Arch Linux Google Chrome 入門ガイド

はい、承知いたしました。Arch LinuxにGoogle Chromeをインストールし、使用するための詳細な入門ガイド記事を約5000語で記述し、直接表示します。


Arch Linux Google Chrome 入門ガイド:インストールから活用まで、徹底解説

はじめに:Arch LinuxとGoogle Chromeの魅力

Linuxディストリビューションの中でも、そのシンプルさ、カスタマイズ性の高さ、そして「自分で構築する」という哲学から、多くの技術愛好家に支持されているのがArch Linuxです。最小限のシステムからスタートし、必要なものを一つずつ積み上げていくそのプロセスは、Linuxの理解を深める絶好の機会を提供します。

一方で、ウェブブラウザは現代のデジタルライフに欠かせないツールです。数多くのブラウザが存在する中で、Google Chromeはその高速性、豊富な機能、そして広範なウェブ技術への対応から、世界で最も多くのユーザーに利用されています。ウェブ開発者にとってはデファイスツールが強力であり、またGoogleエコシステムを深く利用しているユーザーにとっては、同期機能などが非常に便利です。

Arch Linuxユーザーの中には、このGoogle Chromeをメインブラウザとして使用したいと考える方も少なくありません。しかし、Arch Linuxの公式リポジトリにはGoogle Chromeは含まれていません。これは、Google Chromeがプロプライエタリソフトウェア(ソースコードが公開されていない、特定のライセンスの下でのみ利用可能なソフトウェア)であるためです。Arch Linuxの公式リポジトリは、基本的にオープンソースソフトウェアで構成されています。

では、どうすればArch LinuxでGoogle Chromeを使うことができるのでしょうか? その鍵となるのが、AUR (Arch User Repository) です。AURは、ユーザーが作成・管理するPKGBUILDスクリプトの集まりであり、公式リポジトリにはないソフトウェアをビルド・インストールするための仕組みを提供します。Google Chromeも、このAURを通じてArch Linuxに導入するのが一般的な方法です。

この記事では、Arch LinuxにGoogle Chromeをインストールし、日常的に活用するための一連のプロセスを、初心者の方にも分かりやすいように詳細に解説します。AURからのインストール方法、AURヘルパーの利用、手動でのビルド方法、初回起動設定、基本的な使い方、更新方法、そして潜在的なトラブルシューティングまで、幅広くカバーします。Arch Linuxの哲学に触れつつ、Google Chromeという便利なツールをあなたのシステムに安全に組み込む方法を学びましょう。

Arch Linuxの基本おさらい

Google Chromeのインストールに入る前に、Arch Linuxを扱う上で知っておくべき基本的な概念をいくつか確認しておきましょう。

パッケージマネージャー pacmanについて

Arch Linuxの心臓部とも言えるのが、パッケージマネージャーのpacmanです。ソフトウェアのインストール、アップデート、削除、システム全体の管理をコマンドラインで行います。pacmanはシンプルで高速であり、ローリングリリースモデルを採用しているArch Linuxにおいて、システムを常に最新の状態に保つために不可欠なツールです。

基本的なコマンド例:

  • システムの同期とアップデート:
    bash
    sudo pacman -Syu

    これは、リポジトリの情報を同期し(-y)、インストールされているパッケージを全て最新バージョンにアップデートします(-u)。システムをクリーンな状態に保つため、定期的に実行することが強く推奨されます。特に、新しいソフトウェアをインストールする前には、必ずシステムをアップデートしておきましょう。
  • パッケージのインストール:
    bash
    sudo pacman -S パッケージ名

    指定したパッケージをインストールします。依存関係も自動的に解決してくれます。
  • パッケージの検索:
    bash
    pacman -Ss 検索キーワード

    公式リポジトリ内のパッケージを検索します。
  • インストール済みパッケージの検索:
    bash
    pacman -Qs 検索キーワード

    現在システムにインストールされているパッケージを検索します。
  • パッケージ情報の表示:
    bash
    pacman -Si パッケージ名

    公式リポジトリにあるパッケージの詳細情報を表示します。
  • インストール済みパッケージ情報の表示:
    bash
    pacman -Qi パッケージ名

    インストールされているパッケージの詳細情報を表示します。
  • パッケージの削除:
    bash
    sudo pacman -R パッケージ名

    指定したパッケージを削除します。
    bash
    sudo pacman -Rs パッケージ名

    指定したパッケージとそのパッケージが依存している他のパッケージで、かつ他のインストール済みパッケージが依存していないものも同時に削除します(推奨される削除方法の一つ)。
    bash
    sudo pacman -Rns パッケージ名

    -Rsに加え、パッケージがインストールした設定ファイルも削除します。多くの場合、このオプションが最もクリーンな削除を行います。

これらのコマンドは、Arch Linuxでソフトウェアを管理する上で基本中の基本です。pacmanの使い方に慣れておくことは、AURからGoogle Chromeをインストールする際にも役立ちます。

AUR (Arch User Repository) について

前述の通り、Google ChromeはArch Linuxの公式リポジトリにはありません。そこで登場するのがAURです。AURは、Arch Linuxのユーザーコミュニティによって維持されている、数千にも及ぶPKGBUILDファイルの集まりです。

PKGBUILDファイルとは、特定のソフトウェアをArch Linux上でビルドし、pacmanでインストール可能な形式(.pkg.tar.zstなどのパッケージファイル)にパッケージ化するためのシェルスクリプトです。PKGBUILDには、ソフトウェアのソースコードのダウンロード元、必要な依存関係、ビルド手順、インストール先などが記述されています。

AURの利用は、公式リポジトリからのインストールとは異なります。AUR自体はパッケージを直接配布しているわけではありません。ユーザーはAURからPKGBUILDファイルをダウンロードし、そのPKGBUILDファイルを使って自分のシステム上でソフトウェアをビルド(コンパイル)し、その後そのビルドされたパッケージをpacmanを使ってインストールするという流れになります。

AURを利用する上での重要な注意点:

  1. 自己責任: AURのパッケージはArch Linuxの公式開発者によってレビューされているわけではありません。ユーザーが提供しているものであるため、その信頼性は提供元に依存します。PKGBUILDファイルの内容を理解し、安全性を確認することが推奨されます。特に、インターネットからソースコードを取得してビルドするため、悪意のあるコードが含まれていないかを注意深く確認する必要があります(現実的には全てのコードを確認するのは難しいですが、PKGBUILDの内容自体は確認できます)。
  2. ビルドが必要: AURのパッケージは、プリコンパイルされたバイナリとして提供されるわけではありません(例外もありますが、基本的には)。自分のシステム上でソースコードからビルドする必要があるため、ビルドに必要なツールやライブラリ、そしてある程度の時間とCPUリソースが必要になります。
  3. 依存関係: AURパッケージも公式リポジトリのパッケージや、他のAURパッケージに依存する場合があります。これらの依存関係も適切に解決する必要があります。

Google ChromeのAURパッケージ(google-chrome)は、Googleが配布している公式のLinux版バイナリパッケージ(通常は.deb.rpm形式)を取得し、それをArch Linuxのパッケージ形式に変換するPKGBUILDです。したがって、ソースコードからビルドするわけではなく、既存のバイナリを repackage する形になります。これにより、ビルド時間は大幅に短縮されますが、基本的にはAURのワークフローに従うことになります。

コマンドライン操作の基本

Arch Linuxのインストールと設定は基本的にコマンドラインで行います。Google Chromeのインストールも、主にターミナル上での作業となります。

  • susudo:
    • su (substitute user): 他のユーザー(デフォルトではroot)としてコマンドを実行します。su -とすると、rootユーザーの環境変数なども引き継ぎます。
    • sudo (superuser do): 許可されたユーザーが、自身または他のユーザーとしてコマンドを実行できます。一般的には、設定ファイル /etc/sudoers で許可されたユーザーが、root権限でコマンドを実行するために使用します。Arch Linuxでは、通常の作業は一般ユーザーで行い、システムへの変更が必要な場合にsudoを使うのが一般的で安全な方法です。Google Chromeのインストールやシステムアップデートなど、root権限が必要なコマンドの前にはsudoを付けます。
  • カレントディレクトリの移動: cd ディレクトリ名
  • ファイルの表示: ls
  • ファイルのコピー: cp 元ファイル 先ファイル
  • ファイルの移動/リネーム: mv 元ファイル 先ファイル
  • ディレクトリの作成: mkdir ディレクトリ名
  • テキストエディタ: nano, vim, emacsなど。設定ファイルを編集する際などに使用します。nanoは初心者にとって比較的使いやすいエディタです。例えば、sudo nano /etc/pacman.conf のように使います。

これらのコマンドライン操作に慣れておくことが、Arch Linuxを快適に使うための鍵となります。

Google Chromeインストール前の準備

Google ChromeをAURからインストールする前に、システムが適切に準備されていることを確認しましょう。

システム要件の確認

Google Chromeは比較的新しいハードウェアとソフトウェアを要求します。Arch Linuxは常に最新のソフトウェアを提供しているため、Arch Linuxが動作する環境であれば、基本的なハードウェア要件(CPU、RAM、ストレージ)は満たしているはずです。ただし、古いハードウェアやグラフィックカードを使用している場合、ハードウェアアクセラレーションが利用できないなどの制限があるかもしれません。Arch Linuxの公式ウェブサイトやGoogle Chromeの公式ヘルプページで最新の要件を確認することをお勧めします。

最新のシステムへのアップデート

AURからパッケージをビルド・インストールする前に、必ずシステム全体を最新の状態にアップデートしてください。依存関係の問題を防ぎ、ビルドプロセスがスムーズに進むようにするためです。

bash
sudo pacman -Syu

このコマンドを実行し、提案されるアップデートがあれば全て適用してください。

必要なツールのインストール

AURパッケージをビルドするには、ビルドツールが必要です。base-develというパッケージグループには、gcc, make, pkg-configなど、ソフトウェアのコンパイルやパッケージングに必要な基本的なツールが含まれています。多くのArch Linuxインストールガイドでは、初期設定の段階でbase-develをインストールすることを推奨していますが、まだインストールしていない場合はここでインストールしておきましょう。

また、AURからPKGBUILDファイルを取得するためにgitも必要です。

bash
sudo pacman -S --needed base-devel git

--neededオプションは、指定したパッケージが既にインストールされている場合は再インストールしないように指示します。これは、既にbase-develの一部または全部がインストールされている場合に便利です。

ユーザー権限とsudoの設定

AURからのビルドやインストールは、通常、一般ユーザーで行います。しかし、ビルド後のパッケージをシステムにインストールする最終段階ではroot権限が必要です。多くのユーザーは、自身のユーザーアカウントがsudoを使用できるよう設定しています。

もし、まだあなたのユーザーアカウントでsudoを使えない場合は、rootユーザーとしてログインするか、他のsudo可能なユーザーで、あなたのユーザーをsudoersファイルに追加する必要があります。

sudoersファイルを編集するには、visudoコマンドを使うのが安全です。

bash
sudo visudo

通常、ファイル中に以下の行があります(コメントアウトされていることもあります):

“`

%wheel ALL=(ALL) ALL

“`

この行の先頭の#を削除すると、wheelグループに所属するユーザーがsudoを使えるようになります。

%wheel ALL=(ALL) ALL

編集を保存してエディタを閉じます(nanoならCtrl+X, y, Enter)。

次に、あなたのユーザーアカウントをwheelグループに追加します。(あなたのユーザー名を置き換えてください)

bash
sudo usermod -aG wheel あなたのユーザー名

変更を有効にするには、一度ログアウトしてから再度ログインするか、システムを再起動してください。ログインし直した後、sudo pacman -Syuのようなコマンドをパスワード入力なしで実行できるか確認してください(ただし、これはsudoersの設定によります。パスワードを求められるのがデフォルトで安全な設定です)。

インターネット接続の確認

Google Chromeのバイナリパッケージや、PKGBUILDファイル、依存関係などをダウンロードするために、安定したインターネット接続が必要です。ウェブサイトをブラウジングできるか、ping google.comのようなコマンドで外部と通信できるか確認してください。

これで、Google ChromeをAURからインストールするための準備が整いました。

Google Chromeの入手方法:AURからのインストール

いよいよGoogle ChromeをArch Linuxにインストールするプロセスに入ります。前述の通り、公式リポジトリにはないのでAURを利用します。AURからパッケージをインストールする方法は、大きく分けて二つあります。

  1. AURヘルパーを利用する方法: AURヘルパーは、AURパッケージの検索、PKGBUILDのダウンロード、依存関係の解決、ビルド、インストールのプロセスを自動化してくれるツールです。Arch Linuxユーザーの多くはこの方法を利用しており、便利さから推奨されます。
  2. 手動でビルドする方法: PKGBUILDファイルを自分でダウンロードし、makepkgコマンドを使って手動でビルド・インストールする方法です。AURヘルパーの内部で行われていることを理解するのに役立ちますが、手間がかかります。

ここでは、まず多くのユーザーが利用しているAURヘルパーを使った方法を説明し、次に手動での方法を解説します。

AURヘルパーを使う方法 (推奨)

数多くのAURヘルパーが存在しますが、ここでは人気があり使いやすいyay (Yet Another Yogurt) を例に説明します。yaypacmanと似たコマンド体系を持っており、AURと公式リポジトリの両方からパッケージを管理できます。

yayのインストール方法

yay自体はAURパッケージとして提供されているため、yayをインストールするには、まず手動でyayをビルド・インストールする必要があります。

  1. AURからyayのPKGBUILDを取得します:
    yayのリポジトリをgit cloneします。一時的にビルド用のディレクトリを作成するのが良いでしょう。

    bash
    mkdir ~/aur_builds
    cd ~/aur_builds
    git clone https://aur.archlinux.org/yay.git
    cd yay

  2. PKGBUILDを確認します (オプションですが推奨):
    ダウンロードしたyayディレクトリ内にPKGBUILDファイルがあります。これをテキストエディタで開いて内容を確認できます。

    bash
    nano PKGBUILD

    PKGBUILDには、パッケージ名、バージョン、依存関係、ビルド手順などが記述されています。悪意のあるコードが含まれていないか、意図しない動作をしないかなどをチェックしますが、Go言語で書かれたyayの場合、ビルドプロセスは比較的シンプルです。

  3. yayパッケージをビルドし、インストールします:
    makepkgコマンドを使ってパッケージをビルドします。-sオプションは、ビルドに必要な依存関係(makedependsdependsにリストされているもの)を自動的に解決してインストールしようとします(公式リポジトリの依存関係のみ)。

    bash
    makepkg -s

    このコマンドを実行すると、必要な依存関係がダウンロードされ、ソースコードがコンパイルされ、パッケージファイル(yay-*-x86_64.pkg.tar.zstのようなファイル)が現在のディレクトリに生成されます。

    ビルドが成功したら、-iオプションを使ってそのパッケージをインストールします。インストールにはroot権限が必要です。

    bash
    sudo makepkg -i

    makepkg -siとまとめて実行することもできます。

    bash
    makepkg -si

    yayがインストールされました。これで、pacmanコマンドと同様の操作感でAURパッケージを扱えるようになります。インストールに使用したビルドディレクトリ(~/aur_buildsなど)は削除して構いません。

yayを使ったGoogle Chromeのインストール

yayがインストールできたので、これを使ってGoogle Chromeを検索し、インストールします。

  1. Google Chromeを検索します:
    yayはデフォルトで公式リポジトリとAURの両方を検索します。

    bash
    yay -Ss google chrome

    検索結果の中にaur/google-chromeというパッケージが見つかるはずです。これがGoogle Chrome本体のパッケージです。他にもgoogle-chrome-beta, google-chrome-dev, google-chrome-stableなどのバージョンや、関連パッケージ(google-chrome-beta-extra-codecs-ffmpeg-nonfreeなど、動画再生に必要な追加コーデックを提供するもの)が見つかるかもしれません。通常はgoogle-chrome (stable版のエイリアスであることが多い) またはgoogle-chrome-stableを選択します。

  2. Google Chromeをインストールします:
    パッケージ名が確認できたら、pacmanのように-Sオプションを使ってインストールを開始します。

    bash
    yay -S google-chrome

    yayは以下のステップを自動で行います:
    * 公式リポジトリの依存関係を解決します。
    * AURからgoogle-chromeのPKGBUILDファイルを取得します。
    * PKGBUILDの内容を表示し、ユーザーに確認を求めます(デフォルトではdiffを表示)。内容を確認したらyまたはEnterで次に進みます。
    * ビルドに必要な依存関係を解決します(これらもAURにある場合は、同様にPKGBUILDの確認が入ります)。
    * PKGBUILDに基づいてパッケージをビルドします。google-chromeの場合は、GoogleのサーバーからLinuxバイナリパッケージをダウンロードし、Arch Linuxのパッケージ形式に変換します。
    * ビルドされたパッケージをpacman -Uを使ってシステムにインストールします。この際、sudoパスワードが求められます。

    このプロセスには、インターネット接続速度やCPUの性能にもよりますが、数分かかることがあります。依存関係が多い場合や、他のAURパッケージも同時にビルドされる場合は、さらに時間がかかります。

    途中でエラーが発生した場合は、表示されるメッセージをよく読んで対処する必要があります(よくあるエラーについては後述のトラブルシューティングセクションを参照)。

  3. インストールの完了確認:
    インストールが成功すると、ターミナルに完了メッセージが表示されます。

    これで、Google ChromeがあなたのArch Linuxシステムにインストールされました。

手動でビルドする方法 (学習目的やトラブルシューティングに)

AURヘルパーは非常に便利ですが、その裏で何が行われているのかを理解するために、またはAURヘルパー自体に問題がある場合などに、手動でビルドする方法を知っておくと役立ちます。この方法は、AURヘルパーが実際に行っているステップを自分で一つずつ実行する形になります。

手動でのインストールは、基本的にはAURヘルパーyayをインストールした際と同様の手順を踏みます。

  1. Google ChromeのAURリポジトリからPKGBUILDを取得します:
    AURウェブサイト (aur.archlinux.org) にアクセスし、「google-chrome」で検索します。パッケージページが見つかったら、右側にある「Git Clone URL」をコピーします。

    ターミナルに戻り、ビルド用の一時ディレクトリを作成し、そこに移動します。

    bash
    mkdir ~/aur_chrome_build
    cd ~/aur_chrome_build
    git clone https://aur.archlinux.org/google-chrome.git
    cd google-chrome

  2. PKGBUILDファイルを確認します:
    ダウンロードしたgoogle-chromeディレクトリ内のPKGBUILDファイルをテキストエディタで開いて内容を確認します。

    bash
    nano PKGBUILD

    PKGBUILDファイルには、以下の主要なセクションがあります。
    * pkgname: パッケージ名 (例: google-chrome)
    * pkgver: パッケージバージョン (例: 119.0.6045.159)
    * pkgrel: パッケージリビジョン(PKGBUILD自体の変更回数)
    * epoch (省略されることも多い): バージョン番号の比較規則を変更する場合に使う
    * pkgdesc: パッケージの説明
    * arch: 対応アーキテクチャ (例: 'x86_64')
    * url: ソフトウェアの公式サイト
    * license: ライセンス (例: 'custom:Google Chrome Terms of Service')
    * depends: 実行時に必要な依存パッケージ(pacmanが管理する公式リポジトリのパッケージ名)
    * makedepends: ビルド時にのみ必要な依存パッケージ(pacmanが管理する公式リポジトリのパッケージ名)
    * optdepends: オプションの依存パッケージ(特定の機能を使う場合に必要)
    * conflicts: 競合するパッケージ
    * provides: 提供する機能(他のパッケージが依存する場合がある)
    * source: ソフトウェアのソースコードまたはバイナリパッケージのダウンロード元URL
    * sha256sums (または他のハッシュ関数): ダウンロードしたファイルの整合性チェック用ハッシュ値
    * prepare(): ビルド前の準備スクリプト
    * build(): ビルドスクリプト(ソースコードをコンパイルするなど)
    * package(): インストールディレクトリ構造を作成し、ファイルを配置するスクリプト

    google-chromeのPKGBUILDの場合、sourceにはGoogleのダウンロードURLが指定されており、package()関数でダウンロードしたバイナリパッケージを展開・配置するようになっているはずです。依存関係(depends)も確認しましょう。不足しているものがあれば、事前にsudo pacman -Sでインストールしておきます。

  3. パッケージをビルドします:
    makepkgコマンドを使ってパッケージをビルドします。

    bash
    makepkg -s

    -sオプションは、dependsmakedependsにリストされている公式リポジトリの依存関係を自動的にインストールします。AURの依存関係がある場合は、それらは手動でビルド・インストールしておく必要があります(google-chromeパッケージの直接のAUR依存は通常ありません)。

    makepkgは、PKGBUILDに記述された手順に従って、必要なファイルのダウンロード、整合性チェック(sha256sums)、パッケージの展開・配置などを行います。

    ビルドに成功すると、カレントディレクトリに.pkg.tar.zstという拡張子のパッケージファイルが生成されます(例: google-chrome-*-x86_64.pkg.tar.zst)。

    もし、ビルド中にGPGキー関連のエラー(例: PGP signatureエラー)が発生した場合は、ダウンロードしたファイルの署名を検証するためのGPGキーが不足している可能性があります。エラーメッセージに表示されるキーIDを使って、キーサーバーからキーを取得する必要があります。

    bash
    gpg --recv-keys <キーID>

    または、特定のキーサーバーを指定する場合:

    bash
    gpg --keyserver hkp://keyserver.ubuntu.com --recv-keys <キーID>

    キーが正常にインポートされたら、再度makepkg -sを実行してみてください。

  4. ビルドしたパッケージをインストールします:
    ビルドに成功してパッケージファイルが生成されたら、pacman -Uコマンドを使ってそれをインストールします。

    bash
    sudo pacman -U google-chrome-*-x86_64.pkg.tar.zst

    *の部分は、ビルドしたパッケージのバージョンとリビジョンによって異なります。lsコマンドでファイル名を確認してから正確に入力してください。

    インストールにはroot権限が必要なので、sudoを付けます。

  5. インストールの完了確認:
    pacmanによるインストールが完了すると、Google Chromeがシステムに導入されました。手動ビルドに使用したディレクトリは削除して構いません。

インストール時の潜在的な問題とトラブルシューティング

AURからのインストール(AURヘルパー利用でも手動でも)では、いくつかの問題に遭遇する可能性があります。

  • 依存関係の不足: makepkg -syay -Sが依存関係を解決できなかった、またはAURにある依存関係がさらに問題を抱えている。エラーメッセージをよく読み、不足しているパッケージを手動でインストールするか、依存しているAURパッケージの問題を解決する必要があります。
  • GPGキーのエラー: ダウンロードしたファイルの署名検証に必要なGPGキーがシステムに登録されていない。前述のgpg --recv-keysコマンドで必要なキーをインポートしてください。どのキーが必要かはエラーメッセージに表示されます。
  • ビルドの失敗: PKGBUILDに記述された手順でエラーが発生した。これは様々な原因が考えられますが、最も一般的なのは依存するライブラリのバージョンが合わない、ディスク容量不足、またはPKGBUILD自体の記述ミスです。エラーメッセージを詳しく調べて、原因を特定し対処する必要があります。インターネットでエラーメッセージを検索すると、同様の問題に遭遇した他のユーザーの解決策が見つかることが多いです。
  • インターネット接続の問題: ファイルのダウンロード中に接続が切れたり、AURやGoogleのサーバーにアクセスできなかったりする。ネットワーク接続を確認し、時間を置いてから再度試してみてください。
  • ディスク容量不足: ビルドプロセスでは一時ファイルが多く生成されるため、十分な空き容量が必要です。特に/tmpディレクトリやビルドディレクトリの容量を確認してください。
  • rootでのmakepkg実行: makepkgコマンドは絶対にroot権限で実行してはいけませんPKGBUILDに悪意のあるコードが含まれていた場合、システム全体に深刻な被害をもたらす可能性があります。makepkgは一般ユーザーで実行し、生成されたパッケージのインストールのみをsudo pacman -Uで行うのが正しい手順です。AURヘルパーもこの原則に従って動作します。

これらの問題は、Arch LinuxでAURを日常的に利用していれば遭遇する可能性のあるものです。エラーメッセージを恐れず、一つずつ原因を探り、解決していくことがArch Linuxのスキル向上につながります。

Google Chromeの起動と初期設定

インストールが完了したら、Google Chromeを起動してみましょう。

アプリケーションメニューからの起動

デスクトップ環境(GNOME, KDE Plasma, XFCEなど)を使用している場合、アプリケーションメニューにGoogle Chromeのアイコンが追加されているはずです。「インターネット」「Webブラウザ」などのカテゴリ、または直接「Google Chrome」という名前で見つけられることが多いです。アイコンをクリックして起動します。

コマンドラインからの起動

ターミナルから起動することもできます。

bash
google-chrome &

&を付けると、Chromeをバックグラウンドで起動し、ターミナルを閉じた後も実行を続けられます。&を付けずに実行すると、Chromeを閉じるとターミナルが使用可能になります。

初回起動時、特にデスクトップ環境を使用していない場合や、特定の理由でsudoを使ってインストールした場合(非推奨ですが)、次のような警告が表示されることがあります。

[日付 時刻] ERROR:chrome_zygote_host_impl_linux.cc(285)] Launching zygote via sandbox binary
[日付 時刻] FATAL:zygote_host_impl_linux.cc(138)] The SUID sandbox helper binary was found, but is not configured correctly. Rather than run without sandboxing I abort now. You need to make sure that /opt/google/chrome/chrome-sandbox is owned by root and has mode 4755.

これは、Chromeのサンドボックス機能が正しく設定されていない場合に表示されるエラーです。サンドボックスはブラウザのセキュリティにとって非常に重要なので、このエラーは無視できません。AURパッケージは通常、サンドボックスが正しく機能するように設定を含んでいますが、何らかの理由で権限設定が狂ってしまった場合に発生します。

エラーメッセージに示されている通り、chrome-sandboxファイルの所有者とパーミッションを確認・修正する必要があります。パスはインストール場所によって異なることがありますが、AURパッケージの場合は/opt/google/chrome/chrome-sandboxが一般的です。

bash
ls -l /opt/google/chrome/chrome-sandbox

所有者がroot、パーミッションが-rwsr-xr-x(または似たもの、sビットが重要)である必要があります。そうでない場合は、以下のコマンドで修正します。

bash
sudo chown root:root /opt/google/chrome/chrome-sandbox
sudo chmod 4755 /opt/google/chrome/chrome-sandbox

これらのコマンドを実行した後、再度Chromeを起動してみてください。エラーが解消されているはずです。絶対にgoogle-chrome --no-sandboxオプションを常用しないでください。これはセキュリティ上のリスクを高めます。

初回起動時の設定

Google Chromeを初めて起動すると、いくつかの初期設定を求められます。

  • デフォルトブラウザに設定: Google Chromeをメインで使用する場合、デフォルトブラウザに設定すると、他のアプリケーションからウェブリンクをクリックした際にChromeで開かれるようになります。デスクトップ環境の設定でもデフォルトブラウザを選択できますが、Chromeの初回起動時にも設定可能です。
  • Googleアカウントへのログイン: Googleアカウントでログインすると、ブックマーク、履歴、パスワード、拡張機能、設定などがGoogleアカウントと同期されます。これにより、他のデバイスでChromeを使用している場合、同じ環境を共有できます。Googleエコシステムを深く利用しているユーザーにとっては非常に便利な機能ですが、プライバシーを重視する場合はログインしないという選択肢もあります。ログインは後からいつでも設定できます。
  • 統計情報とクラッシュレポートの送信: Googleに利用状況やクラッシュレポートを送信するかどうかを選択できます。サービスの改善に役立つとされていますが、プライバシーの観点から無効にするユーザーもいます。

これらの設定は、起動後にChromeの設定画面からもいつでも変更可能です。

プロフィールの作成と管理

Google Chromeはプロファイル機能を持ち、ユーザーごとに異なる設定、ブックマーク、拡張機能、履歴などを管理できます。家族で一台のPCを共有している場合や、仕事用とプライベート用で設定を分けたい場合に便利です。

ウィンドウ右上の人型アイコンをクリックすると、プロフィールの管理メニューが表示されます。「別のプロフィールを追加」から新しいプロフィールを作成できます。各プロフィールは完全に独立しており、それぞれ異なるGoogleアカウントで同期することも可能です。

設定画面の概要

Google Chromeの多くの設定は、アドレスバーにchrome://settings/と入力するか、メニュー(通常はウィンドウ右上にある3つの点)から「設定」を選択することでアクセスできます。

設定画面は以下のカテゴリーに分かれています。

  • ユーザー: Googleアカウントとの同期、プロフィールの管理
  • 自動入力とパスワード: パスワードマネージャー、支払い方法、住所などの管理
  • プライバシーとセキュリティ: 閲覧履歴データの消去、Cookieと他のサイトデータ、セキュリティ(セーフブラウジングなど)、サイト設定(カメラ、マイク、通知などの許可)
  • デザイン: テーマ、フォント、ページの拡大率
  • 検索エンジン: デフォルトの検索エンジン設定
  • 起動時: Chromeを起動したときに開くページの設定
  • 既定のブラウザ: デフォルトブラウザの設定
  • 拡張機能: インストール済みの拡張機能の管理とChromeウェブストアへのリンク
  • 詳細設定:
    • アクセシビリティ
    • ダウンロード
    • 言語
    • プリンタ
    • システム(ハードウェアアクセラレーションなど)
    • リセットとクリーンアップ

これらの設定を自分の好みに合わせて調整することで、より快適にGoogle Chromeを利用できます。

Google Chromeの基本的な使い方

Google Chromeが起動し、初期設定が終わったら、基本的な使い方をマスターしましょう。多くのユーザーにとって馴染みのあるインターフェースですが、Arch Linux環境で特に意識することはありません。

  • タブとウィンドウ: 複数のウェブページをタブで開き、整理できます。新しいタブはCtrl+T、ウィンドウはCtrl+Nで開けます。タブの移動や閉じ方は他のブラウザとほぼ同じです。
  • アドレスバー (Omnibox): ウェブサイトのアドレスを入力するだけでなく、検索キーワードを入力してGoogle検索を行うことができます。また、計算や単位変換、天気予報など、様々な情報を直接アドレスバーに表示する機能もあります。
  • ブックマーク: よく訪れるサイトをブックマークとして保存し、素早くアクセスできます。Ctrl+Dで現在のページをブックマークに追加できます。ブックマークバーを有効にすると、よく使うブックマークを常に表示できます。
  • 履歴とダウンロード: 過去に閲覧したウェブページは履歴として保存されます(Ctrl+H)。ダウンロードしたファイルはダウンロードリストで確認できます(Ctrl+J)。
  • 拡張機能: Chromeウェブストアから様々な拡張機能を追加して、ブラウザの機能を拡張できます。広告ブロック、パスワードマネージャー、ウェブ開発ツールなど、数多くの拡張機能が提供されています。ただし、拡張機能はブラウザのパフォーマンスに影響を与えたり、プライバシーに関わる情報を収集したりする可能性もあるため、信頼できるソースからインストールし、必要最低限に留めることが推奨されます。
  • テーマ: Chromeウェブストアからテーマをインストールして、ブラウザの外観をカスタマイズできます。
  • シークレットモード: 閲覧履歴、Cookie、サイトデータなどが保存されないプライベートなウィンドウです(Ctrl+Shift+N)。完全に匿名になるわけではなく、インターネットサービスプロバイダやアクセス先のウェブサイトには履歴が残ります。
  • 開発者ツール: ウェブ開発者向けの強力なツール群です(F12またはCtrl+Shift+I)。HTML/CSSの要素検証、JavaScriptのデバッグ、ネットワークアクティビティの監視、パフォーマンス分析などが可能です。Arch Linuxでウェブ開発を行うユーザーにとっては非常に重要な機能です。

これらの機能は一般的なGoogle Chromeの使い方であり、Arch Linuxだからといって特別な操作が必要になるわけではありません。

Google Chromeの更新

Arch Linuxはローリングリリースモデルを採用しているため、システムを常に最新の状態に保つことが重要です。インストールしたGoogle Chromeも、セキュリティ修正や新機能のために定期的にアップデートする必要があります。

Google ChromeをAURからインストールした場合、公式リポジトリのパッケージのようにsudo pacman -Syuだけでは自動的にアップデートされません。AURパッケージのアップデートは、別途AURヘルパーを使うか、手動で行う必要があります。

AURヘルパーを使った更新 (推奨)

yayのようなAURヘルパーを使用している場合、システム全体のアップデートとAURパッケージのアップデートをまとめて行うことができます。

bash
yay -Syu

このコマンドは以下のステップを実行します。

  1. sudo pacman -Syu: 公式リポジトリのパッケージを最新にします。
  2. AURにインストールされているパッケージについて、AURから最新のPKGBUILD情報を取得します。
  3. ローカルのPKGBUILDと比較し、新しいバージョンがリリースされているパッケージがあればリストアップします。
  4. アップデート対象のAURパッケージについて、それぞれのPKGBUILDの内容差分を表示し、ユーザーに確認を求めます。
  5. ユーザーが同意すれば、各AURパッケージを再ビルドし、既存のバージョンに上書きする形で再インストールします。

yay -Syuは、Google Chromeを含む全てのAURパッケージを最新の状態に保つ最も簡単で推奨される方法です。定期的に実行することで、Chromeを安全かつ最新の機能で利用できます。

手動での更新プロセス

手動でGoogle Chromeをインストールした場合、更新も手動で行う必要があります。これは、初回インストール時とほぼ同じプロセスを繰り返すことになりますが、新しいバージョンのPKGBUILDを取得するためにgit pullを実行する点が異なります。

  1. Google ChromeのAURリポジトリディレクトリに移動します:
    初回インストール時にクローンしたAURリポジトリのディレクトリ(例: ~/aur_chrome_build/google-chrome)に移動します。

    bash
    cd ~/aur_chrome_build/google-chrome

  2. 最新のPKGBUILDを取得します:
    git pullコマンドを実行して、リモートリポジトリ(AUR)から最新の変更(新しいバージョンのPKGBUILDなど)を取得します。

    bash
    git pull

    これにより、ローカルのPKGBUILDファイルが最新のバージョン情報やビルド手順に更新されます。

  3. 更新されたパッケージをビルドし、インストールします:
    最新のPKGBUILDを使って、パッケージを再ビルド・再インストールします。

    bash
    makepkg -s
    sudo makepkg -i

    またはまとめて:

    bash
    makepkg -si

    このコマンドは、更新されたPKGBUILDに基づいて、新しいバージョンのGoogle Chromeバイナリをダウンロードし、パッケージとして再ビルドし、既存のインストールに上書きします。

    手動で更新する場合も、ビルド中にGPGキーのエラーや依存関係の問題が発生する可能性があります。その場合の対処法は、インストール時のトラブルシューティングを参照してください。

更新時の注意点とトラブルシューティング

  • 定期的な実行: AURパッケージ、特にブラウザのような重要なアプリケーションは、セキュリティのために頻繁にアップデートされます。週に一度など、定期的にyay -Syuを実行することをお勧めします。
  • 大規模アップデート: Arch Linuxはローリングリリースなので、時々大規模なライブラリのアップデートなどが行われることがあります。このような場合、AURパッケージが新しいライブラリに対応できておらず、ビルドに失敗することがあります。もしビルドが失敗した場合は、AURのパッケージページを確認して、他のユーザーが同様の問題を報告していないか、またはPKGBUILDのメンテナーが更新を準備していないかを確認してください。一時的にそのAURパッケージのアップデートをスキップする必要があるかもしれません。
  • PKGBUILDの変更点確認: AURヘルパーを使う場合でも、アップデート時にPKGBUILDの変更点の確認を求められます。特に手動でビルドする場合は、git diffコマンドなどで変更点を詳細に確認し、意図しない変更(例えば、新しいリポジトリからソースコードをダウンロードするようになっているなど)がないかをチェックすることがセキュリティ上重要です。

Google Chromeのカスタマイズと便利な機能

Arch LinuxにインストールしたGoogle Chromeは、WindowsやmacOS版と同様に様々なカスタマイズが可能です。

  • 同期機能の活用: Googleアカウントでログインすると、設定、ブックマーク、履歴、拡張機能、開いているタブ、パスワードなどを他のデバイスと同期できます。これは非常に便利ですが、Googleにこれらの情報を保存することになるため、プライバシーに関する懸念がある場合は無効にするか、同期する情報を限定できます。
  • テーマと外観: Chromeウェブストアには多くのテーマがあり、ブラウザの見た目を変更できます。設定の「デザイン」セクションで、フォントサイズやページの拡大率も調整できます。
  • 検索エンジンの変更と管理: アドレスバーで使用するデフォルトの検索エンジンを変更できます。Google、DuckDuckGo、Bingなどから選択できますし、自分でカスタムの検索エンジンを追加することも可能です。設定の「検索エンジン」から管理できます。
  • 起動時ページのカスタマイズ: Chromeを起動したときに新しいタブページを開くか、前回終了時のページを開くか、特定のページ(ホームぺージ)を開くかを設定できます。設定の「起動時」セクションで行います。
  • 通知設定: ウェブサイトからの通知を許可するかどうかを管理できます。多くのウェブサイトが通知を要求してくるため、不要な場合はブロックできます。設定の「プライバシーとセキュリティ」>「サイト設定」>「通知」から設定します。
  • サイト設定: Cookie、JavaScript、画像、ポップアップ、マイク、カメラ、位置情報など、ウェブサイトごとに様々な権限を設定できます。特定のサイトで問題が発生する場合など、ここで設定を確認・変更することがあります。設定の「プライバシーとセキュリティ」>「サイト設定」から管理できます。
  • パフォーマンス向上設定: 設定の「システム」セクションにある「ハードウェアアクセラレーションが使用可能な場合は使用する」オプションは、グラフィックカードを使用してウェブページのレンダリングや動画再生を高速化する機能です。オンにするとパフォーマンスが向上することが多いですが、古いグラフィックカードやドライバによっては逆に問題を引き起こす場合もあります。問題が発生する場合は無効にしてみてください。
  • プロファイルの切り替え: 前述の通り、ウィンドウ右上のアイコンから簡単にプロファイルを切り替えることができます。

chrome://flagsについて

アドレスバーにchrome://flags/と入力すると、Google Chromeの実験的な機能や開発中の設定にアクセスできます。これらの機能は安定していない可能性があり、有効にすることでブラウザが不安定になったり、予期しない問題が発生したりすることがあります。利用は自己責任であり、問題が発生した場合はデフォルト設定に戻すことをお勧めします。

便利なショートカットキー

多くの操作はショートカットキーで行うことで効率化できます。一般的なものをいくつか紹介します。

  • 新しいタブを開く: Ctrl + T
  • 新しいウィンドウを開く: Ctrl + N
  • シークレットウィンドウを開く: Ctrl + Shift + N
  • タブを閉じる: Ctrl + W
  • 閉じたタブを再度開く: Ctrl + Shift + T
  • 次のタブへ移動: Ctrl + PageDown または Ctrl + Tab
  • 前のタブへ移動: Ctrl + PageUp または Ctrl + Shift + Tab
  • 指定した番号のタブへ移動: Ctrl + 1Ctrl + 8
  • 最後のタブへ移動: Ctrl + 9
  • アドレスバーにフォーカス: Ctrl + L または Alt + D または F6
  • ページを再読み込み: Ctrl + R または F5
  • キャッシュを無視してページを再読み込み: Ctrl + Shift + R
  • ページ内を検索: Ctrl + F
  • ブックマークを追加: Ctrl + D
  • 履歴を表示: Ctrl + H
  • ダウンロードを表示: Ctrl + J
  • 開発者ツールを開く: Ctrl + Shift + I または F12
  • Chromeタスクマネージャーを開く: Shift + Esc (各タブや拡張機能が使用しているリソースを確認できます)

これらのショートカットをマスターすることで、ウェブブラウジングがより快適になります。

トラブルシューティングとよくある問題

Arch Linux環境でGoogle Chromeを使用する上で遭遇する可能性のある一般的な問題とその解決策をいくつか紹介します。

  • 起動しない、クラッシュする:

    • サンドボックスの問題: 初回起動時のセクションで説明した/opt/google/chrome/chrome-sandboxの権限設定を確認してください。これが最も一般的な原因です。
    • 設定ファイルの問題: プロファイルディレクトリ(通常~/.config/google-chrome/)内の設定ファイルが破損している可能性があります。一時的にプロファイルディレクトリの名前を変更して(例: ~/.config/google-chrome_backup)、Chromeを再起動してみてください。新しいプロファイルで起動できれば、古いプロファイルに問題があったことになります。必要な設定はバックアップから手動で戻す必要があるかもしれません。
    • 依存関係: AURパッケージの依存関係が満たされていないか、バージョンが古い。yay -SyuでシステムとAURパッケージを最新の状態にしてみてください。
    • 拡張機能: 特定の拡張機能が問題を引き起こしている可能性。シークレットモードで起動して問題が発生しないか確認します(シークレットモードでは通常拡張機能は無効)。シークレットモードで問題なければ、拡張機能を一つずつ無効にして原因を特定します。
  • ページの表示がおかしい:

    • フォント: システムのフォント設定が適切でない場合、ウェブページの表示がおかしくなることがあります。Notoフォントなど、広範な文字をサポートするフォントパッケージをインストールし、システム設定でデフォルトフォントを設定してみてください。
    • ハードウェアアクセラレーション: グラフィックカードドライバや設定の問題で、ハードウェアアクセラレーションが正しく機能せず表示に問題が出る場合があります。chrome://settings/systemで「ハードウェアアクセラレーションが使用可能な場合は使用する」オプションを無効にして再起動してみてください。
    • キャッシュとCookie: 特定のサイトで問題が発生する場合、キャッシュやCookieが原因かもしれません。該当サイトまたは全てのサイトのキャッシュとCookieを削除してみてください。
    • サイト設定: サイト設定でJavaScriptや画像をブロックしていないか確認します。
  • 動画や音声が再生されない:

    • コーデックの問題: Google Chromeはプロプライエタリな性質上、全てのマルチメディアコーデックを内蔵しているわけではありません。特にH.264などの一般的なフォーマットの再生に問題がある場合、追加のコーデックパッケージが必要なことがあります。AURにはgoogle-chrome-beta-extra-codecs-ffmpeg-nonfreeのようなパッケージが存在することがあります。これらのパッケージが利用可能かAURで検索し、インストールしてみてください。ただし、これらは非公式なパッケージであり、ライセンス上の注意が必要です。
    • PulseAudio/PipeWire: サウンドサーバー(PulseAudioやPipeWire)が正しく設定・実行されているか確認してください。pavucontrolなどのミキサーアプリケーションでChromeの音声出力がミュートされていないかも確認します。
  • GPUハードウェアアクセラレーションの問題:

    • ドライバ: 使用しているグラフィックカードに対応する適切なドライバがインストールされているか確認します(例: Intel, AMD, NVIDIA)。
    • 設定: chrome://flagsで関連するフラグ(例: Override software rendering listなど)を試してみてください。ただし、これは実験的な機能であり、システムによっては問題を悪化させる可能性もあります。
    • WebGL/GPU情報: chrome://gpu/にアクセスすると、Chromeが認識しているGPU情報や、ハードウェアアクセラレーションが有効になっている機能、問題点などが詳細に表示されます。ここでエラーメッセージを確認すると、原因特定の手がかりになります。
  • 同期の問題:

    • Googleアカウント: ログインしているGoogleアカウントに問題がないか、同期設定がオンになっているか確認します。
    • ネットワーク: Googleの同期サーバーへの接続に問題がないか確認します。
    • Chromeのバージョン: 使用しているChromeのバージョンが古すぎる場合、同期に問題が発生することがあります。Chromeを最新バージョンにアップデートしてみてください。
  • AURビルド時のエラー:

    • これはインストールと更新のセクションで既に触れましたが、GPGキー、依存関係不足、ビルド失敗など、様々なエラーが発生します。エラーメッセージを正確に把握し、PKGBUILDファイルの内容や、AURのパッケージページにあるコメントなどを参考に原因を特定・対処します。
  • 他のAURパッケージとの競合:

    • まれに、別のAURパッケージ(特にChromium系のブラウザや関連ツール)とファイルが競合する場合があります。AURヘルパーやpacmanが競合を検出してエラーを出すはずです。どちらのパッケージを優先するか判断し、競合する片方を削除する必要があります。
  • バージョンアップ後の問題:

    • Chromeの大規模なバージョンアップ後に、特定の機能が動作しなくなったり、設定がリセットされたりする場合があります。これはChrome自体の変更によるものか、Arch Linux環境との相互作用によるものか判断が必要です。一時的にダウングレードすることも可能ですが、セキュリティリスクがあるため推奨されません。

これらのトラブルシューティング手順は一般的なものであり、全ての問題を解決できるわけではありません。Arch Linuxでは、自分で問題を調査し、解決策を探る能力が重要になります。Arch Wiki、AURパッケージのコメントページ、Arch Linuxフォーラム、Redditのr/archlinuxなどを活用して情報を収集してください。

Google Chromeの代替案と検討

Google Chromeは非常に人気の高いブラウザですが、Arch Linuxユーザーの中には、そのプロプライエタリな性質や、Googleへの情報送信といった点を懸念して、他のブラウザを選択するユーザーも多くいます。ここでは、いくつかの代替案とその特徴を紹介し、Arch Linuxにおけるブラウザ選択の哲学について少し触れます。

なぜ他のブラウザも検討すべきか?

  • オープンソース: Arch Linuxの多くのユーザーはオープンソースソフトウェアを好みます。コードが公開されていることで透明性が高く、コミュニティによる監査も可能になります。
  • プライバシー: Google Chromeは多くの情報をGoogleに送信する可能性があります。よりプライバシーを重視したブラウザは、トラッキング防止機能が強化されていたり、ユーザーデータの収集を最小限に抑えていたりします。
  • Arch Linux公式リポジトリ: 公式リポジトリにあるパッケージは、Arch Linuxの開発者によって管理されており、AURパッケージよりも一般的に信頼性が高く、インストールやアップデートが簡単です。
  • カスタマイズ性: Arch Linuxの哲学に沿って、よりミニマルでカスタマイズ可能なブラウザを好むユーザーもいます。

主要な代替ブラウザ

  • Firefox:
    • 特徴: オープンソースであり、Mozilla Foundationによって開発されています。カスタマイズ性が高く、強力なプライバシー設定を持っています。多くの拡張機能が利用可能で、Sync機能を使えば異なるデバイス間でブックマークなどを同期できます。
    • Arch Linuxでの入手: 公式リポジトリに含まれています。 sudo pacman -S firefoxで簡単にインストールできます。最もArch Linuxらしい選択肢の一つと言えます。
  • Chromium:
    • 特徴: Google Chromeの基となっているオープンソースプロジェクトです。基本的な機能やパフォーマンスはChromeと非常に似ていますが、Googleのサービス(Googleアカウント同期、ロケーションサービス、クラッシュレポートなど)との連携機能は含まれていません。Googleが追加したプロプライエタリなコード(H.264などの一部コーデック、PDFリーダープラグイン、自動アップデート機能など)も含まれていません。
    • Arch Linuxでの入手: 公式リポジトリに含まれています。 sudo pacman -S chromiumでインストールできます。Chromeの機能が必要だが、Googleのブランドや一部のプロプライエタリな要素を避けたい場合に良い選択肢です。AURには、Chromiumにいくつかの追加機能(例: 動画コーデック)を追加した派生パッケージもあります。
  • Brave:
    • 特徴: Chromiumベースのブラウザで、広告とトラッカーを強力にブロックする機能を内蔵しています。HTTPS Everywhereや広告ブロッカーなどの機能が最初から有効になっています。仮想通貨BATと連携した収益モデルを持っています。
    • Arch Linuxでの入手: 公式リポジトリにはありませんが、AURで利用可能です (brave-binなど)。バイナリパッケージとして提供されることが多く、ビルドの手間は少ないですが、AURの注意点は同様に適用されます。
  • Vivaldi:
    • 特徴: Chromiumベースで、カスタマイズ性が非常に高いのが特徴です。タブ管理、メモ機能、スクリーンショット機能など、多くの独自の機能が内蔵されています。パワーユーザー向けと言えます。
    • Arch Linuxでの入手: 公式リポジトリにはありませんが、AURで利用可能です (vivaldiなど)。
  • Opera:
    • 特徴: Chromiumベースで、広告ブロッカーや無料VPN機能を内蔵しています。かつてはPrestoエンジンを使用していましたが、現在はChromiumに移行しています。
    • Arch Linuxでの入手: 公式リポジトリにはありませんが、AURで利用可能です (operaなど)。

これらのブラウザは、Google Chromeと同様に快適なウェブブラウジング体験を提供しつつ、それぞれ異なる特徴や哲学を持っています。Google Chromeに固執せず、自分の目的や価値観(オープンソース、プライバシー、カスタマイズ性など)に合ったブラウザを試してみるのも良いでしょう。

Google Chromeのアンインストール

Google Chromeが不要になった場合、システムからクリーンに削除できます。AURヘルパーを使用している場合と、pacmanを直接使用する場合で手順が異なります。

AURヘルパーを使ったアンインストール (推奨)

yayのようなAURヘルパーは、インストールと同様にアンインストールも簡単に行えます。

bash
yay -Rns google-chrome

このコマンドは、pacman -Rns google-chromeを実行するのとほぼ同じです。
* -R: パッケージを削除します。
* -n: パッケージがインストールした設定ファイルを削除します。
* -s: 削除するパッケージが依存していた他のパッケージのうち、もはやどのインストール済みパッケージからも依存されていないものを自動的に削除します(孤立した依存関係のクリーンアップ)。

yayは、削除されるパッケージと孤立する依存関係のリストを表示し、確認を求めます。同意すれば、Chrome本体と不要になった関連ファイルが削除されます。

pacmanを使ったアンインストール

手動でインストールした場合、またはAURヘルパーを使わずにアンインストールしたい場合は、pacmanコマンドを直接使います。

bash
sudo pacman -Rns google-chrome

こちらも、yayを使った場合と同様に機能します。削除にはroot権限が必要です。

関連ファイルや設定の削除(オプション)

pacman -Rnsコマンドは、通常、システム全体の設定ファイルなどを削除しますが、ユーザーのホームディレクトリに保存されている設定ファイルやキャッシュは削除しません。Google Chromeの場合、プロファイルデータは通常~/.config/google-chrome/ディレクトリに保存されています。

もし、Google Chromeに関する全てのデータを完全に削除したい場合は、このディレクトリを手動で削除する必要があります。

bash
rm -rf ~/.config/google-chrome/

注意: このコマンドはプロファイルディレクトリ内の全てのデータ(ブックマーク、履歴、パスワード、拡張機能、設定など)を完全に削除します。実行する前に、本当にこれらのデータが不要であることを確認してください。 一度削除すると元に戻すことはできません。

また、キャッシュデータは通常~/.cache/google-chrome/に保存されています。これも削除しても問題ありません。

bash
rm -rf ~/.cache/google-chrome/

これらの手動での削除はオプションであり、通常の使用においてはpacman -Rnsで十分です。

Arch Linuxにおけるブラウザ選択の哲学

Arch Linuxの哲学は、ユーザーに最大限の自由と制御を与えることです。どのソフトウェアをインストールし、どのように設定するかは、ユーザー自身が決定します。これはブラウザの選択にも当てはまります。

公式リポジトリにあるFirefoxやChromiumのようなオープンソースブラウザは、Arch Linuxの精神によく合致しています。これらは透明性が高く、コミュニティによってレビューされており、システムの他の部分との統合もスムーズです。

一方で、Google ChromeのようなプロプライエタリなソフトウェアをAURからインストールするという選択も、Arch Linuxの「自分で構築する」という哲学の一環と見なすことができます。AURを利用すること自体が、公式リポジトリにないソフトウェアを自分で見つけ、PKGBUILDを確認し、ビルド・インストールするという、Arch Linuxの学習プロセスと密接に関わっています。

Google Chromeを選ぶユーザーは、その利便性、特定のウェブ技術への対応、強力な開発者ツール、Googleエコシステムとの連携といったメリットを重視していることが多いでしょう。Arch Linuxは、これらの利便性を享受するために、AURというメカニズムを提供し、ユーザーがプロプライエタリソフトウェアを利用する選択肢を排除しません。

ただし、AURからソフトウェアをインストールする際には、セキュリティリスクや自己責任の原則を理解しておくことが重要です。特に、Google Chromeのように広く使われているソフトウェアであっても、AURパッケージのPKGBUILDが信頼できるものであるかを確認する習慣をつけるべきです。

Arch Linuxにおけるブラウザの選択は、単なる技術的な問題ではなく、オープンソース、プライバシー、利便性、そして自己決定といった価値観のバランスをどのように取るかという哲学的な側面も含んでいます。この記事が、Google Chromeの導入方法を提供するだけでなく、Arch Linuxでのソフトウェア選択について考えるきっかけとなれば幸いです。

まとめと今後の展望

この記事では、Arch LinuxにGoogle Chromeをインストールするための詳細な手順を、AURの仕組みや関連ツール(pacman, yay, makepkg, git)の解説と合わせて解説しました。AURヘルパーyayを使った簡単で推奨される方法と、手動でPKGBUILDを使ってビルドする方法の両方を紹介し、それぞれのメリット・デメリットを説明しました。

また、インストール後の初回起動設定、基本的な使い方、定期的な更新方法、そして遭遇しうるトラブルシューティングについても詳しく解説しました。さらに、Arch Linux環境におけるブラウザ選択の多様性を示すために、Google Chrome以外の代替ブラウザにも触れ、それぞれの特徴を紹介しました。

Arch LinuxでGoogle Chromeを使うことは、AURというコミュニティ主導の仕組みを活用することに他なりません。これは、Arch Linuxのユーザーがシステムの管理者であると同時に、コミュニティの一員でもあることを意味します。PKGBUILDを確認し、AURパッケージのメンテナーとコミュニケーションを取り、問題解決に貢献することも、Arch Linux体験の一部となり得ます。

この記事で学んだ知識を活かせば、Google Chromeを Arch Linux システムに安全かつ快適に統合し、日常的なウェブブラウジングに活用できるはずです。しかし、これはあくまで出発点です。Arch Linuxの世界は広大であり、さらに深く探求する価値があります。

  • AURのさらなる探求: AURにはGoogle Chrome以外にも数多くの便利なソフトウェアがあります。興味のあるソフトウェアが公式リポジトリにない場合は、AURで検索してみてください。
  • PKGBUILDの作成: 慣れてきたら、自分でPKGBUILDを作成して、好きなソフトウェアをArch Linuxパッケージとして利用できるように挑戦することも可能です。
  • Arch Wikiの活用: Arch WikiはArch Linuxに関する最も信頼できる情報源です。システムの設定、トラブルシューティング、特定のソフトウェアに関する情報など、ほとんどの情報が網羅されています。

Arch LinuxでのGoogle Chromeの利用が、あなたのArch Linuxジャーニーの一助となり、さらに深い学習へとつながることを願っています。


免責事項: この記事は執筆時点での情報に基づいており、Arch LinuxやGoogle Chromeのアップデートにより手順や状況が変わる可能性があります。AURパッケージはコミュニティによって管理されており、その可用性や品質は変動する可能性があります。AURパッケージのインストールと利用は自己責任で行ってください。重要なファイルや設定を変更する前には、必ずバックアップを取ることを強くお勧めします。


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