React Three Fiber紹介:Next.js/Reactでインタラクティブな3Dを作る

はい、承知いたしました。React Three FiberをNext.js/React環境で使用してインタラクティブな3Dを作成する方法について、詳細な説明を含む約5000語の記事を作成します。


React Three Fiber紹介:Next.js/Reactでインタラクティブな3Dを作る

はじめに:Webにおける3Dの可能性と従来の課題

現代のウェブサイトは、単なる情報の羅列から、ユーザーを没入させるインタラクティブな体験へと進化しています。その進化の最前線にある技術の一つが、ウェブブラウザ上での3Dグラフィックスです。製品のインタラクティブなプレビュー、没入感のあるブランド体験、教育コンテンツ、ゲームなど、3Dはユーザーエンゲージメントを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

ウェブで3Dを実現するための基盤技術がWebGLです。しかし、WebGL APIは低レベルであり、直接扱うのは非常に複雑で時間がかかります。そこで登場するのが、WebGLをより扱いやすくするためのライブラリです。最も広く使われているのが、柔軟性と機能の豊富さで知られるThree.jsです。Three.jsを使えば、シーンの構築、オブジェクトの配置、カメラの設定、ライトの追加、アニメーション、イベント処理などを、より抽象化されたAPIで行うことができます。

しかし、Three.jsをReactのような宣言的なUIライブラリと組み合わせる際には、いくつかの課題がありました。Three.jsは独自のレンダリングループを持ち、DOMとは独立して動作します。一方、Reactは仮想DOMを管理し、コンポーネントの状態に基づいてDOMを更新します。この二つの異なるパラダイムを効果的に連携させるのは容易ではありませんでした。Three.jsのオブジェクトの状態をReactの状態管理と同期させたり、Reactのライフサイクルやコンポーネント構造を活用して3Dシーンを構築したりすることは、しばしば煩雑なラッパーコードや同期ロジックを必要としました。

こうした課題に対する洗練されたソリューションとして登場したのが、React Three Fiber (R3F) です。

React Three Fiber (R3F) とは何か?なぜ注目されるのか?

React Three Fiberは、Three.jsをReactのコンポーネントとして扱えるようにするライブラリです。公式には「React Reconciler for Three.js」と説明されています。Reconcilerとは、Reactの仮想DOMツリーの差分を計算し、実際のレンダリング環境(この場合はThree.js)に適用する役割を担うモジュールです。React DOMが仮想DOMをブラウザのDOMにレンダリングするのと同じように、React Three Fiberは仮想DOMツリーをThree.jsのシーンオブジェクトグラフにレンダリングします。

これにより、私たちはThree.jsのAPIを直接叩く代わりに、まるでReactコンポーネントを組み立てるかのように3Dシーンを構築できるようになります。

“`jsx
// Three.jsでの記述例 (JavaScript)
const scene = new THREE.Scene();
const geometry = new THREE.BoxGeometry(1, 1, 1);
const material = new THREE.MeshBasicMaterial({ color: 0x00ff00 });
const cube = new THREE.Mesh(geometry, material);
scene.add(cube);
camera.position.z = 5;
function animate() {
requestAnimationFrame(animate);
cube.rotation.x += 0.01;
cube.rotation.y += 0.01;
renderer.render(scene, camera);
}
animate();

// React Three Fiberでの記述例 (JSX)
import { Canvas, useFrame } from ‘@react-three/fiber’
import { useRef } from ‘react’

function Box(props) {
const meshRef = useRef()
useFrame(() => {
meshRef.current.rotation.x += 0.01
meshRef.current.rotation.y += 0.01
})
return (




)
}

function App() {
return (





)
}
“`

この例からわかるように、R3Fでは:

  • 宣言的UI: 3DシーンをJSXで記述します。DOM要素を配置するのと同じ感覚で、MeshやLightなどの3Dオブジェクトを配置できます。
  • Reactエコシステムとの親和性: Reactのフック (useState, useRef, useEffectなど) やコンポーネントのライフサイクル、状態管理ライブラリ (Redux, Zustand, Jotaiなど) をそのまま活用できます。
  • コンポーネント化: 3Dオブジェクトやオブジェクトの集まりを再利用可能なReactコンポーネントとして定義できます。これにより、コードの可読性や保守性が向上します。
  • パフォーマンス: R3FはThree.jsのパフォーマンスを損なうことなく、Reactの効率的な差分更新メカニズムを利用します。不要なThree.js APIの呼び出しを減らし、最適化された更新処理を行います。
  • 開発効率: React開発者にとって馴染みのある開発体験を提供するため、学習コストが低く、迅速な開発が可能です。

Next.jsとR3Fの組み合わせの利点

R3FはReactアプリケーションであればどこでも使えますが、Next.jsと組み合わせることで、さらに多くのメリットを享受できます。

  • ファイルベースルーティング: アプリケーションのページ管理が容易になります。特定のページにのみ3Dコンテンツを表示する場合などに便利です。
  • API Routes: バックエンド処理が必要な場合(例: 3Dモデルのデータを取得する、ユーザーのインタラクションを記録するなど)、Next.jsのAPI Routesを使って簡単に構築できます。
  • 最適化機能: コード分割、画像の最適化など、Next.jsが提供する様々な最適化機能を利用できます。特に next/dynamic を使用することで、3D関連のコード(Three.jsやR3F)をクライアントサイドでのみロードし、初期ロード時間を短縮するのに役立ちます。
  • サーバーサイドレンダリング (SSR) / Static Site Generation (SSG): Next.jsの強力なレンダリング機能は、ほとんどの3Dアプリケーションでは直接的なレンダリングには使われません(3Dレンダリングはブラウザで行われるため)。しかし、静的なコンテンツや3Dシーンのプレースホルダー、ローディングインジケーターなどをSSR/SSGで提供することで、ユーザー体験を向上させることができます。

このように、React Three FiberとNext.jsを組み合わせることで、モダンなWeb開発のベストプラクティスを取り入れつつ、リッチでインタラクティブな3D体験を効率的に開発することが可能になります。

React Three Fiber (R3F) の基礎

R3Fのコアとなる概念と基本的な使い方を理解しましょう。

<Canvas> コンポーネント:3Dシーンのコンテナ

R3Fで3Dシーンを描画するための最も基本的なコンポーネントが<Canvas>です。これはHTMLの<canvas>要素をラップし、Three.jsのレンダラー、シーン、カメラなどをセットアップして管理します。

“`jsx
import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’

function My3DScene() {
return (

{/ この中に3Dオブジェクトやライトなどを配置する /}





)
}
“`

<Canvas> コンポーネントは、Three.jsの様々な設定をPropsとして受け取ります。

  • camera: カメラの位置、FOV、ニア/ファー クリップ面などを設定できます。デフォルトのカメラが自動的にセットアップされますが、必要に応じて <perspectiveCamera><orthographicCamera> コンポーネントを子として配置し、より詳細に制御することも可能です。
  • gl: Three.jsのWebGLRendererインスタンスの設定(アンチエイリアス、ピクセル比など)。
  • shadows: シャドウマップを有効にするか (true/false)。
  • linear: カラー空間を線形にするか (true/false)。通常はsRGB (false) を使いますが、テクスチャや環境マップに合わせて設定します。
  • flat: マテリアルをフラットシェーディングするか (true/false)。
  • dpr: デバイスピクセル比を設定します。[min, max] の配列や単一の数値で指定できます。デフォルトは [1, 2] です。
  • frameloop: レンダリングループの実行方法を設定します ("always", "demand", "never")。パフォーマンス最適化において重要です。デフォルトは "always" です。
  • onCreated: Canvasが作成された後(renderer, scene, cameraなどが利用可能になった後)に呼び出されるコールバック関数です。ここでThree.jsオブジェクトへの参照を取得したり、追加の設定を行ったりできます。

Three.jsオブジェクトのReactコンポーネント化

R3Fの最大の特長は、Three.jsのクラス(例: THREE.Mesh, THREE.BufferGeometry, THREE.Material)がそのままJSX要素として利用できる点です。クラス名の最初の文字を小文字にしてタグのように記述します。

  • <mesh> -> THREE.Mesh
  • <boxGeometry> -> THREE.BoxGeometry
  • <meshStandardMaterial> -> THREE.MeshStandardMaterial
  • <perspectiveCamera> -> THREE.PerspectiveCamera
  • <ambientLight> -> THREE.AmbientLight
  • <scene> -> THREE.Scene

これらのコンポーネントには、対応するThree.jsオブジェクトのプロパティをPropsとして渡せます。例えば、THREE.Meshのインスタンスはposition, rotation, scaleといったプロパティを持ちますが、R3Fではこれを<mesh position={[x, y, z]} rotation={[rx, ry, rz]} scale={[sx, sy, sz]}>のようにPropsとして設定します。

コンストラクタ引数は、args プロパティとして配列で渡します。例えば、new THREE.BoxGeometry(width, height, depth)<boxGeometry args={[width, height, depth]} /> となります。

jsx
<mesh position={[2, 0, 0]}> {/* THREE.Meshを生成し、positionを設定 */}
{/* THREE.SphereGeometryを生成し、Meshの子 (geometry) として設定 */}
<sphereGeometry args={[1, 32, 16]} />
{/* THREE.MeshPhongMaterialを生成し、Meshの子 (material) として設定 */}
<meshPhongMaterial color="blue" />
</mesh>

子要素として配置されたコンポーネントは、親のThree.jsオブジェクトの特定のプロパティに自動的にアタッチされます。例えば、<mesh> の子として <boxGeometry><meshStandardMaterial> がある場合、R3Fは内部的に mesh.geometry = boxGeometryInstance および mesh.material = meshStandardMaterialInstance のように設定します。

状態管理とアニメーション:useFrame フック

ReactでDOM要素を操作する際に useEffect を使うことがあるように、R3Fで3Dオブジェクトのアニメーションやインタラクションのための更新ループ処理を行うには、useFrame フックを使用します。

useFrame フックは、Three.jsのレンダリングループ (requestAnimationFrame) の各フレームで実行されるコールバック関数を登録します。このコールバック関数は、レンダラーの状態 (state オブジェクト – カメラ、シーン、レンダラーなどを含む) と、レンダリング開始からの経過時間 (delta) を引数として受け取ります。

“`jsx
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’
import { useRef } from ‘react’

function SpinningCube() {
const meshRef = useRef() // 3Dオブジェクトへの参照を取得

// 各フレームで実行されるコールバック
useFrame((state, delta) => {
// refを通してThree.jsオブジェクトのプロパティを直接操作
if (meshRef.current) {
meshRef.current.rotation.x += delta // 前回フレームからの経過時間 delta を使うと滑らかなアニメーションになる
meshRef.current.rotation.y += delta * 0.5
}
})

return (
{/ refをmeshにアタッチ /}



)
}
“`

useFrame のコールバック内では、useRef を使ってThree.jsオブジェクトへの参照を取得し、そのプロパティ(位置、回転、スケールなど)を直接変更するのが一般的です。これにより、Reactの状態更新サイクルを通さずに、毎フレーム高速にオブジェクトを更新できます。

また、useFrame のコールバック内でReactの状態 (useState) を更新することも可能ですが、これはパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。例えば、オブジェクトの回転角度を状態として持ち、それを更新すると、その状態を使うコンポーネント全体が再レンダリングされる可能性があります。単純なアニメーションにはRefを使うのが推奨されます。

イベント処理:ポインターイベント

R3Fは、Three.jsのRaycasting機能を利用して、3Dオブジェクトに対するポインターイベント(クリック、ホバー、ドラッグなど)を抽象化し、Reactのイベントハンドラーのように扱えるようにします。

Three.jsオブジェクトに対応するコンポーネント(例: <mesh>, <group> など)に、通常のDOM要素と同じように onClick, onPointerOver, onPointerOut, onPointerMove などのPropsを設定できます。

“`jsx
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’
import { useRef, useState } from ‘react’

function ClickableBox() {
const meshRef = useRef()
const [hovered, setHovered] = useState(false)
const [clicked, setClicked] = useState(false)

useFrame(() => {
if (meshRef.current) {
meshRef.current.rotation.x += 0.01
meshRef.current.rotation.y += 0.005
}
})

return (
setClicked(!clicked)} // クリックで状態変更
onPointerOver={(event) => setHovered(true)} // ホバー開始
onPointerOut={(event) => setHovered(false)} // ホバー終了
>

{/ クリック状態で行色を変更 /}


)
}
“`

イベントハンドラーには、DOMイベントに似たイベントオブジェクトが渡されます。このオブジェクトには、イベントが発生したThree.jsオブジェクト、交差した点の情報(座標、面法線など)、シフトキーが押されているかなどの情報が含まれています。

ヘルパーライブラリ:drei の紹介

@react-three/drei は、R3Fを使う上で非常に便利なヘルパーコンポーネントやフックを集めたライブラリです。「drei」はドイツ語で「三」を意味し、Three.jsにちなんでいます。

drei には以下のような多くの便利な機能が含まれています。

  • カメラ制御: OrbitControls, MapControls, PointerLockControls など
  • ヘルパーオブジェクト: GizmoHelper, Box, Sphere (標準的なプリミティブにマテリアルなどを簡単に設定できる)
  • ローディング: Loader, Suspense 対応
  • テキスト: Text, Text3D
  • アニメーション: useAnimations, useTransition
  • モデルローディング: useGLTF, useFBX
  • 環境マップ/HDR: Environment, Sky
  • シェーダー: shaderMaterial, useShaderMaterial
  • パフォーマンス: AdaptiveDpr, AdaptiveEvents
  • UIオーバーレイ: Html (3D空間にDOM要素を重ねる)
  • その他多数

ほとんどのR3Fプロジェクトで drei は必須と言えるほど役立ちます。例えば、OrbitControlsをシーンに追加するには、<Canvas> の子として <OrbitControls /> を配置するだけです。

“`jsx
import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’ // dreiからインポート

function SceneWithControls() {
return (





{/ カメラをマウスで操作できるようにする /}


)
}
“`

Next.jsとR3Fの統合

次に、R3FをNext.jsプロジェクトに組み込む具体的な方法を見ていきましょう。

Next.jsプロジェクトのセットアップ

まず、Next.jsプロジェクトを作成します。

bash
npx create-next-app my-r3f-app --typescript --eslint --app # または --pages
cd my-r3f-app

--app フラグを使うとApp Routerが、使わない場合はPages Routerがセットアップされます。どちらでもR3Fは利用可能ですが、ここではApp Routerを前提に進めます。

R3Fと関連ライブラリのインストール

必要なパッケージをインストールします。

bash
npm install three @react-three/fiber @react-three/drei # npmの場合
yarn add three @react-three/fiber @react-three/drei # yarnの場合

  • three: Three.js本体
  • @react-three/fiber: React Three Fiber本体
  • @react-three/drei: R3F用のヘルパーライブラリ

基本的なR3FコンポーネントをNext.jsページに組み込む方法

App Routerの場合、ページのコンポーネントはデフォルトでサーバーコンポーネントです。しかし、R3FはブラウザのWebGLコンテキストに依存するため、クライアントサイドでのみ実行する必要があります。

これを実現するために、コンポーネントファイルの先頭に 'use client' ディレクティブを追加します。

例: app/page.tsx

“`tsx
‘use client’; // このコンポーネントはクライアントサイドで実行されることを宣言

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
import { useRef } from ‘react’;
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’;

function Box(props: any) {
const meshRef = useRef(null!);
useFrame(() => {
if (meshRef.current) {
meshRef.current.rotation.x += 0.01;
meshRef.current.rotation.y += 0.01;
}
});

return (




);
}

export default function HomePage() {
return (





{/ カメラ操作を追加 /}

);
}
“`

このコードは、App Routerのルートページ (/) でクライアントサイドコンポーネントとして実行され、基本的なR3Fシーンを表示します。

動的なインポート (next/dynamic) による最適化

R3FやThree.js自体は比較的大きなライブラリです。これらをアプリケーションの初期ロード時に常に読み込むのではなく、3Dコンテンツを表示する必要があるページやコンポーネントでのみ読み込むように最適化することが重要です。

Next.jsの next/dynamic を使用すると、コンポーネントをダイナミックインポート(遅延ロード)できます。特に3D関連のコンポーネントは、サーバーサイドレンダリング中にブラウザAPI(window, document, WebGLRenderingContext など)にアクセスしようとしてエラーになるのを防ぐためにも、ssr: false オプション付きでダイナミックインポートするのが一般的です。

例: components/ThreeScene.tsx というR3Fを使ったコンポーネントがある場合

“`tsx
// components/ThreeScene.tsx (クライアントコンポーネントとしてマーク)
‘use client’;

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
// 他の3D関連コンポーネントのインポート…

export default function ThreeScene() {
return (

{/ 3Dシーンの内容 /}


{//}

);
}
“`

この ThreeScene コンポーネントを別のページ (app/about/page.tsx など) で使用する場合、以下のようにダイナミックインポートします。

“`tsx
// app/about/page.tsx (サーバーコンポーネント)
import dynamic from ‘next/dynamic’;

// ThreeSceneコンポーネントをダイナミックインポートし、SSRを無効にする
const DynamicThreeScene = dynamic(() => import(‘@/components/ThreeScene’), {
ssr: false,
loading: () =>

Loading 3D scene…

, // ローディング中の表示
});

export default function AboutPage() {
return (

About Us

{/ 3Dシーンを表示するコンテナ /}

More content here…

);
}
“`

これにより、/about ページにアクセスした際に初めて ThreeScene コンポーネントとそれに依存するR3F/Three.jsのコードがブラウザにダウンロード・実行されます。これは初期ロード時間とバンドルサイズの削減に大きく貢献します。

Pages Routerの場合も考え方は同じですが、pages/index.tsx のようなページファイル自体がクライアントサイドで実行されることが多いため、ページ全体をクライアントコンポーネントにするか、あるいは next/dynamic を利用して3D部分のみを遅延ロードするかを選択できます。大規模なアプリケーションや、3Dコンテンツが特定のページでのみ使用される場合は、next/dynamic を活用するのが推奨されます。

ルーティングと3Dシーンの状態管理

Next.jsのルーティングを使用してページ間を移動する際、3Dシーンを含むページから別のページへ移動すると、R3Fの<Canvas>とそれに含まれる3Dオブジェクトは破棄されます。元のページに戻ると、シーンは再構築されます。

シーンの状態(例: オブジェクトの現在の回転角度、ユーザーが選択したオブジェクトなど)をページ遷移後も保持したい場合は、ReactのContext APIやZustand, Jotaiなどの状態管理ライブラリを使用できます。これらのライブラリはアプリケーション全体の状態を管理できるため、ページコンポーネントの外に3Dシーンの状態を保持し、必要に応じて各3Dコンポーネントから参照・更新することが可能です。

ただし、パフォーマンスの観点から、頻繁に更新されるアニメーションの状態(例: オブジェクトの回転角度)をグローバルな状態として持つのは避けるべきです。これは useRefuseFrame を組み合わせてローカルで管理するのが適しています。グローバルな状態管理は、ユーザーの選択や設定、ロード済みの3Dモデルデータなど、比較的更新頻度の低いデータに利用するのが効果的です。

実践:簡単な3Dシーンの作成

実際にNext.jsプロジェクト内で簡単な3Dシーンを作成する手順を追ってみましょう。

目標:
1. Next.jsプロジェクトにR3Fをセットアップする。
2. 基本的な<Canvas>を配置する。
3. 立方体を表示し、アニメーションさせる。
4. ライトを追加する。
5. カメラ操作 (OrbitControls) を追加する。
6. 立方体をクリックしたら色が変わるようにする。

前提: Next.jsプロジェクトが作成済みで、three, @react-three/fiber, @react-three/drei がインストールされていること。App Router (app ディレクトリ) を使用します。

手順:

  1. 3Dシーン用コンポーネントの作成:
    components/Scene.tsx というファイルを作成します。

    “`tsx
    // components/Scene.tsx
    ‘use client’; // クライアントコンポーネメントとしてマーク

    import { Canvas, useFrame } from ‘@react-three/fiber’;
    import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
    import { useRef, useState } from ‘react’;
    import * as THREE from ‘three’; // Three.js 型定義や定数が必要な場合

    // アニメーションしてインタラクション可能なボックスコンポーネント
    function AnimatedBox(props: JSX.IntrinsicElements[‘mesh’]) {
    const meshRef = useRef(null!);
    const [hovered, setHovered] = useState(false);
    const [clicked, setClicked] = useState(false);

    // 各フレームで回転アニメーションを実行
    useFrame((state, delta) => {
    if (meshRef.current) {
    meshRef.current.rotation.x += delta;
    meshRef.current.rotation.y += delta * 0.5;
    }
    });

    return (
    {
    setClicked(!clicked);
    // コンソールにクリックされたオブジェクト情報を表示
    console.log(‘Box clicked!’, event.object);
    }}
    onPointerOver={(event) => {
    setHovered(true);
    document.body.style.cursor = ‘pointer’; // カーソルをポインターに
    }}
    onPointerOut={(event) => {
    setHovered(false);
    document.body.style.cursor = ‘auto’; // カーソルを元に戻す
    }}
    >
    {/ ジオメトリとマテリアル /}



    );
    }

    // メインの3Dシーンコンポーネント
    export default function ThreeScene() {
    return (
    // Canvasコンテナ。スタイルでサイズを指定する必要がある

    {/ 環境光 /}

    {/ スポットライト (シャドウを落とすライトの例) /}

    {/ 地面 (シャドウを受けるオブジェクト) /}

      {/* アニメーションするボックスを配置 */}
      <AnimatedBox position={[0, 0, 0]} />
    
      {/* カメラ操作コンポーネント */}
      <OrbitControls enableZoom={false} enablePan={false} /> {/* ズームとパンを無効に */}
    </Canvas>
    

    );
    }
    “`

    コード解説:
    * 'use client';: これを忘れないでください。
    * AnimatedBox コンポーネント:
    * useRef: Three.jsのMeshインスタンスへの参照を保持します。
    * useState: ホバー状態とクリック状態を管理します。
    * useFrame: 各フレームでmeshRef.current(つまりMeshインスタンス)の回転プロパティを更新し、アニメーションさせます。
    * onPointerOver, onPointerOut, onClick: R3Fのイベントハンドラーを使って、ホバー時のスケール変更やカーソル変更、クリック時の色変更と状態更新を行います。
    * ThreeScene コンポーネント:
    * <Canvas>: 3Dシーンのコンテナです。shadows Propでシャドウを有効にしています。camera Propで初期位置を設定しています。
    * <ambientLight>, <spotLight>: シーンに光を追加します。スポットライトはcastShadowtrueにして、シャドウを落とすように設定しています。Three.jsのバージョンによって光の強さ(intensity)や減衰(decay)の扱いに注意が必要です(コード中のコメント参照)。
    * 地面用の<mesh>: シャドウを受けるためにreceiveShadowtrueにしています。
    * <AnimatedBox />: 作成したカスタムコンポーネントをシーンに配置します。position Propで位置を指定しています。
    * <OrbitControls />: dreiからインポートしたカメラ操作コンポーネントです。これにより、マウスやタッチ操作でカメラを回転させたり移動させたりできます。ここではズームとパンを無効にしています。

  2. ページへの組み込み:
    app/page.tsx を編集し、作成した ThreeScene コンポーネントを使用します。ダイナミックインポートを使って遅延ロードとSSR無効化を行います。

    “`tsx
    // app/page.tsx
    import dynamic from ‘next/dynamic’;

    // ThreeSceneコンポーネントをダイナミックインポートし、SSRを無効化
    const DynamicThreeScene = dynamic(() => import(‘@/components/Scene’), {
    ssr: false,
    loading: () =>

    Loading 3D scene…

    , // ローディング中の表示
    });

    export default function HomePage() {
    return (

    {/ ダイナミックインポートした3Dシーンコンポーネントを表示 /}

    );
    }
    “`

    コード解説:
    * import dynamic from 'next/dynamic';: Next.jsのダイナミックインポート機能を使います。
    * dynamic(() => import('@/components/Scene'), { ssr: false, ... }): ./components/Scene.tsx ファイルを動的にインポートし、SSRを無効にしています。これにより、このページにアクセスした際に初めて3D関連のコードがクライアントサイドでロードされ、実行されます。ローディング中は <p>Loading 3D scene...</p> が表示されます。
    * <div style={{ width: '100vw', height: '100vh' }}>: <Canvas> は親要素のサイズに合わせてレンダリングされるため、親となるDOM要素に明示的にサイズを指定する必要があります。ここではビューポート全体を使うように設定しています。

  3. プロジェクトの実行:

    bash
    npm run dev # または yarn dev

    ブラウザで http://localhost:3000 にアクセスすると、中央に回転する立方体が表示され、マウスでグリグリと操作できるようになっているはずです。立方体をクリックすると色が変わり、ホバーすると少し大きくなり、カーソルが変わります。

高度なトピック

R3FとNext.jsをさらに活用するための高度なトピックを見ていきましょう。

モデルのローディング (GLTF, OBJなど)

Web上で3Dモデルを扱う際の標準的なフォーマットはGLTF (GL Transmission Format) です。R3Fでは @react-three/dreiuseGLTF フックを使うことで、GLTFモデルを簡単にロードし、シーンに配置できます。

“`jsx
// components/Model.tsx
‘use client’;

import { useRef } from ‘react’;
import { useGLTF, useAnimations } from ‘@react-three/drei’;
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’;

export function Model(props: { url: string }) {
// useGLTFフックでモデルデータを非同期にロード
const { scene, animations } = useGLTF(props.url);
const groupRef = useRef();

// アニメーションクリップがある場合はuseAnimationsで準備
const { actions } = useAnimations(animations, groupRef);

// ここで任意のアニメーションを再生したり停止したりできる
// 例: ロード時に最初のアニメーションを再生
// useEffect(() => {
// actions[Object.keys(actions)[0]]?.play();
// }, [actions]);

// ロードしたシーンオブジェクトをそのまま表示
// sceneはGroupのようなオブジェクトで、Meshなどが階層構造で含まれている
return ;
}

// ページでの使用例
// app/model-page/page.tsx
‘use client’;

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { OrbitControls, Environment } from ‘@react-three/drei’;
import { Model } from ‘@/components/Model’; // 作成したModelコンポーネント
import { Suspense } from ‘react’; // 非同期ロードのためにSuspenseを使う

export default function ModelPage() {
return (



    {/* モデルローディングは非同期なのでSuspenseでラップする */}
    <Suspense fallback={<mesh><boxGeometry args={[1,1,1]}/><meshBasicMaterial color="blue"/></mesh>}> {/* ローディング中は青いボックスを表示 */}
      {/* 公開されているサンプルGLTFモデルのURLを指定 */}
      <Model url="https://threejs.org/examples/models/gltf/Duck/glTF/Duck.gltf" />
    </Suspense>

    {/* 環境マップでライティングをリッチに */}
    <Environment preset="city" />

    <OrbitControls />
  </Canvas>
</div>

);
}
“`

useGLTF は非同期でモデルデータをロードするため、Reactの Suspense コンポーネントと組み合わせて使うのが一般的です。Suspense は、子コンポーネントが非同期処理(この場合は useGLTF によるデータフェッチ)を完了するまで、fallback Propで指定した要素(ローディングインジケーターなど)を表示します。

useGLTF が返す scene オブジェクトは、Three.jsの Group などであり、その中にモデルのメッシュ、マテリアル、テクスチャなどが含まれています。R3Fでは <primitive object={scene} /> のようにして、既存のThree.jsオブジェクト階層をそのままシーンに組み込むことができます。

useAnimations は、GLTFモデルに含まれるアニメーションクリップを扱うためのフックです。返される actions オブジェクトを使って、特定のアニメーションを再生したり、ブレンドしたりといった制御が可能です。

物理エンジンとの連携

インタラクティブな3Dアプリケーションでは、オブジェクトの物理的な挙動(重力、衝突、力の適用など)をシミュレーションしたい場合があります。R3Fのエコシステムには、物理エンジンライブラリとの連携を容易にするためのパッケージが存在します。代表的なものとして @react-three/cannon があります。これは高性能な物理エンジンである Cannon-es をR3Fと連携させるためのフックやコンポーネントを提供します。

bash
npm install @react-three/cannon cannon-es # または yarn add

“`jsx
// components/PhysicsScene.tsx
‘use client’;

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { Physics, useBox, usePlane } from ‘@react-three/cannon’; // @react-three/cannonからインポート
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
import { useRef } from ‘react’;

// 物理エンジンを持つボックスコンポーネント
function PhysicsBox() {
// useBoxフック: 物理的なBoxボディを作成し、3Dメッシュと紐づける
// 第一要素: ref – Three.jsメッシュにアタッチ
// 第二要素: api – 物理ボディを制御するためのAPI (applyForce, setPositionなど)
const [ref, api] = useBox(() => ({ mass: 1, position: [0, 5, 0] })); // 質量1、初期位置[0, 5, 0]で設定

return (
// 物理ボディと紐づけられたメッシュ
api.applyImpulse([0, 5, 0], [0, 0, 0])} // クリックで上に力を加える
>



);
}

// 物理エンジンを持つ地面コンポーネント
function PhysicsPlane() {
// usePlaneフック: 物理的なPlaneボディを作成
const [ref] = usePlane(() => ({ rotation: [-Math.PI / 2, 0, 0], position: [0, -2, 0] })); // X軸周りに-90度回転、Y=-2に配置
return (
// 物理ボディと紐づけられたメッシュ (見た目だけ)


);
}

// 物理エンジンを有効にしたメインシーン
export default function PhysicsScene() {
return (



    {/* Physicsコンポーネメントでラップすると、子要素で物理エンジンが有効になる */}
    <Physics>
      <PhysicsBox />
      <PhysicsPlane />
    </Physics>

    <OrbitControls />
  </Canvas>
</div>

);
}
“`

<Physics> コンポーネントでラップされた中で、useBox, useSphere, usePlane などのフックを使うことで、対応するThree.jsオブジェクト(<mesh>など)と物理エンジン側のボディを紐づけることができます。useBox などが返す ref をメッシュに設定し、api を使って物理的な操作(力の印加、速度や位置の設定など)を行います。これにより、重力に従って落下したり、互いに衝突したりするオブジェクトを簡単に実現できます。

ポストエフェクト

ポストエフェクトは、シーンがレンダリングされた後に全体に適用される視覚効果です。ブルーム(光の滲み)、被写界深度、カラーグレーディング、スクリーンスペース環境遮蔽 (SSAO) などがあり、シーンの見た目を劇的に向上させることができます。

R3Fでは @react-three/postprocessing というライブラリを使ってポストエフェクトを簡単に適用できます。これは Three.js の PostProcessing ライブラリをR3Fに対応させたものです。

bash
npm install postprocessing @react-three/postprocessing # または yarn add

“`jsx
// components/PostProcessedScene.tsx
‘use client’;

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
import { EffectComposer, Bloom, Vignette } from ‘@react-three/postprocessing’; // postprocessingからインポート
import { useRef } from ‘react’;
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’;

function SpinningBox() {
const meshRef = useRef();
useFrame((state, delta) => {
if (meshRef.current) {
meshRef.current.rotation.x += delta;
meshRef.current.rotation.y += delta * 0.5;
}
});
return (


{/ ブルーム効果を出すためにemissiveを設定 /}

);
}

export default function PostProcessedScene() {
return (


    <SpinningBox />

    {/* EffectComposerでポストエフェクトを定義 */}
    <EffectComposer>
      {/* ブルーム効果を追加 */}
      <Bloom luminanceThreshold={0} luminanceSmoothing={0.9} height={300} />
      {/* ビネット効果を追加 */}
      <Vignette eskil={false} offset={0.1} darkness={0.5} />
    </EffectComposer>

    <OrbitControls />
  </Canvas>
</div>

);
}
“`

<EffectComposer> コンポーネメントでポストエフェクトを適用したいシーンをラップします。その子要素として <Bloom>, <Vignette>, <DepthOfField>, <SSAO> など、適用したいポストエフェクトコンポーネントを配置します。各エフェクトコンポーネントには、効果を調整するための様々なPropsが用意されています。

最適化とパフォーマンス

リッチな3Dシーンは、特にモバイルデバイスやパフォーマンスの低いハードウェアでは、フレームレートが低下しやすい傾向があります。R3FとNext.jsで3Dアプリケーションを開発する際には、パフォーマンス最適化が非常に重要です。

以下にいくつかの主要な最適化手法を挙げます。

  1. Geometry/Materialの共有: 複数のメッシュが同じジオメトリやマテリアルを使用する場合、それぞれのメッシュに対して新しいインスタンスを作成するのではなく、同じインスタンスを共有することでメモリ使用量とGPUへの負荷を減らせます。R3Fでは、 <mesh> の子として <boxGeometry><meshStandardMaterial> を記述すると、デフォルトでは <mesh> ごとに新しいインスタンスが作成されます。これを避けるには、ジオメトリやマテリアルを別途作成し、Propとして渡します。

    “`jsx
    // 共有するジオメトリとマテリアルをコンポーネントの外またはuseMemoで作成
    const boxGeom = new THREE.BoxGeometry(1, 1, 1);
    const sharedMaterial = new THREE.MeshStandardMaterial({ color: ‘blue’ });

    function SceneWithSharedResources() {
    return (

    {/ positionは異なるが、同じジオメトリとマテリアルを共有 /}


    {/ …他のメッシュも同様に共有… /}

    );
    }

    // あるいはuseMemoを使ってコンポーネント内でキャッシュ
    function SceneWithMemoizedResources() {
    const geometry = useMemo(() => new THREE.SphereGeometry(1, 32, 16), []);
    const material = useMemo(() => new THREE.MeshPhongMaterial({ color: ‘green’ }), []);
    return (



    );
    }
    “`

  2. Instancing: 同じジオメトリとマテリアルを持つ多数のオブジェクト(例: 大量の草、雨滴、群衆)をレンダリングする場合、それぞれを個別の<mesh>として扱うのは非常に非効率です。Instancingは、これらのオブジェクトをGPU上でまとめてレンダリングする技術です。R3Fでは <instancedMesh> コンポーネメントと useInstancedMesh フック(または dreiInstances コンポーネメント)を使用します。

    “`jsx
    import { Instances, Instance } from ‘@react-three/drei’;
    import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’;
    import { useMemo, useRef } from ‘react’;
    import * as THREE from ‘three’;

    const count = 1000; // 1000個のインスタンス

    function Boxes() {
    // インスタンス全体のコンテナ
    return (
    {/ インスタンス数を指定 /}


    {/ 各インスタンスをInstanceコンポーネントで定義 /}
    {Array.from({ length: count }).map((_, i) => (

    ))}

    );
    }

    function Box({ index }) {
    const ref = useRef();
    // インスタンスごとのアニメーションや位置を設定(useFrame内で行う)
    useFrame((state) => {
    if (ref.current) {
    const time = state.clock.elapsedTime;
    // インスタンスごとに異なるアニメーションを計算し、行列を設定
    const x = Math.sin(time * 1 + index / 10) * 5;
    const y = Math.cos(time * 0.5 + index / 10) * 5;
    const z = Math.sin(time * 0.25 + index / 10) * 5;
    // Three.jsのMatrix4を使って位置、回転、スケールを計算し、インスタンスに適用
    // 例: ref.current.matrix.setPosition(x, y, z);
    // ref.current.matrix.makeRotationX(time);
    // ref.current.matrix.scale.set(1, 1, 1);
    // … この行列をInstancesコンポーネントに渡す必要がある …
    // 実際には、useFrame内でインスタンスの行列を直接更新するAPIを使用するか、
    // drieのInstancesが提供する内部的なRefを使って操作します。
    // より簡単な方法としては、useFrame内でTransformControlsなどを使うか、
    // インスタンスのデータを配列で持ち、useMemoとuseFrameで更新する方法があります。
    // DrieのInstancesは、内部でThree.jsのInstancedMeshを管理し、
    // そのインスタンスの行列を効率的に更新するための仕組みを提供しています。
    // 通常は、Instanceコンポーネントに位置や回転などのpropsを渡すことで解決します。
    // 例:
    // ただし、useFrameで毎フレーム計算する場合は、Instanceにrefを渡して直接操作します。
    // Dreiのドキュメントや例を参照すると、より具体的な実装方法がわかります。
    // 簡単な例として、ここではダミーの回転だけ示します(実際には行列を操作)。
    // ダミー:インスタンスの回転プロパティは存在しないので、行列を操作する必要があります。
    // この例のままでは動きません。DreiのInstanceのRef操作方法は少し複雑です。
    // 通常は、useRef(null!) と useFrame で、
    // meshRef.current.setMatrixAt(index, matrix)meshRef.current.instanceMatrix.needsUpdate = true
    // のように直接InstancedMeshのAPIを叩くことになります。
    // よりシンプルなDreiの使い方は、positionsやrotationsの配列をInstancesに渡し、
    // useFrame内でその配列を更新することです。
    }
    });

    // Instanceコンポーネントはジオメトリとマテリアルを持たず、位置や回転などの変換情報のみを持つ
    return (
    // DreiのInstanceコンポーネントは、親のInstancesからジオメトリとマテリアルを継承
    // positionやrotationなどのPropsを渡すことで、内部的に行列を設定する

    // 上記はInstanceの初期位置設定の例。毎フレーム更新する場合は別途useFrame内でインスタンス行列を操作する必要がある。
    );
    }
    ``
    ※ Instancingの実装はやや複雑で、
    dreiInstances/Instanceコンポーネントの内部実装や Three.js のInstancedMeshAPIを理解する必要があります。上記のコードスニペットは概念を示すものであり、そのまま実行しても期待通りに動作しない可能性があります。drei` の公式ドキュメントにあるInstancingの例を参照するのが最も確実です。

  3. useMemo, useCallback の活用: R3FコンポーネントもReactコンポーネントなので、不要な再計算や関数の再生成を防ぐために useMemouseCallback が有効です。特に、複雑な計算が必要なジオメトリの生成や、イベントハンドラーなどが頻繁に再生成されるのを防ぐのに役立ちます。

  4. <Canvas>frameloop="demand": デフォルトでは <Canvas>frameloop="always" となっており、毎秒60フレームでレンダリングループを実行します。これはオブジェクトが常にアニメーションしている場合には適していますが、シーンが静的な場合や、ユーザーのインタラクションがあったときだけ更新すれば良い場合には無駄な処理になります。frameloop="demand" に設定すると、カメラが変更されたり、オブジェクトがインタラクションによって変更されたりした場合にのみレンダリングがトリガーされます。パフォーマンスを向上させるために検討すべき設定です。

    jsx
    <Canvas frameloop="demand">
    {/* ... static scene ... */}
    </Canvas>

    frameloop="demand" の場合、手動でレンダリングをトリガーするには useThree フックで取得できる invalidate 関数を呼び出します。

    “`jsx
    import { useThree } from ‘@react-three/fiber’;
    import { useEffect } from ‘react’;

    function MyComponent() {
    const { invalidate } = useThree();

    // 何か状態が変わったときにレンダリングをトリガーする例
    useEffect(() => {
    invalidate();
    }, [someState]); // someStateが変わったら再レンダリング

    // …
    }
    “`

  5. ローディングの最適化: next/dynamic を使用して3D関連コードのロードを遅延させることに加えて、3Dモデルやテクスチャといったアセットのローディングも非同期で行い、ローディング中はユーザーにフィードバックを提供することが重要です。@react-three/dreiLoader コンポーネントや、標準の Suspense と組み合わせて使うのが一般的です。

  6. パフォーマンス監視: 開発中にパフォーマンスのボトルネックを特定するには、パフォーマンス監視ツールが役立ちます。@react-three/drei には Perf コンポーネント(react-three/perf をラップしたもの)があり、フレームレートやThree.jsの描画統計(ドローコール数、ジオメトリ数など)をオーバーレイ表示できます。

    bash
    npm install @react-three/perf # または yarn add

    “`jsx
    import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
    import { Perf } from ‘r3f-perf’; // @react-three/perf または drie からインポート

    function MyScene() {
    return (

    {/ … your scene … /}
    {/ パフォーマンス統計を画面左上に表示 /}

    );
    }
    “`

これらの最適化手法を適切に組み合わせることで、複雑な3Dシーンでも滑らかな動作を実現できます。

状態管理ライブラリ(Zustand, Jotaiなど)とR3Fの連携

React Three Fiberのシーンは、複数のインタラクティブなコンポーネントで構成されることがよくあります。これらのコンポーネント間で状態(例: 選択中のオブジェクト、カメラのターゲット、シーンの設定)を共有したり、アプリケーション全体のUI(DOM)と3Dシーンの状態を同期させたりする場合、ReactのContext APIやZustand、Jotaiといったモダンな状態管理ライブラリが非常に役立ちます。

これらのライブラリはReactのフックベースで使いやすく、パフォーマンスに優れているため、R3Fとの相性が良いとされています。

例: オブジェクトの選択状態をZustandで管理し、3Dオブジェクトの色とDOM要素のテキストを同期させる。

bash
npm install zustand # または yarn add zustand

“`tsx
// stores/useStore.ts
import create from ‘zustand’;

interface State {
selectedObjectId: string | null;
selectObject: (id: string | null) => void;
}

// Zustandストアを作成
export const useStore = create((set) => ({
selectedObjectId: null,
selectObject: (id) => set({ selectedObjectId: id }),
}));
“`

“`tsx
// components/SelectableBox.tsx
‘use client’;

import { useRef } from ‘react’;
import { useFrame } from ‘@react-three/fiber’;
import { useStore } from ‘@/stores/useStore’; // Zustandストアをインポート

function SelectableBox(props: JSX.IntrinsicElements[‘mesh’] & { objectId: string }) {
const meshRef = useRef(null!);
const { selectedObjectId, selectObject } = useStore(); // ストアから状態とアクションを取得
const isSelected = selectedObjectId === props.objectId; // このボックスが選択されているか判定

useFrame(() => {
// 選択されているかどうかでアニメーションを変えるなどの処理
if (meshRef.current) {
meshRef.current.rotation.y += 0.005;
}
});

return (
selectObject(isSelected ? null : props.objectId)} // クリックで選択/非選択を切り替え
>

{/ 選択状態で行色を変える /}


);
}

// components/SceneWithState.tsx
‘use client’;

import { Canvas } from ‘@react-three/fiber’;
import { OrbitControls } from ‘@react-three/drei’;
import { SelectableBox } from ‘./SelectableBox’;

export default function SceneWithState() {
return (





);
}
“`

“`tsx
// app/page.tsx (状態表示のためのDOM要素と3Dシーンを組み合わせる例)
‘use client’;

import dynamic from ‘next/dynamic’;
import { useStore } from ‘@/stores/useStore’; // Zustandストアをインポート (DOM側でも使用)

// SceneWithStateコンポーネントをダイナミックインポート
const DynamicSceneWithState = dynamic(() => import(‘@/components/SceneWithState’), {
ssr: false,
});

export default function HomePage() {
const { selectedObjectId } = useStore(); // ストアから選択中のオブジェクトIDを取得

return (

{/ 3Dシーン表示領域 /}

{/ 状態表示領域 (DOM) /}

Selected Object: {selectedObjectId || ‘None’}

);
}
“`

この例では、Zustandストアを使って selectedObjectId を管理しています。SelectableBox コンポーネントはストアから selectedObjectId を読み取り、自身の objectId と比較して見た目を変えます。クリック時にはストアの selectObject アクションを呼び出して状態を更新します。app/page.tsx では、同じストアから selectedObjectId を読み取り、DOM要素として表示します。このように、一つの状態管理レイヤーを通じて、複雑なアプリケーションにおける3D部分とDOM部分の状態を簡単に同期させることができます。

サーバーサイドレンダリング (SSR) とR3F

前述の通り、React Three FiberはブラウザのWebGLコンテキストに依存するため、基本的にクライアントサイドでのみ動作します。Next.jsのSSR機能は、サーバー上でReactコンポーネントをHTMLにプリレンダリングしてクライアントに送信することで、初期表示速度向上やSEOに貢献します。

しかし、R3Fを使ったコンポーネントはサーバー上ではレンダリングできません。もしサーバー上でWebGL APIや window, document オブジェクトにアクセスしようとするとエラーが発生します。

この問題を解決するために、next/dynamicssr: false オプションが非常に有効です。これにより、3Dコンテンツを含むコンポーネントはサーバーではレンダリングされず、クライアントサイドでのみハイドレーション後に実行されます。サーバーは3Dコンテンツ以外のHTML(ヘッダー、フッター、ローディングインジケーターなど)をレンダリングして送信します。

next/dynamicssr: false を使う際の注意点:

  • 3Dコンテンツが表示されるまで、指定した loading コンポーネントなどが表示されます。ユーザー体験を損なわないよう、適切なローディング表示を用意しましょう。
  • 3Dコンテンツ自体はSSRされないため、3Dシーンの内容がSEOに直接的に影響することはありません(クローラーがJavaScriptを実行して3Dコンテンツを解釈できる場合は別ですが、一般的には期待できません)。重要なテキストコンテンツなどはDOM側に配置する必要があります。
  • 3Dコンポーネント内で使用するデータ(例: モデルのパス、設定値など)は、サーバーコンポーネントからクライアントコンポーネントへPropsとして渡すことができます。

静的なコンテンツをSSGで生成する場合も同様に、3D部分はクライアントサイドで後から読み込まれて実行されます。

具体的なアプリケーション例の検討

R3FとNext.jsの組み合わせは、様々なタイプのインタラクティブなWebアプリケーションで力を発揮します。

  • 製品ビジュアライザー: Eコマースサイトで、商品の3Dモデルをインタラクティブに表示し、ユーザーが角度を変えたり、バリエーションを切り替えたり、部品を分解して見たりできるようにします。モデルローディング、ライト、カメラ操作、UI連携(Zustandなどでの選択状態管理)が主要な技術要素になります。
  • インタラクティブなポートフォリオ/ランディングページ: 自身の作品やサービスを魅力的かつユニークな3D空間で表現します。物理エンジンを使った遊び心のあるインタラクションや、ポストエフェクトによるスタイリッシュな演出が効果的です。
  • ゲーム要素のあるウェブサイト: シンプルなミニゲームや、ウェブサイトのナビゲーション自体を3D空間にするなど。物理エンジン、衝突判定、ユーザー入力(キーボード、ゲームパッド)、アニメーション制御などが関わってきます。
  • データ可視化: 複雑なデータを3Dグラフやモデルとして表示し、ユーザーが探索できるようにします。大量のデータを効率的に表示するためには、Instancingやパフォーマンス最適化技術が重要になります。
  • バーチャルツアー/展示: 3D空間内を自由に移動したり、特定のポイントで情報が表示されたりするアプリケーション。モデルローディング、カメラ制御(特にファーストパーソン視点)、Raycastingによるインタラクションが中心になります。

Next.jsのルーティング、API Routes、データフェッチ機能を活用することで、これらのアプリケーションにユーザー認証、データベース連携、外部APIとの連携といったバックエンド機能を容易に追加できます。

開発のヒントとトラブルシューティング

  • Three.jsオブジェクトへのアクセス: R3Fでは通常JSXで記述しますが、必要に応じて useRef を使ってThree.jsのMeshやCameraなどのインスタンスにアクセスし、直接Three.jsのAPIを叩くことも可能です。複雑なカスタム挙動や最適化で役立ちます。また、useThree フックを使うと、現在のシーン、カメラ、レンダラーなどのThree.jsオブジェクトにアクセスできます。
  • デバッグツール:
    • @react-three/fiber/debug: R3Fの内部的なFiberツリーを可視化するツールです。コンポーネント構造がThree.jsオブジェクトグラフにどのようにマップされているかを確認するのに役立ちます。<Canvas>/@react-three/fiber/debug<Canvas> の子として配置することで有効になります。
    • Three.js DevTools: Three.jsシーンをインスペクトするためのブラウザ拡張機能です。シーングラフ、オブジェクトのプロパティ、マテリアル、テクスチャなどを実行時に確認できます。R3Fと組み合わせて使用できます。
    • ブラウザのパフォーマンスモニタ: Chrome開発者ツールのPerformanceタブなどで、フレームレートやJavaScript実行時間、GPUアクティビティなどを監視できます。
    • @react-three/perf: 前述の通り、リアルタイムのパフォーマンス統計をオーバーレイ表示できます。
  • 座標系: Three.jsでは通常、X軸が右、Y軸が上、Z軸が手前(カメラ方向)を正とする右手座標系が使われます。Next.jsやReactではDOM要素の配置で慣れている座標系と異なる場合があるので注意が必要です。
  • シェーダー: 標準的なマテリアルでは表現できないような見た目や効果が必要な場合、カスタムシェーダーを作成することになります。R3Fでは @react-three/dreishaderMaterialuseShaderMaterial を使うと、GLSLシェーダーをReactコンポーネントとして扱いやすくなります。
  • 型定義: TypeScriptを使用している場合、three@react-three/fiber には型定義が含まれているため、型安全な開発が可能です。useRef などで要素を参照する際には適切な型(例: THREE.Mesh, THREE.Camera など)を指定することで、補完やエラーチェックの恩恵を受けられます。

まとめ

React Three Fiberは、Three.jsによるパワフルな3Dグラフィックスと、Reactの宣言的でコンポーネントベースの開発パラダイムを融合させた革新的なライブラリです。Three.jsの学習コストを大幅に下げつつ、React開発者にとって馴染みのある手法で複雑な3Dシーンを構築することを可能にします。

Next.jsと組み合わせることで、ファイルベースルーティング、SSR/SSG、API Routes、そして特に next/dynamic を利用したコード分割と最適化といったNext.jsの強力なエコシステムの恩恵を受けながら、パフォーマンスが高く、保守性の高いインタラクティブな3Dウェブアプリケーションを効率的に開発できます。

基本的なオブジェクトの配置から、アニメーション、インタラクション、モデルローディング、物理エンジン、ポストエフェクト、そしてパフォーマンス最適化まで、R3FとNext.jsのエコシステムはモダンなウェブ上でリッチな3D体験を実現するための包括的なツールを提供します。

Webにおける3D表現の可能性は日々広がっており、React Three Fiberはその最前線に立つための強力な武器となるでしょう。ぜひこの技術を習得し、あなたのウェブサイトやアプリケーションを次のレベルへと引き上げてください。

学習リソース

  • React Three Fiber 公式ドキュメント: https://docs.pmnd.rs/react-three-fiber/getting-started/introduction (最も重要なリソース)
  • Drei ドキュメント: https://github.com/pmndrs/drei (便利なヘルパーコンポーネント集)
  • Three.js 公式ドキュメント: https://threejs.org/docs/ (R3FはThree.jsのラッパーなので、Three.jsの概念理解も重要)
  • Poimandres (pmndrs) のGitHubリポジトリ: R3FやDrei、その他の関連ライブラリがここで開発されています。IssueやExamplesが参考になります。
  • 各種チュートリアルやサンプルコード: GitHubやCodeSandboxなどでR3F/Next.jsを使ったサンプルコードを探すのが良いでしょう。

これで、React Three FiberをNext.js/React環境で使用してインタラクティブな3Dを作成する方法に関する、約5000語の詳細な説明を含む記事が完成しました。この情報が、読者の皆様がWebで3D開発を始めるための一助となれば幸いです。

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