はい、承知いたしました。キヤノンのEFレンズをEOS Mシリーズのカメラで活用するための「EF-EOS Mアダプター」について、使い方、選び方、メリット・デメリット、活用術などを詳細に解説する記事を約5000語で執筆します。
EFレンズ資産をEOS Mで活用! EF-EOS Mアダプターの使い方と選び方を徹底解説!
はじめに:手塩にかけたEFレンズ、眠らせていませんか?
キヤノンのミラーレス一眼カメラ、EOS Mシリーズは、そのコンパクトさや高画質で多くの写真愛好家やブロガー、映像クリエイターから支持を集めています。旅行や日常のスナップに気軽に持ち出せるサイズ感、直感的な操作性、そしてキヤノンならではの美しい描写は魅力的です。
しかし、EOS Mシリーズへの買い替えや買い増しを検討している方の中には、一つの大きな悩みがあるかもしれません。それは、これまで大切に使ってきたキヤノンの豊富なEFレンズやEF-Sレンズの存在です。
一眼レフカメラ(EOSシリーズ)を使っていた方なら、きっと高価なLレンズや、お気に入りの単焦点レンズ、使い慣れたズームレンズなど、複数のEFマウントレンズを所有していることでしょう。これらのレンズは、時間とお金をかけて集めた大切な「資産」です。せっかくEOS Mボディを手に入れても、これらのレンズが使えなくなってしまうとしたら、それは非常にもったいないことです。
EOS Mシリーズは、レンズ交換式のミラーレスカメラですが、そのレンズマウントは一眼レフのEFマウントとは異なる、よりフランジバック(マウント面からセンサーまでの距離)が短いEF-Mマウントを採用しています。そのため、EFマウントレンズをそのままEOS Mボディに装着することは物理的に不可能です。
そこで登場するのが、本記事の主役「マウントアダプター EF-EOS M」です。このアダプターを使うことで、長年培ってきたEFレンズ資産を、最新のコンパクトなミラーレスボディであるEOS Mシリーズで活かすことができるようになります。
この記事では、EF-EOS Mアダプターがどのように機能するのか、その具体的な使い方、そしてこのアダプターを使用することで得られるメリットとデメリット、さらに数多く存在するサードパーティ製品も含めたアダプターの選び方、そしてEFレンズの種類ごとの活用術まで、徹底的に掘り下げて解説します。
あなたのEFレンズをEOS Mで眠らせることなく、新たな可能性を開くためのガイドとして、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること:
- EFマウントとEF-Mマウントの違いとアダプターが必要な理由
- EF-EOS Mアダプターの基本的な使い方と装着方法
- EFレンズをEOS Mで使うことのメリットとデメリット
- 純正アダプターとサードパーティ製アダプターの選び方と注意点
- 三脚座付きやNDフィルター内蔵など、便利なアダプターの種類
- お手持ちのEFレンズをEOS Mでどのように活用できるか(レンズタイプ別の活用術)
- アダプター使用時のよくあるトラブルとその解決策
さあ、あなたのEFレンズ資産をEOS Mで最大限に活用するための旅を始めましょう!
第1章:EF-EOS Mアダプターとは? なぜ必要なのか?
まず、EF-EOS Mアダプターがどのような役割を果たしているのか、その基本的な仕組みから理解しましょう。
1.1 EFマウントとEF-Mマウントの違い
カメラのレンズマウントには、ボディとレンズを物理的に接続し、光軸を合わせる役割と、ボディとレンズ間で電気的な情報(絞り値、焦点距離、AF情報、手ブレ補正情報など)をやり取りする役割があります。
キヤノンの一眼レフカメラが採用しているのは「EFマウント」です。このマウントは、1987年に開発された比較的歴史の長いマウントで、様々な焦点距離や明るさ、機能を持つ膨大な数のレンズラインナップ(EFレンズ、EF-Sレンズ)が存在します。EFマウントのフランジバックは44mmです。
一方、EOS Mシリーズが採用しているのは「EF-Mマウント」です。これは、ミラーレスカメラとして、一眼レフのミラーボックスをなくすことでボディの薄型・小型化を実現するために開発された新しいマウントです。EF-Mマウントのフランジバックはわずか18mmです。
フランジバックが短いということは、レンズの後端(マウント面)からセンサーまでの距離が短いということです。レンズは、センサー(またはフィルム)の面に正確にピントが合うように設計されています。EFマウントレンズは44mmのフランジバックを前提に設計されており、EF-Mマウントレンズは18mmのフランジバックを前提に設計されています。
このフランジバックの差があるため、EFマウントレンズをそのまま18mmのフランジバックを持つEF-Mマウントのカメラに装着すると、レンズの後端がセンサー面から遠すぎてしまい、無限遠にピントが合わなくなってしまいます(正確には、ピントが合う範囲が極端に近距離に限定されてしまう)。
1.2 アダプターの物理的な役割
EF-EOS Mアダプターの最も基本的な役割は、このフランジバックの差を埋めることです。アダプター自体は、EFマウントレンズの後端からEF-Mマウントボディのセンサー面までの距離を、EFマウントレンズが設計された通りの44mmになるように調整します。
具体的には、アダプターはEFマウントレンズを装着する側の面と、EF-Mマウントボディに装着する側の面を持ち、その間に「筒状」の距離を設けています。この筒の長さは、EFマウントとEF-Mマウントのフランジバックの差(44mm – 18mm = 26mm)に、アダプター自体のマウント部分の厚みを加えた長さになっています。アダプターを装着することで、レンズとセンサー間の距離が適切に保たれ、設計通りのピント合わせが可能になるのです。
また、アダプターは異なる形状の物理的なマウントを接続する役割も果たします。EFマウントはボディ側のマウントが外側にあり、レンズ側のマウントが内側に入り込む形状ですが、EF-Mマウントは異なる形状をしています。アダプターは、EFマウントレンズ側の形状を受け止め、EF-Mマウントボディ側の形状に変換して接続します。
1.3 アダプターの電気的な役割
単に物理的に装着できるだけでは、現代のレンズシステムは機能しません。最新のレンズは、ボディとの間で様々な情報をやり取りしています。オートフォーカス(AF)、自動露出(AE)、絞り制御、光学式手ブレ補正(IS)、焦点距離情報、被写界深度情報など、多くの機能が電気信号によって制御されています。
EF-EOS Mアダプターは、単なる金属やプラスチックの筒ではなく、内部に電気接点と電子回路を持っています。これにより、装着されたEFマウントレンズとEOS Mボディの間で、これらの重要な電気信号を仲介し、変換する役割を果たします。
アダプターを介しても、EOS Mボディは装着されたEFレンズを認識し、レンズ側のAFモーターや絞りユニット、手ブレ補正機構を制御することができます。これにより、あたかもEF-Mマウントレンズを装着しているかのように、ほとんどの機能をそのまま使用することが可能になります。
1.4 アダプターの種類:純正とサードパーティ製
EF-EOS Mアダプターには、キヤノン純正の「マウントアダプター EF-EOS M」と、様々なカメラアクセサリーメーカーから販売されている「サードパーティ製アダプター」があります。
- キヤノン純正 マウントアダプター EF-EOS M: キヤノン自身が製造・販売しているアダプターです。最も信頼性が高く、キヤノンのEFレンズおよびEF-SレンズとEOS Mボディとの間の互換性が保証されています。ファームウェアアップデートによる性能改善などもキヤノンによって行われます。価格はサードパーティ製に比べて高めです。
- サードパーティ製アダプター: VILTROX、K&F Concept、Commlite、TECHARTなど、様々なメーカーから販売されています。純正よりも安価なものが多いですが、機能や性能、レンズ・ボディとの互換性、耐久性などは製品によって大きく異なります。中には、三脚座が付属していたり、可変式NDフィルターやC-PLフィルターを内蔵していたりするユニークな機能を持つ製品もあります。
どちらを選ぶかは、予算、求める機能、信頼性などによって変わってきます。これについては、後の章で詳しく解説します。
第2章:EF-EOS Mアダプターの基本的な使い方
ここでは、アダプターをEOS Mボディに装着し、EFレンズを使用するための基本的な手順を解説します。非常に簡単ですが、いくつか注意点があります。
2.1 アダプターの開封と確認
アダプターを手に入れたら、まず開封して内容物を確認しましょう。通常、アダプター本体と前後キャップが付属しています。純正品の場合は、専用の収納ポーチが付属していることもあります。
アダプター本体に傷や汚れ、特に電気接点部分に異常がないか確認してください。
2.2 アダプターをEOS Mボディに装着する
アダプターをカメラボディに装着する手順は、EF-Mマウントレンズを装着するのと同様です。
- ボディの準備: カメラの電源をOFFにします。ボディキャップを外します。EOS Mボディのマウント部(銀色のリングのさらに内側、赤い点と白い点があるあたり)を確認します。
- アダプターの準備: アダプターのEOS Mボディ側のキャップを外します。アダプターのEOS Mボディ側マウント部にある白いマーク(□で囲まれたマークなど、ボディ側の白い点と合わせるためのマーク)を確認します。
- 装着: EOS Mボディの白い点と、アダプターの白いマークを合わせます。そのままアダプターをボディのマウント部に差し込み、カチッと音がするまで時計回りに回します。
- 固定確認: アダプターがボディにしっかりと固定されたことを確認します。ぐらつきがないか触ってみましょう。
2.3 EF/EF-Sレンズをアダプターに装着する
アダプターがボディに装着できたら、次に使用したいEFまたはEF-Sレンズをアダプターに装着します。この手順は、EFマウントレンズを一眼レフボディに装着するのと同様です。
- レンズの準備: 使用したいEFまたはEF-Sレンズのリアキャップを外します。レンズのマウント部(銀色のリング、赤い点と白い点があるあたり)を確認します。
- アダプターの準備: アダプターのEF/EF-Sレンズ側のキャップを外します。アダプターのEF/EF-Sレンズ側マウント部にある赤い点または白い点を確認します。
- 装着: レンズの赤い点(または白い点)と、アダプターの赤い点(または白い点)を合わせます。そのままレンズをアダプターのマウント部に差し込み、カチッと音がするまで時計回りに回します。
- 固定確認: レンズがアダプターにしっかりと固定されたことを確認します。レンズを持ってぶら下げても外れないか確認しましょう(ただし、あまり乱暴に扱わないでください)。
これで、EFレンズを装着したEOS Mシステムが完成です。カメラの電源をONにして、レンズが認識され、絞り値などが表示されるか確認してみましょう。
2.4 アダプターとレンズの取り外し方
アダプターとレンズを取り外す際は、装着時と逆の手順で行います。
- カメラの電源をOFFにする: 誤動作を防ぐため、必ず電源をOFFにします。
- レンズの取り外し: EOS Mボディまたはアダプターにあるレンズ取り外しボタン(通常、マウント部の横にあるボタン)を押しながら、装着時とは逆方向(反時計回り)にレンズを回します。カチッと音がしたら、レンズをまっすぐ引き抜きます。
- キャップの装着: 取り外したレンズのリアキャップをすぐに装着し、マウント部を保護します。
- アダプターの取り外し: EOS Mボディにあるレンズ取り外しボタンを押しながら、装着時とは逆方向(反時計回り)にアダプターを回します。カチッと音がしたら、アダプターをまっすぐ引き抜きます。
- キャップの装着: 取り外したアダプターの前後キャップをすぐに装着し、マウント部と電気接点を保護します。EOS Mボディにもボディキャップを忘れずに装着します。
2.5 装着時の注意点
- ホコリやチリの付着: マウント面やアダプター、レンズの電気接点にホコリやチリが付着しないように注意しましょう。付着すると通信エラーや故障の原因になることがあります。屋外での着脱は極力避け、行う場合は風向きなどを考慮してください。
- 無理な力は加えない: 装着・取り外しの際は、位置を正確に合わせて優しく行い、無理な力を加えないでください。マウント部やアダプター、レンズの破損につながる可能性があります。
- 重いレンズの場合: 特に大型で重い超望遠レンズなどを装着する場合、カメラボディのEF-Mマウント部やアダプターに大きな負担がかかります。このようなレンズを使用する際は、必ずレンズ側に付いている三脚座(アダプターに付属している場合もある)を使用し、カメラボディではなくレンズ側で三脚に固定してください。レンズを持つ際も、レンズ本体をしっかりと支えるようにしましょう。三脚座がない場合は、カメラを構える際にレンズを下から支えるなどの配慮が必要です。
第3章:EFレンズをEOS Mで使うメリットとデメリット
EF-EOS Mアダプターを使うことで、どのような利点があり、どのような欠点があるのでしょうか。導入を決める前に、これを理解しておくことは非常に重要です。
3.1 メリット:EFレンズ資産を最大限に活かす
アダプターを使用する最大のメリットは、言うまでもなく「手持ちのEFレンズ資産を有効活用できる」ことです。
- 経済的負担の軽減: EOS Mシリーズ用にEF-Mレンズを新たに買い揃える必要がなくなります。すでに持っているEFレンズをそのまま使えるため、初期投資を抑えたり、レンズ購入の優先順位を変えたりできます。特に高価なLレンズなどをすでに所有している場合は、その価値をそのまま引き継げます。
- 豊富なレンズ選択肢: EFマウントレンズは、キヤノン純正だけでも100種類以上、さらにSIGMA、TAMRON、Tokinaなどのサードパーティ製レンズを加えると、そのラインナップは非常に膨大です。広角から超望遠、マクロ、魚眼、シフトレンズなど、EF-Mマウントにはない種類のレンズも多数存在します。アダプターを使うことで、これらの豊富なレンズの中から自由にレンズを選んでEOS Mで使用できるようになります。特定の表現をしたい場合や、特殊なレンズが必要な場合に非常に強力です。
- 高画質レンズの利用: キヤノンを代表する高性能レンズ「Lレンズ」シリーズは、ほとんどがEFマウントです。これらのLレンズをEOS Mに装着することで、EOS Mの描写力を最大限に引き出すことができます。特に解像度やコントラスト、ボケ味などに優れた写真や映像を撮影したい場合に有効です。
- APS-Cクロップの効果(望遠効果): EOS MシリーズのイメージセンサーはAPS-Cサイズです。EFレンズはフルサイズセンサーに対応していますが、APS-Cセンサーのカメラに装着すると、レンズ表記の焦点距離の約1.6倍相当の画角になります(これを「APS-Cクロップ」と呼びます)。例えば、焦点距離100mmのEFレンズをEOS Mに装着すると、フルサイズ換算で約160mm相当の画角になります。これは、望遠撮影において大きなメリットとなり、比較的コンパクトな望遠レンズでもさらに遠くの被写体を引き寄せて撮影できます。スポーツ、野鳥、動物、ポートレートなどで特に有効です。
- EFレンズ特有の描写: 長年多くの写真家や映像クリエイターに愛されてきたEFレンズには、そのレンズ特有の描写性能やボケ味があります。これらの個性をEOS Mでも楽しむことができます。
3.2 デメリット:アダプター使用に伴う制約
一方で、アダプターを使用することにはいくつかのデメリットや注意点が存在します。
- システムが大きくなる/重くなる: アダプターを装着する分、レンズとボディの間に約2.6cmほどの長さとアダプター自体の重量(キヤノン純正は約110g)が加わります。特にコンパクトさが売りのEOS Mシリーズにおいて、このアダプターの厚みと重量は無視できません。せっかくの軽量コンパクトなシステムが、一眼レフに近いサイズ感になってしまう場合があります。
- バランスが悪くなる: 軽量コンパクトなEOS Mボディに、大型で重いEFレンズを装着すると、重心がレンズ側に偏り、非常にバランスが悪くなります。特に三脚座のない大型レンズの場合、手持ちでの撮影は不安定になり、手やマウント部に大きな負担がかかります。快適な撮影のためには、レンズをしっかりと支えるなどの工夫が必要です。
- AF性能の低下(可能性あり): EFレンズをアダプター経由でEOS Mボディに使用する場合、AF性能が低下する可能性があります。これは、レンズとボディ間の電気信号のやり取りがアダプターを介するため、信号の遅延や変換ロスが生じる可能性があるためです。特に以下の点で影響が出やすい場合があります。
- 合焦速度: AFの合焦速度が、EFマウントの一眼レフボディや、EF-Mマウントレンズを装着した場合に比べて遅くなることがあります。
- 追従性能: 動体追従AF(サーボAF)の性能が、特に速い動きや不規則な動きをする被写体に対して低下することがあります。
- 暗所性能: 暗い場所でのAF性能が低下し、迷いやすくなることがあります。
- 古いレンズや一部のサードパーティ製レンズ: 特に古い設計のEFレンズや、一部のサードパーティ製EFマウントレンズは、新しいEOS Mボディとの連携が完全ではない場合があり、AF性能が著しく低下したり、正常に動作しなかったりする可能性があります。
- サードパーティ製アダプター: サードパーティ製アダプターは、製品によってAF性能の安定性や速度が大きく異なります。純正アダプターに比べてAFが遅い、迷いやすいといったケースが報告されています。
- 手ブレ補正性能への影響(可能性あり): レンズ内手ブレ補正(IS)機能についても、アダプターを介することで性能がわずかに低下したり、不安定になったりする可能性が指摘されています。ただし、これはレンズやアダプターの組み合わせによる影響が大きく、多くの場合は問題なく機能します。ボディ内手ブレ補正(IBIS)搭載機種(例: EOS M6 Mark IIなど、ただしMシリーズでIBIS搭載機種は現時点で少ない)とレンズ内手ブレ補正の両方が使える場合、協調制御がうまく機能しない可能性もゼロではありませんが、キヤノン純正アダプターであればほぼ問題なく協調制御が機能します。
- 周辺光量落ちや収差: EFレンズはフルサイズセンサーを前提に設計されているため、APS-Cセンサーに装着した場合は、レンズの中心部分のみを使用することになります。これにより、設計上の周辺光量落ちや歪曲収差などが軽減される効果は期待できます。しかし、逆に特定のレンズでは、APS-Cで使用した際に想定外の収差が出たり、周辺部の画質が設計値からずれたりする可能性も否定できません。これはレンズの設計によります。
- 防塵防滴性能の低下: アダプター自体に防塵防滴性能がない場合、アダプターを装着することで、ボディとレンズ間の防塵防滴性が損なわれる可能性があります。特に悪天候下での撮影時には注意が必要です。純正アダプターはある程度の防塵防滴構造を持っていますが、完全ではありません。
- 一部機能の制限: 極めて稀ですが、特定の古いEFレンズや特殊なレンズでは、アダプターを介することで一部機能(例: フォーカスプリセットなど)が使用できなくなる可能性があります。
これらのメリットとデメリットを比較検討し、自分の撮影スタイルや持っているEFレンズの種類に合わせて、アダプターが必要かどうか、そしてどのタイプのアダプターを選ぶべきかを判断することが重要です。特にAF性能については、アダプター使用時の最大の懸念点の一つであり、動体撮影を重視する場合は注意が必要です。
第4章:EF-EOS Mアダプターの選び方
市場にはキヤノン純正の他に、多くのサードパーティ製EF-EOS Mアダプターが存在します。どれを選べば良いのか迷ってしまうかもしれません。ここでは、アダプターを選ぶ際のポイントを詳しく解説します。
4.1 純正アダプターを選ぶべきか?
キヤノン純正のマウントアダプター EF-EOS Mは、最も無難で信頼性の高い選択肢です。
純正のメリット:
- 最高の互換性と信頼性: キヤノン自身が開発・製造しているため、キヤノンのEFレンズおよびEF-Sレンズとの互換性は最も高く保証されています。電気的な通信も安定しており、AF性能、AE性能、手ブレ補正などが設計通りに機能する可能性が最も高いです。
- 安定したAF性能: サードパーティ製に比べて、AF速度や精度、動体追従性能が安定している傾向があります。特に新しいUSMやSTM搭載レンズとの組み合わせで良好な性能を発揮します。
- ファームウェアアップデート: 必要に応じて、キヤノンのサービスセンターなどでファームウェアアップデートを受けることができます(通常、純正アダプター単体でのユーザーアップデートは提供されませんが、ボディ側のアップデートで対応される場合があります)。
- 品質と耐久性: キヤノンの品質基準に基づいて製造されているため、耐久性や精度が高い傾向があります。マウント部のガタつきなどが少ないです。
- 純正アクセサリーとの連携: EOS MボディやEFレンズなど、キヤノンの他の純正アクセサリーとの連携も考慮されています。
純正のデメリット:
- 価格が高い: サードパーティ製アダプターに比べて価格が高めです。
- 機能がシンプル: 基本的なマウント変換と電気通信機能のみで、後述するサードパーティ製に見られるような特殊な機能(三脚座付属、フィルター内蔵など)は搭載していません(ただし、純正アダプターの標準セットに三脚座マウントが付属しているものもあります)。
純正アダプターがおすすめな人:
- 予算に余裕があり、最も信頼性の高い選択をしたい人。
- AF性能や手ブレ補正など、レンズの機能を最大限に引き出したい人。
- レンズやボディとの相性問題を避けたい人。
- 主にキヤノン純正のEF/EF-Sレンズを使用する人。
純正アダプターには、単体モデルと、取り外し可能な三脚座マウントが付属したモデル(アダプターキットなどとして販売される場合あり)があります。重いレンズを使用する予定があるなら、三脚座付きモデルを検討すると良いでしょう。
4.2 サードパーティ製アダプターを選ぶ場合のポイント
サードパーティ製アダプターは、価格帯や機能が非常に幅広いです。選ぶ際には慎重な検討が必要です。
サードパーティ製のメリット:
- 価格が安い: 純正に比べて大幅に安価な製品が多いです。複数のボディでアダプターを使い回したい場合などに経済的です。
- ユニークな機能: 純正にはない様々な機能を搭載した製品があります。
- 三脚座付き: アダプター自体に三脚座が付いています。重いレンズを装着した際に、レンズ側で三脚に固定できるため、ボディやマウントへの負担を軽減できます。これは非常に便利な機能です。
- NDフィルター/C-PLフィルター内蔵: アダプター内部にドロップイン式のフィルターを装着できるタイプです。可変式NDフィルターやC-PLフィルターなどを使用でき、レンズの種類に関わらずフィルター効果が得られます。特に動画撮影などで絞りを開放したい場合に便利です。
- 電子接点なし(安価、MF専用): 極めて安価ですが、電気接点がないためAF、AE、絞り制御、手ブレ補正など、全ての電子機能が使用できません。マニュアルフォーカス専用となり、絞りもレンズ側の絞り環で操作できる一部のレンズ(古いレンズやMF専用設計のレンズなど)に限られます。基本的にはAFや電子制御したい場合は避けるべきですが、MF専用で割り切る場合は選択肢になります。
- デザイン: 純正とは異なるデザインやカラーバリエーターがある場合があります。
サードパーティ製のデメリット:
- 互換性の問題: 特定のEFレンズ(特に新しいレンズ、古いレンズ、一部のサードパーティ製EFレンズ)や、特定のEOS Mボディとの組み合わせで、AFが正常に動作しない、不安定になる、手ブレ補正が効かない、絞り値が表示されない、エラーが出るなどの問題が発生する可能性があります。全てのレンズ・ボディとの組み合わせで完璧に動作する保証はありません。
- AF性能のばらつき: 製品によってAF速度や精度が大きく異なります。純正に比べて明らかに遅い、迷いやすいといった製品も存在します。動体追従性能も期待できない場合があります。
- 耐久性: 純正に比べて材質や製造精度が劣り、耐久性が低い場合があります。マウント部のガタつきなども発生しやすい可能性があります。
- ファームウェアアップデート: 製品によってはユーザー自身でファームウェアアップデートができるものもありますが、対応が終了したり、アップデート方法が煩雑だったりする場合もあります。アップデートがないと新しいレンズやボディに非対応となるリスクがあります。
- サポート: 純正に比べてメーカーのサポート体制が不十分な場合があります。
サードパーティ製アダプターを選ぶ際のポイント:
- メーカーの信頼性: VILTROX、K&F Concept、Commliteなどは、比較的多くのユーザーが使用しており、情報が得やすいメーカーです。評判をよく調べましょう。
- レビューや口コミ: 使用したいEFレンズやEOS Mボディとの組み合わせで、実際に使用している人のレビューや口コミを徹底的に調べましょう。特にAF性能や安定性に関する情報は重要です。特定のレンズ(例: SIGMAやTAMRONのEFマウントレンズ)との相性を確認しましょう。
- 機能: 自分がアダプターに求める機能(三脚座、フィルター内蔵など)があるか確認しましょう。
- ファームウェアアップデートの対応: 今後のレンズやボディのアップデートに対応するため、ファームウェアアップデートがユーザー自身で可能か、その方法は簡単かなども確認しておくと安心です。
- 返品・交換の可否: 万が一、手持ちのレンズやボディと相性が悪かった場合に備え、購入店の返品・交換ポリシーを確認しておくと良いでしょう。
サードパーティ製アダプターがおすすめな人:
- 予算を抑えたい人。
- 純正にはない便利な機能(三脚座、フィルター内蔵など)を求める人。
- 特定のレンズとの組み合わせでの動作報告を確認した上で購入できる人。
- 多少の相性リスクを許容できる人。
- 主に静止画撮影で、シビアなAF性能を求めない人。
4.3 アダプター選びのまとめ
アダプター選びは、価格と性能、信頼性のトレードオフです。
- 迷ったら純正: 初めてアダプターを使う方や、トラブルを避けたい方は、価格が高くてもキヤノン純正アダプターを選ぶのが最も安心です。
- 特定の機能や価格重視ならサードパーティ製: 三脚座が必須、NDフィルターを内蔵したい、とにかく安く済ませたい、という場合は、サードパーティ製の中から評判の良い製品を選ぶことになります。その際は、購入前にレビューや口コミを十分に確認し、相性問題のリスクを理解しておくことが重要です。
できれば、レンタルなどを利用して、実際に使いたいレンズとボディ、そして候補のアダプターの組み合わせで試してみるのが一番確実な方法です。
第5章:EFレンズタイプ別活用術と注意点
アダプターを使ってEFレンズをEOS Mで使う際、レンズの種類によって活かし方や注意点が異なります。ここでは、代表的なレンズタイプごとに解説します。
5.1 標準・広角ズームレンズ(EF 24-105mm F4L IS USMなど)
- 活用術: EOS Mボディのコンパクトさを多少犠牲にはしますが、一本で幅広い画角をカバーできる便利なレンズとして活用できます。旅行先や日常のスナップ、風景撮影などに。Lレンズであれば、優れた描写力をコンパクトなEOS Mで楽しめます。EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STMなどのEF-S標準ズームは、EOS MもAPS-Cなので、そのままの画角(フルサイズ換算で約29-88mm相当)で使えます。
- 注意点: アダプターの長さと重さが加わるため、EF-Mレンズの標準ズーム(例: EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM)に比べて携帯性が劣ります。特にズーム時にレンズが大きく繰り出すタイプは、さらに重心が前に移動します。
5.2 標準・中望遠単焦点レンズ(EF 50mm F1.8 STM、EF 85mm F1.8 USMなど)
- 活用術: F値の明るい単焦点レンズは、美しいボケ味を活かしたポートレート撮影などに最適です。EF 50mm F1.8 STMは、EOS Mに装着するとフルサイズ換算約80mm F1.8相当となり、手軽にポートレートを楽しめる組み合わせになります。EF 85mm F1.8 USMはフルサイズ換算約136mm F1.8相当となり、より望遠効果と大きなボケが得られます。アダプターを使っても、単焦点レンズはズームレンズより比較的コンパクトなものが多いため、システム全体のサイズアップも抑えられます。
- 注意点: EF 50mm F1.8 STMのように、AF時にレンズ前玉が繰り出すタイプは、アダプター使用時もその動きがあります。重いレンズではないため三脚座は必須ではありませんが、やはりバランスはEF-M単焦点レンズに比べて悪くなります。
5.3 望遠ズームレンズ(EF 70-200mm F2.8L IS III USMなど)
- 活用術: EOS MのAPS-Cセンサーによる1.6倍の焦点距離換算効果が最も活きるのが望遠レンズです。EF 70-200mm F2.8L IS III USMであれば、フルサイズ換算で約112-320mm F2.8相当となり、非常に明るい望遠ズームとして活躍します。EF-S 55-250mm F4-5.6 IS STMなどのEF-S望遠ズームも、フルサイズ換算約88-400mm相当の画角で使えます。遠くの被写体を大きく写したい、スポーツ、野鳥、動物、航空機などの撮影に非常に強力な組み合わせとなります。
- 注意点: これらのレンズは大きく重いため、アダプターと組み合わせるとシステム全体が非常に大柄かつ重くなります。手持ちでの撮影は困難になる場合が多く、三脚座の使用がほぼ必須となります。三脚座がないアダプターを使う場合は、レンズ側に付属している三脚座を使用し、必ずレンズ側で三脚に固定してください。手持ちの場合は、レンズ本体をしっかりと支え、EOS Mボディのマウント部に負担がかからないように細心の注意を払う必要があります。また、特に古い設計のレンズでは、EOS Mボディとの組み合わせでAF速度や追従性能が低下しやすい傾向があります。
5.4 超望遠単焦点レンズ(EF 400mm F2.8L IS III USMなど)
- 活用術: EF 400mm F2.8L IS III USMをEOS Mに装着すると、フルサイズ換算で約640mm F2.8相当という驚異的な超望遠レンズになります。圧倒的な望遠効果と明るいF値で、プロレベルの野生動物やスポーツ写真、天体写真などが可能です。
- 注意点: 超望遠レンズは非常に高価で、大きく重いです。アダプターを介してEOS Mに装着する場合、その取り扱いはより慎重に行う必要があります。必ずレンズ側の強固な三脚座を使用し、三脚や一脚に固定してください。カメラボディ単体で支えることは絶対に避けてください。アダプターやボディのマウント部が破損する危険性があります。また、これらのレンズはAF性能が非常に重要ですが、アダプターを介することで本来の性能が発揮できない可能性も考慮しておく必要があります。
5.5 マクロレンズ(EF 100mm F2.8L マクロ IS USMなど)
- 活用術: 花や昆虫、小物の撮影など、被写体にぐっと寄って大きく写したい場合に活躍します。EF 100mm F2.8L マクロ IS USMは、フルサイズ換算約160mm相当の中望遠マクロレンズとして使用できます。ハイブリッドISの効果も期待できます。
- 注意点: マクロ撮影は被写界深度が極めて浅くなるため、正確なピント合わせが重要です。アダプター使用によるAFの迷いや遅延が、マクロ撮影においては特にシビアな問題となる可能性があります。ピント合わせはマニュアルフォーカス(MF)を積極的に活用し、EOS Mボディの拡大表示やピーキング機能を使うと良いでしょう。手ブレも写りに大きく影響するため、三脚の使用や手ブレ補正の活用が推奨されます。
5.6 魚眼レンズ、シフトレンズ、マニュアルフォーカスレンズなど
- 活用術: EFマウントには、EF-Mマウントには存在しないユニークなレンズ(例: EF 8-15mm F4L フィッシュアイ USM、TS-Eシリーズなど)があります。アダプターを使うことで、これらの特殊レンズをEOS Mでも使用できます。特にTS-Eレンズは建築写真などで遠近感を補正する際に便利です。古いMFレンズや、サードパーティ製のMF専用レンズもアダプターを介して使用可能です。
- 注意点: TS-Eレンズなど一部のレンズは、電子接点がないため、アダプターを介してもAFやAE、絞り制御などができません。MF専用レンズはもちろんMFでの使用となります。このようなレンズを使用する際は、EOS Mボディの拡大表示機能やピーキング機能が非常に役立ちます。これらの機能を使うことで、正確なピント合わせをサポートしてくれます。絞り設定は、レンズ側に絞り環があればそれで調整しますが、絞り環がない場合は常に開放絞りでの撮影となります。サードパーティ製アダプターの中には、絞り制御に対応しない非常に安価なMF専用アダプターもあるので、購入時に仕様をよく確認してください。
5.7 EF-Sレンズ
- 活用術: EF-SレンズはAPS-Cセンサー専用に設計されたEFマウントレンズです。EOS MシリーズもAPS-Cセンサーなので、アダプターを使えばEF-Sレンズをそのレンズが本来設計された通りの画角で、問題なく使用できます。EFレンズに比べて軽量・コンパクトな製品が多く、APS-Cセンサーに最適化されているため画質面でも良好な結果が得やすいです。EOS KissシリーズなどからEOS Mに乗り換えた場合、手持ちのEF-Sレンズ資産をそのまま活かせます。
- 注意点: EF-SレンズはEFレンズに比べて後玉が出っ張っている場合があり、一部の一眼レフボディ(フルサイズ機など)には物理的に装着できない「マウントの規制」がありますが、EF-EOS MアダプターはEF-Sレンズにも対応しており、安全に装着できるようになっています。特に大きな問題なく使用できるため、EF-SレンズはEFレンズよりもアダプター使用のメリットが大きいと言えるかもしれません。
第6章:アダプター使用時のよくある質問とトラブルシューティング
EF-EOS Mアダプターを使用していて、困ったことや疑問が出てくるかもしれません。ここでは、よくある質問とトラブルシューティングについて解説します。
6.1 AFが遅い、迷う、動作しない
- 原因:
- レンズとボディ、アダプター間の通信がうまくいっていない。
- レンズの設計が古い、または特定のサードパーティ製レンズで、新しいEOS Mボディとの相性が良くない。
- サードパーティ製アダプターの性能や互換性の問題。
- ファームウェアが古い(ボディ、アダプター、レンズ)。
- 暗い場所やコントラストの低い被写体など、AFが苦手な状況で撮影している。
- レンズのAFモーター(USM/STMではない古いタイプなど)の性能による限界。
- 対策:
- カメラの電源を一度OFFにし、アダプターとレンズを正確に装着し直してから再度電源をONにしてみてください。
- ボディ、アダプター(サードパーティ製の場合)、レンズ(新しいレンズやLレンズなど、ユーザーアップデート可能な場合)のファームウェアが最新か確認してください。
- 使用しているEFレンズがEOS Mボディとアダプターの組み合わせで動作確認されているか、メーカー情報やレビューを確認してください。
- 撮影環境を明るくしたり、コントラストの高い被写体に一度ピントを合わせ直したりするなど、AFが動作しやすい状況を試してみてください。
- AFエリアモードを一点AFにするなど、ボディ側のAF設定を変更して試してみてください。
- AFがどうしても不安定な場合は、マニュアルフォーカス(MF)に切り替えて、拡大表示やピーキング機能を活用してピント合わせを行ってください。特に静止した被写体やマクロ撮影では有効です。
- サードパーティ製アダプターの場合、他の製品のレビューなどを確認し、より相性の良いアダプターがないか検討してみてください。
6.2 手ブレ補正(IS)が効かない、おかしい
- 原因:
- レンズの手ブレ補正スイッチがOFFになっている。
- アダプターの電気接点不良などで通信がうまくいっていない。
- サードパーティ製アダプターの互換性問題。
- ボディ側の設定やファームウェアの問題。
- ボディ内手ブレ補正(IBIS)とレンズ内手ブレ補正(IS)の協調制御がうまくいっていない(純正アダプターでは発生しにくい)。
- 対策:
- レンズの手ブレ補正スイッチがONになっているか確認してください。
- アダプターとレンズを一度外し、電気接点を清掃してから再度装着してみてください。
- ボディのファームウェアが最新か確認してください。
- サードパーティ製アダプターの場合、他のユーザーの報告を確認したり、メーカーに問い合わせたりしてみてください。
- ボディとレンズの両方に手ブレ補正機能がある場合、ボディ側の手ブレ補正設定を確認してください。
6.3 絞り制御ができない、絞り値が表示されない
- 原因:
- アダプターの電気接点不良などで通信がうまくいっていない。
- サードパーティ製アダプターが絞り制御に対応していない(特に安価なMF専用アダプター)。
- レンズ側の問題(非常に稀)。
- 対策:
- アダプターとレンズを一度外し、電気接点を清掃してから再度装着してみてください。
- 使用しているアダプターが絞り制御に対応している製品か確認してください。
- カメラの電源をON/OFFしてみてください。
6.4 エラーメッセージが出る
- 原因:
- レンズが正しく認識されていない(装着不良、電気接点不良)。
- レンズやアダプターのファームウェアが古い。
- レンズとボディ、アダプターの組み合わせによる互換性の問題。
- レンズやアダプターの故障。
- 対策:
- レンズとアダプターを一度外し、清掃して正確に装着し直してください。
- カメラの電源を一度OFFにし、数秒待ってから再度ONにしてください。
- 別のレンズを装着して問題なく認識されるか試してみてください。
- ファームウェアが最新か確認してください。
- サードパーティ製アダプターの場合、メーカーに問い合わせるか、純正アダプターで試してみてください。
- これらの対策で改善しない場合、レンズ、アダプター、ボディのいずれかに故障がある可能性があります。
6.5 重いレンズでマウントに負担がかかるか?
- 原因: アダプターを介して重いEFレンズを装着すると、EOS MボディのEF-Mマウント部に応力が集中し、長期間使用したり、不適切な扱いをしたりするとマウント部が歪んだり破損したりするリスクがあります。
- 対策: 重いレンズ(一般的に500g以上を目安に)を使用する際は、必ず三脚座を使用し、カメラボディではなくレンズ側で三脚または一脚に固定してください。 三脚座付きのアダプターであればその三脚座を、レンズ自体に三脚座が付いている場合はレンズ側の三脚座を使用します。手持ちで撮影する場合も、レンズ本体をしっかりと支え、カメラボディやアダプターのマウント部への負担を軽減するように意識してください。レンズを持ってカメラをぶら下げるような持ち方は絶対に避けてください。
6.6 防塵防滴について
- 原因: アダプターはボディとレンズの間に挟まるため、その部分のシーリング構造が重要になります。純正アダプターはある程度の防塵防滴構造を持っていますが、一眼レフやLレンズのような厳密なものではない場合があります。サードパーティ製アダプターは、防塵防滴構造を持たない製品が多いです。
- 対策: アダプターを装着した状態で、ホコリや水滴、湿気の多い場所での撮影は避けるのが賢明です。特に雨や雪の中、砂塵の舞う場所などでの使用は、機材トラブルの原因となるリスクが高まります。やむを得ず使用する場合は、保護用のカメラカバーなどを使用するなどの対策を講じましょう。
これらのトラブルシューティングは一般的なものであり、全てのケースに当てはまるわけではありません。個別の状況や使用している機材によって原因や対策は異なります。
第7章:EF-EOS Mアダプターを活用した撮影のヒント
アダプターを使ってEFレンズをEOS Mで使う際に、より快適に、より良い写真を撮るためのヒントを紹介します。
7.1 アダプター装着時の持ち運び方法
アダプターを装着したレンズは、そのままカメラバッグに入れると、アダプターの厚みやレンズの長さで収まりが悪くなることがあります。また、重いレンズの場合は、ボディに付けたまま持ち運ぶとマウントに負担がかかる可能性があります。
- レンズとアダプターを装着したまま: 短時間の移動や、すぐに撮影したい場合は、レンズとアダプターを装着したまま持ち運ぶことが多いでしょう。この際、特に重いレンズの場合は、レンズ本体をしっかりと支えて運び、マウントに衝撃が加わらないように注意してください。カメラバッグに入れる際も、レンズを下にして収納するなど、マウントに負担がかかりにくい方法を選びましょう。
- レンズとアダプターを外して: 移動時間が長い場合や、重いレンズの場合は、レンズとアダプターをボディから外し、それぞれにキャップを付けて収納するのが安全です。アダプターにも前後キャップを忘れずに装着し、埃や傷から保護します。アダプター用の小さな収納ポーチなどがあると便利です。
7.2 手ブレ対策を万全に
アダプターを介することでシステムが重くなったり、バランスが悪くなったりするため、手ブレが発生しやすくなる可能性があります。特に望遠レンズ使用時は注意が必要です。
- シャッタースピード: 被写体ブレだけでなく、手ブレを防ぐためには適切なシャッタースピードを選択することが重要です。「1/焦点距離(フルサイズ換算)秒」よりも速いシャッタースピードを目安にすると良いでしょう。例えば、EF 100mmレンズ(フルサイズ換算160mm)を使うなら、1/160秒よりも速いシャッタースピード(1/200秒、1/250秒など)を選びます。
- 手ブレ補正(IS)の活用: レンズに光学式手ブレ補正(IS)機能が付いている場合は、積極的に活用しましょう。アダプターを介しても、多くの場合は正常に機能します。特に望遠域での手持ち撮影には必須です。
- 三脚/一脚の使用: 重いレンズや望遠レンズを使用する場合は、手ブレ対策として三脚や一脚を積極的に活用しましょう。三脚座のあるレンズやアダプターを使用し、レンズ側で固定することで、より安定した撮影が可能です。
- 脇を締める、カメラを安定させる: 手持ち撮影の場合、脇をしっかりと締めてカメラを体に密着させたり、壁や柱などに寄りかかったりするなど、カメラを安定させる工夫をしましょう。
7.3 AF性能を最大限に引き出す設定
アダプター使用時は、純正EF-Mレンズに比べてAF性能が低下する可能性があるため、ボディ側のAF設定を工夫することで、より快適なAFを実現できる場合があります。
- AFエリアモード: 動体撮影でなければ、一点AFや領域AFなど、より限定された範囲でAFを行うモードの方が、迷いにくく正確なピント合わせができることがあります。
- サーボAF設定: 動体追従AF(サーボAF)を使用する場合、ボディ側の詳細設定(追従感度、被写体追従特性など)を、被写体の動きに合わせて調整してみましょう。ただし、アダプター使用時はサーボAFの性能が低下しやすいため、期待通りの結果が得られない可能性もあります。
- ワンショットAFとサーボAFの使い分け: 被写体が静止している場合はワンショットAF、動いている場合はサーボAFと、状況に合わせて適切に切り替えることで、効率的なAFが可能です。
- MFへの切り替え: AFがどうしても安定しない場合や、シビアなピント合わせが必要な場合は、迷わずMFに切り替えて、拡大表示やピーキング機能を活用しましょう。特にマクロ撮影や、暗い場所での撮影には有効です。
7.4 APS-Cクロップを活かしたフレーミング
EOS MのAPS-CセンサーにEFレンズを装着すると焦点距離が1.6倍相当になることを意識して、フレーミングを行いましょう。
- 望遠効果の利用: 望遠レンズでは、この1.6倍効果を最大限に活かして、より遠くの被写体を引き寄せたり、被写体の一部をクローズアップしたりといった撮影が可能です。例えば、フルサイズでは焦点距離が足りないようなシーンでも、EFレンズとEOS Mの組み合わせなら対応できることがあります。
- 広角の注意点: 逆に広角レンズの場合、表記焦点距離よりも画角が狭くなります(例: EF 24mmレンズはフルサイズ換算約38mm相当)。広大な風景などをより広く写したい場合は、より短い焦点距離のEFレンズ(例: EF 14mmやEF 20mmなど)を使用するか、EF-Mマウントの超広角レンズ(例: EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM)を使用することを検討する必要があります。
7.5 EFレンズの描写特性を理解する
EFレンズは、その設計思想や年代、シリーズ(Lレンズかどうかなど)によって、描写特性(解像度、コントラスト、色乗り、ボケ味など)が異なります。
- レンズの個性を楽しむ: お手持ちのEFレンズの描写特性を理解することで、そのレンズの個性を活かした撮影ができます。例えば、特定のオールドレンズであれば、意図的にフレアやゴーストを発生させたり、独特のボケ味を楽しんだりといったことが可能です。
- レンズの欠点を理解する: 広角レンズの歪曲収差や、古いレンズの周辺光量落ちなど、レンズ固有の欠点も理解しておきましょう。これらの欠点は、撮影時の設定(絞り値など)や、RAW現像ソフトでのレンズプロファイル補正などで軽減できる場合があります。APS-Cで使用することで周辺部の欠点が目立ちにくくなる場合もありますが、レンズによっては中央部でも影響が出ることがあります。
結論:EFレンズ資産を眠らせない、EOS Mで広がる新たな可能性
キヤノンのEF-EOS Mアダプターは、手塩にかけて集めたEFレンズ資産を、コンパクトで高性能なEOS Mシリーズのカメラで再び輝かせるための、まさに「架け橋」となる存在です。
アダプターを使用することで、EFレンズの膨大なラインナップの中から自由にレンズを選び、高画質な写真や映像を撮影できるという大きなメリットが得られます。特に、すでにLレンズなどの高性能なEFレンズを所有している方にとっては、これらのレンズを無駄にすることなく、最新のミラーレスボディで活用できるため、非常に経済的かつ魅力的な選択肢となります。APS-Cセンサーによる1.6倍の焦点距離換算効果は、特に望遠撮影において大きなアドバンテージとなります。
一方で、アダプター使用に伴うシステム全体のサイズアップ、重量増、バランスの悪化、そしてAF性能の低下や互換性に関する潜在的なリスクといったデメリットも存在します。特に大型で重いレンズを使用する際には、三脚座の使用や丁寧な取り扱いなど、十分な注意が必要です。
アダプター選びにおいては、信頼性と価格、機能のバランスを考慮し、キヤノン純正アダプターの高い互換性と安定性を取るか、サードパーティ製アダプターの価格の安さやユニークな機能(三脚座付き、フィルター内蔵など)を選ぶかを検討する必要があります。サードパーティ製を選ぶ場合は、使用したいレンズやボディとの相性を十分にリサーチし、レビューや口コミを参考に慎重に選ぶことが大切です。
EF-EOS Mアダプターは万能ではありません。しかし、そのメリットとデメリット、そして使い方や注意点をしっかりと理解することで、お手持ちのEFレンズをEOS Mで最大限に活用し、新たな視点や表現方法を開拓することができます。コンパクトなEOS Mボディと、高性能なEFレンズの組み合わせは、あなたの写真ライフや映像制作に、きっと新鮮な驚きと可能性をもたらしてくれるはずです。
眠っているEFレンズがあるなら、ぜひEF-EOS Mアダプターの導入を検討してみてください。きっと、あなたのEOS Mでの撮影が、さらに豊かで楽しいものになるでしょう。
免責事項:
本記事は、EF-EOS Mアダプターに関する一般的な情報を提供するものです。特定のEFレンズ、EF-Sレンズ、EOS Mボディ、およびサードパーティ製アダプターの全ての組み合わせでの動作や性能を保証するものではありません。機材の個体差やファームウェアのバージョン、使用環境によって結果は異なります。サードパーティ製アダプターの使用は、メーカーの保証対象外となる場合や、カメラボディやレンズに予期せぬ影響を与えるリスクもゼロではありません。アダプターの購入および使用にあたっては、ご自身の判断と責任において行ってください。最新の互換性情報や推奨事項については、キヤノン公式サイトおよび各アダプターメーカーの公式情報を参照してください。
これで約5000語の記事となりました。アダプターの基本情報から、具体的な使い方、メリット・デメリット、選び方の詳細、レンズタイプ別の活用術、そしてトラブルシューティングと実践的なヒントまで、網羅的な内容を目指しました。