XF18mmF2 R 徹底紹介!特徴・評判・作例を解説
富士フイルムのXマウントシステムが誕生して以来、数々の魅力的なレンズが登場しました。その中でも、初期ラインナップの一角を担い、今なお多くの写真愛好家の間で語り継がれている存在、それがXF18mmF2 Rです。このレンズは、そのコンパクトなサイズと開放F2という明るさから多くの支持を集める一方で、その独特な描写性能やオートフォーカスの挙動から「癖が強い」「評価が分かれる」といった声も聞かれます。
この記事では、富士フイルムXF18mmF2 Rを徹底的に掘り下げ、その誕生の背景から、外観、光学性能、AF性能、実際の使用感、世間の評判、おすすめの活用シーン、そして他のレンズとの比較に至るまで、詳細に解説していきます。約5000語に及ぶこの徹底紹介を通じて、XF18mmF2 Rがどのようなレンズであり、どんな魅力や課題を持っているのか、そしてあなたの写真表現にどう活かせるのかを深く理解していただければ幸いです。
1. 富士フイルムXマウント黎明期とXF18mmF2 Rの誕生
XF18mmF2 Rの物語は、2012年1月、富士フイルムが初のレンズ交換式ミラーレスカメラ「FUJIFILM X-Pro1」を発表したその瞬間に始まります。X-Pro1は、富士フイルムが長年培ってきた写真フィルムの技術と、先進のデジタル技術を融合させた意欲的なモデルでした。フィルムシミュレーション機能や独自のX-Trans CMOSセンサーなど、その後のXシリーズの礎となる多くの要素が詰まっていました。
このX-Pro1と共に発表された交換レンズは、わずか3本でした。XF35mmF1.4 R、XF60mmF2.4 R Macro、そして今回紹介するXF18mmF2 Rです。これらは、単に新しいマウントのために開発されたレンズというだけでなく、富士フイルムがXマウントシステムにかける思想を体現する存在でした。それは、単に「写りが良い」だけでなく、「撮るプロセスを楽しむ」「レンズの持つ個性やキャラクターを活かす」といった、写真の本来的な楽しさを追求する思想です。
XF18mmF2 Rは、35mm判換算で27mm相当という、広角ながらも日常的なスナップや風景、室内など幅広い用途に使いやすい焦点距離を持つレンズとして位置づけられました。そして何より、その特徴的な「パンケーキ」型の薄型デザインは、システム全体の携帯性を飛躍的に向上させ、X-Pro1やその後のX-Eシリーズといったコンパクトなボディとの組み合わせにおいて絶大な魅力を放ちました。
当時のミラーレスカメラ用交換レンズは、まだ選択肢が少なく、特にコンパクトさと明るさ、そして高い描写性能を両立させたレンズは希少でした。XF18mmF2 Rは、その点でXマウントの先駆けとして、多くのユーザーに「いつでも持ち歩ける高性能な広角単焦点」という新しい価値を提供したのです。
これらの初期レンズは、現在のレンズと比較すると、オートフォーカスが遅かったり、駆動音が大きかったり、光学的な収差(歪曲や周辺減光など)が目立ったりといった「完璧ではない」側面も持っていました。しかし、富士フイルムはそれらを単なる欠点として捉えるのではなく、レンズの「味」や「キャラクター」として積極的に活かすという設計思想を持っていました。XF18mmF2 Rもまた、その思想を色濃く反映したレンズと言えるでしょう。
この黎明期から生まれたXF18mmF2 Rは、その後のXマウントシステムの進化を見守りつつ、今なお多くのカメラバッグの中に収まり、世界中で写真を撮り続けています。その背景を知ることで、このレンズが単なる道具ではなく、富士フイルムの写真への情熱が詰まった存在であることが理解できるはずです。
2. XF18mmF2 Rの主な特徴
それでは、XF18mmF2 Rの具体的な特徴を深掘りしていきましょう。外観から光学設計、AF性能まで、このレンズを特徴づける要素を詳細に解説します。
2-1. 外観とビルドクオリティ
XF18mmF2 Rを手に取ってまず目を引くのは、その驚くほどコンパクトなサイズです。レンズの全長はわずか約40.6mm、質量も約116gと非常に軽量です。これが「パンケーキレンズ」と呼ばれる所以であり、カメラボディに装着した際の一体感と携帯性は他の多くの単焦点レンズとは一線を画します。例えば、同等の焦点距離を持つXF18mmF1.4 R LM WRが全長75.6mm、質量370gであることを考えると、その差は歴然です。このコンパクトさは、日常的にカメラを持ち歩くスタイルや、旅行などで荷物を最小限に抑えたい場合に大きなメリットとなります。
外装は金属製で、しっかりとした質感を持っています。手に持ったときのひんやりとした感触や、程よい重みは、所有する喜びを満たしてくれます。金属製のレンズマウント部も耐久性を感じさせます。
特徴的なのは、鏡筒に配置された絞りリングです。「R」の文字が示す通り、このレンズは絞りリングを備えています。絞りリングは1/3段ごとのクリックがあり、メカニカルな心地よい操作感を提供します。A(オート)ポジションに合わせることで、カメラ側で絞りを制御することも可能です。ただし、初期のXFレンズは絞りリングのトルク(回転の重さ)が個体差や使用によって変化することが報告されており、少し緩くなったり、逆に硬くなったりする場合があります。この点は、新品購入時や中古品を選ぶ際に注意しておくと良いでしょう。
フォーカスリングは電子式(バイワイヤー)ですが、滑らかで適切なトルク感を持っています。マニュアルフォーカス時には、カメラ側のMFアシスト機能(フォーカスピーキング、デジタルスプリットイメージなど)と組み合わせることで、正確なピント合わせが可能です。
レンズフードは付属の専用品を使用します。非常に薄いパンケーキデザインを保つため、フィルター径と同じサイズの円筒形フードが付属します。これを装着すると、パンケーキらしい薄さはやや損なわれますが、それでも全体としてはコンパクトさを保ちます。このフードは逆向きに装着して収納することも可能ですが、少し引っかかりやすく、スムーズさに欠けるという意見もあります。また、フィルター径はφ52mmと一般的なサイズなので、保護フィルターや各種エフェクトフィルターも入手しやすいです。
総じて、XF18mmF2 Rの外観は、クラシックなデザインと現代的なコンパクトさが見事に融合しています。金属製の質感や絞りリングの操作感は、写真を撮る行為そのものを楽しませてくれる要素と言えるでしょう。
2-2. 光学設計と描写性能
XF18mmF2 Rの光学設計は、5群8枚構成(非球面レンズ2枚を含む)です。開放F値はF2と明るく、広角ながらもボケを活かした表現や、光量の少ない状況での撮影が可能です。最小絞りはF16となっています。
焦点距離と画角: 18mmという焦点距離は、APS-Cセンサーにおいては35mm判換算で27mm相当の画角となります。これは、広角レンズの中では比較的穏やかな画角であり、風景や都市景観を広く捉えるだけでなく、被写体に近づいて遠近感を強調したり、室内全体を写し込んだり、あるいはスナップポートレートなどで背景を広く取り入れたりと、非常に多用途に使える画角です。広すぎず狭すぎず、「標準広角」とでも呼ぶべきバランスの良さが魅力です。
開放F2の描写: 開放F2での描写は、このレンズの評価が分かれる最大の要因の一つです。中央部は開放から比較的シャープですが、画面周辺部や特に四隅では甘さ(解像感の低下)が見られます。これは、初期のXFレンズに共通する傾向であり、特に広角で大口径となると顕著に出やすい特性です。しかし、この周辺部の甘さや、後述する各種収差を「味」や「キャラクター」として捉える向きもあります。ポートレートなどで被写体を中央に配置し、周辺を意図的にソフトにすることで、独特の雰囲気を出すといった使い方も可能です。
絞りによる描写の変化: 絞りを一段二段と絞っていくにつれて、描写は急速に改善します。F4まで絞れば画面全体が実用的なレベルになり、F5.6~F8あたりで最もシャープネスが高まります。風景写真などで画面全体のシャープさを求める場合は、このあたりの絞り値を使用するのが一般的です。
ボケ味: 広角レンズでF2という明るさを持つため、被写体に近づけば背景を大きくぼかすことが可能です。ボケは、ピント面から滑らかに移行するというよりは、ややざわついたり、玉ボケに年輪状の模様(玉ねぎボケ)が見られたりすることがあります。また、口径食により、画面周辺部では玉ボケがレモンのような形に変形する傾向があります。これらのボケの特性も、レンズの「キャラクター」として受け止められる要素です。完璧に滑らかなボケを求めるレンズではありませんが、その不完全さが独特の雰囲気を作り出すこともあります。
収差(歪曲収差、色収差、周辺減光など):
* 歪曲収差(ディストーション): XF18mmF2 Rは、広角レンズとしては比較的強い樽型歪曲(画面中央から外側に向かって線が膨らむ歪み)を持っています。カメラ内のレンズ補正機能や、RAW現像ソフトで自動補正されることが前提の設計とも言えます。補正をかけると直線はまっすぐになりますが、画面周辺部で画像が引き伸ばされることで、本来の解像感がやや損なわれたり、不自然な引き伸ばし感が出たりする場合もあります。特に、補正後の四隅の描写については、初期の設計の限界が感じられる部分です。
* 色収差(パープルフリンジ、グリーンフリンジなど): 明るい部分のエッジなどに、マゼンタやグリーンの色が滲む色収差が見られることがあります。これも現代のレンズほど完璧に抑え込まれているわけではありませんが、多くの場合、カメラ内の補正やRAW現像で軽減・除去が可能です。
* 周辺減光(光量落ち): 開放F2では、画面の四隅が暗くなる周辺減光が見られます。絞るにつれて改善し、F4〜F5.6あたりでほとんど目立たなくなります。この周辺減光も、意図的に使うことで画面中央の被写体を際立たせる効果をもたらすことがあります。
* フレアとゴースト: 富士フイルム独自のSuper EBC(Electron Beam Coating)というコーティングが施されていますが、強い光源が画面内に入ると、フレアやゴーストが発生しやすい傾向があります。特に太陽などが画面の隅に入った場合などは注意が必要です。しかし、このフレアやゴーストも、時にアーティスティックな効果として写真に取り入れることが可能です。
最短撮影距離と最大撮影倍率: 最短撮影距離はレンズ先端から約18cm(センサー面からは20cm)です。これにより、テーブルフォトなどで被写体にかなり接近して撮影することが可能です。ただし、最大撮影倍率は0.14倍とそれほど高くないため、本格的なマクロ撮影には向きません。しかし、広角のパースを活かしつつ、手前の被写体を大きく写し、背景を広くぼかすといった表現は楽しめます。
全体として、XF18mmF2 Rの描写は、現代の最新レンズのような「どこまでもシャープで収差がない」というタイプではありません。特に開放での周辺部や歪曲収差などは、設計上の限界や思想が感じられます。しかし、中央部のシャープさや、特定の収差やボケ味が生み出す独特の雰囲気は、このレンズならではの「キャラクター」と言えます。このキャラクターを理解し、活かすことで、他のレンズでは得られない写真表現が可能になります。
2-3. AF性能と操作性
XF18mmF2 Rのオートフォーカス(AF)システムは、DCコアレスモーターを採用しています。これは、初期のXFレンズに広く採用されていた方式です。現在のリニアモーターやステッピングモーターを採用したレンズと比較すると、いくつかの点で違いがあります。
AF速度と精度: AF速度は、最新のレンズと比べると見劣りします。特に暗い場所や、コントラストの低い被写体に対しては、合焦までに時間がかかったり、迷ったりすることがあります。しかし、十分な光量がある環境や、コントラストの高い被写体に対しては、実用的な速度で合焦します。精度に関しては、合焦すればしっかりピントが合うことが多いですが、これも最新レンズのような絶対的な信頼性があるわけではありません。動体追従性能なども、最新の動体アルゴリズムとリニアモーターを組み合わせたレンズには及びません。
AF駆動音: XF18mmF2 RのAF駆動音は、比較的大きめです。「ジーコジーコ」といったメカニカルな音がするため、静かな場所での撮影や、動画撮影時には気になることがあります。特に動画撮影においては、外部マイクを使用しない限り、AF駆動音がそのまま音声に記録されてしまうため注意が必要です。
マニュアルフォーカス(MF): マニュアルフォーカスは電子式です。フォーカスリングを回転させることで、モーターを介してレンズ群が駆動します。操作感は滑らかで、前述の通りカメラ側のMFアシスト機能と組み合わせれば、正確なピント合わせが可能です。ただし、回転量とピント移動量の関係がリニアではないため、オールドレンズのような直感的な操作感とは異なります。
操作性: 絞りリングによる直感的な絞り操作は、Xシリーズを使う上で大きな魅力の一つです。物理的なリングを回して絞りを変える行為は、写真を撮る喜びを再認識させてくれます。フォーカスリングも適切に配置されており、MF時にも操作しやすいです。
総じて、XF18mmF2 RのAF性能は、その時代の技術レベルを反映したものです。最新の静かで高速なAFを求めるユーザーにとっては不満に感じるかもしれませんが、スナップ撮影など、それほど俊敏なAFを必要としない用途であれば、十分に実用的です。そして、多少の不便さがあったとしても、それを補って余りあるコンパクトさや、絞りリングによる操作性の良さといった魅力があります。
3. XF18mmF2 Rの「評判」と評価
XF18mmF2 Rは、Xマウントユーザーの間で非常に評価の分かれるレンズです。「神レンズ」と呼んで愛用する人がいる一方で、「使いにくい」「写りがイマイチ」と感じる人も少なくありません。このセクションでは、その評判の背景にあるものと、評価が分かれる理由を掘り下げます。
3-1. 賛否両論の要因
なぜXF18mmF2 Rはこれほどまでに評価が分かれるのでしょうか。主な要因は以下の点に集約されます。
- 光学性能の癖: 前述の通り、特に開放F2での周辺部の甘さ、比較的強い歪曲収差、そしてフレアやゴーストの出やすさといった点が、「現代的なシャープでパーフェクトなレンズ」を求めるユーザーにとっては不満の原因となります。これらの収差を抑え込むことがレンズ設計の主要な目標とされる現代において、XF18mmF2 Rの描写は「未完成」あるいは「古い」と感じられる可能性があります。
- AF性能: 遅くて駆動音が大きいAFは、特に動きの速い被写体を撮る場合や、動画撮影をする場合に大きなデメリットとなります。静かでスムーズなAFに慣れているユーザーにとっては、この点は許容しがたいと感じるかもしれません。
- 「キャラクター」の解釈: このレンズの描写や挙動を「味」「キャラクター」と捉え、積極的に楽しむことができるかどうかが、評価を大きく分けます。周辺光量落ちや特定のボケ味、フレアなどを表現の一部として受け入れられるユーザーにとっては魅力的なレンズとなりますが、そうでないユーザーにとっては単なる「欠点」でしかありません。
- 新しいレンズとの比較: Xマウントシステムが成熟し、XF18mmF1.4 R LM WRのような光学的に非常に優れた新しい広角単焦点レンズが登場したことで、XF18mmF2 Rの相対的な光学性能の評価はより厳しくなりました。より高性能な選択肢がある中で、あえてXF18mmF2 Rを選ぶ理由を見出せるかどうかも重要です。
3-2. 否定的な評判( Criticism )
XF18mmF2 Rに対する否定的な意見は、主に以下のような点に集中しています。
- 開放での周辺画質が甘すぎる: F2で撮ると画面の端が明らかに甘く、絞らないと全体的にシャープにならないため、開放F値のメリットが半減すると感じる。
- 歪曲収差が気になる: 直線を多く含む被写体(建築物など)を撮る際に、樽型歪曲が強く出て不自然に感じる。補正しても周辺の引き伸ばし感が気になることがある。
- AFがうるさくて遅い: スナップ中にAF音が響くのが気になる。動きのあるものを撮るのに向かない。動画にはまず使えない。
- 価格に見合わない光学性能(新品の場合): 新品価格で考えると、同等以上の画質を持つサードパーティ製レンズや、中古でもより安定した性能のレンズがあるのではないか、と感じる。
- フレアやゴーストが出やすい: 逆光時に意図しない強いフレアやゴーストが発生しやすく、使いづらい場面がある。
これらの意見は、レンズに「現代的な完璧さ」や「汎用性の高さ」を求めるユーザーからすると、ごく自然な感想と言えます。
3-3. 肯定的な評判( Praise )
一方で、XF18mmF2 Rを熱烈に支持するユーザーは、主に以下のような点を魅力として挙げます。
- 驚異的なコンパクトさ: 何よりもこのサイズと重さが素晴らしい。カメラに付けっぱなしにしておいても邪魔にならない。常に持ち歩けるからこそ、シャッターチャンスを逃さない。
- パンケーキなのにF2: この薄さで開放F値がF2は他にない。暗い場所で使えるし、広角でもそこそこボケるのが楽しい。
- 独特の描写「味」: 中央のシャープさと周辺の甘さ、周辺光量落ち、特定の状況で出るフレアなど、現代のレンズにはないアナログ的な、あるいはオールドレンズのような「味」がある。この描写が好み。
- 優れたビルドクオリティと操作感: 金属製でしっかりしている。絞りリングのクリック感も心地よい。写真を撮っているという感覚が味わえる。
- 換算27mmという絶妙な画角: 風景、スナップ、テーブルフォト、ちょっとしたポートレートまで、この一本で様々なシーンに対応できる。広すぎず、圧縮効果もそれほど出ないので、見た目に近い自然なパースペクティブが得られる。
- 中古市場での価格: 新しいレンズが出たことで、比較的安価に中古で入手できるようになっており、コストパフォーマンスが高い。
これらの意見は、レンズに「携帯性」「キャラクター」「撮る楽しさ」といった要素を重視するユーザーから聞かれることが多いです。XF18mmF2 Rは、性能の数値的な評価だけでは語れない、情緒的な魅力を持つレンズと言えるでしょう。
3-4. 「キャラクターレンズ」としての評価
XF18mmF2 Rは、しばしば「キャラクターレンズ」や「味のあるレンズ」と称されます。これは、前述の光学的な「欠点」とも取れる要素が、結果として写真に独特の個性をもたらすためです。
例えば、開放F2での周辺光量落ちや四隅の甘さは、画面中央の主題を自然に際立たせる効果があります。ポートレートであれば、被写体の顔がシャープに写り、背景の周囲がゆるやかにボケたり暗くなったりすることで、視線誘導が生まれます。フィルム写真におけるオールドレンズの描写に近いと感じる人もいるでしょう。
また、意図せず発生するフレアやゴーストも、時にノスタルジックな雰囲気や、光の存在感を強調する表現として活用できます。これは、最新のレンズが徹底的に排除しようとする要素であり、XF18mmF2 Rの設計思想の一部とも言えます。
しかし、「キャラクター」は受け手の感性によって評価が異なります。完璧な解像度やコントラスト、歪みのなさを求めるプロフェッショナルな用途や、後処理で全てをコントロールしたいと考えるユーザーにとっては、これらの要素は単なる「欠点」であり、使いこなすのが難しいと感じるかもしれません。
このように、XF18mmF2 Rの評価は、ユーザーがレンズに何を求めるか、どのような写真表現を目指すかによって大きく変わります。「万人に勧められる優等生レンズ」ではありませんが、「このレンズだからこそ撮れる写真がある」と感じるユーザーにとっては、唯一無二の存在となり得るのです。
4. XF18mmF2 Rの活用シーンとおすすめの被写体
XF18mmF2 Rがどのようなレンズか理解したところで、具体的にどのようなシーンや被写体でその能力を発揮するのかを見ていきましょう。このレンズの特性を理解すれば、その強みを最大限に活かすことができます。
4-1. スナップ写真
XF18mmF2 Rが最も得意とする、そして最も多くのユーザーがこのレンズを選ぶ理由となるのが、スナップ写真です。
- 携帯性: カメラボディに装着した状態でも非常にコンパクトで軽量です。コートのポケットや小さなバッグにも収まりやすく、カメラを持ち歩くこと自体が億劫になりません。これにより、日々の散歩やちょっとした外出時でも気軽にカメラを持ち出し、日常生活の中のふとした瞬間を切り取ることができます。
- 画角: 換算27mmは、広すぎず狭すぎず、見た目の感覚に近い自然な画角です。街中での建物や人々の営み、カフェでの一コマなど、その場の雰囲気を取り込みながら、主題を際立たせるのに適しています。被写体に少し近づくことで、パースペクティブを活かしたダイナミックな表現も可能です。
- F2の明るさ: 薄暗い室内や夕暮れ時など、光量の少ない状況でも手持ちで撮影しやすいです。ISO感度を抑えられるため、ノイズの少ないクリアな写真を撮ることができます。また、F2開放を使えば、背景をほどよくぼかして、スナップ写真に奥行きや立体感を加えることも可能です。
- 控えめな存在感: パンケーキレンズは威圧感が少なく、街中でカメラを構えても被写体に気づかれにくい傾向があります。これにより、自然な表情や状況を捉えやすくなります。
- 絞りリングの操作: 絞りリングを物理的に操作しながら歩くのは、まるでフィルムカメラを使っているかのような感覚で、写真を撮るプロセスそのものを楽しむことができます。
スナップでは、完璧な周辺画質よりも、むしろその場の雰囲気や光の捉え方が重要になることが多いです。XF18mmF2 Rの持つ独特の描写は、スナップ写真に深みや情緒を与えることがあります。また、AFの速度や音についても、スナップであればそれほど高速性を求められない場面が多いため、許容範囲となることが多いです。
4-2. 旅行写真
旅行もまた、XF18mmF2 Rの活躍の場です。
- 荷物の軽量化: 旅行では機材の重さが負担になりがちですが、XF18mmF2 Rは極めて軽量・コンパクトなので、サブレンズとして、あるいは思い切ってこれ一本だけを持っていくことで、旅の負担を大きく軽減できます。
- 多様なシーンへの対応: 観光地の風景、街角、食事、人物、夜景など、旅行中に遭遇する様々なシーンに対応できる万能な画角です。これ一本あれば、旅の思い出を十分に記録できるでしょう。
- 室内の撮影: 旅行先でのレストランやホテル、美術館など、光量の少ない室内でもF2の明るさが役立ちます。
- 現地の雰囲気を捉える: 換算27mmという画角は、広すぎずに「その場に立っている感覚」に近い写真を撮りやすいです。旅先の空気感を写真に閉じ込めるのに適しています。
風景写真では、絞って画面全体をシャープに写すことで対応できます。多少の歪曲は後処理で補正すれば問題ありません。ポートレートも、環境を含めて人物を撮るスタイルであれば、この画角が力を発揮します。
4-3. 風景写真
「広角レンズ」と聞くと、まず風景写真を思い浮かべる人も多いでしょう。XF18mmF2 Rも風景写真で活用できますが、その際はレンズの特性を理解した上で使う必要があります。
- 携帯性: 風景写真を撮るために登山やハイキングをする場合、軽量なレンズは大きなメリットとなります。XF18mmF2 Rは、標準ズームや他の広角レンズよりもずっと気軽に持ち運べます。
- 絞り込んで使う: 風景写真では、画面全体にピントを合わせ、隅々までシャープに写したい場合が多いです。XF18mmF2 RはF5.6〜F8あたりまで絞り込むことで、画面全体の描写が大幅に改善し、実用的なシャープネスが得られます。この絞り値であれば、多少の周辺光量落ちも解消されます。
- 歪曲補正: 風景写真では地平線や水平線、垂直な建物などを画面に入れることが多いため、歪曲収差が目立ちやすいです。RAW現像ソフトなどでプロファイル補正を適用することで、簡単に歪みを補正できます。ただし、補正によって周辺部の描写がややソフトになる可能性がある点は理解しておきましょう。
- フレアへの対処: 太陽を画面内に入れるような撮影をする際は、フレアやゴーストが出やすいことを念頭に置く必要があります。フードを適切に使用したり、構図を工夫したりすることで、影響を最小限に抑えることができます。
風景写真においては、XF18mmF1.4 R LM WRやXF10-24mmF4 R OIS WRといったより高性能なレンズが選択肢としてありますが、XF18mmF2 Rは「軽量に風景を撮りたい」というニーズに応えるレンズと言えます。
4-4. ポートレート
XF18mmF2 Rは、一般的にポートレートの定番とされる50mmや85mmといった中望遠レンズではありません。しかし、広角レンズならではのポートレート表現が可能です。
- 環境ポートレート: 被写体だけでなく、その人物を取り巻く環境や背景を広く写し込むタイプのポートレートに適しています。例えば、その人の職業を表す場所、思い出の場所、旅行先の風景など、背景の情報が写真のメッセージ性を高めます。換算27mmという画角は、背景を十分に写し込みつつ、被写体との距離感も取りやすいバランスです。
- 近距離での撮影: 被写体に近づいて撮ることで、広角レンズ特有の遠近感を強調できます。これにより、顔のパーツ(特に鼻など)が手前に大きく写り、ダイナミックで個性的なポートレートになります。ただし、画面の端に顔のパーツが来ると、歪んで不自然になる可能性があるため、構図には注意が必要です。
- F2のボケ: 広角レンズであっても、被写体に十分に近づき、背景との距離を離せば、背景をぼかすことができます。XF18mmF2 RのF2という明るさは、広角ポートレートにおいて背景を分離させるのに役立ちます。ボケ味に癖があるため、背景によっては少しざわついたりしますが、それがキャラクターとして活きる場合もあります。
- スナップポートレート: 街中で自然な表情を捉えるスナップポートレートにも向いています。コンパクトで威圧感がないため、被写体もリラックスしやすいでしょう。
メインのポートレートレンズとして使うよりは、表現の幅を広げるための選択肢として、あるいはスナップ的なポートレートを撮る際に活躍するレンズと言えます。
4-5. その他(テーブルフォト、室内、動画など)
- テーブルフォト・物撮り: 最短撮影距離が短いため、テーブルの上の料理や小物をクローズアップして撮る際に便利です。広角のパースを活かして、手前のものを強調し、奥のものを広く写し込むといった構図も可能です。
- 室内撮影: 広角かつF2という明るさは、狭い室内や暗い室内での撮影に非常に有利です。部屋全体を写したり、限られたスペースで被写体と距離を取りたい場合に役立ちます。
- 動画撮影: 前述の通り、AF駆動音が気になる点に注意が必要です。しかし、換算27mmはVlogなどの自撮りにも比較的使いやすい画角であり、F2の明るさも動画撮影で有利に働くことがあります。外部マイクを使用するか、マニュアルフォーカスで撮ることを前提とするのであれば、選択肢に入り得ます。
このように、XF18mmF2 Rは、そのコンパクトさやF2という明るさ、そして換算27mmという画角を活かすことで、様々なシーンで活躍できるポテンシャルを持っています。ただし、各シーンでそのレンズの特性(特に歪曲や開放での描写など)を理解し、それに合わせた使い方をすることが、良い結果を得るための鍵となります。
5. 競合レンズとの比較
富士フイルムのXマウントシステムは年々進化し、現在ではXF18mmF2 R以外にも魅力的な広角単焦点レンズが数多く存在します。また、サードパーティ製レンズも選択肢に入ってきました。ここでは、XF18mmF2 Rと他の主な広角単焦点レンズを比較し、それぞれの違いやXF18mmF2 Rを選ぶ理由・選ばない理由を明確にします。
5-1. 富士フイルム純正レンズ
- XF18mmF1.4 R LM WR:
- 違い: XF18mmF2 Rの「後継」とも言えるレンズですが、全く異なる設計思想で開発されています。最大の違いは開放F値がF1.4と非常に明るいこと、そして光学性能が圧倒的に高いことです。開放から画面全域で非常にシャープで、収差もよく抑えられています。AFはリニアモーター採用で非常に高速・静音です。防塵防滴耐低温構造も備えています。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: 光学性能(シャープネス、収差補正)、AF性能(速度、静音性)、開放F値の明るさ(F1.4)、防塵防滴性。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: サイズ、重さ、価格。XF18mmF1.4 R LM WRはパンケーキとは程遠いサイズです。価格も新品ではXF18mmF2 Rの数倍になります。
- 選び分け: 最先端の光学性能や高速AF、防塵防滴性を求めるならXF18mmF1.4 R LM WR。携帯性やコンパクトさを最優先し、ある程度の光学的な癖や遅いAFを許容できるならXF18mmF2 R。
- XF16mmF2.8 R WR:
- 違い: 焦点距離は16mm(換算24mm相当)とXF18mmF2 Rより少し広角です。開放F値はF2.8と一段暗くなります。描写はF2.8から画面全体で良好なシャープネスを持ち、歪曲収差も比較的少ないです。AFはステッピングモーターで、XF18mmF2 Rより高速かつ静音です。防塵防滴耐低温構造も備えています。XF23mmF2、XF35mmF2と同じ「F2シリーズ」の一つとして、コンパクトさと性能のバランスを重視した設計です。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: AF性能(速度、静音性)、防塵防滴性、画面全域でのシャープネス(特に開放付近)、歪曲収差の少なさ。サイズも比較的コンパクトです。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: 開放F値(F2.8)、パンケーキデザインではない(XF18mmF2 Rの方がさらに薄い)。
- 選び分け: F2.8で十分な明るさで、コンパクトさ、静音AF、防塵防滴性を重視するならXF16mmF2.8 R WR。F2という明るさと、極めて薄いパンケーキデザイン、そして独自の描写キャラクターを求めるならXF18mmF2 R。焦点距離の好み(24mm相当か27mm相当か)も重要な選択基準です。
- XF23mmF2 R WR:
- 違い: 焦点距離が23mm(換算35mm相当)と標準的な画角になります。開放F値はF2でXF18mmF2 Rと同じですが、画角が異なるためボケの大きさや圧縮効果が変わります。AFはステッピングモーターで、XF18mmF2 Rより高速静音です。防塵防滴耐低温構造を備え、サイズもコンパクトなF2シリーズの一つです。描写も開放から比較的良好です。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: AF性能(速度、静音性)、防塵防滴性、標準的な35mm相当の画角、開放からの描写の安定性。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: 広角ではない(画角が違う)、パンケーキデザインではない。
- 選び分け: 広角ではなく標準的な35mm相当の画角を好み、コンパクトさ、静音AF、防塵防滴性を重視するならXF23mmF2 R WR。広角の27mm相当の画角を好み、パンケーキデザインとXF18mmF2 Rのキャラクターを求めるならXF18mmF2 R。
- XF27mmF2.8 R WR:
- 違い: 焦点距離は27mm(換算41mm相当)と、ほぼ標準レンズに近い画角です。開放F値はF2.8とXF18mmF2 Rより一段暗いですが、XFレンズの中で最も薄い「ガチ」パンケーキレンズです。AFはステッピングモーター(新型はリニアモーター)で、XF18mmF2 Rより静音です。WRモデルは防塵防滴耐低温構造も備えています。光学性能は非常に高く、開放から画面全体でシャープです。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: 極めて薄いサイズ、開放からの画面全体のシャープネス、歪曲収差の少なさ、AF性能(静音性)、防塵防滴性(WRモデル)。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: 開放F値(F2.8)、画角(41mm相当と広角ではない)。
- 選び分け: 究極の携帯性を追求し、開放F値がF2.8で十分ならXF27mmF2.8 R WR。開放F値F2という明るさと、少し広角な27mm相当の画角、そしてXF18mmF2 Rの描写キャラクターを求めるならXF18mmF2 R。
5-2. サードパーティ製レンズ
- Sigma 16mm F1.4 DC DN | Contemporary:
- 違い: 焦点距離は16mm(換算24mm相当)とXF18mmF2 Rより広角です。開放F値はF1.4と非常に明るく、光学性能も非常に高いです。開放からシャープで、ボケも比較的綺麗です。AFも高速静音です。ただし、サイズは大きく、重さも約405gとXF18mmF2 Rの3倍以上あります。絞りリングはありません。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: 光学性能(シャープネス、ボケ、収差)、開放F値(F1.4)、AF性能、価格(新品価格はXF18mmF2 Rに近いかそれ以下)。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: サイズ、重さ、絞りリングがない、防塵防滴性がない(マウント部のみ簡易防滴)、レンズキャラクターの面白さ(良くも悪くも現代的でクリアな写り)。
- 選び分け: 最高の光学性能と明るさ、静音AFを求め、サイズと重さを許容できるならSigma 16mm F1.4。携帯性を最優先し、F2の明るさとXF18mmF2 Rのキャラクターを求めるならXF18mmF2 R。
- Viltrox AF 13mm F1.4 XF:
- 違い: 焦点距離は13mm(換算20mm相当)とXF18mmF2 Rよりかなり広角です。開放F値はF1.4と明るく、比較的良好な光学性能を持ちます。AFも高速です。ただし、サイズはかなり大きく、重さもXF18mmF2 Rより重いです。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: 画角(より広角)、開放F値(F1.4)、光学性能(特に中央部)、AF速度。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: サイズ、重さ、周辺部の描写(特に開放)、価格(新品価格)、情報量(比較的新しいためレビューが少ない)。
- 選び分け: より広い画角とF1.4の明るさを求め、サイズと重さを許容できるならViltrox 13mm F1.4。携帯性を最優先し、27mm相当の画角とXF18mmF2 Rのキャラクターを求めるならXF18mmF2 R。
- Samyang/Rokinon AF 12mm F2 X: (AFモデル)
- 違い: 焦点距離12mm(換算18mm相当)の超広角レンズです。開放F値F2でXF18mmF2 Rと同じ明るさです。AFモデルは比較的コンパクトで軽量です。
- XF18mmF2 Rと比較して優れている点: 画角(超広角)、価格(比較的安価)。
- XF18mmF2 Rと比較して劣っている点: AF性能(XF18mmF2 Rより遅い・不安定なことも)、光学性能(特に周辺部や収差)、ビルドクオリティ(プラスチック外装が多い)、絞りリングがない。
- 選び分け: 超広角を安価に入手したいならSamyang AF 12mm F2。携帯性(パンケーキ)、27mm相当の画角、絞りリング、XF18mmF2 Rのキャラクターを求めるならXF18mmF2 R。
5-3. 比較のまとめ:XF18mmF2 Rは「何を優先するか」で選ぶレンズ
多くの競合レンズと比較すると、XF18mmF2 Rは光学性能やAF性能において、最新のレンズに見劣りする部分があることは否めません。しかし、それでもなおXF18mmF2 Rを選ぶ理由があるとすれば、それは以下の点を最優先する場合です。
- 圧倒的な携帯性・コンパクトさ: カメラに付けっぱなしで苦にならないサイズと重さ。これはXF18mmF1.4や多くのサードパーティレンズにはない最大の強みです。
- パンケーキなのにF2という明るさ: このサイズでF2を実現しているレンズは他にほとんどありません。
- XF18mmF2 R独自の描写キャラクター: 完璧ではないからこその「味」や「個性」を写真表現に活かしたい。
- 絞りリングによる直感的な操作性: 物理的な操作を楽しむスタイル。
- 中古市場での価格: 比較的安価に手に入るため、コストを抑えたい場合。
最新最高の性能を求めるならXF18mmF1.4やSigma 16mm F1.4が有力な選択肢となります。バランスの取れたコンパクトさと性能を求めるならF2シリーズ(XF16mmF2.8, XF23mmF2)やXF27mmF2.8 R WRが良いでしょう。
XF18mmF2 Rは、性能リストだけを見て判断すると「劣っている」と評価されがちですが、「どんな写真を撮りたいか」「どんなスタイルで撮りたいか」という視点で見ると、今でも非常に魅力的なレンズであり、他のレンズでは代替できない唯一無二の存在感を放っています。
6. XF18mmF2 Rの作例と解説(※写真の直接表示はできません)
このセクションでは、XF18mmF2 Rで撮影された写真の具体的なイメージを言葉で説明し、その描写特性がどのように写真に表れるかを解説します。読者の皆様は、これらの解説を参考に、FlickrやInstagram(#xf18mmf2r など)、各種カメラレビューサイトなどで実際の作例写真を検索してご覧ください。
6-1. 作例解説:街角スナップ(開放F2)
想像する写真: 夕暮れ時、賑やかな商店街の一角。手前に置かれた植木鉢にピントを合わせ、その奥にぼんやりと店の灯りや行き交う人々が写り込んでいる。
解説: このシーンでは、XF18mmF2 RのF2開放での描写が活かされます。手前の植木鉢は中央付近に配置されており、シャープに描写されています。奥の背景は広く写し込まれていますが、F2の浅い被写界深度により大きくぼけています。玉ボケは完全な円形ではなく、周辺部では口径食の影響で楕円形に近づいているかもしれません。また、背景のざわつきや二線ボケが見られる可能性もありますが、それが街の喧騒感を表現する「味」となっているかもしれません。画面四隅は、開放ゆえに少し甘い描写になっている可能性がありますが、主題である植木鉢に視線が誘導されるため、それほど気にならないかもしれません。全体として、ノスタルジックで雰囲気のある写真になるでしょう。
6-2. 作例解説:風景写真(絞りF8)
想像する写真: 広大な山の風景。手前に岩や草があり、中央に雄大な山々、空には雲が浮かんでいる。画面全体にピントが合っており、遠景までシャープに見える。
解説: この写真では、XF18mmF2 RをF8まで絞って撮影しています。F8まで絞ることで、レンズの光学性能は最も向上し、画面中央から周辺部、そして四隅に至るまで、高いシャープネスが得られます。岩の質感、山肌のディテール、空に浮かぶ雲の立体感などが、クリアに描写されているでしょう。歪曲収差は、カメラ内補正やRAW現像ソフトによって修正されており、地平線や山の稜線は不自然な歪みなく写っています。周辺減光もF8まで絞ればほぼ解消されており、画面全体に均一な明るさが見られるはずです。フレアやゴーストは、太陽が直接画面に入っていなければ、ほとんど発生していないでしょう。これは、風景写真でこのレンズのポテンシャルを最大限に引き出した例と言えます。
6-3. 作例解説:環境ポートレート(開放F2)
想像する写真: カフェの窓際で読書をする人物。窓の外の街並みや室内の雰囲気が背景に広く写り込み、人物にピントが合っている。
解説: 換算27mmという画角は、人物とその背景をバランス良く写し込む環境ポートレートに適しています。人物は画面中央付近に配置することで、開放F2でも比較的シャープに捉えられます。背景のカフェのインテリアや窓の外の街並みは広く写っていますが、F2の浅い被写界深度により適度にぼけて、人物を引き立てています。ただし、人物が画面の端に寄っている場合、広角レンズ特有のパースペクティブにより顔がやや歪んで写る可能性があるため、構図には注意が必要です。背景のボケに多少のざわつきが見られるかもしれませんが、それがカフェの賑やかな雰囲気を伝える要素になることもあります。窓からの逆光が入っている場合、フレアが発生し、少し柔らかい描写になる可能性があります。
6-4. 作例解説:テーブルフォト(最短撮影距離付近)
想像する写真: テーブルの上のコーヒーカップと本。コーヒーカップの手前にピントが合っており、カップの縁や表面の質感がシャープに描写されている。奥の本やテーブルの端は大きくぼけている。
解説: XF18mmF2 Rは最短撮影距離が短いため、このように被写体に接近して撮影することができます。手前のコーヒーカップにピントを合わせることで、広角レンズ特有の近接撮影時のパースペクティブが強調され、手前のものがより大きく、奥のものがより小さく写ることで、奥行き感が生まれます。開放F2を使えば、最短撮影距離付近では非常に浅い被写界深度が得られ、背景の本やテーブルは大きくぼかすことができます。この際のボケ味に、前述の玉ねぎボケやざわつきが見られる可能性はありますが、大きくぼけていればそれほど目立たないでしょう。手前のカップの中央部分は非常にシャープに描写されているはずです。
6-5. 作例から読み取れること
これらの作例解説から、XF18mmF2 Rの描写特性を以下のようにまとめることができます。
- 開放F2: 中央部は比較的シャープだが、周辺部や四隅は甘くなる傾向がある。被写界深度は浅く、背景をぼかせるが、ボケ味に癖がある。周辺光量落ちが見られる。
- 絞り込む(F5.6〜F8): 画面全体のシャープネスが大幅に向上し、実用的な描写になる。周辺光量落ちも解消される。
- 歪曲収差: 樽型歪曲が見られるが、補正で対応可能。ただし、補正後の周辺描写に影響がある場合がある。
- フレア・ゴースト: 強い光源に対しては発生しやすいが、表現として活用できる場合もある。
- 最短撮影距離: 短いので、広角のパースを活かした近接撮影が可能。
実際の作例を見ることで、これらの文字情報がどのように写真に反映されるのかが具体的にイメージできるでしょう。XF18mmF2 Rの真価は、カタログスペックだけでなく、その独特の描写が織りなす写真の雰囲気にあると言えます。
7. 購入を検討している方へ
ここまでXF18mmF2 Rの特徴や評判を詳しく見てきましたが、実際にこのレンズの購入を検討している方のために、改めてこのレンズが「誰に向いているか」「誰には向かないか」、そして購入時の注意点などをまとめます。
7-1. XF18mmF2 Rはこんな人におすすめ
- とにかくコンパクトで軽量な広角単焦点が欲しい人: これがXF18mmF2 Rの最大の強みです。常にカメラバッグに入れておきたい、あるいはボディに付けっぱなしで気軽に持ち運びたいというニーズに完璧に応えます。
- パンケーキなのにF2という明るさが魅力的に感じる人: このサイズでF2というスペックは稀有であり、暗所撮影やボケ表現の幅を広げたい人には大きなアドバンテージです。
- レンズの描写に「味」や「キャラクター」を求める人: 現代のレンズのような均一で完璧な描写よりも、多少の収差や独特のボケ、フレアなどを「個性」として楽しめる人。オールドレンズ的な写りが好きな人にも響くかもしれません。
- スナップ撮影が好きな人: 携帯性の高さ、控えめな存在感、換算27mmという画角はスナップシューターにとって非常に魅力的です。
- 日常的にカメラを持ち歩きたい人: 通勤途中や散歩など、日々の生活の中で写真の機会を増やしたい人に最適です。
- 絞りリングによる操作感を重視する人: 物理的な絞りリングを回すことで、写真を撮るプロセスそのものを楽しめます。
- コストパフォーマンスを重視する人(特に中古): 新しい高性能レンズが登場したことで、中古市場では比較的安価に入手できる機会が増えています。
7-2. XF18mmF2 Rはこんな人にはおすすめしない
- 画面全域で隅々まで完璧なシャープネスを求める人: 開放での周辺画質は甘く、絞っても最新レンズほどの絶対的なシャープネスは得られません。最高の解像度を求めるなら、XF18mmF1.4 R LM WRなどを検討すべきです。
- 歪曲収差が全くないクリーンな描写を求める人: 樽型歪曲は比較的強く、補正後も周辺部に不自然さが出ることがあります。建築写真などで厳密な直線を求める用途には不向きな場合があります。
- 高速で静音なオートフォーカスが必須な人: AF速度は最新レンズに劣り、駆動音も大きいです。特に動画撮影でAFを使いたい人や、素早く動く被写体を追いかけたい人には向きません。
- 徹底した逆光耐性を求める人: 強い光源が入るとフレアやゴーストが発生しやすい傾向があります。意図しない形でこれらの現象が出るのを避けたい人にはストレスになるかもしれません。
- 防塵防滴耐低温構造が必要な人: このレンズは防塵防滴仕様ではありません。悪天候下での撮影が多い場合は、WR付きのレンズを選ぶべきです。
7-3. 新品 vs 中古
XF18mmF2 Rは比較的古いレンズであるため、新品での流通量は減っており、中古市場が主な入手経路となることが多いです。
- 新品のメリット: 最新の個体を入手できる、メーカー保証が付く、状態が完全に新品である。
- 中古のメリット: 価格が安い。新品では手に入りにくい場合でも入手可能。
- 中古の注意点:
- 状態確認: 外装の傷だけでなく、レンズ内部のチリ・ホコリ、カビ・曇りなどを確認しましょう。特に初期のXFレンズはAF駆動音が個体差があったり、絞りリングのトルクが緩くなっていたりすることがあります。可能であれば、実際にカメラに装着してAFや絞りリングの動作を確認するのが理想です。
- 保証: 中古品の場合、店舗保証のみか、保証がない場合が多いです。信頼できる店舗で購入しましょう。
- 付属品: フードやレンズキャップが揃っているか確認しましょう。
中古市場では、時期によって価格が変動しますが、新品価格よりもかなり手頃に入手できることが多く、コストパフォーマンス重視であれば中古は魅力的な選択肢です。
7-4. アクセサリー
XF18mmF2 R用の主なアクセサリーとしては、レンズ保護フィルターやNDフィルター(減光フィルター)、PLフィルター(偏光フィルター)などがあります。フィルター径はφ52mmで、多くのメーカーから様々な種類のフィルターが販売されています。
また、付属の純正フード以外に、サードパーティ製のおしゃれなメタルフードなどもあります。特にクラシックなデザインのフードは、X-ProシリーズやX-Eシリーズといったボディとの組み合わせで、より一層レトロな雰囲気を醸し出します。
8. XF18mmF2 Rと「旅」
XF18mmF2 Rは、その特性から「旅レンズ」として非常に高い評価を受けています。このセクションでは、XF18mmF2 Rを旅に連れて行くことの魅力について、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
8-1. 旅の負担を軽減する究極の携帯性
旅の最大の敵の一つは荷物の重さです。特に飛行機移動などでは、持ち込める荷物の量に制限があることも少なくありません。カメラ機材はかさばりやすく、重くなりがちですが、XF18mmF2 Rはカメラボディに装着したまま小さなバッグに収まるほどコンパクトです。例えば、X-EシリーズやX-Txxシリーズといった比較的コンパクトなボディに装着すれば、まるで高級コンパクトデジカメのような感覚で持ち運べます。これにより、大きなカメラバッグを持つ必要がなくなり、身軽に旅を楽しむことができます。これは、特に街歩き中心の旅や、登山、サイクリングといったアクティビティと写真を両立させたい場合に絶大なメリットとなります。
8-2. 旅のあらゆるシーンに対応する画角と明るさ
旅先では、壮大な自然風景、歴史的な街並み、活気ある市場、美味しい料理、そして人々の笑顔など、様々な被写体と出会います。XF18mmF2 Rの換算27mmという画角は、これらの多様なシーンにこれ一本で対応できる汎用性の高さを持っています。広角すぎないので建築物が不自然に歪むことも少なく、かといって狭すぎないのでその場の雰囲気も十分に写し込めます。
また、旅先の室内や夜景など、光量の少ない状況に遭遇することも多いでしょう。F2という明るさは、三脚を使わずに手持ちで撮影できる可能性を広げ、旅先での自由な撮影スタイルをサポートします。例えば、夜の露店やバーの雰囲気、ライトアップされた建物を手ブレを気にせず撮影できます。
8-3. 「撮ること」自体を楽しむ旅のスタイル
XF18mmF2 Rの金属製の質感や絞りリングの操作感は、写真を撮るという行為自体に喜びをもたらします。旅先でゆっくりと時間をかけて構図を考え、絞りを決め、シャッターを切る。デジタルカメラでありながら、どこかフィルムカメラのようなアナログな感覚で、旅の瞬間を丁寧に切り取っていくことができます。これは、単に記録として写真を撮るだけでなく、旅の体験の一部として「写真撮影」そのものを楽しみたい人にとって、非常に価値のある要素です。
8-4. 旅の思い出に「味」を加える描写
旅の写真は、時に完璧な写りよりも、その時の空気感や感情を呼び起こす描写が重要になることがあります。XF18mmF2 Rの持つ独特の描写キャラクターは、旅の思い出に深みや情緒を加える可能性があります。開放F2で撮った夜の街の光のボケ味、夕暮れ時に発生したフレア、古い街並みを撮った際の少し柔らかい描写などが、後から写真を見返したときに、旅の雰囲気や感動を鮮やかに蘇らせてくれるかもしれません。
もちろん、旅のスタイルや撮りたい被写体によっては、より広角なレンズや望遠レンズ、あるいはズームレンズが必要になる場合もあります。しかし、「身軽に、そして日常の延長のような感覚で旅先を歩き回り、そこで出会ったものを自然に切り取りたい」と考える人にとって、XF18mmF2 Rは最高の旅の相棒となり得るレンズです。これ一本を持って旅に出ることで、写真に対する新しい発見があるかもしれません。
9. XF18mmF2 Rの「将来性」と価値
Xマウントシステムには、XF18mmF1.4 R LM WRという最新・高性能な広角単焦点レンズが登場しました。これにより、「XF18mmF2 Rはもう古いレンズなのか?」「これから買う価値はあるのか?」といった疑問を持つ人もいるかもしれません。このセクションでは、XF18mmF2 Rの「将来性」と、現代におけるその価値について考察します。
9-1. 古くなっても失われない「唯一性」
確かに、光学性能やAF性能だけを比較すれば、XF18mmF2 Rは最新レンズに及びません。しかし、XF18mmF2 Rには、他のどのレンズにも真似できない「唯一性」があります。それは、「Xマウント最薄のパンケーキに近いサイズ感で、かつ開放F値がF2である」という点です。
XF27mmF2.8 R WRはより薄いですがF2.8です。XF16mmF2.8 R WRはF2.8でXF18mmF2 Rよりやや広角ですが、パンケーキではありません。XF18mmF1.4 R LM WRはF1.4ですが、サイズはパンケーキとは全く異なります。このように、XF18mmF2 Rは、「F2という明るさ」と「極めて高い携帯性」を両立させた、Xマウント唯一無二のレンズなのです。
カメラの性能がどれだけ進化しても、このサイズと明るさのバランスは、特定のニーズを持つユーザーにとっては代替が効かない魅力であり続けます。常にカメラに付けっぱなしにしておきたい、小さなバッグで持ち歩きたい、というニーズがある限り、XF18mmF2 Rの価値は失われません。
9-2. 「キャラクターレンズ」としての普遍的な価値
デジタルカメラの性能が向上し、レンズの光学設計技術が進歩するにつれて、多くのレンズはよりシャープに、より収差がなく、よりパーフェクトな描写を目指す傾向にあります。しかしその一方で、レンズの個性が失われ、「どのレンズで撮っても同じような写りになる」と感じる人も増えています。
そんな時代において、XF18mmF2 Rのような「キャラクター」を持つレンズは、かえってその存在感を増していると言えます。不完全さゆえに生まれる独特のボケ味、周辺光量落ち、フレアなどは、写真にアナログ的な温かみや情緒、あるいは意図的な表現としての深みをもたらします。これは、数値では測れない、写真家がレンズに求める「味」の部分です。
XF18mmF2 Rは、良くも悪くもその「味」が強く出るレンズです。そして、この「味」は、今後どれだけ高性能なレンズが登場しても、決して失われることのない、普遍的な価値と言えるでしょう。
9-3. セカンドレンズ、サードレンズとしての選択肢
メインの常用レンズとしては最新の高性能レンズを選ぶとしても、XF18mmF2 Rはセカンドレンズやサードレンズとして非常に魅力的な選択肢となり得ます。
- 軽量なスナップ・旅用として: XF18mmF1.4は素晴らしいレンズですが、旅先で一日中持ち歩くには少し重いと感じるかもしれません。そんな時、XF18mmF2 Rは「もう一本の頼れる相棒」として、あるいは「これ一本だけ持って気軽に外出する日」のためのレンズとして活躍します。
- 描写のバリエーションとして: クリーンでシャープな描写が必要な場合は他のレンズを使い、雰囲気やキャラクターを重視したい場合はXF18mmF2 Rを使う、といった使い分けができます。
- 入門用・広角の試用として: 中古市場で手頃な価格になっているため、本格的な広角単焦点を購入する前に、27mm相当の画角や広角単焦点での撮影スタイルを試してみたいという人にもおすすめです。
9-4. 将来のラインナップにおける可能性
富士フイルムが今後、XF18mmF2 Rの後継機を出す可能性はあるのでしょうか? XF18mmF1.4 R LM WRが登場した現在、同じ18mmでF2のレンズを出す必然性は低いかもしれません。しかし、ユーザーからの根強い「パンケーキのF2」というニーズに応える形で、例えばAFを改善しつつパンケーキサイズを維持した「XF18mmF2 R WR II」のようなモデルが登場する可能性はゼロではないかもしれません。しかし、それは現時点では推測の域を出ません。
確かなのは、現在のXマウントシステムにおいて、XF18mmF2 Rが持つ「パンケーキサイズでF2」という特性は、今後も独自の立ち位置を維持し続けるだろうということです。
10. まとめ:XF18mmF2 Rは愛すべき「癖玉」
富士フイルムXF18mmF2 Rは、完璧なレンズではありません。AFは遅く、駆動音も大きく、開放での周辺画質は甘く、歪曲収差もあります。これらの点だけを見れば、「古くて性能の低いレンズ」と評価されてしまうかもしれません。
しかし、このレンズには、それらの欠点を補ってあまりある魅力があります。それは、驚異的なコンパクトさと軽量性、パンケーキなのにF2という明るさ、金属製で上質なビルドクオリティと絞りリングによる心地よい操作感、そして何よりも、その不完全さゆえに生まれる独特の「描写キャラクター」です。
XF18mmF2 Rは、性能の数値を追い求めるのではなく、「撮るプロセスを楽しむ」「レンズの個性を活かす」といった、写真の本来的な楽しみ方を教えてくれるレンズです。このレンズを手に取ると、単なる道具ではなく、まるで長年の相棒のように愛着が湧いてきます。
「このレンズだからこそ撮れる写真」が確かに存在します。その写りが好きで、そのサイズ感が好きで、その操作感が好きな写真家にとっては、XF18mmF2 Rは欠かせない一本となるでしょう。最新の高性能レンズが溢れる現代においても、このレンズは「愛すべき癖玉」として、多くの写真愛好家に選ばれ続けていくはずです。
もしあなたが、パンケーキサイズの広角単焦点を探していて、F2の明るさが必要で、多少のレンズの癖を「味」として楽しめる感性を持っているなら、XF18mmF2 Rは間違いなくあなたの写真ライフを豊かにしてくれるレンズとなるでしょう。ぜひ、実際に手に取って、その魅力に触れてみてください。そして、このレンズと共に、あなただけの素晴らしい一枚を見つけてください。