はい、承知いたしました。AWS Backupの料金体系について、初心者の方にも分かりやすく、詳細に解説する記事を約5000語で執筆します。
【初心者向け】AWS Backup 料金の仕組みをわかりやすく紹介
はじめに:なぜバックアップが重要なのか、そしてAWS Backupとは?
私たちは日常生活で、大切な写真や書類をバックアップしたり、鍵を複数用意したりしますね。これは、万が一の事態に備えるためです。デジタル資産においても、バックアップは非常に重要です。データ消失、システム障害、人的ミス、サイバー攻撃など、予期せぬトラブルはいつ発生するかわかりません。ビジネスにとって、データは財産であり、その消失は深刻な損害につながります。
AWS(アマゾン ウェブ サービス)は、世界中で利用されているクラウドコンピューティングサービスです。多くの企業や個人が、AWS上でウェブサイトを公開したり、アプリケーションを開発・実行したり、データを保存したりしています。AWSが提供する多様なサービスで利用しているデータを守るために、バックアップは欠かせません。
ここで登場するのが「AWS Backup」です。AWS Backupは、AWS上の様々なサービスのバックアップを一元的に管理できるサービスです。EC2(仮想サーバー)、RDS(マネージドデータベース)、S3(オブジェクトストレージ)、EBS(ブロックストレージ)、EFS(ファイルストレージ)、DynamoDB(NoSQLデータベース)、VMwareワークロードなど、複数のサービスのバックアップポリシー策定、スケジュール設定、実行、モニタリング、リストア(復旧)を、一つのコンソール(管理画面)から簡単に行うことができます。
AWS Backupを利用することで、手動でのバックアップ作業の手間が省け、人的ミスを減らすことができます。また、バックアップポリシーを一元管理できるため、組織全体のバックアップ戦略をシンプルかつ効果的に実施できます。さらに、バックアップされたデータは、セキュリティの高いAWSのストレージに安全に保管されます。
さて、このAWS Backupは非常に便利なサービスですが、「クラウドのサービスを使うと料金がかかる」という点が気になる方もいらっしゃるでしょう。特に初心者の方は、「バックアップを取るだけでどれくらいの費用がかかるんだろう?」「リストア(復旧)する時にもお金がかかるの?」といった疑問をお持ちかもしれません。
AWSの料金体系は、利用した分だけを支払う「従量課金制」が基本です。これは非常に合理的で無駄が少ない仕組みですが、その分、「何に対して」「いくら」かかるのかを正確に理解していないと、予想外の費用が発生してしまう可能性もあります。
この記事では、AWS Backupの料金の仕組みについて、初心者の方にもわかりやすいように、以下の点を中心に約5000語で詳しく解説していきます。
- AWS Backup料金の基本的な考え方
- 主な料金が発生する要素(バックアップストレージ、リストア、データ転送など)の詳細
- 料金計算の具体的な例
- コストを最適化するためのヒント
- 料金確認の方法
- よくある誤解と注意点
この記事を最後までお読みいただければ、AWS Backupの料金についてしっかりと理解し、安心してサービスを利用するための第一歩を踏み出すことができるでしょう。
AWS Backup 料金の基本原則:使った分だけお支払い
AWSの多くのサービスと同様に、AWS Backupの料金も「従量課金制」です。これは、文字通り「サービスを利用した量に応じて料金が発生する」という仕組みです。携帯電話の料金プランで、「使ったデータ通信量に応じて料金が変わる」というプランをイメージするとわかりやすいかもしれません。
AWS Backupの場合、主に以下の要素に対して料金が発生します。
- バックアップストレージ: バックアップしたデータを保管しておく場所にかかる費用です。これがAWS Backupの料金の中で最も大きな割合を占めることが多いです。
- リストア料金: バックアップしたデータから元の状態に戻す(復旧する)際にかかる費用です。
- データ転送料金: バックアップやリストアの際に、データがネットワーク経由で移動することにかかる費用です。ただし、特定の条件下では無料になる場合もあります。
これらの要素の「量」や「種類」によって、料金が決まります。言い換えれば、バックアップするデータの量、保存しておく期間、バックアップの種類(どこに保存するか)、リストアの頻度や量、データの移動経路などが料金に影響します。
それでは、これらの主要な料金要素について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
主要な料金要素の詳細解説
1. バックアップストレージ料金:データ量と期間がカギ
AWS Backupの料金体系において、最も重要で、かつ多くの場合に費用が大きくなるのが、この「バックアップストレージ料金」です。これは、バックアップしたデータがAWS上に保管されている期間に対して発生する費用です。
例えるなら、トランクルームを借りて荷物を預けておくようなものです。荷物の量(バックアップデータの容量)と、預けておく期間(バックアップの保存期間)に応じて、トランクルームの利用料がかかります。
課金単位:
バックアップストレージ料金は、「GB(ギガバイト)月」という単位で計算されるのが一般的です。
- GB: バックアップデータの容量を示します。
- 月: データが保管されていた期間を示します。正確には、1ヶ月を30日として、データが保管されていた「GB」と「時間」を掛け合わせて計算されます。例えば、1GBのデータを丸1ヶ月(744時間)保管すれば「1 GB月」となります。もし15日間(約半月)保管したとすれば、「0.5 GB月」と計算されるイメージです。
ストレージの種類:StandardとCold
AWS Backupでは、バックアップデータを保管するストレージとして、主に以下の2つのタイプを選ぶことができます。
- Standardストレージ(ウォームストレージ):
- 比較的高い頻度でアクセスする可能性のあるデータや、すぐにリストアが必要なデータに適しています。
- データへのアクセス速度が速く、リストアも迅速に行えます。
- 料金はColdストレージよりも高めに設定されています。
- バックアップのデフォルトの保管場所となることが多いです。
- Coldストレージ:
- 長期的な保管が必要で、アクセス頻度が非常に低いデータに適しています。(例えば、規制遵守のために数年間保管が義務付けられているようなデータ)
- 料金はStandardストレージよりも大幅に安く設定されています。
- ただし、データへのアクセスには時間がかかります(数分から数時間かかる場合があります)。また、Coldストレージからデータをリストアする際には、別途「取り出し(データレトリーバル)」のための料金と時間がかかります。(これについては後述のリストア料金で詳しく説明します。)
AWS Backupでは、バックアップポリシーを設定する際に、バックアップデータをStandardストレージに何日置いておくか、その後Coldストレージに何日置いておくか(またはそのまま削除するか)といったライフサイクルポリシーを設定できます。このライフサイクルポリシーを活用することで、コストを最適化することが重要です。例えば、直近1ヶ月分のバックアップはStandardに置き、それより古いものはColdに移行する、といった設定が可能です。
ストレージ料金に影響する要因:
- バックアップ対象のデータ量: これが最も直接的に影響します。バックアップ対象のEC2インスタンスのストレージ容量、RDSデータベースのサイズ、S3バケットのデータ量などが大きければ大きいほど、バックアップデータ量も大きくなります。
- バックアップの頻度: 例えば毎日バックアップを取るのか、週に一度なのかによって、バックアップデータが増えるスピードが変わってきます。
- バックアップの保存期間(世代数): どれくらいの期間(何日、何週間、何ヶ月、何年)バックアップを保存しておくか、あるいは何世代分のバックアップを保存しておくかによって、ストレージに保管されるデータ量が増減します。例えば、「過去7日間のバックアップを毎日1世代ずつ残す」設定なら最大7世代分のデータが、「過去1年間のバックアップを毎月1世代ずつ残す」設定なら最大12世代分のデータが保管されます。
- データの変更頻度(増分バックアップ): AWS Backupは、多くのサービスに対して増分バックアップ(incremental backup)を行います。これは、前回のバックアップ以降に「変更された部分だけ」をバックアップする仕組みです。これにより、毎回フルバックアップを取るよりもバックアップ時間が短縮され、ストレージ容量も節約できます。ただし、リストア時には、最新の増分バックアップとそれ以前のバックアップデータを組み合わせて復元する必要があるため、すべてのバックアップデータが必要になります。したがって、ストレージ料金は、単に「最新のバックアップデータの容量」ではなく、「保存しているすべての世代のバックアップデータを組み合わせた合計容量」に対してかかります。データの変更頻度が高いほど、増分バックアップで追加されるデータ量が大きくなり、結果として合計ストレージ量が増加します。
- 重複排除: AWS Backupでは、バックアップデータを保管する際に、データレベルでの重複排除を自動で行います。これは、同じデータブロックが複数回バックアップされた場合でも、それを重複として認識し、物理的には一度だけ保管することで、ストレージ容量を節約する仕組みです。これにより、特に似たようなデータが多い場合や、複数世代のバックアップを保存する場合に、実際のストレージ使用量を抑える効果が期待できます。
ストレージ料金の計算例(イメージ):
具体的な料金はAWSリージョンや時期によって変動するため、ここでは一般的な考え方と計算のイメージを掴んでください。最新の正確な料金は、必ずAWS公式サイトの料金ページでご確認ください。
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例1:Standardストレージのみの場合
- バックアップデータ合計容量: 平均 100 GB
- 保存期間: 1ヶ月
- Standardストレージ料金: 例えば 0.05 USD / GB月
- 月額ストレージ料金 ≈ 100 GB × 0.05 USD/GB月 = 5.00 USD
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例2:StandardとColdストレージを組み合わせる場合
- バックアップデータ合計容量: 平均 500 GB
- ライフサイクルポリシー: 最新1ヶ月分はStandard、それより古い分はColdに移行
- Standardストレージ使用量: 平均 100 GB
- Coldストレージ使用量: 平均 400 GB
- Standardストレージ料金: 例えば 0.05 USD / GB月
- Coldストレージ料金: 例えば 0.0125 USD / GB月 (Standardより大幅に安い)
- 月額ストレージ料金 ≈ (100 GB × 0.05 USD/GB月) + (400 GB × 0.0125 USD/GB月)
- 月額ストレージ料金 ≈ 5.00 USD + 5.00 USD = 10.00 USD
この例のように、古いデータを積極的にColdストレージに移行することで、全体のストレージコストを大幅に削減できる可能性があります。
ストレージコスト最適化のヒント:
- 適切な保存期間(世代数)の設定: 必要な期間だけバックアップを保存するようにポリシーを設定します。古すぎる、あるいは不要になったバックアップは削除することで、ストレージ容量を削減できます。
- Coldストレージの積極的な活用: 長期間保管が必要なデータは、ライフサイクルポリシーを設定して自動的にColdストレージに移行させましょう。ただし、Coldストレージからのリストアには追加費用と時間がかかる点を考慮に入れる必要があります。
- バックアップ対象のデータ量の把握: 無駄なデータまでバックアップしていないか確認しましょう。
- AWS Cost Explorerでの料金確認: AWS Cost Explorerというツールを使えば、どのサービスでどれくらいの料金がかかっているかを詳細に確認できます。AWS Backupのストレージ料金もここから確認し、傾向を把握することが重要です。
2. リストア料金:復旧するデータ量にかかる費用
AWS Backupでは、バックアップしたデータから元の状態にシステムやデータを復旧させる作業を「リストア」と呼びます。このリストアを行う際にも、料金が発生する場合があります。
例えるなら、トランクルームに預けていた荷物を取り出す際に、取り出し手数料がかかるようなものです。
課金単位:
リストア料金は、「GB(ギガバイト)」単位で計算されます。これは、「リストアによって復旧されたデータの容量」に対して課金されるということです。バックアップデータの合計容量ではなく、実際にリストアを実行した際に復旧されたデータの量に対して料金がかかります。
ストレージの種類によるリストア料金の違い:
リストア料金は、バックアップデータが保管されているストレージの種類(StandardまたはCold)によって異なります。
- Standardストレージからのリストア:
- 比較的安価な料金が設定されています。
- 例えば、0.02 USD / GB のような料金体系です。
- リストアは通常、迅速に行われます。
- Coldストレージからのリストア:
- Standardストレージからのリストア料金に加えて、「データ取り出し(Data Retrieval)料金」が別途発生します。
- データ取り出し料金は、Standardストレージからのリストア料金よりも高価です。(例: 0.10 USD / GB など)
- Coldストレージに保管されたデータはすぐにアクセスできる状態になっていないため、リストアを実行する前に、まずデータを「取り出す」プロセスが必要です。このプロセスには時間がかかり、データ量によっては数分から数時間かかる場合があります。
- 取り出し方法にも選択肢がある場合があり(例えば、迅速取り出し、標準取り出し、バルク取り出しなど)、それぞれに料金と時間が異なります。緊急度に応じて選択することになりますが、迅速な取り出しほど料金は高くなる傾向があります。
リストア料金に影響する要因:
- リストアするデータ量: リストアする対象のサイズが大きければ大きいほど、リストア料金は高くなります。
- バックアップデータの保管場所: Standardストレージからリストアするか、Coldストレージからリストアするかで、料金体系が大きく変わります。特にColdストレージからのリストアは、取り出し料金が加算されるため高価になります。
- Coldストレージからのリストア方法(必要な場合): Coldストレージからのリストア時に利用可能な取り出しオプション(迅速、標準、バルクなど)を選択した場合、その選択によって料金と時間が変動します。
リストア料金の計算例(イメージ):
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例1:Standardストレージから100GBのデータをリストア
- リストア対象データ量: 100 GB
- Standardストレージからのリストア料金: 例えば 0.02 USD / GB
- リストア料金 ≈ 100 GB × 0.02 USD/GB = 2.00 USD
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例2:Coldストレージから100GBのデータをリストア(標準取り出しを選択)
- リストア対象データ量: 100 GB
- Coldストレージからのリストア料金(取り出し料金含む): 例えば 0.10 USD / GB
- リストア料金 ≈ 100 GB × 0.10 USD/GB = 10.00 USD
- (※Standardからのリストアより高価になることがわかります)
リストアコスト最適化のヒント:
- リストア対象の選択: 本当に必要なデータだけをリストアするようにしましょう。例えば、誤って削除した特定のファイルだけをリストアするなど、可能な範囲で対象を絞ることで、リストアするデータ量を減らせます。
- Coldストレージからのリストア頻度の考慮: Coldストレージは保管コストは安いですが、リストアが高価で時間もかかるため、リストアが必要になる可能性が低いデータを保管するのに適しています。頻繁にリストアが必要になる可能性のあるデータは、Standardストレージに置いておく方が、トータルのコストパフォーマンスが高くなる場合があります。
- 緊急度に応じた取り出しオプションの選択(Coldストレージの場合): 緊急性が低い場合は、コストが安いバルク取り出しなどを検討しましょう。
リストアは通常、障害発生時などに行われるため、計画的に行うよりも突発的に発生することが多いかもしれません。しかし、それでもコストが発生する可能性があることを理解しておくことは重要です。特に、定期的なリストアテストを行う場合なども費用が発生しますので、その費用も見込んでおく必要があります。
3. データ転送料金:データの移動にかかる費用
AWSでは、データがネットワークを経由して移動する際に「データ転送料金」が発生することがあります。AWS Backupに関連するデータ転送は、主に以下のケースで考慮する必要があります。
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バックアップ時:
- バックアップ対象のサービス(EC2、RDSなど)から、バックアップ保管場所(AWS Backupのバックアップボールト)へのデータ転送。
- 通常、同一AWSリージョン内でのバックアップデータの転送は無料です。 例えば、東京リージョンで稼働しているEC2インスタンスのバックアップを、同じ東京リージョン内のバックアップボールトに保管する場合、このバックアップ転送自体にデータ転送料金はかかりません。
- ただし、リージョン間バックアップ(Cross-Region Backup) を設定した場合、ソースリージョン(バックアップ元)からターゲットリージョン(バックアップ先)へのデータ転送には料金が発生します。これは、ソースリージョンからのインターネットへのデータ転送と同じ料金体系が適用されることが多いです。
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リストア時:
- バックアップ保管場所(バックアップボールト)から、リストア先(元のサービスや別の場所)へのデータ転送。
- 通常、同一AWSリージョン内でのリストアデータの転送は無料です。 例えば、東京リージョンのバックアップボールトから、同じ東京リージョンのEC2インスタンスへリストアする場合、このリストア転送自体にデータ転送料金はかかりません。
- ただし、リージョン間リストア を行う場合(例えば、大阪リージョンのバックアップボールトから東京リージョンのEC2インスタンスへリストアする場合)や、リストアしたデータをインターネット経由でダウンロード する場合などには、データ転送料金が発生します。これは、バックアップボールトが存在するリージョンからのデータ転送として課金されます。
データ転送料金に影響する要因:
- データの移動元と移動先:
- 同一リージョン内:多くの場合無料(バックアップ・リストア時)
- リージョン間:料金発生(バックアップ・リストア時)
- AWSリージョンからインターネットへ:料金発生(リストアデータのダウンロードなど)
- データ量: 転送されるデータ量が大きければ大きいほど、料金は高くなります。
特に注意すべきデータ転送料金:リージョン間バックアップ
災害対策などの目的で、バックアップデータを元のシステムが稼働しているリージョンとは別のリージョンに保管することがあります。これを「リージョン間バックアップ(Cross-Region Backup)」と呼びます。
AWS Backupでは、バックアップポリシーを設定する際に、バックアップデータを指定した別のリージョンにコピーする設定が可能です。この設定を有効にすると、バックアップが完了した後、自動的に別のリージョンへデータが転送されます。
この際、ソースリージョン(バックアップ元のリージョン)からターゲットリージョン(バックアップ先のリージョン)へのデータ転送に対して料金が発生します。 この料金は、ソースリージョンからのデータ送信量(Outbound Data Transfer)として計算されます。
例えるなら、東京から大阪へ荷物を送る際の送料のようなものです。荷物(バックアップデータ)の量が多いほど、送料(データ転送料金)が高くなります。
データ転送料金の計算例(イメージ):
- 例:東京リージョンから大阪リージョンへ、100GBのバックアップデータを転送
- 転送データ量: 100 GB
- 東京リージョンからのデータ転送料金(インターネット向けと同等): 例えば 0.09 USD / GB
- データ転送料金 ≈ 100 GB × 0.09 USD/GB = 9.00 USD
このデータ転送料金は、バックアップストレージ料金とは別に発生します。したがって、リージョン間バックアップを設定する場合は、ストレージ料金に加えてこの転送料金も考慮に入れる必要があります。
データ転送コスト最適化のヒント:
- リージョン間バックアップの必要性の検討: 災害対策として非常に有効ですが、そのコスト(データ転送料金と、ターゲットリージョンでのストレージ料金)を理解した上で導入を検討しましょう。本当に必要なデータだけを別のリージョンにコピーするなど、ポリシーを最適化することが重要です。
- インターネットへのデータ取り出しを最小限に: リストアしたデータは、可能な限りAWS内で利用し、必要最低限の場合のみインターネット経由でダウンロードするようにしましょう。
その他の考慮事項
AWS Backupの料金体系のメインは上記のストレージ、リストア、データ転送ですが、いくつかの追加料金が発生する可能性のある機能や、考慮すべき点があります。
- AWS Backup Audit Manager: バックアップコンプライアンスを監査・報告するためのサービスです。これを利用する場合、Audit Manager自体の料金が発生します。これはAWS Backupのコア機能とは別の料金体系となります。
- AWS CloudFormationなどからの利用: AWS BackupはAPI経由でも利用できるため、AWS CloudFormationやSDKなどから自動化することも可能ですが、その操作自体に料金が発生するわけではありません。あくまで、その操作によって作成されたバックアップのストレージや、実行されたリストアに対して料金が発生します。
初心者のうちは、まずは「ストレージ」「リストア」「リージョン間転送」の3つが主な課金要素であると理解しておけば十分でしょう。
料金計算の具体例で理解を深める
ここまで、AWS Backupの主な料金要素について見てきました。ここでは、いくつかのシナリオを想定して、具体的な料金がどのように計算されるかを見てみましょう。繰り返しになりますが、以下の金額はあくまで例示であり、実際の料金はリージョン、為替レート、時期などによって変動します。正確な料金は必ずAWS公式サイトでご確認ください。
シナリオ1:小規模なEC2インスタンスのバックアップ(Standardストレージのみ)
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前提:
- EC2インスタンス (EBSボリューム 50GB) をバックアップ
- バックアップポリシー: 毎日1回バックアップ、過去14日分を保存
- データの変更頻度: 低い(毎日約1GBの増分データが発生)
- バックアップストレージ: Standardのみ
- リストアの頻度: ほとんどなし
- リージョン間バックアップ: なし
- 料金レート例: Standardストレージ 0.05 USD/GB月, Standardリストア 0.02 USD/GB
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計算(月額):
- バックアップストレージ料金:
- 最初のフルバックアップ: 約50GB
- その後の増分バックアップ: 毎日約1GB × 13日分 = 約13GB (14日分保存するため、最初のフルバックアップと後続の13日間の増分バックアップを合計した容量が保管されます。重複排除効果も考慮すると、実際にはこれより少なくなる可能性が高いですが、ここでは単純化のため最大値を想定します。)
- 合計バックアップデータ量: 約50GB + 13GB = 約63GB
- これを1ヶ月(約30日)保管した場合の合計容量 (GB月): 約63 GB月
- 月額ストレージ料金 ≈ 63 GB月 × 0.05 USD/GB月 = 3.15 USD
- リストア料金: 月に1回、10GBのデータをリストアした場合
- リストア料金 ≈ 10 GB × 0.02 USD/GB = 0.20 USD
- データ転送料金: 同一リージョン内のため無料 ≈ 0 USD
- バックアップストレージ料金:
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合計月額料金(目安): 3.15 USD (ストレージ) + 0.20 USD (リストア) + 0 USD (転送) = 約 3.35 USD
この例のように、小規模で Standard ストレージのみを利用し、リストア頻度が低ければ、月額料金は比較的安価に抑えられます。
シナリオ2:中規模なRDSデータベースのバックアップ(Standard + Coldストレージ)
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前提:
- RDSデータベース (1TB = 1000GB) をバックアップ
- バックアップポリシー: 毎日1回バックアップ
- 保存期間: 過去30日分をStandard、それより古い過去1年間分をColdストレージに保存
- データの変更頻度: 中程度(毎日約50GBの増分データが発生)
- リストアの頻度: 年に数回、Standardからリストア
- リージョン間バックアップ: なし
- 料金レート例: Standardストレージ 0.05 USD/GB月, Coldストレージ 0.0125 USD/GB月, Standardリストア 0.02 USD/GB, Coldリストア(取り出し) 0.10 USD/GB
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計算(月額):
- バックアップストレージ料金:
- Standardストレージ保管量: 最初のフルバックアップ(1000GB) + 約30日分の増分データ (約50GB/日 × 29日 = 約1450GB)。合計 約2450GB。これを1ヶ月間保管。
- Coldストレージ保管量: Standardで保管した期間より古い、過去1年分のデータ。毎月の増分データなどを考慮すると、例えば平均で合計 約 8000GB 程度がColdに保管されていると想定。これを1ヶ月間保管。
- 月額Standardストレージ料金 ≈ 2450 GB月 × 0.05 USD/GB月 = 122.50 USD
- 月額Coldストレージ料金 ≈ 8000 GB月 × 0.0125 USD/GB月 = 100.00 USD
- 合計月額ストレージ料金 ≈ 122.50 + 100.00 = 222.50 USD
- リストア料金: 年に4回、各回200GBのデータをStandardからリストアした場合
- 年間リストアデータ量: 4回 × 200GB = 800GB
- 年間リストア料金 ≈ 800 GB × 0.02 USD/GB = 16.00 USD
- 月額換算リストア料金 ≈ 16.00 USD / 12ヶ月 = 1.33 USD
- データ転送料金: 同一リージョン内のため無料 ≈ 0 USD
- バックアップストレージ料金:
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合計月額料金(目安): 222.50 USD (ストレージ) + 1.33 USD (リストア) + 0 USD (転送) = 約 223.83 USD
この例では、データ量が大きいためストレージ料金が主なコスト要因となりますが、古いデータをColdに移行することで、Standardのみの場合(例えば 8000GB × 0.05 USD = 400 USD)に比べてストレージコストを大幅に削減できていることがわかります。
シナリオ3:S3バケットのリージョン間バックアップ
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前提:
- S3バケット (合計 500GB) をバックアップ
- バックアップポリシー: 毎日1回バックアップ、過去30日分をStandardで保存
- リージョン間コピー: 有効 (東京リージョンから大阪リージョンへコピー)
- データの変更頻度: 高い(毎日約20GBの新規/更新データが発生)
- リストアの頻度: ほとんどなし
- 料金レート例: Standardストレージ 0.05 USD/GB月 (両リージョン共通), 東京リージョンからのデータ転送 0.09 USD/GB
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計算(月額):
- バックアップストレージ料金 (東京リージョン – バックアップ元):
- 合計バックアップデータ量 (30日分保存、増分考慮): 例えば合計 約 700GB (実際の容量は重複排除効果などで変動)
- 月額ストレージ料金 ≈ 700 GB月 × 0.05 USD/GB月 = 35.00 USD
- バックアップストレージ料金 (大阪リージョン – バックアップ先):
- 東京リージョンと同様のデータがコピーされるため、ストレージ量も同程度と想定: 約 700GB
- 月額ストレージ料金 ≈ 700 GB月 × 0.05 USD/GB月 = 35.00 USD
- データ転送料金 (東京→大阪):
- 毎日約20GBの新規/更新データがバックアップされ、それが大阪へ転送されると想定。
- 月間データ転送量: 約20 GB/日 × 30日 = 約600 GB
- 月額データ転送料金 ≈ 600 GB × 0.09 USD/GB = 54.00 USD
- リストア料金: ほとんどなし ≈ 0 USD
- バックアップストレージ料金 (東京リージョン – バックアップ元):
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合計月額料金(目安): 35.00 USD (東京ストレージ) + 35.00 USD (大阪ストレージ) + 54.00 USD (転送) + 0 USD (リストア) = 約 124.00 USD
この例では、リージョン間コピーを設定しているため、データ転送料金とコピー先のリージョンでのストレージ料金が追加で発生していることがわかります。特にデータ変更頻度が高い場合、毎月の転送量が多くなり、転送料金もそれなりにかかる可能性があります。
これらのシナリオからわかるように、AWS Backupの料金は、バックアップするデータの量と保存期間(特にストレージタイプ)、そしてリージョン間コピーの有無によって大きく変動します。実際に利用する際には、これらの要素を考慮してバックアップポリシーを設計することが、コスト管理の鍵となります。
コストを最適化するための戦略
AWS Backupの料金は、設定次第で大きく変わる可能性があります。無駄なコストを抑え、効率的にバックアップを行うために、以下の戦略を検討しましょう。
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バックアップポリシーの適切な設計:
- 保存期間(世代数)の最適化: 本当にデータが必要な期間だけバックアップを保存しましょう。例えば、「過去1年分」が必要なのに「過去5年分」保存しているといった無駄がないか確認します。不要になったバックアップは自動的に削除されるようにライフサイクルポリシーを設定します。
- バックアップ頻度の最適化: 必要な頻度でバックアップを取ります。毎日必要なのか、週1回で十分なのかなど、リカバリ要件(RPO: Recovery Point Objective – どこまで遡ってデータを復旧できるか)に合わせて設定します。頻度を下げれば、増分データが発生する機会が減り、ストレージ容量や転送量(リージョン間コピーの場合)を抑えることができます。
- 対象リソースの絞り込み: バックアップが必要なリソースだけをバックアップ計画の対象に含めます。テスト環境のリソースや、別の方法でバックアップしているリソースを重複してバックアップしていないか確認しましょう。
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Coldストレージの賢い活用:
- 長期保管が必要で、かつリストア頻度が非常に低いデータは、積極的にColdストレージに移行させましょう。ライフサイクルポリシーを設定することで、自動的に移行できます。Standardストレージと比較して、Coldストレージは保管コストが大幅に安いため、特に大容量のデータを長期間保存する場合に効果的です。
- ただし、Coldストレージからのリストアには追加費用と時間がかかることを忘れないでください。緊急時や頻繁なリストアが必要なデータにはStandardストレージが適しています。
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リージョン間バックアップの必要性の検討と最適化:
- 災害対策としてリージョン間バックアップは非常に有効ですが、前述のようにデータ転送料金とコピー先リージョンでのストレージ料金が発生します。
- すべてのバックアップを別のリージョンにコピーする必要があるのか、あるいは特定の重要なデータのみをコピーするのかなど、リカバリ要件(RTO: Recovery Time Objective – どのくらいの時間でシステムを復旧できるか、および RPO)とコストのバランスを考慮して設定します。
- データ変更頻度が高いリソースのリージョン間コピーは、転送料金が高くなる傾向があります。
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不要なバックアップ計画やボールトの削除:
- 使わなくなったバックアップ計画や、中にバックアップデータが残っていないバックアップボールトは削除しましょう。計画が残っていると、意図せずバックアップが実行されてしまう可能性があります。
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AWS Cost Explorerによる継続的な監視:
- AWS Cost Explorerなどの料金管理ツールを活用して、AWS Backupにかかっている費用を定期的に確認しましょう。どの要素(ストレージ、リストア、転送)に費用がかかっているかを把握することで、コスト最適化のポイントが見えてきます。
- コストを特定のリソースやアプリケーションに関連付けたい場合は、タグ付けポリシーを導入し、バックアップ計画にタグを付与すると、Cost Explorerでタグごとにコストを分析できるようになります。
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重複排除効果の理解:
- AWS Backupは自動で重複排除を行いますが、その効果はバックアップ対象のデータの内容や変更頻度によって異なります。同じようなOSイメージからの複数のEC2バックアップなどは重複排除の効果が出やすい傾向があります。この効果を過信せず、実際のストレージ使用量を定期的に確認することが重要です。
これらの戦略を組み合わせることで、AWS Backupをコスト効率よく利用することが可能になります。
料金確認の方法:どこを見ればいい?
AWS Backupにかかっている実際の料金を確認することは、コスト管理において非常に重要です。料金は主に以下の場所で確認できます。
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AWS Cost Explorer:
- 最も詳細な料金分析ができるツールです。
- サービス別に料金を確認できるため、「AWS Backup」を選べば、バックアップにかかった総費用を確認できます。
- さらに、使用タイプ別(例:
Backup.Storage.Standard
,Backup.Restore.Standard
,DataTransfer.Out.from-SourceRegion
など)にドリルダウンすることで、ストレージ、リストア、データ転送といった要素ごとの費用を確認できます。 - リソースにタグを付けている場合は、タグによるフィルタリングやグループ化を行うことで、特定のアプリケーションや環境にかかっているバックアップコストを把握することも可能です。
- 過去の利用状況や将来の料金予測なども確認できるため、コストトレンドの把握や予算策定に役立ちます。
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AWS Bills (請求ダッシュボード):
- 月ごとの請求額のサマリーを確認できます。
- サービスごとの合計請求額が一覧表示されるため、AWS Backupに今月いくらかかったのかを手っ取り早く把握できます。
- Cost Explorerほど詳細ではありませんが、全体像を掴むのに便利です。
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AWS料金計算ツール (AWS Pricing Calculator):
- これからAWS Backupを利用する場合や、設定を変更した場合に、料金がどのくらいになるかを事前に試算するためのツールです。
- バックアップ対象のデータ量、保存期間、ストレージタイプ、リージョン間コピーの有無といったパラメータを入力することで、おおよその料金を見積もることができます。
- ただし、これはあくまで見積もりであり、実際の料金はデータの変更頻度による増分バックアップ量や重複排除効果など、様々な要因で変動することに注意が必要です。
定期的にこれらのツールを確認し、想定していた料金と大きな乖離がないか、無駄なコストが発生していないかなどをチェックすることが、健全なクラウド運用には不可欠です。
よくある誤解と注意点
AWS Backupの料金について、初心者の方が陥りやすい誤解や、特に注意すべき点をまとめます。
- 「バックアップを取るだけなら無料」ではない: AWS Backupサービス自体に初期費用や固定料金はかかりませんが、バックアップしたデータが保管されるストレージには費用が発生します。これがAWS Backup料金の主要部分です。
- 「リストアはいつでも無料」ではない: リストアには通常、リストアするデータ量に応じた料金が発生します。特にColdストレージからのリストアは、追加の取り出し料金がかかります。
- Coldストレージからのリストアには時間と費用がかかる: Coldストレージは保管コストは安いですが、リストアするにはデータを取り出すプロセスが必要であり、これに時間と追加費用が発生します。緊急性の高いデータの保管には不向きです。
- リージョン間バックアップには転送料金がかかる: バックアップ元リージョンからバックアップ先リージョンへのデータ転送には、アウトバウンド転送料金が発生します。ストレージ料金とは別に考慮が必要です。
- バックアップ対象サービス側の料金: バックアップ対象となるEC2インスタンスやRDSデータベース、S3バケットなどのサービス自体には、それぞれのサービスに応じた料金(インスタンス稼働費、ストレージ料金、リクエスト料金など)が別途かかります。AWS Backupの料金は、あくまでバックアップとリストアに関連する費用です。
これらの点を理解しておくことで、料金に関する予期せぬ事態を避けることができます。
まとめ:AWS Backup料金を理解し、賢く活用するために
AWS Backupは、AWS上で稼働する様々なワークロードのバックアップを一元管理できる、非常に便利なサービスです。データ保護はクラウド利用における基本中の基本であり、AWS Backupはその強力な味方となります。
この記事では、AWS Backupの料金体系について、初心者の方にもわかりやすいように詳細に解説してきました。重要なポイントを改めてまとめます。
- AWS Backupの料金は「従量課金制」、つまり使った分だけ支払う仕組みです。
- 料金の主要な要素は、①バックアップストレージ料金、②リストア料金、③データ転送料金の3つです。
- バックアップストレージ料金が最も大きな割合を占めることが多く、バックアップデータの量と保存期間(ストレージタイプ含む)に依存します。StandardとColdという2種類のストレージがあり、Coldは保管コストが安いですが、リストアに費用と時間がかかります。
- リストア料金は、リストアするデータ量とバックアップデータの保管場所(StandardかColdか)によって決まります。Coldからのリストアには追加の取り出し料金が必要です。
- データ転送料金は、主にリージョン間バックアップや、AWSからインターネットへのデータ取り出しなどで発生します。同一リージョン内でのバックアップ・リストア転送は通常無料です。
- コスト最適化のためには、適切なバックアップポリシーの設計(保存期間、頻度)、Coldストレージの賢い活用、リージョン間バックアップの必要性の検討、そして定期的な料金確認が重要です。
- AWS Cost ExplorerやAWS Billsを使って、実際にどれくらい費用がかかっているかを常に把握しましょう。
AWS Backupの料金体系は、初見では少し複雑に感じられるかもしれません。しかし、主な課金要素と、それらに影響する要因を理解すれば、それほど難しくありません。この記事で解説した内容を参考に、まずは小規模なバックアップから始めてみて、実際に料金がどのように計上されるかを確認してみるのが良いでしょう。
データはビジネスにとってかけがえのない資産です。適切なバックアップと、そのためのコスト管理は、クラウドを安全かつ効率的に利用するための必須スキルと言えます。この記事が、皆様がAWS Backupの料金を理解し、自信を持ってバックアップ戦略を立てるための一助となれば幸いです。
最後に、AWSの料金は変更される可能性があります。この記事の情報は執筆時点のものであり、常に最新の情報はAWS公式サイトの料金ページをご確認ください。
これで、AWS Backupの料金に関する約5000語の詳細な記事は完了です。この情報が、AWS Backupを使い始める初心者の方々にとって役立つことを願っています。