初心者向け Amazon OpenSearch Service (旧Elasticsearch Service) 入門
はじめに:検索と分析の世界へようこそ
皆さんは、Webサイトで欲しい商品を検索したり、膨大なログデータの中から特定のエラーを探したりした経験はありますか? こうした「大量のデータから特定の情報を素早く見つけ出す」「データの傾向を分析して課題を発見する」といったタスクは、現代のデジタル社会において非常に重要です。
このようなニーズに応えるための強力なツールの一つが、「検索エンジン」や「分析プラットフォーム」と呼ばれるものです。そして、クラウドの世界で、この分野で大きな存在感を示しているのが、Amazon OpenSearch Service(旧Elasticsearch Service)です。
この記事は、プログラミングやインフラの経験があまりない、あるいはOpenSearch Serviceの名前は聞いたことはあるけれど、具体的に何ができて、どう使えば良いのか分からない、といった初心者の方々に向けて書かれています。約5000語というボリュームで、OpenSearch Serviceの基本的な概念から、実際に使い始めるためのステップ、データの投入方法、検索・分析の基本、さらには運用管理の触りまで、網羅的かつ丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、OpenSearch Serviceがどのようなサービスで、どのようなことができるのか、そして自分で触ってみるための最初の一歩を踏み出すことができるようになっているでしょう。
さあ、一緒に検索と分析の強力な世界への扉を開けましょう。
第1章:OpenSearch Serviceとは何か? なぜ使うのか?
1.1 検索エンジン、全文検索、ログ分析の基礎
OpenSearch Serviceを理解するために、まずはその背景にある概念をいくつか確認しておきましょう。
検索エンジンとは?
皆さんが普段から使っているWeb検索エンジン(Google, Bingなど)をイメージしてください。これは、インターネット上の膨大なWebページの中から、入力したキーワードに関連する情報を見つけ出してリスト表示してくれるシステムです。OpenSearch Serviceも基本的な役割は似ています。ただし、対象はインターネット全体ではなく、皆さんが格納した特定のデータ(商品情報、顧客データ、サーバーログなど)です。
全文検索とは?
通常のデータベース検索(SQLなど)は、あらかじめ定義された列(カラム)に対して、「〇〇という値に等しい」「△△より大きい」といった条件でデータを絞り込むのが得意です。これに対し、「全文検索」は、テキストデータに含まれる単語やフレーズを手がかりに、関連性の高い情報を探し出すことに特化しています。
例えば、ECサイトで「おしゃれな青いワンピース」と検索するとします。データベースで「色=青」「カテゴリ=ワンピース」で絞り込むだけでは、「おしゃれな」という曖昧な、しかし重要なニュアンスは拾えません。全文検索では、商品の説明文やレビューなど、様々なテキスト情報を分析し、「おしゃれ」「青い」「ワンピース」といった単語の出現頻度や位置関係などを考慮して、最も関連性の高い商品を提示してくれます。単にキーワードが含まれているかだけでなく、どれだけ関連性が高いかを評価できるのが全文検索の大きな特徴です。
ログ分析とは?
サーバーやアプリケーションは、稼働状況や発生したイベントを記録として残します。これが「ログ」です。ログには、いつ、どこで、何が起きたか(例:ユーザーがログインした、エラーが発生した、データベースにアクセスした)といった情報が時系列で記録されています。
ログの量は、システムの規模が大きくなるほど膨大になります。手作業でこれらのログを確認するのは現実的ではありません。ログ分析は、この膨大なログデータを収集、集約し、特定のパターンや異常を検出したり、システムのボトルネックを発見したりするために行われます。
例えば、特定の時間帯にエラーが増加していないか? 不正なアクセスパターンはないか? どの機能が最も頻繁に使われているか? といったことを、ログ分析を通じて把握できます。これはシステムの安定稼働やセキュリティ維持、機能改善のために不可欠な作業です。
1.2 Amazon OpenSearch Serviceの役割
OpenSearch Serviceは、これらの「全文検索」や「ログ分析」のタスクを、AWS(Amazon Web Services)というクラウド環境で簡単かつ効率的に実現するためのマネージドサービスです。
「マネージドサービス」とは、AWSがサービスの運用や管理(サーバーのセットアップ、パッチ適用、障害対応など)の多くを代行してくれるサービスのことです。これにより、利用者はインフラの細かい管理から解放され、本来の目的であるデータ活用に集中できます。
具体的にOpenSearch Serviceが提供するのは、以下のような機能です。
- 高い検索性能: 大量のデータに対しても、高速な全文検索を実行できます。関連性の高い順に結果を返す「スコアリング」機能も備えています。
- リアルタイムに近い分析: ログやイベントデータを取り込んで、ほぼリアルタイムに分析や可視化が可能です。
- スケーラビリティ: データ量の増加やアクセス負荷に応じて、簡単にシステム規模を拡大・縮小できます。
- 高可用性: データの複製(レプリカ)を保持したり、複数のサーバーに分散配置したりすることで、一部のサーバーに障害が発生してもサービスを継続できます。
- セキュリティ: アクセス制御や暗号化など、様々なセキュリティ機能を提供します。
- マネージドサービス: AWSがインフラのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップ、モニタリングなどを管理してくれます。
1.3 Elasticsearchとの関係(歴史的背景)
「Amazon OpenSearch Service (旧Elasticsearch Service)」という名称にある通り、このサービスはもともとオープンソースの「Elasticsearch」をベースにしていました。
Elasticsearchは、高いスケーラビリティとリアルタイム性を持つ分散型の検索・分析エンジンとして、世界中で広く利用されていました。ログ分析基盤であるELK Stack(Elasticsearch, Logstash, Kibana)の中核を担う存在としても有名でした。AWSは、このElasticsearchを手軽に利用できるマネージドサービスとして「Amazon Elasticsearch Service」を提供していました。
しかし、Elasticsearchの開発元であるElastic社がライセンスポリシーを変更したことを受け、AWSはElasticsearchから分岐(フォーク)し、独自のオープンソースプロジェクトとして「OpenSearch」を立ち上げました。そして、従来のAmazon Elasticsearch Serviceは、このOpenSearchを基盤とするサービスに移行し、「Amazon OpenSearch Service」と名称を変えました。
現在、OpenSearchはElasticsearchと多くの共通点を持つ一方で、OpenSearch独自の機能開発も進められています。Amazon OpenSearch Serviceは、このOpenSearchオープンソースプロジェクトをAWSがマネージドサービスとして提供しているものです。
初心者の方は、この歴史的な背景を深く理解する必要はありませんが、「もともとElasticsearchという有名なソフトウェアがベースになっていて、今はOpenSearchという別の名前で開発が進んでいるんだな」「Amazon OpenSearch Serviceは、そのOpenSearchをAWSが運用管理してくれるサービスなんだな」というくらいに覚えておくと良いでしょう。機能面でも、Elasticsearchを利用していた方であれば馴染みやすい部分が多いです。
1.4 OpenSearch Serviceの主な用途
OpenSearch Serviceは、様々な用途で利用されています。代表的なものをいくつかご紹介します。
- Webサイトやアプリケーション内の検索機能: ECサイトの商品検索、ドキュメント検索、ブログ記事検索など、ユーザーが目的の情報に素早くたどり着けるようにする検索機能のバックエンドとして利用されます。
- ログ管理と分析: サーバー、アプリケーション、ネットワーク機器などから出力される大量のログデータを収集、保管し、リアルタイムに近い分析や可視化を行います。エラー検出、性能監視、セキュリティ監視(SIEM: Security Information and Event Managementのような用途)に活用されます。
- メトリクス分析: システムやアプリケーションの性能指標(CPU使用率、メモリ使用量、リクエスト数など)といった時系列データを収集し、異常検知や傾向分析を行います。
- リアルタイム分析: IoTデバイスからのデータや、クリックストリームデータ(Webサイト上でのユーザー行動データ)など、ストリーム形式で流れてくるデータをほぼリアルタイムに分析し、ダッシュボードで可視化するといった用途にも使われます。
このように、OpenSearch Serviceは単なる「検索」だけでなく、大量のデータを「収集」「保管」「検索」「分析」「可視化」するための一連のプラットフォームとして機能します。
第2章:OpenSearch Serviceの基本アーキテクチャ
OpenSearch Serviceは、複数のサーバー(ノード)が連携して動作する「分散システム」です。ここでは、OpenSearch Serviceを構成する基本的な要素と、分散システムがなぜ重要なのかを見ていきましょう。
2.1 分散システムとは? なぜ必要?
皆さんがパソコンで作業するように、データ処理も1台のコンピューターで行うことができます。しかし、扱うデータが膨大になったり、同時に多くのユーザーからのアクセスがあったりする場合、1台のコンピューターでは処理能力やストレージ容量が追いつかなくなってしまいます。また、その1台が故障すると、サービスが完全に停止してしまいます。
「分散システム」は、複数のコンピューター(サーバー)をネットワークで連携させ、協力して一つの大きなタスクを処理する仕組みです。OpenSearch Serviceもこの分散システムを採用しています。
分散システムのメリットは以下の通りです。
- スケーラビリティ: データ量や処理負荷が増えても、サーバーを追加することでシステム全体の処理能力や容量を容易に増強できます。
- 可用性: 一部のサーバーに障害が発生しても、他のサーバーが処理を引き継ぐことで、サービスを継続できます。
- パフォーマンス: タスクを複数のサーバーに分散させることで、並列処理が可能になり、全体の処理速度が向上します。
一方、分散システムには複雑さが増すというデメリットもあります。複数のサーバー間の通信や、データの整合性の維持などを考慮する必要が出てきます。しかし、Amazon OpenSearch Serviceのようなマネージドサービスを利用することで、こうした複雑な管理の多くをAWSに任せることができます。
2.2 OpenSearch Serviceを構成する要素
OpenSearch Serviceのクラスター(OpenSearch Serviceにおける分散システムの単位)は、いくつかの重要な要素で構成されています。
- ドメイン (Domain): OpenSearch Serviceにおける管理単位です。1つのドメインは、1つ以上のノードで構成されるOpenSearchクラスター、およびそのクラスターに関連する各種設定(インスタンスタイプ、ストレージ、ネットワーク設定、アクセスポリシーなど)の集合体です。OpenSearch Serviceを利用する際は、まずこの「ドメイン」を作成します。
- クラスター (Cluster): 1つ以上のノードが集まって連携し、全体として1つのOpenSearchインスタンスのように機能する論理的なグループです。ドメインを作成すると、その中にOpenSearchクラスターが自動的に構築されます。
- ノード (Node): クラスターを構成する個々のサーバーインスタンスです。OpenSearch Serviceでは、AWSのEC2インスタンスがこれに相当します。ノードにはいくつかの役割があります。
- マスターノード (Master Node): クラスター全体の管理を担当します。ノードの追加や削除、シャードの割り当てなどの管理タスクを行います。データ処理自体は行いません。安定したクラスター運用のため、マスターノードは複数(通常3つ)用意することが推奨されます。
- データノード (Data Node): 実際にデータを保持し、検索や分析リクエストを処理するノードです。データ量や処理負荷に応じて、このデータノードの数を増やしたり、より強力なインスタンスタイプに変更したりすることで、クラスターをスケーリングします。
- 取り込みノード (Ingest Node): データがインデックスされる前に、データに対する事前処理(変換、整形など)を行うためのノードです。データの取り込みパイプラインを構築する際に利用できます。
- インデックス (Index): 関係するドキュメントの集まりです。データベースにおけるテーブルや、本における一冊に例えられます。例えば、ECサイトの商品情報であれば「products」というインデックス、サーバーログであれば「server-logs-YYYY-MM-DD」といったインデックスを作成します。データはインデックス単位で管理され、検索も通常は1つまたは複数のインデックスに対して行われます。
- ドキュメント (Document): OpenSearchに格納されるデータの最小単位です。データベースにおける1行のデータに相当します。データはJSON(JavaScript Object Notation)形式で表現されます。例えば、ECサイトの商品であれば、その商品の名前、価格、説明、色、サイズなどの情報をまとめたJSONオブジェクトが1つのドキュメントになります。ログであれば、1つのログメッセージが1つのドキュメントになります。
- タイプ (Type): (補足:古いElasticsearchの概念。OpenSearchでは基本的に使わないか非推奨) Elasticsearchの古いバージョンでは、1つのインデックス内に複数の「タイプ」を持つことができましたが、インデックス内に複数のタイプを持つことは非推奨となり、OpenSearchでは基本的にインデックスごとに1つのタイプ(_doc という固定名)を使うか、タイプ自体を意識しない設計が推奨されています。初心者の方は、ドキュメントはインデックスに直接格納されると理解しておけば十分です。
- マッピング (Mapping): ドキュメントに含まれる各フィールド(例:商品名、価格、説明)のデータ型や、そのフィールドに対してどのようにインデックスを作成するか(例:全文検索の対象とするか、数値として扱うかなど)を定義したスキーマです。データベースのテーブル定義に似ています。通常、最初のドキュメントを投入する際に自動的に作成されますが、意図した検索や分析を行うためには、事前に明示的にマッピングを定義することが推奨されます。
- シャード (Shard): 1つのインデックスは、複数のシャードに分割することができます。シャードはインデックスされたデータの一部を保持し、それ自体が独立した検索可能な小さなインデックスのようなものです。インデックスをシャードに分割することで、以下のメリットがあります。
- スケーリング: シャードを複数のデータノードに分散配置することで、大きなインデックスを扱えるようになります。
- 並列処理: 検索リクエストがあった場合、複数のシャードに対して並列に処理を実行できるため、検索パフォーマンスが向上します。
インデックス作成時に、プライマリシャードの数を指定します。この数は後から変更できないため、将来のデータ量を見積もって慎重に決定する必要があります。
- レプリカ (Replica): プライマリシャードの複製(コピー)です。レプリカシャードもデータノードに配置されます。レプリカを持つことで、以下のメリットがあります。
- 高可用性: プライマリシャードを持つノードに障害が発生しても、そのレプリカシャードがプライマリに昇格し、サービスを継続できます。
- 検索性能の向上: 検索リクエストはプライマリシャードまたはレプリカシャードのどちらでも処理できるため、レプリカ数を増やすことで並列処理可能なシャードが増え、検索スループットが向上します。
レプリカ数はインデックス作成時や後から変更可能です。通常、各プライマリシャードに対して1つ以上のレプリカを作成することが推奨されます。
まとめると:
OpenSearch Serviceでは、まず「ドメイン」を作成します。ドメイン内には複数の「ノード」からなる「クラスター」が構築されます。データはJSON形式の「ドキュメント」として扱われ、関連するドキュメントをまとめて「インデックス」に格納します。大きなインデックスは「シャード」に分割され、さらに可用性や検索性能向上のために「レプリカ」を作成します。これらの要素が連携することで、大量データの高速な検索・分析が可能になります。
第3章:OpenSearch Serviceを始める前の準備
OpenSearch Serviceを実際に触ってみる前に、いくつかの準備が必要です。
3.1 AWSアカウントの作成
OpenSearch ServiceはAWSのサービスなので、利用するにはAWSアカウントが必要です。まだお持ちでない方は、AWS公式サイトから無料で作成できます。クレジットカード情報の登録が必要ですが、無料利用枠の範囲内で試す分には料金は発生しません。
3.2 IAMユーザーと権限設定
AWSでは、誰が(IAMユーザー)、どのサービスに対して、どのような操作を許可するか(権限)を管理する仕組みとしてIAM(Identity and Access Management)があります。ルートアカウント(AWSアカウント作成時にできる最初のユーザー)は全ての権限を持っていますが、日常的な操作はより限定された権限を持つIAMユーザーで行うことが推奨されています。
OpenSearch Serviceドメインの作成や管理、データへのアクセスには適切なIAM権限が必要です。初心者の方は、まず以下のどちらかの方法で権限を準備しましょう。
- 管理者権限を持つIAMユーザー: 学習目的であれば、AWS管理ポリシーの
AdministratorAccess
を持つIAMユーザーを作成するのが手軽です。ただし、これは全てのAWSサービスに対して完全な権限を持つため、本番運用では推奨されません。 - OpenSearch Service関連の権限を持つIAMユーザー: より安全な方法です。例えば、AWS管理ポリシーの
AmazonOpenSearchServiceFullAccess
と、OpenSearch ServiceにアクセスするためのVPCやEC2関連の読み取り権限などを組み合わせたカスタムポリシーを持つIAMユーザーを作成します。
この記事では、一時的な学習環境として管理者権限を持つIAMユーザーを使用することを想定して進めますが、実際の環境では最小限の権限を与えるようにしてください。
3.3 VPCネットワークの理解と設定
OpenSearch Serviceドメインは、セキュリティのために通常AWSの仮想ネットワークであるVPC (Virtual Private Cloud) 内に配置します。VPCは、AWSクラウド内に自分専用の隔離されたネットワーク空間を作成するサービスです。
OpenSearch ServiceドメインをVPC内に配置することで、インターネットからの直接アクセスを防ぎ、VPC内の許可されたリソース(EC2インスタンスや他のAWSサービスなど)からのみアクセスできるように設定できます。
OpenSearch Serviceドメインを作成する際、以下のネットワーク設定を検討する必要があります。
- VPC内部アクセス (推奨): OpenSearchドメインを特定のVPCとサブネット内に配置します。この場合、VPC内のEC2インスタンスや、VPCに接続されたオンプレミス環境などからのみアクセス可能になります。最も一般的で安全な構成です。
- パブリックアクセス: OpenSearchドメインにインターネットから直接アクセスできるようにします(DNS名がパブリックIPに解決される)。セキュリティリスクが高いため、特別な理由がない限り推奨されません。 特に、認証やアクセスコントロールを適切に設定しないと、誰でもデータにアクセスできてしまう危険性があります。学習目的で一時的に利用する場合や、特定のIPアドレスからのアクセスのみを許可するなどの対策を講じる場合に検討します。
初心者の方が学習目的で利用する場合でも、VPC内部アクセスで設定し、同じVPC内にアクセス元のEC2インスタンス(Kibana/OpenSearch Dashboardsにアクセスするためのブラウザや、データ投入用のプログラムを実行する場所)を立てる構成が推奨されます。
VPC内部アクセスを選択する場合、以下の準備が必要です。
- VPC: 既存のVPCを利用するか、新しくVPCを作成します。
- サブネット: OpenSearchドメインを配置するサブネットを選択します。高可用性のために、異なるアベイラビリティゾーン(AZ)にある複数のサブネットを選択することが推奨されます(少なくとも2つ)。
- セキュリティグループ: OpenSearchドメインへのアクセスを制御するためのセキュリティグループを作成します。OpenSearch Serviceのデフォルトポートは443(HTTPS)です。アクセス元(例:あなたのPCのIPアドレス、VPC内のEC2インスタンスのセキュリティグループID)からの443ポートへのインバウンドトラフィックを許可する設定が必要です。
学習目的で手軽に試したい場合は、既存のデフォルトVPCを利用することも可能ですが、セキュリティグループの設定は必ず行ってください。
第4章:OpenSearch Serviceドメインを作成してみよう!
それでは、実際にOpenSearch Serviceドメインを作成する手順を見ていきましょう。ここでは、AWSマネジメントコンソールを使った操作を中心に説明します。
4.1 コンソールへのサインイン
IAMユーザーまたはルートアカウントでAWSマネジメントコンソールにサインインします。検索バーに「OpenSearch Service」と入力し、候補を選択してOpenSearch Serviceのコンソール画面を開きます。
4.2 ドメイン作成ウィザードの開始
OpenSearch Serviceコンソールの左側メニューで「ドメイン」を選択し、「ドメインの作成」ボタンをクリックします。
4.3 デプロイタイプとバージョン
- デプロイタイプ:
- スタンダード作成: 推奨される設定ウィザード形式です。こちらを選択します。
- カスタム作成: より詳細な設定が可能です。最初はスタンダード作成で十分です。
- バージョン: 利用可能なOpenSearchのバージョンを選択します。特に理由がなければ、最新の推奨バージョンを選択しましょう。Elasticsearchとの互換性が必要な場合は、Elasticsearchのバージョンを選択することも可能ですが、OpenSearchへの移行が進んでいるため、OpenSearchを選択するのが一般的です。
「次へ」をクリックします。
4.4 ドメインの設定
- ドメイン名: ドメインの一意な名前を入力します(例:
my-first-opensearch-domain
)。AWSアカウント内で一意である必要があります。 - テンプレート: 利用シナリオに応じたテンプレートを選択できます(例: 開発/テスト、本番)。最初は「開発/テスト」で良いでしょう。これにより、インスタンスタイプやノード数などのデフォルト設定が選択されます。後からカスタマイズも可能です。
「次へ」をクリックします。
4.5 アーキテクチャの設定
ここで、クラスターのノード構成やインスタンスタイプなどを設定します。
- インスタンスタイプ: 各ノードに利用するEC2インスタンスのタイプを選択します。インスタンスタイプによって、CPU、メモリ、ストレージ容量などが異なります。
- 開発/テスト目的でコストを抑えたい場合は、
t3.small.search
やt3.medium.search
といったインスタンスタイプが利用できます。無料利用枠の対象となるのはt3.small.search
(最大750時間/月) および 10GBのEBSボリュームです。無料利用枠を超過すると課金が発生するので注意してください。 - 用途やデータ量に合わせて、より強力な
m
,c
,r
,i
系のインスタンスタイプを選択します。インスタンス名の末尾に.search
がついているものがOpenSearch Service用です。
- 開発/テスト目的でコストを抑えたい場合は、
- ノード数: データノードの数を指定します。
- 開発/テスト目的であれば、最初は1ノードから始めることも可能ですが、高可用性を考慮する場合や、無料利用枠を最大限に活用したい場合は、異なるAZに2ノードを配置する構成が推奨されます。
- アベイラビリティゾーン (AZ): ドメインを配置するAZの数を指定します。高可用性のためには、最低2AZ、推奨は3AZです。AZ数を増やすと、各AZにノードが分散配置されます。
- マスターノード: マスターノードを利用するかどうか、利用する場合のインスタンスタイプと数を指定します。
- 本番運用では、クラスターの安定稼働のためにマスターノードを利用することが強く推奨されます(通常3ノード)。これにより、データノードに障害が発生してもクラスターの状態管理が維持されます。
- 開発/テスト目的でノード数が少ない場合(例: データノード1〜2台)は、マスターノードを無効にすることも可能ですが、その場合、データノードの1つがマスターの役割も兼ねることになり、負荷が高まったり、そのノードに障害が発生した場合にクラスターの可用性が低下したりします。無料利用枠の
t3.small.search
はマスターノードとしては利用できません。
- ストレージ設定:
- ストレージタイプ: データノードのストレージとしてEBS (Elastic Block Store) ボリュームを利用するのが一般的です。gp2 (汎用SSD) または gp3 (汎用SSD) がデフォルトです。高性能なio1/io2 (プロビジョンドIOPS SSD) も選択できます。
- ボリュームタイプ: EBSのタイプを選択します。
- ボリュームあたりのサイズ: 各データノードに割り当てるEBSボリュームのサイズを指定します。合計ストレージ容量は、
ノード数 × ボリュームあたりのサイズ
となります。無料利用枠は10GBまでです。 - ストレージ暗号化: 保存データを暗号化するかどうかを選択します。セキュリティのために有効化が推奨されます。
- その他設定:
- インデックス状態管理 (ISM): インデックスのライフサイクル管理(指定期間経過後の削除など)を自動化する機能です。有効化が推奨されます。
- UltraWarm/Cold Storage: アクセス頻度の低いデータを低コストなストレージに移動させる機能です。最初は設定不要です。
開発/テスト目的、無料利用枠を意識した構成例:
- インスタンスタイプ:
t3.small.search
- データノード数: 2
- アベイラビリティゾーン: 2-AZ
- マスターノード: 無効
- ストレージタイプ: EBS
- EBSボリュームタイプ:
gp2
またはgp3
- EBSボリュームあたりのサイズ:
5 GiB
(合計10 GiBで無料利用枠内)
この構成であれば、データノードが2台それぞれ5GiBのEBSボリュームを持ち、異なるAZに配置されるため、可用性も考慮しつつ無料利用枠内に収まります(ただし、マスターノードが無効な点と、t3.smallの性能制限には注意)。
「次へ」をクリックします。
4.6 ネットワーク設定
OpenSearchドメインへのアクセス方法を設定します。
- ネットワーク:
- VPCアクセス: 推奨される設定です。ドメインを特定のVPC内に配置します。
- VPC: ドメインを配置するVPCを選択します。
- サブネット: ドメインを配置するサブネットを複数選択します(選択したAZ数に応じて)。
- セキュリティグループ: ドメインへのアクセスを許可するセキュリティグループを1つ以上選択します。事前に作成しておいたセキュリティグループ(アクセス元IPやセキュリティグループIDからの443ポートを許可)を指定します。
- パブリックアクセス: インターネットからアクセス可能にする設定です。非推奨です。 選択する場合は、IPアドレス制限などのアクセスポリシーを必ず設定してください。
- VPCアクセス: 推奨される設定です。ドメインを特定のVPC内に配置します。
ここでは「VPCアクセス」を選択することを強く推奨します。
「次へ」をクリックします。
4.7 アクセスポリシー
OpenSearchドメインへのアクセス権限を設定します。これは非常に重要な設定です。
- ドメインアクセスポリシー: OpenSearchドメインへのアクセスを制御するためのポリシーです。リソースベースのポリシー(S3バケットポリシーのようなもの)で、誰が(プリンシパル)、何に対して(リソース、ここではOpenSearchドメインのARN)、どのような操作(アクション、例:
es:ESHttpGet
,es:ESHttpPut
など)を許可または拒否するかをJSON形式で記述します。- 推奨: 「IAMユーザーとロールの使用を許可」を選択します。これにより、AWSのIAMユーザー/ロールを使って認証・認可を行うことができます。さらに、どのIAMユーザー/ロールからのアクセスを許可するかをポリシーで指定する必要があります。
- IPアドレスによる制限: 特定のIPアドレスからのアクセスのみを許可する場合に利用します(主にパブリックアクセスの場合に利用されますが、VPCアクセスでも併用可能)。
- オープンアクセス: 誰からのアクセスも許可してしまう設定です。絶対に選択しないでください!
- JSONポリシーの編集: より詳細なアクセスポリシーを記述したい場合に利用します。
初心者の方は、まずは「IAMユーザーとロールの使用を許可」を選択し、次に特定のIAMユーザーまたはロールからのアクセスを許可するポリシーを記述するのが良いでしょう。
例:特定のIAMユーザー (arn:aws:iam::アカウントID:user/YourIAMUserName
) からの全てのOpenSearch操作を許可するポリシー
json
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Principal": {
"AWS": "arn:aws:iam::ACCOUNT_ID:user/YourIAMUserName"
},
"Action": "es:*",
"Resource": "arn:aws:es:REGION:ACCOUNT_ID:domain/DOMAIN_NAME/*"
}
]
}
※ ACCOUNT_ID
, REGION
, DOMAIN_NAME
は実際の値に置き換えてください。
このポリシーは、指定したIAMユーザーに対して、このOpenSearchドメインの全ての操作(es:*
)を許可します。実際の運用では、必要な操作のみを許可するように権限を絞るべきです。
- 詳細なアクセスコントロール: OpenSearchドメイン自体へのアクセスだけでなく、インデックスやドキュメントレベルでのきめ細やかなアクセス制御を設定できます。IAMユーザー/ロール、SAML認証、内部ユーザーデータベースなどと連携可能です。最初は設定不要です。
「次へ」をクリックします。
4.8 タグ
リソースの管理を容易にするために、タグ(キーと値のペア)を設定できます。例えば、Project: YourProjectName
, Environment: dev
といったタグをつけることができます。後でリソースの絞り込みやコスト分析に役立ちます。
「次へ」をクリックします。
4.9 確認と作成
設定内容のサマリーが表示されます。内容を確認し、問題がなければ「確認」を入力し、「作成」ボタンをクリックします。
ドメインの作成には通常10分から20分程度かかります。作成中はステータスが「処理中」と表示されます。ステータスが「アクティブ」になれば、ドメインの利用準備完了です。
無料利用枠に関する注意点:
Amazon OpenSearch Serviceの無料利用枠は以下の通りです。
t3.small.search
またはt2.small.search
インスタンスを合計で月あたり750時間まで。- EBS汎用(SSD)ストレージ(gp2 または gp3)を月あたり合計10GiBまで。
これらの制限を超過すると、通常のオンデマンド料金が課金されます。学習目的の場合、特にインスタンス時間とストレージ容量には注意し、不要になったドメインは必ず削除するようにしましょう。
第5章:OpenSearch Dashboards (旧 Kibana) を使ってみよう!
OpenSearch Serviceには、データのインデックス作成、検索、分析、可視化を行うためのGUIツールとして「OpenSearch Dashboards」が付属しています(旧Elasticsearch ServiceではKibanaという名称でした)。
5.1 OpenSearch Dashboardsへのアクセス
OpenSearchドメインが「アクティブ」状態になったら、ドメインの詳細画面を開きます。そこにOpenSearch DashboardsへのエンドポイントURLが表示されています。
- VPCアクセスの場合:
- OpenSearch Dashboardsのエンドポイントは、VPC内部からのみアクセス可能です。
- アクセスするには、OpenSearchドメインと同じVPC内に配置されたEC2インスタンスなどからブラウザを開き、表示されているエンドポイントURLにアクセスする必要があります。
- または、自身のPCからVPC内のEC2インスタンスを経由してアクセスする方法(SSHトンネルなど)もあります。
- アクセス元のセキュリティグループで、EC2インスタンスやPC(またはそのセキュリティグループID)からOpenSearchドメインのセキュリティグループへの443ポートのアクセスが許可されていることを確認してください。
- パブリックアクセスの場合 (非推奨):
- 表示されているエンドポイントURLに、インターネットに接続されたPCから直接アクセスできます。
- ただし、前述の通りセキュリティリスクが非常に高いため、アクセスポリシーによるIPアドレス制限などを必ず行ってください。
アクセスポリシーでIAMユーザー/ロールによる認証を設定した場合、OpenSearch Dashboardsにアクセスする際にIAMユーザー/ロールでの認証が求められます。IAMユーザーの認証情報を入力するか、SigV4プロキシなどを経由してアクセスする必要があります。
5.2 OpenSearch Dashboardsの画面構成
OpenSearch Dashboardsにログインすると、いくつかの主要なメニュー項目が表示されます。
- Discover: データの検索、フィルタリング、探索を行います。生データを一覧表示し、キーワード検索や絞り込みができます。
- Visualize: データを様々なグラフ(棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、マップなど)や表形式で可視化します。
- Dashboard: Visualizeで作成した複数の可視化を組み合わせて、一つの画面に集約したダッシュボードを作成します。システムの状況やデータの傾向をまとめて把握するのに役立ちます。
- Management: インデックス管理、シャード管理、スナップショット設定、ロール管理(詳細なアクセスコントロールを利用している場合)など、OpenSearchクラスターの管理を行います。
まずは「Discover」画面を見てみましょう。
第6章:データの投入(インデックス作成とドキュメント投入)
OpenSearch Serviceでデータを検索・分析するためには、まずデータをOpenSearchドメインに格納する必要があります。この格納処理を「インデックス作成(indexing)」と呼びます。データはドキュメント単位で、特定のインデックスに投入されます。
データの投入方法はいくつかあります。
6.1 OpenSearch DashboardsのDev Tools (Console) を使う
OpenSearch Dashboardsには「Dev Tools」という機能があり、ここでOpenSearchのREST APIを直接実行できます。学習 purposesや簡単なデータの投入・確認に便利です。
Dev Toolsを開き、以下のAPIリクエストを実行してみましょう。
インデックスの作成 (明示的なマッピングなし):
最初にドキュメントを投入する際に、フィールドの型などが自動的に推測されてマッピングが作成されますが、複雑なデータや特定の分析をしたい場合は、事前にマッピングを定義することが推奨されます。ここでは自動作成を前提とします。
ドキュメントの投入:
以下の形式でPUTリクエストを送信します。{index_name}
は任意のインデックス名、{document_id}
は任意のドキュメントIDです。ドキュメントIDを指定しない場合、OpenSearchが自動的に生成します。
json
PUT /{index_name}/_doc/{document_id}
{
"field1": "value1",
"field2": 123,
"field3": ["tag1", "tag2"],
"timestamp": "2023-10-27T10:00:00Z"
}
例:products
インデックスに商品データを投入
json
PUT /products/_doc/SKU001
{
"name": "おしゃれな青いワンピース",
"price": 5800,
"category": "ファッション",
"color": "青",
"description": "涼しげなブルーのおしゃれなワンピースです。",
"tags": ["ワンピース", "夏物", "おしゃれ"],
"stock": 50,
"created_at": "2023-10-01T00:00:00Z"
}
json
PUT /products/_doc/SKU002
{
"name": "可愛い赤いTシャツ",
"price": 2500,
"category": "ファッション",
"color": "赤",
"description": "ハート柄が可愛い、カジュアルなTシャツです。",
"tags": ["Tシャツ", "可愛い", "カジュアル"],
"stock": 120,
"created_at": "2023-09-15T00:00:00Z"
}
Dev Toolsの左ペインにこれらのリクエストを入力し、再生ボタン(またはCtrl/Cmd + Enter)を押すと、右ペインに結果(成功したか、エラーかなど)が表示されます。
6.2 クライアントライブラリを使う
アプリケーションからOpenSearch Serviceを利用する場合、各プログラミング言語用のクライアントライブラリを使うのが一般的です。Java, Python, Ruby, Go, Node.jsなど、様々な言語のライブラリが提供されています。
例えば、Pythonの場合、opensearch-py
というライブラリがあります。
bash
pip install opensearch-py
“`python
from opensearchpy import OpenSearch, RequestsHttpConnection, AWSV4Signer
import boto3
OpenSearchドメインのエンドポイントURL
host = ‘YOUR_OPENSEARCH_DOMAIN_ENDPOINT’
region = ‘YOUR_AWS_REGION’ # e.g., ‘us-east-1’
service = ‘es’
credentials = boto3.Session().get_credentials()
signer = AWSV4Signer(credentials, region, service)
OpenSearchクライアントの初期化
VPCアクセスの場合、アクセス元のEC2インスタンス上で実行するか、
環境変数AWS_ACCESS_KEY_ID, AWS_SECRET_ACCESS_KEYを設定しておく必要があります。
client = OpenSearch(
hosts = [{‘host’: host, ‘port’: 443}],
http_auth = signer, # IAM認証を利用する場合
use_ssl = True,
verify_certs = True,
connection_class = RequestsHttpConnection
)
ドキュメントの定義
document = {
“name”: “おしゃれな青いワンピース”,
“price”: 5800,
“category”: “ファッション”,
“color”: “青”,
“description”: “涼しげなブルーのおしゃれなワンピースです。”,
“tags”: [“ワンピース”, “夏物”, “おしゃれ”],
“stock”: 50,
“created_at”: “2023-10-01T00:00:00Z”
}
index_name = ‘products’
document_id = ‘SKU001’
ドキュメントの投入
response = client.index(
index = index_name,
id = document_id,
body = document,
refresh = True # 投入後すぐに検索可能にする(開発/テスト向け)
)
print(response)
“`
※ エンドポイントURL、リージョン、IAM認証の設定などは、実際の環境に合わせて修正が必要です。
クライアントライブラリを使うことで、プログラムから簡単にデータの投入や検索を行うことができます。
6.3 その他のデータ投入方法
- Amazon Kinesis Data Firehose: ストリーミングデータをリアルタイムにOpenSearch Serviceに投入するためのAWSマネージドサービスです。ログやイベントデータの収集・投入に便利です。
- Logstash: 様々なデータソース(ファイル、データベース、メッセージキューなど)からデータを収集・変換し、OpenSearch Serviceに投入するためのオープンソースツールです。ELK Stackの一部として有名です。
- AWS Lambda: Lambda関数を使って、S3にアップロードされたファイルや他のAWSサービスのイベントをトリガーに、データを加工してOpenSearch Serviceに投入するといったことも可能です。
- バルクAPI: 大量のドキュメントをまとめて効率的に投入するためのAPIです。
最初はDev Toolsやクライアントライブラリを使って、手軽にデータを投入してみるのが良いでしょう。
第7章:データの検索
データがOpenSearch Serviceに格納されたら、いよいよ検索です。
7.1 OpenSearch DashboardsのDiscoverを使う
OpenSearch Dashboardsの「Discover」タブは、最も手軽な検索インターフェースです。
- 左側のメニューから「Discover」を選択します。
- 最初に、検索対象のインデックスパターンを選択します。投入したインデックス(例:
products
)が選択肢に表示されるはずです。表示されない場合は、「Stack Management」→「Index Patterns」で新しいインデックスパターンを作成する必要があります(例: インデックスパターン名にproducts
と入力)。 - インデックスパターンを選択すると、そのインデックスに格納されているドキュメントが一覧表示されます。
- 画面上部にある検索バーに、検索したいキーワードやフレーズを入力してEnterキーを押します。全文検索が実行され、一致するドキュメントが表示されます。例: 「おしゃれなワンピース」と入力。
- 検索バーの右側にある絞り込みボタン(「Add a filter +」)を使うと、特定のフィールドの値で絞り込みができます。例えば、「
price > 5000
」(価格が5000より大きい)、「color: 青
」(色が青)といった条件で絞り込めます。 - 左側のフィールドリストから、表示したいフィールドを選択すると、ドキュメント一覧にそのフィールドが表示されます。
Discoverは、データを探索したり、特定の条件で絞り込んだり、簡単なキーワード検索を行ったりするのに非常に便利なツールです。
7.2 OpenSearch API (Query DSL) を使う
より高度な検索や、アプリケーションからの検索には、OpenSearchのREST APIを利用します。検索APIのボディには、Query DSL (Domain Specific Language) と呼ばれるJSON形式のクエリを記述します。
Dev Toolsで試してみましょう。
全てのドキュメントを検索:
json
GET /products/_search
インデックス内の全てのドキュメントが返されます(デフォルトでは最初の10件)。
キーワード検索 (matchクエリ):
指定したフィールドに対して全文検索を行います。
json
GET /products/_search
{
"query": {
"match": {
"description": "おしゃれなワンピース"
}
}
}
description
フィールドに「おしゃれなワンピース」というキーワードで全文検索を実行します。
特定のフィールドの値で一致検索 (termクエリ):
厳密に特定の単語やフレーズに一致するドキュメントを検索します(全文検索のようには分析されません)。
json
GET /products/_search
{
"query": {
"term": {
"color": "青"
}
}
}
color
フィールドの値が厳密に「青」であるドキュメントを検索します。
複数条件での検索 (boolクエリ):
複数の条件をAND、OR、NOTで組み合わせることができます。
json
GET /products/_search
{
"query": {
"bool": {
"must": [ // AND条件
{ "match": { "description": "おしゃれなワンピース" } },
{ "term": { "color": "青" } }
],
"filter": [ // 結果のスコアリングに影響しないフィルタリング
{ "range": { "price": { "gte": 3000 } } } // 価格が3000以上
]
// "should": [] // OR条件
// "must_not": [] // NOT条件
}
}
}
description
に「おしゃれなワンピース」が含まれ、かつ color
が「青」であり、さらに price
が3000以上のドキュメントを検索します。filter
句に入れると、検索結果の関連性スコア(_score)に影響せず、高速に絞り込みできます。
ソート (sort):
検索結果を指定したフィールドで並べ替えできます。
json
GET /products/_search
{
"query": {
"match": {
"description": "おしゃれなワンピース"
}
},
"sort": [
{ "price": { "order": "asc" } } // 価格の昇順
]
}
「おしゃれなワンピース」で検索した結果を、価格の安い順に並べ替えます。
ハイライト (highlight):
検索キーワードがドキュメント内のどの部分に出現したかをハイライトして表示できます。
json
GET /products/_search
{
"query": {
"match": {
"description": "おしゃれなワンピース"
}
},
"highlight": {
"fields": {
"description": {}
}
}
}
これらはQuery DSLのほんの一部です。OpenSearchは非常に豊富な検索機能とQuery DSLを提供しており、複雑な条件での検索や、集計(Aggregation)による統計情報の取得なども可能です。最初は簡単なクエリから試してみて、徐々に複雑なクエリに挑戦してみましょう。
第8章:データの可視化と分析
OpenSearch Serviceは、OpenSearch Dashboardsを使うことで、格納されたデータを視覚的に分析・表現する機能が非常に強力です。
8.1 OpenSearch DashboardsのVisualizeを使う
「Visualize」タブでは、様々な形式でデータを可視化できます。
- 左側のメニューから「Visualize」を選択し、「Create visualization」をクリックします。
- 可視化タイプを選択します。代表的なものとして以下があります。
- Area/Line/Bar charts: 時系列データやカテゴリ別の数量などを表現するのに適しています。
- Pie chart: 全体に対する各要素の割合を示すのに適しています。
- Data table: 生データや集計結果を表形式で表示します。
- Metric: 単一の数値を大きく表示します(例: エラー件数)。
- Map: 位置情報データを地図上に表示します。
- 可視化したいインデックスパターンを選択します。
- 選択した可視化タイプに応じて、設定画面が表示されます。例えば、棒グラフを選択した場合:
- Metrics (Y-axis): 縦軸で表示したい値を選択します。例えば、ドキュメント数をカウントしたい場合は「Count」を選択します。平均価格を表示したい場合は「Average」を選択し、フィールドとして
price
を指定します。 - Buckets (X-axis, Split Seriesなど): 横軸や、データを分割するためのフィールドを選択します。例えば、色別の商品数を表示したい場合は「Terms」を選択し、フィールドとして
color
を指定します。時系列で件数の推移を見たい場合は「Date Histogram」を選択し、フィールドとしてcreated_at
などのタイムスタンプフィールドを指定します。
- Metrics (Y-axis): 縦軸で表示したい値を選択します。例えば、ドキュメント数をカウントしたい場合は「Count」を選択します。平均価格を表示したい場合は「Average」を選択し、フィールドとして
- 設定が完了したら、右上の「Update」ボタンをクリックすると、可視化が生成されます。
- 右上のフロッピーディスクアイコンをクリックすると、作成した可視化を保存できます。
様々な可視化タイプと設定を試してみて、データに隠された傾向やパターンを発見してみましょう。
8.2 OpenSearch DashboardsのDashboardを使う
「Dashboard」タブでは、Visualizeで作成した複数の可視化を一つの画面に配置し、対話的なダッシュボードを作成できます。
- 左側のメニューから「Dashboard」を選択し、「Create new dashboard」をクリックします。
- 「Add visualization」をクリックし、保存しておいた可視化を選択して追加します。
- 追加した可視化はドラッグ&ドロップで配置やサイズ変更ができます。
- 画面上部の検索バーやフィルタ機能は、ダッシュボード全体に適用されます。例えば、ダッシュボード上で「ファッション」と検索したり、「color: 青」で絞り込んだりすると、ダッシュボード上の全ての可視化がその条件で更新されます。
- 右上のフロッピーディスクアイコンをクリックすると、作成したダッシュボードを保存できます。
ダッシュボードを作成することで、システムの健全性、ビジネスメトリクス、ユーザー行動などを一目で把握できるようになります。特にログ分析においては、エラー件数、リクエスト数、応答時間などをまとめたダッシュボードを作成することが一般的です。
第9章:OpenSearch Serviceの運用と管理
OpenSearch Serviceはマネージドサービスですが、利用者側でもいくつかの運用管理タスクを行う必要があります。
9.1 スケーリング
データ量やアクセス負荷が増加した場合、クラスターの処理能力を増強する必要があります。OpenSearch Serviceでは、ドメインの設定を変更することで、簡単にスケールアップ・アウトできます。
- スケールアウト: データノードの数を増やします。これにより、データを保持できる総容量が増加し、検索リクエストを並列処理できるノードが増えるため、スループットが向上します。
- スケールアップ: 各ノードのインスタンスタイプを、より高性能なもの(CPU、メモリ、ストレージIOPSが多いもの)に変更します。これにより、個々のノードで処理できる能力が増加し、複雑なクエリの実行速度などが向上する場合があります。
どちらのスケール操作も、通常は稼働中のクラスターに対してオンラインで実行できます。ただし、設定変更には時間がかかり、一時的にクラスターのパフォーマンスに影響が出る可能性もあります。
9.2 モニタリング
OpenSearch Serviceドメインの稼働状況やパフォーマンスを把握することは重要です。OpenSearch ServiceはAWSのモニタリングサービスであるCloudWatchと連携しています。
CloudWatchでは、OpenSearchドメインに関する様々なメトリクス(CPU使用率、JVMメモリ使用率、ディスク使用率、インデックス済みドキュメント数、検索リクエスト数、エラー件数など)をグラフで確認できます。これらのメトリクスを監視し、異常があればアラームを設定することで、問題の早期発見につなげることができます。
OpenSearch Dashboardsの「Monitoring」タブでも、クラスターの主要なメトリクスを確認できます。
9.3 バックアップとリストア (Snapshot)
OpenSearch Serviceでは、クラスターに格納されているデータのバックアップをS3バケットに取得する機能(Snapshot)が提供されています。万が一、クラスターに障害が発生したり、誤ってデータを削除してしまったりした場合に、Snapshotからデータを復旧(リストア)できます。
- 手動Snapshot: 任意のタイミングでSnapshotを取得できます。
- 自動Snapshot: ドメイン作成時に自動Snapshotを有効にすると、毎日特定の時間帯に自動的にSnapshotが取得されます。保持期間も設定できます。
本番運用においては、自動Snapshotを有効にしておくことが強く推奨されます。リストアが必要になった場合は、取得済みのSnapshotを選択して、別のOpenSearchドメイン(または元のドメインが復旧した場合)にデータを復元します。
9.4 セキュリティ
セキュリティはOpenSearch Serviceを利用する上で非常に重要な要素です。OpenSearch Serviceでは以下のセキュリティ機能が利用できます。
- ネットワークアクセス制御: 第4章で説明した通り、VPC内部アクセスを選択し、セキュリティグループでアクセス元を制限することが最も基本的なセキュリティ対策です。
- アクセスポリシー: 第4章で説明したドメインアクセスポリシーにより、IAMユーザー/ロールやIPアドレスによるアクセス制御を行います。
- 詳細なアクセスコントロール (Fine-grained access control): OpenSearch Dashboardsへのログイン認証(ユーザー名/パスワード、SAML認証など)や、インデックス・ドキュメントレベルでのきめ細やかなアクセス権限設定が可能です。これにより、「このユーザーは特定のインデックスだけ検索できる」「このユーザーは特定のフィールドの値しか見られない」といった制御が実現できます。本番運用では詳細なアクセスコントロールの設定が推奨されます。
- 保存データの暗号化: EBSボリューム上のデータをAWS KMSを使って暗号化できます。
- 転送中の暗号化: ノード間通信やクライアントからのアクセスをHTTPSで暗号化できます。
これらのセキュリティ機能を適切に設定し、データの保護と不正アクセスの防止に努める必要があります。
9.5 インデックスの管理
OpenSearch Serviceでは、インデックスの状態を適切に管理することが重要です。
- インデックスの作成/削除: データ投入前にインデックスを作成したり、不要になった古いインデックスを削除したりします。
- マッピングの管理: データの構造(フィールドのデータ型、インデックス方法など)を定義するマッピングは、検索や分析の質に大きく影響します。必要に応じてマッピングを定義・更新します(ただし、既存フィールドのマッピング変更には制約があります)。
- シャード/レプリカ数の調整: インデックス作成時に設定したシャード数やレプリカ数は、後から変更が難しい場合があります(特にプライマリシャード数)。データ量やアクセスパターンを考慮して適切に設定することが重要です。レプリカ数はインデックス設定APIで後から変更可能です。
- インデックス状態管理 (ISM): 時間経過やサイズに基づいてインデックスのライフサイクルを管理する機能です。例えば、古いログインデックスを自動的に削除するといったことができます。
第10章:OpenSearch Serviceの料金体系
OpenSearch Serviceの料金は、主に以下の要素によって決まります。
- インスタンス料金: OpenSearchドメインを構成するノード(データノード、マスターノード)のインスタンスタイプと稼働時間に対して課金されます。高性能なインスタンスタイプほど時間あたりの料金は高くなります。
- EBSボリューム料金: データノードに割り当てたEBSストレージの容量と種類(gp2, gp3, io1/io2など)に対して課金されます。プロビジョンドIOPS (io1/io2) は、容量に加えてプロビジョニングしたIOPSに対しても課金されます。
- Snapshotストレージ料金: 自動Snapshotや手動SnapshotでS3に保存されるデータ容量に対して課金されます。
- データ転送料金: OpenSearchドメインとインターネットや他のAWSサービス間でのデータ転送に対して課金される場合があります(AWSの一般的なデータ転送料金ポリシーに準じます)。VPC内部の同じAZ内の通信は無料、AZを跨ぐ通信やVPCピアリング/Transit Gateway経由の通信は料金が発生します。
コスト最適化のヒント:
- 適切なインスタンスタイプと数を選択: データ量や負荷に対して適切なスペックのインスタンスを選び、必要以上に強力なインスタンスを使わない。最初は小さく始めて、必要に応じてスケールアップ/アウトする。
- シャード数を適切に設計: シャードが多すぎると管理オーバーヘッドが増え、少なすぎるとスケーリングや並列処理のメリットが得られにくくなります。データ量とノード数、将来的な増加を考慮して適切なシャード数を設計します。
- レプリカ数を適切に設定: 可用性と検索スループット向上のためにレプリカは重要ですが、レプリカ数を増やせば増やすほど必要なストレージ容量や処理リソースが増加し、コストも増加します。ビジネス要件に応じて適切なレプリカ数を検討します(通常1つあれば可用性は満たせることが多いですが、検索スループットがボトルネックになる場合は増やすことを検討します)。
- ストレージタイプを最適化: アクセス頻度の低いデータには、UltraWarmやCold Storageといった低コストなストレージ階層を利用する。
- 不要なインデックスを削除: 古くなったログなど、検索・分析の必要がなくなったインデックスは定期的に削除する。インデックス状態管理(ISM)を活用する。
- 開発/テスト環境は最小構成で: 本番環境とは異なる、コストを抑えたインスタンスタイプやノード数で構築し、不要になったらドメインを削除する。無料利用枠を有効活用する。
AWS料金シミュレーターやOpenSearch Serviceの料金ページで、見積もりを確認することをお勧めします。
第11章:よくある課題とトラブルシューティング
初心者の方がOpenSearch Serviceを利用する上で、遭遇しやすい課題や、その原因、対処法をいくつか紹介します。
- クラスターの状態がYellowまたはRedになる:
- Yellow: プライマリシャードは全て割り当てられているが、一部のレプリカシャードが割り当てられていない状態です。通常、ノードの再起動や追加など、クラスターの状態が一時的に変化している場合に発生しやすいです。時間が経つと自然に復旧することもあります。ノード数に対して必要なレプリカシャードを配置できるリソース(ノード)が不足している可能性もあります。
- Red: 一つ以上のプライマリシャードが割り当てられていない状態です。これはデータの一部が失われたり、検索できなくなったりする深刻な状態です。通常、ノード障害やディスク障害など、シャードを持つノードに問題が発生した場合に発生します。原因調査と復旧(ノードの置換、スナップショットからのリストアなど)が必要です。
- 対処法: CloudWatchのメトリクス(クラスターのヘルス、ノードの状態、ディスク使用率など)や、OpenSearch DashboardsのCluster Health API (
GET /_cluster/health
) で詳細な状態を確認します。ノードの再起動や、リソース不足の場合はノードの追加・スケールアップを検討します。ディスク容量の枯渇が原因の場合は、不要なインデックスの削除やディスク容量の拡張が必要です。
- OutOfMemoryError (OOM) が発生する:
- OpenSearchのJVMヒープメモリが不足している場合に発生します。検索クエリが複雑すぎたり、大量のデータを一度に集計しようとしたり、大量のドキュメントを取り込もうとしたりすると発生しやすいです。
- 対処法: CloudWatchのJVMメモリ関連メトリクス(Heap Usageなど)を確認します。よりメモリ容量の多いインスタンスタイプにスケールアップするか、メモリ効率の良いクエリに修正する、データの投入レートを調整するといった対応が必要です。
- 検索が遅い:
- 様々な原因が考えられます。クラスターのリソース不足(CPU、メモリ、ディスクIOPS)、シャード数の不適切さ、クエリの効率が悪さ、大量のドキュメントを返すクエリなどが原因として考えられます。
- 対処法: CloudWatchメトリクスでCPU使用率、JVMメモリ、ディスクIOPSなどを確認し、リソースに余裕があるか確認します。必要に応じてスケールアップ/アウトします。OpenSearch DashboardsのPerformance Analyzerなどのツールを使って、遅いクエリを特定し、Query DSLを最適化します。マッピングが適切か確認します。
- ディスク容量が枯渇する:
- データ投入量に対してストレージ容量が不足している場合に発生します。クラスターがRedになる原因の一つでもあります。
- 対処法: CloudWatchのDisk Usageメトリクスを確認します。不要になった古いインデックスを削除します。インデックス状態管理(ISM)を設定して自動削除を有効化します。ストレージ容量を拡張します。低頻度アクセスデータはUltraWarm/Cold Storageに移行します。
- アクセスポリシーの設定ミスでアクセスできない:
- IAMユーザー/ロールやIPアドレスがアクセスポリシーで正しく許可されていない場合に発生します。
- 対処法: OpenSearchドメインのアクセスポリシー設定を確認し、アクセス元のプリンシパル(IAMユーザー/ロールARN)やIPアドレス、許可するアクション(es:* など)が正しく記述されているか確認します。VPCアクセスの場合、セキュリティグループの設定も確認します。
これらの課題は、OpenSearch Serviceの基本的な概念(シャード、レプリカ、リソース)や、CloudWatchによるモニタリングを理解していれば、原因の特定と対処がしやすくなります。
第12章:OpenSearch Serviceの応用例(ユースケース)
OpenSearch Serviceは非常に柔軟なサービスであり、様々な分野で活用されています。ここではいくつかの具体的な応用例を紹介します。
- ECサイトやコンテンツサイトの検索:
- 商品名、説明、カテゴリ、ブランド、レビューなどの情報をOpenSearchにインデックス化し、ユーザーが入力したキーワードに基づいて関連性の高い商品を高速に検索・表示します。「あいまい検索」「サジェスト機能」「ファセット検索(絞り込み検索)」なども実現できます。
- ログ管理・分析基盤:
- サーバーログ、アプリケーションログ、OSログ、ネットワークログなどを収集し、OpenSearch Serviceに集約します。OpenSearch Dashboardsを使って、エラー率、リクエスト数、応答時間、特定のイベントの発生状況などをリアルタイムに近い形で監視・分析します。トラブルシューティングや性能監視に不可欠な基盤となります。
- セキュリティ情報・イベント管理 (SIEM):
- ファイアウォール、IDS/IPS、認証システム、エンドポイントなど、様々なセキュリティ関連デバイスやシステムから出力されるログやイベント情報を収集し、OpenSearch Serviceで一元管理・分析します。不審なアクセスパターン、マルウェア感染の兆候、認証失敗の多発などを検知し、セキュリティインシデント対応に役立てます。
- アプリケーション性能監視 (APM):
- アプリケーションのトレース情報、メトリクス、ログなどを収集し、OpenSearch Serviceで分析します。特定のAPI呼び出しの処理時間、データベースクエリの性能、エラーの発生箇所などを特定し、アプリケーションのボトルネック解消や性能改善に役立てます。
- ビジネスインテリジェンス (BI) / リアルタイム分析:
- 顧客の行動データ(クリックストリーム、購入履歴など)、センサーデータ、IoTデバイスからのデータなどをリアルタイムに近い形で取り込み、OpenSearch Serviceで分析します。顧客の傾向分析、製品の利用状況、設備の稼働状況などをダッシュボードで可視化し、迅速な意思決定に繋げます。
これらの応用例からもわかるように、OpenSearch Serviceは単なる検索エンジンではなく、大量のデータを収集、保管、検索、分析、可視化するための一連の処理を強力にサポートするプラットフォームとしての側面が強いサービスです。
第13章:次のステップ:さらに学ぶために
この記事では、OpenSearch Serviceの基本的な概念から、ドメイン作成、データの投入、検索、分析、運用管理の触りまでを網羅的に解説しました。これはOpenSearch Serviceの機能のほんの一部に過ぎません。さらに深く学びたい場合は、以下のトピックに進むことをお勧めします。
- Query DSLの詳細: より複雑な検索条件、集計(Aggregation)機能、スコアリングのカスタマイズなど。
- マッピングの詳細: フィールドタイプ、アナライザー、ダイナミックマッピングの設定方法。
- インデックス設定の詳細: シャード分割の戦略、レプリカ設定、Refresh/Flush/Mergeといった内部動作。
- データ投入パイプライン: Logstash, Fluentd, Kinesis Data Firehose, Lambdaなどを使った効率的なデータ投入方法。
- 詳細なアクセスコントロール: OpenSearch Dashboardsのユーザー認証、ロールと権限の設定方法。
- パフォーマンスチューニング: クラスター、インデックス、クエリレベルでのパフォーマンス最適化手法。
- アラート機能: OpenSearch Dashboardsで設定できるアラート機能(特定の条件を満たした場合に通知を送るなど)。
- 他のAWSサービスとの連携: Kinesis, Lambda, S3, CloudWatchなど、他のAWSサービスと連携したソリューションの構築。
- OpenSearchの特徴的な機能: Trace Analytics, Event Analytics, Anomaly Detectionなど、OpenSearch独自の機能。
これらのトピックについては、AWSの公式ドキュメントやOpenSearchオープンソースプロジェクトのドキュメントが最も信頼できる情報源となります。また、AWSが提供するトレーニングや認定資格も、体系的に学ぶ上で役立つでしょう。
そして何より重要なのは、実際に手を動かしてみることです。この記事で紹介したドメイン作成手順を参考に、まずは小さなドメインを作成し、サンプルデータを投入して検索・可視化を試してみてください。試行錯誤を通じて、OpenSearch Serviceの理解は深まっていきます。
まとめ:OpenSearch Serviceとの旅を始めよう
Amazon OpenSearch Service(旧Elasticsearch Service)は、大量のデータを高速に検索・分析・可視化するための強力なマネージドサービスです。その基盤となるOpenSearchは、分散システムとして高いスケーラビリティと可用性、そしてリアルタイム処理能力を備えています。
この記事では、初心者向けにOpenSearch Serviceの基本概念から、ドメイン作成、データ投入、検索、可視化、運用管理、料金、トラブルシューティングまで、幅広いトピックを網羅的に解説しました。
- OpenSearch Serviceは、全文検索やログ分析といった用途で、膨大なデータから価値を引き出すためのサービスであること。
- ドメイン、ノード、インデックス、シャード、レプリカといった基本的なアーキテクチャ要素の役割。
- AWSコンソールを使ったドメイン作成の具体的な手順と各種設定の意味。
- OpenSearch Dashboardsを使ったデータの探索、検索、可視化、ダッシュボード作成方法。
- OpenSearch APIやクライアントライブラリを使ったデータ投入・検索の基本。
- スケーリング、モニタリング、バックアップ、セキュリティといった運用管理の重要性。
- インスタンス、ストレージ、データ転送が主な課金要素であること。
- 一般的な課題と対処法。
OpenSearch Serviceは非常に多機能なサービスですが、まずはこの記事を参考に、小さな一歩を踏み出してみてください。無料利用枠を活用すれば、コストを抑えながら学習を始めることができます。
データの海に眠る宝を探し出すための強力なツール、Amazon OpenSearch Service。ぜひあなたのプロジェクトや学習に役立ててください。あなたのOpenSearch Serviceとの旅が、実りあるものになることを願っています。