Clash Verge Revで快適ネット環境を構築!機能、設定、応用まで徹底解説
インターネット利用が私たちの生活や仕事に欠かせないものとなった現代、速度、安定性、そして柔軟なアクセス制御は、もはや贅沢ではなく必須の要素です。特に、特定の情報にアクセスしたい、プライバシーを保護したい、あるいはネットワーク環境を最適化したいといったニーズを持つユーザーにとって、単なるVPNやプロキシツールでは物足りなくなることがあります。
そこで登場するのが、「ルールベースのプロキシ」という考え方に基づいた強力なツール、Clashです。そして、そのClashの機能を最大限に引き出し、直感的かつ使いやすいGUI(Graphical User Interface)を提供することで、多くのユーザーに支持されているのがClash Vergeです。さらに、オリジナルのClash Vergeの開発が一時停滞したのに対し、コミュニティ主導で開発が継続され、多数の新機能や改善が加えられたのがClash Verge Rev(Revision)です。
この記事では、このClash Verge Revに焦点を当て、その基本的な機能から高度な設定、さらには快適なネット環境を構築するための応用的な使い方まで、約5000語を費やして徹底的に解説します。これからClash Verge Revを使ってみたいと考えている方、あるいはすでに使っているものの、もっと機能を使いこなしたいと考えている方にとって、この記事がその羅針盤となることを願っています。
さあ、Clash Verge Revの世界へ深く潜り込み、あなたのネット環境を次のレベルへと引き上げましょう。
第1章:Clash Verge Revとは何か? – 基本の理解
まず、Clash Verge Revが何であるか、その基本的な概念と、なぜこれが必要なのかを理解することから始めましょう。
1.1 Clashとは? ルールベースプロキシの概念
Clashは、Go言語で書かれたクロスプラットフォーム対応のネットワークプロキシソフトウェアです。最大の特徴は、そのルールベースのルーティング機能にあります。従来のプロキシは、特定のサーバーを経由させるかさせないか、といった単純な設定が主でした。しかし、Clashは、アクセスしようとしているドメイン、IPアドレス、地理情報(GEOIP)、さらにはどのアプリケーションからの接続か、といった多様な条件に基づいて、接続先を「プロキシ経由」「直接接続(Direct)」「接続拒否(Reject)」といった異なる経路に自動的に振り分けることができます。
このルールベースのルーティングにより、以下のようなことが可能になります。
- 特定の海外サイトにアクセスする時だけプロキシを使う:国内サイトや一般的に高速なアクセスが可能なサイトは直接接続にし、通信速度の低下を防ぎます。
- 特定のアプリケーション(ゲームや動画サービスなど)はプロキシ経由、それ以外は直接:アプリケーションごとに最適な経路を選択できます。
- 広告やトラッカー関連のドメインへの接続を拒否する:プライバシー保護や通信量の節約に役立ちます。
- 特定の地域からのアクセスと判断された場合のみプロキシを使う:地域制限を回避する際に有効です。
Clashの核となるのは、このルールエンジンと、Socks5, HTTP(S), VMess, VLESS, Trojan, Snellなど、多岐にわたるプロキシプロトコルへの対応能力です。しかし、Clash本体はCUI(Command Line Interface)ベースで動作するため、設定ファイルの編集にはYAML形式のテキストファイルを直接手作業で記述する必要があり、初心者には敷居が高い側面がありました。
1.2 Clash Verge Revの登場 – GUIによる使いやすさの追求
Clashの強力な機能をより多くのユーザーが簡単に利用できるように開発されたのが、GUIクライアントです。Clash Vergeもその一つであり、Electronフレームワークを使用して開発された、モダンで直感的なインターフェースを持つWindows, macOS, Linux向けのクライアントでした。
しかし、OSS(オープンソースソフトウェア)の開発では、開発者の都合やモチベーションにより、プロジェクトの活動が一時的に停滞したり、完全に停止したりすることがあります。オリジナルのClash Vergeも、一時期開発のペースが落ちました。
ここで、コミュニティの力、OSSの真髄が発揮されます。オリジナルのプロジェクトから派生し、開発を引き継いだり、独自の改善を加えたりする「フォーク」が行われることがあります。Clash Verge Revは、まさにこのフォークによって生まれました。開発が活発に行われており、オリジナルのClash Vergeにはなかった新機能の追加、パフォーマンスの改善、UI/UXの洗練などが継続的に行われています。
「Rev」はRevision(改訂版、修正版)を意味し、オリジナル版をベースにさらに改良が加えられたバージョンであることを示しています。したがって、現在ClashのGUIクライアントとして利用するならば、機能の豊富さや開発の継続性から、Clash Verge Revを選択することが強く推奨されます。
1.3 なぜClash Verge Revを使うのか? メリットの整理
Clash Verge Revを使う最大のメリットは、Clashの持つ強力なルールベースルーティング機能を、洗練されたGUIを通じて誰でも簡単に設定・管理できる点にあります。これにより、以下のような恩恵を受けることができます。
- 直感的な操作: YAMLファイルを直接編集することなく、GUI上でサブスクリプションの追加、プロファイルの切り替え、プロキシノードの選択、 bahkan基本的なルール設定まで視覚的に行えます。
- プロファイル管理の容易さ: 複数の設定(プロファイル)を保存し、用途に応じて簡単に切り替えることができます。異なるプロキシサービスを利用したり、自宅用と職場用で設定を分けたりする際に便利です。
- 詳細な接続状況の可視化: リアルタイムのトラフィック状況、アクティブな接続リスト、各接続がどのルールにマッチして、どのプロキシを経由しているかなどをGUI上で確認できます。これにより、設定のデバッグやネットワーク状況の把握が容易になります。
- 高度な機能へのアクセス: Rule Provider、DNS設定(DoH/DoT/Fake IP)、HTTPS MitMといったClashの高度な機能も、GUIを通じて設定可能です(ただし、一部の設定はYAML編集が必要な場合もあります)。
- 開発の継続性: Rev版は活発に開発が続けられており、バグ修正や新機能の追加が頻繁に行われています。
- クロスプラットフォーム: Windows, macOS, Linuxといった主要なデスクトップOSで利用できます。
これらのメリットを享受することで、ユーザーはネットワーク環境を自分のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズし、より快適で安全、そして自由なインターネット体験を実現できるのです。
第2章:Clash Verge Revの主要機能詳解
Clash Verge Revが提供する機能は多岐にわたります。ここでは、快適なネット環境を構築する上で特に重要となる主要な機能を詳しく見ていきましょう。
2.1 GUIによる直感的な操作とダッシュボード
Clash Verge Revを起動すると、まずダッシュボード画面が表示されます。この画面は、Clashコアの動作状況、現在の接続状態、トラフィック量などを一目で把握できるようになっています。
- ステータス: Clashコアが現在「実行中」なのか「停止中」なのかが表示されます。ここからコアの起動・停止を制御できます。
- バージョン情報: 使用しているClash Verge Revのバージョンと、利用しているClashコアのバージョンが表示されます。コアのバージョンは、対応プロトコルや機能に影響するため重要です。
- トラフィック: リアルタイムのアップロード/ダウンロード速度がグラフで表示されます。現在の通信状況を視覚的に把握できます。
- プロキシモード: 現在適用されているプロキシモード(Global, Rule, Direct)が表示されます。
- システムプロキシ: システム全体のプロキシ設定がClash Verge Revによって制御されているかどうかが表示されます。多くの場合、ここをオンにしてClash Verge Revがシステムプロキシとして機能するように設定します。
ダッシュボードの他にも、Clash Verge RevのGUIは各機能へのアクセスを容易にしています。左側のナビゲーションパネルから、「Proxies」「Profiles」「Rules」「Connections」「Logs」「Settings」といった各セクションに簡単に切り替えられます。
2.2 プロファイルとサブスクリプション管理
Clash Verge Revの中心的な機能の一つが、プロファイルとサブスクリプションの管理です。
- プロファイル: Clashコアの設定全体をまとめたものです。プロキシノードのリスト、プロキシグループの設定、ルーリングール、DNS設定など、全てが含まれます。通常、YAML形式のファイルとして保存されます。Clash Verge Revでは、複数のプロファイルを管理し、ワンクリックで切り替えることができます。
- サブスクリプション: 多くのプロキシサービスプロバイダーは、利用可能なプロキシノードのリストを記述した設定ファイルをURLとして提供しています。これを「サブスクリプションURL」と呼びます。Clash Verge RevにこのURLを登録すると、定期的に自動または手動で最新のノードリストや設定を取得・更新できます。これにより、プロバイダー側でノードが追加・変更・削除されても、常に最新の状態を維持できます。
サブスクリプションの追加:
「Profiles」セクションに移動し、「Add Profile」ボタンをクリック。「Type」で「URL」を選択し、プロバイダーから提供されたサブスクリプションURLを貼り付けます。名前をつけて保存すれば、リストに追加されます。
ローカル設定ファイルのインポート:
すでにYAML形式のClash設定ファイルを持っている場合は、「Type」で「File」を選択し、ファイルを指定してインポートすることも可能です。
プロファイルの切り替えと更新:
登録されたプロファイルリストから使用したいものを選択し、有効化します。サブスクリプションプロファイルの場合は、右クリックメニューなどから「Update」を選択すると、最新の設定を取得できます。
このプロファイル管理機能により、複雑な設定ファイルを直接編集することなく、GUI上で複数の設定ソースを扱い、簡単に切り替えることが可能になります。
2.3 プロキシグループ – 賢いノード選択と負荷分散
プロキシサービスを利用する際、通常は複数のプロキシノード(サーバー)が提供されます。これらのノードは、地理的に異なったり、回線状況が異なったりします。Clashの「プロキシグループ」機能は、これらのノードをグループ化し、特定のルーティングルールがマッチした場合に、そのグループ内のどのノードを使用するかを柔軟に決定するための強力なメカニズムです。
プロキシグループにはいくつかのタイプがあります。Clash Verge Revの「Proxies」セクションでは、プロファイルで定義されたプロキシグループが表示され、そのタイプや現在選択されているノードを確認・変更できます。
select
: 最も基本的なタイプです。グループ内のノードまたは他のグループの中から、ユーザーが手動で一つを選択します。Clash Verge RevのGUI上で、ドロップダウンリストから簡単に切り替えられます。地域別や用途別にノードを分けておき、手動で選択する場合に便利です。url-test
: グループ内の各ノードに対して定期的にURLテスト(指定したURLへのアクセス速度や応答性をテスト)を実行し、最も応答が速いノードを自動的に選択します。これにより、常に最速のノードを自動的に利用できます。安定した高速通信を求める場合に非常に有効です。テストURLやテスト間隔は設定可能です。fallback
: グループ内のノードを上から順にテストし、最初に成功したノードを使用します。使用中のノードへの接続が切れた場合、リストの次のノードに自動的に切り替わります(フォールバック)。信頼性や冗長性を重視する場合に適しています。load-balance
: グループ内のノード間で接続をラウンドロビン(均等に割り振る)または他の方式で分散させます。複数のノードに負荷を分散させたい場合に有効ですが、プロトコルによってはセッション維持に影響が出る場合もあります。relay
: 複数のプロキシを直列に経由させます。例えば、ノードA -> ノードB -> 目的地のように接続します。高度な設定であり、特定のユースケースで用いられます。
これらのプロキシグループを組み合わせることで、「特定のサイトにアクセスする際は、日本と韓国のノードを含むurl-test
グループで最速を選択するが、動画サイトへのアクセスは別途用意した動画配信用ノードのselect
グループから手動で選択する」といった、非常にきめ細やかなルーティング戦略を実現できます。
2.4 ルール管理 – 通信経路の制御
Clashの心臓部とも言えるのがルールベースルーティングです。Clash Verge Revの「Rules」セクションでは、現在有効なプロファイルに含まれるルールの一覧を確認できます。ルールは上から順に評価され、最初にマッチしたルールの設定が適用されます。
ルールには、以下のような様々な基準(Criterion)と、それに対応する処理(PolicyまたはPolicy Group)があります。
主な基準 (Criterion):
DOMAIN-SUFFIX
: ドメイン名の末尾が一致する場合(例:DOMAIN-SUFFIX,google.com
–google.com
やmail.google.com
にマッチ)DOMAIN
: ドメイン名が完全に一致する場合(例:DOMAIN,www.google.com
)DOMAIN-KEYWORD
: ドメイン名に特定のキーワードが含まれる場合(例:DOMAIN-KEYWORD,google
– ドメイン名にgoogle
が含まれるもの全て)GEOIP
: アクセス先のIPアドレスの地理情報が一致する場合(例:GEOIP,CN
– 中国のIPアドレスにマッチ)IP-CIDR
: アクセス先のIPアドレスが特定のCIDRブロックに含まれる場合(例:IP-CIDR,192.168.1.0/24
)SRC-IP-CIDR
: 接続元のIPアドレスが特定のCIDRブロックに含まれる場合PROCESS
: 接続を開始したプロセス(アプリケーション)の実行ファイル名が一致する場合(例:PROCESS,chrome.exe
)MATCH
: 上記のどのルールにもマッチしなかった場合のデフォルトルール。常にルールの最後に配置されます。
主な処理 (Policy/Policy Group):
Proxy
/Proxy Group
: 指定されたプロキシノードまたはプロキシグループを経由させます。Direct
: プロキシを経由せず、直接インターネットに接続します。Reject
/REJECT-TINYDNS
/REJECT-IP
: 接続を拒否します。広告ブロックなどに利用されます。
ルール編集:
Clash Verge RevのGUI上では、ルールの追加・編集は限定的です。本格的にカスタムルールを作成・編集するには、プロファイル設定ファイル(YAML)を直接編集する必要があります。これについては後述の応用設定で詳しく解説します。
ただし、GUIの「Rules」タブで現在のルールリストを確認し、どの通信がどのルールにマッチしているかを把握することは、設定の検証やデバッグにおいて非常に役立ちます。
プロキシモード (Proxy Mode):
Clash Verge RevのGUIの左下には、「Proxy Mode」を切り替えるオプションがあります。これは、ルールベースルーティング全体をどのように適用するかを大まかに制御するものです。
- Rule: これが標準的なモードで、上で説明したルールリストに従って通信経路を決定します。最も柔軟性が高いモードです。
- Global: 全ての通信を指定された単一のプロキシノードまたはグループ(通常は
Global
という名前のグループ)を経由させます。例外なく全ての通信をプロキシしたい場合に単純な設定として使えますが、利便性や速度の面でRuleモードが推奨されます。 - Direct: 全ての通信を直接インターネットに接続します。Clashコアは動作していますが、プロキシとしては機能しません。一時的にプロキシを無効にしたい場合に便利です。
通常は「Rule」モードで使用します。
2.5 接続監視とログビューアー
Clash Verge Revは、現在のネットワーク接続や過去の接続履歴を詳細に監視・確認できる機能を提供します。
- Connections: 「Connections」タブでは、Clashコアを通過しているリアルタイムのTCP/UDP接続リストが表示されます。各接続に対して、接続元IP/ポート、接続先ドメイン/IP/ポート、使用されたルール、経由したプロキシノード、アップロード/ダウンロードされたデータ量などが表示されます。これにより、「今、どのアプリが、どのサイトに、どのルールで、どのプロキシを経由して接続しているか」を正確に把握できます。疑わしい接続や意図しない経路で通信している接続を特定し、設定を調整するのに非常に役立ちます。接続を強制的に切断する機能もあります。
- Logs: 「Logs」タブでは、Clashコアの動作ログが表示されます。コアの起動・停止、設定のロード、DNSクエリ、ルールマッチの結果、エラーメッセージなどが記録されます。設定が正しく反映されない、特定のサイトにアクセスできない、といった問題が発生した場合に、ログを確認することで原因を特定するための重要なヒントを得られます。ログレベル(Debug, Info, Warning, Errorなど)をGUIの設定で変更することも可能です。
これらの監視・ログ機能は、特にカスタム設定を行ったり、複雑なルールを適用したりする際に、設定が意図通りに機能しているかを確認し、問題発生時に迅速にトラブルシューティングを行う上で不可欠です。
2.6 設定画面 – GUIのカスタマイズと高度なオプション
「Settings」タブでは、Clash Verge Revクライアント自体やClashコアの動作に関する様々な設定を行うことができます。
- General:
- System Proxy: システム全体のプロキシ設定をClash Verge Revが制御するかどうか。通常はオンにします。
- Start with Windows/macOS/Linux: OS起動時にClash Verge Revを自動的に起動するかどうか。
- Allow LAN: ローカルネットワーク上の他のデバイスからの接続を許可するかどうか。モバイルデバイスなどからPC上のClash Verge Revを経由してインターネットに接続させたい場合に有効にします。
- Mixed Port/Socks Port/HTTP Port: Clashがリッスンするローカルプロキシポートを設定します。アプリケーションがこれらのポートを経由してClashに接続します。通常はデフォルトのままで問題ありません。
- Proxy:
- URL Test URL/Interval:
url-test
プロキシグループが使用するテストURLとテスト間隔を設定します。 - Latency Test URL/Interval: 各プロキシノードのレイテンシ(遅延)をテストする際のURLと間隔を設定します。GUI上でノードのping値を表示する際に使用されます。
- URL Test URL/Interval:
- GUI:
- Theme: GUIのテーマを変更できます。
- Language: GUIの表示言語を変更できます。
- Clash Core:
- External Controller: 外部ツールやスクリプトからClashコアを制御するためのAPIポートを設定します。
- Clash Core Version: 使用するClashコアのバージョンを選択します。必要に応じて新しいバージョンをダウンロードできます。
- Experimental:
- Hijack DNS: システムのDNS設定を乗っ取って、ClashのDNS設定を強制的に適用します。
- TAP Device: TAPデバイスを使用したルーティング(特定のプロトコルやアプリケーションの透過的なプロキシ化に利用されることがありますが、設定は複雑です)に関する設定。
- Enable MitM: HTTPS MitM機能を有効にするかどうか。有効にする場合は、別途証明書の生成とインストールが必要です。
これらの設定を適切に行うことで、Clash Verge Revの動作環境や挙動を細かく調整し、より快適で安全なネット環境を構築できます。
第3章:Clash Verge Revのインストール方法
Clash Verge Revのインストールは比較的簡単です。Windows, macOS, Linuxといった主要なデスクトップOSに対応しています。ここでは、それぞれのOSでの一般的なインストール方法を解説します。
3.1 公式リリースからのダウンロード
最も推奨される方法は、Clash Verge Revの公式GitHubリポジトリのリリースセクションから、最新の安定版またはプレリリース版をダウンロードすることです。
- GitHubリポジトリ: Clash Verge Rev GitHub Repository
- Releasesページ: リポジトリのトップページにある「Releases」または右側の「Tags」セクションから、最新のリリースをクリックします。
各リリースには、対応するOSごとの様々な形式のファイルが添付されています。
3.2 OSごとのインストール手順
Windows:
- Releasesページで、
Clash.Verge_*-x64_en-US.msi
またはClash.Verge_*-x64.exe
といったファイルを探します。通常は.msi
インストーラーが推奨されます。-x64
は64ビット版を意味します。 - ダウンロードした
.msi
ファイルを実行します。 - インストーラーの指示に従って進めます。インストール場所の選択などが可能です。
- インストールが完了すると、スタートメニューなどにClash Verge Revが追加されます。
または、ポータブル版として.zip
ファイルや.7z
ファイルも提供されています。これらをダウンロードし、適当なフォルダに展開するだけで実行可能です(この場合、レジストリなどは変更されません)。
macOS:
- Releasesページで、
Clash.Verge_*-arm64.dmg
(Apple Silicon搭載Mac用) またはClash.Verge_*-x64.dmg
(Intel Mac用) を探します。 - ダウンロードした
.dmg
ファイルを開きます。ディスクイメージがマウントされます。 - 表示されたウィンドウ内のClash Verge Revアイコンを、Applicationsフォルダにドラッグ&ドロップします。
- これでインストール完了です。LaunchpadやApplicationsフォルダからClash Verge Revを起動できます。
- 初回起動時に、インターネットからダウンロードされたアプリケーションである旨の警告が表示されることがありますが、許可して開いてください。
Linux:
Linuxの場合、いくつかの形式が提供されています。
.AppImage
: 最も簡単な形式です。ダウンロードした.AppImage
ファイルに実行権限を付与し、実行するだけで使用できます。システムの他の部分を汚染しないポータブルな形式です。
bash
chmod +x Clash.Verge_*-x64.AppImage
./Clash.Verge_*-x64.AppImage.deb
: Debian/Ubuntuベースのシステム向けパッケージファイルです。
bash
sudo dpkg -i Clash.Verge_*-amd64.deb
sudo apt --fix-broken install # 依存関係の問題が発生した場合.rpm
: Fedora/CentOS/RHELベースのシステム向けパッケージファイルです。
bash
sudo rpm -ivh Clash.Verge_*-x86_64.rpm.tar.gz
: アーカイブファイルです。展開後、含まれる実行ファイルを手動で実行します。
bash
tar -xzf Clash.Verge_*-linux-x64.tar.gz
cd Clash.Verge_*
./clash-verge
通常は.AppImage
が手軽でおすすめです。
3.3 初回起動時のセットアップ
Clash Verge Revを初めて起動すると、Clashコアが見つからないというメッセージが表示されることがあります。これは、Clash Verge RevのGUIはあくまでインターフェースであり、実際のプロキシ処理を行うClashコア(実行ファイル)は別途必要だからです。
GUIの指示に従って、推奨されるClashコアをダウンロードしてください。通常はボタンをクリックするだけで自動的にダウンロード・設定が行われます。使用するコアのバージョンは「Settings」の「Clash Core」から後で変更することも可能です。Rev版では、オリジナルのClashコアだけでなく、より機能が拡張されたClash Metaなどのコアも選択できる場合があります。
コアのダウンロードと設定が完了すれば、Clash Verge Revのメイン画面が表示され、プロファイルを追加して利用を開始できる状態になります。
第4章:Clash Verge Revの基本的な設定方法
Clash Verge Revのインストールが完了したら、いよいよプロキシを設定して快適なネット環境を構築します。基本的な設定手順を追ってみましょう。
4.1 プロファイルの追加
最も一般的なのは、プロキシサービスプロバイダーから提供されるサブスクリプションURLを使用する方法です。
- Clash Verge Revを起動し、左側のナビゲーションから「Profiles」を選択します。
- 画面上部の「Add Profile」ボタンをクリックします。
- 表示されたダイアログで、
- 「Type」を「URL」のままにします。
- 「URL」フィールドに、プロバイダーからコピーしたClash形式のサブスクリプションURLを貼り付けます。
- 「Name」フィールドに、このプロファイルを識別するための任意の名前(例:
MyProxyService
)を入力します。 - 「Save」をクリックします。
- Clash Verge RevがURLから設定ファイルをダウンロードし、プロファイルリストに追加します。ダウンロードが完了するまで少し時間がかかる場合があります。
リストにプロファイルが表示されたら、そのプロファイルをクリックして選択します。
4.2 プロファイルの有効化とシステムプロキシへの反映
プロファイルリストから使用したいプロファイルをクリックして選択すると、そのプロファイルが有効化されます。
次に、OSのシステムプロキシ設定をClash Verge Revに制御させる必要があります。
- 左側のナビゲーションから「Settings」を選択します。
- 「General」セクションの「System Proxy」のトグルスイッチをオンにします。
これにより、お使いのOSのネットワーク設定が変更され、ウェブブラウザや多くのアプリケーションからの通信がClash Verge Revを経由するようになります。トグルスイッチが緑色になっていれば成功です。
4.3 プロキシグループの理解と選択
プロファイルが有効化されると、左側のナビゲーションから「Proxies」を選択した際に、プロファイルに含まれるプロキシグループが表示されます。
通常、プロバイダーから提供されるプロファイルには、Proxy
やサービス名といった名前のメインのselect
グループが含まれています。また、Global
、Rule
、Direct
といったデフォルトのグループも表示されます。
Global
: 全ての通信をこのグループで選択されたノードに送ります(Proxy ModeがGlobalの場合)。Rule
: ルールにマッチした通信を、ルールで指定されたポリシー(Proxy、Direct、Reject)に従って処理します。Proxyとして処理される通信は、通常はこのRule
グループで選択されたノード(またはルールで指定された別のグループ)に送られます。Direct
: 直接接続する通信が通ります。Reject
: 接続拒否された通信が通ります。
基本的な使い方では、「Proxy Mode」を「Rule」に設定し、「Proxies」タブでRule
グループ(またはそれに相当するメインのプロキシグループ)を展開し、使用したいプロキシノードをドロップダウンリストから選択します。
url-test
やfallback
グループが設定されている場合は、手動選択ではなくClashコアが自動的にノードを選択します。GUI上では、現在アクティブなノードが表示されます。
各ノードの右側に表示されるPING値は、そのノードまでの遅延を示しており、ノード選択の参考にできます(PINGテストを実行するには、ノードリストを右クリックして「Latency Test」などを実行します)。通常はPING値が低いノードほど応答速度が速い傾向がありますが、実際の通信速度は帯域幅など他の要因にも依存します。
4.4 基本的なルールの確認
プロファイルを有効化すると、そのプロファイルに含まれるルールが適用されます。これらのルールは、左側のナビゲーションから「Rules」を選択することで確認できます。
ルールリストは通常、以下のようなエントリを含んでいます。
GEOIP,CN,Proxy
(中国国内へのアクセスはProxy経由)DOMAIN-SUFFIX,cn,Proxy
(.cn
ドメインへのアクセスはProxy経由)GEOIP,RU,Proxy
(ロシア国内へのアクセスはProxy経由)MATCH,Direct
(上記どのルールにもマッチしない場合は直接接続)
プロバイダーによっては、一般的な広告ドメインをReject
するルールや、特定のストリーミングサービスへのアクセスをProxy経由にするルールなどが最初から含まれている場合があります。
これらのルールは、GUI上で見ることはできますが、直接編集するにはYAMLファイルを編集する必要があります。しかし、まずはリストを見て、どのようなルールが適用されているのかを理解することが重要です。
4.5 接続テスト
基本的な設定が完了したら、実際にインターネットに接続して、意図通りにClash Verge Revが機能しているかを確認しましょう。
- ウェブブラウザを開き、通常通りウェブサイトにアクセスしてみます。
- 特定の海外サイトや、プロキシ経由でのアクセスを想定しているサイトにアクセスしてみます。
- Clash Verge Revの「Connections」タブを開きます。
- 現在開いている接続リストを確認します。アクセスしたウェブサイトへの接続がリストに表示されているはずです。
- その接続が、どのルールにマッチし、どのプロキシノードを経由しているかを確認します。例えば、海外サイトへのアクセスが設定したプロキシノードを経由しているか、国内サイトへのアクセスが
Direct
になっているかなどをチェックします。
もし意図しない経路になっている場合は、「Rules」リストを確認し、該当するトラフィックにマッチするルールが正しいか、そのルールが指定しているポリシー(Proxy/Directなど)やプロキシグループが正しいかを確認します。
また、「Proxies」タブで、選択したプロキシノードのPINGテストを実行し、ノードが正常に機能しているかを確認することも重要です。PING値が非常に高かったり、タイムアウトしたりする場合は、そのノードに問題がある可能性があります。
第5章:Clash Verge Revの応用的な設定・使い方
Clash Verge Revの真価は、そのカスタマイズ性の高さにあります。基本的な設定だけでは実現できない、より複雑なルーティングや機能を利用するには、プロファイル設定ファイル(YAML形式)の編集が必要になります。
5.1 カスタムルールの追加・編集(YAML編集)
Clashの設定ファイルはYAML形式で記述されています。Clash Verge RevのGUIでは、「Profiles」タブで有効なプロファイルを選択した状態で、鉛筆アイコンをクリックすると、そのプロファイルのYAMLファイルを外部エディタで開いて編集できます。VS Codeなど、YAMLのシンタックスハイライトや検証機能を備えたエディタを使用するのがおすすめです。
YAMLファイルには、proxies
, proxy-groups
, rules
, rule-providers
, dns
など、様々なセクションがあります。ルールの編集は主にrules
セクションで行います。
rules
セクションの構造:
rules
セクションは、ルールのリストです。各ルールは - <基準>,<パラメータ>,<ポリシー>
の形式で記述されます。
“`yaml
profiles/<プロファイル名>.yaml
rules:
# 特定のドメインは常に直接接続
– DOMAIN,example.com,Direct
– DOMAIN-SUFFIX,example.org,Direct
# 広告ブロック – 広告ドメインリストをReject
– DOMAIN-SUFFIX,ad.com,Reject
– DOMAIN-SUFFIX,doubleclick.net,Reject
# … 他の広告ドメイン …
# 特定の動画サービスはProxy経由
– DOMAIN-SUFFIX,youtube.com,ProxyGroupNameForVideo # 動画配信用グループなど
– DOMAIN-SUFFIX,netflix.com,ProxyGroupNameForVideo
# GEOIPで中国国内へのアクセスをProxy経由 (Ruleグループを使用)
– GEOIP,CN,Rule
# 特定のアプリケーションからの通信をProxy経由
– PROCESS,Telegram.exe,Rule # TelegramはProxy経由
– PROCESS,chrome.exe,Direct # Chromeは基本Direct (他のルールが優先される)
# その他の国内IPはDirect
– GEOIP,IR,Direct # イラン
– GEOIP,JP,Direct # 日本
# … 他の国内/信頼できる地域のGEOIP …
# 上記どのルールにもマッチしない場合は、デフォルトでRuleグループを使用
– MATCH,Rule
“`
YAML編集の注意点:
- YAMLはインデントが非常に重要です。スペースの数(通常は2つまたは4つ)を統一し、正しくネストしてください。タブは使用しないでください。
- リストの要素は
-
で始まります。 - ルールは上から順に評価されます。より限定的なルールを先に、より広範なルールを後に配置します。例えば、
DOMAIN,www.google.com,Direct
のような具体的なルールは、DOMAIN-SUFFIX,google.com,Rule
のような曖昧なルールよりも前に置くべきです。 - 編集を保存した後、Clash Verge RevのGUIでそのプロファイルを再読み込み(通常、プロファイルリストで右クリックして「Update」または再選択)する必要があります。YAMLにエラーがあると、コアの起動に失敗したり、設定が正しく反映されなかったりします。ログを確認してデバッグしましょう。
カスタムルールを記述することで、特定のサイトだけプロキシを使う、仕事関係の通信だけは特定のセキュアなプロキシを使う、ゲームの通信はPingの速いプロキシを使う、といった細かい制御が可能になり、快適性とセキュリティを両立できます。
5.2 Rule Providerの活用
Rule Providerは、ルールリスト全体またはその一部をリモートのURLから取得するための機能です。これにより、自分でルールリストを管理する手間を省き、Third-partyが提供する最新のルールセット(例: 広告ブロックリスト、特定サービスのルーティングルールリストなど)を自動的に利用できます。
Rule Providerはrule-providers
セクションで定義し、それをrules
セクションから参照します。
“`yaml
profiles/<プロファイル名>.yaml
rule-providers:
# 広告ブロック用ルールプロバイダー
adblock:
type: http
behavior: domain # または ipcidr, classical など
url: “https://example.com/adblock-rules.txt” # ルールリストのURL
interval: 86400 # 更新間隔 (秒)
path: ./rules/adblock.yaml # ローカル保存パス
# 特定地域へのアクセス用ルールプロバイダー
geo-cn:
type: http
behavior: ipcidr
url: “https://example.com/china-ip-list.txt” # 中国IPリストのURL
interval: 86400
path: ./rules/geo-cn.yaml
# GEOIPルールとして使用する場合は、behavior: ipcidr のルールリストを GEOIP ルールに変換する必要があるなど、少し複雑になる場合があります。
# プロバイダーによっては、すでにClashルール形式で提供されている場合もあります。
rules:
# adblock ルールプロバイダーからのルールを適用
– RULE-SET,adblock,Reject # adblock リストにマッチしたら Reject
# geo-cn ルールプロバイダーからのルールを適用 (もし形式が合えば)
# – RULE-SET,geo-cn,Rule # geo-cn リストにマッチしたら Rule グループへ
# … その他の手動ルール …
- MATCH,Rule
“`
behavior
は、プロバイダーが提供するリストがドメインリストなのか、IPリストなのかなどを示します。RULE-SET
ルールでRule Providerを参照します。Rule Providerは非常に強力ですが、利用するプロバイダーのリストの形式や質に注意が必要です。
5.3 DNS設定の最適化
DNS設定は、ネットワークの速度、セキュリティ、そして特定の制限回避において重要な役割を果たします。Clashは高度なDNS設定が可能です。これはdns
セクションで設定します。
“`yaml
profiles/<プロファイル名>.yaml
dns:
enable: true
listen: 0.0.0.0:53 # ClashがDNSサーバーとしてリッスンするアドレスとポート
enhanced-mode: fake-ip # または redir-host
fake-ip-range: 198.18.0.1/16 # fake-ip 使用時のIPレンジ
# 信頼できるアップストリームDNSサーバー(プロキシを使わない)
# 国内サイトの解決など、高速かつ正確な名前解決用
default-nameserver:
– 114.114.114.114
– 223.5.5.5
# プロキシ経由でアクセスするアップストリームDNSサーバー(DoH/DoTなど)
# 隠蔽したいDNSクエリや、正確なGEOIP情報取得用
nameserver:
– https://dns.google/dns-query # Google Public DNS (DoH)
– tls://1.1.1.1:853 # Cloudflare DNS (DoT)
– 8.8.8.8 # 標準DNS (Proxy経由)
# 特定のドメインを特定のDNSサーバーで解決
nameserver-policy:
“geosite:cn”:
– 114.114.114.114 # 中国国内サイトは国内DNSで解決
“baidu.com”:
– 114.114.114.114
“netflix.com”:
– https://dns.google/dns-query # Netflixは海外DNSで解決 (地域判定対策)
# DNSクエリのフィルタリング (広告ブロックなど)
# filter:
# domain:
# – “+.ad.com”
# – “+.doubleclick.net”
# – “+.analytics.google.com”
“`
主要なDNS設定オプション:
enhanced-mode
:fake-ip
: Clashが名前解決した際に、実際のIPアドレスの代わりにFake IPアドレス(fake-ip-range
で指定した範囲内のローカルなIP)をクライアントに返します。実際の接続時に、ClashコアがそのFake IPに対応する実際のIPアドレスにルーティングを行います。これにより、DNSクエリのタイミングでProxy/Directの判定を効率的に行ったり、特定の環境での名前解決問題を回避したりできます。多くのルール( terutamaDOMAIN-SUFFIX
,GEOIP
など)が効果的に機能するために重要です。redir-host
: クライアントに実際のIPアドレスを返しますが、システムやアプリケーションがそのIPに接続しようとした際に、Clashが接続を横取り(Intercept)してルーティングを行います。古いシステムやアプリケーションとの互換性は高いですが、一部のルールタイプとの相性が悪い場合があります。特別な理由がなければfake-ip
が推奨されます。
default-nameserver
/nameserver
: Clashが名前解決に使用するアップストリームDNSサーバーを指定します。default-nameserver
はプロキシを使わずに直接クエリを送信するサーバー、nameserver
はClashのプロキシ設定(ルール)に従ってクエリを送信するサーバーです。DoH (https://...
) や DoT (tls://...
) を利用することで、DNSクエリの内容を暗号化し、プライバシーを保護できます。nameserver-policy
: 特定のドメインやGEOIPにマッチする名前解決要求を、指定したDNSサーバーリストに送るように設定できます。例えば、国内サイトの名前解決は国内の高速なDNSサーバーで行い、海外サイトや特定サービスの名前解決は海外のDoH/DoTサーバーで行う、といった使い分けが可能です。filter
: DNSクエリ自体をフィルタリングして拒否できます。簡易的な広告ブロックなどに利用できます。
適切なDNS設定は、通信速度の向上(近いDNSサーバーを使う)、セキュリティ・プライバシーの強化(DoH/DoT)、そして一部の地域制限やフィルタリングの回避に貢献します。特にfake-ip
モードはClashの多くの高度な機能の基盤となるため、理解して設定することが重要です。
5.4 HTTPS MitM(Man-in-the-Middle)の設定
ClashのHTTPS MitM機能は、暗号化されたHTTPS通信の内容をClashが復号して検査し、それに基づいてより詳細なルール適用(例: 特定のURLパスでルールを分けるなど)やログ記録を行うための機能です。
注意点: HTTPS MitMは、Clash Verge Revがあなたの通信内容を「見る」ことを意味します。セキュリティとプライバシーに重大な影響を与える可能性があるため、その目的とリスクを十分に理解した上で、慎重に使用してください。信頼できないClashコアや設定ファイルを使用する場合、通信内容が第三者に傍受されるリスクがあります。
MitMを有効にするには、以下の手順が必要です。
- 証明書の生成: Clash Verge Revの「Settings」→「Experimental」にある「Enable MitM」をオンにすると、ClashコアがMitM用のルート証明書(CA証明書)を生成します。
- 証明書のインストール: 生成されたCA証明書を、お使いのOSやウェブブラウザの信頼済みルート証明書ストアに手動でインストールする必要があります。これにより、Clashが生成した証明書で暗号化されたHTTPS通信をブラウザなどが信頼するようになります。インストール方法はOSによって異なります。
- 設定ファイルでの有効化: YAML設定ファイルの
mitm
セクションで、MitMを有効にするドメインや除外するドメインを指定します。
“`yaml
profiles/<プロファイル名>.yaml
mitm:
enable: true # MitM機能を有効にする
# hostname: # MitMを有効にするドメインリスト (指定がない場合は全てのHTTPS通信が対象になる可能性があるため注意)
# – “+.google.com” # google.com およびそのサブドメイン
# – “-.google.com” # 特定のサブドメインのみ除外したい場合
# exclude-domain: # MitMの対象から除外するドメインリスト (セキュリティ上重要なサイトなどを除外推奨)
# – “+.bank.com”
# – “+.paypal.com”
# – “+.local”
“`
MitMの用途:
- より詳細なルーリング: URLのパス部分に基づいてルールを適用するなど、ドメイン名だけでは不可能な細かい制御。
- 詳細なログ記録: 暗号化された通信の内容に関するログを記録(ただし、非常に詳細になるためログファイルサイズに注意)。
- 特定のアプリケーションの互換性: 一部のアプリケーションがMitMを必要とする場合があります。
通常の使用ではHTTPS MitMは必須ではありません。特定の高度な要件がある場合にのみ検討し、セキュリティリスクを十分に理解した上で、自己責任で行ってください。信頼できるプロバイダーが提供するプロファイルに含まれている場合でも、その設定内容を確認することをおすすめします。
5.5 パフォーマンスチューニングとトラブルシューティング
快適なネット環境を維持するためには、パフォーマンスのチューニングと問題発生時の対処法を知っておくことが重要です。
パフォーマンスチューニング:
- プロキシノードの選択:
url-test
グループを活用するか、select
グループでレイテンシテストの結果などを参考に最速のノードを手動で選択します。 - DNS設定:
fake-ip
モードを使用し、国内サイトの名前解決には国内の高速なDNSサーバーを、海外サイトには信頼できるDoH/DoTサーバーを使用するなど、nameserver-policy
で設定を最適化します。 - Fake IPプールのサイズ:
dns.fake-ip-range
が小さすぎると枯渇して問題が発生する可能性があります。通常はデフォルトの/16
で十分ですが、非常に多数の接続を同時に行う場合は調整が必要かもしれません。 - 接続数の上限: プロキシノード側で同時接続数に制限がある場合や、PCのリソースを節約したい場合は、Clashの接続数を制限する設定(YAMLで
max-connections
などを設定できる場合がありますが、Clash Verge RevのGUI設定にはありません)を検討するかもしれません。ただし、不必要に制限するとかえって問題を起こす可能性があります。 - 不要なルールの削除: ルールリストが長すぎると、ルールの評価に時間がかかる可能性があります。使用しないルールや冗長なルールは削除することを検討します。
- Rule Providerの更新間隔: Rule Providerの更新間隔を適切に設定します。頻繁すぎると帯域を消費し、少なすぎると最新のリストを利用できません。通常は数時間〜1日おきで十分でしょう。
トラブルシューティング:
- ログの確認: 最も重要なステップです。Clash Verge Revの「Logs」タブで、エラーメッセージや警告を確認します。「Settings」でログレベルを「Debug」に上げると、より詳細な情報を得られますが、ログ量が増加します。
- 接続テスト: 「Connections」タブで、問題のサイトやアプリケーションへの接続がどのように処理されているか(どのルールにマッチし、どのプロキシを経由しているか、あるいは接続がそもそも確立されているか)を確認します。
- レイテンシテスト: 「Proxies」タブで各ノードのレイテンシテストを実行し、使用しているノードが正常に機能しているか、遅延が大きすぎないかを確認します。
- プロファイルの更新/再読込: 設定を変更した場合、必ずプロファイルを再読み込み(またはプロファイルリストで再選択)してください。YAMLファイルを編集した場合は、シンタックスエラーがないか確認してください。
- プロキシモードの確認: Proxy Modeが意図せず「Direct」などになっていないか確認します。
- システムプロキシ設定: 「Settings」でSystem Proxyがオンになっているか確認します。OS側のプロキシ設定がClash Verge Revによって上書きされているか確認します。
- ファイアウォール/セキュリティソフト: ファイアウォールやセキュリティソフトがClash Verge RevまたはClashコアの通信をブロックしていないか確認します。必要に応じて例外設定を追加します。
- ブラウザ/アプリケーションのプロキシ設定: ブラウザやアプリケーションがシステムプロキシ設定を使用するように構成されているか確認します。一部のアプリケーションは独自のプロキシ設定を持っており、それをClash Verge Revのポートに向ける必要がある場合があります。
- クリーンインストール: どうしても解決しない場合は、Clash Verge Revを一度アンインストールし、設定ファイルも含めて完全に削除してから再インストールすることを検討します。設定ファイルは通常、ユーザーのホームディレクトリ内の隠しフォルダ(例: Windowsの
%APPDATA%\Clash Verge
、macOSの~/Library/Application Support/Clash Verge
)に保存されています。
これらの手順を踏むことで、ほとんどの問題は解決できるはずです。解決しない場合は、使用しているプロバイダーのサポートに問い合わせたり、Clash Verge RevのGitHubリポジトリのIssuesで同様の問題が報告されていないか検索したり、コミュニティのフォーラムやチャットグループで質問したりすることを検討しましょう。
第6章:Clash Verge Revをより深く理解するために
Clash Verge Revは強力なツールですが、その全ての機能を使いこなすには、さらに深い理解が役立ちます。
- Clash Coreの公式ドキュメント: Clash Verge RevはClashコアのGUIです。Clashコア自体の機能や設定オプションに関する最も正確で詳細な情報は、Clashコアの公式ドキュメント(通常はGitHubリポジトリのWikiやREADME)に記載されています。特にYAML設定ファイルの各セクション(
proxies
,proxy-groups
,rules
,dns
など)の詳細な仕様は、ここで確認できます。ただし、ドキュメントは英語であることがほとんどです。 - YAML形式の学習: Clashの設定ファイルはYAML形式で記述されます。YAMLの基本的な構文(インデント、リスト、マッピングなど)を理解しておくと、設定ファイルの編集が容易になります。
- OSSコミュニティへの参加: Clash Verge RevやClashコアの開発はオープンソースコミュニティによって行われています。GitHubリポジトリのIssuesやPull Requestsを追ったり、関連するTelegramやDiscordグループに参加したりすることで、最新情報の入手、他のユーザーとの交流、開発者への質問やバグ報告などが可能です。
これらのリソースを活用することで、Clash Verge Revの機能を最大限に引き出し、より高度なネットワーク環境を構築するための知識を得ることができます。
第7章:まとめ – 快適なネット環境への扉
Clash Verge Revは、強力なルールベースルーティング機能を備えたプロキシソフトウェアClashを、使いやすいGUIで操作・管理できる優れたクライアントです。オリジナルのClash Vergeからさらに発展したRev版は、活発な開発と新機能の追加により、現在のClash GUIクライアントの決定版の一つとなっています。
この記事では、Clash Verge Revの基本的な概念、主要機能、インストール方法、基本的な設定、そしてYAML編集による応用的な使い方(カスタムルール、Rule Provider、DNS設定、HTTPS MitMなど)について詳細に解説しました。GUIによる直感的な操作は初心者にとってのハードルを下げ、YAML編集による高度なカスタマイズ性は、特定のニーズを持つユーザーにとって非常に強力な武器となります。
Clash Verge Revを適切に設定することで、あなたは以下のようなメリットを享受できるでしょう。
- 高速かつ安定した通信: 国内サイトはDirect、海外サイトは最速ノードを経由するなど、通信内容に応じた最適な経路を選択できます。
- 柔軟なアクセス制御: アプリケーションごと、ドメインごと、地域ごとに、プロキシの使用有無や経由するノードを細かく制御できます。
- プライバシーとセキュリティの向上: DoH/DoTによるDNSクエリの暗号化、広告・トラッカーサイトのブロックなどにより、オンライン上のプライバシーを保護し、セキュリティを強化できます。
- 情報への自由なアクセス: 地域制限のあるコンテンツやサービスへ、プロキシ経由でアクセスできるようになります。
もちろん、プロキシサービスの利用には、サービスの信頼性、利用規約の遵守、そしてセキュリティに関する自己責任が伴います。特にHTTPS MitMのような機能は、その強力さ故にリスクも伴うことを理解しておく必要があります。
しかし、これらの点を踏まえた上でClash Verge Revを賢く活用すれば、あなたのネット環境はこれまでになく快適で、安全で、そして自由なものへと変貌するでしょう。
この記事が、Clash Verge Revの世界への第一歩を踏み出す助けとなり、あるいは既存ユーザーがさらに一歩踏み込んだ設定に挑戦するきっかけとなれば幸いです。Clash Verge Revと共に、快適なネット環境を心ゆくまでお楽しみください!