IPアドレスでできること・できないこと｜確認方法とリスク対策

インターネットを利用する上で、IPアドレスは避けて通れない概念です。しかし、IPアドレスが具体的に何を表し、何ができるのか、そしてどのようなリスクがあるのかを理解している人は少ないかもしれません。本記事では、IPアドレスの基本的な知識から、できること・できないこと、確認方法、そしてリスク対策までを網羅的に解説します。

1. IPアドレスとは？

IPアドレス（Internet Protocol Address）とは、インターネットに接続された機器（パソコン、スマートフォン、サーバーなど）を識別するための番号です。インターネット上でデータをやり取りする際に、宛先と送信元を特定するために使用されます。

1.1 IPアドレスの種類

IPアドレスには、主に以下の2つの種類があります。

IPv4（Internet Protocol version 4）: 32ビットで構成され、192.168.1.1のようにドットで区切られた4つの数字で表現されます。約43億個のアドレスしか割り当てることができないため、アドレス枯渇問題が深刻化しています。
IPv6（Internet Protocol version 6）: 128ビットで構成され、2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334のようにコロンで区切られた8つの数字で表現されます。ほぼ無限に近い数のアドレスを割り当てることができ、IPv4のアドレス枯渇問題を解決するために開発されました。

1.2 グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス

IPアドレスは、その役割によってさらに2つの種類に分けられます。

グローバルIPアドレス: インターネット上で一意に識別されるIPアドレスです。インターネットサービスプロバイダ（ISP）から割り当てられ、世界中のどこからでもアクセスできます。Webサイトやメールサーバーなど、外部からのアクセスを受け付ける必要がある機器に割り当てられます。
プライベートIPアドレス: 家庭内や企業内などのローカルネットワーク内で使用されるIPアドレスです。ルーターなどのネットワーク機器によって割り当てられ、外部から直接アクセスすることはできません。プライベートIPアドレスは、IANA（Internet Assigned Numbers Authority）によって以下の範囲が定義されています。
- 10.0.0.0 – 10.255.255.255
- 172.16.0.0 – 172.31.255.255
- 192.168.0.0 – 192.168.255.255

1.3 固定IPアドレスと動的IPアドレス

IPアドレスの割り当て方によって、さらに2つの種類に分けられます。

固定IPアドレス: 常に同じIPアドレスが割り当てられる方式です。サーバーや監視カメラなど、常に同じIPアドレスでアクセスする必要がある機器に利用されます。
動的IPアドレス: 接続するたびに異なるIPアドレスが割り当てられる方式です。一般家庭のインターネット接続でよく利用されます。DHCP（Dynamic Host Configuration Protocol）という仕組みによって、自動的にIPアドレスが割り当てられます。

2. IPアドレスでできること

IPアドレスは、インターネット上で様々なことを可能にしています。主な例を以下に示します。

2.1 Webサイトへのアクセス

WebブラウザにURLを入力すると、そのURLに対応するIPアドレスがDNS（Domain Name System）によって検索され、Webサーバーに接続されます。Webサーバーは、要求されたWebページのデータをIPアドレスを元に送信元に返信します。

2.2 メール送受信

メールを送信する際、メールソフトは宛先のメールサーバーのIPアドレスをDNSで検索し、メールを送信します。メールサーバーは、受信したメールを宛先のメールアドレスに対応するユーザーのメールボックスに保存します。

2.3 ファイル共有

ファイル共有ソフトやオンラインストレージサービスを利用する際、ファイルの送受信はIPアドレスを元に行われます。P2P（Peer to Peer）ファイル共有では、ユーザー同士が直接IPアドレスを交換し、ファイルを共有します。

2.4 オンラインゲーム

オンラインゲームでは、ゲームサーバーとプレイヤーのコンピュータがIPアドレスを元に通信を行います。プレイヤーの操作はIPアドレスを元にゲームサーバーに送信され、ゲームサーバーはゲームの状態をIPアドレスを元に各プレイヤーに送信します。

2.5 VoIP（Voice over IP）

SkypeやLINEなどのVoIPサービスでは、音声データをIPアドレスを元に送受信します。音声データはパケットに分割され、IPアドレスを元に相手に送信されます。

2.6 位置情報の特定（精度は低い）

IPアドレスから、おおよその位置情報を特定することができます。これは、ISPがIPアドレスを割り当てる際に、その地域情報を登録しているためです。ただし、IPアドレスから特定できる位置情報は、都道府県レベルであり、正確な住所を特定することはできません。

3. IPアドレスでできないこと

IPアドレスは便利な一方で、できないことも多く存在します。以下に主な例を挙げます。

3.1 個人の特定

IPアドレスから、氏名、住所、電話番号などの個人情報を直接特定することはできません。IPアドレスは、あくまでインターネット接続業者（ISP）が管理する情報であり、個人情報とIPアドレスを結びつける権限を持っているのはISPのみです。ただし、警察などが捜査のためにISPに情報開示を請求することは可能です。

3.2 他人のIPアドレスの不正取得

正当な理由なく、他人のIPアドレスを不正に取得することは違法行為です。IPアドレスは個人情報ではありませんが、プライバシーに関わる情報であり、不正に取得・利用することは、不正アクセス禁止法や個人情報保護法に抵触する可能性があります。

3.3 なりすまし

IPアドレスを偽装することは技術的に可能ですが、完全ななりすましは困難です。IPアドレスを偽装しても、他の情報（ブラウザの種類、OSの種類、Cookieなど）から、元のIPアドレスを特定される可能性があります。また、IPアドレスを偽装して不正な行為を行った場合、法的責任を問われる可能性があります。

3.4 他人の通信の傍受

IPアドレスを知っていても、他人の通信を傍受することはできません。通信は暗号化されている場合が多く、暗号化を解読することは非常に困難です。また、他人の通信を傍受することは、電気通信事業法に違反する違法行為です。

3.5 ネットワークへの不正侵入

IPアドレスを知っていても、ネットワークに不正に侵入することは困難です。ネットワークには、ファイアウォールや侵入検知システムなどのセキュリティ対策が施されており、不正なアクセスを検知・遮断します。また、不正にネットワークに侵入することは、不正アクセス禁止法に違反する違法行為です。

4. IPアドレスの確認方法

自分のIPアドレスを確認する方法はいくつかあります。

4.1 Webサイトを利用する

最も簡単な方法は、Webサイトを利用する方法です。以下のサイトにアクセスすると、自分のグローバルIPアドレスが表示されます。

4.2 コマンドプロンプト（Windows）

Windowsのコマンドプロンプトで以下のコマンドを実行すると、自分のIPアドレスが表示されます。

ipconfig

4.3 ターミナル（macOS、Linux）

macOSやLinuxのターミナルで以下のコマンドを実行すると、自分のIPアドレスが表示されます。

ifconfig

5. IPアドレスのリスクと対策

IPアドレスは、インターネットを利用する上で不可欠なものですが、同時にいくつかのリスクも伴います。

5.1 位置情報の特定

IPアドレスから、おおよその位置情報を特定される可能性があります。これは、ISPがIPアドレスを割り当てる際に、その地域情報を登録しているためです。位置情報が特定されることで、プライバシーが侵害される可能性があります。

対策:

VPN（Virtual Private Network）を利用する: VPNは、自分のIPアドレスを隠し、別のIPアドレスを経由してインターネットに接続するサービスです。VPNを利用することで、位置情報の特定を困難にすることができます。
Tor（The Onion Router）を利用する: Torは、複数のサーバーを経由して通信を暗号化する匿名化ネットワークです。Torを利用することで、IPアドレスを隠し、位置情報の特定を困難にすることができます。
位置情報サービスをオフにする: スマートフォンやパソコンの位置情報サービスをオフにすることで、位置情報の漏洩を防ぐことができます。

5.2 DDoS攻撃

DDoS（Distributed Denial of Service）攻撃とは、複数のコンピュータから大量のアクセスを特定のサーバーに集中させ、サービスを停止させる攻撃です。DDoS攻撃の際、攻撃者はIPアドレスを偽装することがありますが、元のIPアドレスが特定されることもあります。

対策:

ファイアウォールを導入する: ファイアウォールは、不正なアクセスを検知・遮断するセキュリティシステムです。ファイアウォールを導入することで、DDoS攻撃を緩和することができます。
IPS（Intrusion Prevention System）を導入する: IPSは、不正なアクセスを検知・遮断するセキュリティシステムです。ファイアウォールよりも高度な分析を行い、より高度な攻撃を検知することができます。
DDoS対策サービスを利用する: DDoS対策サービスは、DDoS攻撃を検知・遮断するサービスです。専門の知識や設備がなくても、DDoS攻撃からサーバーを保護することができます。

5.3 ポートスキャン

ポートスキャンとは、特定のIPアドレスに対して、利用可能なポートを調べる行為です。ポートスキャンによって、サーバーの脆弱性が見つかる可能性があり、不正アクセスのきっかけになることがあります。

対策:

ファイアウォールを導入する: ファイアウォールは、不正なポートへのアクセスを遮断することができます。
不要なポートを閉じる: 利用していないポートは閉じることで、攻撃対象となるポートを減らすことができます。
IDS（Intrusion Detection System）を導入する: IDSは、不正なアクセスを検知するセキュリティシステムです。ポートスキャンなどの不正な行為を検知し、管理者に通知することができます。

5.4 リバースプロキシの利用

リバースプロキシは、Webサーバーの前段に設置され、クライアントからのリクエストをWebサーバーに転送するサーバーです。リバースプロキシを利用することで、WebサーバーのIPアドレスを隠蔽し、DDoS攻撃や不正アクセスから保護することができます。

5.5 WAF（Web Application Firewall）の利用

WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃からWebサイトを保護するファイアウォールです。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの攻撃を検知・遮断することができます。

6. IPアドレスに関する法的責任

IPアドレスは、インターネットを利用する上で様々な法的責任を伴います。

6.1 不正アクセス禁止法

不正アクセス禁止法は、不正な方法で他人のコンピュータにアクセスすることを禁止する法律です。他人のIPアドレスを不正に取得したり、IPアドレスを偽装して不正なアクセスを行った場合、不正アクセス禁止法に違反する可能性があります。

6.2 個人情報保護法

IPアドレスは個人情報ではありませんが、プライバシーに関わる情報であり、不正に取得・利用することは、個人情報保護法に抵触する可能性があります。

6.3 電気通信事業法

他人の通信を傍受することは、電気通信事業法に違反する違法行為です。

6.4 著作権法

ファイル共有ソフトなどを利用して、著作権を侵害する行為は、著作権法に違反する違法行為です。

7. まとめ

IPアドレスは、インターネットを利用する上で不可欠なものであり、様々なことを可能にする一方で、いくつかのリスクも伴います。IPアドレスに関する知識を深め、適切な対策を講じることで、安全かつ快適にインターネットを利用することができます。

この記事は、IPアドレスに関する包括的な情報を提供することを目的としています。IPアドレスの基本的な知識から、できること・できないこと、確認方法、そしてリスク対策までを網羅的に解説しました。この記事が、IPアドレスに関する理解を深め、安全なインターネット利用の一助となれば幸いです。