ルートh(プリンスルート)詳細情報:富士登山の特別な挑戦に向けた事前準備と持ち物リスト
富士山に登るルートはいくつかありますが、その中でも「ルートh」と呼ばれる、いわゆる「プリンスルート」は、単なる山頂を目指すだけでなく、富士山の多様な表情と静けさを味わえる魅力的なコースです。静岡県側の富士宮ルート五合目からスタートし、宝永山を経由しつつ頂上を目指し、下山は御殿場ルートの「大砂走り」を下るという、登りと下りで異なるルートを組み合わせたこのコースは、体力・経験ともに求められる中級者以上向けのルートと言えます。
本記事では、この挑戦的なルートh(プリンスルート)に挑むにあたり、知っておくべき詳細情報、そして成功と安全のために不可欠な徹底的な事前準備と、万全を期すための詳細な持ち物リストについて、約5000語で網羅的に解説します。富士登山を計画している方、特にプリンスルートに関心がある方にとって、羅針盤となるような情報を提供することを目指します。
第1章:ルートh(プリンスルート)とは? その魅力と挑戦
ルートh、すなわちプリンスルートは、他のメジャールート(吉田、富士宮、須走、御殿場)とは一線を画す、特徴的な富士登山ルートです。
1.1 ルートの概要
- 名称の由来: 皇太子殿下(当時)がこのルートを通り、宝永山を経由して富士山に登頂されたことから「プリンスルート」と呼ばれるようになりました。
- 構成: 基本的には以下のルートを組み合わせたものです。
- 登り: 富士宮ルート五合目からスタートし、六合目で宝永山遊歩道に入り、宝永山を巻いて御殿場ルートの七合目あたりに合流し、そのまま頂上を目指します。
- 下り: 頂上からは御殿場ルートを下山します。御殿場ルートの下山道は標高差が大きく、特に「大砂走り」と呼ばれる砂礫の急斜面が名物です。
- 総距離と所要時間: 往復の総距離は、宝永山の立ち寄りや下山ルートの長さもあり、約20km以上と他のルートに比べて長くなります。標準的な所要時間は、登り約7~9時間、下り約4~6時間(休憩、宝永山散策、山小屋宿泊を含まず、あくまで移動時間)と、日帰りは現実的ではなく、山小屋での一泊が必須となるケースがほとんどです。
- 標高差: スタート地点の富士宮五合目が約2400m、御殿場五合目が約1440mですが、プリンスルートは富士宮五合目からスタートし頂上(3776m)を目指すため、登りの標高差は約1376mとなります。下山は御殿場五合目まで下るため、標高差は約2336mと非常に大きくなります。特に下山の標高差と距離は、このルートの最大の難所の一つです。
1.2 プリンスルートの魅力
- 多様な景観: 火口である宝永山、変化に富む登山道、そして広大な御殿場側の下山道「大砂走り」と、富士山の多様な表情を一度に楽しめます。
- 比較的静かな登山道(時期による): 吉田ルートや富士宮ルートの最盛期に比べると利用者が少なく、比較的静かな登山を楽しむことができます。特に宝永山周辺や御殿場ルート合流までの区間は、富士山の荒々しい自然をより肌で感じられます。
- 宝永山: 富士山最大の側火山である宝永山に立ち寄ったり、遊歩道を歩いたりできるのはプリンスルートならではの魅力です。宝永火口の迫力ある景観を楽しめます。
- 大砂走り: 御殿場ルート名物の「大砂走り」は、一気に標高を下ることができる独特の体験です。ただし、足への負担は大きく、技術も必要です。
- 達成感: 長い距離と大きな標高差を克服しての登頂、そして独特な下山ルートを歩き切った時の達成感はひとしおです。
1.3 プリンスルートの挑戦(難易度)
プリンスルートは、以下の点から他のルートと比較して難易度が高いとされます。
- 距離と所要時間: 総距離が長く、行動時間が長くなります。これは体力的な消耗を意味します。
- 標高差: 特に下山の標高差が非常に大きく、足腰への負担が尋常ではありません。
- 下山ルート(大砂走り): 砂礫の急斜面は独特の歩行技術を要し、滑りやすく、砂埃も舞い上がります。また、単調な景色が長く続き、精神的な疲労も伴います。
- 山小屋の数: 吉田ルートなどに比べると山小屋の数が少なく、特に御殿場ルート側は山小屋の間隔が長いため、休憩場所や緊急時の避難場所が限られます。
- 利用者数の少なさ: これは魅力でもありますが、万が一のトラブル発生時に助けを求める人が少ないというリスクでもあります。
これらの特徴から、プリンスルートは富士登山経験者や、日頃から登山やトレイルランニングなどで十分なトレーニングを積んでいる方におすすめできるルートです。初めての富士登山には、より山小屋が多く登山者も多い吉田ルートなどが推奨されます。
第2章:ルートh(プリンスルート)登山の事前準備
プリンスルートのような挑戦的な登山に臨むにあたり、万全の事前準備は成功と安全の鍵となります。以下の点を徹底的に準備しましょう。
2.1 体力面の準備:トレーニング
プリンスルートは長丁場であり、特に下山の足への負担が大きいルートです。最低でも登山日の2~3ヶ月前からは計画的にトレーニングを行いましょう。
- 有酸素運動: 基礎体力を向上させ、長時間行動できる身体を作ります。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどを週2~3回、1回30分~1時間程度行いましょう。
- 登山トレーニング: 実際に登山靴を履き、本番を想定した荷物(最低でも5kg以上)を背負って山を歩く練習は非常に重要です。標高差のある山を積極的に選び、下り坂の練習も意識的に行います。
- 週1回程度、3~5時間程度の低山登山。
- 月に1回程度、6時間以上のややきつめの登山。
- 本番の1ヶ月前までには、連続した登下降を含む8時間以上の登山を経験しておきたいところです。
- 筋力トレーニング: 特に下半身の筋肉(太もも、ふくらはぎ、お尻)と体幹を鍛えます。スクワット、ランジ、カーフレイズ、プランクなどが効果的です。自宅でもできる簡単な筋トレを毎日継続しましょう。荷物を背負うため、背筋や肩周りの筋肉も鍛えておくと良いです。
- ウォーキング: 日常生活で意識的に歩く距離を増やしましょう。通勤時に一駅歩く、階段を使うなどを心がけるだけでも効果があります。
- 体調管理: 十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけ、体調を万全に整えて臨むことが何よりも重要です。登山前に風邪をひいたり、寝不足だったりすると、高山病のリスクも高まります。
2.2 精神面の準備
長時間の行動、悪天候、高山病の症状など、登山中は様々な困難に直面する可能性があります。精神的な準備も怠らないようにしましょう。
- ルートの理解: 登るルート、山小屋の位置、エスケープルート、難所などを事前にしっかりと把握しておきます。何が待ち受けているかを知っていれば、心の準備ができます。
- 困難を想定する: 辛い状況(疲労困憊、悪天候、高山病の軽い症状など)になる可能性があることを認識し、「そうなっても乗り越えるぞ」という覚悟を持っておくことが大切です。
- ポジティブ思考: 困難な状況でも、美しい景色や目標達成を思い描き、前向きな気持ちを保つ努力をします。
- セルフコンディショニング: 自分の体調や心の状態を常に観察し、無理だと感じたら引き返す勇気も必要です。「山頂は逃げない」という言葉を心に留めておきましょう。
- 同行者との連携: グループで登る場合は、お互いの体調やペースを確認し、励まし合いながら進むことが精神的な支えになります。
2.3 情報収集
最新かつ正確な情報を収集することは、安全な登山の基本です。
- ルート情報: 登山地図(紙とデータの両方)、ガイドブック、インターネット上の登山レポートやブログなどを参考に、詳細なルート情報(距離、標高、所要時間、危険箇所、目印など)を入手します。
- 山小屋情報: 宿泊を予定している山小屋の情報を確認します。予約方法、収容人数、設備(トイレ、水、食事、売店、充電環境など)、営業期間、料金などを把握しておきましょう。
- 交通アクセス: 登山口(富士宮五合目)と下山口(御殿場五合目)へのアクセス方法、駐車場情報、公共交通機関(バス、電車)の時刻表などを事前に調べ、移動計画を立てます。特に富士宮五合目へのマイカー規制情報は必ず確認が必要です。御殿場五合目からの帰りの交通手段も重要です。
- 天気予報: 富士山の天気は非常に変わりやすいため、最新の天気予報をこまめにチェックします。現地の天気予報サイト(富士山専門の予報サイトなど)や、気象庁の情報を参考に、気温、降水量、風速などを確認します。雨や強風、落雷の予報が出ている場合は、登山計画の見直しや中止も検討します。
- 現地の状況: 富士山の公式サイトやSNSなどで、登山道の状況、山小屋の営業状況、規制情報などを確認します。落石や工事などでルートが変更されている可能性もあります。
- 高山病に関する情報: 高山病の症状、予防策、対処法について事前に学びます。
- 富士山に関するルールとマナー: 富士山の入山料(協力金)、ゴミの持ち帰り、携帯トイレの利用、喫煙場所、植物や溶岩の持ち帰り禁止など、富士登山に関するルールやマナーを理解しておきます。
2.4 予約・手配
登山計画が固まったら、必要な予約や手配を進めます。
- 山小屋の予約: 特に週末やお盆期間中は非常に混み合います。利用を予定している山小屋には、可能な限り早く予約の連絡を入れましょう。電話やインターネットでの予約が一般的です。
- 交通機関の予約: 高速バスや新幹線、レンタカーなどを利用する場合は、早めに予約しておくと安心です。富士宮五合目へのシャトルバスやタクシーの情報も確認しておきます。
- レンタルの手配(必要な場合): 登山用品(登山靴、ザック、雨具、ストックなど)をレンタルする場合は、事前に予約し、登山口や周辺のショップで受け取り・返却ができるか確認します。
- 旅行保険の加入: 万が一の事故や怪我に備え、国内旅行傷害保険(特に山岳保険)への加入を検討しましょう。遭難捜索費用などが補償されるプランもあります。
2.5 装備の準備とチェック
登山に使用する装備は、安全で快適な登山のために非常に重要です。以下の点を意識して準備とチェックを行います。
- リストアップ: 必要な装備を漏れなくリストアップします。(次の章で詳細なリストを提示します)
- 品質の確認: ウェアやシューズ、ザックなどが登山に適した品質であるか確認します。特に防水性、透湿性、耐久性が重要です。
- 機能の確認: ヘッドランプが点灯するか、ストックが正常に伸縮するか、レインウェアのシームテープが剥がれていないかなど、各装備の機能が正常であるか使用前に確認します。
- サイズの確認: ウェアやシューズのサイズが合っているか確認します。特に登山靴は実際に履いてみて、厚手の靴下を履いた状態でフィットするか試着します。
- 修理・補充: 故障している装備があれば修理するか買い替え、消耗品(電池、ガスカートリッジなど)は新しいものを用意します。
- パッキング練習: 事前に荷物をパッキングしてみて、ザックに全て収まるか、重さのバランスが良いかなどを確認します。
2.6 健康状態のチェック
登山前には必ず自身の健康状態を確認します。
- 体調: 疲れが溜まっていないか、風邪の症状はないかなどをチェックします。
- 持病: 持病がある場合は、事前に医師に相談し、登山が可能か、注意すべき点はあるかなどを確認します。必要な薬を忘れずに携帯します。
- 歯科治療: 登山中に歯痛が起きると行動不能になる可能性もあります。登山前に歯科検診を受けておくと安心です。
- 睡眠: 登山前日は十分な睡眠をとり、万全の体調で臨むことが高山病予防にも繋がります。
2.7 資金の準備
山小屋での宿泊費、食事代、飲み物代、トイレの使用料(有料の場合あり)、交通費、入山料(協力金)など、登山には現金が必要となる場面が多いです。富士山の山小屋や売店ではクレジットカードや電子マネーが使えない場所がほとんどですので、十分な額の現金を用意しておきましょう。小銭もあると便利です。
2.8 登山計画書の提出
安全登山のため、登山計画書を作成し、提出することが推奨されています。特にプリンスルートのように長距離で下山が特殊なルートでは、万が一の際に迅速な救助につながる可能性があります。
- 作成内容: 登山日程、ルート、同行者名簿、連絡先、非常時の連絡先などを記載します。
- 提出先: 登山口に設置された登山ポスト、または管轄の警察署に提出します。最近ではオンラインで提出できるシステムもあります。
第3章:ルートh(プリンスルート)登山の持ち物リスト(詳細版)
プリンスルートの特殊性(特に下山の大砂走り、長距離)を考慮した、詳細な持ち物リストです。重量とのバランスも考えながら、必要なものを厳選します。
3.1 ウェア類(重ね着を基本に)
富士山の山頂付近は真夏でも気温が0℃近くまで下がり、風が吹くと体感温度はさらに低下します。雨が降れば低体温症のリスクが高まります。吸湿速乾性、保温性、防水性・防風性を考慮したウェア選びが重要です。重ね着(レイヤリング)で体温調節を行います。
- ベースレイヤー(肌着):
- 目的: 汗を素早く吸収・拡散し、肌をドライに保つことで、体温低下を防ぐ。
- 詳細: ポリエステルなどの化繊、またはメリノウール素材の長袖・半袖Tシャツ。綿素材は汗を吸収して乾きにくく、体が冷えるため厳禁。薄手と中厚手のものを用意し、気温や行動強度に合わせて選べるようにすると良い。予備として1~2枚あると、汗をかいた時や山小屋での着替えに便利。
- 数量: 2~3枚
- ミドルレイヤー(中間着):
- 目的: 保温性を確保する。
- 詳細: フリース、薄手のダウンジャケットや化繊綿のジャケットなど。フリースは通気性があり行動中に適し、ダウン/化繊綿ジャケットは休憩時や山小屋で重宝する。コンパクトに収納できる軽量なものが良い。
- 数量: 1~2着
- アウターレイヤー(上着・ズボン):
- 目的: 雨や風を防ぎ、体温を維持する。
- 詳細: 防水性・透湿性に優れた素材(ゴアテックスなど)のレインウェア上下。上下セパレートタイプが基本。雨や風は稜線や山頂で非常に強くなるため、しっかりとした性能のものを選ぶ。普段使いの傘や簡易的なレインコートは不適。色は視認性の良いものを選ぶと、悪天候時の安全性が高まる。稜線での強風時には、雨が降っていなくても防風着として着用する。
- 数量: 各1着
- トレッキングパンツ:
- 目的: 動きやすく、耐久性があり、速乾性がある。
- 詳細: ナイロンやポリエステルなどの化繊素材の長ズボン。伸縮性があり、膝や裾が補強されているものが望ましい。ジッパーで膝下を取り外してショートパンツにもなるタイプは便利。ジーンズや綿パンは不適。
- 数量: 1着(予備に薄手のものがあると山小屋で楽)
- 靴下:
- 目的: クッション性、保温性、吸湿速乾性。
- 詳細: 登山用ソックス(ウールまたは化繊)を複数枚。厚手のものと中厚手のものを用意し、靴との相性を確認する。靴擦れ防止のため、インナーソックス(薄手の化繊ソックス)を履く人もいる。予備は必ず用意し、汗をかいたり濡れたりしたら交換する。足の冷えは高山病のリスクを高める可能性も。
- 数量: 2~3足
- 防寒具:
- 目的: 頭部、首、手などの末端を冷えから守る。
- 詳細:
- 暖かい帽子: フリースやウール素材の耳まで覆えるもの。山頂や夜間、早朝は必須。
- 手袋: 防寒性の高いフリースやウール素材のもの。さらに防水性の高いアウターグローブもあると、雨や雪、強い風の時に重宝する。岩場や鎖場での手の保護にもなる。
- ネックウォーマー/バラクラバ: 首元を冷えから守ると体感温度が大きく変わる。バラクラバは強風時や低温時に顔全体を覆うのに役立つ。
- 数量: 帽子1、手袋1~2組、ネックウォーマーなど1
- ゲイター(スパッツ):
- 目的: 登山靴の中に砂や小石、雨や雪が入るのを防ぐ。
- 詳細: 特に御殿場ルートの「大砂走り」では必須と言えるアイテム。足首から膝下までを覆う。砂や小石が入ると靴擦れや不快感に繋がるため、砂の侵入を防ぐ機能性の高いものを選ぶ。防水性のあるものが望ましい。
- 数量: 1組
- 下山後の着替え:
- 目的: 登山終了後、汗や砂まみれのウェアから着替えて快適に過ごす。
- 詳細: 下山後に着るTシャツ、ズボン、下着など。これらはザックに入れず、下山後のロッカーや車の中に置いておくのが一般的。
3.2 フットウェア
- 登山靴:
- 目的: 足首を保護し、不整地での安定性を確保し、足への負担を軽減する。
- 詳細: 富士登山に適したミドルカット以上のしっかりとした登山靴。靴底が硬く、グリップ力のあるものを選ぶ。購入後は必ず数回履き慣らし(試し履き)、自分の足にフィットするか、靴擦れしないかを確認しておくこと。新しい靴をいきなり本番で使うのは避けるべき。防水・透湿性のあるものが望ましい。特に御殿場下山は靴の中に砂が入りやすいため、靴とゲイターの組み合わせが重要。
- 数量: 1足
- 山小屋用サンダル/シューズ:
- 目的: 山小屋内で登山靴を脱いでリラックスするため。
- 詳細: 軽量でコンパクトになるサンダルやスリッパ、薄手のシューズなど。
- 数量: 1足
3.3 ザック類
- 登山用ザック:
- 目的: 装備一式を快適に背負うため。
- 詳細: 1泊2日程度の登山であれば、容量30L~40L程度のものが適切。ウエストベルトやチェストストラップが付いており、体へのフィット感を調整できるものが良い。背面が蒸れにくい構造になっているか、ポケットの配置なども確認する。雨蓋が付いているタイプや、ハイドレーションシステムに対応しているものなどがある。
- 数量: 1個
- ザックカバー:
- 目的: ザックと中身を雨や雪、砂埃から守る。
- 詳細: ザックの容量に合った防水性のカバー。雨が降る可能性がある場合は必須。御殿場の下山道では、砂埃からもザックを守ってくれる。
- 数量: 1枚
3.4 食料・飲料
富士山の山小屋では食料や飲み物を購入できますが、標高が高くなるにつれて価格も高くなります。また、品切れの場合もあります。必要最低限の行動食や飲み物は必ず持参します。
- 行動食:
- 目的: 登山中のエネルギー補給。
- 詳細: 少量で高カロリーなもの、手軽に食べられるものを選ぶ。エネルギーバー、ゼリー飲料、ナッツ、ドライフルーツ、チョコレート、飴など。休憩時にしっかりと食べられるおにぎりやパン、サンドイッチなども良い。行動食はすぐに取り出せる場所に入れておく。
- 数量: 自分のペースや所要時間に合わせて多めに(例: 休憩3回につき1回補給として、6~8回分)
- 飲料:
- 目的: 脱水症状や熱中症、高山病の予防。
- 詳細: 水やスポーツドリンク。合計で2L~3L程度は最低限必要と考え、各自の飲む量や天候に合わせて調整する。ペットボトルやハイドレーションパック(プラティパスなど)に入れる。標高が高くなるとトイレが有料だったり、水場がなかったりするため、十分な量を持っていくことが重要。山小屋でも購入できるが、価格が高い。
- 数量: 2~3L(行動中に消費する分)+山小屋での購入を考慮
- 予備の食料:
- 目的: 悪天候や体調不良で行動が遅れた場合の非常食。
- 詳細: カップ麺(山小屋でお湯を借りられるか確認)、アルファ米、フリーズドライ食品など。長期保存可能で調理が簡単なものが良い。
- 数量: 1食分程度
- 塩分・糖分補給:
- 目的: 汗で失われたミネラルや電解質を補給。
- 詳細: 塩飴、タブレット、経口補水液など。
3.5 安全・ナビゲーション用品
- ヘッドランプ/懐中電灯:
- 目的: 暗闇での視界確保。
- 詳細: 登山は夜間や早朝に行動することが多いため必須。両手が使えるヘッドランプが便利。予備の電池または充電済みの予備バッテリーを必ず持参する。
- 数量: 1個 + 予備電池/バッテリー
- 登山地図(紙)とコンパス:
- 目的: 現在地確認、ルート確認、万が一の時のナビゲーション。
- 詳細: GPS機器やスマホアプリは便利だが、電池切れや故障のリスクがあるため、紙の地図とコンパスは必須の装備。事前に使い方を練習しておくこと。
- 数量: 各1セット
- GPS機器またはスマートフォン(GPSアプリ):
- 目的: より正確な現在地確認やルート記録。
- 詳細: 登山用GPS機器や、登山用地図アプリをインストールしたスマートフォン。オフラインでも使える地図データをダウンロードしておく。予備バッテリーやモバイルバッテリーは必須。
- 数量: 1台 + モバイルバッテリー
- ホイッスル:
- 目的: 緊急時に自分の居場所を知らせる。
- 詳細: 遭難時や救助を求める際に、大声より遠くまで音が届く。ザックのチェストストラップなど、すぐに使える場所に取り付けておく。
- 数量: 1個
- ライター/防水マッチ:
- 目的: 非常時に火を起こすため。
- 詳細: ビバーク時や救助を待つ際に、焚き火やストーブで暖をとる可能性がある。
- 数量: 1セット
- 携帯電話(予備バッテリー/モバイルバッテリー):
- 目的: 連絡手段、GPS、情報収集など。
- 詳細: 山頂付近や山小屋では電波が繋がる場所が多いが、場所によっては圏外になることも。予備バッテリーまたは大容量のモバイルバッテリーは必須。寒冷地では電池の消耗が早まるため、保温対策も必要。
- 数量: 1台 + モバイルバッテリー
- ごみ袋:
- 目的: 自分の出したゴミを持ち帰る。
- 詳細: 富士山は「ゴミは全て持ち帰り」がルール。食事の包装紙、ペットボトル、ティッシュなど、全てのゴミは自分で持ち帰る。大小数枚用意する。
- 数量: 数枚
- ツェルトまたは緊急用シェルター:
- 目的: 非常時の簡易的な雨風除け、ビバーク用品。
- 詳細: 軽量でコンパクトになる一人用~複数人用の簡易テントやシェルター。悪天候で行動不能になった場合などに役立つ。
- 数量: 必要に応じて(経験者向け)
- 防寒用エマージェンシーシート:
- 目的: 体温低下を防ぐ簡易的な防寒具。
- 詳細: アルミ蒸着された軽量なシート。体から熱が逃げるのを防ぎ、非常時の体温保持に役立つ。
- 数量: 1枚
3.6 医療品・衛生用品
- 個人用救急セット(ファーストエイドキット):
- 目的: 怪我や体調不良に自分で対処するため。
- 詳細:
- 絆創膏(様々なサイズ)
- ガーゼ、テープ
- 消毒液または消毒用ウェットティッシュ
- 包帯
- 痛み止め・解熱剤
- 胃薬、整腸剤
- 高山病薬(医師に相談の上)
- 虫刺され薬
- 塗り薬(切り傷、擦り傷用)
- 持病の薬(予備含む)
- ピンセット、ハサミ
- 数量: 一式
- 靴擦れ対策:
- 目的: 靴擦れを予防・対処する。
- 詳細: テーピング、キネシオテープ、または靴擦れ防止用の保護パッド(Moleskinなど)。靴擦れしやすい箇所に事前に貼っておくのも効果的。
- 数量: 適量
- 日焼け止め、リップクリーム(SPF入り):
- 目的: 高山での強い紫外線から肌と唇を守る。
- 詳細: 標高が高くなると紫外線が強くなるため必須。
- 数量: 各1個
- ハンドクリーム:
- 目的: 乾燥対策。
- 携帯トイレ:
- 目的: トイレがない場所での排泄、または山小屋のトイレが混雑している場合など。
- 詳細: 富士山では指定場所以外での排泄は禁止。携帯トイレブースが設置されている場所もある。使用後は必ず持ち帰る。
- 数量: 1~2個
- トイレットペーパー/ポケットティッシュ:
- 目的: トイレでの使用や、鼻をかむなど。
- 詳細: 水に強いタイプや、芯を抜いてコンパクトにしたトイレットペーパーをビニール袋に入れて携帯。
- 数量: 1~2個
- ウェットティッシュ/除菌シート:
- 目的: 食事前やトイレ後に手を拭くなど、衛生管理。
- 数量: 1パック
- 石鹸(必要に応じて):
- 目的: 手や顔を洗う。
- 詳細: 環境に配慮した固形石鹸や、少量のリキッドソープ。水場が限られているので、ウェットティッシュで済ませることも多い。
3.7 その他
- 現金:
- 目的: 山小屋での宿泊費、食事、飲み物、お土産、トイレ使用料(有料の場合あり)、交通費など。
- 詳細: 山小屋では基本的に現金払い。数万円程度の現金(小銭含む)を用意する。
- 数量: 数万円
- 身分証明書、健康保険証、登山保険証:
- 目的: 万が一の際の確認や手続きのため。コピーでも可。
- 数量: 各1
- カメラ:
- 目的: 景色の撮影、思い出作り。
- 詳細: スマートフォンのカメラでも十分だが、本格的な撮影をするなら別途用意。予備バッテリーやメモリーカードも忘れずに。
- 数量: 1台 + 予備
- 筆記用具:
- 目的: 登山記録、メモ、緊急時の伝言など。
- 詳細: 防水メモ帳とペンがあると便利。
- 数量: 1セット
- 耳栓、アイマスク:
- 目的: 山小屋での睡眠時に騒音や光を遮断する。
- 詳細: 山小屋は相部屋で多くの人が宿泊するため、必須と言えるアイテム。
- 数量: 各1セット
- 小型タオル:
- 目的: 汗を拭いたり、顔を洗ったり。
- 詳細: 速乾性のあるマイクロファイバータオルなどが軽量で便利。
- 数量: 1~2枚
- 着替え(山小屋用):
- 目的: 山小屋での休憩時や就寝時に着替える。
- 詳細: 汗を吸ったウェアは体を冷やすため、乾いたTシャツや薄手のフリース、スウェットパンツなどに着替えると快適。下着も替えると良い。
- 数量: 1セット
- 圧縮袋/ビニール袋:
- 目的: ウェアなどをコンパクトに収納したり、濡れたものを入れたり、ゴミを入れたり。
- 数量: 数枚
- カラビナ:
- 目的: 小物をザックに取り付けたり、荷物を吊るしたり。クライミング用ではなく、あくまで補助具として。
- 数量: 1~2個
- 地図を入れる防水ケース:
- 目的: 地図を濡らさずに携帯する。
- 数量: 1個
- サングラス:
- 目的: 高山での強い日差しや、下山時の砂埃から目を守る。
- 詳細: 紫外線カット率の高いものを選ぶ。
- 数量: 1個
- ストック(トレッキングポール):
- 目的: 膝や足への負担を軽減し、バランスを保つ。特に下山時(大砂走り含む)に絶大な効果を発揮する。
- 詳細: 長さ調節可能で、衝撃吸収機能が付いているものもある。地面に接する部分にプロテクターを付けると、音や地面へのダメージを減らせる。カーボン製は軽量だが高価、アルミ製は丈夫で一般的。
- 数量: 1~2本(2本を推奨)
3.8 パッキングのコツ
- 重量配分: 重いものは背中側に、体の重心に近い場所に配置する。これによりバランスが取りやすくなる。
- 使用頻度: すぐに取り出したいもの(行動食、飲み物、レインウェア、ヘッドランプ、携帯電話など)は、ザックの雨蓋やサイドポケット、行動中に開けやすい場所に入れる。
- 防水対策: 濡らしたくないもの(着替え、電子機器、地図など)は、ビニール袋やスタッフサックに入れてからザックに収納する。ザックカバーだけでは完全に濡れを防げない場合がある。
- 圧縮: ダウンウェアやフリースなどは圧縮袋に入れるとコンパクトになり、スペースを有効活用できる。
- 整理整頓: 何がどこに入っているか把握できるよう、カテゴリ別にスタッフサックなどで整理すると、必要なものをすぐに見つけられる。
第4章:登山中の注意点とポイント
準備した装備を最大限に活かし、安全にプリンスルートを踏破するための登山中の注意点です。
- ペース配分: 無理のない一定のペースで登ることを心がけます。「千鳥足」と呼ばれる、ゆっくりでも着実に一歩一歩進む歩き方が効果的です。特に登り始めは標高順応のためにもゆっくり進みましょう。
- 水分・栄養補給: 喉が渇く前にこまめに水分を摂ります。行動食も休憩時だけでなく、歩きながらでも定期的に(30分~1時間ごとなど)摂取し、エネルギー切れを防ぎます。
- 休憩: 定期的に休憩を取り、疲労を溜めすぎないようにします。短い休憩を頻繁にとる方が、長い休憩をたまにとるより効果的な場合があります。休憩中は、ウェアを調整して汗冷えしないように注意します。
- 高山病対策:
- ゆっくり登る: これが最も重要。標高順応が間に合うように、急激な標高上昇を避けます。
- 水分補給: 脱水を防ぐことが高山病予防に繋がります。
- 深呼吸: 意識的に深く呼吸する。
- 睡眠: 山小屋でしっかりと睡眠をとる。
- 飲酒・喫煙を控える: これらは高山病のリスクを高めます。
- 症状の早期発見と対処: 頭痛、吐き気、めまい、倦怠感、食欲不振などが初期症状。これらの症状が出たら、それ以上登らず休憩するか、症状が重ければすぐに下山します。無理は禁物です。
- 体温調節: こまめに重ね着を調整し、汗をかきすぎたり、体が冷えすぎたりしないようにします。暑ければ脱ぎ、寒ければ着る、基本を忠実に実行します。
- 天候の変化: 富士山の天気は非常に変わりやすいです。常に空模様を観察し、雨や風が強くなる前にレインウェアを着用するなど、早めに対処します。雷鳴が聞こえたら速やかに標高の低い安全な場所に移動します。
- 登山道の確認: 地図や標識を確認しながら、正しいルートを進みます。特にプリンスルートは宝永山周辺や御殿場ルート合流地点で迷いやすい箇所があるかもしれません。
- 大砂走りの歩き方: 御殿場ルートの下山名物「大砂走り」は、砂礫の急斜面を駆け下りるように歩きます。膝を軽く曲げ、かかとから砂にめり込ませるように(スキーのように)体重をかけて下ると、比較的スムーズに歩けます。ただし、砂埃がすごいので、ゲイター、サングラス、マスクなどがあると快適です。無理にスピードを出すと転倒のリスクが高まります。単調で長い下りなので、集中力を切らさないことも重要です。
- 山小屋の利用: 山小屋では他の利用者に配慮し、静かに過ごします。消灯時間を守り、早朝出発の場合は他の人の迷惑にならないように準備します。貴重品は自己管理します。
- 環境保護: ゴミは全て持ち帰り、植生保護のため登山道以外の場所には立ち入らないなど、富士山の自然環境保護に協力します。携帯トイレの利用など、定められたルールを守ります。
- 緊急時の対応: 万が一、体調不良や怪我などで行動不能になった場合は、同行者や近くの登山者に助けを求めます。ホイッスルや携帯電話(電波が届けば)で助けを呼ぶことも考えられます。事前に緊急連絡先や山小屋の電話番号などを控えておきます。
第5章:下山後のケアとまとめ
無事にプリンスルートを踏破したら、下山後のケアも大切です。
- 疲労回復: 長時間の行動と下山のダメージは大きいので、下山後はしっかりと休息を取ります。温泉に入る、マッサージをするなども効果的です。
- 筋肉痛対策: 特に下半身の筋肉痛がひどくなる可能性があります。ストレッチや軽いクールダウンを行います。
- 装備のメンテナンス: 使用後のウェアは洗濯し、登山靴は泥を落として陰干しします。ザックや他の装備も汚れを落とし、乾燥させて保管します。
- 反省と記録: 今回の登山で良かった点、改善点などを振り返り、次の登山に活かします。登山記録(写真、メモなど)を付けておくと、良い思い出になります。
まとめ
ルートh(プリンスルート)は、富士山の多様な顔を見せてくれる魅力的なルートですが、同時にその距離、標高差、そして特徴的な下山ルート「大砂走り」ゆえに、十分な体力、綿密な準備、そして適切な装備が不可欠な挑戦的なコースです。
本記事で詳細に解説した事前準備(体力トレーニング、情報収集、予約など)と、詳細な持ち物リストは、この挑戦を成功させ、安全に富士山の頂を目指すための基盤となります。特に、天候の変化に対応できる重ね着できるウェア類、足を守る登山靴と靴下、そして大砂走りに備えたゲイターとストック、さらに高山病対策と安全のためのヘッドランプやナビゲーション用品は、リストの中でも特に重要視すべき項目です。
富士山は多くの人々に愛される山ですが、標高が高く気象条件が厳しいため、常にリスクが伴います。「これで十分だろう」ではなく、「万が一のためにこれも必要か」という視点で準備を進めることが、安全な登山につながります。
プリンスルートは、他のルートでは味わえない独特の達成感と感動を与えてくれるでしょう。しかしそれは、入念な準備と、山への敬意を忘れずに一歩一歩進むことによって初めて得られるものです。
この記事が、あなたがルートh(プリンスルート)への挑戦を成功させるための一助となれば幸いです。安全第一で、素晴らしい富士登山の経験をしてください。
【免責事項】
本記事の情報は一般的な登山に関する情報を提供するものであり、個々の状況や体調、天候などによっては必ずしも適切ではない場合があります。実際の登山にあたっては、ご自身の責任において最新の情報収集、体調管理、装備の確認を行い、安全を最優先に行動してください。必要に応じて経験者や専門家のアドバイスを参考にしてください。登山中の事故やトラブルについては、記事作成者および掲載者は一切の責任を負いません。