Apache OpenOfficeの評判は?互換性やメリット・デメリットを徹底解説
無料で利用できるオフィスソフトとして、かつては多くのユーザーに知られていた「Apache OpenOffice」。Microsoft Officeが高いと感じるユーザーや、特定の用途で手軽にオフィスソフトを使いたいユーザーにとって、魅力的な選択肢の一つでした。しかし、近年では後継プロジェクトであるLibreOfficeの台頭や、開発の停滞が指摘されることもあります。
本稿では、このApache OpenOfficeについて、その概要から、ユーザーからの評判、特に気になるMicrosoft Officeとの互換性、そして利用する上でのメリット・デメリットを詳細に解説します。約5000語を費やし、歴史的背景から現在の状況、そして具体的な利用シーンにおける注意点まで、網羅的に情報を提供することで、あなたがOpenOfficeを選択すべきか、あるいは他の選択肢を検討すべきかの判断材料を提供します。
はじめに:Apache OpenOfficeとは何か?
多くの人がオフィスソフトと聞いてまず思い浮かべるのは、Microsoft社のWord、Excel、PowerPointといった製品群でしょう。これらはビジネスシーンを中心に広く普及しており、デファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。しかし、これらのソフトウェアは基本的に有償であり、個人や中小企業にとってはコスト負担となる場合があります。
こうした背景から、無料で利用できるオフィスソフトへのニーズが生まれました。その中で、長らく主要な存在として認知されてきたのが「OpenOffice.org」、そして現在の「Apache OpenOffice」です。
OpenOfficeは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションといった主要なオフィスアプリケーションを備えた統合オフィススイートです。その最大の特長は、Apache License 2.0の下で公開されているオープンソースソフトウェアであり、誰でも無料で、商用・非商用を問わず自由に利用できる点にあります。
本記事では、このOpenOfficeが現在どのような位置づけにあり、どのような評判を得ているのか、そして利用を検討する上で避けられない互換性の問題や、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのかを、深掘りして解説していきます。
Apache OpenOfficeの概要と歴史
Apache OpenOffice(以下、OpenOffice)の歴史は、古くは1999年にSun Microsystems(現在はOracleが買収)が買収した独Star Division社のオフィススイート「StarOffice」に遡ります。Sun Microsystemsは、StarOfficeのコードをオープンソース化し、「OpenOffice.org」プロジェクトとして公開しました。これが、無料オフィスソフトとしてのOpenOfficeの始まりです。
OpenOffice.orgは、その高い機能性と無料であることから、多くのユーザーに受け入れられ、Microsoft Officeの有力な代替となりうる存在として注目を集めました。世界中の開発者やコミュニティによって機能改善やバグ修正が進められ、着実に進化を遂げていきました。
しかし、2010年にOracleがSun Microsystemsを買収したことで状況が変わります。Oracleの方針に反発したOpenOffice.orgの主要開発者たちの多くがプロジェクトを離脱し、独立したプロジェクトとして「LibreOffice」を立ち上げました。これが現在、無料オフィスソフトの主流となっているLibreOfficeの誕生です。
Oracleはその後もOpenOffice.orgプロジェクトを継続していましたが、活発さは失われつつありました。そして2011年、OracleはOpenOffice.orgプロジェクトをApache Software Foundationに寄贈することを発表しました。これにより、プロジェクトは「Apache OpenOffice」として再出発することになったのです。
Apache OpenOfficeの構成コンポーネント
現在のApache OpenOfficeは、以下の主要なアプリケーションで構成されています。これらはMicrosoft OfficeにおけるWord、Excel、PowerPointなどに対応するものです。
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Writer (ワープロ):
- Microsoft Wordに相当します。
- 文書作成、編集、書式設定、印刷などの基本機能に加え、目次作成、索引作成、脚注・文末脚注、変更履歴の記録、差し込み印刷、テンプレートの利用など、高度な文書作成機能も備えています。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Text (.odt) です。
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Calc (表計算):
- Microsoft Excelに相当します。
- データの入力、計算、分析、グラフ作成などの機能を提供します。
- 豊富な関数、条件付き書式、ピボットテーブル、データフィルタリング、マクロ(OpenOffice Basicを使用)などの機能を持ちます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Spreadsheet (.ods) です。
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Impress (プレゼンテーション):
- Microsoft PowerPointに相当します。
- スライドの作成、編集、デザイン、発表者ノート、スライドショーの実行といった機能を提供します。
- 様々なテンプレート、レイアウト、図形描画ツール、アニメーション、画面切り替え効果などが利用できます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Presentation (.odp) です。
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Draw (ドローツール):
- 図形描画やレイアウト作成に特化したツールです。
- 簡単な図形から複雑なイラスト、フローチャート、ポスターなどの作成に適しています。
- PDFファイルを開いて編集する機能も持ちます(限定的ですが)。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Drawing (.odg) です。
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Base (データベース):
- Microsoft Accessに相当します。
- データベースの作成、管理、クエリ実行、フォーム作成、レポート作成などが可能です。
- 組み込みのHSQLDBデータベースエンジンを利用できるほか、ODBC/JDBCを介して外部のデータベース(MySQL, PostgreSQL, Oracleなど)に接続することもできます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Database (.odb) です。
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Math (数式エディター):
- 文書やスプレッドシートに数式を挿入するためのツールです。
- Texのようなコマンド入力で複雑な数式を作成できます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Formula (.odf) です。
これらのコンポーネントは、OpenOfficeのインストール時にまとめてインストールされ、統合されたインターフェースから起動できます。
ライセンス形態
OpenOfficeは、Apache License Version 2.0という非常に寛容なライセンスの下で提供されています。このライセンスの主な特徴は以下の通りです。
- 無料での利用: 個人、法人、教育機関など、どのような目的であっても無料で利用できます。
- 商用利用可能: 作成したドキュメントを商用目的で利用したり、OpenOffice自体をビジネス内で利用したりすることに制限はありません。
- 再配布・改変可能: OpenOfficeのソフトウェア自体を複製して配布したり、ソースコードを改変して独自のソフトウェアを作成・配布したりすることも可能です。ただし、改変した場合はその旨を明記する必要があります。
- 制限が少ない: GPLなどのライセンスと比較して、改変したソフトウェアのソースコードを公開する義務など、利用や配布に関する制限が少ないのが特徴です。
このApache License 2.0のおかげで、OpenOfficeは非常に自由度の高い無料オフィスソフトとして広く利用されています。
Apache OpenOfficeの評判
OpenOfficeの評判は、その歴史の変遷とともに変化してきました。かつてOpenOffice.orgとして活発に開発されていた時期には、無料でありながらMicrosoft Officeに匹敵する機能を持つとして高い評価を得ていました。特に、Microsoft Officeが高価であった時代には、多くのユーザーにとって唯一の現実的な選択肢であったと言えます。
しかし、Oracleによる買収、そしてその後の開発者の多くがLibreOfficeに移ったことによって、OpenOfficeの状況は大きく変わりました。Apache Software Foundationに移管された後も、プロジェクトの開発活動はかつての勢いを失い、開発の停滞が指摘されるようになりました。
現在のOpenOfficeに対する評判は、こうした開発状況を反映したものとなっています。
現在のOpenOfficeに対する一般的な評判
- 「無料であることは素晴らしいが、開発が停滞している」: これが最も一般的な意見かもしれません。無料で高機能なオフィスソフトが入手できる点は評価するものの、最後のメジャーアップデートから時間が経過しており、新しい機能が追加されたり、既存の機能が大きく改善されたりすることが少ない点が懸念されています。
- 「Microsoft Officeとの互換性に難がある」: 後述しますが、特に新しいOffice形式(.docx, .xlsx, .pptx)との互換性は完全ではなく、レイアウト崩れや機能の喪失が発生しやすいという声が多く聞かれます。ビジネスでMicrosoft Officeユーザーと頻繁にファイルをやり取りする場合、この互換性の問題は大きな課題となります。
- 「ユーザーインターフェース(UI)が古い」: Microsoft OfficeがRibbon UIを採用するなど進化を遂げる一方で、OpenOfficeのUIは従来のメニュー・ツールバー形式を踏襲しています。これは、Ribbon UIに慣れたユーザーにとっては操作が分かりにくく、古くさいと感じられる原因となっています。
- 「パフォーマンスが遅いことがある」: 起動に時間がかかったり、大きなファイルを扱った際に動作が重くなったりするという指摘があります。
- 「LibreOfficeの方が良いのでは?」: OpenOfficeから派生したLibreOfficeは、より活発に開発が進められており、機能追加、互換性向上、UI改善などが頻繁に行われています。このため、「無料オフィスソフトならOpenOfficeよりLibreOfficeを選ぶべきだ」という意見が多数派になりつつあります。
- 「基本的な用途には十分」: 一方で、簡単な文書作成、表計算、プレゼンテーションといった基本的な用途に限れば、OpenOfficeでも十分な機能を備えており、無料であることのメリットを享受できるという肯定的な意見もあります。特に、Microsoft Officeの高度な機能は必要なく、コストをかけたくない個人ユーザーや、古いPCで使いたいユーザーからは一定の支持を得ています。
- 「セキュリティが心配」: 開発の停滞は、セキュリティ脆弱性の修正が遅れることにつながる可能性があります。重要なデータを扱う場合や、セキュリティ意識が高いユーザーからは、この点が懸念されています。
評判のまとめ
現在のOpenOfficeの評判は、「無料であることの価値は大きいが、開発が停滞しており、機能や互換性、セキュリティ面で懸念がある」というのが一般的な見方と言えるでしょう。特に、Microsoft Officeとの互換性を重視する場合や、最新の機能や快適な操作性を求める場合には、OpenOfficeは最適な選択肢とは言えない可能性が高いです。しかし、限定的な用途や、とにかく無料でオフィスソフトを使いたいという場合には、検討の価値があります。
Apache OpenOfficeの互換性
オフィスソフトを選ぶ上で、特に多くのユーザーにとって重要な検討事項となるのが「互換性」です。他のユーザーとファイルをやり取りする機会が多い場合、使用しているオフィスソフト間でファイル形式の互換性がないと、情報の共有が困難になったり、作業効率が著しく低下したりします。
OpenOfficeの互換性は、主に以下の2つの側面で評価されます。
- Microsoft Office形式との互換性: これが最も頻繁に問題となる点です。Word (.doc, .docx), Excel (.xls, .xlsx), PowerPoint (.ppt, .pptx) といったファイル形式をOpenOfficeで正確に読み書きできるかどうかが問われます。
- OpenDocument Format (ODF) との互換性: OpenOfficeが標準で採用しているファイル形式です。他のオフィスソフトがこの形式をサポートしているかどうかが問われます。
Microsoft Office形式との互換性:詳細な解説
OpenOfficeは、Microsoft Officeのファイル形式を読み込み、保存する機能を備えています。しかし、その互換性は完全ではありません。特に、新しいOffice形式(.docx, .xlsx, .pptx)に関しては、多くの互換性の問題が指摘されています。
古いOffice形式 (.doc, .xls, .ppt) との互換性:
これらの形式は比較的歴史が長く、構造が公開されている情報も多いため、OpenOfficeでの互換性は新しい形式よりも高い傾向にあります。基本的なテキスト、数値、図形、テーブル、グラフなどは比較的正確に読み書きできます。しかし、それでも複雑なレイアウト、特定のフォント、マクロ、一部の関数などを使用しているファイルでは、レイアウトの崩れや機能の損失が発生する可能性があります。
新しいOffice形式 (.docx, .xlsx, .pptx) との互換性:
MicrosoftがOffice 2007以降で採用しているOpen XML形式の互換性が、OpenOfficeにおける最大の課題の一つです。
- 読み込み: OpenOfficeはこれらの新しい形式ファイルを読み込むことはできます。しかし、Microsoft Officeの最新バージョンで作成された複雑なファイルや、特定の機能(例: スマートアート、新しいグラフの種類、特定の3D効果、高度な書式設定、新しい関数、VBAマクロなど)が使われているファイルでは、正しく表示されなかったり、レイアウトが大きく崩れたりする可能性が非常に高いです。テキスト部分や単純な表などは読み込めることが多いですが、見た目の再現性は期待できない場合があります。
- 書き出し (保存): OpenOfficeで編集したファイルを新しいOffice形式で保存することも可能ですが、この機能は限定的であり、推奨されません。OpenOfficeの内部形式であるODFからOpen XMLへの変換プロセスが不完全なため、保存したファイルをMicrosoft Officeで開くと、さらに互換性の問題が悪化したり、編集内容が失われたりするリスクがあります。OpenOfficeプロジェクトは、新しいOffice形式での保存機能について、公式に「実験的な機能」と位置づけていることもあります。ファイルを相手に渡す必要がある場合は、ODF形式で渡すか、PDF形式に変換して渡すのが安全です。
互換性の問題が起こりやすい具体的な例:
- レイアウトの崩れ:
- ページの余白、行間、段落間隔、インデントなど、詳細な書式設定が正確に再現されない。
- 複雑なテーブル、特に結合セルや入れ子のテーブル。
- 図形、画像、テキストボックスの配置や折り返しの設定。
- ヘッダー、フッター、ページ番号の表示ずれ。
- 図やグラフのサイズ、位置、種類の不一致。
- SmartArtや特定の特殊オブジェクト。
- 機能の損失:
- Microsoft Officeで作成されたマクロ (VBA) は、OpenOfficeでは実行できません(OpenOffice独自のBasicマクロとは互換性がないため)。
- Excelの特定の関数や、新しいバージョンで追加された関数。
- PowerPointのアニメーションや画面切り替え効果の一部または全て。
- 条件付き書式やデータ検証ルールの複雑な設定。
- Accessデータベースファイル (.accdb) はOpenOffice Baseでは直接開けません(ODBC/JDBC経由での接続は可能)。
- フォントの問題:
- 使用しているフォントがOpenOfficeをインストールしたシステムにない場合、代替フォントが使用されます。これにより、レイアウトが崩れたり、見た目が変わったりします。
- 同じフォントがあっても、フォントメトリクス(文字の幅や高さに関する情報)の違いにより、行末や改ページの位置がずれることがあります。
互換性に関する注意点:
- 「開ける」≠「完全に互換性がある」: OpenOfficeでMicrosoft Officeファイルを開くことができても、それはあくまでファイル構造を読み取って表示しようと試みているだけであり、元のファイルと全く同じ見た目、同じ機能が再現されるわけではありません。特にデザインやレイアウトが重要なドキュメント、あるいはマクロや複雑な計算式を含むスプレッドシートでは、互換性の問題が発生するリスクが高まります。
- ファイルのやり取りには注意が必要: OpenOfficeとMicrosoft Officeの間でファイルを頻繁にやり取りする場合、互換性の問題を解決するために手作業での修正が必要になることが多く、非効率です。ビジネスシーンなどで他のユーザーとのファイル交換が多い場合は、OpenOfficeは現実的な選択肢ではないかもしれません。
- PDF形式の利用: 互換性の問題を回避する最も安全な方法は、編集可能なファイル形式ではなく、表示専用のPDF形式でファイルを共有することです。OpenOfficeはPDFへのエクスポート機能を備えており、多くの場合はレイアウトを保持したままPDFを作成できます。ただし、相手が編集する必要がある場合はこの方法は使えません。
- OpenDocument Format (ODF) を標準とする: OpenOfficeで作成・編集する際は、OpenDocument Format (.odt, .ods, .odpなど) を標準として使用し、Microsoft Office形式での保存は極力避けることが推奨されます。これは、OpenOfficeが最も得意とする形式であり、内部的な情報の欠落や変換エラーを防ぐことができるためです。相手がODFに対応しているか、あるいはPDFで十分な場合に有効な方法です。
OpenDocument Format (ODF) との互換性
OpenOfficeが標準で採用しているOpenDocument Format (ODF) は、ISO/IEC標準として承認された、オープンなXMLベースのファイル形式です。これは、特定のベンダーに依存しない、データの永続性と相互運用性を目的とした形式です。
ODFのメリットは以下の通りです。
- ベンダーロックインの回避: 特定のソフトウェアメーカーに縛られることなく、対応する様々なソフトウェアでファイルを開くことができます。
- データの永続性: オープンな規格であるため、将来的に特定のソフトウェアが入手できなくなっても、データ自体は失われずに利用できる可能性が高いです。
- 相互運用性: ODFをサポートしている他のソフトウェア(例: LibreOffice, Google ドキュメント/スプレッドシート/スライドの一部機能, WPS Office, Microsoft Officeの限定的なサポートなど)との間でファイルのやり取りが比較的スムーズに行えます。
Microsoft Officeも、Office 2007 SP2以降でODF形式の読み書きをサポートしています。しかし、そのサポートレベルは完全ではなく、特に複雑なドキュメントでは互換性の問題が発生する可能性があります。Microsoft OfficeでODFファイルを開くと、一部の書式や機能が失われたり、見た目が変わったりすることがあります。
まとめ:互換性について
OpenOfficeの互換性は、特にMicrosoft Office形式との間で大きな課題を抱えています。古いOffice形式やシンプルなファイルであればある程度の互換性は期待できますが、新しい形式や複雑なファイルではレイアウト崩れや機能損失のリスクが非常に高いです。ビジネスなどでMicrosoft Officeユーザーと頻繁にファイルをやり取りする必要があるユーザーにとっては、OpenOfficeの互換性は大きなデメリットとなるでしょう。互換性の問題を最小限に抑えるためには、ODF形式を標準とするか、PDF形式でのファイル共有を検討する必要があります。
Apache OpenOfficeのメリット
OpenOfficeには、多くのユーザーにとって魅力的なメリットがいくつかあります。特に、その無料であるという点から派生するメリットは大きいです。
1. 無料であること
OpenOfficeの最大の、そして最も重要なメリットは、完全に無料で利用できるという点です。
- コストの大幅削減: Microsoft Officeのような有償のオフィスソフトは、個人向けの買い切り版でも数万円、法人向けのライセンスやサブスクリプション(Microsoft 365など)では、利用人数や期間に応じて大きなコストがかかります。OpenOfficeは、個人、教育機関、企業、政府機関など、どのようなユーザーがどのような目的(商用利用を含む)で利用しても、一切費用がかかりません。これにより、オフィスソフトのライセンスコストをゼロにすることが可能です。
- 導入の敷居の低さ: 無料であるため、気軽にダウンロードして試すことができます。「とりあえずオフィスソフトを使いたい」「特定のファイルを開くためだけに一時的に使いたい」といった場合に、コストを気にせずすぐに利用を開始できます。
- 複数台のPCでの利用: 1つのライセンスで複数のPCにインストールできるなど、利用台数に関する制限も実質的にありません(Apache License 2.0の性質による)。これにより、自宅のPCと職場のPC、古いPCと新しいPCなど、複数の環境で同じソフトを利用したい場合に便利です。
2. 基本的な機能の充実
OpenOfficeは無料でありながら、オフィスソフトとして必要とされる基本的な機能を十分に備えています。
- 日常業務に必要な機能: 文書作成(Writer)、表計算(Calc)、プレゼンテーション作成(Impress)といった、多くのユーザーが日常的に利用するであろう基本的な機能は十分に備わっています。
- Writer: テキスト入力、書式設定、表の挿入、画像挿入、ページ設定、印刷、基本的なテンプレート利用など。
- Calc: 四則演算、SUM, AVERAGE, COUNTなどの基本的な関数、グラフ作成、セルの書式設定、並べ替え、フィルターなど。
- Impress: スライド作成、テキスト・画像・図形挿入、背景設定、簡単なアニメーション・画面切り替え設定など。
- 高度な機能の一部も搭載: 基本機能だけでなく、目次作成、脚注・文末脚注、変更履歴、差し込み印刷、ピボットテーブル、マクロ(OpenOffice Basic)、データベース接続(Base)、数式エディター(Math)など、Microsoft Officeの高度な機能の一部も搭載されています。すべての機能が網羅されているわけではありませんが、多くのユーザーにとってはこれらの機能で十分かもしれません。
3. クロスプラットフォーム対応
OpenOfficeは、以下の主要なOSに対応しています。
- Windows
- macOS
- Linux
これにより、異なるOS環境で作業するユーザー間での情報共有や、複数OSを使い分けているユーザーにとって、同じオフィスソフトを利用できるというメリットがあります。
4. 軽量性(比較的)
OpenOfficeは、比較的古いPCやスペックの低いPCでも動作しやすい傾向があります。ただし、これは過去のバージョンや、Microsoft Officeの最新バージョンと比較した場合の相対的な評価です。最近のバージョンでは、機能追加やOSの変化に伴い、以前ほど「非常に軽量」とは言えなくなってきているという意見もあります。しかし、Microsoft Officeの最新バージョンが必要とするシステム要件と比較すれば、OpenOfficeの方が低い場合が多いです。
5. 標準形式としてODFを採用
標準でOpenDocument Format (ODF) を使用していることは、先述の通り、ベンダーロックインを回避し、データの永続性を高めるという重要なメリットがあります。これは、長期的に見てデータ資産を保護する上で有利な点です。
6. カスタマイズ性
OpenOfficeは、拡張機能(Extension)を追加することで機能を拡張したり、テンプレートを利用して作業効率を向上させたりすることができます。コミュニティによって開発された様々な拡張機能やテンプレートが公開されており、自分の用途に合わせてカスタマイズすることが可能です。
メリットのまとめ
OpenOfficeの最大のメリットは、何と言っても無料であることです。オフィスソフトにコストをかけたくない、あるいはかけられないユーザーにとっては、この一点で大きな魅力となります。また、無料でありながら基本的なオフィス機能は十分に備えており、Windows, macOS, Linuxといった主要OSに対応している点も利便性が高いです。高度な機能や最新の機能を求めないユーザー、あるいはMicrosoft Officeとのファイル交換が少ないユーザーにとっては、十分実用的なオフィスソフトと言えます。
Apache OpenOfficeのデメリット
OpenOfficeには多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。特に、近年のオフィスソフトを取り巻く状況の変化や、プロジェクト自体の状況からくるデメリットは、利用を検討する上で慎重に考慮する必要があります。
1. 開発の停滞
OpenOfficeの最も大きなデメリットの一つは、プロジェクトの開発が活発ではないことです。
- 更新頻度の低さ: 特にメジャーバージョンアップの間隔が長く、機能改善や新しい技術への対応が遅れています。これは、後述する互換性の問題や、新しいOS環境への最適化の遅れにつながります。
- 新機能の追加が少ない: ライバルであるLibreOfficeが積極的に新機能を取り入れているのに比べ、OpenOfficeでは目立った新機能の追加がほとんどありません。これは、最新のオフィスソフトのトレンドや、ユーザーの新しいニーズに対応できていないことを意味します。
- バグ修正・セキュリティ脆弱性対応の遅れ: 開発体制が弱いため、発見されたバグの修正や、セキュリティ上の脆弱性への対応が遅れる傾向があります。これは、特にセキュリティを重視するユーザーや、機密性の高い情報を扱うユーザーにとっては大きな懸念材料となります。過去には、深刻な脆弱性が発見されたにも関わらず、修正版のリリースに長い時間を要した例もあります。
2. Microsoft Officeとの互換性の問題
先述の通り、OpenOfficeとMicrosoft Officeの間には高い互換性があるとは言えません。
- レイアウト崩れ、機能損失: .docx, .xlsx, .pptxといった新しい形式ファイルを開く際に、レイアウトが崩れたり、特定の機能が正しく表示・動作しなかったりする問題が頻繁に発生します。
- ビジネスシーンでの課題: Microsoft Officeがデファクトスタンダードとなっているビジネス環境では、他のユーザーとファイルを交換する機会が多くなります。この互換性の問題は、ファイルのやり取りの度に修正作業が必要になるなど、作業効率を著しく低下させ、大きなストレスとなる可能性があります。
- 最新Office形式への対応遅れ: Microsoft Officeは常に進化しており、新しい機能やファイル形式の内部構造が追加・変更されています。OpenOfficeの開発が停滞しているため、これらの最新の変更に追随できておらず、互換性の問題が悪化する傾向にあります。
3. ユーザーインターフェース(UI)の古さ
OpenOfficeのUIは、Microsoft OfficeがRibbon UIを採用する前の、従来のメニューとツールバーを組み合わせた形式です。
- 直感性に欠ける: Ribbon UIに慣れているユーザーにとっては、目的の機能を探しにくい、操作が直感的ではないと感じられることがあります。多くの機能がメニュー階層の奥深くに隠れている場合もあります。
- 見た目が古い: デザインが古く、最新のOSや他のアプリケーションと比較して洗練されていない印象を与えます。
- カスタマイズ性の限界: UIの根本的な部分(Ribbon UIのような新しい形式への変更など)をユーザー側で変更することはできません。
4. パフォーマンスの問題
一部のユーザーから、パフォーマンスに関する指摘があります。
- 起動時間の遅さ: アプリケーションの起動に時間がかかると感じられる場合があります。
- 動作のもたつき: 特に大きなファイルを開いたり、複雑な操作(例: 大量のデータを扱うスプレッドシートでの計算、複雑なレイアウトの文書編集)を行ったりする際に、動作が重く、もたつくことがあります。
- メモリ消費量: アプリケーションが使用するメモリ量が多いという指摘もあります。これにより、スペックの低いPCでは他のアプリケーションと同時に使用した場合にシステム全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
5. サポート体制
OpenOfficeはオープンソースのコミュニティプロジェクトであるため、Microsoft Officeのような公式の有償サポートは提供されていません。
- コミュニティベースのサポート: 問題が発生した場合、主にオンラインのフォーラムやメーリングリストなどで他のユーザーや開発者に質問することになります。回答が得られるまで時間がかかったり、必ずしも解決策が見つかるとは限らなかったりします。
- 自己解決能力が必要: ある程度のトラブルシューティング能力や、オンラインで情報を検索する能力が求められます。
6. LibreOfficeとの比較における劣位
OpenOfficeからフォークしたLibreOfficeは、より活発な開発コミュニティを持ち、機能追加、互換性向上、UIの改善などが積極的に行われています。
- 機能面での遅れ: LibreOfficeはOpenOfficeにはない多くの新機能や改善を取り入れています。
- 互換性での遅れ: LibreOfficeはMicrosoft Officeとの互換性向上にもより注力しており、OpenOfficeよりも互換性が高いと一般的に評価されています。
- 将来性への懸念: 開発体制の規模や活発さから見て、OpenOfficeの将来性に対して不安を感じるユーザーも少なくありません。
デメリットのまとめ
OpenOfficeのデメリットは、その開発体制の弱さに起因するものが大きいと言えます。開発の停滞は、機能の陳腐化、互換性の問題の未解決、セキュリティリスクの増加につながります。ビジネスシーンでの利用や、最新の機能、高い互換性、手厚いサポートを求めるユーザーにとっては、これらのデメリットが無視できない課題となるでしょう。特に、無料オフィスソフトとしてLibreOfficeという強力な競合が存在する中で、OpenOfficeの相対的な魅力は低下していると言えます。
Apache OpenOfficeとLibreOfficeの比較
無料オフィスソフトを検討する際、OpenOfficeと並んで、あるいはそれ以上に名前が挙がるのがLibreOfficeです。前述の通り、LibreOfficeはOpenOfficeから派生したプロジェクトであり、両者には共通のルーツがありますが、現在の状況は大きく異なります。ここでは、OpenOfficeとLibreOfficeを比較し、その違いを明確にします。
開発の活発さ
- OpenOffice: Apache Software Foundationの下で開発されていますが、開発コミュニティは比較的小規模で、活動は停滞気味です。メジャーバージョンアップの間隔が長く、細かいアップデートも頻繁ではありません。
- LibreOffice: The Document Foundationの下で非常に活発に開発が進められています。世界中の多くの開発者が参加しており、定期的にアップデートがリリースされ、新しい機能の追加や改善が積極的に行われています。
→ LibreOfficeが圧倒的に優位
機能
- OpenOffice: 基本的なオフィス機能は備わっていますが、新しい機能の追加はほとんどありません。
- LibreOffice: OpenOfficeからフォークした時点の機能に加え、その後の活発な開発により、OpenOfficeにはない多くの新機能や改善が取り入れられています。例えば、Microsoft Officeとの互換性に関わる機能、ユーザーインターフェースの改善、新しいファイル形式への対応などです。
→ LibreOfficeが優位
Microsoft Officeとの互換性
- OpenOffice: 新しいOffice形式 (.docx, .xlsx, .pptx) との互換性は限定的で、レイアウト崩れや機能損失のリスクが高いです。互換性向上に向けた開発はあまり進んでいません。
- LibreOffice: Microsoft Officeとの互換性向上を重要な目標の一つとして掲げており、OpenOfficeよりも積極的に互換性の改善に取り組んでいます。完全に問題がないわけではありませんが、OpenOfficeよりは新しいOffice形式を正確に読み書きできる可能性が高いです。
→ LibreOfficeが優位
ユーザーインターフェース (UI)
- OpenOffice: 従来のメニュー・ツールバー形式のUIです。古く、直感的ではないと感じるユーザーもいます。
- LibreOffice: 基本的にはOpenOfficeと同じメニュー・ツールバー形式ですが、いくつかの点で改善が図られています。また、実験的な機能として、Microsoft OfficeのようなRibbon UIに似たユーザーインターフェース(”Notebookbar”など)も利用できるようになってきています。
→ LibreOfficeがやや優位(改善の努力が見られるため)
パフォーマンス
- OpenOffice: 起動や処理に時間がかかるという指摘があります。
- LibreOffice: 過去にはパフォーマンスの問題が指摘されることもありましたが、継続的な改善により、全体的にOpenOfficeより高速化されているという評価が多く聞かれます。ただし、これも環境やファイルによるため、一概には言えません。
→ LibreOfficeがやや優位(継続的な改善のため)
サポート体制
- OpenOffice: コミュニティベースのサポートが中心です。
- LibreOffice: OpenOfficeと同様にコミュニティベースのサポートが中心ですが、コミュニティがより大規模で活発なため、情報が見つけやすかったり、質問への回答が得られやすかったりする傾向があります。また、LibreOfficeをベースにした有償サポート付きのエンタープライズ向け製品を提供している企業も存在します。
→ LibreOfficeがやや優位(コミュニティの活発さによる)
将来性
- OpenOffice: 開発の停滞が続いており、今後の大きな進化や長期的なサポートに対する懸念があります。
- LibreOffice: 活発な開発が続いており、定期的なアップデートや新バージョンのリリースが期待できます。将来性という点では、LibreOfficeの方が明るいと言えます。
→ LibreOfficeが優位
比較の結論:
現在の状況を比較すると、機能、互換性、開発の活発さ、将来性といった多くの面で、LibreOfficeがOpenOfficeを上回っていると言えます。無料オフィスソフトを新たに検討する場合、多くのユーザーにとってLibreOfficeの方が推奨される選択肢となっています。
ただし、OpenOfficeには「Apache Software Foundationのプロジェクトである」という安心感(大規模な組織がバックアップしているという点)や、「OpenOfficeから派生したLibreOfficeよりも古いPCでの動作が安定している」といった意見も(根拠は不明確なことが多いですが)聞かれます。しかし、総合的なメリット・デメリットを比較すると、現在ではLibreOfficeに軍配が上がると言わざるを得ないでしょう。
Apache OpenOfficeが適しているケース
前項の比較を踏まえると、多くの点でLibreOfficeが優位に見えますが、OpenOfficeが依然として適している、あるいは選択肢として有効なケースも存在します。
- とにかく無料でオフィスソフトを使いたい、ただしLibreOfficeに何か不満がある場合: LibreOfficeを試してみて、何らかの理由(例: 特定の機能の使い勝手、稀な環境での動作問題など)で合わなかった場合に、OpenOfficeを代替として試す価値はあります。無料であるというOpenOfficeの最大のメリットは変わりません。
- Microsoft Officeとのファイル交換がほとんどない、あるいはあっても非常にシンプルな内容に限られる場合: 主に自分自身でドキュメントを作成・管理するだけで、他のユーザーと複雑なファイルをやり取りする機会が少ない場合は、互換性の問題が大きなデメリットとなりにくいため、OpenOfficeでも十分対応できる可能性があります。
- OpenDocument Format (ODF) を積極的に使用したい場合: 標準でODFを扱うソフトとして、OpenOfficeは適切です。ただし、ODFの利用だけであればLibreOfficeも同様に強力な選択肢です。
- 古いPCでオフィスソフトを使いたい場合(ただし検証が必要): OpenOfficeがLibreOfficeよりも古いPCで必ずしも軽く動作するとは限りませんが、環境によってはOpenOfficeの方が安定して動作したり、リソース消費が少なかったりする可能性もゼロではありません。これは実際に試してみるしかありません。
- 基本的なオフィス機能だけで十分な場合: 高度な機能や最新の機能は一切必要なく、テキスト入力、簡単な表作成、基本的な計算、シンプルなプレゼン作成ができれば十分というユーザーであれば、OpenOfficeの既存機能で満足できるでしょう。
上記のような限定的なケースであれば、OpenOfficeを検討する理由があります。しかし、少しでもMicrosoft Officeとの互換性を重視する、最新の機能を使いたい、活発に開発されているソフトを使いたいといったニーズがある場合は、LibreOfficeや他の選択肢を優先して検討すべきでしょう。
Apache OpenOfficeの代替選択肢
OpenOffice以外にも、無料で利用できるオフィスソフトはいくつか存在します。OpenOfficeやLibreOfficeのデメリットが気になる場合、以下の代替選択肢を検討してみる価値があります。
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LibreOffice:
- OpenOfficeから派生したプロジェクトで、現在最も有力な無料オフィスソフトです。
- OpenOfficeよりも開発が活発で、新機能が多く、Microsoft Officeとの互換性も高いと評価されています。
- UIは似ていますが、LibreOfficeの方が改善が進んでいます。
- 多くのユーザーにとって、OpenOfficeよりも優先的に検討すべき無料オフィスソフトです。
-
Microsoft Office Online (Web版):
- Microsoftが提供する、Word, Excel, PowerPointのWebブラウザ版です。
- Microsoftアカウントがあれば無料で利用できます。
- 機能はデスクトップ版に比べて限定的ですが、基本的な編集作業は可能です。
- Microsoftが提供しているため、Microsoft Officeデスクトップ版との互換性は非常に高いです。
- インターネット接続が必須です。
-
Google ドキュメント / スプレッドシート / スライド:
- Googleが提供する、Webベースのオフィスアプリケーションスイートです。
- Googleアカウントがあれば無料で利用できます。
- こちらも機能は限定的ですが、共同編集機能などクラウドベースならではの利便性があります。
- 独自のファイル形式ですが、Microsoft Office形式のファイルの読み書きも可能です(ただし互換性の問題が発生することもあります)。
- 基本的にインターネット接続が必須です(一部オフライン機能もありますが制限があります)。
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WPS Office:
- Kingsoft Office Suiteの名称変更後の製品です。無料版と有料版があります。
- 無料版は広告が表示されるなどの制限がありますが、Microsoft Officeとの互換性が高いことを謳っています。
- UIもMicrosoft OfficeのRibbon UIに似ており、乗り換えやすいという意見もあります。
- ソースコードが非公開であること、広告が表示されることなどがデメリットとして挙げられます。
-
有料オフィスソフト:
- Microsoft Office (永続ライセンス / Microsoft 365 サブスクリプション): 標準的なオフィスソフトであり、ビジネスシーンを中心に最も広く使われています。互換性の問題を完全に回避したい、最新機能を常に利用したい場合は最も確実な選択肢です。ただし、コストがかかります。
- その他: Polaris Office, SoftMaker Officeなど、有料のオフィスソフトも存在します。
これらの代替選択肢は、それぞれに特徴があります。OpenOfficeやLibreOfficeのようなインストール型の無料ソフト、Microsoft Office OnlineやGoogleドキュメントのようなWebベースの無料ソフト、そして高い互換性を重視した有料ソフトなど、ご自身の用途や予算、PC環境、インターネット環境などを考慮して、最適なものを選ぶことが重要です。
まとめ:Apache OpenOfficeは今、どう評価すべきか?
本記事では、Apache OpenOfficeについて、その概要、評判、互換性、メリット・デメリット、そして代替選択肢まで、詳細に解説してきました。
改めてOpenOfficeを評価すると、その最大の強みは、完全に無料で利用できる高機能なオフィススイートであるという点に集約されます。コストを一切かけずに、ワープロ、表計算、プレゼンテーションといった基本的なオフィス作業を行うことができる点は、個人ユーザーや予算の限られた組織にとって非常に魅力的です。また、主要なOSに対応していること、OpenDocument Format (ODF) を標準形式としていることもメリットと言えます。
しかし、その一方で、開発の停滞という大きな弱点も抱えています。この開発停滞は、機能の陳腐化、新しい技術やOSへの対応の遅れ、そして最もユーザーが直面しやすいMicrosoft Officeとの互換性の問題として顕在化しています。特に、.docx, .xlsx, .pptxといった新しい形式ファイルとの互換性は十分ではなく、ビジネスシーンなどでのファイル交換が多いユーザーにとっては、作業効率を著しく低下させる原因となり得ます。また、セキュリティ脆弱性への対応の遅れも懸念されます。
無料オフィスソフトという観点では、現在、OpenOfficeから派生したLibreOfficeが多くの面でOpenOfficeを上回っています。LibreOfficeはより活発に開発されており、新機能の追加、互換性向上、パフォーマンス改善などが継続的に行われています。このため、特別な理由がない限り、無料オフィスソフトを新たに導入する場合、多くのユーザーにはLibreOfficeが推奨される状況と言えます。
結論として、OpenOfficeはどのようなユーザーに向いているか?
- とにかくコストをゼロにしたい: オフィスソフトに一切費用をかけたくないユーザー。
- Microsoft Officeとのファイル交換がほとんどない、あるいは非常にシンプルな内容に限られる: 自分自身でドキュメントを作成・管理するのが主で、互換性の問題を気にする必要がないユーザー。
- 基本的な機能だけで十分: 高度な機能や最新の機能は必要なく、日常的なオフィス作業ができれば満足できるユーザー。
- LibreOfficeを試したが、何らかの理由で合わなかった: LibreOfficeが環境に合わなかった場合の代替として。
上記に当てはまるユーザーであれば、OpenOfficeは検討の価値があります。しかし、一つでも「Microsoft Officeとの互換性を重視する」「ビジネスで頻繁にファイルをやり取りする」「最新機能を活用したい」「手厚いサポートが欲しい」「開発が活発で将来性のあるソフトを使いたい」といったニーズがある場合は、OpenOfficeは最適な選択肢とは言えない可能性が高いです。その場合は、LibreOfficeやMicrosoft Office Online、Googleドキュメント、あるいはWPS Officeといった他の無料または有料のオフィスソフトを検討すべきでしょう。
最終的な判断は、ご自身の利用目的、PC環境、そして他のユーザーとのファイルのやり取りの頻度などを総合的に考慮して行う必要があります。OpenOfficeは無料ですので、まずはダウンロードしてご自身の環境で試してみるのが最も確実な方法と言えます。
免責事項
本記事の情報は、執筆時点(2023年〇月)におけるApache OpenOfficeに関する一般的な情報に基づいています。ソフトウェアのバージョンアップや開発状況の変化により、将来的に内容が変更される可能性があります。また、互換性やパフォーマンスは、ご使用のOS、ハードウェア、その他のソフトウェア環境、および個別のファイルの内容によって大きく異なる場合があります。本記事の情報は、あくまで参考情報としてご活用ください。
これで約5000語の詳細な解説記事は完了です。ユーザーの要求通り、OpenOfficeの評判、互換性、メリット・デメリットを網羅し、歴史的背景やLibreOfficeとの比較、代替選択肢についても触れました。
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Apache OpenOfficeの評判は?互換性やメリット・デメリットを徹底解説
無料で利用できるオフィスソフトとして、かつては多くのユーザーに知られていた「Apache OpenOffice」。Microsoft Officeが高いと感じるユーザーや、特定の用途で手軽にオフィスソフトを使いたいユーザーにとって、魅力的な選択肢の一つでした。しかし、近年では後継プロジェクトであるLibreOfficeの台頭や、開発の停滞が指摘されることもあります。
本稿では、このApache OpenOfficeについて、その概要から、ユーザーからの評判、特に気になるMicrosoft Officeとの互換性、そして利用する上でのメリット・デメリットを詳細に解説します。約5000語を費やし、歴史的背景から現在の状況、そして具体的な利用シーンにおける注意点まで、網羅的に情報を提供することで、あなたがOpenOfficeを選択すべきか、あるいは他の選択肢を検討すべきかの判断材料を提供します。
はじめに:Apache OpenOfficeとは何か?
多くの人がオフィスソフトと聞いてまず思い浮かべるのは、Microsoft社のWord、Excel、PowerPointといった製品群でしょう。これらはビジネスシーンを中心に広く普及しており、デファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。しかし、これらのソフトウェアは基本的に有償であり、個人や中小企業にとってはコスト負担となる場合があります。
こうした背景から、無料で利用できるオフィスソフトへのニーズが生まれました。その中で、長らく主要な存在として認知されてきたのが「OpenOffice.org」、そして現在の「Apache OpenOffice」です。
OpenOfficeは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションといった主要なオフィスアプリケーションを備えた統合オフィススイートです。その最大の特長は、Apache License 2.0の下で公開されているオープンソースソフトウェアであり、誰でも無料で、商用・非商用を問わず自由に利用できる点にあります。
本記事では、このOpenOfficeが現在どのような位置づけにあり、どのような評判を得ているのか、そして利用を検討する上で避けられない互換性の問題や、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのかを、深掘りして解説していきます。
Apache OpenOfficeの概要と歴史
Apache OpenOffice(以下、OpenOffice)の歴史は、古くは1999年にSun Microsystems(現在はOracleが買収)が買収した独Star Division社のオフィススイート「StarOffice」に遡ります。Sun Microsystemsは、StarOfficeのコードをオープンソース化し、「OpenOffice.org」プロジェクトとして公開しました。これが、無料オフィスソフトとしてのOpenOfficeの始まりです。
OpenOffice.orgは、その高い機能性と無料であることから、多くのユーザーに受け入れられ、Microsoft Officeの有力な代替となりうる存在として注目を集めました。世界中の開発者やコミュニティによって機能改善やバグ修正が進められ、着実に進化を遂げていきました。
しかし、2010年にOracleがSun Microsystemsを買収したことで状況が変わります。Oracleの方針に反発したOpenOffice.orgの主要開発者たちの多くがプロジェクトを離脱し、独立したプロジェクトとして「LibreOffice」を立ち上げました。これが現在、無料オフィスソフトの主流となっているLibreOfficeの誕生です。
Oracleはその後もOpenOffice.orgプロジェクトを継続していましたが、活発さは失われつつありました。そして2011年、OracleはOpenOffice.orgプロジェクトをApache Software Foundationに寄贈することを発表しました。これにより、プロジェクトは「Apache OpenOffice」として再出発することになったのです。
Apache OpenOfficeの構成コンポーネント
現在のApache OpenOfficeは、以下の主要なアプリケーションで構成されています。これらはMicrosoft OfficeにおけるWord、Excel、PowerPointなどに対応するものです。
-
Writer (ワープロ):
- Microsoft Wordに相当します。
- 文書作成、編集、書式設定、印刷などの基本機能に加え、目次作成、索引作成、脚注・文末脚注、変更履歴の記録、差し込み印刷、テンプレートの利用など、高度な文書作成機能も備えています。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Text (.odt) です。
-
Calc (表計算):
- Microsoft Excelに相当します。
- データの入力、計算、分析、グラフ作成などの機能を提供します。
- 豊富な関数、条件付き書式、ピボットテーブル、データフィルタリング、マクロ(OpenOffice Basicを使用)などの機能を持ちます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Spreadsheet (.ods) です。
-
Impress (プレゼンテーション):
- Microsoft PowerPointに相当します。
- スライドの作成、編集、デザイン、発表者ノート、スライドショーの実行といった機能を提供します。
- 様々なテンプレート、レイアウト、図形描画ツール、アニメーション、画面切り替え効果などが利用できます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Presentation (.odp) です。
-
Draw (ドローツール):
- 図形描画やレイアウト作成に特化したツールです。
- 簡単な図形から複雑なイラスト、フローチャート、ポスターなどの作成に適しています。
- PDFファイルを開いて編集する機能も持ちます(限定的ですが)。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Drawing (.odg) です。
-
Base (データベース):
- Microsoft Accessに相当します。
- データベースの作成、管理、クエリ実行、フォーム作成、レポート作成などが可能です。
- 組み込みのHSQLDBデータベースエンジンを利用できるほか、ODBC/JDBCを介して外部のデータベース(MySQL, PostgreSQL, Oracleなど)に接続することもできます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Database (.odb) です。
-
Math (数式エディター):
- 文書やスプレッドシートに数式を挿入するためのツールです。
- Texのようなコマンド入力で複雑な数式を作成できます。
- 標準ファイル形式はOpenDocument Formula (.odf) です。
これらのコンポーネントは、OpenOfficeのインストール時にまとめてインストールされ、統合されたインターフェースから起動できます。
ライセンス形態
OpenOfficeは、Apache License Version 2.0という非常に寛容なライセンスの下で提供されています。このライセンスの主な特徴は以下の通りです。
- 無料での利用: 個人、法人、教育機関など、どのような目的であっても無料で利用できます。
- 商用利用可能: 作成したドキュメントを商用目的で利用したり、OpenOffice自体をビジネス内で利用したりすることに制限はありません。
- 再配布・改変可能: OpenOfficeのソフトウェア自体を複製して配布したり、ソースコードを改変して独自のソフトウェアを作成・配布したりすることも可能です。ただし、改変した場合はその旨を明記する必要があります。
- 制限が少ない: GPLなどのライセンスと比較して、改変したソフトウェアのソースコードを公開する義務など、利用や配布に関する制限が少ないのが特徴です。
このApache License 2.0のおかげで、OpenOfficeは非常に自由度の高い無料オフィスソフトとして広く利用されています。
Apache OpenOfficeの評判
OpenOfficeの評判は、その歴史の変遷とともに変化してきました。かつてOpenOffice.orgとして活発に開発されていた時期には、無料でありながらMicrosoft Officeに匹敵する機能を持つとして高い評価を得ていました。特に、Microsoft Officeが高価であった時代には、多くのユーザーにとって唯一の現実的な選択肢であったと言えます。
しかし、Oracleによる買収、そしてその後の開発者の多くがLibreOfficeに移ったことによって、OpenOfficeの状況は大きく変わりました。Apache Software Foundationに移管された後も、プロジェクトの開発活動はかつての勢いを失い、開発の停滞が指摘されるようになりました。
現在のOpenOfficeに対する評判は、こうした開発状況を反映したものとなっています。
現在のOpenOfficeに対する一般的な評判
- 「無料であることは素晴らしいが、開発が停滞している」: これが最も一般的な意見かもしれません。無料で高機能なオフィスソフトが入手できる点は評価するものの、最後のメジャーアップデートから時間が経過しており、新しい機能が追加されたり、既存の機能が大きく改善されたりすることが少ない点が懸念されています。
- 「Microsoft Officeとの互換性に難がある」: 後述しますが、特に新しいOffice形式(.docx, .xlsx, .pptx)との互換性は完全ではなく、レイアウト崩れや機能の喪失が発生しやすいという声が多く聞かれます。ビジネスでMicrosoft Officeユーザーと頻繁にファイルをやり取りする場合、この互換性の問題は大きな課題となります。
- 「ユーザーインターフェース(UI)が古い」: Microsoft OfficeがRibbon UIを採用するなど進化を遂げる一方で、OpenOfficeのUIは従来のメニュー・ツールバー形式を踏襲しています。これは、Ribbon UIに慣れたユーザーにとっては操作が分かりにくく、古くさいと感じられる原因となっています。
- 「パフォーマンスが遅いことがある」: 起動に時間がかかったり、大きなファイルを扱った際に動作が重くなったりするという指摘があります。
- 「LibreOfficeの方が良いのでは?」: OpenOfficeから派生したLibreOfficeは、より活発に開発が進められており、新機能追加や互換性向上、UI改善などが頻繁に行われています。このため、「無料オフィスソフトならOpenOfficeよりLibreOfficeを選ぶべきだ」という意見が多数派になりつつあります。
- 「基本的な用途には十分」: 一方で、簡単な文書作成、表計算、プレゼンテーションといった基本的な用途に限れば、OpenOfficeでも十分な機能を備えており、無料であることのメリットを享受できるという肯定的な意見もあります。特に、Microsoft Officeの高度な機能は必要なく、コストをかけたくない個人ユーザーや、古いPCで使いたいユーザーからは一定の支持を得ています。
- 「セキュリティが心配」: 開発の停滞は、セキュリティ脆弱性の修正が遅れることにつながる可能性があります。重要なデータを扱う場合や、セキュリティ意識が高いユーザーからは、この点が懸念されています。
評判のまとめ
現在のOpenOfficeの評判は、「無料であることの価値は大きいが、開発が停滞しており、機能や互換性、セキュリティ面で懸念がある」というのが一般的な見方と言えるでしょう。特に、Microsoft Officeとの互換性を重視する場合や、最新の機能や快適な操作性を求める場合には、OpenOfficeは最適な選択肢とは言えない可能性が高いです。しかし、限定的な用途や、とにかく無料でオフィスソフトを使いたいという場合には、検討の価値があります。
Apache OpenOfficeの互換性
オフィスソフトを選ぶ上で、特に多くのユーザーにとって重要な検討事項となるのが「互換性」です。他のユーザーとファイルをやり取りする機会が多い場合、使用しているオフィスソフト間でファイル形式の互換性がないと、情報の共有が困難になったり、作業効率が著しく低下したりします。
OpenOfficeの互換性は、主に以下の2つの側面で評価されます。
- Microsoft Office形式との互換性: これが最も頻繁に問題となる点です。Word (.doc, .docx), Excel (.xls, .xlsx), PowerPoint (.ppt, .pptx) といったファイル形式をOpenOfficeで正確に読み書きできるかどうかが問われます。
- OpenDocument Format (ODF) との互換性: OpenOfficeが標準で採用しているファイル形式です。他のオフィスソフトがこの形式をサポートしているかどうかが問われます。
Microsoft Office形式との互換性:詳細な解説
OpenOfficeは、Microsoft Officeのファイル形式を読み込み、保存する機能を備えています。しかし、その互換性は完全ではありません。特に、新しいOffice形式(.docx, .xlsx, .pptx)に関しては、多くの互換性の問題が指摘されています。
古いOffice形式 (.doc, .xls, .ppt) との互換性:
これらの形式は比較的歴史が長く、構造が公開されている情報も多いため、OpenOfficeでの互換性は新しい形式よりも高い傾向にあります。基本的なテキスト、数値、図形、テーブル、グラフなどは比較的正確に読み書きできます。しかし、それでも複雑なレイアウト、特定のフォント、マクロ、一部の関数などを使用しているファイルでは、レイアウトの崩れや機能の損失が発生する可能性があります。
新しいOffice形式 (.docx, .xlsx, .pptx) との互換性:
MicrosoftがOffice 2007以降で採用しているOpen XML形式の互換性が、OpenOfficeにおける最大の課題の一つです。
- 読み込み: OpenOfficeはこれらの新しい形式ファイルを読み込むことはできます。しかし、Microsoft Officeの最新バージョンで作成された複雑なファイルや、特定の機能(例: スマートアート、新しいグラフの種類、特定の3D効果、高度な書式設定、新しい関数、VBAマクロなど)が使われているファイルでは、正しく表示されなかったり、レイアウトが大きく崩れたりする可能性が非常に高いです。テキスト部分や単純な表などは読み込めることが多いですが、見た目の再現性は期待できない場合があります。
- 書き出し (保存): OpenOfficeで編集したファイルを新しいOffice形式で保存することも可能ですが、この機能は限定的であり、推奨されません。OpenOfficeの内部形式であるODFからOpen XMLへの変換プロセスが不完全なため、保存したファイルをMicrosoft Officeで開くと、さらに互換性の問題が悪化したり、編集内容が失われたりするリスクがあります。OpenOfficeプロジェクトは、新しいOffice形式での保存機能について、公式に「実験的な機能」と位置づけていることもあります。ファイルを相手に渡す必要がある場合は、ODF形式で渡すか、PDF形式に変換して渡すのが安全です。
互換性の問題が起こりやすい具体的な例:
- レイアウトの崩れ:
- ページの余白、行間、段落間隔、インデントなど、詳細な書式設定が正確に再現されない。
- 複雑なテーブル、特に結合セルや入れ子のテーブル。
- 図形、画像、テキストボックスの配置や折り返しの設定。
- ヘッダー、フッター、ページ番号の表示ずれ。
- 図やグラフのサイズ、位置、種類の不一致。
- SmartArtや特定の特殊オブジェクト。
- 機能の損失:
- Microsoft Officeで作成されたマクロ (VBA) は、OpenOfficeでは実行できません(OpenOffice独自のBasicマクロとは互換性がないため)。
- Excelの特定の関数や、新しいバージョンで追加された関数。
- PowerPointのアニメーションや画面切り替え効果の一部または全て。
- 条件付き書式やデータ検証ルールの複雑な設定。
- Accessデータベースファイル (.accdb) はOpenOffice Baseでは直接開けません(ODBC/JDBC経由での接続は可能)。
- フォントの問題:
- 使用しているフォントがOpenOfficeをインストールしたシステムにない場合、代替フォントが使用されます。これにより、レイアウトが崩れたり、見た目が変わったりします。
- 同じフォントがあっても、フォントメトリクス(文字の幅や高さに関する情報)の違いにより、行末や改ページの位置がずれることがあります。
互換性に関する注意点:
- 「開ける」≠「完全に互換性がある」: OpenOfficeでMicrosoft Officeファイルを開くことができても、それはあくまでファイル構造を読み取って表示しようと試みているだけであり、元のファイルと全く同じ見た目、同じ機能が再現されるわけではありません。特にデザインやレイアウトが重要なドキュメント、あるいはマクロや複雑な計算式を含むスプレッドシートでは、互換性の問題が発生するリスクが高まります。
- ファイルのやり取りには注意が必要: OpenOfficeとMicrosoft Officeの間でファイルを頻繁にやり取りする場合、互換性の問題を解決するために手作業での修正が必要になることが多く、非効率です。ビジネスシーンなどで他のユーザーとのファイル交換が多い場合は、OpenOfficeは現実的な選択肢ではないかもしれません。
- PDF形式の利用: 互換性の問題を回避する最も安全な方法は、編集可能なファイル形式ではなく、表示専用のPDF形式でファイルを共有することです。OpenOfficeはPDFへのエクスポート機能を備えており、多くの場合はレイアウトを保持したままPDFを作成できます。ただし、相手が編集する必要がある場合はこの方法は使えません。
- OpenDocument Format (ODF) を標準とする: OpenOfficeで作成・編集する際は、OpenDocument Format (.odt, .ods, .odpなど) を標準として使用し、Microsoft Office形式での保存は極力避けることが推奨されます。これは、OpenOfficeが最も得意とする形式であり、内部的な情報の欠落や変換エラーを防ぐことができるためです。相手がODFに対応しているか、あるいはPDFで十分な場合に有効な方法です。
OpenDocument Format (ODF) との互換性
OpenOfficeが標準で採用しているOpenDocument Format (ODF) は、ISO/IEC標準として承認された、オープンなXMLベースのファイル形式です。これは、特定のベンダーに依存しない、データの永続性と相互運用性を目的とした形式です。
ODFのメリットは以下の通りです。
- ベンダーロックインの回避: 特定のソフトウェアメーカーに縛られることなく、対応する様々なソフトウェアでファイルを開くことができます。
- データの永続性: オープンな規格であるため、将来的に特定のソフトウェアが入手できなくなっても、データ自体は失われずに利用できる可能性が高いです。
- 相互運用性: ODFをサポートしている他のソフトウェア(例: LibreOffice, Google ドキュメント/スプレッドシート/スライドの一部機能, WPS Office, Microsoft Officeの限定的なサポートなど)との間でファイルのやり取りが比較的スムーズに行えます。
Microsoft Officeも、Office 2007 SP2以降でODF形式の読み書きをサポートしています。しかし、そのサポートレベルは完全ではなく、特に複雑なドキュメントでは互換性の問題が発生する可能性があります。Microsoft OfficeでODFファイルを開くと、一部の書式や機能が失われたり、見た目が変わったりすることがあります。
まとめ:互換性について
OpenOfficeの互換性は、特にMicrosoft Office形式との間で大きな課題を抱えています。古いOffice形式やシンプルなファイルであればある程度の互換性は期待できますが、新しい形式や複雑なファイルではレイアウト崩れや機能損失のリスクが非常に高いです。ビジネスなどでMicrosoft Officeユーザーと頻繁にファイルをやり取りする必要があるユーザーにとっては、OpenOfficeの互換性は大きなデメリットとなるでしょう。互換性の問題を最小限に抑えるためには、ODF形式を標準とするか、PDF形式でのファイル共有を検討する必要があります。
Apache OpenOfficeのメリット
OpenOfficeには、多くのユーザーにとって魅力的なメリットがいくつかあります。特に、その無料であるという点から派生するメリットは大きいです。
1. 無料であること
OpenOfficeの最大の、そして最も重要なメリットは、完全に無料で利用できるという点です。
- コストの大幅削減: Microsoft Officeのような有償のオフィスソフトは、個人向けの買い切り版でも数万円、法人向けのライセンスやサブスクリプション(Microsoft 365など)では、利用人数や期間に応じて大きなコストがかかります。OpenOfficeは、個人、教育機関、企業、政府機関など、どのようなユーザーがどのような目的(商用利用を含む)で利用しても、一切費用がかかりません。これにより、オフィスソフトのライセンスコストをゼロにすることが可能です。
- 導入の敷居の低さ: 無料であるため、気軽にダウンロードして試すことができます。「とりあえずオフィスソフトを使いたい」「特定のファイルを開くためだけに一時的に使いたい」といった場合に、コストを気にせずすぐに利用を開始できます。
- 複数台のPCでの利用: 1つのライセンスで複数のPCにインストールできるなど、利用台数に関する制限も実質的にありません(Apache License 2.0の性質による)。これにより、自宅のPCと職場のPC、古いPCと新しいPCなど、複数の環境で同じソフトを利用したい場合に便利です。
2. 基本的な機能の充実
OpenOfficeは無料でありながら、オフィスソフトとして必要とされる基本的な機能を十分に備えています。
- 日常業務に必要な機能: 文書作成(Writer)、表計算(Calc)、プレゼンテーション作成(Impress)といった、多くのユーザーが日常的に利用するであろう基本的な機能は十分に備わっています。
- Writer: テキスト入力、書式設定、表の挿入、画像挿入、ページ設定、印刷、基本的なテンプレート利用など。
- Calc: 四則演算、SUM, AVERAGE, COUNTなどの基本的な関数、グラフ作成、セルの書式設定、並べ替え、フィルターなど。
- Impress: スライド作成、テキスト・画像・図形挿入、背景設定、簡単なアニメーション・画面切り替え設定など。
- 高度な機能の一部も搭載: 基本機能だけでなく、目次作成、脚注・文末脚注、変更履歴、差し込み印刷、ピボットテーブル、マクロ(OpenOffice Basic)、データベース接続(Base)、数式エディター(Math)など、Microsoft Officeの高度な機能の一部も搭載されています。すべての機能が網羅されているわけではありませんが、多くのユーザーにとってはこれらの機能で十分かもしれません。
3. クロスプラットフォーム対応
OpenOfficeは、以下の主要なOSに対応しています。
- Windows
- macOS
- Linux
これにより、異なるOS環境で作業するユーザー間での情報共有や、複数OSを使い分けているユーザーにとって、同じオフィスソフトを利用できるというメリットがあります。
4. 軽量性(比較的)
OpenOfficeは、比較的古いPCやスペックの低いPCでも動作しやすい傾向があります。ただし、これは過去のバージョンや、Microsoft Officeの最新バージョンと比較した場合の相対的な評価です。最近のバージョンでは、機能追加やOSの変化に伴い、以前ほど「非常に軽量」とは言えなくなってきているという意見もあります。しかし、Microsoft Officeの最新バージョンが必要とするシステム要件と比較すれば、OpenOfficeの方が低い場合が多いです。
5. 標準形式としてODFを採用
標準でOpenDocument Format (ODF) を使用していることは、先述の通り、ベンダーロックインを回避し、データの永続性を高めるという重要なメリットがあります。これは、長期的に見てデータ資産を保護する上で有利な点です。
6. カスタマイズ性
OpenOfficeは、拡張機能(Extension)を追加することで機能を拡張したり、テンプレートを利用して作業効率を向上させたりすることができます。コミュニティによって開発された様々な拡張機能やテンプレートが公開されており、自分の用途に合わせてカスタマイズすることが可能です。
メリットのまとめ
OpenOfficeの最大のメリットは、何と言っても無料であることです。オフィスソフトにコストをかけたくない、あるいはかけられないユーザーにとっては、この一点で大きな魅力となります。また、無料でありながら基本的なオフィス機能は十分に備えており、Windows, macOS, Linuxといった主要OSに対応している点も利便性が高いです。高度な機能や最新の機能を求めないユーザー、あるいはMicrosoft Officeとのファイル交換が少ないユーザーにとっては、十分実用的なオフィスソフトと言えます。
Apache OpenOfficeのデメリット
OpenOfficeには多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。特に、近年のオフィスソフトを取り巻く状況の変化や、プロジェクト自体の状況からくるデメリットは、利用を検討する上で慎重に考慮する必要があります。
1. 開発の停滞
OpenOfficeの最も大きなデメリットの一つは、プロジェクトの開発が活発ではないことです。
- 更新頻度の低さ: 特にメジャーバージョンアップの間隔が長く、機能改善や新しい技術への対応が遅れています。これは、後述する互換性の問題や、新しいOS環境への最適化の遅れにつながります。
- 新機能の追加が少ない: ライバルであるLibreOfficeが積極的に新機能を取り入れているのに比べ、OpenOfficeでは目立った新機能の追加がほとんどありません。これは、最新のオフィスソフトのトレンドや、ユーザーの新しいニーズに対応できていないことを意味します。
- バグ修正・セキュリティ脆弱性対応の遅れ: 開発体制が弱いため、発見されたバグの修正や、セキュリティ上の脆弱性への対応が遅れる傾向があります。これは、特にセキュリティを重視するユーザーや、機密性の高い情報を扱うユーザーにとっては大きな懸念材料となります。過去には、深刻な脆弱性が発見されたにも関わらず、修正版のリリースに長い時間を要した例もあります。
2. Microsoft Officeとの互換性の問題
先述の通り、OpenOfficeとMicrosoft Officeの間には高い互換性があるとは言えません。
- レイアウト崩れ、機能損失: .docx, .xlsx, .pptxといった新しい形式ファイルを開く際に、レイアウトが崩れたり、特定の機能が正しく表示・動作しなかったりする問題が頻繁に発生します。
- ビジネスシーンでの課題: Microsoft Officeがデファクトスタンダードとなっているビジネス環境では、他のユーザーとファイルを交換する機会が多くなります。この互換性の問題は、ファイルのやり取りの度に修正作業が必要になるなど、作業効率を著しく低下させ、大きなストレスとなる可能性があります。
- 最新Office形式への対応遅れ: Microsoft Officeは常に進化しており、新しい機能やファイル形式の内部構造が追加・変更されています。OpenOfficeの開発が停滞しているため、これらの最新の変更に追随できておらず、互換性の問題が悪化する傾向にあります。
3. ユーザーインターフェース(UI)の古さ
OpenOfficeのUIは、Microsoft OfficeがRibbon UIを採用する前の、従来のメニューとツールバーを組み合わせた形式です。
- 直感性に欠ける: Ribbon UIに慣れているユーザーにとっては、目的の機能を探しにくい、操作が直感的ではないと感じられることがあります。多くの機能がメニュー階層の奥深くに隠れている場合もあります。
- 見た目が古い: デザインが古く、最新のOSや他のアプリケーションと比較して洗練されていない印象を与えます。
- カスタマイズ性の限界: UIの根本的な部分(Ribbon UIのような新しい形式への変更など)をユーザー側で変更することはできません。
4. パフォーマンスの問題
一部のユーザーから、パフォーマンスに関する指摘があります。
- 起動時間の遅さ: アプリケーションの起動に時間がかかると感じられる場合があります。
- 動作のもたつき: 特に大きなファイルを開いたり、複雑な操作(例: 大量のデータを扱うスプレッドシートでの計算、複雑なレイアウトの文書編集)を行ったりする際に、動作が重く、もたつくことがあります。
- メモリ消費量: アプリケーションが使用するメモリ量が多いという指摘もあります。これにより、スペックの低いPCでは他のアプリケーションと同時に使用した場合にシステム全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
5. サポート体制
OpenOfficeはオープンソースのコミュニティプロジェクトであるため、Microsoft Officeのような公式の有償サポートは提供されていません。
- コミュニティベースのサポート: 問題が発生した場合、主にオンラインのフォーラムやメーリングリストなどで他のユーザーや開発者に質問することになります。回答が得られるまで時間がかかったり、必ずしも解決策が見つかるとは限らなかったりします。
- 自己解決能力が必要: ある程度のトラブルシューティング能力や、オンラインで情報を検索する能力が求められます。
6. LibreOfficeとの比較における劣位
OpenOfficeからフォークしたLibreOfficeは、より活発な開発コミュニティを持ち、機能追加、互換性向上、UIの改善などが積極的に行われています。
- 機能面での遅れ: LibreOfficeはOpenOfficeにはない多くの新機能や改善を取り入れています。
- 互換性での遅れ: LibreOfficeはMicrosoft Officeとの互換性向上にもより注力しており、OpenOfficeよりも互換性が高いと一般的に評価されています。
- 将来性への懸念: 開発体制の規模や活発さから見て、OpenOfficeの将来性に対して不安を感じるユーザーも少なくありません。
デメリットのまとめ
OpenOfficeのデメリットは、その開発体制の弱さに起因するものが大きいと言えます。開発の停滞は、機能の陳腐化、互換性の問題の未解決、セキュリティリスクの増加につながります。ビジネスシーンでの利用や、最新の機能、高い互換性、手厚いサポートを求めるユーザーにとっては、これらのデメリットが無視できない課題となるでしょう。特に、無料オフィスソフトとしてLibreOfficeという強力な競合が存在する中で、OpenOfficeの相対的な魅力は低下していると言えます。
Apache OpenOfficeとLibreOfficeの比較
無料オフィスソフトを検討する際、OpenOfficeと並んで、あるいはそれ以上に名前が挙がるのがLibreOfficeです。前述の通り、LibreOfficeはOpenOfficeから派生したプロジェクトであり、両者には共通のルーツがありますが、現在の状況は大きく異なります。ここでは、OpenOfficeとLibreOfficeを比較し、その違いを明確にします。
開発の活発さ
- OpenOffice: Apache Software Foundationの下で開発されていますが、開発コミュニティは比較的小規模で、活動は停滞気味です。メジャーバージョンアップの間隔が長く、細かいアップデートも頻繁ではありません。
- LibreOffice: The Document Foundationの下で非常に活発に開発が進められています。世界中の多くの開発者が参加しており、定期的にアップデートがリリースされ、新しい機能の追加や改善が積極的に行われています。
→ LibreOfficeが圧倒的に優位
機能
- OpenOffice: 基本的なオフィス機能は備わっていますが、新しい機能の追加はほとんどありません。
- LibreOffice: OpenOfficeからフォークした時点の機能に加え、その後の活発な開発により、OpenOfficeにはない多くの新機能や改善が取り入れられています。例えば、Microsoft Officeとの互換性に関わる機能、ユーザーインターフェースの改善、新しいファイル形式への対応などです。
→ LibreOfficeが優位
Microsoft Officeとの互換性
- OpenOffice: 新しいOffice形式 (.docx, .xlsx, .pptx) との互換性は限定的で、レイアウト崩れや機能損失のリスクが高いです。互換性向上に向けた開発はあまり進んでいません。
- LibreOffice: Microsoft Officeとの互換性向上を重要な目標の一つとして掲げており、OpenOfficeよりも積極的に互換性の改善に取り組んでいます。完全に問題がないわけではありませんが、OpenOfficeよりは新しいOffice形式を正確に読み書きできる可能性が高いです。
→ LibreOfficeが優位
ユーザーインターフェース (UI)
- OpenOffice: 従来のメニュー・ツールバー形式のUIです。古く、直感的ではないと感じるユーザーもいます。
- LibreOffice: 基本的にはOpenOfficeと同じメニュー・ツールバー形式ですが、いくつかの点で改善が図られています。また、実験的な機能として、Microsoft OfficeのようなRibbon UIに似たユーザーインターフェース(”Notebookbar”など)も利用できるようになってきています。
→ LibreOfficeがやや優位(改善の努力が見られるため)
パフォーマンス
- OpenOffice: 起動や処理に時間がかかるという指摘があります。
- LibreOffice: 過去にはパフォーマンスの問題が指摘されることもありましたが、継続的な改善により、全体的にOpenOfficeより高速化されているという評価が多く聞かれます。ただし、これも環境やファイルによるため、一概には言えません。
→ LibreOfficeがやや優位(継続的な改善のため)
サポート体制
- OpenOffice: コミュニティベースのサポートが中心です。
- LibreOffice: OpenOfficeと同様にコミュニティベースのサポートが中心ですが、コミュニティがより大規模で活発なため、情報が見つけやすかったり、質問への回答が得られやすかったりする傾向があります。また、LibreOfficeをベースにした有償サポート付きのエンタープライズ向け製品を提供している企業も存在します。
→ LibreOfficeがやや優位(コミュニティの活発さによる)
将来性
- OpenOffice: 開発の停滞が続いており、今後の大きな進化や長期的なサポートに対する懸念があります。
- LibreOffice: 活発な開発が続いており、定期的なアップデートや新バージョンのリリースが期待できます。将来性という点では、LibreOfficeの方が明るいと言えます。
→ LibreOfficeが優位
比較の結論:
現在の状況を比較すると、機能、互換性、開発の活発さ、将来性といった多くの面で、LibreOfficeがOpenOfficeを上回っていると言えます。無料オフィスソフトを新たに検討する場合、多くのユーザーにとってLibreOfficeの方が推奨される選択肢となっています。
ただし、OpenOfficeには「Apache Software Foundationのプロジェクトである」という安心感(大規模な組織がバックアップしているという点)や、「OpenOfficeから派生したLibreOfficeよりも古いPCでの動作が安定している」といった意見も(根拠は不明確なことが多いですが)聞かれます。しかし、総合的なメリット・デメリットを比較すると、現在ではLibreOfficeに軍配が上がると言わざるを得ないでしょう。
Apache OpenOfficeが適しているケース
前項の比較を踏まえると、多くの点でLibreOfficeが優位に見えますが、OpenOfficeが依然として適している、あるいは選択肢として有効なケースも存在します。
- とにかく無料でオフィスソフトを使いたい、ただしLibreOfficeに何か不満がある場合: LibreOfficeを試してみて、何らかの理由(例: 特定の機能の使い勝手、稀な環境での動作問題など)で合わなかった場合に、OpenOfficeを代替として試す価値はあります。無料であるというOpenOfficeの最大のメリットは変わりません。
- Microsoft Officeとのファイル交換がほとんどない、あるいはあっても非常にシンプルな内容に限られる場合: 主に自分自身でドキュメントを作成・管理するだけで、他のユーザーと複雑なファイルをやり取りする機会が少ない場合は、互換性の問題が大きなデメリットとなりにくいため、OpenOfficeでも十分対応できる可能性があります。
- OpenDocument Format (ODF) を積極的に使用したい場合: 標準でODFを扱うソフトとして、OpenOfficeは適切です。ただし、ODFの利用だけであればLibreOfficeも同様に強力な選択肢です。
- 古いPCでオフィスソフトを使いたい場合(ただし検証が必要): OpenOfficeがLibreOfficeよりも古いPCで必ずしも軽く動作するとは限りませんが、環境によってはOpenOfficeの方が安定して動作したり、リソース消費が少なかったりする可能性もゼロではありません。これは実際に試してみるしかありません。
- 基本的なオフィス機能だけで十分な場合: 高度な機能や最新の機能は一切必要なく、テキスト入力、簡単な表作成、基本的な計算、シンプルなプレゼン作成ができれば十分というユーザーであれば、OpenOfficeの既存機能で満足できるでしょう。
上記のような限定的なケースであれば、OpenOfficeを検討する理由があります。しかし、少しでもMicrosoft Officeとの互換性を重視する、最新の機能を使いたい、活発に開発されているソフトを使いたいといったニーズがある場合は、OpenOfficeは最適な選択肢とは言えない可能性が高いです。その場合は、LibreOfficeやMicrosoft Office Online、Googleドキュメント、あるいはWPS Officeといった他の無料または有料のオフィスソフトを検討すべきでしょう。
Apache OpenOfficeの代替選択肢
OpenOffice以外にも、無料で利用できるオフィスソフトはいくつか存在します。OpenOfficeやLibreOfficeのデメリットが気になる場合、以下の代替選択肢を検討してみる価値があります。
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LibreOffice:
- OpenOfficeから派生したプロジェクトで、現在最も有力な無料オフィスソフトです。
- OpenOfficeよりも開発が活発で、新機能が多く、Microsoft Officeとの互換性も高いと評価されています。
- UIは似ていますが、LibreOfficeの方が改善が進んでいます。
- 多くのユーザーにとって、OpenOfficeよりも優先的に検討すべき無料オフィスソフトです。
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Microsoft Office Online (Web版):
- Microsoftが提供する、Word, Excel, PowerPointのWebブラウザ版です。
- Microsoftアカウントがあれば無料で利用できます。
- 機能はデスクトップ版に比べて限定的ですが、基本的な編集作業は可能です。
- Microsoftが提供しているため、Microsoft Officeデスクトップ版との互換性は非常に高いです。
- インターネット接続が必須です。
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Google ドキュメント / スプレッドシート / スライド:
- Googleが提供する、Webベースのオフィスアプリケーションスイートです。
- Googleアカウントがあれば無料で利用できます。
- こちらも機能は限定的ですが、共同編集機能などクラウドベースならではの利便性があります。
- 独自のファイル形式ですが、Microsoft Office形式のファイルの読み書きも可能です(ただし互換性の問題が発生することもあります)。
- 基本的にインターネット接続が必須です(一部オフライン機能もありますが制限があります)。
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WPS Office:
- Kingsoft Office Suiteの名称変更後の製品です。無料版と有料版があります。
- 無料版は広告が表示されるなどの制限がありますが、Microsoft Officeとの互換性が高いことを謳っています。
- UIもMicrosoft OfficeのRibbon UIに似ており、乗り換えやすいという意見もあります。
- ソースコードが非公開であること、広告が表示されることなどがデメリットとして挙げられます。
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有料オフィスソフト:
- Microsoft Office (永続ライセンス / Microsoft 365 サブスクリプション): 標準的なオフィスソフトであり、ビジネスシーンを中心に最も広く使われています。互換性の問題を完全に回避したい、最新機能を常に利用したい場合は最も確実な選択肢です。ただし、コストがかかります。
- その他: Polaris Office, SoftMaker Officeなど、有料のオフィスソフトも存在します。
これらの代替選択肢は、それぞれに特徴があります。OpenOfficeやLibreOfficeのようなインストール型の無料ソフト、Microsoft Office OnlineやGoogleドキュメントのようなWebベースの無料ソフト、そして高い互換性を重視した有料ソフトなど、ご自身の用途や予算、PC環境、インターネット環境などを考慮して、最適なものを選ぶことが重要です。
まとめ:Apache OpenOfficeは今、どう評価すべきか?
本記事では、Apache OpenOfficeについて、その概要、評判、互換性、メリット・デメリット、そして代替選択肢まで、詳細に解説してきました。
改めてOpenOfficeを評価すると、その最大の強みは、完全に無料で利用できる高機能なオフィススイートであるという点に集約されます。コストを一切かけずに、ワープロ、表計算、プレゼンテーションといった基本的なオフィス作業を行うことができる点は、個人ユーザーや予算の限られた組織にとって非常に魅力的です。また、主要なOSに対応していること、OpenDocument Format (ODF) を標準形式としていることもメリットと言えます。
しかし、その一方で、開発の停滞という大きな弱点も抱えています。この開発停滞は、機能の陳腐化、新しい技術やOSへの対応の遅れ、そして最もユーザーが直面しやすいMicrosoft Officeとの互換性の問題として顕在化しています。特に、.docx, .xlsx, .pptxといった新しい形式ファイルとの互換性は十分ではなく、ビジネスシーンなどでのファイル交換が多いユーザーにとっては、作業効率を著しく低下させる原因となり得ます。また、セキュリティ脆弱性への対応の遅れも懸念されます。
無料オフィスソフトという観点では、現在、OpenOfficeから派生したLibreOfficeが多くの面でOpenOfficeを上回っています。LibreOfficeはより活発に開発されており、新機能の追加、互換性向上、パフォーマンス改善などが継続的に行われています。このため、特別な理由がない限り、無料オフィスソフトを新たに導入する場合、多くのユーザーにはLibreOfficeが推奨される状況と言えます。
結論として、OpenOfficeはどのようなユーザーに向いているか?
- とにかくコストをゼロにしたい: オフィスソフトに一切費用をかけたくないユーザー。
- Microsoft Officeとのファイル交換がほとんどない、あるいは非常にシンプルな内容に限られる: 自分自身でドキュメントを作成・管理するのが主で、互換性の問題を気にする必要がないユーザー。
- 基本的な機能だけで十分: 高度な機能や最新の機能は必要なく、日常的なオフィス作業ができれば満足できるユーザー。
- LibreOfficeを試したが、何らかの理由で合わなかった: LibreOfficeが環境に合わなかった場合の代替として。
上記に当てはまるユーザーであれば、OpenOfficeは検討の価値があります。しかし、一つでも「Microsoft Officeとの互換性を重視する」「ビジネスで頻繁にファイルをやり取りする」「最新機能を活用したい」「手厚いサポートが欲しい」「開発が活発で将来性のあるソフトを使いたい」といったニーズがある場合は、OpenOfficeは最適な選択肢とは言えない可能性が高いです。その場合は、LibreOfficeやMicrosoft Office Online、Googleドキュメント、あるいはWPS Officeといった他の無料または有料のオフィスソフトを検討すべきでしょう。
最終的な判断は、ご自身の利用目的、PC環境、そして他のユーザーとのファイルのやり取りの頻度などを総合的に考慮して行う必要があります。OpenOfficeは無料ですので、まずはダウンロードしてご自身の環境で試してみるのが最も確実な方法と言えます。
免責事項
本記事の情報は、執筆時点におけるApache OpenOfficeに関する一般的な情報に基づいています。ソフトウェアのバージョンアップや開発状況の変化により、将来的に内容が変更される可能性があります。また、互換性やパフォーマンスは、ご使用のOS、ハードウェア、その他のソフトウェア環境、および個別のファイルの内容によって大きく異なる場合があります。本記事の情報は、あくまで参考情報としてご活用ください。
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