Git rebaseとは?基本から分かりやすく解説

はい、承知いたしました。Git rebaseについて、基本から応用、注意点、そしてmergeとの比較まで、約5000語の詳細な解説記事を作成します。


Git rebaseとは?基本から分かりやすく解説

はじめに:なぜGit rebaseを学ぶ必要があるのか

ソフトウェア開発において、バージョン管理システムGitは不可欠なツールです。そして、Gitを効果的に使う上で、ブランチの扱いは非常に重要になります。複数の開発者が並行して作業を進める際、それぞれが自身のブランチで開発を行い、その後それらの変更を本流となるブランチ(例: maindevelop)に取り込む必要があります。

この「変更を取り込む」操作には、主に二つの方法があります。一つはgit merge、もう一つがgit rebaseです。git mergeは比較的分かりやすく、多くのユーザーが最初に学ぶブランチ統合の方法です。しかし、Gitにはもう一つの強力な選択肢であるgit rebaseが存在します。

git rebaseは、直訳すると「基底(ベース)を置き換える」という意味です。これは、あるブランチの変更履歴を、別のブランチの最新の状態の上に「再適用」する操作です。この操作により、開発履歴を直線的で綺麗な状態に保つことができます。

git rebasegit mergeよりも複雑に感じるかもしれませんが、これを使いこなすことで、より整理されたコミット履歴を作成したり、他のブランチの最新の変更を自分のブランチに取り込みやすくなったりするなど、様々なメリットがあります。特にチーム開発においては、どのようにブランチを統合するかは開発効率や履歴の可読性に大きく影響するため、rebaseの理解は非常に重要です。

この記事では、Git rebaseの基本的な概念から始め、その仕組み、具体的な使い方、そして-iオプションを使ったインタラクティブrebaseの強力な機能について詳しく解説します。また、mergeとの違いや、rebaseを使う上での注意点・リスク、さらにはトラブルシューティングの方法まで、網羅的に説明します。この記事を読むことで、Git rebaseを深く理解し、日々の開発ワークフローに効果的に取り入れられるようになることを目指します。

Gitの基本概念の復習:rebase理解の前提

rebaseを理解するためには、いくつかの基本的なGitの概念をしっかりと押さえておく必要があります。

1. コミット (Commit)

Gitにおけるコミットは、プロジェクトの特定の時点でのスナップショットです。各コミットには、以下の情報が含まれています。

  • 変更内容: その時点でのファイルの状態。
  • コミットメッセージ: その変更がどのような内容であるかを説明するテキスト。
  • 作成者: コミットを作成したユーザー情報。
  • タイムスタンプ: コミットが作成された日時。
  • 親コミット: そのコミットが基づいている、一つ前のコミットへのポインタ。最初のコミット(ルートコミット)以外は、通常一つ以上の親コミットを持ちます(マージコミットは複数の親を持ちます)。

これらの情報、特に親コミットへのポインタによって、Gitの履歴はコミットの鎖として表現されます。

2. ブランチ (Branch)

ブランチは、コミットへの軽量なポインタです。ブランチを作成するということは、単に現在のコミットを指す新しいポインタを作成することです。コミットを行うたびに、現在チェックアウトしているブランチのポインタは、新しく作成されたコミットに進みます。ブランチは、メインの開発ラインから分岐して、独立した作業を行うために使われます。

3. HEAD

HEADは、現在チェックアウトしているコミットを指す特別なポインタです。通常、HEADはローカルブランチ(例: main, feature/my-featureなど)を指しており、そのブランチは特定のコミットを指しています。つまり、HEADは「あなたが今作業している場所」を示しています。コミットすると、HEADが指すブランチが前進します。

4. upstream/origin

リモートリポジトリ(例: GitHub, GitLabなど)上のブランチを指す際に使われる概念です。例えば、origin/mainは、リモートリポジトリorigin上のmainブランチの最新の状態を指します。ローカルブランチをリモートブランチにプッシュしたり、リモートブランチからプルしたりする際に、これらのリモート追跡ブランチを参照します。rebaseの文脈では、自分のローカルブランチを、リモートの共有ブランチ(例: origin/main)の最新状態の上にrebaseすることがよく行われます。

5. コミットグラフ

Gitの履歴は、コミットをノード、親コミットへのポインタをエッジとする有向非巡回グラフ(DAG: Directed Acyclic Graph)として表現されます。rebaseやmergeといった操作は、このグラフ構造に影響を与えます。rebaseは、既存のコミットを「コピー」して、新しい場所に「貼り付ける」操作に近いため、グラフの見た目を大きく変える可能性があります。

これらの基本概念を踏まえた上で、Git rebaseの具体的な仕組みと使い方を見ていきましょう。

Git rebaseの基本的な仕組み

git rebase <base>コマンドは、現在のブランチ(HEADが指しているブランチ)を、指定した<base>ブランチの最新の状態の上に移動させる操作です。

具体的には、以下の手順で実行されます。

  1. 共通の祖先を探す: 現在のブランチと<base>ブランチの、最も新しい共通の祖先コミットを見つけます。
  2. 現在のブランチのコミットを一時的に保存: 共通の祖先から現在のブランチの先端までのコミット群を一時的な領域(パッチとして)に保存します。
  3. 現在のブランチを<base>ブランチの先端に移動: 現在のブランチ(HEAD)を、<base>ブランチの最新のコミットの位置に移動させます。
  4. 一時保存したコミットを再適用: 手順2で保存しておいたコミット群を、手順3で移動したブランチの先端の上に順番に一つずつ適用していきます。

この「再適用」の過程で、各コミットが適用される際に、ベースとなるコミット(直前のコミット)からの差分が計算され、現在のワーキングツリーに適用されます。もし、再適用しようとしているコミットの変更内容と、現在のブランチ(新しいベースの上)の変更内容が衝突する場合、コンフリクトが発生します。

例で考える:

以下のコミットグラフを考えます。

A --- B --- C (main)
\
D --- E (feature)

ここで、featureブランチで作業を続けている間に、mainブランチに新しいコミットCが追加されました。featureブランチをmainの最新状態に追従させたい場合、git rebase mainを実行します。

  1. 共通の祖先: mainfeatureの共通の祖先はBです。
  2. コミットを保存: featureブランチ上の、共通の祖先Bよりも新しいコミット(DE)を一時的に保存します。
  3. HEADを移動: featureブランチのポインタをmainの先端、つまりCに移動させます。
  4. コミットを再適用: 保存しておいたコミットDEを、Cの上に順番に適用します。まずDを適用し、新しいコミットD'が作成されます(内容やメッセージはDと同じですが、親コミットがCになります)。次にEを適用し、新しいコミットE'が作成されます(親コミットがD'になります)。

rebase完了後のコミットグラフは以下のようになります。

A --- B --- C --- D' --- E' (main, feature)

※注意:mainブランチはrebaseの影響を受けず、元のままです。featureブランチのポインタが移動し、新しいコミットD'E'が追加され、古いコミットDEは参照されなくなります(最終的にはGitのガベージコレクションによって削除されます)。

rebaseの結果、featureブランチの履歴はmainブランチの先端から直線的に伸びる形になりました。これがrebaseの基本的な仕組みです。古いコミットDEは新しいコミットD'E'に置き換えられていることに注意してください。rebaseはコミットを書き換える(古いコミットを新しいコミットに置き換える)操作です。

rebaseの具体的な使い方とコンフリクト解消

基本的なgit rebase <base>コマンドは、現在のブランチを<base>ブランチの上に移動させるために使われます。

基本的なコマンド実行例

現在のブランチがfeatureで、mainブランチの最新状態を取り込みたい場合:

“`bash

まず、作業ブランチがfeatureであることを確認

git status

または

git branch

featureブランチがチェックアウトされている状態で

git rebase main
“`

このコマンドを実行すると、Gitは前述の手順に従ってrebaseを開始します。

rebase中のコンフリクト解消

コミットを再適用する過程で、コンフリクトが発生することがあります。コンフリクトが発生すると、Gitはrebaseの処理を一時停止し、コンフリクトが発生したファイルとコミットを教えてくれます。

例:コミットD'を適用する際にコンフリクトが発生した場合

Applying: コミット D のメッセージ
Using index info to reconstruct a base tree...
Falling back to patching...
Applying patch for コミット D のメッセージ
error: conflicted during patch at file.txt
Patch failed at 0001 コミット D のメッセージ
When you have resolved this problem run "git rebase --continue".
If you would prefer to skip this patch, run "git rebase --skip".
To abort and get back to the state before the rebase, run "git rebase --abort".

Gitは親切にも、次に何をすべきかの指示を出してくれます。

  1. コンフリクトの確認: git statusを実行して、コンフリクトが発生しているファイルを確認します。
  2. コンフリクトの解消: エディタでコンフリクトが発生しているファイルを開き、<<<<<<<, =======, >>>>>>>といったマーカーを参考に、手動で変更を修正します。
  3. 変更をステージング: コンフリクトを解消したファイルをステージングします。git add <conflicted_file>
  4. rebaseの続行: git rebase --continueコマンドを実行して、rebase処理を再開します。

コンフリクトが再び発生しない限り、Gitは次のコミットの適用に進みます。すべてのコミットが正常に再適用されれば、rebaseは完了します。

rebaseの中断、スキップ、続行

コンフリクト発生時や、rebaseの途中で状況を確認したい場合に、以下のコマンドを使います。

  • git rebase --continue: コンフリクトを解消し、git addでステージングした後、rebase処理を続行します。
  • git rebase --skip: 現在適用しようとしているコミットをスキップして、次のコミットの適用に進みます。これは、そのコミットで行われた変更全体を取り込まないことを意味します。注意して使用してください。
  • git rebase --abort: rebase処理を完全に中止し、rebase開始前の状態に戻します。何か問題が発生したり、rebaseの方針を変えたい場合に実行します。安全に元の状態に戻れるため、迷ったらまず--abortを検討するのも良いでしょう。

rebaseのユースケース:なぜrebaseを使うのか

rebaseは単にブランチを移動させるだけでなく、履歴を整理するための強力なツールとして様々な場面で活用できます。

1. Featureブランチを最新のmain/developに追従させる

最も一般的なユースケースです。自分が作業しているフィーチャーブランチが、メインの開発ライン(maindevelop)から分岐してしばらく経つと、メインラインには他の開発者による変更がコミットされていることがあります。これらの変更を自分のフィーチャーブランチに取り込むことで、以下のメリットが得られます。

  • コンフリクトの早期発見: 他の変更との競合を早い段階で発見し、解消できます。マージ時にまとめて大きなコンフリクトを解消するよりも、rebaseで一つ一つのコミットを適用する際に小さくコンフリクトを解消していく方が、一般的に楽であるとされています。
  • 最新のコードベース上での開発: 最新の機能やバグ修正を取り込んだ状態で自分の作業を進められます。
  • 直線的な履歴: rebaseによって、フィーチャーブランチの履歴がメインラインの先端に繋がり、まるでメインラインから直接作業を開始したかのような綺麗な履歴になります。

“`bash

featureブランチにいることを確認

git checkout feature

mainブランチの最新状態を取得

git fetch origin
git rebase origin/main

または、ローカルのmainが最新なら

git rebase main

rebase中にコンフリクトが発生したら解消 -> git add . -> git rebase –continue

問題があれば git rebase –abort

rebase完了後、featureブランチはorigin/mainの先端の上に移動している

“`

rebase完了後、featureブランチはorigin/mainの新しいコミットの上に移動しています。もし、このfeatureブランチをリモートリポジトリにもプッシュしている場合、履歴が書き換わっているため、通常のgit pushは拒否されます。この場合、git push --forceまたはgit push --force-with-leaseを使用する必要があります。ただし、既に他の開発者がそのリモートブランチからプルしている可能性がある場合は、非常に注意が必要です。 この点については後述の注意点で詳しく説明します。

2. 複数の小さいコミットを一つにまとめる (Squash)

開発中に、一時的なコミットや、一つの論理的な変更を細かく分けすぎたコミットが多数生まれることがあります。これらのコミットを、最終的に一つ(あるいはいくつか)の、より意味のある大きなコミットにまとめたい場合に、rebaseが非常に役立ちます。これはインタラクティブrebase (git rebase -i) の機能の一つです。

例えば、ある機能の実装のために5つの小さなコミットを作成したとします。

... -- A -- B -- C -- D -- E (feature)

これらのコミットBからEを、一つにまとめたい場合。共通の祖先Aの次のコミットBの直前のコミット(つまりA自体)をベースとしてインタラクティブrebaseを開始します。

“`bash
git rebase -i HEAD~4

または、Aのコミットハッシュがxxxxxなら

git rebase -i xxxxx

“`

コマンド実行後、エディタが開き、rebaseの対象となるコミットリストが表示されます。

“`
pick B Bのコミットメッセージ
pick C Cのコミットメッセージ
pick D Dのコミットメッセージ
pick E Eのコミットメッセージ

Rebase xxxxx..yyyyy onto zzzzz

Commands:

p, pick = use commit

r, reword = use commit, but edit the commit message

e, edit = use commit, but stop for amending

s, squash = use commit, but meld into previous commit

f, fixup = like “squash”, but discard this commit’s log message

x, exec = run command (the rest of the line) after checkout

b, break = stop here for a break

d, drop = remove commit

l, label

t, tag = tag the commit

m, merge [-C | -c ]

These lines can be re-ordered; they are executed from top to bottom.

If you remove a line here THAT COMMIT WILL BE LOST.

However, if you remove everything, the rebase will be aborted.

“`

このリストで、最初のコミット(B)はpickのままにし、それに続けたいコミット(C, D, E)のpicksquashまたはfixupに変更します。

pick B Bのコミットメッセージ
squash C Cのコミットメッセージ
squash D Dのコミットメッセージ
fixup E Eのコミットメッセージ # Eのメッセージは不要ならfixup

ファイルを保存してエディタを閉じると、Gitは指定された操作を実行します。squashを指定したコミットは、直前のpickまたはsquashのコミットとマージされ、一つの新しいコミットになります。その際、新しいコミットメッセージを作成するためのエディタが開きます(fixupの場合は直前のコミットメッセージがそのまま使われます)。

squash後の履歴:

... -- A -- F (feature) # FはB, C, D, Eをまとめた新しいコミット

このように、rebaseを使うことで、開発の途中で生まれた細かい変更履歴を、最終的な納品・統合前に整理し、意味のある大きな変更単位にまとめることができます。

3. コミットの順番を変える、編集する、削除する

インタラクティブrebase (-i) は、コミットの順番を変えたり、特定のコミットを編集(内容の修正やメッセージの変更)したり、不要なコミットを削除したりすることも可能です。

例えば、以下の履歴があるとします。

... -- A -- B -- C -- D -- E (feature)

  • 順番の変更: コミットBCの順番を入れ替えたい場合、rebase TODOファイルでpick Bpick Cの行を入れ替えます。ただし、依存関係のあるコミットの順番を無理に入れ替えるとコンフリクトが発生しやすいので注意が必要です。
  • 編集 (edit / amend): コミットCの内容を少し修正したい場合、rebase TODOファイルでpick Cedit Cに変更します。rebaseがCまで進むと一時停止するので、そこでファイルの内容を修正し、git add .git commit --amend でコミットを修正します。修正後、git rebase --continueで再開します。
  • コミットメッセージの変更 (reword): コミットDのメッセージを変更したい場合、pick Dreword Dに変更します。rebaseがそのコミットまで進むと、メッセージ編集用のエディタが開きます。
  • 削除 (drop): コミットEを完全に削除したい場合、rebase TODOファイルからpick Eの行を削除します。

これらの操作も、すべてインタラクティブrebase (git rebase -i <base>) を通して行います。<base>には、変更したい最も古いコミットの親を指定します。例えば、B, C, D, Eを操作対象としたい場合は、git rebase -i Aまたはgit rebase -i HEAD~4のように指定します。

これらの強力な機能を使うことで、ローカルブランチの履歴を、他の開発者と共有する前にクリーンアップし、分かりやすい状態に整えることができます。

Interactive Rebase (-i) の詳細

git rebase -i <base>コマンドは、Git rebaseの最も強力な機能の一つです。<base>には、再構築したい履歴の起点となるコミットを指定します。例えば、git rebase -i HEAD~3とすると、現在のHEADから遡って3つ分のコミットを対象にインタラクティブrebaseを行います。

インタラクティブrebaseを開始すると、デフォルトのエディタで以下のような内容のファイルが開きます(内容は対象コミットによって異なります)。

pick <commit_hash> <commit_message>
pick <commit_hash> <commit_message>
...

このファイルには、対象となる各コミットについて、デフォルトでpickコマンドとそのコミットハッシュ、メッセージが記載されています。このファイルの上部にあるpickのリストが、Gitが再適用しようとするコミットとその順番です。下部には、利用可能なコマンドのリストとその説明が記載されています。

このファイルを編集することで、対象コミットに対して様々な操作を指示できます。コマンドリストとそれぞれの意味を詳しく見ていきましょう。

コマンドリストと詳細

  1. p, pick <commit>:

    • 意味: そのコミットをそのまま使用します。履歴にそのコミットを含めます。
    • 使い方: デフォルトの状態。変更を加えない場合はそのままにしておきます。
  2. r, reword <commit>:

    • 意味: そのコミットを再適用する際に、コミットメッセージを編集します。
    • 使い方: pickrewordに変更します。そのコミットが適用される際に、メッセージ編集用のエディタが開きます。
  3. e, edit <commit>:

    • 意味: そのコミットを適用した後にrebaseプロセスを一時停止します。これにより、そのコミットの内容を修正(ファイルの内容変更、追加、削除など)し、git commit --amendでコミットを修正することができます。
    • 使い方: pickeditに変更します。一時停止したら、必要な修正を行い、git add <files>で変更をステージし、git commit --amendでコミットを修正します。修正後、git rebase --continueで再開します。
  4. s, squash <commit>:

    • 意味: そのコミットを、直前のコミットに「まとめます」。このコミットの変更内容と直前のコミットの変更内容が結合され、一つの新しいコミットとして記録されます。新しいコミットメッセージを作成するためのエディタが開きます。
    • 使い方: まとめたいコミット行のpicksquashに変更します。 squashしたいコミットは、まとめ先のコミットの直下に配置されている必要があります。通常、最初のコミットはpickのままにし、その後のコミットをsquashにします。
  5. f, fixup <commit>:

    • 意味: squashと同様に直前のコミットにまとめますが、このコミット自体のコミットメッセージは破棄されます。マージ先のコミットメッセージがそのまま使われます。一時的なコミットや、メッセージが不要な小さな修正コミットをまとめるのに便利です。
    • 使い方: まとめたいコミット行のpickfixupに変更します。squashと同様、まとめ先のコミットの直下に配置されている必要があります。
  6. x, exec <command>:

    • 意味: その行の場所に到達した際に、指定されたシェルコマンドを実行します。例えば、特定のコミットが正常にビルドできるか、テストに合格するかなどを自動的に確認するのに使えます。
    • 使い方: exec <実行したいシェルコマンド>という行を追加します。
  7. b, break:

    • 意味: その行の場所に到達した際にrebaseプロセスを一時停止します。手動で何かを確認したり、別の操作を行ったりするための休憩地点を設けるのに使います。
    • 使い方: breakという行を追加します。一時停止したら、必要な操作を行い、git rebase --continueで再開します。
  8. d, drop <commit>:

    • 意味: そのコミットを履歴から完全に削除します。
    • 使い方: そのコミット行自体を削除するか、pickdropに変更します。削除したコミットは失われます
  9. l, label <label>:

    • 意味: 現在のHEADにラベルを付けます。後述のmergeコマンドで特定のコミット範囲を参照する際に使われます。
    • 使い方: label <ラベル名>という行を追加します。
  10. t, tag <tag>:

    • 意味: そのコミットにタグを付けます。
    • 使い方: tag <タグ名>という行を追加します。
  11. m, merge [-C <commit> | -c <commit>] <label>...:

    • 意味: 指定されたラベルやコミットを現在のHEADにマージし、一時停止します。主にlabelコマンドと組み合わせて、複雑な履歴操作を行う際に使用されます。通常のブランチ統合のためのgit mergeとは異なります。
    • 使い方: labelコマンドで特定のコミットにラベルを付けた後、そのラベルを指定してmergeコマンドを使います。

インタラクティブrebase TODOファイルの注意点

  • 行の順番: TODOファイルに記載されているコミットの行は、下から上に(古いコミットから新しいコミットへ)実行されます。行の順番を入れ替えることで、コミットの適用順を変更できます。ただし、コミット間の依存関係によっては、順番を入れ替えることで大規模なコンフリクトが発生する可能性があります。
  • 行の削除: TODOファイルから行を削除すると、そのコミットは履歴から削除されます。
  • ファイル全体の削除: TODOファイルの内容をすべて削除して保存すると、rebaseは中止されます(git rebase --abortと同じ効果)。
  • コメント行: #で始まる行はコメントであり、無視されます。説明文などを追加できます。

interactive rebaseの具体的なシナリオ例

例えば、以下の履歴を考えます。

A -- B -- C -- D -- E -- F (feature)

  • B: 初期実装
  • C: バグ修正A
  • D: 新機能Xの一部
  • E: 新機能Xの残り
  • F: バグ修正B

この履歴を、より整理された状態にしたいとします。

  1. BCをまとめて「初期実装とバグ修正A」とする。
  2. DEをまとめて「新機能Xの実装」とする。
  3. Fはそのまま「バグ修正B」として残す。
  4. 最終的なコミット順を「初期実装」「新機能X」「バグ修正B」とする。

インタラクティブrebaseの対象とするのは、Aの後のコミットすべてなので、git rebase -i Aまたはgit rebase -i HEAD~5を実行します。開いたエディタで、以下の様にTODOファイルを編集します。

“`
pick B Bの初期実装
fixup C Cのバグ修正A # CをBにまとめる(メッセージ不要)
pick D Dの新機能Xの一部
squash E Eの新機能Xの残り # EをDにまとめる(新しいメッセージ作成)
pick F Fのバグ修正B

コミットの順番を整理

最初の pick B から fixup C までがまとまって新しいコミットになる

次の pick D から squash E までがまとまって新しいコミットになる

最後の pick F はそのまま

エディタを閉じると、Gitが処理を開始する。

DとEをまとめる際に、新しいコミットメッセージ入力用のエディタが開く。

例:

新機能Xの実装

バグ修正AをまとめたコミットのメッセージはBのメッセージになる。

バグ修正BのコミットメッセージはFのメッセージのまま。

“`

この操作の結果、履歴は以下のようになります。

A -- B+C -- D+E -- F (feature)

ここで、B+CBCをまとめた新しいコミット、D+EDEをまとめた新しいコミットです。これらのコミットは新しいハッシュを持ちます。

インタラクティブrebaseは、このように開発履歴を整形するのに非常に強力なツールです。プルリクエストを出す前に、自分のローカルブランチの履歴を綺麗にしてからプッシュする、といったワークフローでよく利用されます。

rebaseの注意点とリスク

rebaseは強力な機能ですが、使い方を誤ると履歴を混乱させたり、他の開発者との連携を阻害したりする可能性があります。最も重要な注意点は、rebaseはコミットの履歴を書き換える操作であるということです。

履歴の書き換えと新しいコミット

前述の通り、rebaseは既存のコミットを一時的に保存し、新しいベースの上に再適用することで、元のコミットとは異なるハッシュを持つ新しいコミットを作成します。これは、元のコミットが持つ情報(変更内容、メッセージなど)は引き継がれますが、親コミットが異なるためです。つまり、rebaseは既存のコミットを削除し、新しいコミットに置き換える「履歴の書き換え」操作です。

共有ブランチでのrebaseの原則

Gitコミュニティにおける一般的な原則として、「公開されている(リモートリポジトリにプッシュされ、他の開発者がプルする可能性がある)ブランチに対してrebaseを行ってはならない」というものがあります。

理由:

  1. 他の開発者の履歴との不整合: あなたがrebaseして履歴を書き換えたブランチをリモートにpush --forceすると、他の開発者がプルした際に、彼らが持っているローカルの履歴とリモートの履歴が不整合を起こします。他の開発者はあなたの新しい履歴を強制的にプルするか、複雑な履歴解決(git pull --rebaseなど)を行わなければならなくなり、混乱の原因となります。
  2. 共同作業の困難化: rebaseによってコミットハッシュが変わるため、他の開発者があなたの古いコミットを指している場合、その参照が無効になります。これは、特定のコミットについて議論したり、cherry-pickしたりするのを困難にします。

いつrebaseを使って良いか?

  • 公開されていないローカルブランチ: まだリモートリポジトリにプッシュしていない、あるいはプッシュしていてもあなた一人だけが使用しているフィーチャーブランチなど。
  • 自分のローカルのメインブランチのクリーンアップ: リモートのmainをプルする前に、ローカルのmainでうっかりコミットしてしまった場合など。

push --forceの危険性

rebaseによってローカルブランチの履歴を書き換えた後、その変更をリモートリポジトリに反映させるためには、通常git push --forceコマンドが必要です。これは、リモートリポジトリのブランチが、あなたのローカルブランチが持つコミットの親として認識しない、古いコミットを指しているためです。

しかし、push --forceはリモートリポジトリの履歴を一方的に上書きします。もし他の開発者がそのブランチに新しいコミットをプッシュしていた場合、あなたのpush --forceはそのコミットを削除してしまいます。

より安全な代替手段として、git push --force-with-leaseがあります。このコマンドは、リモートブランチがあなたが最後にプル/フェッチした時から変更されていない場合にのみプッシュを成功させます。これにより、他の開発者があなたの知らない間にコミットをプッシュしている場合に、その変更を誤って上書きしてしまうリスクを減らせます。

git push --force-with-lease の使い方:

bash
git push --force-with-lease origin feature-branch

それでも、--force--force-with-leaseを使用する際には、必ずリモートブランチの状況を確認し、チームメンバーと十分に連携することが重要です。

rebaseが向いているケース、向いていないケース

  • rebaseが向いているケース:
    • 自分のローカルのフィーチャーブランチを、共有ブランチ(mainなど)の最新状態に追従させたい場合。
    • プルリクエストを出す前に、ローカルブランチの細かいコミットを整理・統合して、レビューしやすい綺麗な履歴を作成したい場合。
    • ローカルで間違ってコミットした履歴を修正・削除したい場合。
  • rebaseが向いていないケース:
    • 複数の開発者が共同で作業している共有ブランチの履歴を書き換える場合。
    • 既に他の開発者がプルしているリモートブランチの履歴を書き換える場合。
    • 複雑なマージ操作の履歴(誰が何をいつマージしたか)を残しておきたい場合。(この場合はgit mergeの方が適しています)

結論として、rebaseは非常に強力な履歴操作ツールですが、その「履歴を書き換える」という性質上、使用範囲をローカルの非公開ブランチに限定するか、チームの合意と十分な注意を持って使用する必要があります。

merge vs rebase: どちらを使うべきか?

Gitでブランチの変更を統合する際に、git mergegit rebaseという二つの主要な選択肢があります。それぞれが異なる履歴構造を作り出し、異なるメリット・デメリットを持っています。どちらを選ぶべきかは、プロジェクトのポリシー、チームのワークフロー、そしてどのような履歴を残したいかによって異なります。

git merge

git merge <branch>コマンドは、指定した<branch>の変更履歴を現在のブランチに取り込みます。

仕組み:

マージ元のブランチ(<branch>)とマージ先ブランチ(現在のブランチ)の共通の祖先コミットを見つけ、両ブランチの先端からの差分を統合した新しい「マージコミット」を作成します。マージコミットは、マージ元のブランチの先端コミットとマージ先ブランチの先端コミットの二つを親として持ちます。

例:

A --- B --- C (main)
\
D --- E (feature)

featureブランチからmainブランチにマージする場合(mainブランチでgit merge featureを実行)。

A --- B --- C --- F (main)
\ /
D --- E / (feature)

ここで、Fがマージコミットです。Fの親はCEです。

メリット:

  • 履歴の正確性: マージ操作がコミットとして記録されるため、いつどのブランチがマージされたか、という事実が履歴として明確に残ります。これは、後から履歴を辿る際に、どの変更がどの開発ラインから来たのかを理解するのに役立ちます。
  • 非破壊的な操作: 既存のコミット履歴を書き換えません。新しいマージコミットを追加するだけです。そのため、共有ブランチに対しても安全に使用できます。

デメリット:

  • 複雑な履歴: マージを頻繁に行うと、履歴が多くの分岐やマージコミットで入り乱れ、視覚的に追いにくくなる傾向があります。特に、短期的なフィーチャーブランチを頻繁にマージする場合に顕著です(「マージヘルメット」と呼ばれる状態)。

git rebase

git rebase <base>コマンドは、現在のブランチの変更を、指定した<base>ブランチの先端の上に再適用します。

仕組み:

共通の祖先から現在のブランチの先端までのコミット群を一時的に保存し、現在のブランチを<base>の先端に移動させた後、保存しておいたコミット群を一つずつ再適用します。この過程で、元のコミットと同じ内容を持つ新しいコミットが作成されますが、親コミットは異なります。

例:

A --- B --- C (main)
\
D --- E (feature)

featureブランチをmainの上にrebaseする場合(featureブランチでgit rebase mainを実行)。

A --- B --- C --- D' --- E' (main, feature)

ここで、D'Dを、E'Eを再適用してできた新しいコミットです。featureブランチのポインタはE'を指します。mainブランチは影響を受けません。

メリット:

  • 直線的で綺麗な履歴: フィーチャーブランチの変更がメインラインの先端に繋がるため、履歴が直線的になり、視覚的に追跡しやすくなります。まるで、メインラインから直接作業を始めたかのような履歴になります。
  • マージコミットの削減: 不要なマージコミットが作成されないため、履歴がシンプルになります。
  • インタラクティブrebaseによる履歴の整理: コミットの統合、編集、削除、並べ替えといった操作を組み合わせることで、より意味のある単位で整理されたコミット群を作成できます。

デメリット:

  • 履歴の書き換え: 既存のコミットが新しいコミットに置き換えられるため、履歴が破壊されます。これにより、既にその履歴をプルしている他の開発者との間で問題が発生する可能性があります(前述の注意点参照)。
  • コンフリクト解消の機会: rebase中にコンフリクトが発生した場合、マージコミットで一度に解消するのではなく、rebaseの対象となる各コミットを適用するたびにコンフリクト解消が必要になる可能性があります。ただし、これは「小さいコンフリクトを複数回解消する方が、大きいコンフリクトを一度に解消するより楽だ」と捉えることもできます。

Fast-forward merge と rebase

git mergeには、「Fast-forward merge」と呼ばれる特別なケースがあります。これは、マージ元ブランチの先端コミットが、マージ先ブランチの先端コミットの直接の子孫である場合に発生します。この場合、Gitは新しいマージコミットを作成せず、単にマージ先ブランチのポインタをマージ元ブランチの先端に移動させるだけです。

例:

A --- B --- C (main, feature)

mainブランチからfeatureブランチを作成し、featureブランチでDEをコミットしたとします。mainブランチには新しいコミットは追加されていません。

A --- B --- C (main)
\
D --- E (feature)

この状態でmainブランチでgit merge featureを実行すると、featuremainの直接の子孫(Cの子孫)なので、Fast-forward mergeが発生します。

A --- B --- C --- D --- E (main, feature)

結果としてできる履歴は、git rebase mainfeatureブランチで実行した場合と同じ直線的な履歴になります(ただし、rebaseの場合はDEが新しいハッシュを持つD'E'になる可能性がありますが、Fast-forward mergeは既存のコミットをそのまま使います)。

しかし、マージ元ブランチがマージ先ブランチの直接の子孫でない場合(つまり、マージ先ブランチにも新しいコミットがある場合)、Fast-forward mergeはできません。その場合は、通常の3-way mergeが行われ、マージコミットが作成されます。

git merge --no-ffオプションを使用すると、Fast-forward mergeが可能な場合でも強制的にマージコミットを作成させることができます。これは、履歴にマージの事実を明確に残したい場合に有用です。

どちらを選ぶべきか?

  • 履歴の正確性を重視する場合: いつどのブランチがマージされたかという事実を履歴に残したい場合は、git mergeが適しています。特に、長期的なブランチ(例: releaseブランチやhotfixブランチ)をmain/developにマージする際など、マージのイベント自体が重要な情報となる場合に有用です。
  • 履歴のシンプルさと整理を重視する場合: 短期的なフィーチャーブランチで作業している際に、メインラインの最新状態をこまめに取り込みたい、あるいはプルリクエストを出す前に履歴を綺麗に整理したい場合は、git rebaseが適しています。個人のローカルブランチでの作業に集中し、後からクリーンアップしてメインラインに貢献するというワークフローに向いています。
  • チームのポリシー: 最終的には、チームとしてどちらの戦略を採用するかを決定するのが最も重要です。マージベースのワークフロー、rebaseベースのワークフロー、あるいは両者を組み合わせたワークフロー(例: フィーチャーブランチのローカルでのクリーンアップにrebaseを使い、メインブランチへの統合にはmergeを使う)など、様々な方法があります。チーム内で議論し、合意形成されたワークフローに従うことが、混乱を防ぐ上で不可欠です。

一般的には、公開されていないローカルのフィーチャーブランチで作業している際はgit rebaseを使ってメインブランチに追従し、そのフィーチャーブランチをメインブランチに統合する際はgit mergeを使ってマージコミットを作成する、という組み合わせがよく採用されます。この方法は、個人の作業中は履歴を綺麗に保ちつつ、チーム全体の共有履歴ではマージの記録を残すことができます。

rebaseの応用的な使い方

基本的なgit rebase <base>やインタラクティブrebase (-i) 以外にも、rebaseにはいくつかの応用的な使い方があります。

git rebase --onto <newbase> <upstream> <branch>

この形式のrebaseは、特定のコミット範囲を、指定した別のコミットの上に移動させるために使用します。

  • <newbase>: 変更を適用したい新しい基底(ベース)となるコミット(またはブランチ)です。
  • <upstream>: 移動させたいコミット範囲の「起点」となるコミットです。Gitは<upstream>コミットより新しく、かつ<branch>コミットまでの範囲を特定します。
  • <branch>: 移動させたいコミット範囲の「終点」となるブランチです。通常は現在のブランチを指定します(省略可能)。

例:

以下の履歴を考えます。feature-aブランチからfeature-bブランチを分岐し、その後mainにも新しいコミットが追加されています。

A --- B --- C (main)
\
D --- E (feature-a)
\
F --- G (feature-b)

feature-bブランチで行った変更(コミットFG)を、mainブランチの最新(コミットC)の上に移動させたいとします。このとき、単にgit rebase mainfeature-bブランチで実行すると、feature-bのベースは元々feature-aだったので、D, E, F, Gの全てがmainの上に再適用されてしまいます。

そうではなく、feature-aからの分岐点であるE以降のコミット(FG)だけを、新しいベースであるCの上に移動させたい。このような場合に--ontoオプションを使います。

feature-bブランチをチェックアウトした状態で、以下のコマンドを実行します。

“`bash
git checkout feature-b
git rebase –onto main feature-a

または git rebase –onto C E # より厳密にコミットハッシュを指定

“`

  • <newbase>: main (または C)
  • <upstream>: feature-a (または E)
  • <branch>: 省略されているので現在のブランチ feature-b

このコマンドは、「feature-a(またはE)からfeature-bまでのコミット範囲(つまりFG)を特定し、それをmain(またはC)の上に再適用する」という意味になります。

rebase後の履歴:

A --- B --- C --- F' --- G' (main, feature-b)
\
D --- E (feature-a)

feature-aブランチは元のまま残り、feature-bブランチがmainの上に移動し、新しいコミットF'G'が作成されました。

この--ontoオプションは、あるブランチから切り出した特定のコミット群を、元のブランチとは全く関係ない別のブランチの上に移動させたい場合などに非常に強力です。

git rebase --exec <command>

これはインタラクティブrebase (-i) のexecコマンドと同じ機能を、コマンドラインオプションとして指定するものです。rebaseの対象となる各コミットが再適用されるたびに、指定したシェルコマンドを実行します。

例えば、rebaseの対象となるすべてのコミットについて、それぞれ適用後にビルドとテストを実行したい場合:

bash
git rebase -i main --exec "make test"

これにより、各コミットの適用後にmake testが実行され、もしテストが失敗すればrebaseが一時停止し、問題の特定と修正を行うことができます。これは、不良なコミットを履歴に含めないようにするのに役立ちます。

git rebase --autosquash

このオプションは、インタラクティブrebase (-i) を実行する際に、特定のコミットを自動的にsquashまたはfixupとしてマークするためのものです。

具体的には、コミットメッセージがsquash! <subject>またはfixup! <subject>という形式になっているコミットを、<subject>が一致する直前のコミットに自動的にまとめるように、rebase TODOファイルを準備してくれます。

使い方:

“`bash

例えば、直前のコミットを修正するコミットを作成

git commit –fixup HEAD

または

git commit –squash HEAD
“`

この後、インタラクティブrebaseを実行します。

bash
git rebase -i --autosquash <base>

すると、rebase TODOファイルは自動的に以下のように準備されます。

“`
pick
fixup fixup!

または squash


“`

あとはエディタを保存して閉じれば、自動的に指定されたコミットがまとめられます。これにより、細かい修正や追記のためのコミットを気軽に作成し、後からまとめて履歴を整理するワークフローが非常に効率的になります。

git rebase --continue, --skip, --abort の詳細

これらのコマンドは、rebase中にプロセスが一時停止した際に、次に取るべき行動をGitに指示するために使用します。

  • git rebase --continue: コンフリクト解消やeditモードでの修正が完了し、git addで変更をステージングした後、rebaseの次のステップに進むためのコマンドです。Gitはステージングされた変更を取り込んで、次のコミットの適用を試みます。
  • git rebase --skip: 現在適用しようとして一時停止しているコミットを完全にスキップし、履歴に含めずに次のコミットの適用に進むためのコマンドです。このコミットの変更内容は失われます。意図的に特定のコミットを削除したい場合にのみ使用してください。
  • git rebase --abort: 現在進行中のrebase処理を完全に中止し、rebaseを開始する前の状態に戻すためのコマンドです。何らかの問題が発生したり、rebaseの方針を変えたい場合に、安全に元の状態に戻ることができます。

これらのコマンドは、特にインタラクティブrebase中やコンフリクト発生時に頻繁に使用します。

rebaseのトラブルシューティング

rebase中に問題が発生した場合の対処法を知っておくことは非常に重要です。最も一般的な問題はコンフリクトです。

コンフリクト発生時の対処(再確認)

rebase中にGitがコンフリクトを検出すると、プロセスを一時停止し、どのファイルでコンフリクトが発生したかを教えてくれます。

  1. ステータスの確認: git statusを実行して、コンフリクトしているファイルを確認します。これらのファイルは「Unmerged paths」として表示されます。
  2. 手動での解消: エディタでコンフリクトファイルを開き、<<<<<<<, =======, >>>>>>>マーカーを参考にして、手動でコードを修正し、コンフリクトを解消します。
  3. ステージング: コンフリクトを解消したファイルをgit add <file>でステージングします。すべてのコンフリクトファイルに対してこの操作を行います。
  4. 続行: git rebase --continueを実行してrebaseプロセスを再開します。

もしコンフリクト解消中に、「このコミットは不要になった」「このコミットは問題があるのでスキップしたい」といった判断をした場合は、コンフリクト解消やステージングを行わず、git rebase --skipを実行することも可能です。

rebase中にやり直したい場合:git reflogの活用

rebaseを実行した後で、「やっぱりrebaseする前の状態に戻したい」「rebase中に間違った操作をしてしまった」といった状況になることがあります。rebaseは履歴を書き換える操作ですが、Gitはデフォルトでは直近の操作履歴をすぐに削除せず保持しています。この履歴を確認・活用するのがgit reflogコマンドです。

git reflogコマンドは、HEADが過去にどのコミットを指していたかの履歴(Reference Log)を表示します。

bash
git reflog

出力例:

abcdefg (HEAD -> feature) HEAD@{0}: rebase finished: returning to refs/heads/feature
hijklmn HEAD@{1}: rebase: コミット E のメッセージ
opqrstu HEAD@{2}: rebase: コミット D のメッセージ
vwxyz12 HEAD@{3}: rebase: checkout main
1234567 (feature_old) HEAD@{4}: checkout: moving from main to feature
890abc1 (main) HEAD@{5}: commit: コミット C のメッセージ
... (以前の履歴)

このログは、あなたが実行したGitコマンドによってHEADが移動した履歴を示しています。例えば、HEAD@{4}はrebaseを開始する直前のfeatureブランチの先端(1234567)を指しています。

rebase開始前の状態に戻りたい場合は、git reset --hard HEAD@{<rebase_start_entry>}コマンドを実行します。例えば、上記の例でrebase開始前の状態がHEAD@{4}であれば:

bash
git reset --hard HEAD@{4}

このコマンドは、HEADと現在のブランチポインタを、指定した過去のコミット(HEAD@{4}が指すコミット)に強制的に移動させます。これにより、rebaseによって書き換えられた履歴が元に戻ります。

git refloggit reset --hardを組み合わせることで、rebase中のほとんどの失敗から回復することが可能です。ただし、git reset --hardはワーキングツリーの変更も破棄するため、注意して使用してください。

まとめ:Git rebaseを使いこなすために

Git rebaseは、Gitにおけるブランチ統合と履歴整理のための非常に強力なツールです。git mergeがブランチ統合の事実を履歴に残すのに対し、git rebaseは変更を新しいベースの上に「再適用」することで、直線的でクリーンな履歴を作成します。

rebaseの主なメリット:

  • 履歴がシンプルかつ直線的になり、視覚的に追跡しやすくなる。
  • マージコミットが削減され、コミットグラフが綺麗になる。
  • インタラクティブrebase (-i) を使うことで、コミットの整理(統合、編集、削除、並べ替え)が柔軟に行える。
  • Featureブランチをメインラインの最新状態に容易に追従させられる。

rebaseの最も重要な注意点:

  • 履歴を書き換える操作であるため、既にリモートリポジトリにプッシュされ、他の開発者が利用している共有ブランチに対しては原則として使用しない。
  • 共有ブランチに対してやむを得ずrebaseを行い、push --forcepush --force-with-leaseを使用する場合は、チームメンバーと十分な連携を取る必要がある。

rebaseの活用シナリオ:

  • 自分のローカルフィーチャーブランチをmaindevelopの最新状態に追従させる。
  • プルリクエストを出す前に、ローカルブランチの細かいコミットを整理・統合する(インタラクティブrebase)。
  • 特定のコミット範囲を別のブランチの上に移動させる(--ontoオプション)。

Git rebaseを使いこなすには、その基本的な仕組み(コミットの再適用)と、インタラクティブrebaseで使える様々なコマンドを理解することが鍵となります。また、コンフリクト発生時の対処法や、git reflogを使った履歴の復元方法を知っておくことで、安心してrebaseを使用できるようになります。

最初は難しく感じるかもしれませんが、実際に手を動かして様々なシナリオでrebaseを試してみることをお勧めします。ローカルリポジトリで安全に練習し、rebaseがどのように履歴を変化させるのかを視覚的に確認(git log --graphなど)しながら学ぶと、理解が深まるでしょう。

チーム開発においては、rebaseの使用に関するポリシーを明確に定め、全員がそれに従うことが、スムーズな共同作業のために非常に重要です。

Git rebaseは、開発ワークフローを効率化し、より管理しやすいバージョン履歴を維持するための強力なツールです。この記事が、あなたがGit rebaseを理解し、効果的に使い始めるための一助となれば幸いです。


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