エックスサーバー利用者が知っておきたいDNSの基本と設定ガイド
ウェブサイトを公開し、インターネット上でビジネスや情報発信を行う上で、「DNS」は避けて通れない重要な要素です。特にエックスサーバーを利用している方であれば、一度はDNSの設定に触れる機会があるかもしれません。しかし、「DNSって何?」「ネームサーバーとどう違うの?」「設定項目がたくさんあって分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、エックスサーバーの利用者を対象に、DNSの基本から、サーバーパネルを使った具体的な設定方法、そしてトラブルシューティングまでを、初心者の方にも理解できるよう詳細に解説します。DNSの仕組みを理解し、自信を持って設定できるようになることで、ウェブサイトの安定運用、表示速度の向上、メールの確実な送受信など、多くのメリットが得られます。
この記事で学ぶこと:
- DNSとは何か、その役割と重要性
- DNSの基本的な仕組みと名前解決のプロセス
- 主要なDNSリソースレコード(A, CNAME, MX, TXTなど)の種類と目的
- エックスサーバーのサーバーパネルでのDNSレコード設定方法
- 外部サービス(メール、CDNなど)を利用する際の具体的な設定例
- DNS設定に関するよくあるトラブルと解決策
- ネームサーバーとDNSレコードの違い
DNSはインターネットの基盤を支える重要な技術です。この記事を通して、DNSへの理解を深め、エックスサーバーでのウェブサイト運営をさらに効率的かつ安定的に行えるようになりましょう。
1. DNSとは何か?なぜエックスサーバー利用者に重要なのか?
インターネットの世界では、ウェブサイトやメールサーバーなどのコンピュータは、それぞれ固有の「IPアドレス」という数字の羅列(例:192.0.2.1
や 2001:db8::1
)によって識別されています。例えるなら、建物の住所のようなものです。
一方、私たちがウェブサイトにアクセスしたり、メールを送受信したりする際には、「example.com」や「mail.example.com」のような、人間が覚えやすい「ドメイン名」を使用します。ドメイン名は、電話帳に載っている名前のようなものです。
ここで問題が発生します。コンピュータはIPアドレスで通信しますが、人間はドメイン名を使いたがります。この、ドメイン名とIPアドレスを相互に変換する仕組みこそが「DNS(Domain Name System)」です。DNSは、インターネット上の「住所録」や「電話帳」のような役割を担っています。
ウェブブラウザに「example.com」と入力すると、DNSが「example.com」に対応するIPアドレスを調べ、そのIPアドレスを持つサーバーに接続してウェブページを表示します。メールを送信する際も、DNSが宛先ドメイン名に対応するメールサーバーの場所(IPアドレス)を特定します。
エックスサーバー利用者にDNSの知識が重要な理由:
- ウェブサイトへのアクセス: ユーザーがあなたのドメイン名(例: yoursite.com)を入力したときに、正しくエックスサーバー上のあなたのウェブサイトに接続されるためには、DNSがあなたのドメイン名とエックスサーバーのIPアドレスを結びつける必要があります。
- メールの送受信: あなたのドメイン名を使ったメールアドレス(例: [email protected])でメールを送受信するためには、DNSがあなたのドメイン名とメールサーバー(多くの場合エックスサーバーのメールサーバー)を結びつける設定が必要です。
- 外部サービスの利用: Google WorkspaceやMicrosoft 365などの外部メールサービス、CloudflareのようなCDN(Contents Delivery Network)、その他の外部SaaSなどを利用する場合、そのサービスを利用するためにDNS設定の変更が必要になることがほとんどです。
- サブドメインの活用: blog.yoursite.com や shop.yoursite.com のようなサブドメインを設定し、それぞれを特定のコンテンツやサービスに紐づける際にもDNS設定を行います。
- トラブルシューティング: ウェブサイトが表示されない、メールが届かないといった問題が発生した場合、原因がDNS設定にあることが少なくありません。DNSの仕組みを理解していれば、原因の特定と解決をスムーズに行えます。
- SEO: 間接的ですが、DNSの適切な設定はサイトの安定性や表示速度に影響を与え、SEOにも好影響を与える可能性があります。
- セキュリティ: SPFやDKIM、DMARCといったメール認証技術は、DNSのTXTレコードを利用して設定されます。これらの設定は、あなたのドメインからのメールが迷惑メールと判定されることを防ぎ、メールの信頼性を高めるために非常に重要です。
このように、DNSはエックスサーバーでウェブサイトやメールを運用する上で、基礎となる非常に重要な技術です。DNSの設定を適切に行うことで、サービスの安定稼働、外部サービスとの連携、セキュリティ強化など、様々なメリットが得られます。
2. DNSの基本的な仕組みと名前解決のプロセス
DNSは、世界中に分散配置された多数のサーバーが連携して機能しています。クライアント(ウェブブラウザなど)からの要求に対して、DNSサーバーがドメイン名に対応するIPアドレスを「名前解決」するプロセスを見ていきましょう。
名前解決には、主に以下の登場人物が関わります。
- スタブリゾルバー (Stub Resolver): ユーザーのコンピュータやデバイス上で動作するプログラム(例: ウェブブラウザ、OSのネットワーク機能)です。名前解決の最初の要求をDNSサーバーに送信します。
- DNSリカーシブネームサーバー (DNS Recursive Name Server): インターネットサービスプロバイダ(ISP)やGoogle Public DNS (8.8.8.8) などのサービスが提供するDNSサーバーです。スタブリゾルバーからの要求を受け取り、必要に応じて他のDNSサーバーに問い合わせを行い、最終的な結果(IPアドレス)を取得してスタブリゾルバーに返します。再帰的な問い合わせを行うため「リカーシブ」と呼ばれます。エックスサーバーでいうと、ユーザーがサーバーパネルで設定するDNSレコードの情報は、このリカーシブネームサーバーが参照できるようになります(実際には、権威ネームサーバーから情報を取得します)。
- DNS権威ネームサーバー (DNS Authoritative Name Server): 特定のドメインに関する正式な情報(どのIPアドレスに対応するか、メールサーバーはどれか、など)を管理しているDNSサーバーです。エックスサーバーの場合、あなたのドメインに関する権威ネームサーバーは、エックスサーバーが提供するネームサーバーとなります。あなたのドメインのDNSレコードは、この権威ネームサーバーに登録されます。
名前解決の一般的なプロセス(例:「www.example.com」にアクセスする場合):
- ユーザーがURLを入力: ユーザーがウェブブラウザのアドレスバーに「www.example.com」と入力します。
- スタブリゾルバーが問い合わせ: ユーザーのコンピュータのスタブリゾルバーは、設定されているDNSリカーシブネームサーバー(ISPのDNSなど)に「www.example.com」のIPアドレスを問い合わせます。
- リカーシブネームサーバーが問い合わせを開始: リカーシブネームサーバーは、自身のキャッシュに「www.example.com」の情報がない場合、名前解決を開始します。まず、インターネットの最上位にある「ルートDNSサーバー」に「.com」はどこにあるか問い合わせます。
- ルートサーバーが応答: ルートサーバーは、「.com」ドメインを管理する「TLD(Top-Level Domain)ネームサーバー」のアドレスを応答します。
- リカーシブネームサーバーがTLDサーバーに問い合わせ: リカーシブネームサーバーは、次に「.com」のTLDネームサーバーに「example.com」はどこにあるか問い合わせます。
- TLDサーバーが応答: TLDサーバーは、「example.com」ドメインの情報を管理する「権威ネームサーバー」のアドレスを応答します。この権威ネームサーバーが、エックスサーバーが提供するネームサーバーとなります(ドメイン管理会社で設定したネームサーバーのアドレスです)。
- リカーシブネームサーバーが権威ネームサーバーに問い合わせ: リカーシブネームサーバーは、最後に「example.com」の権威ネームサーバーに「www.example.com」のIPアドレスを問い合わせます。
- 権威ネームサーバーが応答: 権威ネームサーバーは、管理している情報から「www.example.com」に対応するIPアドレス(エックスサーバーのIPアドレスなど)を応答します。
- リカーシブネームサーバーが結果を返す: リカーシブネームサーバーは、取得したIPアドレスをスタブリゾルバーに返します。同時に、将来の問い合わせのためにこの情報をキャッシュします。
- スタブリゾルバーが結果を受け取る: ユーザーのコンピュータのスタブリゾルバーはIPアドレスを受け取り、アプリケーション(ウェブブラウザ)に渡します。
- アプリケーションが接続: ウェブブラウザは受け取ったIPアドレスを使用して、エックスサーバー上のウェブサーバーに接続し、ウェブサイトのデータを取得して表示します。
この一連の流れが、わずかミリ秒〜数秒で行われます。
キャッシュの重要性:
DNSリカーシブネームサーバーやスタブリゾルバーは、一度名前解決した情報を一定期間「キャッシュ」します。これにより、同じドメイン名への二度目以降のアクセスでは、上記のような長い問い合わせプロセスを経ることなく、キャッシュされた情報を使って迅速にIPアドレスを取得できます。
このキャッシュがあるため、DNS設定を変更しても、変更がインターネット全体に「浸透」するまでに時間がかかります。この浸透にかかる時間は、各DNSサーバーやスタブリゾルバーのキャッシュ保持時間(TTL: Time To Live)に依存します。エックスサーバーのDNSレコード設定で変更するTTLは、このキャッシュ保持時間の上限を指定するものです。
3. DNSの構成要素:リソースレコード
DNS権威ネームサーバーは、特定のドメインに関する様々な情報を持っています。これらの情報は「リソースレコード(Resource Record)」と呼ばれる単位で管理されています。エックスサーバーのサーバーパネルで「DNSレコード設定」を行う際に編集するのは、主にこのリソースレコードです。
主要なリソースレコードの種類とその役割を理解しましょう。
-
Aレコード (Address Record):
- 役割: 指定したホスト名(ドメイン名またはサブドメイン名)に対応するIPv4アドレスを指定します。ウェブサイトへのアクセスにおいて、最も基本的なレコードです。
- 例:
example.com
というドメイン名が、エックスサーバーの192.0.2.10
というIPv4アドレスのサーバーを指すように設定する場合に使用します。www.example.com
が同じサーバーを指す場合もAレコードを使用します。 - エックスサーバーでの設定例:
- ホスト名:
www
, 種別:A
, 値:192.0.2.10
(←サーバーのIPアドレス) - ホスト名:
@
または空欄 , 種別:A
, 値:192.0.2.10
(←ネイキッドドメイン example.com の設定)
- ホスト名:
-
AAAAレコード (Quad-A Record):
- 役割: 指定したホスト名に対応するIPv6アドレスを指定します。IPv6対応のウェブサイトでAレコードと同様の役割を果たします。
- 例:
example.com
が、エックスサーバーの2001:db8::10
というIPv6アドレスのサーバーを指すように設定する場合に使用します。 - エックスサーバーでの設定例:
- ホスト名:
www
, 種別:AAAA
, 値:2001:db8::10
(←サーバーのIPv6アドレス) - ホスト名:
@
または空欄 , 種別:AAAA
, 値:2001:db8::10
- ホスト名:
-
CNAMEレコード (Canonical Name Record):
- 役割: あるホスト名が、別のホスト名(正規名:Canonical Name)の別名であることを示します。例えば、
www.example.com
をexample.com
の別名として設定する場合に使用します。CNAMEレコードを使用すると、参照先のドメイン名が変更されても、別名(エイリアス)側の設定を変更する必要がなくなります(参照先のA/AAAAレコードが更新されれば自動的に追従します)。ただし、CNAMEを設定したホスト名には、他の種類のリソースレコード(MX, TXTなど)を設定できないという制限があります。 - 例:
www.example.com
をexample.com
と同じIPアドレスを指すようにしたいが、AレコードでIPアドレスを直接指定するのではなく、example.com
の定義を参照させたい場合。または、外部サービスの指定されたホスト名(例:ghs.googlehosted.com
)にサブドメインを向けたい場合。 - エックスサーバーでの設定例:
- ホスト名:
www
, 種別:CNAME
, 値:example.com
- ホスト名:
blog
, 種別:CNAME
, 値:example.wordpress.com
(←外部ブログサービスを参照) - ホスト名:
ghs
, 種別:CNAME
, 値:ghs.googlehosted.com
(←Google Sitesなどを参照)
- ホスト名:
- 役割: あるホスト名が、別のホスト名(正規名:Canonical Name)の別名であることを示します。例えば、
-
MXレコード (Mail Exchanger Record):
- 役割: 指定したドメイン名宛てのメールが、どのメールサーバー(MTA: Mail Transfer Agent)に配送されるべきかを指定します。複数のMXレコードを設定することで、優先度を設定して予備のメールサーバーを指定することも可能です。
- 例:
example.com
宛てのメールを、エックスサーバーのメールサーバーmail.example.com
に配送したい場合。または、Google Workspaceなどの外部メールサービスを利用する場合。 - エックスサーバーでの設定例:
- エックスサーバーのメールサーバーを使用する場合(デフォルト設定されていることが多い):
- ホスト名:
@
または空欄 , 種別:MX
, 値:10 mail.example.com
(10
は優先度、数字が小さいほど優先度が高い)
- ホスト名:
- Google Workspaceを使用する場合(Googleから指定されるMXレコードを設定):
- ホスト名:
@
, 種別:MX
, 値:1 ASPMX.L.GOOGLE.COM.
- ホスト名:
@
, 種別:MX
, 値:5 ALT1.ASPMX.L.GOOGLE.COM.
- … (優先度と値が異なる複数のレコードを設定)
- ホスト名:
- エックスサーバーのメールサーバーを使用する場合(デフォルト設定されていることが多い):
-
TXTレコード (Text Record):
- 役割: ドメインに関する任意のテキスト情報を格納します。主に様々なサービスの認証(Google Search Console, Bing Webmaster Toolsなど)や、メール認証(SPF, DKIM, DMARC)に利用されます。
- 例: ドメインの所有者であることを証明するためのランダムな文字列、SPF情報を記述した文字列、DKIMの公開鍵など。
- エックスサーバーでの設定例:
- Google Search Consoleのサイト所有権確認:
- ホスト名:
@
, 種別:TXT
, 値:google-site-verification=random_string_provided_by_google
- ホスト名:
- SPF (Sender Policy Framework) 設定:
- ホスト名:
@
, 種別:TXT
, 値:"v=spf1 include:_spf.xserver.jp ~all"
(エックスサーバーからのメール送信を許可する基本的なSPF設定) - 複数のサービスから送信する場合は、それらすべてを含める必要があります。例:
"v=spf1 include:_spf.xserver.jp include:_spf.google.com ~all"
- ホスト名:
- DKIM (DomainKeys Identified Mail) 設定:
- ホスト名:
google._domainkey
(Google Workspaceの場合の例) , 種別:TXT
, 値:v=DKIM1; k=rsa; p=random_long_string_provided_by_google
- ホスト名:
- Google Search Consoleのサイト所有権確認:
-
NSレコード (Name Server Record):
- 役割: 特定のドメイン(またはサブドメイン)の名前解決を、どのDNS権威ネームサーバーに委任するかを指定します。通常、ドメイン全体に関するNSレコードはドメイン管理会社で設定します。エックスサーバーのサーバーパネルでDNSレコード設定を行うドメインについては、エックスサーバーのネームサーバーが権威ネームサーバーとなります。サーバーパネルで表示されるNSレコードは、そのドメインがエックスサーバーのネームサーバーによって管理されていることを示しています。
- エックスサーバーでの設定例:
- ホスト名:
@
または空欄 , 種別:NS
, 値:ns1.xserver.jp.
- ホスト名:
@
または空欄 , 種別:NS
, 値:ns2.xserver.jp.
- … (複数のネームサーバーが設定されている)
- 注意: 通常、これらのNSレコードをサーバーパネルから変更する必要はありません。変更すると、あなたのドメインの名前解決がエックスサーバーではなくなり、ウェブサイトが表示されなくなるなどの致命的な影響が出ます。
- ホスト名:
-
PTRレコード (Pointer Record):
- 役割: IPアドレスからドメイン名への逆引きの名前解決に使用されます。主にメールサーバーが送信元のIPアドレスからホスト名を特定し、正当なサーバーからのメールかを判断するために利用されます。
- 設定: PTRレコードは通常、IPアドレスの所有者(エックスサーバーのようなサーバー提供者)が設定します。ユーザーがサーバーパネルから直接設定することは稀です。
- エックスサーバーの場合: 多くの共用サーバー環境では、サーバーに割り当てられたIPアドレスのPTRレコードは、サーバー提供者(エックスサーバー)によって設定され、ユーザーが個別に変更することはできません。
-
SRVレコード (Service Location Record):
- 役割: 特定のサービス(例: SIP, XMPP)がどのホスト名とポート番号で提供されているかを指定します。
- 例: オフィスソフトの共同編集機能や特定の通信プロトコルを使用する際に必要になることがあります。
- エックスサーバーでの設定例: サービスによって指定される形式に従って設定します。
- ホスト名:
_sip._tcp
, 種別:SRV
, 値:10 50 5060 sip.example.com
(優先度10, 重み50, ポート5060, ホスト名 sip.example.com)
- ホスト名:
-
SOAレコード (Start of Authority Record):
- 役割: ゾーンファイル(特定のドメインに関するリソースレコードをまとめたファイル)の起点を示し、ゾーン管理者、ゾーンのバージョン情報、セカンダリネームサーバーがゾーン情報を更新する間隔などを定義します。
- 設定: 権威ネームサーバーが自動的に生成・管理するレコードであり、ユーザーがエックスサーバーのサーバーパネルから直接編集することは通常ありません。
TTL (Time To Live):
各リソースレコードには「TTL(Time To Live)」という値が設定されています。これは、そのレコードの情報がDNSリカーシブネームサーバーなどにキャッシュされる時間(秒単位)を示します。
- TTLが長い場合: キャッシュが長く保持されるため、二度目以降の名前解決が高速になりますが、レコード情報を変更した場合、変更がインターネット全体に浸透するまでに時間がかかります。
- TTLが短い場合: キャッシュが短期間で期限切れになるため、変更した情報が比較的早く浸透しますが、名前解決のたびに権威ネームサーバーへの問い合わせが増え、処理負荷が増加したり、応答速度がわずかに遅くなったりする可能性があります。
エックスサーバーのデフォルトのTTLは3600秒(1時間)や86400秒(24時間)など、レコードの種類によって異なります。設定変更を行う際は、変更後の影響を考慮してTTLを一時的に短くする(例えば600秒=10分など)というテクニックもあります。ただし、変更後にTTLをデフォルトに戻すのを忘れないように注意が必要です。
4. エックスサーバーにおけるDNS設定の概要
エックスサーバーでDNS設定が必要になるのは、主に以下のケースです。
- 新しくドメインを取得し、エックスサーバーで使う場合: ドメイン管理会社(お名前.com, ムームードメイン, Xserverドメインなど)で、そのドメインのネームサーバーをエックスサーバーが指定するネームサーバーに設定します。これにより、そのドメインの名前解決はエックスサーバーのネームサーバーが行うようになります。
- 他のサーバーからエックスサーバーに移行する場合: 同様に、ドメインのネームサーバーをエックスサーバーに変更します。移行期間中は、旧サーバーとエックスサーバーの両方で同じDNSレコードを設定しておくと、切り替え時のダウンタイムを最小限に抑えることができます(TTLを短く設定するなどの工夫が必要です)。
- 外部サービス(メール、CDNなど)を利用する場合: エックスサーバーのサーバーパネルにある「DNSレコード設定」画面で、A、CNAME、MX、TXTなどのレコードを追加・編集・削除します。
- サブドメインを設定する場合: エックスサーバーのサーバーパネルでサブドメインを作成すると、通常は自動的にDNSレコードが設定されますが、特定のIPアドレスや別のドメイン名にサブドメインを向けたい場合は、DNSレコード設定を手動で変更する必要があります。
エックスサーバーでDNSレコードを設定する場所は、主にサーバーパネルです。ドメイン管理もエックスサーバー(Xserverドメイン)で行っている場合、ドメインパネルでもネームサーバーの確認・変更ができますが、個々のDNSレコードの設定はサーバーパネルで行います。
サーバーパネルにログインし、対象ドメインを選択した後、「設定対象ドメイン」を確認し、「DNSレコード設定」メニューに進みます。ここで、現在設定されているDNSレコードの確認、新しいレコードの追加、既存レコードの編集・削除が行えます。
デフォルトでは、エックスサーバーを利用するための基本的なDNSレコード(ウェブサイト表示用、エックスサーバーのメールサーバー利用用など)が自動的に設定されています。外部サービスを利用する場合や、特殊な設定を行う場合にのみ、これらのデフォルト設定を理解した上で変更・追加を行います。
5. エックスサーバーでのDNSレコード設定実践ガイド
それでは、エックスサーバーのサーバーパネルを使って、具体的なDNSレコードの設定方法を見ていきましょう。
5.1. サーバーパネルへのアクセス
- エックスサーバーの公式サイトから「ログイン」を選択し、「サーバーパネル」をクリックします。
- サーバーIDとサーバーパネルパスワードを入力してログインします。
5.2. 設定対象ドメインの選択
サーバーパネルにログインしたら、画面左上または中央に表示されている「設定対象ドメイン」が、設定したいドメインになっていることを確認します。異なる場合は、ドメイン名をクリックしてリストから対象のドメインを選択します。
5.3. 「DNSレコード設定」画面へのアクセス
設定対象ドメインを選択したら、画面上部のメニューから「DNSレコード設定」をクリックします。
5.4. 現在のDNSレコードの確認
「DNSレコード設定」画面が表示されると、現在設定されているリソースレコードの一覧が表示されます。
- ホスト名: レコードを設定する対象のホスト名(例:
www
,blog
,@
, 空欄など)。@
または空欄はネイキッドドメイン(例: example.com)を指します。 - 種別: リソースレコードの種類(A, AAAA, CNAME, MX, TXTなど)。
- 内容: レコードの値(IPアドレス、ホスト名、テキスト文字列など)。MXレコードの場合は「優先度 値」の形式で表示されます。
- 優先度: MXレコードやSRVレコードで使用される優先度。数字が小さいほど優先度が高いです。
- TTL: キャッシュ保持時間(秒)。
この一覧を見て、現在の設定状況を把握しましょう。特に外部サービスを利用する前には、現在のMXレコードやTXTレコードがどうなっているかを確認しておくことが重要です。
5.5. 新しいレコードの追加
新しいリソースレコードを追加するには、画面下部の「DNSレコード追加」セクションを使用します。
- ホスト名: 追加したいホスト名を入力します。
- ネイキッドドメイン(例:
example.com
)の場合は、@
または空欄のままにします。 - サブドメイン(例:
blog.example.com
のblog
部分)を入力します。 www
を入力するとwww.example.com
の設定になります。- 特定のサービスで指定されたホスト名(例:
google._domainkey
)を入力します。
- ネイキッドドメイン(例:
- 種別: ドロップダウンメニューから追加したいレコードの種類(A, AAAA, CNAME, MX, TXT, SRV)を選択します。
- 優先度:
- MXレコードやSRVレコードの場合にのみ設定します。数字が小さいほど優先度が高いです。外部サービスから指定された値を入力します。
- その他のレコード種別の場合は空欄でかまいません。
- 内容: 設定したいレコードの値を入力します。
- Aレコード/AAAAレコード: IPアドレス
- CNAMEレコード: 参照先のホスト名(末尾にドット
.
をつけるかどうかはエックスサーバーの入力規則を確認してください。通常は不要ですが、サービスによっては必要とされる場合があります。) - MXレコード: 優先度とホスト名をスペースで区切って入力します。例:
10 mail.example.com.
(末尾のドットが必要な場合が多いです) - TXTレコード: 設定したいテキスト文字列を入力します。サービスによっては引用符
"
で囲むよう指定されている場合があります。エックスサーバーの入力欄では引用符は不要なことが多いですが、指定に従ってください。 - SRVレコード: 優先度、重み、ポート番号、ホスト名をスペースで区切って入力します。例:
10 50 5060 sip.example.com.
- TTL: キャッシュ保持時間(秒)を指定します。通常はデフォルト値で問題ありません。短くしたい場合は短い秒数を入力します(例: 600)。
- 入力が完了したら、「確認画面へ進む」ボタンをクリックします。
- 確認画面で入力内容に間違いがないか確認し、「追加する」ボタンをクリックします。
5.6. 既存レコードの編集・削除
現在設定されているレコードを編集または削除するには、一覧から対象レコードを探し、右端の「変更」または「削除」をクリックします。
- 変更: 編集画面が表示されるので、内容を変更して「確認画面へ進む」→「変更する」と進みます。
- 削除: 確認画面が表示されるので、「削除する」をクリックします。
【重要】初期設定に戻す場合:
画面上部にある「設定をリセットする」ボタンをクリックすると、エックスサーバー契約時の初期状態のDNSレコードに戻すことができます。複数の設定を誤ってしまい、一つずつ修正するのが難しい場合に便利ですが、それまで行っていたすべてのカスタム設定(外部メール、CDNなど)が失われるため、十分注意して使用してください。リセット後は、必要なレコードを再度設定する必要があります。
5.7. 設定反映までの時間(浸透)
DNSレコード設定を変更した後、その変更がインターネット全体に反映されるまでには時間がかかります。これは「DNSの浸透(propagation)」と呼ばれます。
- 影響する要因: 設定したレコードのTTL値、各ISPのDNSキャッシュの更新頻度、地理的な距離など。
- 目安: TTLが短い(例えば600秒)設定であれば数分~数時間で反映されることが多いですが、TTLが長い(例えば86400秒)設定の場合は24時間~72時間程度かかることもあります。
- 確認方法: 外部のDNS浸透確認ツール(例: DNS Checker, What’s My DNS?)を利用すると、世界各地のDNSサーバーでの反映状況を確認できます。
設定変更後すぐにウェブサイトが表示されなかったり、メールが届かなかったりしても、しばらく時間をおいてから再度確認してみてください。
6. 具体的なDNSレコード設定例(エックスサーバー向け)
ここでは、エックスサーバーでよく行われる具体的なDNSレコード設定の例を紹介します。
6.1. サブドメインを別のディレクトリに向ける(CNAME)
エックスサーバーでは、サブドメインを追加すると、通常そのサブドメイン名のディレクトリが作成され、そこにアクセスするよう自動的にDNS(CNAMEレコード)が設定されます。
例:blog.example.com
をエックスサーバー内の example.com/blog
ディレクトリではなく、blog.example.com
という独立したウェブサイトとして設定したい場合。
サーバーパネルの「サブドメイン設定」でサブドメインを追加すると、通常以下のようなCNAMEレコードが自動生成されます。
- ホスト名:
blog
, 種別:CNAME
, 内容:example.com.
(またはサーバーのホスト名)
これにより、blog.example.com
へのアクセスは example.com
と同じIPアドレス(エックスサーバーのIP)を指すようになります。
6.2. 特定のサブドメインを外部のサーバー/サービスに向ける (A, CNAME)
特定のサブドメイン(例: shop.example.com
)を、エックスサーバーとは別の外部サーバーやサービス(例: ECサイト専用プラットフォーム)に向けたい場合があります。
- 外部サービスのIPアドレスが指定されている場合:
- 提供されたIPアドレスがIPv4であればAレコード、IPv6であればAAAAレコードを使用します。
- 例: shop.example.com を IPアドレス 198.51.100.200 に向けたい場合
- ホスト名:
shop
, 種別:A
, 内容:198.51.100.200
- ホスト名:
- 外部サービスのホスト名(ドメイン名)が指定されている場合:
- CNAMEレコードを使用します。
- 例: staging.example.com を 提供されたホスト名 staging.external-service.com に向けたい場合
- ホスト名:
staging
, 種別:CNAME
, 内容:staging.external-service.com.
(末尾のドットはサービスの指定に従う)
- ホスト名:
注意: CNAMEレコードを設定したホスト名には、他の種類のレコード(MX, TXTなど)を設定できません。例えば、blog.example.com
をCNAMEで外部サービスに向けた場合、blog.example.com
宛てのメールアドレスを作成したり、blog.example.com
に対して別途TXTレコードを設定したりすることは原則としてできません。もしサブドメインでメールも使いたいなどの要件がある場合は、CNAMEではなくA/AAAAレコードでIPアドレスを直接指定できるか、または別の方法がないか、外部サービスの仕様を確認する必要があります。
6.3. 外部メールサービス(Google Workspace, Microsoft 365など)を利用する (MX, TXT)
エックスサーバーのメール機能ではなく、Google Workspace(旧G Suite)やMicrosoft 365などの外部メールサービスであなたのドメインのメールアドレス(例: [email protected]
)を利用する場合、MXレコードとTXTレコード(SPF, DKIM)の設定が必要です。
設定手順:
- 利用したい外部メールサービス側で、あなたのドメインを登録・検証します。この際に、ドメインの所有権確認のためにTXTレコードまたはCNAMEレコードの設定を求められることがあります。サービス側の指示に従い、エックスサーバーのDNSレコード設定画面で指定されたレコードを追加します。
- ドメインの検証が完了したら、サービス側で提供されるMXレコードの値を確認します。通常、複数のMXレコード(優先度とホスト名のペア)が指定されます。
- エックスサーバーのDNSレコード設定画面で、既存のMXレコードを削除します。(注意: 既存のMXレコードを削除すると、一時的にエックスサーバーのメールが利用できなくなります。外部サービスのMXレコードを追加する直前に行うか、ダウンタイムを許容できる時間帯に行ってください。)
- 外部サービスから指定されたMXレコードをすべて追加します。
- ホスト名:
@
または空欄 - 種別:
MX
- 優先度: サービス指定の値
- 内容: サービス指定のホスト名(通常末尾にドットが必要です。例:
10 aspmx.l.google.com.
)
- ホスト名:
- SPFレコードを設定します。外部サービスから指定されたSPFレコード(TXTレコード形式)の値を確認します。
- ホスト名:
@
または空欄 - 種別:
TXT
- 内容: サービス指定のSPFレコード文字列。例:
"v=spf1 include:_spf.google.com ~all"
- 重要: 複数のサービス(エックスサーバーとGoogle Workspaceなど)から同じドメインでメールを送信する場合、SPFレコードは1つにまとめる必要があります。例:
"v=spf1 include:_spf.xserver.jp include:_spf.google.com ~all"
- ホスト名:
- DKIMレコードを設定します。外部サービスから指定されたDKIMレコード(通常、セレクタ名を含むホスト名とTXTレコードの値)を確認します。
- ホスト名: サービス指定のホスト名(例:
google._domainkey
) - 種別:
TXT
- 内容: サービス指定の公開鍵文字列
- ホスト名: サービス指定のホスト名(例:
設定時の注意点:
- MXレコードやSPFレコードの設定を間違えると、メールが正しく配送されなくなったり、迷惑メール扱いされたりする可能性があります。サービス側から提供される値を正確に入力してください。
- 既存のMXレコードを削除する前に、新しいMXレコードを追加しても問題ありません(優先度の高い新しいレコードが優先されます)が、混乱を避けるためには、新しいレコードを追加した後に古いレコードを削除するのが一般的です。
- 設定変更後、浸透まで時間がかかるため、すぐにメールの送受信ができるようにならない場合があります。
6.4. Google Search Consoleなどのサイト所有権確認 (TXT, CNAME)
Google Search Consoleなどのウェブマスターツールを利用する際に、あなたのドメインの所有権を確認するためにDNS設定が必要になることがあります。
- TXTレコードを使用する場合 (一般的):
- ツール側から提供されるTXTレコードの値(ランダムな文字列)を確認します。
- エックスサーバーのDNSレコード設定画面でTXTレコードを追加します。
- ホスト名:
@
または空欄 - 種別:
TXT
- 内容: サービスから提供された文字列 (例:
google-site-verification=abcdefg1234567890
)
- ホスト名:
- CNAMEレコードを使用する場合:
- ツール側から提供されるCNAMEレコードの値(ホスト名と参照先のホスト名)を確認します。
- エックスサーバーのDNSレコード設定画面でCNAMEレコードを追加します。
- ホスト名: サービスから提供されたホスト名 (例:
abcdefg1234567890
) - 種別:
CNAME
- 内容: サービスから提供された参照先のホスト名 (例:
google.com.
)
- ホスト名: サービスから提供されたホスト名 (例:
設定後、ツール側で確認ボタンをクリックすると、DNS設定が反映されているかチェックされます。浸透に時間がかかる場合があるため、すぐに確認できないこともあります。
6.5. HTTPS化(SSL証明書)とDNS
ウェブサイトのHTTPS化(SSL証明書の導入)自体は、通常DNSレコード設定を直接変更する必要はありません。しかし、SSL証明書の発行プロセスにおいて、ドメインの所有権を証明するためにDNS設定を利用する方法があります(DNS認証)。
- DNS認証: Let’s Encryptなどの証明書発行局によっては、特定のTXTレコードをドメインのDNSに追加することで所有権を確認する方法を提供しています。この方法を利用する場合、証明書発行サービスやエックスサーバーの機能(自動更新など)の指示に従い、指定されたTXTレコードを追加します。
エックスサーバーの無料独自SSL機能を利用する場合、通常は自動で設定が行われるため、ユーザーがDNS設定を直接変更する必要はありません。
7. ネームサーバーとDNSレコードの違い
DNSの文脈で「ネームサーバー」と「DNSレコード」という言葉が出てきて混乱することがあるかもしれません。これらは密接に関連していますが、異なる役割を持っています。
- ネームサーバー (Name Server): 特定のドメインに関するDNS情報(リソースレコード)を実際に保管・管理しているサーバー(コンピュータ)そのものを指します。あなたのドメインの「権威ネームサーバー」がエックスサーバーのネームサーバー(例:
ns1.xserver.jp
,ns2.xserver.jp
など)であると、インターネット上の他のDNSサーバーは、あなたのドメインに関する情報を知りたいときにエックスサーバーのネームサーバーに問い合わせに来ます。 - DNSレコード (DNS Record): ネームサーバーが管理している「情報の内容」そのものを指します。Aレコード、MXレコード、TXTレコードなどがこれにあたります。例えるなら、ネームサーバーが「電話帳そのもの」で、DNSレコードが「電話帳に載っている個々の情報(名前と電話番号など)」です。
エックスサーバーにおける関係:
- ドメイン管理会社でのネームサーバー設定: まず、あなたのドメインが「どのネームサーバーにDNS情報を聞きに行けばよいか」をインターネット全体に知らせる必要があります。これは、ドメインを取得したドメイン管理会社(お名前.com, Xserverドメインなど)の管理画面で行います。ここで、あなたのドメインのネームサーバーをエックスサーバーが指定するネームサーバー(例:
ns1.xserver.jp
)に設定します。この設定により、あなたのドメインに関する名前解決の問い合わせはエックスサーバーのネームサーバーに向けられるようになります。 - エックスサーバーのサーバーパネルでのDNSレコード設定: ドメインのネームサーバーをエックスサーバーに設定したら、次にエックスサーバーのサーバーパネルで、具体的なDNS情報(ウェブサイトのIPアドレス、メールサーバーの場所など)を「DNSレコード」として設定します。この設定内容は、エックスサーバーのネームサーバーによって管理されます。
したがって、あなたのドメインがエックスサーバーで正しく機能するためには、「ドメイン管理会社でのネームサーバー設定」と「エックスサーバーのサーバーパネルでのDNSレコード設定」の両方が適切に行われている必要があります。
8. DNS設定に関連するトラブルシューティング
DNS設定はインターネットの根幹に関わるため、設定ミスがあるとウェブサイトが表示されない、メールが届かないなど、大きな問題につながることがあります。ここでは、よくあるトラブルとその原因・解決策を紹介します。
8.1. ウェブサイトが表示されない・特定のサブドメインが表示されない
- 考えられる原因 1: DNSの浸透待ち
- 説明: DNS設定を変更したばかりで、まだインターネット全体に情報が反映されていない可能性があります。
- 解決策: しばらく時間(数分~数時間、場合によっては24時間以上)をおいてから再度アクセスしてみてください。外部のDNS浸透確認ツール(例: What’s My DNS?)を使って、あなたのドメインのAレコードなどが正しくエックスサーバーのIPアドレスを指しているか確認できます。
- 考えられる原因 2: DNSレコード設定の間違い
- 説明: ウェブサイトを指すAレコードやAAAAレコード(またはCNAMEレコード)が正しく設定されていない可能性があります。IPアドレスが間違っている、ホスト名が間違っている(例:
www
を設定し忘れている)、種別が間違っているなどが考えられます。 - 解決策: エックスサーバーのサーバーパネルの「DNSレコード設定」画面を開き、設定対象ドメインのレコードを確認します。特に、ウェブサイトのアクセスに使われる
@
(ネイキッドドメイン) やwww
のA/AAAAレコード、またはCNAMEレコードが、エックスサーバーから指定されたIPアドレスやホスト名を指しているか確認してください。
- 説明: ウェブサイトを指すAレコードやAAAAレコード(またはCNAMEレコード)が正しく設定されていない可能性があります。IPアドレスが間違っている、ホスト名が間違っている(例:
- 考えられる原因 3: ネームサーバー設定の間違い
- 説明: ドメイン管理会社で、あなたのドメインのネームサーバーが正しくエックスサーバーのネームサーバー(
ns1.xserver.jp
,ns2.xserver.jp
など)に設定されていない可能性があります。 - 解決策: ドメイン管理会社の管理画面にログインし、対象ドメインのネームサーバー設定を確認してください。エックスサーバーが指定するネームサーバーアドレスが正確に入力されているか確認します。
- 説明: ドメイン管理会社で、あなたのドメインのネームサーバーが正しくエックスサーバーのネームサーバー(
- 考えられる原因 4: ブラウザやローカルPCのDNSキャッシュ
- 説明: あなたのコンピュータや利用しているISPのDNSリカーシブネームサーバーに古いDNS情報がキャッシュされている可能性があります。
- 解決策:
- ウェブブラウザのキャッシュをクリアしてみてください。
- PCのDNSキャッシュをクリアしてみてください。(コマンドプロンプト/ターミナルで
ipconfig /flushdns
(Windows) またはsudo killall -HUP mDNSResponder
(macOS) などを実行) - 異なるネットワーク(スマホのキャリア回線など)や異なるデバイスからアクセスして表示されるか確認してみてください。
8.2. メールが送受信できない
- 考えられる原因 1: MXレコード設定の間違い
- 説明: あなたのドメイン宛てのメールがどこに配送されるべきかを示すMXレコードが正しく設定されていない可能性があります。エックスサーバーのメールサーバーを使用する場合、または外部メールサービスを使用する場合で、設定内容が異なります。
- 解決策: エックスサーバーのサーバーパネルの「DNSレコード設定」画面を開き、MXレコードを確認します。
- エックスサーバーのメールを使用する場合:デフォルトのMXレコード(通常、優先度
10
でホスト名がexample.com.
またはmail.example.com.
など)が設定されているか確認します。 - 外部メールサービスを使用する場合:サービスから指定されたすべてのMXレコードが正確に、かつ既存のエックスサーバーのMXレコードなどを削除した上で追加されているか確認します。優先度やホスト名の入力間違いがないか注意深く確認してください。
- エックスサーバーのメールを使用する場合:デフォルトのMXレコード(通常、優先度
- 考えられる原因 2: SPFレコード設定の間違いまたは不足
- 説明: 送信メールサーバーが正規のものであるかを示すSPFレコード(TXTレコード)が正しく設定されていないと、送信したメールが相手に届かなかったり、迷惑メール扱いされたりする可能性があります。
- 解決策: エックスサーバーのサーバーパネルの「DNSレコード設定」画面を開き、TXTレコードの中にSPFレコード(
v=spf1 ...
で始まる内容)があるか確認します。- エックスサーバーからメールを送信する場合:
include:_spf.xserver.jp
が含まれているか確認します。 - 外部サービス(Google Workspaceなど)からメールを送信する場合:そのサービスのSPF情報が含まれているか確認します(例:
include:_spf.google.com
)。複数のサービスから送信する場合は、すべての情報を1つのSPFレコードにまとめる必要があります。 - SPFレコードの記述形式が間違っていないか確認します。
- エックスサーバーからメールを送信する場合:
- 考えられる原因 3: DKIMレコード設定の不足
- 説明: DKIMレコードが設定されていないと、メールの信頼性が低くなり、迷惑メール扱いされる可能性が高まります。
- 解決策: 外部メールサービスでDKIMを使用している場合は、サービス側で指定されたDKIMレコード(TXTレコード)が正しくエックスサーバーのDNS設定に追加されているか確認します。
- 考えられる原因 4: メールクライアントの設定間違い
- 説明: DNS設定は問題なくても、メールソフト(Outlook, Thunderbirdなど)やスマホのメールアプリでの設定(POP, IMAP, SMTPサーバー名、ポート番号、認証方法など)が間違っている可能性があります。
- 解決策: エックスサーバーのメール設定マニュアルや、利用している外部メールサービスのマニュアルを参照し、メールクライアントの設定が正しいか確認します。
8.3. 設定変更が反映されない
- 考えられる原因: 前述の「DNSの浸透」が完了していない可能性があります。
- 解決策: 外部のDNS浸透確認ツールで反映状況を確認し、浸透が完了するまで待ちます。TTL値を短く設定していた場合は、反映が早まることが期待できます。ブラウザやローカルPCのキャッシュクリアも有効です。
8.4. DNS設定を間違えた場合の回復方法
- 原因の特定: まず、どのレコードをどのように間違えた可能性が高いか特定します。直前に行った設定変更内容を確認しましょう。
- 修正: 間違っていると思われるレコードを、正しい値に修正します。外部サービスの場合は、サービスの公式ドキュメントで正確な設定値を確認します。
- 初期設定に戻す: どの設定を間違えたか分からない、あるいは多数間違えてしまった場合は、エックスサーバーのサーバーパネルの「DNSレコード設定」画面にある「設定をリセットする」機能を利用して、エックスサーバー契約時のデフォルト設定に戻すことも検討できます。ただし、この場合、手動で追加したすべてのレコードが削除されるため、必要なレコード(外部メール、CDNなど)は全て最初から設定し直す必要があります。
- サポートへの問い合わせ: どうしても解決できない場合は、エックスサーバーのカスタマーサポートに問い合わせるのも良いでしょう。その際、発生している問題(例: ウェブサイトが表示されない、メールが届かないなど)、直近で行った設定変更内容、試したトラブルシューティング手順などを具体的に伝えると、スムーズな対応が期待できます。
DNS設定は、入力する値が少しでも違うと正しく機能しないデリケートな設定です。特に外部サービスを利用する際は、サービスの公式ドキュメントをよく読み、指定された値をコピー&ペーストするなどして正確に入力するよう心がけましょう。
9. DNSセキュリティとエックスサーバー
DNSはインターネットの基盤であるため、悪意のある攻撃の対象となることがあります。代表的な攻撃の一つに「DNSキャッシュポイズニング(汚染)」があります。これは、偽の名前解決情報をDNSサーバーのキャッシュに混入させることで、ユーザーを偽のウェブサイトに誘導したり、メールを傍受したりする攻撃です。
これを防ぐ技術の一つに「DNSSEC(Domain Name System Security Extensions)」があります。DNSSECは、DNS応答に電子署名を行うことで、その情報が改ざんされていない正当なものであることを検証可能にする仕組みです。
エックスサーバーにおけるDNSSEC:
エックスサーバー自体はDNSSECに対応しており、エックスサーバーをネームサーバーとして利用しているドメインでDNSSECを有効にすることができます。
DNSSECを有効にする手順は、ドメイン管理会社(レジストラ)によって異なります。一般的には、エックスサーバー側でDNSSEC署名を有効にし、生成された公開鍵情報をドメイン管理会社の管理画面(DSレコードの設定)に登録する必要があります。
注意点:
- DNSSECを有効にするとセキュリティは向上しますが、設定を間違えると名前解決ができなくなり、ウェブサイトが表示されなくなるなどの致命的な問題が発生する可能性があります。
- DNSSECの有効化は、まだすべてのドメイン管理会社やISPのリゾルバーが完全に対応しているわけではないため、予期せぬ問題が発生する可能性もゼロではありません。
- 通常、ウェブサイトやメールの運用を行う上で、ユーザーがエックスサーバーのサーバーパネルから直接DNSSECの設定を頻繁に行う場面は少ないかもしれません。より高度なセキュリティを求める場合や、特定の要件がある場合に検討すると良いでしょう。まずは、基本的なDNS設定(A, MX, TXTなど)を正確に行うことが、安定運用の第一歩です。
エックスサーバーはサーバーレベルでのセキュリティ対策(WAF、IPS/IDSなど)を提供していますが、DNSレベルでのセキュリティ強化としてDNSSECも利用可能です。
10. 高度なDNS設定(一部抜粋)
エックスサーバーのDNSレコード設定では、ここまで解説した主要なレコード以外にも、いくつかの応用的な設定が可能です。
- ワイルドカードレコード (*)
- 役割: 存在しない任意のサブドメインに対する問い合わせに対して、指定したレコードを応答させる設定です。
- 例:
*.example.com
というホスト名に対してAレコードを設定すると、abc.example.com
,xyz.example.com
など、事前に個別のDNSレコードが設定されていないすべてのサブドメインへのアクセスが、そのAレコードで指定されたIPアドレスに向けられます。 - エックスサーバーでの設定例:
- ホスト名:
*
, 種別:A
, 内容:192.0.2.10
- ホスト名:
- 注意: ワイルドカードレコードよりも、個別に設定されたレコードの方が優先されます。また、ワイルドカードCNAMEレコードにはいくつかの制限や注意点があります。安易な設定は予期せぬ動作を引き起こす可能性があるため、必要性を理解した上で慎重に設定してください。
エックスサーバーのサーバーパネルで設定できるレコード種別や入力形式の詳細は、公式マニュアルを参照することをおすすめします。
11. まとめ
この記事では、エックスサーバー利用者が知っておくべきDNSの基本、主要なリソースレコード、名前解決のプロセス、そしてサーバーパネルを使った具体的な設定方法について詳しく解説しました。
- DNSはインターネットの「住所録」: ドメイン名とIPアドレスを変換する重要な仕組みです。
- エックスサーバーのネームサーバー: あなたのドメインに関するDNS情報を管理しています。
- DNSレコード: ウェブサイト(A/AAAA)、メールサーバー(MX)、テキスト情報(TXT)、別名(CNAME)など、様々な情報が記録されています。
- サーバーパネルで設定: エックスサーバーのサーバーパネルから「DNSレコード設定」を利用して、A, CNAME, MX, TXTなどのレコードを追加・編集・削除できます。
- 設定ミスはトラブルの元: 設定を間違えると、ウェブサイトが表示されない、メールが届かないなどの問題が発生します。正確な値の入力と、設定後の浸透時間への考慮が重要です。
- 外部サービス連携には必須: Google WorkspaceやCloudflareなど、多くの外部サービスを利用する際にDNS設定変更が求められます。サービス側の指示に従って正確に設定しましょう。
- トラブルシューティング: ウェブサイトやメールの不具合の原因がDNSにある場合、ネームサーバー設定、DNSレコード設定、浸透状況、キャッシュなどを順に確認することが解決への道です。
DNSは一見難しそうに見えますが、その基本的な仕組みと主要なレコードの種類、そしてエックスサーバーでの設定方法を理解すれば、戸惑うことなく対応できるようになります。この記事が、あなたのエックスサーバーでのウェブサイト・メール運用をより安定させ、必要なサービス連携をスムーズに行うための一助となれば幸いです。
DNS設定についてさらに詳しく知りたい場合や、より高度な設定に挑戦したい場合は、エックスサーバーの公式マニュアルや関連技術情報を参照してみてください。インターネットの基盤技術であるDNSを理解することは、ウェブサイト運営のスキルアップにも繋がります。
12. 参考情報・FAQ (想定)
Q: ネームサーバーとDNSレコードの違いは何ですか?
A: ネームサーバーはDNS情報を管理している「サーバー」そのものです。DNSレコードはネームサーバーに記録されている「情報の内容」(例: example.comはIPアドレス192.0.2.10に対応する、など)です。ドメイン管理会社でネームサーバーを設定し、エックスサーバーのサーバーパネルでDNSレコードを設定するのが一般的な流れです。
Q: DNS設定変更後、どれくらいで反映されますか?
A: 「浸透」と呼ばれる反映プロセスには時間がかかります。反映時間は設定したレコードのTTL(Time To Live)値や、インターネット上の各DNSサーバーのキャッシュ状況によります。TTLが短いほど早く反映されますが、それでも数分から数時間、長い場合は24時間~72時間かかることもあります。外部のDNS浸透確認ツールで状況を確認できます。
Q: DNS設定を間違えたらどうなりますか?
A: 設定したレコードの種類によりますが、ウェブサイトが表示されなくなる(A/AAAA/CNAMEミス)、メールが送受信できなくなる(MX/TXTミス)、特定の外部サービスが利用できなくなるなどの問題が発生します。慎重な設定と、設定後の動作確認が重要です。
Q: SPFレコードは複数設定できますか?
A: 同じホスト名(通常 @
または空欄)に対して、複数のTXTレコードとしてSPF情報を記述することはできません。複数のサービスからメールを送信する場合(例: エックスサーバーとGoogle Workspace)、1つのSPFレコードの中にすべての送信元を含める必要があります。例: "v=spf1 include:_spf.xserver.jp include:_spf.google.com ~all"
Q: ワイルドカードレコード(*
)はどのような場合に役立ちますか?
A: 多数のサブドメインをまとめて同じ設定にしたい場合に便利です。例えば、サブドメインを複数作成する可能性があるが、全て同じサーバーの同じディレクトリ(または同じIPアドレス)に向けたい場合などです。ただし、個別のサブドメインに対する明示的なレコード設定がある場合はそちらが優先されます。
Q: エックスサーバーのサーバーパネルで、NSレコードを編集してもいいですか?
A: 通常、NSレコードをサーバーパネルから編集してはいけません。 サーバーパネルに表示されているNSレコードは、そのドメインがエックスサーバーのネームサーバーによって管理されていることを示すものであり、これを変更するとあなたのドメインの名前解決がエックスサーバーではなくなり、ウェブサイトやメールがすべて停止する可能性があります。ネームサーバーの変更は、ドメイン管理会社の管理画面で行います。
以上で、エックスサーバー利用者が知っておきたいDNSの基本と設定ガイドについての詳細な説明を終えます。この記事があなたのDNS設定に関する疑問解消と、よりスムーズなウェブサイト運営に役立つことを願っています。