CurlコマンドでJSONデータをPOSTする完全ガイド

CurlコマンドでJSONデータをPOSTする完全ガイド:API連携とデータ送信の決定版

はじめに:Web APIとの対話におけるPOSTとJSONの重要性

現代の多くのアプリケーションやサービスは、インターネットを介して互いに連携しています。この連携の基盤となっているのが、Web API(Application Programming Interface)です。Web APIを利用することで、プログラムは特定のURLに対してリクエストを送信し、データを受け取ったり、データを送信してサーバー上のリソースを変更したりすることができます。

HTTPプロトコルは、Web APIとの通信において最も広く利用されています。HTTPには様々な「メソッド」がありますが、特に重要なのがGETPOSTです。GETメソッドは主にサーバーからデータを取得するために使われ、リクエストに関する情報はURLのパラメータとして送信されます。一方、POSTメソッドは、サーバーにデータを送信するために使われます。ユーザーがフォームに入力したデータを送信したり、新しいリソースを作成するためのデータを送信したりする際に利用されます。POSTメソッドでは、送信するデータはリクエストの「ボディ」に含まれるため、GETとは異なり、より多くの、そしてより複雑なデータを安全に(URLに表示されずに)送信することができます。

そして、このPOSTリクエストのボディで送信されるデータの形式として、現在最も一般的でデファクトスタンダードとなっているのがJSON (JavaScript Object Notation) です。JSONは、人間にとっても機械にとっても読み書きしやすい軽量なデータ交換フォーマットです。キーと値のペア、リスト(配列)、ネスト構造などをシンプルに表現できるため、Web APIでのデータの送受信に最適です。

この記事では、コマンドラインツールであるcurl(カール)を使って、HTTP POSTメソッドでJSONデータを送信する方法について、徹底的に解説します。curlは、URL構文を使用してデータを転送するための強力なツールであり、様々なプロトコル(HTTP, HTTPS, FTP, FTPSなど)に対応しています。開発者、システム管理者、APIテスターなど、HTTPリクエストをコマンドラインから発行する必要があるすべての人にとって、curlでJSONをPOSTする方法を習得することは必須と言えるでしょう。

本ガイドでは、curlの基本的な使い方から始め、JSONデータを直接指定する方法、ファイルから読み込む方法、必要なHTTPヘッダーの指定、認証情報の扱い、エラー時のトラブルシューティング、さらにはセキュリティや高度なテクニックまで、Curlコマンドを使ったJSON POSTに関するあらゆる側面を網羅します。この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持ってCurlでJSONデータをPOSTし、様々なWeb APIと連携できるようになっているはずです。

さあ、CurlコマンドとJSONの世界へ深く潜り込みましょう。

1. Curl(カール)とは?なぜHTTPリクエストに使うのか

Curlは、データ転送のためのコマンドラインツールおよびライブラリ(libcurl)です。もともとはFTPを介したファイルのダウンロードツールとして開発されましたが、現在ではHTTP, HTTPS, FTP, FTPS, SCP, SFTP, TFTP, DICT, TELNET, LDAP, LDAPS, FILE, POP3, POP3S, SMTP, SMTPS, RTMP, RTSP, IMAP, IMAPS, SMB, SMBS, MQTT, WebSocket, Gopherなど、非常に多くのプロトコルをサポートしています。

Web開発やAPIテストの文脈では、Curlは主にHTTP/HTTPSリクエストを発行するために使われます。その理由はいくつかあります。

  • シンプルさと柔軟性: コマンドラインから手軽にリクエストを作成・実行できます。GUIツールとは異なり、スクリプトに組み込んだり、自動化したりするのが容易です。
  • 詳細な制御: HTTPメソッド、ヘッダー、ボディ、認証情報、クッキー、SSL証明書など、HTTPリクエストのあらゆる要素を細かく制御できます。
  • クロスプラットフォーム: 主要なオペレーティングシステム(Windows, macOS, Linuxなど)で利用可能です。
  • デバッグ能力: -v (verbose) オプションなどを使うことで、リクエストやレスポンスの詳細を確認でき、API通信のデバッグに非常に役立ちます。
  • 一般的なツール: Web開発者やシステム管理者の間で広く使われているため、情報や解決策を見つけやすいです。

ブラウザはWebページを表示するための高レベルなツールですが、CurlはHTTPプロトコルをより低レベルで操作できるツールと言えます。特定のAPIエンドポイントへのテストリクエスト発行、API連携のプロトタイプ作成、定期的なデータ送信の自動化など、様々なシナリオでCurlはその真価を発揮します。

2. HTTP POSTメソッドの基本:GETとの違いとリクエストボディ

HTTPプロトコルにはいくつかの「メソッド」(または「verb」)がありますが、APIとの対話で最も頻繁に使われるのはGETPOSTです。

  • GETメソッド:

    • サーバーからデータを取得するために使用されます。
    • リクエストパラメータはURLの末尾にクエリ文字列として追加されます(例: /users?id=123&status=active)。
    • パラメータはURLに含まれるため、ブラウザの履歴やサーバーのログに残りやすいです。
    • 一般的に、リクエストボディは持ちません(仕様上は許容される場合もありますが、通常は使いません)。
    • 同じリクエストを複数回実行しても、サーバー上の状態は変化しないべきです(冪等性がある、副作用がない)。
  • POSTメソッド:

    • サーバーにデータを送信するために使用されます。
    • 新しいリソースの作成、既存リソースの更新(PUTPATCHがより適切な場合もありますが、POSTもよく使われます)、フォームデータの送信などに使われます。
    • 送信するデータはリクエストの「ボディ」に含まれます。これにより、大量のデータやバイナリデータを送信することが可能です。
    • URLには含まれないため、機密性の高いデータ(パスワードなど)の送信に適しています。
    • 同じリクエストを複数回実行すると、サーバー上の状態が複数回変化する可能性があります(冪等性がない場合が多い)。

リクエストボディ(Request Body) とは、HTTPリクエストのヘッダー部に続くデータ部分です。POSTPUTPATCHなどのメソッドで使用され、サーバーに送信したい実際のデータ(例: フォームデータ、JSONデータ、XMLデータ、ファイルの内容など)が含まれます。

リクエストボディの形式は、リクエストヘッダーのContent-Typeフィールドでサーバーに伝達されます。例えば、フォームデータを送信する場合はapplication/x-www-form-urlencodedmultipart/form-dataが使われますし、JSONデータを送信する場合はapplication/jsonが使われます。サーバーはContent-Typeヘッダーを見て、リクエストボディのデータをどのように解釈すれば良いかを判断します。

CurlでJSONデータをPOSTするということは、以下の要素を組み合わせるということです。
1. Curlコマンドを使う。
2. HTTPメソッドとしてPOSTを指定する。
3. リクエストボディに送信したいJSONデータを含める。
4. Content-Typeヘッダーをapplication/jsonに設定する。

これらの要素をCurlコマンドでどのように表現するのかを、次に詳しく見ていきましょう。

3. JSON(JavaScript Object Notation)とは:構造と特徴

JSONは、人間にとって読み書きしやすく、機械にとってもパース(解析)しやすいデータ交換フォーマットです。もともとJavaScriptのオブジェクトリテラルに基づいていますが、現在では多くのプログラミング言語でサポートされており、Web APIの世界で広く利用されています。

JSONは以下の2つの基本的な構造要素から構成されます。

  1. オブジェクト (Object):

    • キーと値のペアの集合です。
    • 波括弧 {} で囲まれます。
    • キーは文字列で、ダブルクォート " " で囲む必要があります。
    • キーと値はコロン : で区切られます。
    • 複数のキーと値のペアはカンマ , で区切られます。
    • 例: {"name": "Alice", "age": 30}
  2. 配列 (Array):

    • 値の順序付きリストです。
    • 角括弧 [] で囲まれます。
    • 複数の値はカンマ , で区切られます。
    • 値は、文字列、数値、真偽値 (true/false)、null、オブジェクト、配列のいずれかになります。
    • 例: ["apple", "banana", "cherry"]
    • 例 (オブジェクトの配列): [{"id": 1}, {"id": 2}]

JSONの基本データ型:

  • 文字列 (String): ダブルクォートで囲まれたUnicode文字列。例: "hello"
  • 数値 (Number): 整数または浮動小数点数。例: 123, 3.14, -10
  • 真偽値 (Boolean): true または false
  • Null: null。値がないことを示します。
  • オブジェクト (Object): 前述のオブジェクト構造。
  • 配列 (Array): 前述の配列構造。

JSONの例:

json
{
"name": "山田 太郎",
"age": 25,
"isStudent": true,
"courses": ["Math", "Science", "History"],
"address": {
"street": "大手町1-1-1",
"city": "東京都 千代田区"
},
"phoneNumber": null
}

JSONがWeb APIでよく使われる理由:

  • シンプルさ: XMLなどに比べて構造がシンプルで、可読性が高いです。
  • 軽量: データをコンパクトに表現できます。
  • 汎用性: ほぼ全ての主要なプログラミング言語でJSONのパースや生成がサポートされています。
  • JavaScriptとの親和性: JavaScriptのオブジェクト構造と非常に似ているため、Webブラウザのフロントエンドとサーバーサイド間のデータ交換に特に適しています。

CurlでJSONデータをPOSTする際には、このJSON形式のデータ構造を正しく作成し、Curlコマンドの引数として指定する必要があります。特に、文字列内のダブルクォートや特殊文字のエスケープには注意が必要です。

4. CurlでPOSTする方法の基本

CurlでHTTPリクエストを発行する際の基本的なコマンド形式は以下のようになります。

bash
curl [オプション] [URL]

デフォルトでは、CurlはGETメソッドを使用します。POSTメソッドを使用するには、-X POSTオプションを明示的に指定します。

bash
curl -X POST [URL]

しかし、POSTメソッドを使う場合、通常は何らかのデータをサーバーに送信します。データを送信するには、-d または --data オプションを使います。このオプションを使うと、Curlは自動的に以下の処理を行います。

  1. HTTPメソッドをPOSTに設定します(-X POSTを省略しても良いですが、明示的に指定する方が分かりやすいです)。
  2. 指定されたデータをリクエストボディに含めます。
  3. 特別な指定がない場合、Content-Typeヘッダーをapplication/x-www-form-urlencodedに設定します。

簡単な例として、フォームデータをPOSTしてみましょう。

bash
curl -X POST -d "username=testuser&password=secret" https://example.com/login

このコマンドは、https://example.com/loginに対してPOSTリクエストを送信し、リクエストボディにusername=testuser&password=secretというフォームデータを含めます。Content-Typeヘッダーは自動的にapplication/x-www-form-urlencodedとなります。

しかし、JSONデータをPOSTする場合は、Content-Typeapplication/jsonに設定する必要があります。そして、-dオプションで指定するデータは、キーと値のペアのフォームデータ形式ではなく、有効なJSON文字列である必要があります。

5. CurlでJSONデータをPOSTする方法:核心部分

CurlでJSONデータをPOSTするには、以下の3つの主要な要素が必要です。

  1. HTTPメソッドをPOSTに設定: -X POSTオプションを使用します。
  2. Content-Typeヘッダーをapplication/jsonに設定: -H "Content-Type: application/json"オプションを使用します。-H または --header オプションは、任意のリクエストヘッダーを指定するために使われます。
  3. JSONデータをリクエストボディとして送信: -d または --data オプションを使用し、引数としてJSON文字列を指定します。

これらの要素を組み合わせた基本的なCurlコマンドは以下のようになります。

bash
curl -X POST -H "Content-Type: application/json" -d '{"key1": "value1", "key2": 123}' [URL]

ここで各オプションの役割を詳しく見ていきましょう。

  • -X POST: リクエストメソッドをPOSTに設定します。前述の通り、-dを使うと自動的にPOSTになりますが、明示することが推奨されます。
  • -H "Content-Type: application/json": Content-Typeヘッダーをapplication/jsonに設定します。これは、サーバーに対してリクエストボディのデータがJSON形式であることを伝えます。このヘッダーが正しく設定されていないと、サーバーはデータをJSONとして解釈できず、エラーとなる可能性が高いです(例: 415 Unsupported Media Type)。
  • -d '{"key1": "value1", "key2": 123}': リクエストボディとして送信するデータを指定します。ここではJSON文字列 '{"key1": "value1", "key2": 123}' を指定しています。

5.1. JSONデータを直接指定する方法:シングルクォートとダブルクォート、エスケープ

JSON文字列を-dオプションの引数として直接コマンドラインに記述する場合、シェル(Bash, Zsh, Windows Command Prompt, PowerShellなど)の扱いとJSON自身の構文ルールを考慮する必要があります。

JSONの文字列はダブルクォート"で囲む必要があります。しかし、シェルではダブルクォートやシングルクォートは特別な意味を持ちます(変数の展開、コマンドの置換など)。Curlコマンド全体を囲むためにシングルクォートを使うか、ダブルクォートを使うか、そしてJSON文字列内のダブルクォートをどのように扱うかが重要になります。

方法1:Curlコマンド全体をシングルクォートで囲み、JSON内のダブルクォートはそのままにする

Bash, ZshなどのUnix系シェルでは、シングルクォート'で囲まれた文字列は、内部の特殊文字(ダブルクォート、ドル記号、バックスラッシュなど)がほとんど解釈されずにそのまま扱われます。JSON文字列はキーも値(文字列の場合)もダブルクォートを使うため、Curlコマンド全体をシングルクォートで囲むのが最も一般的で安全な方法です。

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"name": "Alice", "message": "Hello, world!"}' \
https://api.example.com/submit

この例では、-dオプションの引数であるJSON文字列全体をシングルクォート'で囲んでいます。JSON文字列内部のダブルクォート"はシェルによって特別扱いされずにそのままAPIに送信されます。これがUnix系シェルでのJSON POSTにおける最も推奨される方法です。

方法2:Curlコマンド全体をダブルクォートで囲み、JSON内のダブルクォートをエスケープする

Unix系シェルでCurlコマンド全体をダブルクォート"で囲む場合、JSON文字列内のダブルクォートはシェルによって解釈されてしまうため、バックスラッシュ\でエスケープする必要があります。

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d "{\"name\": \"Alice\", \"message\": \"Hello, world!\"}" \
https://api.example.com/submit

この方法は、JSON文字列が複雑になるとバックスラッシュだらけになり、可読性が著しく低下するため、あまり推奨されません。

Windows Command Prompt (cmd.exe) の場合:

Windowsのコマンドプロンプトでは、エスケープルールがUnix系シェルとは異なります。通常、Curlコマンド全体をダブルクォートで囲み、JSON文字列内のダブルクォートはバックスラッシュ無しでそのまま記述します。

cmd
curl -X POST ^
-H "Content-Type: application/json" ^
-d "{\"name\":\"Alice\",\"message\":\"Hello, world!\"}" ^
https://api.example.com/submit

注意: WindowsのCommand Promptでは、JSON内のダブルクォートをエスケープ(\")する必要がある場合が多いです。PowerShellではUnix系シェルに近い挙動をすることがありますが、環境によって微妙に異なることがあるため、Windows環境で複雑なJSONを扱う場合は、後述のファイルからの読み込みが最も確実です。

JSONデータ内の特殊文字のエスケープ:

JSON文字列自体にもエスケープルールがあります。特に、文字列値の中にダブルクォート"やバックスラッシュ\を含めたい場合は、それぞれ\"\\とエスケープする必要があります。また、制御文字などもエスケープが必要です(例: 改行 \n, タブ \t, Unicode文字 \uXXXX)。

例:メッセージにダブルクォートと改行を含むJSONをPOSTする場合 (Unix系シェル)

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"message": "This is a message with a \"quote\" and a\nnewline."}' \
https://api.example.com/submit

Curlコマンドの引数としてJSONを直接指定する方法は、JSONが単純な場合に便利です。しかし、JSONが長かったり、複雑だったり、特殊文字が多かったりする場合は、コマンドラインが非常に読みにくくなり、エスケープミスも起こりやすくなります。そのような場合は、次に説明するファイルから読み込む方法が推奨されます。

5.2. JSONデータをファイルから読み込む方法 (-d @filename)

JSONデータをテキストファイルとして作成し、Curlにそのファイルを読み込ませてリクエストボディとして送信する方法は、より安全で管理しやすい方法です。特に、JSONデータが長くなる場合、動的に生成する場合、または機密情報(パスワードなど)を含む場合に有効です。

ファイルからデータを読み込むには、-dオプションの引数として @ の後にファイル名を指定します。

例:data.jsonという名前のファイルに以下のJSONデータが保存されているとします。

json
{
"user": {
"id": 456,
"username": "johndoe",
"email": "[email protected]"
},
"preferences": {
"theme": "dark",
"notifications": true
},
"items": [
{"itemId": 101, "quantity": 1},
{"itemId": 105, "quantity": 3}
]
}

このファイルをリクエストボディとしてPOSTするには、以下のコマンドを実行します。

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d @data.json \
https://api.example.com/users

この方法の利点は以下の通りです。

  • 可読性: JSONデータ自体をファイル内で整形して見やすく記述できます。
  • エスケープ不要: JSONファイル内の文字列リテラルに関するエスケープ(例: ", \)はJSONのルールに従って記述すればよく、シェルのエスケープルールを気にする必要がありません。
  • コマンド履歴に残らない: コマンドラインに直接JSONデータが記述されないため、コマンド履歴に機密情報が含まれるリスクを減らせます(ただし、ファイル自体へのアクセス権限管理は必要です)。
  • 再利用性: 同じJSONデータを複数のリクエストで使い回すのが容易です。
  • 動的生成: スクリプトなどでJSONデータを生成し、一時ファイルに保存してCurlに渡すという連携が可能です。

ファイルの内容は、Curlによってそのままリクエストボディとして送信されます。したがって、ファイルは有効なJSON形式でなければなりません。

5.3. リクエストボディのエンコーディング (UTF-8推奨)

Web APIとのデータ交換では、文字エンコーディングを統一することが非常に重要です。特に、日本語などのASCII以外の文字を含むデータを扱う場合、エンコーディングが一致しないと文字化けやパースエラーが発生します。

現代のWebでは、UTF-8が標準的な文字エンコーディングとして広く推奨されています。APIドキュメントで特に指定がない限り、JSONデータはUTF-8でエンコードして送信するのが最も安全です。

Curlの-dオプションで指定されたデータ(直接指定またはファイルから読み込んだデータ)は、デフォルトではCurlが動作しているシステムや環境のロケール設定に基づいてエンコードされる可能性があります。しかし、これは予期せぬ問題を招くことがあるため、明示的にUTF-8で送信することを保証するのが望ましいです。

一般的に、JSONファイルを作成する際は、エディタの設定でUTF-8を指定して保存します。コマンドラインでJSON文字列を直接指定する場合も、シェルのエンコーディング設定がUTF-8であれば問題ありません。

もしサーバー側がUTF-8以外のエンコーディング(例: Shift_JIS, EUC-JPなど)を要求している場合は、そのエンコーディングでJSONデータを作成し、Content-Typeヘッダーにエンコーディング情報を含める必要があるかもしれません。

例: Shift_JISでエンコードされたJSONを送信する場合 (非推奨だが知識として)

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json; charset=Shift_JIS" \
-d @shift_jis_data.json \
https://api.example.com/submit

しかし、これは特殊なケースであり、ほとんどの現代のAPIはUTF-8を期待しています。したがって、JSONデータはUTF-8で作成し、Content-Type: application/json のみ指定するのが標準的な方法です。

6. 実践的なテクニックと考慮事項

API連携では、JSONデータのPOSTだけでなく、様々な要素を考慮する必要があります。ここでは、Curlを使ったAPI連携で役立つ実践的なテクニックや考慮事項を解説します。

6.1. ヘッダーの追加:認証ヘッダー (APIキー, Bearerトークンなど)

多くのAPIは、リクエストに対して認証を要求します。認証情報は通常、HTTPヘッダーに含まれて送信されます。最も一般的な認証方式には、APIキーやOAuth 2.0のBearerトークンなどがあります。

ヘッダーを追加するには、-H または --header オプションを使用します。複数のヘッダーを追加する場合は、-Hオプションを複数回指定します。

  • APIキー: APIキーは、特定のサービスやユーザーを識別するために使用されます。APIプロバイダーによってヘッダー名は異なりますが、X-API-KeyAuthorization (特定のスキームと共に)、あるいはカスタムヘッダーなどが使われます。

    例: X-API-Keyヘッダーを使用する場合

    bash
    curl -X POST \
    -H "Content-Type: application/json" \
    -H "X-API-Key: YOUR_API_KEY" \
    -d '{"data": "payload"}' \
    https://api.example.com/resource

  • Bearerトークン (OAuth 2.0): OAuth 2.0で取得したアクセストークンは、通常AuthorizationヘッダーにBearerスキームと共に含めて送信します。

    例: Authorization: Bearerヘッダーを使用する場合

    bash
    curl -X POST \
    -H "Content-Type: application/json" \
    -H "Authorization: Bearer YOUR_ACCESS_TOKEN" \
    -d '{"data": "payload"}' \
    https://api.example.com/protected_resource

認証情報をコマンドラインに直接記述する場合、コマンド履歴に残る可能性がある点に注意が必要です。後述のセキュリティに関する考慮事項も参照してください。

6.2. SSL/TLS証明書の検証

多くのWeb APIは、HTTPSプロトコルで提供されており、通信の暗号化とサーバーの身元確認のためにSSL/TLS証明書を使用します。Curlはデフォルトで、接続先のサーバー証明書が信頼できる認証局によって署名されているか、ホスト名が証明書と一致するかなどを検証します。

自己署名証明書を使用している開発環境や、証明書の設定に問題がある場合、Curlは証明書の検証エラーで接続を拒否することがあります。一時的に証明書の検証を無効にするには、-k または --insecure オプションを使用します。

bash
curl -k -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"test": "data"}' \
https://localhost:8443/api

注意: -kオプションは、本番環境での使用は避けるべきです。証明書の検証を無効にすると、中間者攻撃 (Man-in-the-Middle attack) に対する脆弱性が生じます。信頼できないサーバーに機密情報を送信するリスクがあります。もし検証エラーが発生する場合は、以下のいずれかの対応を検討してください。

  • サーバーの証明書問題を修正する。
  • Curlが使用するCA証明書ストアに、信頼できる認証局の証明書を追加する。
  • 特定の証明書ファイルを使用して検証を行う (--cacert オプション)。

6.3. リダイレクトの処理

APIエンドポイントによっては、リクエスト後にリダイレクト(例: 301 Moved Permanently, 302 Found, 303 See Other)が発生することがあります。デフォルトでは、Curlはリダイレクトに応答して新しいURLへのリクエストを再発行しません。

リダイレクト先に自動的に追従させるには、-L または --location オプションを使用します。

bash
curl -L -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"key": "value"}' \
https://api.example.com/old_endpoint

-Lオプションを使用すると、Curlはリダイレクトレスポンスを受け取ると、そのLocationヘッダーに含まれる新しいURLに対してリクエストを再発行します。POSTリクエストがリダイレクトされた場合のメソッドの扱いはリダイレクトの種類によって異なります(301, 302はデフォルトでPOSTを維持しようとするが、303はGETに変換するなど)。必要に応じて、--post301, --post302, --post303などのオプションで挙動を制御することも可能です。

6.4. 詳細な出力:-v (verbose) オプション

APIリクエストが期待通りに動作しない場合、何が問題なのかを特定するために、Curlの -v または --verbose オプションが非常に役立ちます。このオプションを使用すると、Curlはリクエストの送信プロセス、ヘッダー、SSL/TLSハンドシェイクの情報、およびレスポンスヘッダーなど、通信に関する詳細な情報を標準エラー出力に表示します。

bash
curl -v -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"test": 123}' \
https://api.example.com/submit

-vオプションの出力例(一部):

“`
* Trying 93.184.216.34:443…
* Connected to api.example.com (93.184.216.34) port 443 (#0)
* ALPN: offers h2
* ALPN: offers http/1.1
* CAfile: /etc/ssl/certs/ca-certificates.crt
* CApath: none
* TLSv1.0 (IN), TLS handshake, Client hello (1):

… (SSL/TLSハンドシェイクの詳細) …

POST /submit HTTP/1.1 <– 送信するリクエストのメソッドとパス
Host: api.example.com <– Hostヘッダー
User-Agent: curl/7.81.0 <– User-Agentヘッダー (デフォルト)
Accept: / <– Acceptヘッダー (デフォルト)
Content-Type: application/json <– 指定したContent-Typeヘッダー
Content-Length: 14 <– リクエストボディのバイト長

  • Request body (14 bytes) is sent away <– リクエストボディが送信されたことを示す
    {test”: 123} <– 送信されたリクエストボディ (ただし、verbose出力に含まれるボディは、-dなどのデータをそのまま表示するため、ファイルからの読み込みなどの場合はここに内容が表示されます)

< HTTP/1.1 200 OK <– 受信したレスポンスのステータスコードとHTTPバージョン
< Content-Type: application/json <– 受信したレスポンスのContent-Typeヘッダー
< Date: Tue, 26 Oct 2023 10:00:00 GMT <– その他のレスポンスヘッダー
< Server: example-server
< Content-Length: 30
<
{“status”: “success”, “id”: “abc”} <– 受信したレスポンスボディ
* Connection #0 to host api.example.com left intact
“`

-v出力は、リクエストが正しく形成されているか(特にヘッダーやメソッド)、SSL/TLS接続が確立できているか、サーバーからどのようなレスポンスヘッダーが返ってきているかなどを確認するのに非常に強力です。エラーが発生した場合、-v出力を見れば、問題がクライアント側(リクエストの形成ミス)にあるのか、サーバー側(サーバーエラー、認証エラーなど)にあるのかを判断する手がかりが得られます。

6.5. エラー処理:HTTPステータスコードの確認

HTTPレスポンスには、リクエストの結果を示す3桁のHTTPステータスコードが含まれています。API連携において、このステータスコードを確認することは、リクエストが成功したか、失敗したか、どのような種類のエラーが発生したかを判断するために非常に重要です。

Curlコマンド自体は、HTTPステータスコードがエラー(通常は4xxや5xx)であっても、多くの場合成功終了(終了コード0)します。これは、Curlが「リクエストの送信とレスポンスの受信」というタスク自体を成功裏に完了したと見なすためです。

API呼び出しが成功したかどうかをプログラムやスクリプトで判断する場合、レスポンスとして返されるHTTPステータスコードを確認する必要があります。Curlはデフォルトでレスポンスボディを表示しますが、ステータスコードは通常-vオプションを使用しないと表示されません。

ステータスコードのみを取得するには、-w "%{http_code}\n" オプションを使用します。これは、レスポンスボディの表示後、指定された形式で情報を出力します。

“`bash
curl -X POST \
-H “Content-Type: application/json” \
-d ‘{“key”: “value”}’ \
-w “%{http_code}\n” \
https://api.example.com/submit

例:成功した場合の出力 (レスポンスボディに続きステータスコードが表示される)

{“status”: “success”}

200

例:クライアントエラーの場合の出力

{“error”: “Invalid input”}

400

“`

レスポンスボディを表示せずにステータスコードだけを取得したい場合は、-o /dev/null (Unix/Linux/macOS) や -o NUL (Windows Command Prompt) を使ってレスポンスボディを破棄します。

“`bash

Unix/Linux/macOS

status_code=$(curl -s -X POST \
-H “Content-Type: application/json” \
-d ‘{“key”: “value”}’ \
-w “%{http_code}\n” \
-o /dev/null \
https://api.example.com/submit)

echo “Status Code: $status_code”

Windows Command Prompt

curl -s -X POST ^

-H “Content-Type: application/json” ^

-d “{\”key\”:\”value\”}” ^

-w “%%{http_code}\n” ^

-o NUL ^

https://api.example.com/submit

(PowerShellの場合はUnix記法に近い)

“`

-s または --silent オプションは、プログレスメーターやエラーメッセージ以外のCurlの通常出力を抑制します。ステータスコードやレスポンスボディだけを取得したい場合に便利です。

主要なHTTPステータスコードのカテゴリ:

  • 1xx Informational: リクエストは受信され処理が継続されています。
  • 2xx Success: リクエストは正常に処理されました (例: 200 OK, 201 Created, 204 No Content)。API連携では通常このカテゴリを目指します。
  • 3xx Redirection: リクエストを完了するために追加のステップが必要です (例: 301 Moved Permanently, 302 Found)。-Lオプションで自動追従できます。
  • 4xx Client Error: リクエストにエラーがあります (例: 400 Bad Request, 401 Unauthorized, 403 Forbidden, 404 Not Found, 405 Method Not Allowed, 415 Unsupported Media Type)。JSONの構文エラー、認証情報の不足、権限の問題、不正なパスなどはこのカテゴリのエラーを引き起こします。
  • 5xx Server Error: サーバーがリクエストの処理に失敗しました (例: 500 Internal Server Error, 502 Bad Gateway, 503 Service Unavailable)。サーバー側の問題を示します。

6.6. タイムアウトの設定

APIによっては、処理に時間がかかる場合があります。Curlはデフォルトでもタイムアウト機構を持っていますが、明示的にタイムアウト時間を設定することで、 indefinitely (無限に) 待機するのを避け、リクエストがタイムアウトした際の挙動を制御できます。

  • --connect-timeout <seconds>: TCP接続の確立を待つ最大時間(秒)です。ネットワークが不安定な場合に有用です。
  • --max-time <seconds>: リクエスト全体の最大処理時間(秒)です。接続確立からレスポンスの受信完了までにかかる時間の上限を設定します。

例:接続確立に5秒、リクエスト全体に10秒まで待機する

bash
curl --connect-timeout 5 --max-time 10 -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"slow_request": true}' \
https://api.example.com/process

タイムアウトした場合、Curlは通常エラーメッセージを表示し、ゼロ以外の終了コードを返します。

6.7. プロキシ経由のリクエスト

企業ネットワーク環境などでは、インターネットへのアクセスがプロキシサーバーを経由する必要がある場合があります。Curlはプロキシ経由のリクエストもサポートしています。

  • -x または --proxy <[protocol://][user:password@]host[:port]>: 指定したプロキシサーバーを使用します。

例:HTTPプロキシを使用する場合

bash
curl -x http://proxy.example.com:8080 -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"key": "value"}' \
https://api.example.com/submit

認証が必要なプロキシの場合は、ユーザー名とパスワードを含めて指定できます。

bash
curl -x http://user:[email protected]:8080 -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"key": "value"}' \
https://api.example.com/submit

環境変数 HTTP_PROXY, HTTPS_PROXY, NO_PROXY などが設定されている場合、Curlはそれらの設定も尊重します。-xオプションは環境変数よりも優先されます。

6.8. Cookieの送受信

APIによっては、セッション管理や認証にCookieを使用することがあります。CurlはCookieの送受信もサポートしています。

  • -b または --cookie <string> / <filename>: リクエストにCookieを含めます。文字列で直接指定するか、Netscape形式のCookieファイルから読み込みます。
  • -c または --cookie-jar <filename>: レスポンスで受信したCookieをファイルに保存します。

例:前のリクエストで保存したCookieを使ってリクエストする

“`bash

セッションを開始し、Cookieをsession_cookies.txtに保存

curl -c session_cookies.txt https://api.example.com/login -d “user=test&pass=secret”

保存したCookieを使って認証が必要なリソースにアクセス

curl -b session_cookies.txt -X POST \
-H “Content-Type: application/json” \
-d ‘{“action”: “perform_task”}’ \
https://api.example.com/do_something
“`

JSON POST自体にCookieが必要なケースはそれほど多くないかもしれませんが、認証状態を維持したままAPIを呼び出す際に役立ちます。

6.9. データ送信方法の選択:--data, --data-raw, --data-urlencode

Curlには、リクエストボディにデータを送信するためのいくつかのオプションがあります。JSONを送信する際には、どのオプションが適切か理解しておくことが重要です。

  • -d または --data <data>:

    • 指定された<data>をリクエストボディに含めます。
    • 自動的にメソッドをPOSTに変更します (もし-X POSTが指定されていなければ)。
    • デフォルトでは、<data>の先頭に@がない限り、URLエンコードを行います (例: スペースが%20になる)。また、もし複数の-dオプションが指定された場合、それらは&で結合され、典型的なapplication/x-www-form-urlencoded形式になります。
    • もし<data>の先頭が@であれば、ファイルとして扱い、その内容をURLエンコードせずそのままボディに含めます。
    • JSONを送信する場合、通常はURLエンコードは不要です。ファイルからの読み込み (-d @filename) ならURLエンコードされませんが、JSON文字列を直接指定する場合は意図せずURLエンコードされてしまう可能性があります
  • --data-raw <data>:

    • 指定された<data>をリクエストボディに含めます。
    • -dと異なり、自動的なURLエンコードを行いません。指定された文字列がそのままボディに含まれます。
    • ファイルからの読み込み機能 (@filename) はありません。ファイル内容を送信したい場合は、< data.json のように標準入力をリダイレクトして--data-binary @- を使うか、後述の--data-binaryを使う必要があります。
    • --data-raw-d の「raw」版と考えることができます。シェルによる解釈は通常適用されますが、Curl自身によるURLエンコードは行われません。
  • --data-binary <data>:

    • 指定された<data>をリクエストボディに含めます。
    • --data-rawと同様に、自動的なURLエンコードを行いません
    • 特に、@filename形式でファイルを指定した場合、そのファイルの内容をバイナリとして扱い、改行などをそのまま含めて送信します。これは、画像ファイルや圧縮ファイルなど、バイナリデータを送信する際に最も適しています。
    • JSONファイル (@filename) を送信する場合、--data-binaryを使うことで、-d @filenameと同じくファイル内容がそのまま(URLエンコードされずに)送信されます。
  • --data-urlencode <data>:

    • 指定された<data>をリクエストボディに含め、常にURLエンコードを行います
    • フォームデータの送信(application/x-www-form-urlencoded)に使用するためのオプションです。JSONには適しません。

JSONデータを送信する場合の推奨オプション:

  • JSON文字列を直接指定: --data-raw が最も適しています。これはCurlによるURLエンコードを防ぎ、シェルによるエスケープのみを考慮すれば良いためです。-dを使うと、意図せずURLエンコードされてしまう可能性があります。
    bash
    curl -X POST \
    -H "Content-Type: application/json" \
    --data-raw '{"name": "Bob", "value": 456}' \
    https://api.example.com/submit

    -dを使用する場合は、JSON文字列全体をシングルクォートで囲むことで、URLエンコードを防ぐのが一般的なテクニックです。これは、-dがシングルクォート内の&=などを特別扱いしないためです。しかし、--data-rawの方が意図が明確になります。)

  • JSONデータをファイルから読み込む: -d @filename または --data-binary @filename が適しています。どちらもファイル内容がそのままボディに含まれます。--data-binary @filenameの方が、データをバイナリとしてそのまま送信するという意図がより明確に伝わります。
    bash
    curl -X POST \
    -H "Content-Type: application/json" \
    --data-binary @data.json \
    https://api.example.com/submit

要約すると、JSONをPOSTする際は、リクエストボディがURLエンコードされないようにすることが重要です。文字列を直接指定する場合は--data-raw、ファイルから読み込む場合は-d @filenameまたは--data-binary @filenameを使用するのがベストプラクティスです。

7. JSONデータの構造とCurlでの表現

CurlコマンドでJSONデータを表現する際には、JSONの構造(オブジェクト、配列、ネストなど)を正しく記述することが重要です。特に、コマンドラインのシェル環境下での記述方法に慣れる必要があります。前述の通り、Unix系シェルではシングルクォートで囲むのが最も安全です。

例を通して、様々なJSON構造をCurlで表現する方法を見てみましょう。

例1:単純なキー・値ペアのオブジェクト

json
{
"id": 123,
"status": "active"
}

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '{"id": 123, "status": "active"}' \
https://api.example.com/update_status

例2:文字列、数値、真偽値、nullを含むオブジェクト

json
{
"name": "Charlie",
"age": 42,
"isEmployed": true,
"notes": null
}

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '{"name": "Charlie", "age": 42, "isEmployed": true, "notes": null}' \
https://api.example.com/users

例3:配列を含むオブジェクト

json
{
"task": "Buy groceries",
"tags": ["food", "shopping", "urgent"]
}

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '{"task": "Buy groceries", "tags": ["food", "shopping", "urgent"]}' \
https://api.example.com/tasks

例4:ネストしたオブジェクトを含むオブジェクト

json
{
"orderId": "A987",
"customer": {
"name": "David",
"email": "[email protected]"
}
}

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '{"orderId": "A987", "customer": {"name": "David", "email": "[email protected]"}}' \
https://api.example.com/orders

例5:オブジェクトの配列

json
[
{"itemId": "X1", "quantity": 5},
{"itemId": "X2", "quantity": 2}
]

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '[{"itemId": "X1", "quantity": 5}, {"itemId": "X2", "quantity": 2}]' \
https://api.example.com/inventory_updates

例6:文字列内の特殊文字のエスケープ

JSON文字列値の中にダブルクォート"やバックスラッシュ\、改行\nなどを含める場合は、JSONのルールに従ってエスケープが必要です。

json
{
"description": "This is a \"quoted\" item with a\nline break."
}

Curlコマンド (Unix系シェル):

bash
curl -X POST \
-H "Content-Type: application/json" \
--data-raw '{"description": "This is a \"quoted\" item with a\nline break."}' \
https://api.example.com/items

前述の通り、これらの例でJSON文字列を直接指定する場合、文字列が少し複雑になるだけでコマンドラインの可読性が著しく低下します。複雑なJSONを扱う場合は、--data-binary @filenameを使ってファイルから読み込む方法が圧倒的に推奨されます。

8. セキュリティに関する考慮事項

Curlを使ってAPIにJSONデータをPOSTする際に、セキュリティは非常に重要な考慮事項です。特に機密性の高いデータ(パスワード、APIキー、トークンなど)を扱う場合は、以下の点に注意が必要です。

  1. コマンド履歴: コマンドラインで直接パスワードやAPIキーを含むオプション(例: -H "Authorization: Bearer YOUR_TOKEN", -d '{"password": "..."}')を指定すると、それらはシェルの履歴ファイル (~/.bash_history, ~/.zsh_history, cmd history, PowerShell history) に平文で記録されてしまいます。これは、そのマシンにアクセスできる第三者によって機密情報が漏洩するリスクを高めます。

    • 対策:
      • 環境変数を使用する: 機密情報を環境変数に設定し、コマンドラインでは変数を参照するようにします。
        bash
        export API_TOKEN="YOUR_SECRET_TOKEN"
        curl -H "Authorization: Bearer $API_TOKEN" ...
        # または (PowerShell)
        # $env:API_TOKEN="YOUR_SECRET_TOKEN"
        # curl -Headers @{"Authorization"="Bearer $($env:API_TOKEN)"} ...

        環境変数も完全に安全ではない(例えば、/procファイルシステム経由で見られる場合がある)ことに注意が必要ですが、コマンド履歴よりは安全性が高いです。
      • ファイルから読み込む: 機密情報をファイルに保存し、Curlの-d @filename--header @filename機能を使って読み込ませます。ファイルの内容は通常コマンド履歴には残りません。ファイルへのアクセス権限を適切に設定することが必須です(他のユーザーから読み取れないようにするなど)。
        bash
        # auth_header.txt というファイルに "Authorization: Bearer YOUR_SECRET_TOKEN" と記述
        curl -H @auth_header.txt ...
        # data.json というファイルに機密情報を含むJSONを記述
        curl -d @data.json ...
      • 対話的な入力: 可能であれば、パスワードなどをプロンプトで入力させるスクリプトを作成する。Curl自身はパスワードプロンプト機能を持っていますが、JSON POSTのボディには適用できません。スクリプト内で安全に入力を受け付け、Curlに渡す必要があります。
      • 履歴に残さないコマンド実行: コマンドの先頭にスペースを入れる(多くのシェルで設定されている場合)や、履歴を無効にするコマンドを使用する(例: set +o history in Bash)などの方法もありますが、完全ではありません。
  2. SSL/TLS証明書の検証: 前述の通り、-k--insecureオプションはSSL/TLS証明書の検証を無効にし、中間者攻撃のリスクを高めます。特に本番環境のAPIに対しては、常に証明書検証を有効にし、必要であれば正しいCA証明書を設定してください。

  3. レスポンスボディの取り扱い: APIからのレスポンスに機密情報や大量のデータが含まれる場合があります。レスポンスをそのまま標準出力に表示すると、画面を覗き見られたり、ターミナルのスクロールバッファに残ったりする可能性があります。

    • 対策:
      • 必要のないレスポンスボディは破棄する (-o /dev/null または -o NUL)。
      • レスポンスをファイルに保存し、安全な場所に保管する (-o output.json)。
      • パイプや他のツール(例: jq)と組み合わせて、必要な情報だけを抽出し、表示する。

9. トラブルシューティング:よくある問題と解決策

CurlでのJSON POSTがうまくいかない場合、様々な原因が考えられます。ここでは、よくある問題とそれぞれの原因、そして解決策を説明します。デバッグの際には、必ず-vオプションをつけて詳細な出力を確認することを強く推奨します。

  1. 400 Bad Request エラー:

    • 原因: リクエストの構文が無効であるか、サーバーが理解できない形式です。JSONの構文エラー、必須パラメータの不足、データ型の不一致などが考えられます。最も多い原因の一つは、送信したデータが有効なJSONとしてサーバーに認識されていないことです。
    • 解決策:
      • JSON構文の確認: 送信するJSONデータが有効なJSON形式であることを確認します。オンラインのJSONバリデーターや、python -m json.tool (Pythonがインストールされていれば) などのツールで検証します。
      • Content-Type ヘッダー: Content-Type: application/json ヘッダーが正しく設定されているか確認します。スペルミスや大文字・小文字の間違いがないか見ます (-H "Content-Type: application/json")。
      • データのエンコーディング: JSONデータがUTF-8でエンコードされているか確認します。ファイルから読み込む場合は、ファイルがUTF-8で保存されているか確認します。
      • -d または --data-raw の使い方: JSON文字列を直接指定している場合、シェルのエスケープが正しく行われているか確認します。特にダブルクォートのエスケープミスが多いです。--data-rawを使うか、ファイルからの読み込み(-d @filename または --data-binary @filename) を検討します。-v出力で送信されている正確なリクエストボディを確認します。
      • APIドキュメントの確認: APIドキュメントで、リクエストボディの期待されるJSON構造、必須フィールド、データ型を確認します。
  2. 401 Unauthorized または 403 Forbidden エラー:

    • 原因: 認証情報の不足、無効な認証情報、またはリソースへのアクセス権限がありません。
    • 解決策:
      • 認証ヘッダーの確認: Authorization ヘッダーやカスタムAPIキーヘッダーが正しく含まれているか確認します (-H "Authorization: Bearer YOUR_TOKEN", -H "X-API-Key: YOUR_KEY")。
      • トークン/キーの有効性: 使用しているアクセストークンやAPIキーが有効期限切れではないか、または正しいものであるか確認します。
      • 権限の確認: 使用している認証情報に、そのAPIエンドポイントへのアクセス権限やPOSTメソッドの実行権限があるか確認します。
  3. 404 Not Found エラー:

    • 原因: 指定したURLまたはリソースが存在しません。
    • 解決策:
      • URLの確認: Curlコマンドで指定しているURLが正しいか、APIドキュメントと照らし合わせて確認します。大文字・小文字、スペルミス、パスの末尾のスラッシュなどに注意します。
  4. 405 Method Not Allowed エラー:

    • 原因: 指定したURLに対して、POST以外のメソッドしか許可されていないか、またはPOSTメソッドがサポートされていない。
    • 解決策:
      • APIドキュメントの確認: そのAPIエンドポイントがPOSTメソッドをサポートしているか確認します。
      • -X POST の確認: Curlコマンドで -X POST オプションが正しく指定されているか確認します(-dオプションを使用している場合は通常自動的にPOSTになりますが、明示的に指定する方が確実です)。
  5. 415 Unsupported Media Type エラー:

    • 原因: サーバーが、リクエストヘッダーのContent-Typeで指定されたメディアタイプ(この場合はapplication/json)を受け付けない。
    • 解決策:
      • Content-Type ヘッダー: Content-Type: application/json ヘッダーが正しく指定されていることを再確認します。スペルミスや値の誤りがないか見ます。APIがapplication/json以外のJSON関連のメディアタイプ(例: application/vnd.api+json)を要求している可能性もゼロではないため、ドキュメントを確認します。
  6. 500 Internal Server Error またはその他の 5xx エラー:

    • 原因: サーバー側の内部的なエラー。リクエスト自体は正しく受け付けられたが、サーバーが処理中に例外を発生させた場合など。これはクライアント側の問題ではなく、サーバー側の問題であることが多いです。
    • 解決策:
      • サーバーログの確認: 可能であれば、APIサーバー側のログを確認し、エラーの詳細を特定します。
      • リクエスト内容の確認: 送信したJSONデータがAPIの期待する形式や制約を満たしているか(例: 数値の範囲、文字列長の制限など)を再度確認します。サーバー側のバリデーションエラーが500として返されることも稀にあります。
      • API提供者への問い合わせ: サーバー側の問題が疑われる場合は、APIの提供者に状況を報告し、調査を依頼します。
  7. SSL/TLS 接続エラー:

    • 原因: 証明書の検証に失敗した、SSL/TLSバージョンや暗号スイートの不一致など。
    • 解決策:
      • -v出力の確認: -vオプションでSSL/TLSハンドシェイクの過程を確認します。エラーメッセージから具体的な原因(証明書の有効期限切れ、ホスト名の不一致、信頼できないCAなど)を特定します。
      • 証明書の問題修正: サーバー側の証明書が原因であれば、管理者に修正を依頼します。
      • CA証明書の設定: クライアント側でCA証明書が必要な場合は、Curlの設定または--cacertオプションで指定します。
      • 一時的な回避: 開発環境などでどうしても接続できない場合は、-kオプションを使用します(ただし、本番環境では避ける)。
  8. Curl自体のエラーメッセージ:

    • Curlは、HTTPステータスコードだけでなく、ネットワーク接続の問題、ファイル読み込みエラーなど、様々な状況で自身のエラーメッセージを出力し、ゼロ以外の終了コードを返します。エラーメッセージ (例: curl: (6) Could not resolve host: ..., curl: (7) Failed to connect to ... port ...: Connection refused) を注意深く読み、原因を特定します。

トラブルシューティングの際は、「まずはCurlの-v出力を確認し、何がサーバーに送信され、何がサーバーから返ってきたのかを見る」 というステップが最も重要です。その情報に基づいて、HTTPステータスコード、Curlのエラーメッセージ、そしてAPIドキュメントを照らし合わせながら原因を絞り込んでいきます。

10. 高度な利用法:他のコマンドとの連携

Curlはコマンドラインツールであるため、他のコマンドラインツールやスクリプトと簡単に連携させることができます。特に、APIからのJSONレスポンスを処理する場合に強力です。

10.1. パイプとリダイレクト

Curlの出力を他のコマンドに渡すにはパイプ|を使います。出力をファイルに保存するにはリダイレクト>または>>を使います。エラー出力(-vの詳細情報など)をファイルに保存するには2>を使います。

例:レスポンスボディをファイルに保存する

bash
curl -X POST -H "Content-Type: application/json" -d '{"key": "value"}' https://api.example.com/submit > response.json

例:詳細なログとレスポンスをそれぞれ別のファイルに保存する

bash
curl -v -X POST -H "Content-Type: application/json" -d '{"key": "value"}' https://api.example.com/submit > response.json 2> curl.log

10.2. jqとの連携によるJSONレスポンスの処理

APIからのレスポンスはしばしばJSON形式です。このJSONデータをコマンドラインで整形したり、特定の値を抽出したりするには、jqという軽量で柔軟なコマンドラインJSONプロセッサが非常に便利です。Curlの出力をjqにパイプで渡して使用します。

jqのインストール方法については、公式ドキュメントを参照してください。多くのパッケージマネージャーで利用可能です。

例:レスポンスJSONを整形して表示する

bash
curl -s -X POST -H "Content-Type: application/json" -d '{"key": "value"}' https://api.example.com/submit | jq .

-sオプションはCurlのプログレスバーなどを非表示にし、JSONデータのみを標準出力に出力します。jq . は、受け取ったJSONをそのまま整形して出力します。

例:特定のフィールドの値を抽出する

APIレスポンスが {"status": "success", "result": {"id": "abc", "message": "Done"}} のようなJSONであるとして、idの値を取得する場合。

“`bash
curl -s -X POST -H “Content-Type: application/json” -d ‘{“key”: “value”}’ https://api.example.com/submit | jq -r ‘.result.id’

出力例: abc

“`

jq -r '.result.id' は、ルートオブジェクト (.) の result フィールド (.result) の中の id フィールド (.result.id) の値を取得し、-rオプションで引用符なしの生文字列として出力します。

例:配列から特定の要素を抽出する

APIレスポンスが {"items": [{"id": 1, "name": "A"}, {"id": 2, "name": "B"}]} のようなJSONであるとして、全てのアイテムの名前だけをリストアップする場合。

“`bash
curl -s -X POST -H “Content-Type: application/json” -d ‘{“query”: “all_items”}’ https://api.example.com/items | jq ‘.items[].name’

出力例:

“A”

“B”

“`

jq '.items[].name' は、items配列の各要素 ([]) に対して、その要素の name フィールド (.name) を取得します。

jqとCurlを組み合わせることで、APIから返されるJSONデータを効率的に処理し、必要な情報を抽出したり、後続の処理に渡したりすることができます。

10.3. Curlスクリプトの作成

複数のCurlコマンドを順に実行したり、動的にCurlコマンドの引数を生成したりする場合、シェルスクリプトを作成するのが一般的です。スクリプトにすることで、繰り返し実行や、API連携の自動化が容易になります。

例:簡単なAPI呼び出しスクリプト

“`bash

!/bin/bash

API_URL=”https://api.example.com/resource”
API_KEY=”YOUR_API_KEY_HERE”
DATA_FILE=”request_data.json”

リクエストデータをファイルに書き込む(またはファイルは事前に作成しておく)

cat << EOF > “$DATA_FILE”
{
“user_id”: 789,
“action”: “process_item”
}
EOF

Curlコマンドを実行

RESPONSE=$(curl -s -X POST \
-H “Content-Type: application/json” \
-H “X-API-Key: $API_KEY” \
–data-binary “@$DATA_FILE” \
“$API_URL”)

jqを使ってレスポンスを処理

STATUS=$(echo “$RESPONSE” | jq -r ‘.status’)
RESULT_ID=$(echo “$RESPONSE” | jq -r ‘.id’)

結果の確認

if [ “$STATUS” == “success” ]; then
echo “API call successful. Result ID: $RESULT_ID”
else
echo “API call failed. Response: $RESPONSE”
exit 1
fi

一時ファイルのクリーンアップ (任意)

rm “$DATA_FILE”

“`

このスクリプトは、JSONデータをファイルに書き込み、APIキーを環境変数として(または直接)指定し、CurlでPOSTリクエストを送信し、返されたJSONレスポンスをjqで処理して結果を表示する一連の流れを示しています。このようにスクリプト化することで、複雑なAPI連携も管理しやすくなります。セキュリティのために、APIキーなどの機密情報はスクリプトファイル自体に直接書き込まず、環境変数や安全な設定ファイルから読み込むことを検討してください。

11. まとめ:CurlでJSONをPOSTする際の重要ポイント

この記事では、Curlコマンドを使ってJSONデータをHTTP POSTリクエストで送信する方法について、基本的な概念から実践的なテクニック、トラブルシューティング、そして高度な利用法まで、詳細に解説しました。

CurlでJSONをPOSTする際の最も重要なポイントを再確認しましょう。

  1. HTTPメソッド: -X POST オプションを指定します(通常-dまたは--data系オプションを使えば自動的にPOSTになりますが、明示が推奨されます)。
  2. Content-Type ヘッダー: リクエストヘッダーに -H "Content-Type: application/json" を含めることが必須です。サーバーにリクエストボディがJSON形式であることを伝えます。
  3. JSONデータの指定:
    • JSON文字列を直接指定する場合は --data-raw '...' または -d '...' を使用します。特にUnix系シェルでは、JSON全体をシングルクォートで囲むことで、内部のダブルクォートなどのエスケープ問題を最小限に抑えられます。--data-rawはCurlによる自動的なURLエンコードを防ぐため推奨です。
    • JSONデータをファイルから読み込む場合は --data-binary @filename または -d @filename を使用します。これが最も管理しやすく、複雑なJSONや機密情報を扱う場合に推奨される方法です。
  4. エンコーディング: JSONデータはUTF-8でエンコードすることが強く推奨されます。
  5. 認証: 多くのAPIは認証を要求します。-H "Authorization: ..." やその他のAPIキーヘッダーを適切に含めます。機密情報はコマンド履歴に残さないよう、環境変数やファイルからの読み込みを検討します。
  6. 検証とデバッグ:
    • -v (verbose) オプションは、リクエスト/レスポンスの詳細を確認し、デバッグを行う上で非常に強力です。
    • レスポンスのHTTPステータスコード (-w "%{http_code}\n") を確認し、リクエストが成功したか、どのようなエラーが発生したかを判断します。
    • JSON構文エラー、不正なヘッダー、認証ミス、URLの間違いなどがよくある原因です。

Curlは、Web APIと対話するための非常に柔軟で強力なツールです。JSONデータをPOSTする能力は、開発者、テスター、自動化エンジニアにとって不可欠なスキルです。この記事で解説した内容を参考に、自信を持ってCurlを活用し、様々なAPIとの連携を実現してください。

APIドキュメントをよく読み、-vオプションを活用し、必要であればjqなどのツールと連携することで、CurlによるAPIテストや自動化はさらに効率的で信頼性の高いものになるでしょう。

これで、CurlコマンドでJSONデータをPOSTする完全ガイドは終了です。この情報があなたの開発や作業に役立つことを願っています。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール