GitLab 各プランの価格と機能比較

GitLab 各プランの価格と機能比較:あなたのチームに最適なDevOpsプラットフォームを見つけよう

ソフトウェア開発の世界において、効率性、セキュリティ、そしてチーム間の連携は成功の鍵を握ります。GitLabは、DevOpsライフサイクル全体をカバーする単一のアプリケーションとして、世界中の開発チームに広く利用されています。しかし、GitLabには複数のプランがあり、それぞれ提供される機能や価格が異なります。自チームの規模、ニーズ、予算に合わせて最適なプランを選択することは、GitLabを最大限に活用し、開発プロセスを最適化する上で非常に重要です。

この記事では、GitLabの主要な3つのプラン(Free, Premium, Ultimate)について、その価格構造、提供される機能の詳細、そして各プランがどのようなチームや組織に適しているのかを徹底的に比較解説します。約5000語にわたる詳細な情報を通じて、あなたのチームがGitLab導入やアップグレードを検討する際の判断材料を提供することを目指します。

はじめに:なぜGitLabのプラン比較が重要なのか?

GitLabは、コードリポジトリ管理からCI/CD、セキュリティスキャン、プロジェクト管理、監視に至るまで、DevOpsの各段階を網羅する機能を統合的に提供します。これにより、ツール間のコンテキストスイッチを減らし、開発サイクルのスピードアップと効率化を実現します。

GitLabが提供する機能セットは非常に豊富ですが、すべてのチームがすべての機能を利用する必要はありません。また、予算も考慮する必要があります。GitLabの各プランは、異なる規模やニーズを持つチームに合わせて設計されています。

  • Freeプラン: 個人開発者や小規模チーム、オープンソースプロジェクトがGitLabの基本的な機能を試したり利用したりするための入り口です。
  • Premiumプラン: チーム規模が拡大し、コラボレーションや生産性、信頼性の向上を目指す組織向けです。より高度なワークフロー、サポート、可用性機能が追加されます。
  • Ultimateプラン: 大規模企業、セキュリティとコンプライアンスを重視する組織、そしてDevOpsプロセス全体のエンドツーエンドの可視性と管理を求めるチーム向けです。統合されたセキュリティテスト、高度なポートフォリオ管理、コンプライアンス機能などが利用できます。

最適なプランを選択することは、コスト効率を高めるだけでなく、チームが必要とする機能にスムーズにアクセスできるようにし、不要な複雑さを避けることにも繋がります。この記事を最後まで読むことで、各プランの明確な違いを理解し、あなたのチームに最適な選択ができるようになるでしょう。

GitLabのプラン概要

GitLabには主に以下の3つの有償プランと、基本的な機能を提供する無償のプランがあります。

  1. Free: GitLabの基本的な機能(リポジトリ、Issueトラッキング、基本的なCI/CDなど)を無料で利用できるプランです。個人開発者や小規模チーム、オープンソースプロジェクトに最適です。
  2. Premium: Freeプランの機能に加え、チームの生産性、コラボレーション、信頼性を向上させるための機能が追加されます。中規模から大規模のチームや、より高度なCI/CDやサポートが必要な組織向けです。有償プランの中で最も導入しやすい価格帯です。
  3. Ultimate: Premiumプランのすべての機能に加え、包括的なセキュリティ(DevSecOps)、高度なコンプライアンス、ポートフォリオ管理、ビジネス上の価値可視化、および高度な可用性機能が追加されます。大規模企業や、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスを極めて重視する組織に最適です。

これらのプランは、GitLab SaaS (Cloud) と GitLab Self-Managed (On-Premise/Private Cloud) の両方で提供されていますが、機能セットや価格構造に若干の違いがあります。価格は通常、ユーザー数に基づいた月額または年額のサブスクリプション形式です。

次章以降で、各プランの詳細な機能と違いを掘り下げていきます。

GitLab Freeプランの詳細

GitLab Freeプランは、GitLabのDevOpsプラットフォームとしての基礎を体験し、利用するための無償プランです。個人開発者、学生、小規模なチーム、またはオープンソースプロジェクトが、バージョン管理、基本的なCI/CD、およびプロジェクト管理を開始するのに適しています。

価格:

  • 無料(追加料金なし)

主なターゲット:

  • 個人開発者
  • スタートアップの初期段階
  • 小規模なチーム(通常5人以下を想定されることが多いが、ユーザー数制限はない)
  • 教育機関の利用(制限がある場合がある)
  • オープンソースプロジェクト

主要機能の詳細:

GitLab Freeプランでは、DevOpsライフサイクルのいくつかの主要なフェーズにおける基本的な機能が提供されます。

  • 計画 (Plan):
    • Issue トラッキング: タスク管理、バグ報告、機能リクエストなどに利用できます。コメント、ラベル、担当者、期日、マイルストーンなどの基本的なIssue管理機能が含まれます。
    • Issue ボード: プロジェクトのIssueをカンバン形式で視覚化できます。基本的なリスト(例: Open, Closed)やラベルに基づいたリストを作成可能です。
    • マイルストーン: 特定の目標や期間に関連するIssueやマージリクエストをグループ化できます。
    • Wiki: プロジェクトに関連するドキュメントをMarkdown形式で作成・管理できます。
    • スニペット: コード片やテキストを保存・共有できます。個人用またはプロジェクト用として利用可能です。
  • 作成 (Create):
    • リポジトリ管理: 無制限のプライベートおよびパブリックなGitリポジトリを作成・管理できます。ブランチ管理、タグ、コミット履歴などの基本的なGit操作が可能です。
    • マージリクエスト (Merge Requests): コード変更を提案し、レビューを行い、主たるブランチにマージするプロセスを管理できます。基本的なレビュー機能(コメント、変更差分表示)が含まれます。
    • コードレビュー: マージリクエスト上でのコードレビュー機能を利用できます。行単位やファイル単位でのコメント、議論が可能です。
    • ファイル編集: Web IDEやシングルファイルエディタを使用して、Webブラウザ上から直接ファイルを編集できます。
  • 検証 (Verify):
    • GitLab CI/CD: コードのビルド、テスト、デプロイを自動化するパイプラインを設定できます。.gitlab-ci.yml ファイルを使用してパイプラインを定義します。
    • Runner: CI/CDパイプラインを実行するためのエージェント(Runner)を自身でセットアップして利用できます。
    • 基本的なパイプライン機能: ジョブの定義、ステージ、依存関係などが設定できます。
  • パッケージ (Package):
    • コンテナレジストリ: Dockerイメージなどを保存・管理するためのプライベートまたはパブリックなコンテナレジストリが無制限に利用できます。
    • Generic Packages: 汎用的なパッケージをアップロード・ダウンロードするための機能です。
  • リリース (Release):
    • リリース管理: プロジェクトのリリースを管理し、関連する成果物(バイナリ、リリースノートなど)をタグ付けして保存できます。
  • 監視 (Monitor):
    • 基本的なCI/CDパイプラインの監視。
  • 保護 (Secure):
    • プロジェクトメンバーのアクセス権限管理(ロールベース)。

制限事項:

Freeプランは基本的な機能を提供しますが、いくつかの制限があります。これらの制限が、Freeプランからのアップグレードを検討する主な理由となります。

  • CI/CD 実行時間 (SaaS版): 月間数千分(例: 400分、ただし変動する可能性があります。最新情報は公式サイトを確認してください)のCI/CD実行時間に制限されます。これを超過すると、パイプラインが実行できなくなります。
  • ストレージ容量 (SaaS版): プロジェクトあたり数GB(例: 5GB、ただし変動する可能性があります)のリポジトリストレージ容量に制限されます。これを超過すると、リポジトリへのプッシュなどができなくなります。
  • サポート: コミュニティサポートのみが提供されます。GitLabの公式サポート担当者からの直接的なサポートはありません。
  • 高度なワークフロー機能の欠如: コードオーナー、承認ルール、複数の承認者が必要なワークフロー、プッシュルール、GitLab Geo(Self-Managed版の災害対策・高可用性機能)などは含まれません。
  • 高度なCI/CD機能の欠如: Directed Acyclic Graph (DAG) pipelines, Parent-child pipelines, Deploy freezesなどの機能は利用できません。
  • セキュリティ機能の欠如: 静的解析(SAST)、動的解析(DAST)、コンテナスキャン、依存関係スキャン、ライセンスコンプライアンスなどの統合されたセキュリティテスト機能は含まれません。
  • 高度なプロジェクト管理機能の欠如: エピック(複数プロジェクトをまたぐ大規模タスク)、ロードマップ、Value Stream Managementなどのポートフォリオ管理機能は含まれません。
  • 高度な管理・コンプライアンス機能の欠如: 監査イベントの詳細な記録、SAML SSOなどの高度な認証連携、コンプライアンスパイプライン、インシデント管理などは含まれません。

Freeプランで可能なこと / 向いているチーム:

  • 個人が趣味や学習のためにGitlabを利用する。
  • 新しいプロジェクトを始め、基本的なバージョン管理とCI/CDを試す。
  • 予算がない、あるいは非常に限られている小規模チーム。
  • オープンソースプロジェクトで、コミュニティの貢献を受け付け、基本的な開発ワークフローを確立する。
  • 学生や教育目的での利用。

FreeプランはGitLabの強力な機能の一部に触れるための素晴らしい出発点ですが、チームの規模が拡大したり、より複雑なワークフロー、セキュリティ、可用性、あるいは公式サポートが必要になったりした場合、次のプランへのアップグレードを検討する必要があります。

Freeプランの限界 / アップグレードを検討するタイミング:

  • CI/CD実行時間やストレージ容量の制限に頻繁に達する場合。
  • チームメンバーが増え、より厳格なコードレビュープロセス(複数承認者など)が必要になった場合。
  • セキュリティスキャンを開発ワークフローに組み込みたい場合。
  • インシデント発生時などに迅速な公式サポートが必要な場合。
  • DevOpsプロセスのボトルネックを特定・改善したい場合(VSMなど)。
  • 複数のプロジェクトやチームを横断する大規模な計画や追跡が必要な場合(エピック、ロードマップ)。
  • SAML SSOなど、企業レベルの認証連携が必要な場合。
  • 開発・運用プロセスにおけるコンプライアンス要件が厳しくなった場合。

これらの課題に直面した場合、GitLab PremiumプランやUltimateプランが提供する機能が役立つ可能性が高いです。

GitLab Premiumプランの詳細

GitLab Premiumプランは、Freeプランのすべての機能に加えて、チームの生産性、コラボレーション、信頼性、そして基本的なコンプライアンスとセキュリティに関する機能を強化した有償プランです。中規模から大規模のチーム、または成長中のスタートアップが、より洗練されたDevOpsワークフローを構築し、効率と可用性を高めることを目的としています。

価格:

価格はユーザー数に基づき、SaaS版とSelf-Managed版で構造が異なります。価格は変更される可能性があるため、常に公式サイトで最新情報を確認することが重要です。(例:2024年現在、SaaS版はユーザーあたり月額約$29/年額約$348、Self-Managed版はユーザーあたり年額約$348です。これはあくまで目安であり、地域や購入方法によって異なります。)

  • GitLab SaaS (Cloud): ユーザーあたりの月額または年額課金。GitLabがインフラストラクチャの運用・管理を行います。
  • GitLab Self-Managed (On-Premise/Private Cloud): ユーザーあたりの年額課金。顧客自身がGitLabをインストール・運用・管理します。最小ユーザー数(例: 5ユーザー)の要件がある場合があります。

主なターゲット:

  • 中規模から大規模のソフトウェア開発チーム
  • 企業の部門やビジネスユニット
  • より成熟したDevOpsプロセスを目指す成長中のスタートアップ
  • SAML SSOなどの基本的なセキュリティ連携が必要な組織
  • 迅速な公式サポートを必要とする組織

Freeプランからの追加機能の詳細:

Premiumプランの主な価値は、DevOpsワークフローの効率化、チーム間の連携強化、そしてシステム可用性の向上にあります。

  • 生産性向上とワークフローの自動化:
    • コードオーナー (Code Owners): 特定のファイルやディレクトリに対するコードレビューの承認を、事前に定義されたユーザーまたはグループに必須とすることができます。これにより、適切な担当者がコード変更を確認することを保証し、レビュープロセスを効率化します。
    • 承認ルール (Approval Rules): マージリクエストに対して、特定の承認者数、特定のユーザー、またはコードオーナーからの承認を必須とするルールを設定できます。複数のチームメンバーによる承認が必要な場合や、セキュリティ/品質保証チームの承認が必要な場合に役立ちます。
    • プッシュルール (Push Rules): リポジトリへのプッシュ操作に対して、コミットメッセージのフォーマット、禁止されているファイルタイプ、ブランチ名の規則などを強制できます。コーディング規約の遵守やセキュリティポリシーの適用に役立ちます。
    • 高度なCI/CD機能:
      • Parent-child pipelines: メインのパイプラインから子パイプラインをトリガーできます。複雑なマイクロサービスアーキテクチャやモノレポでのCI/CD管理に有効です。
      • Directed Acyclic Graph (DAG) pipelines: ジョブ間の依存関係をより細かく定義し、並列実行を最適化できます。従来のステージベースの実行よりも効率的なパイプライン構築が可能です。
      • Deploy freezes: 特定の期間(例: 休日、メンテナンス期間)に本番環境へのデプロイを凍結する設定ができます。予期せぬデプロイを防ぎ、安定性を確保します。
    • 複数Kubernetesクラスターへのデプロイ: 複数の環境(開発、ステージング、本番など)やリージョンにデプロイするためのKubernetes連携機能が強化されます。
    • GitLab Geo (Self-Managed): 地理的に分散したチームのために、Gitリポジトリやレジストリデータを複製し、読み取り専用のセカンダリノードを提供します。クローンの高速化や災害復旧能力の向上に貢献します。(Self-Managed版のみの機能です)
    • より多くのCI/CD 実行時間 (SaaS版): Freeプランと比較して大幅に増加した月間CI/CD実行時間が提供されます(例: 10,000分、変動する可能性があります)。
    • より多くのストレージ容量 (SaaS版): Freeプランと比較して大幅に増加したプロジェクトあたりのリポジトリストレージ容量が提供されます(例: 50GB、変動する可能性があります)。
  • コラボレーションとプロジェクト管理の強化:
    • Service Desk: 外部のユーザー(顧客など)がプロジェクトのIssueトラッカーにメールで直接Issueを作成できるようにします。社外からのバグ報告や機能リクエストの受付チャネルとして利用できます。
    • Wikiの履歴: Wikiページの変更履歴を追跡し、以前のバージョンに戻すことができます。ドキュメント管理の信頼性が向上します。
    • Issueボードの拡張: 複数のIssueボードを作成したり、高度なフィルター(アサイニー、ラベル、マイルストーンなど)を適用したりして、より柔軟なプロジェクト管理が可能です。
    • グループマイルストーン: グループ内の複数のプロジェクトにまたがるマイルストーンを作成・管理できます。複数のプロジェクトで共通の目標を追跡する際に便利です。
  • セキュリティとコンプライアンス:
    • 外部認証連携 (SAML SSOなど): Okta, Azure AD, G SuiteなどのSAMLまたはOAuthプロバイダーと連携し、シングルサインオンを実装できます。ユーザー管理とセキュリティが強化されます。
    • 監査イベント (Audit Events): ユーザーのアクション(ログイン、プロジェクト作成、権限変更など)の詳細なログが記録されます。セキュリティ監査やコンプライアンス要件への対応に役立ちます。
    • Gitリポジトリサイズ制限: プロジェクトやグループレベルでGitリポジトリの最大サイズを制限できます。リポジトリが肥大化しすぎるのを防ぎます。
  • サポート:
    • 優先サポート: GitLabのサポートチームからの迅速なレスポンスと優先的なサポートが受けられます。ビジネスにとってGitLabがより重要になった場合に不可欠です。

Premiumプランで可能なこと / 向いているチーム:

  • チーム規模が拡大し、より体系的なコードレビューと承認ワークフローが必要になったチーム。
  • CI/CDの利用が増え、Freeプランの実行時間やストレージ制限を超えるようになったチーム。
  • 複数のプロジェクトで共通の目標を追跡したり、より柔軟なIssue管理を行いたいチーム。
  • 企業の認証基盤とGitLabを連携させ、セキュリティとユーザー管理を強化したい組織。
  • 地理的に分散した開発チームがあり、Git操作のパフォーマンスを向上させたい組織(Self-Managed版 Geo利用時)。
  • GitLabの運用において、公式サポートが必要な組織。

Premiumプランは、Freeプランの限界を超え、チームのDevOps成熟度を一段階引き上げるための強力な基盤を提供します。多くの企業や成長中のチームにとって、このプランは開発効率と信頼性を大幅に向上させるでしょう。

Premiumプランの限界 / Ultimateへのアップグレードを検討するタイミング:

Premiumプランは多くの高度な機能を提供しますが、以下の要件がある場合はUltimateプランを検討する価値があります。

  • 包括的なセキュリティテスト (DevSecOps) が必須である場合: SAST, DAST, Container Scanningなどの統合されたセキュリティスキャン機能を開発ワークフローに組み込みたい場合。
  • 厳格なコンプライアンス要件がある場合: より詳細な監査レポート、コンプライアンスパイプライン、インスタンス全体のコンプライアンス設定などが必要な場合。
  • ポートフォリオレベルでの計画と追跡が必要な場合: 複数のチームやプロジェクトを横断するエピック、ロードマップ、Value Stream Managementによるビジネス価値の可視化が必要な場合。
  • 高度な可用性・災害復旧構成が必要な場合: Geo Replicationによるアクティブ/パッシブ構成(Self-Managed版)などが必要な場合。
  • AI機能(GitLab Duo)の高度な利用が必要な場合: コード提案、脆弱性サマリー、マージリクエスト要約など、AIによる生産性・セキュリティ向上機能の最大限の活用を目指す場合。

これらの機能はUltimateプランでのみ利用可能です。特にセキュリティと大規模な計画・管理機能は、Ultimateプランの大きな特徴です。

GitLab Ultimateプランの詳細

GitLab Ultimateプランは、GitLabが提供する最も包括的で機能豊富なプランです。Premiumプランのすべての機能に加え、統合されたDevSecOps機能、高度なコンプライアンス管理、ポートフォリオレベルでの可視化と管理、そしてエンタープライズレベルの可用性機能が含まれます。このプランは、大規模企業、厳格なセキュリティとコンプライアンス要件を持つ組織、およびDevOpsプロセス全体のエンドツーエンドの最適化を目指すチームに最適です。

価格:

価格はユーザー数に基づき、Premiumプランと同様にSaaS版とSelf-Managed版で構造が異なります。価格は変更される可能性があるため、常に公式サイトで最新情報を確認することが重要です。(例:2024年現在、SaaS版はユーザーあたり月額約$119/年額約$1428、Self-Managed版はユーザーあたり年額約$1428です。これはあくまで目安であり、地域や購入方法によって異なります。)

  • GitLab SaaS (Cloud): ユーザーあたりの月額または年額課金。
  • GitLab Self-Managed (On-Premise/Private Cloud): ユーザーあたりの年額課金。最小ユーザー数(例: 5ユーザー)の要件がある場合があります。

主なターゲット:

  • 大規模企業
  • 金融機関、医療機関など、厳格なセキュリティ・コンプライアンス規制の対象となる組織
  • セキュリティを開発ライフサイクルの早期段階に組み込む(DevSecOps)ことを重視する組織
  • 複雑な組織構造を持ち、ポートフォリオ全体を可視化・管理したい組織
  • 高度な可用性・災害対策ソリューションが必要な組織
  • AIによる開発・セキュリティプロセスの変革を積極的に推進したい組織

Premiumプランからの追加機能の詳細:

Ultimateプランの最も顕著な特徴は、DevSecOps機能と、ビジネスリーダー向けのポートフォリオ管理および価値可視化機能です。

  • 包括的なセキュリティ (DevSecOps):
    • 静的アプリケーションセキュリティテスト (SAST): コードがコミットまたはマージリクエストでプッシュされるたびに、アプリケーションのソースコード内の潜在的な脆弱性を自動的にスキャンします。
    • 動的アプリケーションセキュリティテスト (DAST): デプロイされたアプリケーションに対して、実行中の状態で脆弱性をスキャンします。本番環境に近い状態でのテストが可能です。オンデマンドでの実行も可能です。
    • コンテナスキャン (Container Scanning): CI/CDパイプラインの一部として、Dockerイメージなどのコンテナイメージに含まれる既知の脆弱性をスキャンします。
    • 依存関係スキャン (Dependency Scanning): プロジェクトが依存しているライブラリやパッケージの既知の脆弱性をスキャンします。サプライチェーンリスクの管理に役立ちます。
    • ライセンスコンプライアンス (License Compliance): プロジェクトが依存しているライブラリのライセンス情報をスキャンし、組織のライセンスポリシーに違反がないかを確認します。法的なリスクを軽減します。
    • シークレット検出 (Secret Detection): ソースコードやコミット履歴に誤って含まれてしまったAPIキー、パスワードなどの秘密情報をスキャンします。
    • カバレッジファジング (Coverage Fuzzing): アプリケーションの入力に対して自動的に不正なデータを生成し、潜在的なクラッシュやセキュリティ上の問題を検出します。
    • APIファジング (API Fuzzing): REST APIやGraphQL APIの脆弱性を検出するために、自動的に不正なリクエストを生成・送信します。
    • セキュリティダッシュボードとレポート: プロジェクト、グループ、またはインスタンス全体で検出された脆弱性を集約して表示するダッシュボードと、詳細なレポート機能が提供されます。セキュリティリスクの全体像を把握し、優先順位を付けて対応できます。
    • ポリシー管理: セキュリティスキャンがCI/CDパイプラインで常に実行されるように強制したり、特定の脆弱性レベルに基づいてマージリクエストをブロックしたりするなどのセキュリティポリシーを定義・適用できます。
  • 高度なコンプライアンスと管理:
    • コンプライアンスパイプライン: 全てのプロジェクトで特定のCI/CDジョブ(例: セキュリティスキャン、監査ログ生成)が実行されるように強制するコンプライアンスフレームワークを設定できます。組織全体のコンプライアンス遵守を自動化・保証します。
    • 監査レポートの強化: 監査イベントに関するより詳細な情報、フィルタリング、およびエクスポート機能が提供されます。外部監査への対応などが容易になります。
    • インスタンス全体のコンプライアンス設定 (Self-Managed): 自己管理インスタンス全体に対して、セキュリティやコンプライアンスに関連する設定を強制できます。
  • ポートフォリオ管理と可視性:
    • エピック (Epics): 複数の関連するIssueやマージリクエストをグループ化し、より大きな戦略的目標(エピック)として追跡できます。複数のプロジェクトやチームを横断する大規模な取り組みを管理する際に役立ちます。
    • ロードマップ (Roadmaps): エピックを時間軸上にマッピングし、将来の計画や進捗状況を視覚化できます。製品開発の全体像やリリース計画を共有するのに最適です。
    • Value Stream Management (VSM): 開発プロセス全体(アイデアから本番稼働まで)の各段階にかかる時間(サイクルタイム)を測定・分析します。ボトルネックを特定し、DevOpsパイプラインの効率を継続的に改善するための洞察を得られます。
    • Group/Project Analytics: 開発活動(コミット数、マージリクエスト数、パイプライン成功率など)に関する詳細な分析レポートを提供します。チームやプロジェクトのパフォーマンスを定量的に把握できます。
    • Quality レポート: マージリクエストに含めることができる、コードカバレッジやその他の品質指標に関するレポートです。
    • Error Tracking: アプリケーションのエラーをGitLabに集約し、関連するIssueやマージリクエストと紐づけて管理できます。
    • Tracing: 分散トレーシングシステムと連携し、リクエストがシステム内の異なるサービスをどのように通過するかを追跡できます。パフォーマンスの問題やエラーのデバッグに役立ちます。
  • AI機能 (GitLab Duo) の高度な機能: GitLab DuoはAIを活用した機能スイートであり、Ultimateプランではその多くの機能が完全に利用可能になります(一部機能はPremiumでも利用可能ですが、Ultimateでより広範または強化されます)。
    • コード提案、コード補完
    • 脆弱性のサマリーと修正提案
    • マージリクエストの自動要約
    • テストケース生成提案
    • CI/CD設定ファイル作成支援
    • オンコール対応におけるインシデントサマリーなど
      これらのAI機能は、開発者の生産性向上、セキュリティリスクの早期発見、およびインシデント対応の迅速化に貢献します。
  • 可用性と災害対策:
    • Geo Replication (Self-Managed): Geoノードをアクティブ-パッシブ構成にすることで、障害発生時のフェイルオーバー時間を短縮し、高可用性を実現します。(Self-Managed版のみの機能です)
  • サポート:
    • ゴールドサポート (Gold Support): 最も高いレベルのサポートが提供されます。SLAがより短く設定され、専任のテクニカルアカウントマネージャー (TAM) がアサインされる場合があります。

Ultimateプランで可能なこと / 向いているチーム:

  • 開発ライフサイクル全体にセキュリティテストを完全に統合し、DevSecOps文化を確立したい組織。
  • ISO 27001, SOC 2, HIPAAなどの厳しいコンプライアンス規制を遵守する必要がある組織。
  • 複数のチームやプロジェクトを横断する大規模な戦略を計画・実行し、その進捗をビジネスリーダーに可視化したい組織。
  • 開発プロセスのボトルネックを定量的に特定し、継続的な改善を通じてチーム全体の効率を高めたい組織。
  • AIを活用して開発者の生産性やセキュリティレベルを飛躍的に向上させたい組織。
  • GitLabをミッションクリティカルなシステムとして運用し、最高レベルの可用性と災害復旧能力が必要な組織(Self-Managed版利用時)。
  • 最高レベルの公式サポートと、戦略的なアドバイス(TAMなど)を必要とする組織。

Ultimateプランは、単なる開発ツールを超え、組織全体のDevOps成熟度を高め、セキュリティリスクを軽減し、ビジネス価値の提供を加速するための包括的なプラットフォームとして機能します。特にセキュリティとコンプライアンスが最重要視される業界や、DevOpsトランスフォーメーションの最終段階を目指す企業にとって、Ultimateプランは強力な投資対効果をもたらす可能性があります。

GitLab SaaS版とSelf-Managed版の価格構造について

GitLabの各プラン(Premium, Ultimate)は、GitLabがクラウド上で提供するSaaS版と、顧客自身がインフラストラクチャにインストール・運用するSelf-Managed版の両方で利用可能です。価格構造にはいくつかの違いがあります。

  • SaaS版 (GitLab.com):

    • ユーザーあたりの月額または年額課金です。月額払いは若干割高になる傾向があります。
    • GitLabがインフラストラクチャのホスティング、メンテナンス、アップグレードを行います。顧客は運用の手間を省けます。
    • CI/CD実行時間やストレージ容量にプランごとの上限が設定されています。上限を超過した場合、追加料金を支払うことで容量や時間を増やすことができます。
    • ハードウェアやインフラストラクチャの管理コストはかかりません。
    • 最新バージョンが常に利用可能です。
  • Self-Managed版 (On-Premise/Private Cloud):

    • ユーザーあたりの年額課金です。
    • 顧客自身がサーバー(物理または仮想)、ネットワーク、ストレージなどのインフラストラクチャを用意し、GitLabソフトウェアをインストール、設定、運用、アップグレードする必要があります。
    • CI/CD実行時間やストレージ容量の制限は、自身で用意したインフラストラクチャのリソースに依存します(ただし、Gitリポジトリサイズなどのソフトリミットはプランに含まれる機能で設定可能)。
    • インフラストラクチャの導入、運用、保守、電力、ネットワークなどのコストが発生します。
    • アップグレードのタイミングを自身でコントロールできます。
    • 通常、有償プランには最小ユーザー数の要件(例: 5ユーザーから購入可能)があります。

どちらのデプロイメントオプションを選択するかは、組織のITポリシー、セキュリティ要件、運用リソース、およびインフラストラクチャに関する既存の投資によって異なります。価格だけでなく、運用コストや管理の容易さも考慮して決定する必要があります。

価格に関する注意点:

  • GitLabの価格は為替レートや地域によって変動する可能性があります。
  • 機能によっては、SaaS版とSelf-Managed版で提供状況にわずかな違いがある場合があります(例: GitLab Geoの構成)。
  • 価格やプラン内容は予告なく変更される可能性があります。最新かつ正確な情報は、必ずGitLabの公式ウェブサイトで確認してください。この記事の情報はあくまで執筆時点での一般的な情報としてご利用ください。

チームに最適なプランの選び方

GitLabのFree, Premium, Ultimateプランを比較検討し、自チームに最適なプランを選択するためには、以下の要素を考慮することが重要です。

  1. チームの規模と成長段階:

    • 個人/小規模 (〜5人程度): まずはFreeプランから始めるのが良いでしょう。基本的な機能で十分に開発を進められる可能性があります。
    • 中規模 (5〜50人程度): コラボレーションや生産性を高めるための機能(コードオーナー、承認ルール、高度なCI/CD)が必要になる可能性が高いです。Premiumプランが適していることが多いでしょう。
    • 大規模 (50人以上) / 複数のチーム: 組織全体の管理、セキュリティ、コンプライアンス、ポートフォリオ管理が重要になります。Ultimateプランの包括的な機能が必要になる可能性が高まります。
    • 成長中のチーム: 現在のニーズだけでなく、近い将来必要になりそうな機能も考慮して、少し上のプランを選ぶことで、将来的なアップグレードのコストや手間を省ける場合があります。
  2. 必要な機能:

    • バージョン管理と基本的なCI/CDだけで十分か? → Freeプラン
    • 複数承認者によるコードレビュー、高度なCI/CDワークフロー、基本的な認証連携や監査ログが必要か? → Premiumプラン
    • 統合されたセキュリティテスト(SAST, DASTなど)、厳格なコンプライアンス機能、ポートフォリオ管理(エピック、ロードマップ、VSM)、高度な可用性、包括的なAI機能が必要か? → Ultimateプラン
    • 特にセキュリティとコンプライアンスの要件は重要です。 これらはUltimateプランの差別化ポイントであり、見落とすと大きなリスクにつながる可能性があります。
  3. 予算:

    • 各プランの価格は、ユーザー数に比例して増加します。予算に上限がある場合は、必要な機能と予算のバランスを考慮する必要があります。
    • SaaS版かSelf-Managed版かによってもコスト構造が異なります。Self-Managed版の場合は、ライセンス費用だけでなく、インフラストラクチャ、運用、保守の人件費なども含めたTCO (Total Cost of Ownership) を考慮する必要があります。
  4. DevOps成熟度レベル:

    • DevOpsを始めたばかり、ツールの統合を試している段階: FreeまたはPremiumプランで基礎を固めるのが良いでしょう。
    • CI/CDが確立され、さらに自動化・効率化を進めたい段階: Premiumプランが有効です。
    • DevOpsを組織全体に展開し、DevSecOps、GitOps、AI活用など、より高度なプラクティスを取り入れたい段階: Ultimateプランが変革を加速するツールとなるでしょう。
  5. サポートの必要性:

    • コミュニティサポートで十分か? → Freeプラン
    • 公式の優先サポートが必要か? → Premiumプラン
    • 最高レベルのゴールドサポートやテクニカルアカウントマネージャーによる戦略的なサポートが必要か? → Ultimateプラン
    • 特にSelf-Managed版を利用する場合や、GitLabがビジネスの基盤となる場合は、公式サポートのレベルは重要な判断基準となります。

推奨されるアプローチ:

  • 現在のニーズを明確にする: 今、最も解決したい課題は何ですか? Freeプランの制限で困っていることは何ですか?
  • 将来のロードマップを考慮する: 今後1〜2年でチームはどのように成長しますか? どのような新しいプラクティス(例: DevSecOps)を導入したいですか?
  • GitLabのトライアルを活用する: 有償プラン(Premium, Ultimate)には通常無料トライアルが用意されています。実際に利用してみて、チームのワークフローに合うか、必要な機能が揃っているかを確認しましょう。特にUltimateのDevSecOps機能などは、実際に試してみることでその価値を実感しやすいです。
  • GitLabの営業担当者に相談する: 組織の特定のニーズや懸念事項について、GitLabの担当者に相談することで、最適なプランや価格に関するアドバイスを得られます。

まとめ

GitLabは、DevOpsライフサイクルの各段階を単一のプラットフォームでカバーする強力なツールです。GitLabのプランは、Free, Premium, Ultimateの3つが中心となり、それぞれ異なる機能セットと価格で提供されています。

  • Freeプラン は、個人開発者や小規模チームがGitLabの基本的な機能を利用するための入り口です。バージョン管理、基本的なCI/CD、Issueトラッキングなどが無料で利用できます。
  • Premiumプラン は、Freeプランに加えて、チームの生産性向上、コラボレーション強化、信頼性向上に重点を置いた機能が追加されます。コードオーナー、承認ルール、高度なCI/CD、SAML SSO、優先サポートなどが含まれ、中規模以上のチームに適しています。
  • Ultimateプラン は、Premiumプランのすべての機能に加え、包括的なDevSecOps、高度なコンプライアンス、ポートフォリオ管理、Value Stream Management、高度な可用性、そして強力なAI機能が含まれる最上位プランです。大規模企業や、セキュリティ・コンプライアンスを極めて重視する組織、DevOpsプロセス全体を最適化したい組織に最適です。

最適なプランを選択することは、チームの効率性を最大化し、コストを最適化し、将来の成長に向けた適切な基盤を構築するために不可欠です。チームの規模、具体的なニーズ(特にセキュリティ、コンプライアンス、管理に関する要件)、予算、そしてDevOpsの成熟度レベルを慎重に評価し、必要であればGitLabのトライアルを活用したり、担当者に相談したりしながら、最適な決定を行ってください。

GitLabは継続的に機能が追加・改善されています。常に最新の情報を得るために、GitLabの公式ウェブサイトやドキュメントを参照することをお勧めします。あなたのチームにとって最適なGitLabプランが見つかり、DevOpsの旅がさらに加速することを願っています。

免責事項

この記事に記載されている価格、機能、およびプラン内容は、GitLabの公式ウェブサイトに基づいて執筆されたものですが、時間の経過やGitLab社の製品戦略の変更により、これらの情報は古くなる可能性があります。特に価格は、為替レート、地域、プロモーションなどによって変動する可能性があります。

したがって、GitLabのプランに関する最新かつ正確な情報、および具体的な価格については、必ずGitLabの公式ウェブサイト (https://about.gitlab.com/pricing/) を参照してください。

この記事は情報提供のみを目的としており、特定のプランの購入を推奨するものではありません。最終的なプラン選択は、お客様の組織の独自のニーズと要件に基づいて行ってください。

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