PyCharm Community Edition 無料版ダウンロード


PyCharm Community Edition 無料版ダウンロード&インストール徹底ガイド:初心者でも迷わない詳細解説

はじめに:Python開発とPyCharmの力

プログラミング学習を始めるにあたり、特にPythonを選ぶ方が増えています。Pythonは、そのシンプルで読みやすい構文から、初心者にとって非常に学びやすい言語です。データ分析、機械学習、Web開発、自動化スクリプト作成など、幅広い分野で活用されており、その人気は高まる一方です。

しかし、Pythonコードを書くだけならテキストエディタでも可能ですが、より効率的で快適な開発を行うためには、「統合開発環境(IDE)」の利用が不可欠です。IDEは、コードの記述、デバッグ、テスト、バージョン管理など、開発に必要なツールを一つにまとめたソフトウェアです。

数あるPython向けIDEの中でも、特に高い評価を受けているのがJetBrains社が開発する「PyCharm」です。PyCharmは、その強力なコード補完、リアルタイムエラーチェック、優れたデバッグ機能、各種開発ツールとの連携などにより、開発効率を飛躍的に向上させます。

PyCharmには、有償の「Professional Edition」と無償の「Community Edition」があります。Professional EditionはWeb開発フレームワーク、データベースツール、科学技術計算ライブラリなど、より高度な機能や特定の開発分野に特化した機能を提供しますが、個人学習や多くのスクリプト開発、基本的なアプリケーション開発であれば、無償で利用できるCommunity Editionで十分です。Community Editionはオープンソースであり、Pythonのコア開発に必要な機能が網羅されています。

この記事では、そのPyCharm Community Edition(以下、PyCharm CE)を、これからPython開発を始めたい方やIDEの導入を検討している方に向けて、ダウンロードからインストール、そして最初の起動と基本的な設定までを、どこよりも詳しく、画像を見るような感覚で理解できるよう、ステップバイステップで解説します。約5000語にわたる詳細な説明を通じて、初心者の方が迷うことなくPyCharm CEを使い始められるようにすることを目的としています。

さあ、PyCharm CEをあなたのPCに導入し、快適なPython開発ライフを始めましょう!

1章:PyCharm CEをダウンロードする前の準備

PyCharm CEのダウンロードとインストールを始める前に、いくつか確認しておきたい点があります。これらの準備をしっかり行うことで、スムーズな導入が可能になります。

1.1 システム要件の確認

PyCharm CEを快適に動作させるためには、お使いのコンピューターが特定のシステム要件を満たしている必要があります。PyCharmは多くのOSで動作しますが、OSの種類やバージョン、必要なハードウェアリソースが異なります。

一般的に、以下の要件を満たす必要があります。

  • オペレーティングシステム (OS):
    • Windows: Windows 10 以降の64ビット版 (Windows 7, 8/8.1はサポート終了)
    • macOS: macOS 10.15 以降
    • Linux: 多くの主要な64ビット版Linuxディストリビューション (GNOME, KDE, Unityなどのデスクトップ環境が必要)。GLIBC 2.27以降。
    • 注意点: 32ビットOSはサポートされていません。また、古いOSバージョンではインストールや正常な動作が保証されない場合があります。最新のOSアップデートを適用しておくことを推奨します。
  • RAM (メモリ): 8GB以上のRAMを推奨します。大規模なプロジェクトや複数のアプリケーションを同時に実行する場合は16GB以上あるとより快適です。最低限の動作には4GBでも可能ですが、処理が遅くなる可能性があります。
  • ストレージ (HDD/SSD): インストールには最低数GBの空き容量が必要です。プロジェクトファイルや仮想環境、その他のツールなども保存するため、SSDドライブに数十GB以上の十分な空き容量があることが望ましいです。SSDを使用することで、IDEの起動やプロジェクトの読み込み、コード補完の応答速度などが劇的に向上します。
  • CPU: 最新のマルチコアプロセッサを推奨します。Intel Core i5以上の世代、またはそれに相当するAMDプロセッサが目安となります。
  • ディスプレイ解像度: 1024×768ピクセル以上の解像度が必要です。より快適な開発には1920×1080 (Full HD) 以上の解像度を持つディスプレイが推奨されます。
  • インターネット接続: ダウンロード時だけでなく、初期設定、プラグインのインストール、アップデートの確認などのためにインターネット接続が必要です。

お使いのPCのスペックがこれらの要件を満たしているか、事前に確認しておきましょう。特にメモリとストレージ容量、そして64ビットOSであるかは重要な確認ポイントです。

1.2 Pythonのインストール

PyCharmはPythonコードを記述し、実行するための「IDE」です。しかし、PyCharm自体にはPythonインタプリタ(Pythonコードを実行するためのプログラム)は含まれていません。PyCharmを使用するには、別途Pythonインタプリタがシステムにインストールされている必要があります。

ほとんどの場合、PyCharmをインストールする前にPythonをインストールしておくことを強く推奨します。PyCharmの初期設定時に、自動的にシステム上のPythonインタプリタを検出してくれるため、設定がスムーズになります。

まだPythonをインストールしていない場合は、公式ウェブサイト (https://www.python.org/) から最新版のPythonをダウンロードし、インストールしてください。インストールの際は、特にWindows版の場合、「Add Python to PATH」(Pythonを環境変数PATHに追加する)というオプションにチェックを入れるのを忘れないようにしましょう。これにより、コマンドプロンプトやターミナルから python コマンドを実行できるようになり、PyCharmからもインタプリタを簡単に認識させることができます。

Pythonインストールの簡単な確認方法:
コマンドプロンプト(Windows)またはターミナル(macOS/Linux)を開き、以下のコマンドを入力してEnterキーを押してください。

bash
python --version

または

bash
python3 --version

Pythonのバージョン情報が表示されれば、正しくインストールされています。もしエラーが表示される場合は、Pythonのインストールができていないか、環境変数PATHが正しく設定されていない可能性があります。PyCharmのインストールを進める前に、Pythonのインストールを完了させておくことをお勧めします。

1.3 ネットワーク接続

PyCharm CEのダウンロードファイルは、通常数百MBから1GB程度のサイズがあります。安定したインターネット接続が必要です。Wi-Fiを使用する場合は、可能であれば高速で安定したネットワークに接続してください。ダウンロード中に接続が切断されると、ダウンロードが中断され、最初からやり直す必要がある場合があります。

また、企業のネットワークなど、ファイアウォールやプロキシ設定が厳格な環境では、JetBrainsのサーバーへのアクセスが制限されている場合があります。その場合は、ネットワーク管理者に相談するか、制限のないネットワーク環境で行う必要があります。

1.4 管理者権限の準備

PyCharmをシステム全体にインストールする場合(特にWindowsやLinuxの一部インストール方法)、コンピューターへのソフトウェアインストールを許可する管理者権限が必要になる場合があります。インストールを実行するユーザーアカウントに管理者権限が付与されているか確認しておきましょう。Windowsでは、インストーラーを実行する際に右クリックして「管理者として実行」を選択する必要がある場合があります。

これらの準備が整ったら、いよいよPyCharm Community Editionのダウンロードに進むことができます。

2章:PyCharm Community Editionのダウンロード手順

PyCharm CEのダウンロードは、JetBrains社の公式サイトから行います。他のサイトからダウンロードすることは、セキュリティのリスクを高める可能性があるため絶対に避けてください。

2.1 JetBrains公式サイトへのアクセス

まずはウェブブラウザを開き、JetBrains社の公式サイトにアクセスします。

公式サイトのURLは以下の通りです。
https://www.jetbrains.com/

または、直接PyCharmの製品ページへアクセスすることも可能です。
https://www.jetbrains.com/pycharm/

検索エンジンで「JetBrains PyCharm」と検索してアクセスすることもできますが、必ず公式ドメイン(jetbrains.com)であることを確認してください。

2.2 PyCharm製品ページの確認

公式サイトにアクセスすると、JetBrainsが提供する様々な製品が表示される場合があります。その中からPyCharmを探してクリックするか、メニューから「Developer Tools」または「Products」などを辿ってPyCharmを選択します。

PyCharmの製品ページに移動すると、PyCharmの紹介、機能説明、Professional EditionとCommunity Editionに関する情報などが掲載されています。ページ全体を見渡して、PyCharmがどのようなソフトウェアであるかを理解しておくのも良いでしょう。

2.3 ダウンロードセクションへの移動

製品ページ内に、通常目立つ場所に「Download」ボタンや「ダウンロード」というリンクがあります。このボタンをクリックして、ダウンロードページへ移動します。

ダウンロードページでは、通常、Professional EditionとCommunity Editionのどちらをダウンロードするか選択するエリアが表示されます。

2.4 「Community」版の選択

ダウンロードページを開くと、多くの場合、Professional Editionがデフォルトで選択されているか、あるいは大きく表示されています。PyCharm CEをダウンロードする場合は、必ず「Community Edition」または「無料版」と記載されている方を選択してください。

Professional Editionのダウンロードボタンの近くに、「Community Edition」または「無料ダウンロード」といったリンクやボタンがあります。これを見つけてクリックします。

ここで誤ってProfessional Editionをダウンロードしてしまっても、インストール時にライセンスを求められるため無料では使用できません。必ずCommunity Editionを選択しましょう。

2.5 オペレーティングシステムの選択

ダウンロードページでは、お使いのオペレーティングシステム(OS)を選択する必要があります。通常、ページ上部にWindows、macOS、Linuxのタブやアイコンが表示されています。

お使いのOSに合わせて、該当するタブをクリックして選択してください。ページの内容が選択したOS向けのダウンロードオプションに切り替わります。

  • Windows: .exe という拡張子のインストーラーが提供されます。通常は64ビット版のみです。
  • macOS: .dmg という拡張子のディスクイメージファイルが提供されます。Intelチップ搭載Mac用(Intel または x64)とAppleシリコン搭載Mac用(Apple Silicon または ARM64)がありますので、お使いのMacの種類に合わせて選択してください。
  • Linux: いくつかのオプションが提供される場合があります。
    • .tar.gz 形式のアーカイブファイル(手動インストール用)
    • Snapパッケージでのインストール方法に関する案内
    • JetBrains Toolbox Appでのインストール方法に関する案内
    • (まれに) ディストリビューションごとのパッケージ形式 (.deb, .rpm など) も紹介されることがありますが、公式が推奨するのは.tar.gz かSnap、またはToolbox Appであることが多いです。初心者にはToolbox AppかSnapが比較的簡単です。この記事では主に.tar.gzとToolbox App/Snapについて触れます。

お使いのOSと、特にmacOSの場合はチップの種類(IntelかApple Siliconか)を間違えないように選択してください。

2.6 ダウンロードボタンのクリック

適切なOSとCommunity Editionが選択されていることを確認したら、ダウンロードボタンをクリックします。

ボタンのテキストは「Download (.exe)」、「Download (.dmg)」、「Download (.tar.gz)」など、選択したOSや形式によって異なります。

クリックすると、ダウンロードが開始されます。ブラウザによっては、ダウンロードの開始を確認するダイアログが表示される場合があります。「保存」や「ダウンロード」を選択して、ファイルの保存場所を指定してください。通常は「ダウンロード」フォルダに保存されます。

2.7 ダウンロード中の注意点

ダウンロードファイルは数百MBと大きいため、完了するまでに数分から数十分かかる場合があります。ダウンロード中は、インターネット接続を切断したり、PCの電源を切ったりしないように注意してください。

ブラウザのダウンロードマネージャーやダウンロードバーで、進行状況を確認できます。ダウンロードが完了したことを確認してから、次のステップ(インストール)に進みましょう。

もしダウンロードが途中で中断されたり、ファイルサイズがおかしい場合は、ダウンロードしたファイルを一度削除し、再度ダウンロードを試みてください。

これでPyCharm Community Editionのダウンロードは完了です。指定した保存場所にダウンロードファイルが格納されているはずです。

3章:PyCharm Community Editionのインストール手順

ダウンロードしたファイルを元に、PyCharm CEをコンピューターにインストールします。OSによって手順が異なるため、お使いのOSに合わせて該当するセクションを参照してください。

3.1 Windows版のインストール

Windows版のインストールは、ダウンロードした.exeインストーラーを実行してウィザード形式で進めます。

  1. インストーラーの実行:
    ダウンロードしたPyCharm CEの.exeファイルをダブルクリックして実行します。
    ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログが表示されたら、「はい」をクリックしてインストーラーの実行を許可してください。

  2. セットアップウィザードの開始:
    「Welcome to PyCharm Community Edition Setup」というウィンドウが表示されます。「Next」ボタンをクリックして次に進みます。

  3. インストール場所の選択:
    「Choose Install Location」画面が表示されます。PyCharmをインストールするフォルダを指定します。デフォルトでは C:\Program Files\JetBrains\PyCharm Community Edition <バージョン番号> のようなパスが提案されます。通常はこのデフォルトの場所で問題ありません。
    特別な理由がない限り、インストールパスは変更しないことを推奨します。十分なディスク容量があるか確認してください。
    インストール場所を決定したら、「Next」をクリックします。

  4. インストールオプションの選択:
    「Installation Options」画面が表示されます。ここでいくつかの便利なオプションを設定できます。推奨設定を含めて、それぞれのオプションについて詳しく説明します。

    • Create Desktop Shortcut: デスクトップにPyCharmのショートカットアイコンを作成するかどうか。
      • 64-bit launcher: チェックを入れることを推奨します。デスクトップから簡単にPyCharmを起動できるようになります。
    • Update PATH Variable (restart needed): 環境変数PATHにPyCharmの実行ファイルパスを追加するかどうか。これにより、コマンドプロンプトやPowerShellから pycharm コマンドを実行してPyCharmを起動したり、現在のディレクトリでプロジェクトを開いたりできるようになります。
      • Add Launchers dir to the PATH: チェックを入れることを推奨します。特にコマンドライン操作をよく行う場合に便利です。注意: この設定はPCの再起動後に有効になります。
    • Update Context Menu (restart needed): Windowsエクスプローラーの右クリックメニューに「Open Folder as Project」という項目を追加するかどうか。これにより、フォルダを右クリックして直接PyCharmでプロジェクトとして開けるようになります。
      • Add 'Open Folder as Project': チェックを入れることを推奨します。非常に便利な機能です。注意: この設定もPCの再起動後に有効になります。
    • Create Associations: .py 拡張子のファイルをPyCharmに関連付けるかどうか。これにより、.pyファイルをダブルクリックしたときにPyCharmで開かれるようになります。
      • .py: チェックを入れることを推奨します。Pythonファイルを直接編集する際に便利です。

    これらのオプションは、インストール後でも手動で設定できるものもありますが、インストール時にまとめて設定しておくと楽です。特にデスクトップショートカット、「Open Folder as Project」、.pyファイルの関連付けはチェックを入れておくことを強く推奨します。PATH変数への追加は、コマンドラインからの操作をどれだけ行うかによりますが、将来的に便利になる可能性があるので入れておいても良いでしょう。

    必要なオプションにチェックを入れたら、「Next」をクリックします。

  5. スタートメニューフォルダの選択:
    「Choose Start Menu Folder」画面が表示されます。スタートメニューに作成されるPyCharmのショートカットが格納されるフォルダ名を指定します。デフォルトの「JetBrains」で問題ありません。
    「Install」をクリックします。

  6. インストール開始:
    インストールが開始され、進捗バーが表示されます。ファイルのコピーや設定が行われます。これには数分かかります。

  7. インストール完了:
    インストールが完了すると、「Completing PyCharm Community Edition Setup」という画面が表示されます。
    Run PyCharm Community Edition にチェックを入れると、セットアップウィザードを終了した直後にPyCharmが起動します。すぐに起動したい場合はチェックを入れておきます。
    「Finish」ボタンをクリックしてウィザードを終了します。

インストールオプションで「Update PATH Variable」や「Update Context Menu」にチェックを入れた場合は、変更を有効にするためにPCの再起動が推奨されます。

3.2 macOS版のインストール

macOS版のインストールは、ダウンロードした.dmgファイルを開き、アプリケーションフォルダにドラッグ&ドロップするのが一般的な方法です。

  1. DMGファイルの開き方:
    ダウンロードしたPyCharm CEの.dmgファイルをダブルクリックして開きます。
    ディスクイメージがマウントされ、「PyCharm CE」という名前の仮想ディスクがFinderのサイドバーに表示されます。同時に、そのディスクの中身を表示するウィンドウが開きます。

  2. アプリケーションフォルダへのドラッグ&ドロップ:
    開いたウィンドウには、PyCharm CEのアプリケーションアイコンと、「Applications」フォルダへのショートカットアイコンが表示されています。
    PyCharm CEのアプリケーションアイコンを、「Applications」フォルダのショートカットアイコンの上にドラッグ&ドロップします。
    これにより、PyCharm CEアプリケーションが「アプリケーション」フォルダにコピーされます。コピーには数分かかる場合があります。

  3. 仮想ディスクの取り出し:
    コピーが完了したら、マウントされた仮想ディスク「PyCharm CE」は不要になります。Finderのサイドバーから、ディスク名の横にある「取り出し」ボタン(上向きの矢印アイコン)をクリックして、仮想ディスクを取り出します。または、デスクトップに表示されているディスクアイコンをゴミ箱アイコンにドラッグしても取り出せます(ファイルが削除されるわけではありません)。

  4. セキュリティ設定の解除 (初回起動時):
    macOSのセキュリティ機能(Gatekeeper)により、ダウンロードしたアプリケーションを初めて起動する際に警告が表示される場合があります。
    「”PyCharm CE.app”は開発元を確認できないため開けません。」のようなメッセージが表示された場合、以下の手順で許可する必要があります。

    • 「システム設定」(または「システム環境設定」)を開きます。
    • 「プライバシーとセキュリティ」(または「セキュリティとプライバシー」)を選択します。
    • 「セキュリティ」タブ(または項目)を開きます。
    • 下の方に、「ダウンロードしたアプリケーションの実行を許可」という項目があり、そこにPyCharmに関するメッセージが表示されているはずです。
    • 「このまま開く」または「許可」のようなボタンをクリックして、PyCharmの実行を許可します。
    • 再度PyCharmを起動してみてください。

    この手順は初回起動時のみ必要です。以降はアプリケーションフォルダから通常通り起動できます。

    アプリケーションフォルダからPyCharm CEのアイコンをDockにドラッグしておくと、次回から簡単に起動できるようになります。

3.3 Linux版のインストール

Linux版のインストールにはいくつかの方法があります。ここでは、公式が推奨する.tar.gzアーカイブを使用する方法と、比較的簡単なSnapパッケージを使用する方法、そしてJetBrains Toolbox Appを使用する方法を説明します。

3.3.1 Tarball (.tar.gz) を使用する方法

この方法は、どのLinuxディストリビューションでも利用可能ですが、手動での作業が多くなります。

  1. ダウンロードしたアーカイブの展開:
    ダウンロードした .tar.gz ファイル(例: pycharm-community-YYYY.X.Y.tar.gz)を、インストールしたいディレクトリに展開します。/opt/ ディレクトリに展開するのが一般的です(システム全体で利用可能にする場合)。展開には管理者権限(sudo)が必要になります。
    ターミナルを開き、ダウンロードファイルがあるディレクトリに移動し、以下のコマンドを実行します。

    bash
    sudo tar -xzf pycharm-community-YYYY.X.Y.tar.gz -C /opt/

    (YYYY.X.Y はダウンロードしたバージョン番号に置き換えてください)

  2. 展開したディレクトリへの移動:
    展開されたディレクトリに移動します。ディレクトリ名は通常 pycharm-community-YYYY.X.Y のようになります。

    bash
    cd /opt/pycharm-community-YYYY.X.Y/bin/

  3. PyCharmの起動:
    bin ディレクトリ内の pycharm.sh スクリプトを実行してPyCharmを起動します。

    bash
    ./pycharm.sh

    初回起動時には、利用規約の同意や初期設定が行われます。

  4. デスクトップエントリとPATHの設定 (任意/推奨):
    上記の方法だとターミナルからスクリプトを実行しないと起動できません。より便利に使うためには、デスクトップ環境のアプリケーションメニューに登録したり、環境変数PATHに実行ファイルパスを追加したりする必要があります。

    • デスクトップエントリの作成: PyCharmの起動後、メニューの Tools -> Create Desktop Entry... を選択すると、アプリケーションメニューに登録するための .desktop ファイルを作成できます。「Create for all users」にチェックを入れると、システム全体で利用可能なメニューに登録されます(これにはパスワード入力が必要になる場合があります)。
    • PATHへの追加: .bashrc.zshrc などのシェル設定ファイルに、PyCharmの bin ディレクトリへのパスを追加します。
      例: export PATH="$PATH:/opt/pycharm-community-YYYY.X.Y/bin"
      設定ファイルを変更した後は、ターミナルを再起動するか source ~/.bashrc (または使用しているシェル設定ファイル) を実行して設定を反映させます。これにより、どこからでも pycharm コマンドでPyCharmを起動できるようになります。

この方法は手動で管理する必要があり、アップデートの際も同様の手順が必要になります。

3.3.2 Snapパッケージを使用する方法 (UbuntuなどSnap対応環境)

Snapパッケージは比較的新しいパッケージ管理システムで、アプリケーションのインストールと管理を容易にします。Ubuntuなど多くのディストリビューションで利用可能です。

  1. ターミナルを開く:
    ターミナルを開きます。

  2. インストールコマンドの実行:
    以下のコマンドを実行してPyCharm CEをインストールします。

    bash
    sudo snap install pycharm-community --classic

    sudo は管理者権限でコマンドを実行するために必要です。パスワードを求められたら入力してください。
    --classic オプションは、Snapのサンドボックス機能の一部を解除し、PyCharmがファイルシステムなどに自由にアクセスできるようにするために必要です。PyCharmのようなIDEには必要な権限です。

  3. インストール完了:
    インストールが完了すると、アプリケーションメニューにPyCharm Community Editionが追加されます。検索して起動できます。
    初回起動時には、利用規約の同意や初期設定が行われます。

Snapを使用すると、アップデートも sudo snap refresh pycharm-community のような簡単なコマンドでできるようになり、管理が容易です。

3.3.3 JetBrains Toolbox Appを使用する方法

JetBrains Toolbox Appは、JetBrains製品のインストール、アップデート、管理を一元的に行うための公式ツールです。複数のJetBrains製品を使用する場合や、最新版を簡単に管理したい場合に非常に便利です。

  1. JetBrains Toolbox Appのダウンロード:
    JetBrainsのウェブサイトからToolbox Appをダウンロードします (https://www.jetbrains.com/toolbox-app/)。Windows、macOS、Linux版が提供されています。
  2. Toolbox Appのインストール:
    ダウンロードしたToolbox Appのインストーラーを実行し、インストールします。Windows版は.exe、macOS版は.dmg、Linux版は.tar.gzです。Linux版.tar.gzの場合は展開して実行可能ファイルを実行します。
  3. Toolbox Appの起動:
    Toolbox Appを起動します。通常、システムトレイ(Windows)やメニューバー(macOS/Linux)にアイコンが表示されます。
  4. PyCharm CEのインストール:
    Toolbox Appのウィンドウを開くと、利用可能なJetBrains製品の一覧が表示されます。リストの中から「PyCharm Community」を見つけ、「Install」ボタンをクリックします。
    Toolbox Appが自動的にPyCharm CEの最新版をダウンロードし、インストールします。インストール場所や設定はToolbox Appが管理してくれます。
  5. PyCharm CEの起動:
    インストールが完了すると、「Install」ボタンが「Open」ボタンに変わります。「Open」をクリックするか、Toolbox AppのリストからPyCharm CEを選択して起動します。

Toolbox Appは、複数のPyCharmバージョン(例: 最新版と旧バージョン)を共存させたり、ベータ版を試したりするのにも便利です。Linuxの場合は、デスクトップエントリやPATH設定もToolbox Appが自動で行ってくれます。

3.4 インストール後の確認

インストールが完了したら、デスクトップアイコン(Windows)、アプリケーションフォルダ(macOS)、またはアプリケーションメニュー(Linux)からPyCharm Community Editionを起動してみてください。

初回起動時には、利用規約の同意や初期設定ウィザードが表示されるはずです。これが表示されれば、インストール自体は成功しています。

もし起動しない場合は、システム要件を満たしているか、インストール手順に間違いがなかったか、管理者権限が正しく付与されていたかなどを再度確認してみてください。特にWindowsでPATHに追加した場合、PCの再起動が必要なことがあります。

これでPyCharm Community Editionのインストールは完了です!次に、初めて起動したときの初期設定について説明します。

4章:最初の起動と初期設定

PyCharm CEを初めて起動すると、いくつかの初期設定を行うためのウィザードが表示されます。これらの設定は後から変更可能ですが、最初にある程度設定しておくと、その後の使い勝手が良くなります。

4.1 利用規約の同意

PyCharm CEは無償のオープンソースソフトウェアですが、利用にあたってはJetBrainsの提供する利用規約(License Agreement)に同意する必要があります。

初回起動時、最初に「License Agreement」というウィンドウが表示されます。規約の内容を読み、同意できる場合は画面下部の「I have read and agree with the terms of the License Agreement」というチェックボックスにチェックを入れます。
チェックを入れると、「Continue」ボタンが有効になりますので、クリックして次に進みます。

4.2 データ共有の設定

次に、「Data Sharing」に関する設定画面が表示されます。これは、PyCharmの使用状況に関する匿名データをJetBrainsに送信するかどうかを選択するものです。このデータは、PyCharmの改善やバグ修正のために活用されます。

  • 「Send Usage Statistics to JetBrains」:使用統計データを送信する場合に選択します。
  • 「Don’t Send」:データを送信しない場合に選択します。

どちらを選択してもPyCharmの機能に影響はありません。プライバシーに関する懸念がある場合は「Don’t Send」を選択しても全く問題ありません。後から設定で変更することも可能です。

選択したら、「Continue」をクリックします。

4.3 UIテーマの選択

次に、PyCharmのユーザーインターフェース(UI)のテーマを選択する画面が表示されます。主に以下の2つの選択肢があります。

  • Darcula: ダーク系のテーマ。背景色が黒や濃い灰色になり、目に優しいとされています。多くのプログラマーに好まれています。
  • Light: ライト系のテーマ。背景色が白や明るい灰色になります。

プレビューが表示されるので、好みのテーマを選択してください。この設定も後からいつでも変更可能です(File -> Settings [Windows/Linux] または PyCharm -> Preferences [macOS] -> Appearance & Behavior -> Appearance)。

テーマを選択したら、「Next: Default plugins」または「Next」のようなボタンをクリックします。

4.4 デフォルトプラグインの有効化/無効化

PyCharmはプラグインによって機能を拡張できます。この画面では、PyCharm CEに標準で搭載されている、またはJetBrainsが推奨する一部のプラグインを有効/無効にするかを選択できます。

通常はデフォルトのまま(推奨されるプラグインが有効になっている状態)で問題ありません。不要な機能があればここで無効にすることもできますが、最初はそのままにしておき、使いながら必要に応じて判断するのが良いでしょう。

「Next: Featured plugins」または「Next」のようなボタンをクリックします。

4.5 おすすめプラグインのインストール (任意)

さらに、JetBrainsがおすすめするいくつかの追加プラグインをインストールするかどうかを選択する画面が表示されることがあります。例えば、Vimエディタのキーバインドをエミュレートするプラグインや、特定のファイル形式(Markdownなど)をサポートするプラグインなどが表示されることがあります。

必要であればここでインストールできますが、最初はスキップしても全く問題ありません。PyCharmの基本的な使い方に慣れてから、必要に応じて「Settings/Preferences」の「Plugins」画面からいつでも追加のプラグインを検索・インストールできます。

この画面で設定が完了したら、「Start using PyCharm」または「Start」のようなボタンをクリックします。

4.6 初期設定ウィザードの完了 – Welcome画面へ

これで初期設定ウィザードは完了し、PyCharmの「Welcome to PyCharm」画面が表示されます。この画面から、新しいプロジェクトを作成したり、既存のプロジェクトを開いたり、設定をカスタマイズしたりすることができます。

Welcome画面には通常以下のオプションが表示されています。

  • New Project: 新しいPythonプロジェクトを作成します。コードを書き始めるにはこれを選択します。
  • Open: 既存のPythonプロジェクトフォルダを開きます。既に作成済みのプロジェクトをPyCharmで開きたい場合に選択します。
  • Get From VCS: バージョン管理システム(Git, Mercurial, Subversionなど)からプロジェクトをクローンします。GitHubやGitLabなどにリポジトリがある場合に利用します。
  • Customize: PyCharmのUIテーマ、フォント、キーマップなどの設定を調整できます。
  • Plugins: 追加の機能を持つプラグインを検索・インストール・管理できます。
  • Learn PyCharm: PyCharmのチュートリアルやヒントを見ることができます。

4.7 新しいプロジェクトの作成(必須の設定)

PyCharmでPythonコードを書いて実行するには、「プロジェクト」を作成する必要があります。プロジェクトとは、関連するPythonファイル、設定ファイル、ライブラリなどをまとめて管理する単位です。

「New Project」をクリックして、新しいプロジェクトを作成します。

  1. プロジェクトの場所と名前の指定:
    「New Project」ウィンドウが表示されます。

    • Location: プロジェクトファイルを保存するディレクトリを指定します。デフォルトではユーザーのホームディレクトリ内に PycharmProjects というフォルダが作成され、その中にプロジェクトごとのサブフォルダが作られます。任意の場所に設定できますが、分かりやすい場所を選びましょう。
    • Name: プロジェクトの名前を入力します。例えば my_first_python_project のような名前を付けます。
    • Create a main.py welcome script: チェックを入れると、簡単なサンプルコードが書かれた main.py ファイルが自動的に作成されます。初心者の方はチェックを入れておくのが良いでしょう。
  2. Pythonインタープリターの設定(最も重要!):
    このセクションが非常に重要です。PyCharmに、どのPythonインタプリタを使ってコードを実行するかを教える必要があります。通常、「New environment using」と「Previously configured interpreter」という選択肢があります。

    • New environment using: 新しい仮想環境を作成し、その中にPythonインタプリタを設定します。仮想環境は、プロジェクトごとに独立したPython環境を構築するための仕組みです。これにより、プロジェクト間でインストールされたライブラリが干渉するのを防ぎ、プロジェクトに必要なライブラリとそのバージョンを明確に管理できます。初心者でも、仮想環境を使用することを強く推奨します。
      • Virtalenv: 仮想環境を作成するためのツール。多くのPyCharmユーザーに推奨されます。
      • Location: 仮想環境を作成する場所。デフォルトでプロジェクトディレクトリ内に作成されます。
      • Base interpreter: 仮想環境のベースとなるシステム上のPythonインタプリタを選択します。ドロップダウンリストから、システムにインストールされているPythonのバージョン(例: Python 3.9, Python 3.10など)を選択します。ここで、2章の準備でインストールしたPythonのバージョンが表示されていることを確認してください。もし何も表示されない場合は、Pythonが正しくインストールされていないか、環境変数PATHが設定されていない可能性があります。
      • Inherit global site-packages: チェックを入れると、システム全体にインストールされているパッケージを仮想環境でも利用できるようになります。通常はチェックを外しておき、プロジェクト固有のライブラリだけを仮想環境にインストールするのが良いプラクティスです。
      • Make available to all projects: チェックを入れると、この仮想環境を他のプロジェクトでも利用できるようになります。通常はチェックを外しておき、プロジェクトごとに独立した仮想環境を作成します。
    • Previously configured interpreter: 既に設定済みのインタプリタ(過去にPyCharmで使用した仮想環境や、システム全体のPythonなど)を選択します。もしシステム全体のPythonを使いたい場合や、既存の仮想環境を使いたい場合はこちらを選択し、「Add Interpreter」から既存のインタプリタを指定します。ただし、プロジェクトごとに新しい仮想環境を作成するのが最も推奨される方法です。

    推奨されるのは、「New environment using」を選択し、「Virtalenv」を選び、「Base interpreter」でシステムにインストール済みのPythonを選択する設定です。

  3. プロジェクト作成の完了:
    プロジェクトの場所、名前、そしてPythonインタプリターの設定が完了したら、ウィンドウ下部の「Create」ボタンをクリックします。

PyCharmが新しいプロジェクトを作成し、選択したPythonインタプリター(または新しい仮想環境)を設定します。この処理には少し時間がかかる場合があります。ウィンドウが表示され、エディタ画面が表示されれば、プロジェクトの作成と初期設定は成功です。

Create a main.py welcome script にチェックを入れていた場合は、簡単な main.py ファイルが開かれているはずです。

5章:基本的な使い方とインストール後の確認

プロジェクト作成後、PyCharmのメイン画面が表示されます。ここでは、簡単な「Hello, World!」プログラムを作成・実行して、PyCharmが正しくインストールされ、使用できる状態にあるかを確認しましょう。

5.1 エディター画面の確認

PyCharmのウィンドウの中心には、コードを記述するためのエディターが表示されます。新しいプロジェクトを作成し main.py を作成した場合、以下のようなサンプルコードが表示されているかもしれません。

“`python

This is a sample Python script.

Press Shift+F10 to execute it or replace it with your code.

Press Double Shift to search everywhere for classes, files, tool windows, actions, and settings.

def print_hi(name):
# Use a breakpoint in the code line below to debug your script.
print(f’Hi, {name}’) # Press Ctrl+F8 to toggle the breakpoint.

if name == ‘main‘:
print_hi(‘PyCharm’)

“`

エディターには、キーワードのハイライト、コード補完候補の表示、入力中のエラーの波線表示など、IDEならではの機能が有効になっています。

5.2 「Hello, World!」プログラムの作成

サンプルコードを書き換えるか、新しいPythonファイルを作成して、簡単な「Hello, World!」プログラムを作成します。

新しいファイルを作成する場合:
* 画面左側の「Project」ツールウィンドウで、プロジェクト名(例: my_first_python_project)を右クリックします。
* メニューから「New」 -> 「Python File」を選択します。
* ファイル名の入力を求められるので、例えば hello.py と入力してEnterキーを押します。

作成したファイル(main.py または hello.py)に、以下のコードを記述します。

python
print("Hello, World!")

コードを記述すると、PyCharmがリアルタイムで構文チェックなどを行います。

5.3 プログラムの実行

コードを書いたら、それを実行して結果を確認します。PyCharmではいくつかの方法で実行できます。

  1. エディター上部の緑色の実行ボタン:
    エディターウィンドウの上部に、ファイル名の左横に緑色の三角形の「実行」ボタンがあります。これをクリックすると、現在のファイルが実行されます。
  2. 右クリックメニュー:
    エディター内のコードエリアを右クリックします。表示されるメニューから「Run ‘<ファイル名>’」を選択します(例: 「Run ‘hello’」)。
  3. Runメニュー:
    メニューバーの「Run」メニューを開き、「Run」を選択します。実行構成が複数ある場合はサブメニューが表示されます。
  4. ショートカットキー:
    デフォルトでは Shift + F10 (Windows/Linux) または Control + R (macOS) で実行できます。

いずれかの方法で実行すると、PyCharmのウィンドウ下部に「Run」ツールウィンドウが表示されます。

5.4 実行結果の確認

「Run」ツールウィンドウには、プログラムの標準出力が表示されます。上記の「Hello, World!」プログラムを実行した場合、以下のような出力が表示されるはずです。

“`
/path/to/your/venv/bin/python /path/to/your/project/hello.py
Hello, World!

Process finished with exit code 0
“`

( /path/to/your/venv/bin/python/path/to/your/project/hello.py は、実際の仮想環境のパスやプロジェクトのパスに置き換わります。)

「Hello, World!」という文字列が表示されていれば、PyCharmはPythonインタプリタを正しく認識し、コードを実行できていることを意味します。インストールと初期設定は成功です!

Process finished with exit code 0 は、プログラムが正常に終了したことを示しています。

5.5 その他の基本的な機能

インストール後の確認として、いくつかの基本的な機能を試してみるのも良いでしょう。

  • コード補完: prin と入力した後に少し待つか Ctrl + Space を押してみてください。print 関数などの候補が表示されるはずです。
  • エラーのハイライト: 意図的にコードに間違い(例: print("Hello, World!" のように閉じカッコを忘れる)を入れてみてください。該当する行に赤い波線が表示され、エラーの内容が表示されるはずです。
  • 設定画面の探索: メニューの File -> Settings (Windows/Linux) または PyCharm -> Preferences (macOS) を開いてみてください。PyCharmの様々な設定項目(エディターの外観、フォント、キーマップ、Pythonインタプリタ、プラグインなど)を確認できます。

これらの基本的な機能が動作することを確認できれば、PyCharm CEを本格的に使い始める準備は整いました。

6章:PyCharm Community Editionを使いこなすためのヒント

PyCharm CEは非常に高機能なIDEですが、最初はどこから手をつけて良いか分からないかもしれません。ここでは、これからPyCharm CEを使いこなしていくためのいくつかのヒントを紹介します。

6.1 設定画面を探索する

PyCharmのカスタマイズは多岐にわたります。設定画面 (File -> Settings または PyCharm -> Preferences) には、エディターの配色やフォント、タブの挙動、コードスタイルの設定、Pythonインタープリターの管理、インストール済みパッケージの確認、プラグインの管理など、様々な項目があります。最初は全てを理解する必要はありませんが、定期的に覗いてみることで、自分にとってより使いやすい環境を構築できます。

6.2 便利なショートカットを覚える

PyCharmは多くの操作にショートカットキーが割り当てられています。ショートカットを使いこなすことで、マウス操作を減らし、開発スピードを大幅に向上させることができます。

よく使う基本的なショートカットの例:
* Shift + F10 (Win/Linux), Control + R (macOS): 現在のファイルまたは実行構成の実行
* Shift + F9 (Win/Linux), Control + D (macOS): デバッグ実行
* Ctrl + Space: コード補完
* Ctrl + /: 選択行または現在の行をコメントアウト/解除
* Shift (二回連打): Search Everywhere (ファイル、クラス、アクション、設定などを横断検索)
* Ctrl + Click (または Cmd + Click on macOS): 定義元へジャンプ (変数や関数の定義元に移動)
* Shift + Shift: ファイル、クラス、シンボル、アクションの高速検索
* Alt + Enter (または Option + Enter on macOS): インテンションアクション(PyCharmが提案するコード改善や修正の候補を表示)

これらのショートカットは、メニュー項目にカーソルを合わせると表示されることがあります。また、PyCharmの公式ウェブサイトやヘルプドキュメントで、ショートカットキーマップを確認できます。最初は数個からで良いので、毎日使うショートカットを意識的に覚えていくと効果的です。

6.3 プラグインを活用する

PyCharm CEはプラグインによって機能拡張が可能です。例えば、特定のフレームワーク(ただしCEでサポートされている範囲)、ファイル形式、開発スタイルをサポートするプラグインがあります。

設定画面の「Plugins」から、利用可能なプラグインを検索し、インストールできます。人気のプラグインには、エディターの見た目を変更するテーマ系(例: Material Theme UI)、特定の技術(例: Django Template Language – Professional版向け機能との連携が多い点に注意)をサポートするものなどがあります。

ただし、Community EditionではProfessional Edition向けの多くのプラグイン(例: Webフレームワーク、データベースツールなど)は利用できません。CEで利用できるプラグインに限定して探索しましょう。

6.4 公式ドキュメントやチュートリアルを参照する

JetBrainsは非常に充実した公式ドキュメントを提供しています。特定の機能の使い方や、トラブルシューティングの情報は、公式ドキュメントで最新かつ正確な情報を見つけることができます。

また、JetBrainsのウェブサイトやYouTubeチャンネルには、PyCharmの使い方に関するチュートリアルビデオや記事が多数公開されています。これらを活用することで、PyCharmの様々な機能を効率的に学ぶことができます。PyCharmの「Learn PyCharm」機能も、基本的な操作を学ぶのに役立ちます。

6.5 Python学習と並行して利用する

PyCharmはあくまでPython開発を助ける「ツール」です。PyCharmの使い方を学ぶことと同時に、Python言語自体の学習も進めることが重要です。Pythonの文法、データ構造、標準ライブラリなどを学ぶことで、PyCharmのコード補完やデバッグ機能の恩恵を最大限に受けられるようになります。

オンラインのプログラミング学習プラットフォーム(Udemy, Coursera, 各種プログラミングスクールなど)のPython講座を受講する際も、多くの場合PyCharmの使用が推奨されているか、そのまま利用できる環境で説明が進められます。

6.6 仮想環境の重要性を理解する

4章でも触れましたが、プロジェクトごとに仮想環境を使用することは、クリーンな開発環境を維持するために非常に重要です。プロジェクトが必要とするライブラリとそのバージョンを仮想環境内に閉じ込めることで、他のプロジェクトやシステム全体のPython環境との依存関係の衝突を防ぎます。

PyCharmは仮想環境の作成や管理を強力にサポートしています。新しいプロジェクトを作成する際は、必ず新しい仮想環境を作成する習慣をつけましょう。既存のプロジェクトを開く際も、そのプロジェクトで使用している仮想環境をPyCharmに正しく認識させる必要があります。

7章:よくあるトラブルシューティング

PyCharmのダウンロードやインストール、または初回起動時に発生しやすいいくつかの一般的な問題とその解決策について説明します。

7.1 ダウンロードが開始されない/途中で止まる

  • 原因: インターネット接続の問題、ブラウザの設定、ファイアウォールやプロキシによるブロック。
  • 解決策:
    • インターネット接続が安定しているか確認してください。
    • ブラウザのキャッシュをクリアするか、別のブラウザで試してみてください。
    • セキュリティソフトウェア(ファイアウォール、アンチウイルスソフト)がダウンロードをブロックしていないか確認してください。一時的に無効にしてみるか、PyCharm公式サイトを信頼済みサイトとして追加してみてください。
    • 企業のネットワークなど制限がある環境の場合は、ネットワーク管理者に相談してください。
    • ダウンロードページに戻り、OSやEditionの選択が正しいか再確認してください。

7.2 インストーラーが起動しない (Windows)

  • 原因: ダウンロードファイルの破損、管理者権限がない、OSの互換性がない(32ビット版など)。
  • 解決策:
    • ダウンロードしたファイルのサイズが公式サイトで示されているものと一致するか確認してください。ファイルが小さい場合は破損している可能性があります。再度ダウンロードしてください。
    • ファイルを右クリックし、「管理者として実行」を選択してみてください。
    • お使いのWindowsが64ビット版であるか確認してください(コントロールパネル -> システムとセキュリティ -> システム)。PyCharmは64ビット版のみ対応です。
    • ダウンロードしたファイルがPyCharm CEの公式インストーラーであるか確認してください。

7.3 インストールエラーが発生する

  • 原因: ディスク容量不足、管理者権限がない、既存のPyCharm関連ファイルとの競合、システムファイルの破損。
  • 解決策:
    • インストール先に十分なディスク空き容量があるか確認してください。
    • インストーラーを「管理者として実行」しているか確認してください(Windows)。
    • 以前のバージョンのPyCharmが正しくアンインストールされているか確認してください。
    • エラーメッセージの内容をよく読み、特定のファイルへのアクセスエラーなど、具体的な情報があればそれを元に検索してみてください。
    • システムのファイルチェッカーを実行してみる(Windowsの sfc /scannow など)。

7.4 PyCharmが起動しない

  • 原因: インストールが不完全、Java実行環境(JRE)の問題、設定ファイルの破損、グラフィックドライバーの問題、システム要件を満たしていない。
  • 解決策:
    • PCを再起動してから再度起動を試みてください(特にWindowsでPATHやコンテキストメニューを設定した場合)。
    • PyCharmを一度アンインストールし、再度クリーンインストールしてみてください。
    • PyCharmは通常、必要なJREを同梱していますが、まれにシステム側のJava環境との競合や問題が発生することがあります。特定のJavaバージョンを要求しないか、インストールされているJava環境を確認してみてください。
    • PyCharmの設定ファイルが破損している場合があります。設定ファイルを保存しているディレクトリを見つけ、バックアップを取った上で削除してから起動してみてください(設定はリセットされます)。設定ファイルの場所はOSによって異なります(公式ドキュメント参照)。
    • グラフィックドライバーを最新版にアップデートしてみてください。
    • タスクマネージャー(Windows)やアクティビティモニタ(macOS)、htop(Linux)などで、PyCharmのプロセスが実行されているか、CPUやメモリを大量に消費していないか確認してみてください。

7.5 Pythonインタープリターが見つからない/設定できない

  • 原因: Python自体がインストールされていない、環境変数PATHが正しく設定されていない、仮想環境のパスが間違っている、PyCharmがインタプリタを検出できない。
  • 解決策:
    • コマンドプロンプト/ターミナルを開き、python --version または python3 --version コマンドでPythonがシステムにインストールされているか確認してください。インストールされていない場合は先にPythonをインストールしてください。
    • WindowsでPythonをインストールした際に「Add Python to PATH」にチェックを入れたか確認してください。入っていない場合は、手動で環境変数PATHにPythonのインストールディレクトリとScriptsディレクトリを追加するか、Pythonを再インストールしてチェックを入れてください。
    • PyCharmの「Settings/Preferences」->「Project」->「Python Interpreter」を開きます。
    • ドロップダウンリストに目的のインタプリタが表示されていなければ、右上の歯車アイコンをクリックし、「Add Interpreter」を選択します。
    • 「Add Python Interpreter」ウィンドウで、「Virtualenv Environment」または「System Interpreter」などを選択し、Python実行ファイル(例: python.exe, python3, python)のパスを正しく指定します。仮想環境の場合は、仮想環境ディレクトリ内のbinまたはScriptsフォルダにあるPython実行ファイルを指定します。PyCharmはパスを指定すれば自動で検出してくれることが多いです。
    • 正しいインタプリタを選択・設定した後、ウィンドウ下部の「Apply」または「OK」をクリックして設定を保存します。
    • もし仮想環境を作成しているのに検出されない場合は、仮想環境の場所や、python -m venv .venv のようなコマンドで正しく作成されているか確認してください。

7.6 ファイルを開くと文字化けする

  • 原因: ファイルのエンコーディングとPyCharmのエンコーディング設定が一致していない。
  • 解決策:
    • PyCharmの「Settings/Preferences」->「Editor」->「File Encodings」を開きます。
    • 「Project Encoding」や「IDE Encoding」がファイルの実際のエンコーディング(多くの場合UTF-8)と一致しているか確認します。一致していなければUTF-8に変更します。
    • 特定のファイルだけが文字化けする場合は、そのファイルを右クリックし、「File Properties」->「File Encoding」からそのファイル個別のエンコーディングを設定してみてください。
    • Pythonファイルの先頭に # -*- coding: utf-8 -*- のようなエンコーディング宣言を追加することも有効です。

これらのトラブルシューティング手順を試しても問題が解決しない場合は、JetBrainsのサポートフォーラムやコミュニティに質問するか、PyCharmの公式ヘルプドキュメントでさらに詳しい情報を調べてみてください。

8章:Community EditionとProfessional Editionの比較(再確認)

最後に、PyCharm CEがどのような機能を提供し、Professional Editionと何が異なるのかを簡単に再確認します。これにより、PyCharm CEがあなたのニーズに合っているかを改めて理解できます。

PyCharm Community Edition (無料・オープンソース):

  • コア機能: Pythonコードの記述、編集、実行に関する全ての基本機能。
    • インテリジェントなコードエディタ(コード補完、構文ハイライト、エラーチェック、コードフォーマット)
    • 強力なデバッガー
    • テスト実行機能(unittest, pytest, noseなどのフレームワークをサポート)
    • バージョン管理システム連携(Git, Mercurial, Subversionなど)
    • 仮想環境のサポート(Virtalenv, Condaなど)
    • プロジェクト構造の管理
    • コードインスペクションとリファクタリングツール
  • 対象: 個人の学習、学生、オープンソース開発者、基本的なPythonスクリプト作成、デスクトップアプリケーション開発など、純粋なPython開発が中心の方。

PyCharm Professional Edition (有償):

  • Community Editionの全機能に加え、以下の機能を提供:
    • Web開発フレームワークのサポート(Django, Flask, Pyramidなど)
    • 科学技術計算ライブラリのサポート(NumPy, SciPy, Matplotlib, Pandasなど)
    • データベースツール(SQLAlchemy, Django ORMなどに対応したDBクライアント機能)
    • リモート開発機能(SSH経由、Docker, Vagrant連携)
    • JavaScript, HTML, CSSなどのWebフロントエンド技術の高度なサポート
    • プロファイラー(コードのパフォーマンス分析)
    • その他、多くの高度なツールや統合機能
  • 対象: プロフェッショナルなWeb開発者、データサイエンティスト、研究者、チーム開発を行う企業など、より多機能で統合された開発環境が必要な方。

PyCharm CEは、Pythonの基本を学ぶ段階や、個人的なスクリプト作成、基本的なアプリケーション開発を行う上で、全く不足のない機能を提供します。コード補完やデバッグ機能だけでも、テキストエディタとは比較にならないほど開発効率が向上します。

この記事で説明したダウンロード、インストール、初期設定の手順は、PyCharm CEでPython開発を始めるための最初のステップです。まずは無料のCommunity Editionから始めて、Python開発に慣れていくことを強くお勧めします。もし将来的にWeb開発やデータサイエンスなど、Professional Editionで提供される特定の機能が必要になった場合に、アップグレードを検討すれば良いでしょう。

9章:まとめ

この記事では、PyCharm Community Edition(CE)無料版のダウンロードからインストール、そして最初の起動と基本的な設定までを、ステップバイステップで非常に詳細に解説しました。

  1. まず、PyCharm CEをダウンロードする前に必要なシステム要件の確認、Pythonのインストール、ネットワーク接続、管理者権限の準備を行いました。Python本体のインストールがPyCharmの使用に必須であることを強調しました。
  2. 次に、JetBrains公式サイトからのPyCharm CEダウンロード手順を解説しました。公式サイトへのアクセス方法、Community Editionの選択、OSの選択、ダウンロード開始までの流れを具体的に示しました。
  3. ダウンロードしたファイルを元に、Windows、macOS、そしてLinux(Tarball, Snap, Toolbox App)それぞれのOSごとの詳細なインストール手順を解説しました。Windowsのインストールオプションや、macOSのセキュリティ設定解除、Linuxの複数方法の選択肢などを詳しく説明しました。
  4. インストール後、PyCharmを初めて起動した際の初期設定ウィザード(利用規約同意、データ共有、テーマ選択、プラグイン設定)について説明し、特にPythonインタプリターの設定(仮想環境の利用推奨)の重要性を強調しました。
  5. 最後に、PyCharmが正しく動作しているか確認するために、簡単な「Hello, World!」プログラムの作成と実行方法、そして基本的なエディター機能の使い方を紹介しました。

さらに、PyCharm CEをより効果的に使いこなすためのヒント(設定画面、ショートカット、プラグイン、ドキュメント活用、仮想環境)と、ダウンロード・インストール時によくあるトラブルシューティングについても触れました。

PyCharm Community Editionは、無料で利用できるにも関わらず、Python開発に必要な強力な機能を多数備えた優れたIDEです。この記事が、あなたがPyCharm CEをスムーズに導入し、快適なPython開発を始めるための一助となれば幸いです。

プログラミング学習は、環境構築から始まることが多いですが、そこで躓いてしまう人も少なくありません。この記事で丁寧に解説した手順通りに進めれば、きっとPyCharm CEをあなたの開発環境として立ち上げることができるはずです。

さあ、PyCharm CEを起動し、Pythonのコーディングを楽しみましょう!もし途中で分からないことや問題が発生しても、この記事のトラブルシューティングセクションを参考にしたり、オンラインのコミュニティやドキュメントを検索したりしながら、一つずつ解決していってください。

あなたのPython開発が、PyCharm CEによってより効率的で楽しいものになることを願っています。


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