Macで「command not found: brew」と出た時の究極の対処法ガイド
Macで開発環境を整えたり、様々なツールをインストールしたりする際に、Homebrewは非常に便利な存在です。しかし、いざHomebrewを使おうとしてターミナルに brew
と入力した際に、見慣れないエラーメッセージ「command not found: brew
」が表示されてしまい、困惑した経験がある方も多いのではないでしょうか。このエラーは、Homebrewが正しくインストールされていないか、あるいはインストールされていてもシステムがその場所を見つけられない場合に発生します。
本記事では、この「command not found: brew
」というエラーが発生する原因を詳細に解説し、初心者の方でも確実に問題を解決できるように、具体的な対処法をステップバイステップで説明します。約5000語のボリュームで、Homebrewの基本からPATH環境変数の設定、さらにはApple Silicon MacとIntel Macでの違いまで、あらゆる角度から掘り下げていきます。この記事を読めば、エラーの原因を特定し、Homebrewを再び使えるようになるだけでなく、Macのシェル環境やパッケージ管理に関する理解も深まるでしょう。
1. はじめに:Homebrewとは何か、なぜ使うのか、そしてエラーの意味
Macユーザーにとって、Homebrewはもはやデファクトスタンダードと言えるほど普及しているパッケージマネージャーです。しかし、「そもそもHomebrewって何?」「なぜこれが必要なの?」と思っている方もいるかもしれません。まず、Homebrewの基本的な概念と、今回直面しているエラーメッセージ「command not found: brew
」が具体的に何を意味するのかを理解することから始めましょう。
1.1. Homebrewとは? Macにおけるパッケージ管理の革命
Homebrewは、macOS(そしてLinux)向けの無料かつオープンソースのパッケージ管理システムです。伝統的に、Macユーザーがソフトウェアをインストールするには、App Storeを利用するか、開発元のウェブサイトからインストーラー(.dmg
ファイルなど)をダウンロードして手動でインストールする必要がありました。しかし、開発者向けのツールやライブラリ、特定のコマンドラインユーティリティなどは、このような方法では管理が煩雑になりがちです。特に、依存関係のある複数のソフトウェアをインストールしたり、それらを最新の状態に保ったり、不要になったものを安全に削除したりする作業は手間がかかり、エラーも起きやすくなります。
ここでHomebrewの出番です。Homebrewを使えば、ターミナル上で簡単なコマンド一つで様々なソフトウェアをインストール、管理、アップデート、削除できます。例えば、Pythonの特定バージョン、Node.js、Git、wget、imagemagickといったコマンドラインツールやライブラリ、さらにはGUIアプリケーション(Google Chrome, Slack, Visual Studio Codeなど、これらはCasksと呼ばれます)もHomebrewでインストール・管理可能です。
Homebrewの哲学は「Homebrewはシンプルであるべき」というものです。複雑なビルドプロセスや依存関係の解決をHomebrewが自動で行ってくれるため、ユーザーは使いたいソフトウェアの名前を指定するだけで済みます。これにより、開発環境の構築や管理が劇的に効率化されます。
他のパッケージマネージャーとしてMacportsやFinkなども存在しますが、HomebrewはMacのエコシステムに合わせて設計されており、macOSの標準的なディレクトリ構造(特に/usr/local
や、Apple Silicon Macでの/opt/homebrew
)を利用するため、システムへの干渉が少なく、多くのMacユーザーにとって最も扱いやすい選択肢となっています。
Homebrewの主要なコンポーネントには以下があります。
- Formulae (フォーミュラ): コマンドラインツールやライブラリをインストールするための定義ファイルです。Rubyで記述されており、ソフトウェアのダウンロード元、ビルド方法、依存関係などが記述されています。
- Casks (カスク): GUIアプリケーションをインストール・管理するための定義ファイルです。
.app
ファイルをアプリケーションディレクトリにコピーするなどの作業を自動化します。 - Taps (タップ): 標準のHomebrewリポジトリに含まれていないFormulaeやCasksを管理するための外部リポジトリです。例えば、特定の企業が自社製のツールをHomebrewで配布したい場合に、Tapsを作成します。
これらのコンポーネントを通じて、HomebrewはMac上でのソフトウェア管理を劇的に簡素化し、開発者だけでなく多くのMacユーザーにとって不可欠なツールとなっています。
1.2. 「command not found: brew」エラーは何を意味するのか?
さて、本題のエラーメッセージ「command not found: brew
」です。このメッセージは、あなたがターミナルで入力した「brew
」というコマンド名の実行ファイルを、現在使用しているシェル(ターミナル上でコマンドを解釈・実行するプログラム。Macのデフォルトはzsh)が見つけられなかったことを意味します。
OSがコマンドを実行する際、システムは特定のディレクトリのリスト(これが「PATH環境変数」と呼ばれるもの)を順番に探し、入力されたコマンド名と一致する実行ファイルを見つけようとします。例えば、ls
コマンドを実行すると、システムは/usr/bin/ls
や/bin/ls
といった既知の場所にls
というファイルがあるかを探し、見つかればそれを実行します。
「command not found: brew
」というエラーが出るということは、システムがそのPATH環境変数で指定されたすべてのディレクトリを探しても、「brew
」という名前の実行ファイルを見つけられなかった、ということです。
このエラーが発生する主な理由は以下のいずれかです。
- HomebrewがMacにまったくインストールされていない。
- Homebrewはインストールされているが、その実行ファイル(
brew
コマンド本体)があるディレクトリが、現在のシェルのPATH環境変数に含まれていない。 - Homebrewのインストール中に何らかのエラーが発生し、インストールが完了していない、あるいは破損している。
- macOSのアップデートなどによって、環境設定(特にPATH)が変更されてしまった。
次のセクションから、これらの原因を特定し、それぞれに対する具体的な対処法を詳しく見ていきましょう。
2. 対処法1:Homebrewが本当にインストールされているか確認する
「command not found: brew
」エラーが出た場合、まず最初にHomebrewがあなたのMacにインストールされているかどうかを確認しましょう。インストールされていると思い込んでいても、実はまだだった、あるいは過去に削除してしまったという可能性もあります。
Homebrewのインストール先は、お使いのMacのチップによって異なります。
- Intel Macの場合: 通常、
/usr/local/bin/brew
にインストールされます。/usr/local
は、ユーザーが追加するソフトウェアのための伝統的な場所です。 - Apple Silicon Mac (M1, M2, M3 チップなど) の場合: 通常、
/opt/homebrew/bin/brew
にインストールされます。Apple Silicon Macでは、システムファイルとユーザーファイルをより明確に分離するため、新しいパス/opt/homebrew
が推奨されています。
このパスの違いは、後述するPATH環境変数の設定において非常に重要になります。
では、これらのパスにbrew
コマンドが存在するか確認してみましょう。ターミナルを開いて、以下のコマンドを試してみてください。
2.1. which brew
コマンドを使う
which
コマンドは、引数に指定したコマンドがPATH環境変数内のどのディレクトリに存在するかを表示してくれるコマンドです。HomebrewのパスがPATHに含まれていれば、このコマンドで確認できます。
bash
which brew
このコマンドを実行した結果は以下のいずれかになります。
- パスが表示される(例:
/usr/local/bin/brew
または/opt/homebrew/bin/brew
):brew
コマンドが見つかりました。Homebrewはインストールされており、そのパスは現在のシェルのPATH環境変数に含まれています。この場合、「command not found
」エラーは発生しないはずです。もしエラーが出ているのにパスが表示された場合は、ターミナルを一度閉じて開き直すか、後述のPATH設定の反映を試みてください。 - 何も表示されない、あるいは「
brew not found
」のようなメッセージが表示される:which
コマンドは、現在のPATH設定ではbrew
コマンドを見つけられませんでした。これは、Homebrewがインストールされていないか、インストールされていてもそのパスがPATHに含まれていないかのどちらかを示唆しています。
2.2. ファイルが存在するか手動で確認する
which
コマンドで何も表示されなかった場合でも、Homebrewがインストールされている可能性はゼロではありません。PATH設定が誤っているだけかもしれません。そこで、Homebrewの典型的なインストール先にbrew
ファイルが実際に存在するかを手動で確認してみましょう。
まずはIntel Macのデフォルトパスを確認します。
bash
ls /usr/local/bin/brew
Apple Silicon Macの場合は、以下のパスを確認します。
bash
ls /opt/homebrew/bin/brew
これらのコマンドを実行した結果も以下のいずれかになります。
- ファイルの詳細が表示される(例:
-rwxr-xr-x ... /usr/local/bin/brew
): 指定したパスにbrew
という名前のファイルが存在します。これは、Homebrew自体はインストールされている可能性が高いことを示しています。問題はPATH環境変数の設定にあると考えられます。この場合は、「対処法3: PATH環境変数を設定・修正する」に進んでください。 - 「
No such file or directory
」のようなエラーメッセージが表示される: 指定したパスにbrew
という名前のファイルが見つかりません。これは、HomebrewがあなたのMacにインストールされていない可能性が非常に高いことを示しています。この場合は、「対処法2: Homebrewを正しくインストールする」に進んでください。
2.3. 確認結果のまとめ
which brew
でパスが表示された ➡️ Homebrewはインストール済みでPATH設定もOKなはず。エラーが出ている場合はターミナル再起動や設定反映を確認。which brew
で何も表示されない かつls /usr/local/bin/brew
もls /opt/homebrew/bin/brew
も「No such file or directory
」 ➡️ Homebrewはインストールされていない。➡️ 対処法2へ。which brew
で何も表示されない しかしls /usr/local/bin/brew
またはls /opt/homebrew/bin/brew
でファイルが見つかった ➡️ Homebrewはインストールされているが、PATH設定が誤っている。➡️ 対処法3へ。
3. 対処法2:Homebrewを正しくインストールする
HomebrewがあなたのMacにインストールされていないことが確認できた場合、またはインストールが破損していると思われる場合は、Homebrewを正しくインストールし直す必要があります。Homebrewのインストールは非常に簡単で、公式ウェブサイトに記載されているスクリプトを実行するのが最も推奨される方法です。
3.1. 公式インストールスクリプトを使用する (推奨)
Homebrewの公式インストールスクリプトは、GitHub上にホストされており、curl
コマンドを使ってダウンロードし、そのままシェルにパイプして実行します。このスクリプトは、Macのアーキテクチャ(IntelかApple Siliconか)を自動的に判別し、適切な場所にHomebrewをインストールしてくれます。
インストール手順は以下の通りです。
- ターミナルを開く: Spotlight検索(Command + Space)で「ターミナル」と入力してEnterキーを押すか、Finderの「アプリケーション」フォルダ > 「ユーティリティ」フォルダから「ターミナル」を開きます。
-
インストールコマンドをコピー&ペーストして実行する: Homebrewの公式ウェブサイト(
https://brew.sh/
)にアクセスし、表示されているインストールコマンドをコピーします。または、以下に示す最新のインストールコマンドを直接ターミナルに貼り付けてEnterキーを押します。bash
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"- コマンドの内容解説:
/bin/bash -c "..."
: この部分で、後続の文字列を/bin/bash
というシェルに渡して実行させます。curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh
: これは、指定されたURL(Homebrewのインストールスクリプトの生ファイル)から内容をダウンロードするためのcurl
コマンドです。-f
: エラーが発生した場合にサイレントに失敗します(HTMLエラーページなどを出力しません)。-s
: サイレントモード。プログレスバーなどを表示しません。-S
: サイレントモードでも、エラーが発生した場合はエラーメッセージを表示します(-s
と併用されることが多い)。-L
: リダイレクトがある場合に、そのリダイレクト先に追従します。
$(...)
: コマンド置換と呼ばれる機能で、括弧内のコマンドを実行し、その標準出力を外側のコマンド(ここでは/bin/bash -c
)の引数として渡します。つまり、ダウンロードしたスクリプトの内容が/bin/bash
に渡されて実行されます。
- コマンドの内容解説:
-
インストールの指示に従う: コマンドを実行すると、スクリプトはいくつかの確認を行います。
- インストールされる内容の概要が表示されます。問題なければEnterキーを押して続行します。
- パスワードの入力を求められます。これは、インストール先のディレクトリ(
/usr/local
や/opt/homebrew
)にファイルを書き込むために管理者権限が必要だからです。Macのログインパスワードを入力し、Enterキーを押します(入力しても画面上には何も表示されませんが、正しく入力されています)。 - インターネットからファイルをダウンロードするため、ネットワーク接続が必要です。ファイアウォールやプロキシを使用している場合は、Homebrewが必要とする接続(特にGitHubへのHTTPS接続)が許可されていることを確認してください。
- インストールにはしばらく時間がかかります。進行状況が表示されるので確認してください。
-
インストールの完了を確認する: インストールが正常に完了すると、成功した旨のメッセージが表示されます。特に重要なのが、インストール後に表示される「Next steps」またはそれに類する指示です。 ここには、Homebrewの実行ファイルをPATHに追加するためのコマンドが具体的に書かれています。
-
Apple Silicon Macの場合のTypicalなメッセージ例:
“`
==> Next steps:- Run
brew help
to get started - Add Homebrew to your PATH in /Users/your_username/.zprofile:
echo ‘eval “$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)”‘ >> /Users/your_username/.zprofile
eval “$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)”
``
/opt/homebrew/bin
このメッセージは、「というパスをPATHに追加するために、指定されたコマンドを
.zprofile`ファイルに書き込み、現在のシェルセッションで実行してください」という意味です。
- Run
-
Intel Macの場合のTypicalなメッセージ例:
“`
==> Next steps:- Run
brew help
to get started - Add Homebrew to your PATH in /Users/your_username/.zshrc:
echo ‘eval “$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)”‘ >> /Users/your_username/.zshrc
eval “$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)”
``
/opt/homebrew
(注意:Intel Macでも、シェルによってはに関連する指示が出る場合があります。これは、ユーザーが意図的にそのパスにインストールした場合や、Rosetta 2環境でHomebrewを起動した場合などです。通常、Intel Macでデフォルトインストール先を特に指定しない場合は
/usr/local`になります。)
- Run
この「Next steps」の指示は、Homebrewインストール後に
command not found
エラーが出ないようにするために非常に重要です。 表示されたコマンドをそのままコピーしてターミナルで実行してください。通常は、echo '...' >> ~/.your_shell_config_file
の形式で、シェルの設定ファイル(.zshrc
,.zprofile
,.bash_profile
など)にHomebrewのPATH設定を追記し、その後eval "$(/path/to/brew shellenv)"
で現在のセッションにその設定を反映させる手順が含まれています。 -
-
インストール後の確認: インストールが完了し、Next stepsの指示に従ってPATH設定を反映させた後、以下のコマンドを実行してHomebrewが正しくインストールされたか、そして認識されているかを確認します。
bash
brew --versionHomebrewのバージョン情報が表示されれば成功です!これで
brew
コマンドが使えるようになっているはずです。
3.2. インストール時のトラブルシューティング
インストールスクリプトの実行中にエラーが発生する場合もあります。一般的な原因と対処法です。
- 権限エラー: パスワード入力を求められたのに間違えた、または管理者権限がないユーザーで実行した。正しいパスワードを入力するか、管理者権限のあるユーザーで実行してください。
- ネットワークエラー:
curl
コマンドがファイルをダウンロードできない。インターネット接続を確認し、ファイアウォールやプロキシ設定がHomebrewのインストールに必要な通信(特にGitHubへのHTTPS接続)をブロックしていないか確認してください。企業ネットワークなど、セキュリティが厳しい環境では問題が発生しやすいです。 - 既存のファイルとの競合: インストール先のディレクトリに、Homebrewが作成しようとするファイルやディレクトリが既に存在し、権限の問題などで上書きできない。この場合は、競合しているファイルを一時的に移動または削除してから再試行する必要がある場合があります。ただし、システムファイルに関わる可能性もあるため、慎重に行ってください。多くの場合、スクリプトが競合を検知して指示を出してくれます。
-
Xcode Command Line Toolsがない: Homebrewのインストールや、Homebrewで管理するソフトウェアの多くは、macOSに付属する開発者ツール(Xcode Command Line Tools)を必要とします。もしインストールされていない場合は、Homebrewのインストールスクリプトが自動的にインストールを促すか、手動でインストールする必要があります。
bash
xcode-select --install
このコマンドでCommand Line Toolsのインストーラが起動します。
インストールが何度試しても上手くいかない場合は、一度Homebrewを完全にアンインストールしてから再インストールすることも検討できます(アンインストール方法は後述のFAQを参照)。
4. 対処法3:PATH環境変数を設定・修正する
HomebrewがMacにインストールされていることは確認できたのに、「command not found: brew
」エラーが出る場合、問題はほぼ確実にPATH環境変数の設定にあります。つまり、Homebrewの実行ファイルが存在するディレクトリ(/usr/local/bin
または/opt/homebrew/bin
)が、シェルがコマンドを探しに行くディレクトリのリスト(PATH)に含まれていないということです。
このセクションでは、PATH環境変数とは何かを詳しく解説し、お使いのシェルに合わせてPATHを設定・修正する方法を説明します。
4.1. PATH環境変数とは? なぜ重要なのか?
「環境変数」とは、OSや実行中のプログラムが利用できる、システムに関する様々な情報を格納するための変数です。PATH環境変数(通常は大文字でPATH
と記述されます)は、その環境変数の一つで、実行可能なコマンドファイルが置かれているディレクトリのパスをコロン(:
)で区切って複数列挙したものです。
あなたがターミナルでbrew
のようなコマンドを入力してEnterキーを押すと、シェルはまずそのコマンドが組み込みコマンドであるか確認し、次にPATH
環境変数にリストされているディレクトリを先頭から順番に探し始めます。そして、入力されたコマンド名と一致する名前の実行ファイル(スクリプトやバイナリ)を最初に見つけたディレクトリで実行します。もしPATHのすべてのディレクトリを探しても見つからなかった場合に、「command not found
」エラーが表示されるのです。
例えば、PATH
が/usr/local/bin:/usr/bin:/bin:/usr/sbin:/sbin
と設定されている場合、シェルはまず/usr/local/bin
ディレクトリを探し、次に/usr/bin
、/bin
…と順に探します。brew
コマンドが/opt/homebrew/bin
にインストールされているのに、/opt/homebrew/bin
がPATH
に含まれていなければ、シェルはbrew
を見つけることができません。
また、PATHに複数のディレクトリが含まれている場合、同じ名前のコマンドが複数のディレクトリに存在することがあります(例: /usr/bin/python
と/usr/local/bin/python
)。この場合、PATHリストでより先に登場するディレクトリにあるコマンドが優先して実行されます。これが、Homebrewでインストールした新しいバージョンのコマンド(例: /usr/local/bin/git
や/opt/homebrew/bin/git
)をシステム標準のコマンド(/usr/bin/git
)より優先して実行させたい場合に、Homebrewの実行パスをPATHの先頭に近い位置に追加する必要がある理由です。
PATH環境変数の現在の設定を確認するには、以下のコマンドを実行します。
bash
echo $PATH
このコマンドは、現在のシェルセッションにおけるPATH
環境変数の値を表示します。表示されたリストの中に、Homebrewがインストールされているディレクトリ(Intel Macなら/usr/local/bin
、Apple Silicon Macなら/opt/homebrew/bin
)が含まれているか確認してください。もし含まれていなければ、それが「command not found: brew
」エラーの原因です。
4.2. どのシェルを使っているか確認する
Macのデフォルトシェルは、macOS Catalina (10.15) 以降はzsh、それより前のバージョンではbashです。PATHなどの環境変数は、使用しているシェルの設定ファイルで管理されます。そのため、まず自分がどのシェルを使っているかを確認することが重要です。
以下のコマンドを実行します。
bash
echo $SHELL
このコマンドは、現在使用しているシェルのパスを表示します。
/bin/zsh
と表示された場合: あなたはzshを使っています。zshの設定ファイル(.zshrc
,.zprofile
,.zshenv
など)を編集する必要があります。/bin/bash
と表示された場合: あなたはbashを使っています。bashの設定ファイル(.bash_profile
,.bashrc
,.profile
など)を編集する必要があります。- その他のパスが表示された場合: fishやtcshなど、別のシェルを使っています。それぞれのシェルの設定方法については、そのシェルのドキュメントを参照する必要があります。本記事ではzshとbashを中心に解説します。
使用しているシェルが確認できたら、以下の手順でPATHを設定・修正します。
4.3. zshの場合のPATH設定
zshでは、PATHなどの環境変数は通常、以下のいずれかの設定ファイルに記述します。
~/.zshrc
: インタラクティブシェルが起動するたびに読み込まれます。ほとんどの場合、PATH設定はここに記述するのが最も一般的です。~/.zprofile
: ログインシェルとして起動される際に読み込まれます。ログイン時のみ設定を読み込みたい場合などに使用します。~/.zshenv
: ログインシェルか非ログインシェルかに関わらず、zshが起動するたびに常に読み込まれます。通常、ここでPATHを設定することはありませんが、環境によってはここに記述されている場合もあります。
Homebrewのインストールスクリプトは、通常、ユーザーのホームディレクトリ直下にある.zprofile
または.zshrc
にPATH設定を追記します。どちらのファイルに追記されたか、あるいは全く追記されなかったかを確認し、必要に応じて手動で設定を追加します。
HomebrewのPATH設定を確認・追加する手順 (zsh)
-
設定ファイルを開く: ターミナルで以下のコマンドのいずれかを入力し、お好みのテキストエディタで設定ファイルを開きます。
.zprofile
に記述されているか確認し、なければ.zshrc
を確認するのが良いでしょう。- nanoエディタで
.zprofile
を開く:nano ~/.zprofile
- nanoエディタで
.zshrc
を開く:nano ~/.zshrc
- VS CodeなどのGUIエディタで
.zprofile
を開く (VS Codeがインストールされ、code
コマンドがPATHに追加されている場合):code ~/.zprofile
- VS CodeなどのGUIエディタで
.zshrc
を開く:code ~/.zshrc
.zprofile
や.zshrc
ファイルが存在しない場合は、エディタで新規作成されます。 - nanoエディタで
-
HomebrewのPATH設定を探す: 開いたファイルの内容を確認します。Homebrewが正しくPATHに追加されていれば、以下のような行が見つかるはずです。
-
Apple Silicon Macの場合:
bash
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
または
bash
export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"
(brew shellenv
を使う方法がHomebrewの推奨です。これは、Homebrewが必要とする他の環境変数も設定してくれるためです。) -
Intel Macの場合:
bash
eval "$(/usr/local/bin/brew shellenv)"
または
bash
export PATH="/usr/local/bin:$PATH"
もしこれらの行が見つからない場合、またはコメントアウトされている(行頭に
#
が付いている)場合は、手動で追加または修正する必要があります。 -
-
HomebrewのPATH設定を追加・修正する:
-
ファイルの末尾に、以下の行を追記します。お使いのMacのチップ(IntelかApple Siliconか)に合わせて、適切なパスを指定してください。
- Apple Silicon Mac (M1/M2/M3など) の場合(推奨される方法):
bash
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)" - Intel Mac の場合(推奨される方法):
bash
eval "$(/usr/local/bin/brew shellenv)" - または、古い形式ですが互換性のある方法(HomebrewがインストールされているパスをPATHの先頭に追加):
- Apple Silicon Mac:
export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"
- Intel Mac:
export PATH="/usr/local/bin:$PATH"
:$PATH
を末尾に付けることで、既存のPATH設定を残しつつ、Homebrewのパスをリストの先頭(または指定した位置)に追加できます。これにより、Homebrewでインストールされたコマンドが、システム標準のコマンドよりも優先されます。既存のexport PATH="..."
行がある場合は、その行を修正してHomebrewのパスを追加することも可能ですが、上記のように新しい行を追加するのがシンプルでエラーが少ないです。
- Apple Silicon Mac:
- Apple Silicon Mac (M1/M2/M3など) の場合(推奨される方法):
-
設定ファイルは、新しい行を追加したり既存の行を修正したりする際に、誤って他の重要な設定を削除したり変更したりしないように注意してください。もし不安な場合は、編集前にファイルのバックアップを取ることをお勧めします(例:
cp ~/.zshrc ~/.zshrc_backup
)。
-
-
設定ファイルを保存して閉じる: 使用しているエディタの方法に従ってファイルを保存し、エディタを終了します。
- nanoの場合:
Control + O
を押して保存、Enterキーでファイル名を確定、Control + X
で終了。
- nanoの場合:
-
設定を現在のシェルセッションに反映させる: 設定ファイルを編集しただけでは、現在開いているターミナルセッションにはその変更は反映されません。新しい設定をすぐに有効にするには、以下のコマンドを実行して設定ファイルを再読み込みします。
.zshrc
を編集した場合:
bash
source ~/.zshrc.zprofile
を編集した場合:
bash
source ~/.zprofile
または、ターミナルを一度完全に閉じてから開き直しても、新しいセッションで設定が読み込まれて反映されます。
-
PATH設定が正しく反映されたか確認する: 設定を反映させた後、以下のコマンドを実行して、HomebrewのパスがPATH環境変数に含まれているか確認します。
bash
echo $PATH
表示されたパスリストの中に、/opt/homebrew/bin
または/usr/local/bin
が含まれていれば成功です。 -
brew
コマンドが実行できるか確認する: 最後に、brew
コマンドを実際に実行してみて、「command not found
」エラーが出ずにHomebrewのヘルプメッセージやバージョン情報が表示されるか確認します。bash
brew --version
Homebrewのバージョンが表示されれば、問題は解決です!
4.4. bashの場合のPATH設定
bashでは、PATHなどの環境変数は通常、以下のいずれかの設定ファイルに記述します。bashはzshよりも設定ファイルの読み込み順序が複雑で、ログインシェルと非ログインシェル、インタラクティブシェルと非インタラクティブシェルによって読み込まれるファイルが変わります。
~/.bash_profile
: ログインシェルとして起動される際に読み込まれます。MacのターミナルをGUIから起動した場合、これはログインシェルとして扱われるため、通常ここにPATH設定などを記述するのが一般的です。このファイルが存在しない場合は、代わりに~/.profile
が読み込まれます。~/.bashrc
: 非ログインシェルとして起動される際に読み込まれます。また、インタラクティブなログインシェル(.bash_profile
が読み込まれる)から.bashrc
を明示的に読み込む設定をしている場合も多くあります。スクリプト実行時など、インタラクティブでないシェルでは通常読み込まれません。エイリアスや関数など、インタラクティブな操作に関する設定はここに書くのが一般的です。~/.profile
:.bash_profile
が存在しない場合に、ログインシェルとして読み込まれます。.bash_profile
がない環境(特に他のUnix系システムとの互換性を重視する場合)で、ログイン時に共通の設定を行いたい場合に利用されます。bash以外のシェル(shなど)でも読み込まれることがあります。
Macでbashを使っている場合、一般的には.bash_profile
にPATH設定を記述します。.bash_profile
から.bashrc
を読み込むように設定しているユーザーも多いです。
HomebrewのPATH設定を確認・追加する手順 (bash)
-
設定ファイルを開く: ターミナルで以下のコマンドのいずれかを入力し、お好みのテキストエディタで設定ファイルを開きます。まずは
.bash_profile
を確認し、なければ.profile
を確認してください。- nanoエディタで
.bash_profile
を開く:nano ~/.bash_profile
- nanoエディタで
.profile
を開く:nano ~/.profile
- nanoエディタで
.bashrc
を開く:nano ~/.bashrc
(.bash_profile
から読み込んでいる場合などに確認) - GUIエディタで
.bash_profile
を開く:code ~/.bash_profile
.bash_profile
や.profile
ファイルが存在しない場合は、エディタで新規作成されます。 - nanoエディタで
-
HomebrewのPATH設定を探す: 開いたファイルの内容を確認します。Homebrewが正しくPATHに追加されていれば、以下のような行が見つかるはずです。Homebrewのインストールスクリプトは、bashの場合は通常
.bash_profile
に設定を追記しようとします。-
Apple Silicon Macの場合:
bash
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
または
bash
export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH" -
Intel Macの場合:
bash
eval "$(/usr/local/bin/brew shellenv)"
または
bash
export PATH="/usr/local/bin:$PATH"
これらの行が見つからない、またはコメントアウトされている場合は、手動で追加・修正が必要です。
-
-
HomebrewのPATH設定を追加・修正する:
-
ファイルの末尾に、お使いのMacのチップ(IntelかApple Siliconか)に合わせて以下の行を追記します。
- Apple Silicon Mac (M1/M2/M3など) の場合(推奨される方法):
bash
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
Apple Silicon Macでbashをデフォルトシェルとして使用している場合、Homebrewインストーラは上記の設定を.bash_profile
または.profile
に追加することを推奨します。なぜなら、Apple Silicon MacのHomebrewのデフォルトパス/opt/homebrew
は、bashのデフォルトのPATHには含まれていないからです。 -
Intel Mac の場合(推奨される方法):
bash
eval "$(/usr/local/bin/brew shellenv)" -
または、古い形式:
- Apple Silicon Mac:
export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"
- Intel Mac:
export PATH="/usr/local/bin:$PATH"
- Apple Silicon Mac:
- Apple Silicon Mac (M1/M2/M3など) の場合(推奨される方法):
-
zshの場合と同様、既存の設定を誤って変更しないよう注意し、必要であればバックアップを取ってください。
-
-
設定ファイルを保存して閉じる: 使用しているエディタの方法に従ってファイルを保存し、エディタを終了します。
-
設定を現在のシェルセッションに反映させる: 新しい設定をすぐに有効にするには、以下のコマンドを実行して設定ファイルを再読み込みします。
.bash_profile
を編集した場合:
bash
source ~/.bash_profile.profile
を編集した場合:
bash
source ~/.profile.bashrc
を編集した場合:
bash
source ~/.bashrc
どのファイルを編集したかに応じてコマンドを選んでください。または、ターミナルを一度完全に閉じてから開き直しても、新しいセッションで設定が読み込まれて反映されます。
-
PATH設定が正しく反映されたか確認する: 設定を反映させた後、以下のコマンドを実行して、HomebrewのパスがPATH環境変数に含まれているか確認します。
bash
echo $PATH
表示されたパスリストの中に、/opt/homebrew/bin
または/usr/local/bin
が含まれていれば成功です。 -
brew
コマンドが実行できるか確認する: 最後に、brew
コマンドを実際に実行してみて、「command not found
」エラーが出ずにHomebrewのヘルプメッセージやバージョン情報が表示されるか確認します。bash
brew --version
Homebrewのバージョンが表示されれば、問題は解決です!
4.5. PATH設定に関するその他の注意点
- 複数のシェル設定ファイル: ユーザーによっては、
.bash_profile
から.bashrc
を読み込んだり、.zprofile
から.zshrc
を読み込んだりする設定をしています。どのファイルにPATH設定を書くべきか迷う場合は、一般的にインタラクティブなシェルセッション全体に影響を与えたい設定は.zshrc
や.bashrc
に、ログイン時のみ必要な設定やPATHのような環境変数は.zprofile
や.bash_profile
に書くのが推奨されます。Homebrewのインストールスクリプトが追記したファイルを優先的に確認するのが最も手軽です。 - 既存のPATH行への追加: 既に
export PATH="..."
のような行がある場合、その行を修正してHomebrewのパスを追加することも可能です。例えば、export PATH="/existing/path1:/existing/path2"
という行がある場合に、/opt/homebrew/bin
を追加するにはexport PATH="/opt/homebrew/bin:/existing/path1:/existing/path2"
のように修正します。しかし、既存の行を誤って壊してしまうリスクもあるため、前述のように新しい行として追加する方がシンプルかもしれません。 .bashrc
と.bash_profile
の違い: bashユーザーがよく混乱する点です。Macのターミナルは通常、ログインシェルとして起動するため、.bash_profile
が読み込まれます。.bashrc
は非ログインシェルで読み込まれます。もし.bash_profile
が存在しない場合は、.profile
がログインシェルとして読み込まれます。多くのユーザーは、.bash_profile
にsource ~/.bashrc
と記述することで、ログインシェルでも.bashrc
の設定が読み込まれるようにしています。PATH設定を.bashrc
に書いてしまうと、GUIから起動したターミナル(ログインシェル)では読み込まれず、コマンドが見つからない、という状況が発生する可能性があります。そのため、Macのbashでは.bash_profile
にPATHを書くのが一般的です。.zshrc
,.zshenv
,.zprofile
の違い: zshも同様に読み込み順序と用途が異なります。.zshenv
は常に読み込まれます(ここにPATHを書くと、スクリプト実行などあらゆるzshの起動でPATHが設定されることになりますが、意図しない副作用のリスクもあります)。.zprofile
はログインシェルで読み込まれます。.zshrc
はインタラクティブシェルで読み込まれます。Homebrewは通常.zprofile
または.zshrc
に書き込みます。brew shellenv
コマンドは、シェルの種類を判別して適切な設定内容を出力するため、これを利用するのが最も確実です。
PATH設定はシェルの基本的な概念であり、理解しておくと他のコマンドラインツールの設定にも役立ちます。
5. 対処法4: macOSのアップデート後の問題への対応
macOSのメジャーアップデート(例: Sonomaへのアップデート)を行うと、システム環境が大きく変更されることがあります。これにより、HomebrewのインストールやPATH設定に影響が出て、「command not found: brew
」エラーが再発することがあります。特に、Apple Silicon Macへの移行期には、このような問題が頻繁に報告されていました。
macOSのアップデート後にHomebrew関連の問題が発生した場合、以下の点を試してみてください。
- PATH設定の再確認: macOSのアップデートによって、シェルの設定ファイル(
.zshrc
,.bash_profile
など)がリセットされたり、変更されたりする可能性は低いですが、万が一変更されてしまったり、アップデートプロセスが何らかの理由でファイルの一部を破損させてしまったりする可能性はゼロではありません。前述の「対処法3: PATH環境変数を設定・修正する」の手順に従って、Homebrewのパスが設定ファイルに正しく記述されているか、そしてそれがsource
コマンドやターミナル再起動で反映されているか確認してください。 -
Xcode Command Line Toolsの再インストール: macOSのアップデート後には、Xcode Command Line Toolsを再インストールする必要がある場合があります。多くの開発ツールはこれに依存しており、Homebrewも例外ではありません。以下のコマンドを実行して、必要に応じて再インストールしてください。
bash
xcode-select --install
既にインストールされている場合は、「command line tools are already installed...
」というメッセージが表示されます。そうでない場合は、インストーラが起動します。 -
Homebrew自体のアップデートと診断: PATHが正しく設定されているにも関わらず問題が発生する場合、Homebrewの内部状態が破損している可能性があります。以下のコマンドを実行して、Homebrew自体をアップデートし、問題がないか診断してみてください。
“`bash
PATH設定が反映された新しいターミナルで実行
brew update # Homebrewの定義ファイルなどを最新の状態に更新
brew upgrade # インストール済みのソフトウェアを全てアップデート
brew doctor # Homebrewのインストールや環境に問題がないか診断
``
brew doctorコマンドは、Homebrewのインストール環境に問題(権限、競合ファイル、古いリンクなど)がないかをチェックし、見つかった問題の対処方法を教えてくれます。このコマンドが出力する警告やエラーメッセージは、問題解決の非常に重要な手がかりとなります。例えば、「
Warning: Some formulae are unlinked.」や「
Warning: The following directories are not in your PATH:`」といった警告が表示されることがあります。それぞれの警告に対する指示に従って対処してください。
4. Homebrewの再インストール: 上記を試しても解決しない場合、Homebrew自体が深刻な問題を抱えている可能性があります。その場合は、Homebrewを一度完全にアンインストールし(Homebrew公式ウェブサイトまたはGitHubリポジトリに記載されているアンインストールスクリプトを使用)、それから「対処法2: Homebrewを正しくインストールする」の手順に従ってクリーンな状態で再インストールするのが、最も確実な解決策となることが多いです。
macOSのアップデートは開発環境に影響を与える可能性があることを常に意識し、アップデート後は主要なツール(Homebrew含む)が正常に動作するか確認する習慣をつけると良いでしょう。
6. 対処法5: その他の考えられる原因と解決策
Homebrewのインストール状況とPATH環境変数の設定を確認・修正することが、「command not found: brew
」エラーの解決策の大部分を占めますが、稀に他の原因で問題が発生することもあります。
- 権限の問題: Homebrewのインストールディレクトリ(
/usr/local
や/opt/homebrew
)やその配下のファイル・ディレクトリに対するユーザーの読み書き実行権限が不足している場合、Homebrewが正しく動作しないことがあります。brew doctor
コマンドは権限の問題を検知して警告を出してくれることが多いです。必要に応じて、Homebrewが推奨する所有者とパーミッションを設定し直す必要がありますが、システムディレクトリに関わる操作なので慎重に行ってください。Homebrewの公式インストールスクリプトはこれらの権限設定も適切に行いますが、手動でインストールした場合や、システムに他の変更を加えた場合に問題が発生することがあります。 - ファイルシステムの破損: ごく稀ですが、ファイルシステムの論理的な破損が原因で、Homebrewの実行ファイルや関連ファイルにアクセスできなくなっている可能性もゼロではありません。ディスクユーティリティを使ってディスクのFirst Aidを実行し、ファイルシステムに問題がないかチェックしてみることも有効です。
- セキュリティソフトウェアによる干渉: 一部のセキュリティソフトやアンチウイルスソフトが、Homebrewのインストールプロセスや、Homebrewがインストールするソフトウェアを誤ってマルウェアと判断し、隔離したり実行をブロックしたりすることがあります。もしそのようなソフトウェアを使用している場合は、一時的に無効にしてインストールや実行を試みたり、Homebrew関連のディレクトリを信頼済みリストに追加したりすることを検討してください。
- Homebrewの公式スクリプト以外の方法でインストールした場合: Homebrewは公式のインストールスクリプトを使うことが強く推奨されています。非公式な方法や手動でインストールした場合、必要なファイルが不足していたり、権限設定が不適切だったり、PATH設定が正しく行われなかったりするリスクが高まります。もし非公式な方法でインストールした覚えがある場合は、一度完全にアンインストールし、公式スクリプトでやり直すことを強くお勧めします。
- ユーザーアカウントの問題: 非常に稀ですが、使用しているユーザーアカウント自体に何らかの問題がある場合、環境変数設定などが正しく読み込まれない可能性があります。別のユーザーアカウント(可能であれば新規作成したテスト用アカウント)でログインしてみて、そこでHomebrewが使えるか確認することで、問題がシステム全体にあるのか、特定のユーザーアカウントに限定されているのかを切り分けることができます。
これらの原因に該当する可能性が低い場合でも、基本的な対処法(インストール確認、PATH設定)を繰り返し確認することが問題解決への近道です。
7. エラー再発防止のためのヒント
一度「command not found: brew
」エラーを解決しても、将来的に再発する可能性はゼロではありません。特に、macOSのアップデートやシェルの設定変更などを行った後には注意が必要です。ここでは、エラーの再発を防ぎ、Homebrew環境を健全に保つためのヒントを紹介します。
- PATH設定ファイルのバックアップを取る:
.zshrc
,.bash_profile
などのシェルの設定ファイルは、PATHだけでなく様々な重要な設定が記述されています。これらのファイルを編集する前に、必ずバックアップを取る習慣をつけましょう。例えば、cp ~/.zshrc ~/.zshrc.bak_yyyymmdd
のように日付を入れてバックアップを作成しておけば、設定ミスなどでファイルが壊れてしまっても簡単に元に戻せます。 -
Homebrewを定期的にアップデートする: Homebrew本体とその管理するパッケージを最新の状態に保つことは、セキュリティと安定性のために重要です。定期的に以下のコマンドを実行しましょう。
bash
brew update # Homebrewの定義ファイルを最新にする
brew upgrade # インストール済みのパッケージを全てアップデート
brew cleanup # 不要になった古いバージョンやキャッシュを削除
3.brew doctor
を定期的に実行する:brew doctor
コマンドは、Homebrewのインストールや環境に潜在的な問題がないかを診断してくれます。定期的にこのコマンドを実行し、表示される警告やエラーメッセージに対応することで、問題が大きくなる前に早期に発見・解決できます。
4. シェルの設定変更は慎重に: 新しいツールをインストールしたり、チュートリアルに従ってシェルの設定ファイルを変更したりする際は、その変更がPATHや他の環境変数にどのような影響を与えるかを理解した上で行いましょう。特に、PATHを上書きするような設定(export PATH="/new/path"
のように:$PATH
が含まれていないもの)は、既存のPATH設定を壊してしまう危険性があるため避けるべきです。
5. 新しいターミナルウィンドウで確認する: 設定ファイルを編集した後、source
コマンドで設定を反映させるのも良いですが、最も確実な確認方法は、新しいターミナルウィンドウまたはタブを開くことです。新しいセッションは、ログイン時/起動時の設定ファイルを読み込んで環境を構築するため、そのセッションでbrew --version
が実行できれば、設定が永続的に反映されていると判断できます。
6. Homebrew公式ドキュメントを参照する: Homebrewに関する最新かつ正確な情報は、常にHomebrewの公式ウェブサイト(https://brew.sh/
)およびGitHubリポジトリ(https://github.com/Homebrew/brew
)にあります。特に、インストールの詳細やトラブルシューティングに関する情報は公式ドキュメントが最も信頼できます。
8. まとめ
本記事では、Macで「command not found: brew
」というエラーが発生した場合の対処法について、詳細かつ包括的に解説しました。このエラーの根本原因は、Homebrewがインストールされていないか、インストールされていてもその実行ファイルへのパスがシェルのPATH環境変数に含まれていないかのいずれかであることがほとんどです。
問題解決のための主なステップは以下の通りです。
- Homebrewがインストールされているか確認する:
which brew
やls
コマンドを使って、Homebrewの実行ファイルが期待されるパス(/usr/local/bin/brew
または/opt/homebrew/bin/brew
)に存在するかを確認します。 - インストールされていない場合は、公式スクリプトで正しくインストールする: Homebrewの公式ウェブサイトにあるインストールコマンドを実行します。特に、インストール完了時に表示される「Next steps」のPATH設定に関する指示に必ず従ってください。
- インストールされているがエラーが出る場合は、PATH環境変数を設定・修正する: 使用しているシェル(zshまたはbash)に対応した設定ファイル(
.zshrc
,.zprofile
,.bash_profile
など)を開き、Homebrewのインストールパスをexport PATH="..."
またはeval "$(brew shellenv)"
の形式で追記または修正します。設定変更後は、source
コマンドで反映させるか、ターミナルを再起動します。 - macOSアップデート後に問題が出た場合は、Command Line Toolsの再インストールや
brew doctor
を試す: システムアップデートによる環境の変化に対応します。 - その他の可能性も考慮する: 権限問題、ファイルシステム破損、セキュリティソフト干渉なども稀な原因として考えられます。
これらのステップを踏むことで、ほとんどの場合「command not found: brew
」エラーを解決し、Macで再びHomebrewを利用できるようになるはずです。
ターミナルでの作業や設定ファイルの編集は、最初は難しく感じるかもしれませんが、一度理解してしまえばMac上での開発環境構築やツール管理が格段に楽になります。この記事が、あなたのHomebrewに関する問題を解決し、より快適なMacライフを送るための一助となれば幸いです。
9. FAQ (よくある質問)
ここでは、「command not found: brew
」エラーやHomebrewのPATH設定に関連してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1: Homebrewのインストール先が/usr/local
と/opt/homebrew
のどちらになりますか?
A1: お使いのMacのCPUアーキテクチャによって異なります。
* Intel Mac: デフォルトのインストール先は/usr/local
です。Homebrewの実行ファイルは/usr/local/bin/brew
に置かれます。
* Apple Silicon Mac (M1, M2, M3など): デフォルトのインストール先は/opt/homebrew
です。Homebrewの実行ファイルは/opt/homebrew/bin/brew
に置かれます。
Homebrewのインストールスクリプトはこれを自動的に判別します。PATHを設定する際には、あなたのMacのアーキテクチャに合ったパスを指定することが非常に重要です。
Q2: 設定ファイルを編集した後、なぜsource
コマンドを実行する必要があるのですか?
A2: シェルは、起動時に一度だけ設定ファイル(例: .zshrc
, .bash_profile
)を読み込み、環境変数やエイリアス、関数などを設定します。設定ファイルを編集しても、現在実行中のシェルはその変更を自動的には認識しません。source
コマンド(または.
ドットコマンド)は、指定したファイルを現在のシェルセッションで「再読み込み」させ、その中のコマンドや設定を即座に実行するために使用します。これにより、ターミナルを再起動しなくても新しい設定が有効になります。
Q3: .zshrc
, .bash_profile
, .bashrc
, .profile
など、どの設定ファイルを編集すべきですか?
A3: どのファイルを編集すべきかは、使用しているシェル(echo $SHELL
で確認)と、設定をどのような場合に適用したいか(ログイン時のみか、インタラクティブシェルのたびにかなど)によります。
* zshユーザー: ほとんどの場合、インタラクティブシェルで常に設定を有効にしたいなら~/.zshrc
に記述します。ログイン時のみ必要な設定や、システム全体に影響を与えうる環境変数(PATHなど)は~/.zprofile
に書くことを推奨する人もいます。Homebrewのインストールスクリプトが指示したファイルに従うのが最も手軽です。
* bashユーザー: Macのターミナルは通常ログインシェルとして起動するため、~/.bash_profile
に設定を記述するのが一般的です。~/.bash_profile
が存在しない場合は~/.profile
が読み込まれます。.bashrc
は非ログインシェル向けの設定ファイルですが、.bash_profile
から.bashrc
を読み込む設定をしているユーザーも多いです。PATH設定は.bash_profile
に書くのが最も一般的です。
迷ったら、まずbrew --version
が動いている他のMacユーザーの設定ファイル(もし参照できるなら)や、Homebrewのインストール完了時のメッセージを確認し、それに従うのが良いでしょう。
Q4: PATHに複数のパスを設定する場合の区切り文字は何ですか?
A4: PATH環境変数では、複数のディレクトリパスをコロン「:
」で区切って列挙します。例えば、/usr/local/bin
と/usr/bin
と/bin
をPATHに含めたい場合は、export PATH="/usr/local/bin:/usr/bin:/bin:$PATH"
のようになります。リストの左側にあるパスほど優先度が高くなります。
Q5: export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"
という設定行の意味を教えてください。
A5:
* export
: この設定を現在のシェルセッションだけでなく、そこから起動されるサブプロセス(他のコマンドやスクリプト)にも引き継ぐためのコマンドです。環境変数を設定する際には通常export
を付けます。
* PATH=
: PATH環境変数に新しい値を代入します。
* /opt/homebrew/bin
: 追加したいHomebrewの実行ファイルがあるディレクトリのパスです(Apple Silicon Macの場合)。Intel Macの場合は/usr/local/bin
になります。
* :
: PATH内のパスを区切るセパレータです。
* $PATH
: これは「現在のPATH環境変数の値」を表します。
全体として、「現在のPATH環境変数の値の前に/opt/homebrew/bin
というパスを追加し、その結果を新しいPATH環境変数として設定し、この設定をサブプロセスにも引き継ぐ」という意味になります。これにより、既存のPATH設定を失うことなくHomebrewのパスを追加でき、かつHomebrewでインストールされたコマンドがシステム標準のコマンドより優先されるようになります。
Q6: eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
という設定行の意味を教えてください。
A6: これがHomebrewが推奨するPATH設定の方法です。
* $(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)
: これはコマンド置換です。まず、/opt/homebrew/bin/brew shellenv
というコマンドが実行されます。このコマンドは、使用しているシェル(zshかbashかなど)を判別し、そのシェルでHomebrewを利用するために必要な環境変数の設定コマンド列(例: export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"; # その他Homebrewに必要な環境変数設定
)を標準出力に出力します。
* eval "..."
: eval
コマンドは、引数として渡された文字列をコマンドとして解釈し、現在のシェルセッションで実行します。
全体として、「brew shellenv
コマンドを実行してHomebrewに必要な環境設定コマンドを取得し、それを現在のシェルセッションで実行する」という意味になります。この方法の利点は、Homebrewが必要とするPATH以外の環境変数も同時に設定できること、そしてシェルの種類に応じた適切な設定をHomebrew自身が生成してくれるため、ユーザーが手動でパスなどを指定するよりも確実性が高い点です。
Q7: brew
コマンドが使えるようになったら、次に何をすれば良いですか?
A7: Homebrewが使えるようになったら、まずはHomebrewのシステムを最新の状態に更新しましょう。
bash
brew update
次に、インストール済みのソフトウェア(もしあれば)をアップデートしたり、使いたい新しいソフトウェアをインストールしたりできます。
bash
brew upgrade # インストール済みのソフトウェアを全てアップデート
brew install [パッケージ名] # 例: brew install node
brew search [キーワード] # 例: brew search python
Homebrewの基本的な使い方はbrew help
コマンドで確認できます。
Q8: Homebrewを完全にアンインストールしたい場合はどうすれば良いですか?
A8: Homebrewを完全にアンインストールするには、Homebrewが提供しているアンインストールスクリプトを使用するのが最も安全です。このスクリプトはHomebrewのGitHubリポジトリにあります。以下のコマンドをターミナルで実行します。
bash
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/uninstall.sh)"
このスクリプトは、Homebrew本体とその管理下にある全てのファイルやディレクトリを削除しようとします。実行前に削除される内容を確認し、指示に従ってください。この方法は手動でファイルを削除するよりも推奨されます。
この記事が、「command not found: brew
」というエラーに直面したMacユーザーの皆様のお役に立てれば幸いです。不明な点があれば、Homebrewの公式ドキュメントや関連コミュニティの情報を参照することも有効です。