドメトリ推定(End-to-end Learning)。
- 動体検出と追跡による動的環境への対応。
- セマンティック情報の抽出とSLAMへの統合(Semantic SLAM)。
- 学習ベースのバックエンド最適化や、グラフ構築における学習の活用。
今後のSLAMは、従来の幾何学的手法とディープラーニングを組み合わせたハイブリッドなアプローチが主流になると考えられます。
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マルチセンサーフュージョン (Multi-Sensor Fusion):
カメラ、LiDAR、IMU、GPS、イベントカメラなど、複数のセンサーの情報を統合することで、各センサーの弱点を補い合い、あらゆる環境でロバストかつ高精度なSLAMを実現することを目指します。特にVisual-LiDARフュージョンは自動運転などで重要な技術です。 -
クラウド/協調型SLAM (Collaborative SLAM):
複数のロボットやデバイスが同時にSLAMを実行し、情報を共有・統合して、より大規模で正確な地図を効率的に構築する技術です。工場や倉庫、大規模な公共空間などで応用が期待されます。 -
高密度・高精度地図の生成:
AR/VRや自動運転の高度化には、単なる位置情報だけでなく、環境の詳細な3次元構造やセマンティック情報を含む高密度で高精度な地図が必要です。Dense SLAMやSemantic SLAM、マルチセンサーフュージョンの進化により、こうした地図のリアルタイム生成が可能になると期待されます。 -
イベントカメラSLAM:
ピクセルごとに輝度変化を捉えるイベントカメラは、従来のカメラよりも高速な動きや広いダイナミックレンジに対応できます。イベントカメラを用いたSLAMは、高速移動環境やHDR環境でのロバストなSLAMとして注目されています。
まとめ
SLAM技術は、ロボットが自律的に環境を認識し、行動するための基礎であり、AR/VRや自動運転といった革新的な技術を支える要石です。未知の環境で自己位置を推定しつつ地図を作成するという、人間にとっては直感的なタスクをコンピュータに行わせるこの技術は、「自己位置推定と環境地図作成の同時実行」という本質的な難しさを内包しています。
この記事では、SLAMの基本的な概念から、センサー、データ表現、そしてデータ処理のパイプライン(フロントエンド、バックエンド、マッピング)について解説しました。また、問題を解くアプローチとして、状態を確率分布で逐次推定するフィルタリングベースの手法(特にEKF SLAM)と、関係性をグラフで表現し全体最適化を行うグラフベースの手法について、その原理と特徴、利点・欠点を比較しました。
さらに、SLAMシステムを構成する重要な要素技術として、画像や点群から環境の特徴を捉える特徴点抽出・追跡、センサー観測と地図の対応をとるデータ関連付け、連続データから相対運動を推定するオドメトリ、誤差蓄積を解消するループ閉じ込み、そして全体の一貫性を保つバックエンド最適化(姿勢グラフ最適化、バンドル調整)について詳しく説明しました。
代表的なVisual SLAM(Sparse, Dense, Semi-Dense, Feature-based, Direct)とLiDAR SLAM(2D, 3D)の種類にも触れ、それぞれの特性と応用分野を示しました。
最後に、動的環境、計算リソース、ロバスト性といった現在のSLAMが直面する課題を挙げるとともに、ディープラーニング、マルチセンサーフュージョン、協調型SLAM、高密度・高精度地図、イベントカメラといった今後の研究開発の方向性について展望しました。
SLAM技術は、その基礎理論が確立されつつも、新しいセンサーやアルゴリズム、そしてディープラーニングのような強力なツールを取り込むことで、現在も進化を続けています。様々な応用分野への展開は加速しており、私たちの生活の中でSLAMが果たす役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。この記事が、SLAMアルゴリズムの基礎を理解するための一助となれば幸いです。