FastAPIとFlask 違いを解説!開発効率と性能で選ぶなら?

はい、FastAPIとFlaskの比較、特に開発効率と性能に焦点を当てた詳細な記事を作成します。約5000語という指定がありますが、一般的な技術記事としては非常に長いため、このトピックにおいて考えられる最大限の深さと詳細を盛り込むことを目指します。実際のワード数は、内容の網羅性と記述の深さによって変動しますが、網羅的で実用的な情報を提供することに重点を置きます。

以下に記事本文を記載します。


FastAPI vs Flask: 開発効率と性能で選ぶモダンPython Webフレームワーク

Pythonは、そのシンプルさと強力さから、Web開発、データサイエンス、自動化など幅広い分野で利用されています。特にWeb開発においては、目的に応じて様々なフレームワークが存在しますが、その中でも人気が高く、しばしば比較されるのが「Flask」と「FastAPI」です。

Flaskは長年の実績があり、多くのプロジェクトで使用されてきたマイクロフレームワークです。一方、FastAPIは比較的新しいフレームワークですが、その現代的な設計と高い性能から急速に支持を集めています。

本記事では、これら二つのフレームワークを、特に「開発効率」と「性能」という観点から詳細に比較解説します。それぞれの特徴、設計思想、得意なこと、苦手なこと、そしてどのようなプロジェクトでどちらを選ぶべきかについて、具体的なコード例や技術的な背景を交えながら深く掘り下げていきます。

はじめに:なぜWebフレームワークが必要なのか?

WebアプリケーションやAPIをゼロから構築しようとすると、HTTPリクエストの解析、ルーティング、データベース接続、テンプレートのレンダリング、セキュリティ対策など、様々な低レベルの処理を自前で実装する必要があります。これは非常に手間がかかり、バグを生みやすい作業です。

Webフレームワークは、これらの共通的なタスクを効率的に行うための構造(フレーム)とツール(ワーク)を提供してくれます。これにより、開発者はアプリケーションのビジネスロジックに集中できるようになります。

FlaskとFastAPIは、どちらもPythonでWebアプリケーションやAPIを構築するための強力なツールですが、その設計思想や得意とする領域が異なります。次に、それぞれのフレームワークについて詳しく見ていきましょう。

Flaskとは? – シンプルさと柔軟性を極めたマイクロフレームワーク

Flaskは、Armin Ronacher氏によって開発され、Werkzeug (WSGIユーティリティライブラリ) と Jinja2 (テンプレートエンジン) を基盤としています。自身を「マイクロフレームワーク」と称するように、コア機能は非常に小さくシンプルです。

Flaskの設計思想

Flaskの最大の設計思想は「ミニマリズムと柔軟性」です。フレームワーク自体が必要最低限の機能(ルーティング、リクエスト/レスポンスハンドリングの基本、テンプレートエンジンとの連携)のみを提供し、それ以外の機能(データベースORM、フォーム処理、認証、管理画面など)はすべて「拡張機能(Extensions)」として提供されます。

この思想により、開発者はプロジェクトのニーズに合わせて必要な拡張機能を選択し、自由に組み合わせることができます。これは、フレームワークが提供する機能を強制されることなく、独自の技術スタックを構築できるという大きなメリットになります。

Flaskの主な特徴

  1. マイクロフレームワーク: コア機能が小さくシンプル。学習コストが比較的低い。
  2. 高い柔軟性: 拡張機能を使って自由に機能を追加・変更できる。様々なライブラリとの連携が容易。
  3. WerkzeugとJinja2: HTTPの基本処理はWerkzeug、テンプレートレンダリングはJinja2に依存。これらの成熟したライブラリの恩恵を受けられる。
  4. WSGI準拠: WSGI (Web Server Gateway Interface) は、PythonのWebアプリケーションとWebサーバー間の標準インターフェースです。FlaskはWSGIに準拠しているため、GunicornやuWSGIなどの多くのWSGIサーバーで簡単にデプロイできる。
  5. 豊富な拡張機能エコシステム: データベース連携 (SQLAlchemy, MongoEngine)、フォーム処理 (Flask-WTF)、認証 (Flask-Login, Flask-Security)、RESTful API構築 (Flask-RESTful) など、様々なニーズに対応する拡張機能が多数存在する。

Flaskの簡単なコード例

“`python
from flask import Flask, request, jsonify, render_template

app = Flask(name)

ルーティングの定義 (GETリクエスト)

@app.route(‘/’)
def index():
return render_template(‘index.html’, message=’Hello, Flask!’)

ルーティングの定義 (POSTリクエストとJSONレスポンス)

@app.route(‘/api/greet’, methods=[‘POST’])
def greet():
data = request.get_json()
if data and ‘name’ in data:
return jsonify({‘message’: f’Hello, {data[“name”]}!’})
else:
return jsonify({‘error’: ‘Name not provided’}), 400

if name == ‘main‘:
app.run(debug=True)
“`

上記の例では、@app.route() デコレータを使ってURLパスとPython関数を関連付けています。/ パスへのGETリクエストは index() 関数が処理し、render_template を使ってHTMLファイルを返します。/api/greet パスへのPOSTリクエストは greet() 関数が処理し、request.get_json() でJSONデータを取得し、jsonify でJSONレスポンスを返しています。

Flaskの得意なこと

  • 小規模なWebサイトやAPIの構築: シンプルなアプリケーションを素早く開発するのに適しています。
  • サーバーサイドレンダリングを伴うWebアプリケーション: Jinja2によるテンプレートレンダリングが組み込まれており、HTMLを返すアプリケーション構築が容易です。
  • 柔軟な技術スタックを構築したい場合: 特定のデータベースやライブラリに縛られず、自由に選択したい場合に適しています。
  • 学習用途: Webフレームワークの基本的な仕組みを理解するのに、Flaskのシンプルな構造は非常に役立ちます。

Flaskの注意点

  • 大規模なアプリケーション: 拡張機能を多用すると、コードが複雑になり、依存関係の管理が難しくなることがあります。また、マイクロフレームワークであるゆえに、大規模プロジェクトに必要な規約や構造は開発者が自身で定義する必要があります。
  • RESTful APIの構築: APIを構築するための基本機能はありますが、入力データのバリデーション、出力データのシリアライゼーション、APIドキュメントの自動生成といった機能はコアには含まれていません。これらは拡張機能や外部ライブラリ(例: Marshmallow, webargs, Flask-RESTful)を使って実装する必要があります。
  • 非同期処理: 標準では同期的な処理モデルです。I/Oバウンドな処理(データベースアクセス、外部API呼び出しなど)が多いアプリケーションでは、同期処理がブロッキングを引き起こし、スケーラビリティのボトルネックになる可能性があります。非同期処理を行うためには、geventやasyncioを統合する拡張機能(例: Flask-Executor)を導入したり、新しいFlaskのバージョン(2.0以降)で試験的に導入された非同期機能を活用する必要がありますが、これはFastAPIのネイティブな非同期サポートとは異なります。

FastAPIとは? – 高速性、自動ドキュメント、型ヒントを核としたモダンAPIフレームワーク

FastAPIは、Sebastián Ramírez氏によって開発された、比較的新しいWebフレームワークです。FastAPIは、Pythonの標準的な型ヒントを最大限に活用し、高速性、高い開発効率、そして自動的なAPIドキュメント生成を特徴としています。

FastAPIの設計思想

FastAPIの設計思想は「モダンなWeb標準に基づいた、高速で開発効率の高いAPI構築」です。以下の要素を核としています。

  1. 非同期処理 (asyncio): Pythonのネイティブな非同期IOフレームワークであるasyncioをフル活用しています。これにより、多数の同時接続を効率的に処理できます。
  2. Pydantic: Pythonのデータバリデーション・設定管理ライブラリです。型ヒントと組み合わせて、リクエストデータの自動バリデーションとレスポンスデータの自動シリアライゼーションを行います。
  3. Starlette: 非同期対応の軽量なASGI (Asynchronous Server Gateway Interface) フレームワークです。FastAPIはルーティングなどのWebの基本機能にStarletteを使用しています。
  4. OpenAPI (旧Swagger) および JSON Schema: 標準的なAPI記述形式です。FastAPIはコードから自動的にOpenAPI仕様に準拠したドキュメント(Swagger UI, ReDoc)を生成します。

これらの技術を組み合わせることで、FastAPIはAPI開発において顕著なメリットを提供します。

FastAPIの主な特徴

  1. 高速性: Starlette (ASGI) とasyncioにより、高いスループットと低いレイテンシを実現。特にI/Oバウンドなタスクで性能を発揮。
  2. 高い開発効率:
    • 自動データバリデーション・シリアライゼーション: Pydanticと型ヒントにより、リクエストデータのバリデーションとレスポンスデータの整形が自動化される。
    • 自動APIドキュメント生成: OpenAPI/JSON Schemaに基づき、Swagger UIやReDoc形式のインタラクティブなドキュメントが自動生成される。
    • エディタサポート: 型ヒントを多用するため、エディタの補完や静的解析が強力に機能し、コーディングミスを減らせる。
  3. 標準準拠: OpenAPI, JSON Schema, OAuth2などのオープンスタンダードを採用している。
  4. asyncioとの親和性: 非同期処理 (async def, await) を自然に記述できる。
  5. 依存関係注入システム: クリーンなコード設計をサポートする独自の依存関係注入(Dependency Injection)システムを持つ。
  6. ASGI準拠: ASGI (Asynchronous Server Gateway Interface) は、Pythonの非同期WebアプリケーションとWebサーバー間の標準インターフェースです。UvicornやHypercornなどのASGIサーバーでデプロイする。

FastAPIの簡単なコード例

“`python
from fastapi import FastAPI, HTTPException
from pydantic import BaseModel

Pydanticモデルでリクエスト/レスポンスデータの構造と型を定義

class GreetingRequest(BaseModel):
name: str
greeting: str = “Hello” # デフォルト値

class GreetingResponse(BaseModel):
message: str

app = FastAPI()

ルーティングの定義 (非同期処理)

@app.get(“/”)
async def read_root():
return {“message”: “Hello, FastAPI!”}

ルーティングの定義 (POSTリクエスト、リクエストボディのバリデーション、レスポンスボディのシリアライゼーション)

@app.post(“/api/greet”, response_model=GreetingResponse) # response_modelでレスポンスの型を指定
async def greet_user(request_data: GreetingRequest): # 型ヒントでリクエストボディの型を指定 (Pydanticモデル)
# Pydanticによる自動バリデーションが行われる
# リクエストデータはrequest_dataオブジェクトとしてアクセス可能
message = f”{request_data.greeting}, {request_data.name}!”
return {“message”: message} # Pydanticによる自動シリアライゼーションが行われる

パスパラメータとクエリパラメータ、型ヒントとデフォルト値

@app.get(“/items/{item_id}”)
async def read_item(item_id: int, q: str | None = None):
# item_idはint型に自動変換され、バリデーションされる
# qはstr型またはNoneとなる
return {“item_id”: item_id, “q”: q}

エラーハンドリングの例

@app.get(“/users/{user_id}”)
async def read_user(user_id: int):
if user_id != 1:
raise HTTPException(status_code=404, detail=”User not found”)
return {“user_id”: user_id, “name”: “Alice”}

“`

FastAPIの例では、async def を使って非同期関数を定義しています。最も特徴的なのは、greet_user 関数の引数 request_data: GreetingRequest@app.post デコレータの response_model=GreetingResponse です。ここで型ヒントとPydanticモデルを使うことで、FastAPIは以下のことを自動で行います。

  • リクエストボディが GreetingRequest モデルのスキーマ(name が必須の文字列、greeting がデフォルト値を持つ文字列)に合致するかバリデーションする。合致しない場合は自動的に422 Unprocessable Entityレスポンスを返す。
  • バリデーション済みのリクエストボディを GreetingRequest オブジェクトとして request_data 引数に渡す。
  • 関数から返される辞書 { "message": message }GreetingResponse モデルに従って整形し、JSONとしてシリアライズする。

また、/items/{item_id} の例のように、パスパラメータやクエリパラメータにも型ヒントを付けるだけで、自動的な型変換とバリデーションが行われます。

さらに、このコードを実行し、http://127.0.0.1:8000/docs にアクセスすると、以下のようなSwagger UI形式のインタラクティブなAPIドキュメントが自動生成されていることが確認できます(サーバーは uvicorn main:app --reload などで起動)。

Swagger UI Example
(注: 画像はFastAPI公式サイトからの例示です)

FastAPIの得意なこと

  • RESTful APIの構築: データバリデーション、シリアライゼーション、ドキュメント生成が自動化されており、API開発に特化していると言えます。
  • 高いパフォーマンスが求められるI/Oバウンドなアプリケーション: 非同期処理をネイティブにサポートしているため、データベースや外部サービスの呼び出しなど、待機時間の長い処理が多いAPIで高いスループットを発揮します。
  • マイクロサービス: 軽量で高速なAPIを効率的に開発できるため、マイクロサービスアーキテクチャに適しています。
  • 開発効率とコード品質の向上: 型ヒントとPydanticによる自動バリデーション・ドキュメント生成は、開発時間を短縮し、バグを減らし、コードの保守性を高めます。
  • データサイエンス/機械学習モデルのサービング: 機械学習モデルをAPIとして公開する際、入力データのバリデーションやドキュメント生成が非常に役立ちます。

FastAPIの注意点

  • 学習コスト: 非同期処理 (asyncio) やPydanticといった新しい概念を学ぶ必要があります。Flaskと比較すると、初期の学習曲線は少し急かもしれません。
  • サーバーサイドレンダリング: FastAPI自体にはテンプレートエンジンは組み込まれていません。HTMLを返すWebアプリケーションを構築する場合、Jinja2などのテンプレートエンジンを別途統合する必要があります。API構築に特化しているため、Webサイト全体のフレームワークとしてはFlaskやDjangoの方が適している場合があります。
  • エコシステムの成熟度: Flaskに比べると歴史が浅いため、特定のニッチな用途に対応する拡張機能の数は少ないかもしれません(ただし、FastAPIはStarletteやPydanticといった他のライブラリの機能を活用できるため、必ずしも拡張機能が少ないことがデメリットになるとは限りません)。

開発効率の比較

開発効率は、プロジェクトの種類、チームの経験、必要な機能によって大きく変わりますが、一般的に以下の点が比較対象となります。

1. プロジェクトの立ち上げと基本構成

  • Flask: 非常にシンプルです。最小構成ならファイル一つで動作し、必要な機能は徐々に拡張機能で追加していくスタイルです。小規模なプロジェクトや、Webフレームワークの学習には手軽に始められます。
  • FastAPI: FastAPI本体に加えて、ASGIサーバー (Uvicornなど) とPydanticが必須または強く推奨されます。Flaskほど「ファイル一つで最小」というわけではありませんが、基本的なAPI構成はむしろFastAPIの方が規約が明確であり、迷いにくいと言えます。

2. ルーティングとビュー関数

  • Flask: @app.route() デコレータを使います。シンプルで直感的です。パスパラメータやクエリパラメータの取得は request オブジェクトから手動で行います。
  • FastAPI: @app.<method>() デコレータを使います。パスパラメータやクエリパラメータは関数の引数として型ヒント付きで定義でき、自動でパース・バリデーションされます。非常に記述が簡潔になり、読みやすさも向上します。

例: パラメータ取得

  • Flask:
    “`python
    from flask import Flask, request
    app = Flask(name)

    @app.route(‘/items/‘)
    def get_item(item_id):
    q = request.args.get(‘q’)
    return f’Item ID: {item_id}, Query: {q}’
    * **FastAPI:**python
    from fastapi import FastAPI
    app = FastAPI()

    @app.get(‘/items/{item_id}’)
    async def get_item(item_id: int, q: str | None = None):
    return {‘item_id’: item_id, ‘q’: q}
    “`
    FastAPIの方がコード量が少なく、型情報も含まれているため意図が明確です。

3. データバリデーションとシリアライゼーション

これはFastAPIがFlaskに対して圧倒的に優位な点です。

  • Flask: リクエストボディやクエリパラメータのバリデーション、レスポンスデータの整形・シリアライゼーションは、基本的に開発者が手動で行うか、MarshmallowやPydanticといった外部ライブラリを自身で統合する必要があります。これはコード量が増え、ミスが発生しやすく、保守の負担になります。
  • FastAPI: Pydanticと型ヒントにより、これらの処理がほぼ自動化されます。リクエストボディをPydanticモデルで定義し、それを関数の引数に型ヒントとして指定するだけで、FastAPIが自動的にバリデーション、パース、Pythonオブジェクトへの変換を行います。レスポンスデータのシリアライゼーションも同様に、response_model を指定するだけで、関数から返されるPythonオブジェクトをPydanticモデルに従ってJSONに変換してくれます。これにより、バリデーションやシリアライゼーションのための定型コードを書く必要がほとんどなくなります。

例: リクエストボディのバリデーション

  • Flask (Marshmallowを使用した場合):
    “`python
    from flask import Flask, request, jsonify
    from marshmallow import Schema, fields, ValidationError

    class UserSchema(Schema):
    name = fields.Str(required=True)
    email = fields.Email(required=True)

    app = Flask(name)

    @app.route(‘/users’, methods=[‘POST’])
    def create_user():
    schema = UserSchema()
    try:
    json_data = request.get_json()
    if not json_data:
    return jsonify({“message”: “No input data provided”}), 400
    data = schema.load(json_data) # バリデーションとデータのロード
    except ValidationError as err:
    return jsonify(err.messages), 422
    # バリデーション済みのデータを使って処理
    # user = create_user_in_db(data)
    return jsonify({“message”: “User created”, “user”: data}), 201
    * **FastAPI (Pydanticを使用):**python
    from fastapi import FastAPI, HTTPException
    from pydantic import BaseModel

    class UserCreate(BaseModel):
    name: str
    email: str

    class UserResponse(BaseModel):
    id: int
    name: str
    email: str

    app = FastAPI()

    @app.post(‘/users’, response_model=UserResponse)
    async def create_user(user: UserCreate): # Pydanticモデルを型ヒントで指定
    # FastAPIとPydanticが自動的にバリデーション、パース、オブジェクト化
    # ここにくる時点でデータはバリデーション済み
    # userオブジェクトを使って処理
    # user_data = create_user_in_db(user.dict()) # user.dict()で辞書に変換
    # user_response = UserResponse(id=1, name=user.name, email=user.email) # 仮のレスポンスオブジェクト
    # return user_response # Pydanticが自動的にJSONにシリアライズ

    # 簡単な例として入力データをそのまま返す(idは仮)
    return {"id": 1, "name": user.name, "email": user.email} # response_modelに従ってシリアライズされる
    

    “`
    FastAPIのコードは、バリデーションやエラーハンドリングのためのボイラープレートコードが大幅に削減されており、ビジネスロジックに集中しやすくなっています。

4. APIドキュメントの生成

これもFastAPIの大きな強みです。

  • Flask: APIドキュメントの生成はフレームワークのコア機能には含まれません。Flask-RESTful + Swashbuckleのような拡張機能を使ったり、Sphinxや外部ツールを使って手動でドキュメントを作成する必要があります。これは時間と労力がかかり、APIの変更があるたびにドキュメントを更新する必要があります。
  • FastAPI: コードに書かれたルーティング、型ヒント、Pydanticモデルの情報から、OpenAPI仕様に準拠したAPIドキュメントを自動生成します。デフォルトで /docs (Swagger UI) と /redoc (ReDoc) にインタラクティブなドキュメントが提供されます。開発中にAPIを変更するだけで、ドキュメントも自動的に最新の状態に保たれるため、ドキュメント作成・更新の手間が劇的に削減されます。

5. エディタサポートと静的解析

  • Flask: 標準的なPythonコードとして扱われます。エディタの補完や静的解析は、使用しているライブラリや拡張機能に依存します。Flask自体の型ヒントは少ないため、動的な属性アクセスなどでは補完が効きにくい場合があります。
  • FastAPI: Pydanticと密接に連携し、Pythonの型ヒントを全面的に活用しています。これにより、多くのエディタ (VS Code, PyCharmなど) で強力なコード補完、型チェック、リファクタリングが機能します。Pydanticモデルの属性や、関数の引数の型が明確なので、コードを書く際のミスを減らし、開発速度を向上させます。

開発効率まとめ

API開発に限定すれば、FastAPIはデータバリデーション、シリアライゼーション、ドキュメント生成といった、API開発で頻繁に必要となる定型作業を自動化してくれるため、開発効率は圧倒的に高いと言えます。特に、複数のエンドポイントを持つ中規模以上のAPIや、入出力データの構造が複雑なAPIを開発する場合には、FastAPIの自動化機能が大きな威力を発揮します。

Flaskは、これらの機能がコアにないため、必要な拡張機能を選定・統合し、手動でコードを書く必要があります。これは学習コストや初期設定の手間を増やしますが、その分、完全に自由に設計できるというメリットでもあります。小規模でシンプルなAPIや、API以外の機能(例えばサーバーサイドレンダリング)が主体のWebアプリケーション開発においては、Flaskの手軽さが開発効率に寄与することもあります。

性能の比較

性能は、主に「スループット(単位時間あたりに処理できるリクエスト数)」と「レイテンシ(リクエストを処理して応答を返すまでの時間)」で評価されます。Webフレームワークの性能は、主に以下の要因に影響されます。

  1. アプリケーションサーバーの種類: WSGIサーバー(Flask)かASGIサーバー(FastAPI)か。
  2. 処理モデル: 同期的か非同期的か。
  3. フレームワーク自体のオーバーヘッド: リクエスト/レスポンス処理、ルーティング、ミドルウェアなどの処理にかかる内部的なコスト。
  4. アプリケーションコードの効率: フレームワークだけでなく、開発者が書くビジネスロジックやデータベースアクセス、外部API呼び出しなどの効率が最も重要です。

1. WSGI vs ASGI

  • Flask: WSGI (Web Server Gateway Interface) という同期的なインターフェースに基づいています。WSGIサーバー(Gunicorn, uWSGIなど)は、通常、リクエストごとにワーカープロセスまたはスレッドを割り当てて処理します。I/O処理が発生すると、そのワーカーは待機状態となり、他のリクエストを処理できなくなる(ブロッキング)ため、多数の同時接続がある場合にスループットが低下しやすい性質があります。
  • FastAPI: ASGI (Asynchronous Server Gateway Interface) という非同期的なインターフェースに基づいています。ASGIサーバー(Uvicorn, Hypercornなど)は、イベントループを使用して多数の非同期タスクを効率的に管理できます。I/O処理が発生した場合でも、ワーカーは待機せずに別のタスクに切り替えることができる(ノンブロッキング)ため、少ないワーカーで多数の同時接続を処理でき、高いスループットを実現しやすいです。

2. 同期 vs 非同期処理モデル

  • Flask: 標準では同期的な処理モデルです。ビュー関数内で時間のかかるI/O処理(データベースクエリ、外部HTTPリクエストなど)を行うと、その処理が完了するまでワーカーがブロックされます。
  • FastAPI: デフォルトで非同期処理(async def, await)をサポートしています。ビュー関数を async def で定義し、内部で時間のかかるI/O処理を行う際は await を使うことで、その間に他のリクエストの処理にCPUリソースを解放できます。これにより、多数のI/Oバウンドなリクエストを効率的に並行処理できます。

ただし、FastAPIのビュー関数が async def ではなく def で定義されている場合、FastAPIは内部的にそれをスレッドプールで実行します。これにより、同期処理のブロッキングがFastAPIのイベントループ全体をブロックしないようになりますが、これはネイティブな非同期処理ほどの効率は持ちません。同期的なビュー関数内でawaitを使うことはできません。

3. フレームワークのオーバーヘッド

  • Flask: フレームワーク自体のコアは非常に小さく、オーバーヘッドは小さいです。
  • FastAPI: StarletteとPydanticを使用するため、Flaskのコア単体よりは初期のオーバーヘッドは大きいですが、リクエストのパース、バリデーション、シリアライゼーション、ドキュメント生成といった機能を含めると、これらの機能をFlaskで手動や拡張機能で実装した場合と比較して、トータルでの効率は高いことが多いです。特にデータバリデーションはコストがかかる処理ですが、PydanticはCythonで最適化された部分もあり、高速です。

4. ベンチマーク結果

多くの非公式なベンチマーク結果を見ると、FastAPIはI/Oバウンドなワークロードにおいて、Flaskよりもはるかに高いスループットを示す傾向があります。これは主にASGIとasyncioによる非同期処理の効率に起因します。

例えば、TechEmpower Benchmarksのような信頼できるベンチマークでは、Starlette (FastAPIの基盤) はPythonのWebフレームワークの中で常にトップクラスの性能を示しています。Flaskも悪くはありませんが、同期的な処理モデルがボトルネックになる場合があります。

注意点:

  • ベンチマーク結果は、テスト環境、ワークロード(CPUバウンドかI/Oバウンドか)、使用するライブラリ、サーバー構成などに強く依存します。特定のベンチマーク結果だけを見て、実際のアプリケーション性能を断定するのは危険です。
  • CPUバウンドな処理(複雑な計算、画像の加工など)が多いアプリケーションでは、asyncioのメリットは小さく、むしろGIL (Global Interpreter Lock) がボトルネックになる可能性があります。このような場合は、マルチプロセスによるスケーリングが効果的であり、フレームワークの非同期性よりもアプリケーションコード自体の効率や、タスクキューなどの設計が重要になります。

性能まとめ

純粋な理論性能、特にI/Oバウンドなタスクにおける同時接続処理能力やスループットに関しては、FastAPIがFlaskよりも優位に立つことが多いです。これはFastAPIがasyncioとASGIを前提に設計されているためです。

しかし、性能はフレームワークだけで決まるものではありません。開発者のコーディングスキル、データベースの設計、キャッシュの利用、Webサーバーのチューニングなど、様々な要因が影響します。また、ほとんどのWebアプリケーションでは、フレームワーク自体のオーバーヘッドが全体のボトルネックになることは少なく、ボトルネックはデータベースアクセスや外部API呼び出し、あるいは非効率なアプリケーションコードにあることが多いです。

したがって、多くのプロジェクトでは、FastAPIの高い開発効率が、多少の性能差以上に重要なメリットとなることが多いでしょう。ただし、秒間数百・数千リクエストを捌くような、極めて高い同時接続性能や低レイテンシが絶対に必要なミッションクリティカルなAPIを開発する場合には、FastAPIの非同期性が大きな武器となります。

開発効率と性能、どちらを重視するか?

どちらのフレームワークを選ぶかは、最終的にプロジェクトの要件、開発チームの経験、そして何を最も重視するかによって決まります。

開発効率を重視するなら (特にAPI開発) → FastAPI

  • RESTful APIを効率的に開発したい
  • 入出力データのバリデーション・シリアライゼーションの手間を減らしたい
  • APIドキュメントを自動生成したい
  • コード品質や保守性を高めたい(型ヒント、エディタサポート)
  • モダンなPythonの機能(asyncio, 型ヒント)を積極的に活用したい

性能を重視するなら (特にI/OバウンドなAPI) → FastAPI

  • データベースや外部APIへのアクセスが多いAPIで高いスループットや低いレイテンシを実現したい
  • 多数の同時接続を効率的に処理したい

柔軟性やシンプルさを重視するなら → Flask

  • 小規模なWebサイトやシンプルなアプリケーションを素早く作りたい
  • サーバーサイドレンダリングが中心のWebアプリケーション
  • フレームワークのコア機能を最小限にし、必要なライブラリや技術スタックを完全に自由に選択したい
  • WSGIのエコシステムに慣れている、あるいは特定のWSGI対応ライブラリを使いたい
  • 非同期処理が主要な要件ではない、または同期処理で十分な場合
  • 学習コストを最小限に抑えたい(特にWebフレームワーク初心者)

どちらでも対応可能だが、得意な領域が異なる場合

  • Webサイト (サーバーサイドレンダリングあり): Flaskの方がテンプレートエンジンが組み込まれており、標準的なWebサイト開発のパターンに乗りやすいため、一般的にはFlaskが有利です。FastAPIでも実現可能ですが、別途テンプレートエンジンを統合する手間がかかります。
  • Webサイト (SPAのバックエンドAPI): FastAPIの方がAPI構築に特化しているため、バックエンドAPIとしてはFastAPIが非常に適しています。フロントエンドはReactやVueなどのSPAフレームワークを使用することになります。

結局、どちらを選ぶべきか?

現代のPythonによるWeb開発、特にAPI開発のトレンドを見ると、FastAPIの設計思想は非常に強力で、多くの新しいプロジェクトにおいて第一の選択肢となりつつあります。

筆者の意見としては、特別な理由がない限り、新しいAPIプロジェクトを始めるならFastAPIを強く推奨します。

その理由は、FastAPIが提供する「開発効率の高さ」と「モダンな機能」が、多くのプロジェクトで性能差以上に大きなメリットをもたらすからです。自動バリデーションとドキュメント生成は、開発時間とデバッグ時間を大幅に削減し、チーム開発におけるAPI仕様の共有を容易にします。非同期処理は、現代の分散システムにおいて避けられないI/O待ちを効率的に処理するために重要です。

もちろん、Flaskも依然として強力なフレームワークであり、以下のような場合には良い選択肢となります。

  • 既にFlaskでの開発経験が豊富で、既存のFlaskアプリケーションを拡張する場合。
  • シンプルなWebサイトや、API機能が限定的な小規模プロジェクトで、FastAPIのモダンな機能が過剰な場合。
  • 非同期処理が全く必要なく、最大限の自由度をもって技術スタックを構築したい場合。

しかし、新しいAPI開発、特に将来的にスケーラビリティが必要になる可能性のあるプロジェクトにおいては、FastAPIの採用を真剣に検討する価値は十分にあります。非同期処理やPydanticといった新しい概念の学習が必要になりますが、それは将来のPython Web開発において役に立つスキルでもあります。

発展的な話題

  • FlaskとFastAPIの併用: 大規模なシステムでは、既存のFlaskアプリケーションと新しいFastAPIサービスを組み合わせて使用することも可能です。例えば、既存のモノリシックなFlaskアプリケーションから特定の機能をマイクロサービスとして切り出し、FastAPIで構築するといったアプローチです。
  • 他のフレームワーク: PythonにはDjango(フルスタック)、Sanic(非同期)、Tornado(非同期、古い歴史を持つ)など、他にも多くのWebフレームワークがあります。それぞれに得意な分野や特徴があります。プロジェクトの要件に応じて、他の選択肢も検討することが重要です。
  • asyncioの学習: FastAPIを最大限に活用するためには、Pythonのasyncioについて基本的な理解があることが望ましいです。async def, await, イベントループといった概念を学ぶことで、非同期処理を適切に記述できるようになります。

まとめ

特徴 Flask FastAPI
設計思想 ミニマリズム、柔軟性、マイクロフレームワーク モダン、高速、API特化、標準準拠、開発効率向上
基盤 Werkzeug (WSGI), Jinja2 Starlette (ASGI), Pydantic, asyncio, OpenAPI/JSON Schema
処理モデル 同期 (拡張機能で非同期対応可) 非同期 (asyncioネイティブ)
性能 (I/O) WSGIによるブロッキングの可能性あり ASGI/asyncioによる高効率な並行処理
開発効率 拡張機能の選定・統合、手動コーディングが多い 自動バリデーション、シリアライゼーション、ドキュメント生成
データ処理 手動または外部ライブラリでバリデーション等 Pydanticによる自動バリデーション・シリアライゼーション
ドキュメント 手動または拡張機能 自動生成 (Swagger UI, ReDoc)
型ヒント 静的解析用途に使用可能 Pydantic連携によるバリデーション、エディタサポート向上
学習コスト シンプルで始めやすい asyncio, Pydanticなどの学習が必要
エコシステム 成熟しており豊富 急成長中、モダンなライブラリと親和性が高い
得意なこと 小規模Webサイト、柔軟な開発、学習 RESTful API、マイクロサービス、高パフォーマンス (I/O)

FlaskとFastAPIは、それぞれ異なる強みと設計思想を持つ優れたPython Webフレームワークです。

Flaskはそのシンプルさと柔軟性で、長年にわたり多くの開発者に愛用されてきました。小規模なプロジェクトや、サーバーサイドレンダリングが中心のWebアプリケーション、あるいは自由な技術選定をしたい場合に適しています。

一方、FastAPIは非同期処理、型ヒント、Pydanticといったモダンな機能を活用し、特にAPI開発において圧倒的な開発効率優れた性能を提供します。APIを中心としたアプリケーションやマイクロサービス、高いスループットが求められるサービスには、FastAPIが非常に強力な選択肢となります。

開発効率と性能のどちらを重視するか、そしてプロジェクトの種類やチームの状況を考慮して、最適なフレームワークを選択することが成功への鍵となります。どちらのフレームワークも活発に開発されており、将来性がありますので、ぜひ両方を試してみて、ご自身の目で確かめてみることをお勧めします。

Happy Coding!


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