Honoデプロイ完全ガイド:Vercel, Netlify, Cloudflare Pages対応
Honoは、高速なエッジランタイムで動作する、シンプルで軽量なWebアプリケーションフレームワークです。その使いやすさとパフォーマンスの高さから、近年注目を集めています。Honoアプリケーションをデプロイする方法はいくつかありますが、ここではVercel, Netlify, Cloudflare Pagesという代表的な3つのプラットフォームへのデプロイ方法を、詳細な手順とトラブルシューティング、パフォーマンス最適化のヒントを含めて解説します。
1. Honoとは
Honoは、Deno, Bun, Node.jsなど、様々なJavaScriptランタイム上で動作する汎用的なWebフレームワークです。以下のような特徴があります。
- 軽量・高速: コア機能がコンパクトにまとめられており、高速なパフォーマンスを実現します。
- TypeScriptファースト: TypeScriptによる開発を推奨しており、型安全なアプリケーション開発をサポートします。
- 柔軟性: 様々なミドルウェアやテンプレートエンジン、データベースアダプタなどを組み合わせて、柔軟なアプリケーションを構築できます。
- Edge Runtime対応: Vercel Edge Functions, Cloudflare Workersなど、エッジランタイム環境での実行に最適化されています。
Honoは、APIサーバー、静的サイトジェネレーター、Webアプリケーションなど、幅広い用途に使用できます。
2. 前提条件
この記事では、以下の知識と環境を前提とします。
- 基本的なJavaScript/TypeScriptの知識: HonoはJavaScript/TypeScriptで開発するため、基本的な構文や概念を理解している必要があります。
- Node.jsとnpm (またはyarn/pnpm): Honoのプロジェクトを作成・管理するために必要です。
- GitとGitHub (または他のバージョン管理システム): ソースコードの管理と、デプロイプラットフォームとの連携に使用します。
- 各デプロイプラットフォームのアカウント: Vercel, Netlify, Cloudflare Pagesのいずれかのアカウントが必要です。
3. Honoプロジェクトの作成
まず、Honoのプロジェクトを作成します。ここでは、create-hono
コマンドを使用する方法を紹介します。
bash
npm create hono my-hono-app --template static
cd my-hono-app
npm install
このコマンドは、my-hono-app
という名前のディレクトリに、静的サイトを構築するためのHonoプロジェクトを生成します。--template static
オプションは、基本的な静的サイトのテンプレートを使用することを指定します。
プロジェクトのディレクトリ構造は以下のようになります。
my-hono-app/
├── public/
│ ├── index.html
│ └── favicon.ico
├── src/
│ └── index.ts
├── package.json
├── tsconfig.json
└── .gitignore
public/
ディレクトリには、静的ファイル (HTML, CSS, JavaScript, 画像など) が格納されます。src/index.ts
には、Honoアプリケーションのエントリーポイントとなるコードが記述されます。
src/index.ts
の内容を確認してみましょう。
“`typescript
import { Hono } from ‘hono’
const app = new Hono()
app.get(‘/’, (c) => c.html(‘
Hello Hono!
‘))
export default app
“`
このコードは、ルートパス (/
) へのリクエストを受け取ると、<h1>Hello Hono!</h1>
というHTMLを返すシンプルなHonoアプリケーションを定義しています。
プロジェクトが正常に作成されたことを確認するために、ローカルサーバーを起動してみましょう。
bash
npm run dev
ブラウザで http://localhost:3000
にアクセスすると、”Hello Hono!” と表示されるはずです。
4. Vercelへのデプロイ
Vercelは、Next.jsの開発元であるVercel社が提供する、サーバーレスプラットフォームです。自動的なCI/CDパイプラインや、グローバルCDNなどの強力な機能を提供しており、Honoアプリケーションのデプロイに最適です。
4.1. Vercel CLIのインストール
まず、Vercel CLIをインストールします。
bash
npm install -g vercel
4.2. Vercelへのログイン
Vercel CLIを使って、Vercelにログインします。
bash
vercel login
このコマンドを実行すると、ブラウザが起動し、Vercelへのログインを求められます。ログインが完了すると、CLIにアカウント情報が設定されます。
4.3. Vercelへのデプロイ
プロジェクトのルートディレクトリで、vercel
コマンドを実行します。
bash
vercel
このコマンドは、プロジェクトをVercelにデプロイするためのウィザードを開始します。いくつかの質問に答える必要があります。
- Set up and deploy “~/my-hono-app”? (Yes/No) –
Yes
を選択します。 - Which scope do you want to deploy to? (アカウント名) – ご自身のアカウントを選択します。
- Link to existing project? (Yes/No) –
No
を選択します。(初めてデプロイする場合) - What’s your project’s name? (my-hono-app) – プロジェクト名を入力します。
- Which directory contains your code? (./) –
.
(カレントディレクトリ) を入力します。 - Want to override the settings? (Yes/No) –
No
を選択します。(初めてデプロイする場合)
ウィザードが完了すると、Vercelは自動的にプロジェクトをビルドし、デプロイします。デプロイが完了すると、コンソールにデプロイ先のURLが表示されます。
4.4. Vercelの設定ファイル (vercel.json)
Vercelは、プロジェクトのルートディレクトリにあるvercel.json
というファイルを使って、デプロイの設定を管理します。Honoアプリケーションの場合、vercel.json
に必要な設定を追加する必要があります。
基本的な設定は以下のようになります。
json
{
"version": 2,
"builds": [
{
"src": "src/index.ts",
"use": "@vercel/node"
}
],
"routes": [
{
"src": "/(.*)",
"dest": "src/index.ts"
}
]
}
"builds"
セクションは、ビルド処理の設定を定義します。"src": "src/index.ts"
は、src/index.ts
をエントリーポイントとして指定し、"use": "@vercel/node"
は、Node.jsランタイムを使用してビルドすることを指定します。"routes"
セクションは、リクエストのルーティングを設定します。"src": "/(.*)"
は、すべてのリクエストをキャッチし、"dest": "src/index.ts"
は、src/index.ts
にリクエストを転送することを指定します。
カスタムサーバーの設定:
HonoをVercelで動かすためには、カスタムサーバーの起動が必要になります。@vercel/node
は、デフォルトではカスタムサーバーを起動しません。そこで、vercel.json
を以下のように変更し、@vercel/node
にカスタムサーバー起動を指示する必要があります。
json
{
"version": 2,
"builds": [
{
"src": "api/index.ts", // エントリーポイントをapiディレクトリに変更
"use": "@vercel/node"
}
],
"routes": [
{
"src": "/api/(.*)", // apiディレクトリへのリクエストをルーティング
"dest": "api/index.ts"
},
{
"src": "/(.*)", // その他はpublicディレクトリへ
"dest": "public/$1"
}
]
}
変更点:
builds.src
: エントリーポイントをsrc/index.ts
からapi/index.ts
に変更しました。これにより、Honoのアプリケーションロジックをapi
ディレクトリに配置することを前提とします。routes
: ルーティング設定を調整しました。/api/(.*)
へのリクエストはapi/index.ts
で処理されます。- その他のリクエストは
public
ディレクトリの対応するファイルにルーティングされます(静的ファイル配信)。
api/index.ts
の例:
“`typescript
// api/index.ts
import { Hono } from ‘hono’;
const app = new Hono();
app.get(‘/hello’, (c) => {
return c.json({ message: ‘Hello Vercel!’ });
});
export default app;
export const config = {
runtime: ‘nodejs16’, // Node.jsのランタイムバージョンを指定
};
“`
ポイント:
api/index.ts
は、Vercel Functionsとしてデプロイされます。config
オブジェクトでランタイムを指定します。
静的ファイル配信:
静的ファイルをpublic
ディレクトリに配置すれば、Vercelが自動的に配信してくれます。
4.5. 環境変数の設定
Vercelでは、環境変数をGUIまたはCLIを使って設定できます。vercel env
コマンドを使用すると、環境変数を設定・管理できます。
bash
vercel env add MY_VARIABLE
このコマンドは、環境変数MY_VARIABLE
の値を設定するためのウィザードを開始します。
4.6. VercelのGit連携
Vercelは、Gitリポジトリと連携することで、ソースコードの変更を自動的に検出し、デプロイすることができます。GitHub, GitLab, Bitbucketなどの主要なGitホスティングサービスに対応しています。
Git連携を設定するには、Vercelのダッシュボードでプロジェクトを選択し、”Git Integration”セクションでリポジトリを接続します。
4.7. Vercel Edge Functions
Honoは、Vercel Edge Functionsとの連携にも対応しています。Edge Functionsは、Vercelのグローバルエッジネットワーク上で実行されるサーバーレス関数であり、低遅延で高速な応答を提供します。
Edge Functionsを使用するには、vercel.json
で"use": "@vercel/edge"
を指定します。
注意点: Edge Functionsは、Node.js APIとの互換性がないため、一部のNode.jsライブラリを使用できない場合があります。
5. Netlifyへのデプロイ
Netlifyは、JAMstackアーキテクチャに特化したデプロイプラットフォームです。自動ビルド、グローバルCDN、サーバーレス関数など、Honoアプリケーションのデプロイに必要な機能を提供しています。
5.1. Netlify CLIのインストール
まず、Netlify CLIをインストールします。
bash
npm install -g netlify-cli
5.2. Netlifyへのログイン
Netlify CLIを使って、Netlifyにログインします。
bash
netlify login
このコマンドを実行すると、ブラウザが起動し、Netlifyへのログインを求められます。ログインが完了すると、CLIにアカウント情報が設定されます。
5.3. Netlifyへのデプロイ
プロジェクトのルートディレクトリで、netlify deploy
コマンドを実行します。
bash
netlify deploy --prod
--prod
オプションは、本番環境へのデプロイを指定します。
このコマンドは、いくつかの質問に答える必要があります。
- No netlify.toml detected. Would you like to create one with default settings? (Yes/No) –
Yes
を選択します。(初めてデプロイする場合) - Do you want to create a new site, or link this folder to an existing site? –
Create & configure a new site
を選択します。 - Team: (アカウント名) – ご自身のアカウントを選択します。
- Site name (optional): (ランダムな名前) – サイト名を入力します。(オプション)
Netlifyは、netlify.toml
という設定ファイルを使って、デプロイの設定を管理します。デフォルトの設定で問題なければ、netlify deploy
コマンドを実行するだけでデプロイが完了します。
5.4. Netlifyの設定ファイル (netlify.toml)
netlify.toml
ファイルは、ビルドコマンド、パブリッシュディレクトリ、関数ディレクトリなどの設定を定義します。Honoアプリケーションの場合、netlify.toml
に必要な設定を追加する必要があります。
基本的な設定は以下のようになります。
“`toml
[build]
command = “npm run build” # ビルドコマンド
publish = “dist” # 公開ディレクトリ
[functions]
directory = “netlify/functions” # 関数ディレクトリ
“`
[build]
セクションは、ビルド処理の設定を定義します。command = "npm run build"
は、npm run build
コマンドを実行してビルドすることを指定します。publish = "dist"
は、ビルドされたファイルをdist
ディレクトリに格納し、それを公開ディレクトリとして指定します。[functions]
セクションは、サーバーレス関数の設定を定義します。directory = "netlify/functions"
は、サーバーレス関数のコードをnetlify/functions
ディレクトリに格納することを指定します。
Honoをサーバーレス関数として実行:
HonoをNetlify Functionsとして実行するには、Honoのコードをnetlify/functions
ディレクトリに配置し、netlify.toml
で関数ディレクトリを指定します。
netlify/functions/hello.ts
の例:
“`typescript
import { Hono } from ‘hono’;
const app = new Hono();
app.get(‘/’, (c) => {
return c.json({ message: ‘Hello Netlify!’ });
});
export const handler = async (event: any, context: any) => {
const request = new Request(event.path, {
method: event.httpMethod,
headers: event.headers,
body: event.body ? event.isBase64Encoded ? Buffer.from(event.body, ‘base64’).toString() : event.body : null,
});
const response = await app.request(request);
return {
statusCode: response.status,
headers: Object.fromEntries(response.headers.entries()),
body: await response.text(),
};
};
“`
ポイント:
handler
関数は、Netlify Functionsのエントリーポイントです。event
オブジェクトからリクエスト情報を取得し、Request
オブジェクトを生成します。app.request(request)
でHonoアプリケーションにリクエストを処理させます。- レスポンスをNetlify Functionsの形式で返します。
5.5. 環境変数の設定
Netlifyでは、環境変数をGUIまたはCLIを使って設定できます。netlify env
コマンドを使用すると、環境変数を設定・管理できます。
bash
netlify env:set MY_VARIABLE "my value"
このコマンドは、環境変数MY_VARIABLE
の値をmy value
に設定します。
5.6. NetlifyのGit連携
Netlifyは、Gitリポジトリと連携することで、ソースコードの変更を自動的に検出し、デプロイすることができます。GitHub, GitLab, Bitbucketなどの主要なGitホスティングサービスに対応しています。
Git連携を設定するには、Netlifyのダッシュボードでプロジェクトを選択し、”Deploy settings”セクションでリポジトリを接続します。
5.7. Netlify Edge Functions (Distributed Persistent Rendering)
Netlify Edge Functionsは、Netlifyのグローバルエッジネットワーク上で実行されるサーバーレス関数であり、低遅延で高速な応答を提供します。HonoアプリケーションをEdge Functionsとして実行することで、パフォーマンスを向上させることができます。
Edge Functionsを使用するには、netlify.toml
でfunctions.directory
を設定し、関数ディレクトリにHonoのコードを配置します。
6. Cloudflare Pagesへのデプロイ
Cloudflare Pagesは、Cloudflareが提供するJAMstackプラットフォームです。自動デプロイ、グローバルCDN、サーバーレス関数 (Cloudflare Workers) など、Honoアプリケーションのデプロイに必要な機能を提供しています。
6.1. Cloudflareアカウントの準備
Cloudflare Pagesを使用するには、Cloudflareのアカウントが必要です。アカウントを作成し、ドメインをCloudflareに登録しておきましょう。
6.2. GitHubリポジトリの作成
Cloudflare Pagesは、GitHubリポジトリと連携してデプロイを行います。HonoアプリケーションのコードをGitHubリポジトリにプッシュしておきましょう。
6.3. Cloudflare Pagesへのプロジェクト作成
Cloudflareダッシュボードにログインし、”Pages”セクションに移動します。”Create a project”ボタンをクリックし、GitHubリポジトリを選択します。
6.4. ビルド設定
Cloudflare Pagesは、リポジトリの設定に基づいて自動的にビルドを行います。以下の設定を確認・変更します。
- Production branch: デプロイに使用するブランチを選択します。通常は
main
またはmaster
ブランチを選択します。 - Build command: ビルドコマンドを入力します。Honoアプリケーションの場合、
npm run build
などのコマンドを入力します。 - Build output directory: ビルドされたファイルの出力ディレクトリを指定します。通常は
dist
またはpublic
ディレクトリを指定します。 - Environment variables (optional): 環境変数を設定します。
6.5. デプロイ
設定が完了したら、”Save and Deploy”ボタンをクリックします。Cloudflare Pagesは、自動的にリポジトリのコードをビルドし、デプロイします。
6.6. Cloudflare Pages Functions (Cloudflare Workers)
Cloudflare Pages Functionsは、Cloudflare Workersとして実行されるサーバーレス関数です。HonoアプリケーションをFunctionsとして実行することで、パフォーマンスを向上させることができます。
Functionsを使用するには、functions
ディレクトリを作成し、その中にHonoのコードを配置します。Cloudflare Pagesは、自動的にfunctions
ディレクトリ内のコードをWorkersとしてデプロイします。
functions/hello.ts
の例:
“`typescript
import { Hono } from ‘hono’;
const app = new Hono();
app.get(‘/’, (c) => {
return c.json({ message: ‘Hello Cloudflare Pages!’ });
});
export const onRequest = async (context: EventContext
const response = await app.request(context.request);
return response;
};
“`
ポイント:
onRequest
関数は、Cloudflare Workersのエントリーポイントです。context.request
からリクエスト情報を取得し、Request
オブジェクトを生成します。app.request(request)
でHonoアプリケーションにリクエストを処理させます。- レスポンスを返します。
7. パフォーマンス最適化のヒント
Honoアプリケーションのパフォーマンスを最適化するためには、以下の点に注意しましょう。
- コードの最適化: 不要なコードを削除し、効率的なアルゴリズムを使用しましょう。
- 画像の最適化: 画像を圧縮し、適切な形式 (WebPなど) を使用しましょう。
- キャッシュの活用: ブラウザキャッシュやCDNを活用して、静的ファイルの配信を高速化しましょう。
- gzip圧縮: テキストファイルをgzip圧縮して、転送量を削減しましょう。
- Honoミドルウェアの活用: Honoのミドルウェアを活用して、ロギング、認証、レート制限などの機能を効率的に実装しましょう。
- Edge Runtimeの活用: Vercel Edge Functions, Cloudflare Workersなどのエッジランタイムを活用して、低遅延で高速な応答を提供しましょう。
8. トラブルシューティング
デプロイ時に問題が発生した場合、以下の点を確認してみましょう。
- 設定ファイルの確認:
vercel.json
,netlify.toml
などの設定ファイルが正しく設定されているか確認しましょう。 - ビルドエラーの確認: ビルド時にエラーが発生していないか確認しましょう。
- ログの確認: デプロイプラットフォームのログを確認して、エラーの原因を特定しましょう。
- 環境変数の確認: 環境変数が正しく設定されているか確認しましょう。
- ドキュメントの確認: デプロイプラットフォームのドキュメントを参照して、解決策を探しましょう。
- コミュニティへの質問: 問題が解決しない場合は、Honoのコミュニティやデプロイプラットフォームのコミュニティに質問してみましょう。
9. まとめ
Honoは、Vercel, Netlify, Cloudflare Pagesなどの主要なデプロイプラットフォームで簡単にデプロイできます。この記事で解説した手順とヒントを参考に、Honoアプリケーションを最適な環境でデプロイし、高速で快適なWeb体験を提供しましょう。
Honoの柔軟性とパフォーマンスの高さは、様々なWebアプリケーション開発の可能性を広げてくれます。ぜひHonoを使いこなして、革新的なWebアプリケーションを開発してください。