【最新版】Amazon OpenSearch Service(旧ES)の特徴と使い方

はい、承知いたしました。Amazon OpenSearch Service(旧Amazon Elasticsearch Service)の特徴と使い方について、約5000語の詳細な記事を作成します。


【最新版】Amazon OpenSearch Service(旧Amazon Elasticsearch Service)の特徴と使い方を徹底解説

はじめに:Amazon OpenSearch Serviceとは?

Amazon OpenSearch Service(以下、OpenSearch Service)は、Amazon Web Services (AWS) が提供するフルマネージドサービスです。もともとは「Amazon Elasticsearch Service」という名称で提供されていましたが、2021年にオープンソースプロジェクトがOpenSearchとしてフォークされたことに伴い、サービス名も変更されました。

OpenSearch Serviceは、OpenSearchまたはElasticsearchのクラスターをAWSクラウド上で簡単にデプロイ、運用、スケーリングできるサービスです。リアルタイムのアプリケーション監視、ログ分析、ウェブサイト検索、eコマース検索などのワークロードをサポートするために設計されています。

このサービスを利用することで、ユーザーは基盤となるハードウェアのプロビジョニング、設定、パッチ適用、バックアップなどの煩雑な作業から解放され、データに基づいた洞察の取得やアプリケーションの機能強化に集中できます。

本記事では、OpenSearch Serviceの最新の特徴、主要な機能、多様なユースケース、具体的な使い方、そして運用上のベストプラクティスまで、網羅的に解説します。かつてのElasticsearch Serviceをご存知の方も、初めてOpenSearch Serviceに触れる方も、その強力な能力を理解し、活用するための手助けとなるでしょう。

1. Amazon OpenSearch Serviceの成り立ちと歴史

OpenSearch Serviceの歴史は、オープンソースの分散型検索・分析エンジンであるElasticsearchに深く関連しています。

1.1. Amazon Elasticsearch Serviceの誕生

2015年、AWSは「Amazon Elasticsearch Service」として、Elasticsearchクラスターのマネージドサービス提供を開始しました。当時、Elasticsearchはログ分析、フルテキスト検索、オペレーションズインテリジェンスなどの分野で急速に普及しており、その導入と運用には専門的な知識と手間が必要でした。AWSはこの運用負荷を軽減するため、Elasticsearchのデプロイ、スケーリング、パッチ適用、モニタリングなどを自動化・簡素化するサービスを提供しました。

これにより、多くの企業がElasticsearchをより手軽に活用できるようになり、AWS上でのログ分析基盤や検索基盤の構築が加速しました。

1.2. OpenSearchプロジェクトとサービス名の変更

Elasticsearchのライセンスに関する変更が発生したことを受け、AWSはコミュニティと協力し、Elasticsearchの直近のOSSバージョン(7.10.2)からフォークした新しいオープンソースプロジェクト「OpenSearch」を立ち上げました。OpenSearchはApache License, Version 2.0のもとで公開され、検索、分析、可視化の機能を継続して提供することを目指しています。OpenSearch Dashboardsは、Elasticsearchの可視化ツールであるKibanaのフォークとして開発されています。

このOpenSearchプロジェクトの立ち上げに伴い、AWSのマネージドサービス名も2021年に「Amazon Elasticsearch Service」から「Amazon OpenSearch Service」へと変更されました。サービス名変更後も、OpenSearch ServiceはOpenSearchバージョンとElasticsearchバージョン(特定のバージョンまで)の両方をサポートし、既存ユーザーと新規ユーザーのニーズに対応しています。

1.3. 現在のOpenSearch Service

現在のOpenSearch Serviceは、OpenSearchプロジェクトの最新機能を取り込みつつ、AWSのインフラストラクチャと統合された様々なマネージド機能(セキュリティ、ストレージ、スケーリング、モニタリングなど)を提供しています。ユーザーはOpenSearchまたはElasticsearchの互換性のあるバージョンを選択し、フルマネージド環境で高度な検索および分析ワークロードを実行できます。

2. OpenSearch Serviceのコアコンセプトと特徴

OpenSearch Serviceを理解するためには、その基盤となるOpenSearch/Elasticsearchのコンセプトと、AWSが提供するマネージドサービスとしての特徴を把握することが重要です。

2.1. OpenSearch / Elasticsearch の基本コンセプト

OpenSearch (および互換性のあるElasticsearch) は、Apache Luceneを基盤とした分散型の検索・分析エンジンです。

  • インデックス (Index): リレーショナルデータベースにおけるテーブルに似ていますが、スキーマレスまたは柔軟なスキーマを持つドキュメントのコレクションです。
  • ドキュメント (Document): 検索可能な情報の最小単位で、JSON形式で表現されます。リレーショナルデータベースにおける行に相当します。
  • タイプ (Type): Elasticsearchの古いバージョンで使用されていたドキュメントの論理的なカテゴリーです。新しいバージョンでは非推奨または廃止されています。OpenSearchでは基本的にタイプは使いません。
  • フィールド (Field): ドキュメント内の各データ項目です。
  • マッピング (Mapping): ドキュメント内のフィールドのデータ型やインデックス方法を定義するスキーマです。動的マッピングにより、明示的な定義なしにドキュメントを取り込むことも可能です。
  • シャード (Shard): インデックスを水平分割した単位です。各シャードは独立したLuceneインデックスであり、クラスター内の異なるノードに分散して配置できます。これにより、大規模なデータセットを処理し、並列処理によるパフォーマンス向上を実現します。
  • レプリカ (Replica): シャードのコピーです。レプリカを持つことで、ノード障害時の可用性を高め、検索パフォーマンスを向上させます(読み込みリクエストをレプリカに分散できるため)。

OpenSearch/Elasticsearchクラスターは、複数のノードで構成され、これらのノードが連携してデータを分散・処理します。

2.2. マネージドサービスとしての主要な特徴

OpenSearch Serviceは、これらの基本コンセプトの上に、AWSが提供する数多くの付加価値を提供します。

  • フルマネージドサービス:

    • デプロイと設定: 数クリックまたはAPIコールでクラスターを簡単に作成できます。インスタンスタイプ、ストレージ、バージョンなどを指定するだけで、AWSが基盤となるEC2インスタンス、EBSボリューム、ネットワークなどをプロビジョニングし、OpenSearch/Elasticsearchソフトウェアをインストール・設定します。
    • スケーリング: 必要に応じてインスタンス数、インスタンスタイプ、ストレージ容量を簡単に増減できます。ホットノード、UltraWarmノード、Cold Storageなど、異なるデータ層で独立したスケーリングが可能です。
    • パッチ適用とアップグレード: AWSがOpenSearch/Elasticsearchソフトウェアおよびオペレーティングシステムのパッチ適用を管理します。新しいバージョンへのアップグレードも、互換性のチェックと自動化されたプロセスを通じてサポートされます。
    • モニタリングとアラート: Amazon CloudWatchと統合されており、CPU使用率、メモリ使用率、ディスク使用率、検索レイテンシなどのメトリクスを自動的に収集・可視化できます。これらのメトリクスに基づいたアラート設定も容易です。
    • 自動バックアップ(スナップショット): 指定した頻度でクラスターのスナップショット(バックアップ)を自動的にS3に取得します。障害発生時には、このスナップショットから新しいクラスターをリストアできます。手動スナップショットの取得も可能です。
    • 障害回復: マルチAZ配置をサポートしており、異なるアベイラビリティゾーンにノードを分散配置することで、単一のAZ障害からの回復力を高めます。レプリカシャードは、ノード障害発生時に自動的にアクティブなシャードとして昇格されます。
  • 高い可用性と耐久性:

    • マルチAZ: 少なくとも2つのアベイラビリティゾーンにノードを分散配置することで、可用性を向上させます。3AZ配置も可能です。
    • レプリカシャード: データロスを防ぎ、読み込み可用性を高めるために、各プライマリシャードに対して1つ以上のレプリカシャードを作成することを推奨します。
    • 自動スナップショット: S3に保存されるため、クラスター全体が失われた場合でもデータを回復できます。
  • 統合されたセキュリティ:

    • VPC統合: クラスターをAmazon VPC内に配置し、プライベートIPアドレスを通じてのみアクセスできるように設定できます。これにより、インターネットからの不要なアクセスを排除し、セキュリティを強化します。
    • IAMによるアクセス制御: AWS Identity and Access Management (IAM) を使用して、OpenSearch ServiceドメインへのAPIアクセスや設定変更を制御できます。
    • きめ細かいアクセスコントロール (Fine-Grained Access Control – FGAC): OpenSearchのセキュリティプラグインを利用して、ユーザー/ロールベースの認証(Basic Auth, Cognito, SAMLなどとの連携)と、インデックス、ドキュメント、フィールドレベルでのアクセス制御を設定できます。OpenSearch Dashboardsのテナント機能と組み合わせることで、マルチテナント環境の構築も可能です。
    • 暗号化: 保管時の暗号化(EBSボリューム、UltraWarm/Cold Storage)と転送中の暗号化(HTTPS)をサポートしており、データのセキュリティを確保します。KMS (Key Management Service) と統合して暗号化キーを管理できます。
  • ストレージ層の選択肢:

    • ホットストレージ: 高速な読み書き性能が求められる最新のデータやインデックスに使用します。高性能なインスタンスとSSDベースのEBSボリュームで構成されます。
    • UltraWarmストレージ: アクセス頻度は低いが、迅速な検索・分析が必要な古いデータに適しています。S3とEC2インスタンスのキャッシュ層を組み合わせており、ホットストレージよりも低コストで、コールドストレージよりも高速なアクセスを提供します。
    • Cold Storage: ほとんどアクセスされないが、保持しておく必要のあるアーカイブデータに適しています。S3のみを利用しており、最も低コストですが、アクセスには復元プロセスが必要です。UltraWarmまたはホットストレージへの復元には時間がかかります。
    • これらのストレージ層を組み合わせることで、コストと性能のバランスを最適化できます。
  • OpenSearch Dashboards (Kibana) による可視化:

    • OpenSearch Serviceには、OpenSearch Dashboards (または互換性のあるKibanaバージョン) が付属しています。これは、データの探索、可視化、ダッシュボード構築のための強力なユーザーインターフェースです。ログデータの傾向分析、アプリケーションメトリクスの監視、検索結果の確認などに利用できます。FGACと連携して、ユーザーごとにアクセス可能なデータ範囲を制限することも可能です。
  • AWSサービスの統合:

    • Amazon Kinesis Data Firehose: ストリーミングデータを簡単にOpenSearch Serviceにロードするためのマネージドサービスです。
    • AWS Lambda: データの前処理、変換、OpenSearch Serviceへの書き込みなど、様々な処理をイベント駆動で行うために利用できます。
    • Amazon CloudWatch Logs: ログデータをCloudWatch LogsからOpenSearch Serviceにストリーミングできます。
    • Amazon S3: S3に保存されたデータをOpenSearch Serviceにインポートしたり、スナップショットの保存先として利用したりできます。
    • Amazon VPC, IAM, KMS, CloudFormation, Terraformなど、主要なAWSサービスと緊密に連携しています。
  • 最新の検索・分析機能:

    • OpenSearchプロジェクトの活発な開発により、ベクトル検索 (Vector Search)、異常検知 (Anomaly Detection)、Trace Analytics (APM機能)、Piped Processing Language (PPL) などの新しい機能が継続的にOpenSearch Serviceに取り込まれています。これらの機能は、より高度なユースケース(セマンティック検索、リアルタイム監視、セキュリティ分析など)をサポートします。

2.3. マネージドサービスを利用するメリット・デメリット

メリット:

  • 運用負荷の軽減: ハードウェア管理、OS・ソフトウェアパッチ、バージョンアップグレード、バックアップ、障害対応などの多くの運用タスクをAWSが代行するため、管理コストと手間が大幅に削減されます。
  • 容易なスケーリング: 需要に応じてクラスターリソースを柔軟に増減できます。特にホット/ウォーム/コールドストレージの組み合わせによるコスト最適化は大きなメリットです。
  • 高い信頼性と可用性: AWSの堅牢なインフラストラクチャとマルチAZ配置、自動スナップショットにより、高い可用性とデータの耐久性が実現されます。
  • 統合されたセキュリティ: VPC、IAM、FGAC、暗号化などの機能を活用することで、強固なセキュリティ対策を容易に実装できます。
  • 他のAWSサービスとの連携: データ取り込み、処理、可視化、セキュリティなど、AWSエコシステム全体で連携が容易です。

デメリット:

  • カスタマイズの制限: OSレベルやElasticsearch/OpenSearchの深層部の設定に対する直接的なコントロールは制限されます。特定のプラグインのインストールや、詳細なチューニングができない場合があります。
  • 最新バージョンのラグ: オープンソースプロジェクトでリリースされた最新バージョンが、OpenSearch Serviceでサポートされるまでに時間差が生じる場合があります。
  • ベンダーロックイン(の一部): フルマネージドの便利さと引き換えに、AWS独自の機能やサービス統合に依存する部分が生まれます。
  • コスト: 小規模な利用や特定の最適化を行う場合は、自己ホスティングよりもコストが高くなる可能性があります(ただし、運用コストを含めると多くの場合マネージドサービスの方が有利です)。

これらのメリット・デメリットを考慮し、ワークロードの特性や運用体制に合わせて、自己ホスティングと比較検討することが重要です。多くの一般的なワークロードにおいては、マネージドサービスによる運用負荷軽減のメリットが大きいため、OpenSearch Serviceが有力な選択肢となります。

3. OpenSearch Serviceの主要機能の詳細

OpenSearch Serviceが提供する主要な機能をさらに掘り下げて説明します。

3.1. スケーリングとノード構成

OpenSearch Serviceでは、クラスターの要件に応じて多様なノードタイプとストレージ構成を選択できます。

  • ノードタイプ:

    • マスターノード (Master Node): クラスターの状態(インデックス設定、ノード情報など)を管理するノードです。データは保持しません。高い可用性を確保するため、通常は専用のマスターノードを3つまたは5つ構成します。t3, m6g, c6gなどのインスタンスタイプが適しています。
    • データノード (Data Node): データのインデックス作成、検索、分析を処理するノードです。ホットデータを格納するホットノードとして機能します。r6g, i3, i4i, m6gなどのインスタンスタイプがあり、CPU、メモリ、ストレージ(EBSボリュームまたはインスタンスストア)のバランスが異なります。ワークロードに応じて最適なタイプを選択します。
    • UltraWarmノード: UltraWarmストレージを利用するためのノードです。ホットノードよりも低コストなストレージにアクセスできます。r6g, r5などのインスタンスタイプで、S3に保存されたデータにキャッシュを介してアクセスします。
    • コールドストレージ (Cold Storage): データノードやUltraWarmノードを必要とせず、S3に直接データを保管します。最も低コストですが、検索にはホットまたはUltraWarmにデータを「復元」する必要があります。
  • ストレージ:

    • EBSボリューム: ホットノードにアタッチされるストレージです。gp3 (汎用SSD) またはio1/io2 (プロビジョンドIOPS SSD) から選択できます。パフォーマンスとコストに応じて選びます。データノードのインスタンスタイプによってアタッチできる最大容量やIOPS性能が異なります。
    • インスタンスストア: i3, i4iなどの一部のインスタンスタイプに内蔵されているSSDストレージです。EBSよりも低レイテンシですが、インスタンス停止時にデータは消滅します(OpenSearch Serviceはレプリカとスナップショットでこれをカバーします)。
    • S3: UltraWarmとCold Storageの基盤となるストレージです。低コストで高い耐久性を提供します。
  • スケーリング:

    • 手動スケーリング: AWSマネジメントコンソール、CLI、またはAPIから、データノード数、インスタンスタイプ、ストレージ容量などを変更できます。変更はローリングアップデートで行われるため、サービス中断なしにスケール変更が可能です(ただし、大規模な変更には時間がかかります)。
    • Auto-Tune: OpenSearch ServiceにはAuto-Tune機能があり、クラスターのパフォーマンスや可用性を自動的に改善するための推奨事項(例えば、メモリ設定の調整など)を提案したり、自動的に適用したりすることができます。
    • UltraWarm/Cold Storageへの移行: Index State Management (ISM) ポリシーを使用して、一定期間経過したインデックスをホットからUltraWarm、さらにCold Storageへと自動的に移行させることができます。これにより、ストレージコストを大幅に削減できます。

3.2. セキュリティ機能の詳細

OpenSearch Serviceは多層防御のアプローチで強力なセキュリティ機能を提供します。

  • ネットワークセキュリティ:

    • VPC内配置: 推奨される設定です。クラスターのすべてのノードが指定したVPC内のサブネットに配置され、プライベートIPアドレスを持ちます。セキュリティグループを使用して、特定のEC2インスタンスやサブネットからのアクセスのみを許可できます。インターネットからの直接アクセスを排除し、攻撃対象領域を減らします。
    • Public Access: 特定のユースケース(例: 開発環境、パブリックなウェブサイト検索)のためにパブリックエンドポイントを持つドメインを作成することも可能ですが、通常はVPC内配置が推奨されます。パブリックアクセスの場合でも、アクセスコントロールポリシー(IPアドレス制限など)を設定できます。
  • アクセスコントロール:

    • ドメインアクセスポリシー: AWSリソースポリシーとして定義され、OpenSearch Serviceドメイン自体へのアクセス(設定変更、ドメイン削除など)と、データプレーンへのアクセス(インデックス作成、検索、ドキュメント操作など)を制御します。IAMユーザー、IAMロール、IPアドレスなどに基づいてアクセス権を付与できます。
    • きめ細かいアクセスコントロール (FGAC): OpenSearchセキュリティプラグインに基づいています。
      • 認証 (Authentication): ユーザーを識別します。HTTP Basic認証(ユーザー名/パスワード)、Cognitoユーザープール、SAML 2.0 IDプロバイダとの連携をサポートします。
      • 承認 (Authorization): 認証されたユーザーがどのデータや操作にアクセスできるかを制御します。
        • ロールベースのアクセス制御: ユーザーをロールにマッピングし、各ロールに対してクラスター権限(例: クラスター状態の監視)、インデックス権限(例: 特定のインデックスへの読み書き)、ドキュメントレベルセキュリティ (DLS)、フィールドレベルセキュリティ (FLS) を定義できます。
        • ドキュメントレベルセキュリティ (DLS): 特定のロールを持つユーザーが見ることができるドキュメントを、OpenSearchクエリによって定義します。
        • フィールドレベルセキュリティ (FLS): 特定のロールを持つユーザーが見ることができるフィールドを制限します。
        • OpenSearch Dashboardsテナント: 同じOpenSearchクラスター上で、異なるテナント(論理的な区画)を作成し、各テナント内で独自のインデックスパターン、保存済みオブジェクト(検索、可視化、ダッシュボードなど)を持つことができます。FGACと連携して、特定のロールを持つユーザーが特定のテナントにのみアクセスできるように設定できます。
  • 暗号化:

    • 保管時の暗号化: EBSボリューム、UltraWarm、Cold Storageに保存されるデータを、AWS KMSキーを使用して暗号化できます。これにより、ストレージが物理的に不正アクセスされた場合でもデータが保護されます。
    • 転送中の暗号化: ノード間通信と、クライアント(アプリケーションやOpenSearch Dashboards)とノード間の通信をTLS (HTTPS) で暗号化できます。

これらのセキュリティ機能を適切に設定することで、機密性の高いデータを含むワークロードでも安心してOpenSearch Serviceを利用できます。

3.3. 可用性と耐久性

OpenSearch Serviceは、ミッションクリティカルなワークロードに対応するために高い可用性と耐久性を提供します。

  • マルチAZ配置: 少なくとも2つのAZにノードを分散配置します。これにより、単一のAZ障害が発生しても、他のAZでクラスターが機能し続ける可能性が高まります。推奨は3AZ配置で、マスターノードとデータノードを3つのAZに均等に分散させます。
  • レプリカシャード: 各プライマリシャードに対して少なくとも1つのレプリカシャードを作成します。これにより、プライマリシャードを持つノードがダウンしても、レプリカがすぐに新しいプライマリとして昇格し、検索・書き込み操作が継続されます。レプリカがない場合、そのシャードが属するインデックスの一部または全体が利用できなくなる可能性があります。
  • 専用マスターノード: クラスターの状態管理はリソースを消費するため、データノードとは別に専用のマスターノードを設置することを強く推奨します。これにより、データノードの負荷がマスターノードに影響を与えにくくなり、クラスターの安定性が向上します。マルチAZ構成では、奇数(3つまたは5つ)の専用マスターノードを異なるAZに配置します。
  • 自動スナップショット: 日次または特定の時間帯にクラスターの自動スナップショットがS3に取得されます。これはデフォルトで有効になっており、ユーザーは保持期間を設定できます。障害発生時には、このスナップショットから新しいOpenSearch Serviceドメインを作成してデータを回復できます。
  • 手動スナップショット: 重要な変更の前や、特定の時点でのバックアップが必要な場合に、手動でスナップショットを取得できます。これらのスナップショットはS3バケットに保存され、OpenSearch Serviceドメインからアクセスできるように設定する必要があります。

これらの機能の組み合わせにより、ノード障害、AZ障害、さらにはクラスター全体の論理的な破損(誤った設定変更など)が発生した場合でも、迅速な回復やサービスの継続が可能となります。

3.4. ストレージ管理とコスト最適化 (UltraWarm, Cold Storage, ISM)

大量の時系列データ(ログ、メトリクスなど)を扱う場合、データの鮮度によってアクセス頻度や性能要件が変化します。OpenSearch Serviceは、このようなワークロード向けにコスト効率の高いストレージソリューションを提供します。

  • ホットストレージ: 最も高速なストレージ層で、データノード上のインスタンスストアSSDまたはEBSボリュームを使用します。書き込み(インデックス作成)性能と検索性能が最も高く、頻繁にアクセスされる最新のデータに適しています。コストは最も高くなります。
  • UltraWarmストレージ: S3を基盤とし、ホットノードよりも大幅に低コストなストレージ層です。UltraWarmノードは、S3に保存されたデータにキャッシュを介してアクセスします。ホットストレージほど高速ではありませんが、ほとんどの分析クエリに対して十分なパフォーマンスを提供します。数日から数週間前の、アクセス頻度が低下したデータに適しています。
  • Cold Storage: S3のみを基盤とする最も低コストなストレージ層です。検索や分析のパフォーマンス要件が非常に低く、長期間保持する必要があるアーカイブデータに適しています。データにアクセスするためには、まずUltraWarmまたはホットストレージに「復元」する必要があり、これには時間がかかります。数週間から数ヶ月以上前のデータに適しています。

これらのストレージ層を効率的に管理するために、Index State Management (ISM) が利用されます。

  • Index State Management (ISM): インデックスのライフサイクルを自動化するための機能です。ポリシーを定義し、インデックス作成からの経過時間やインデックスサイズなどの条件に基づいて、インデックスの状態(例: hot, warm, cold, delete)を自動的に変更できます。
    • 定義可能なアクション:
      • rollover: 現在書き込み中のエイリアスを新しいインデックスに切り替え、古いインデックスを読み込み専用にする。主に時系列データで利用。
      • shrink: シャード数を減らす。読み込み専用になったインデックスのストレージとノードリソースを最適化。
      • force_merge: インデックスセグメントを統合する。検索性能を向上させるが、リソースを消費する。
      • read_only: インデックスを読み込み専用にする。
      • warm: インデックスをホットストレージからUltraWarmストレージに移行する。
      • cold: インデックスをUltraWarmまたはホットストレージからCold Storageに移行する。
      • delete: インデックスを削除する。
    • ISMポリシーを使用することで、「7日経過したログインデックスをUltraWarmに移行し、90日経過したらCold Storageに移行し、365日経過したら削除する」といった運用を自動化できます。これにより、ストレージコストと管理の手間を大幅に削減できます。

3.5. 新しい検索・分析機能

OpenSearch Serviceは、コア機能に加えて、以下のような新しい機能を提供しています。

  • ベクトル検索 (Vector Search): 機械学習モデルによって生成された高次元ベクトルデータをインデックス化し、近似最近傍探索 (Approximate Nearest Neighbor – ANN) を実行できます。セマンティック検索(単語の意味に基づいた検索)、画像類似性検索、レコメンデーションシステム、RAG (Retrieval Augmented Generation) システムの一部として利用できます。k-NNプラグインを利用して実現されます。
  • 異常検知 (Anomaly Detection): 時系列データ内の異常なパターンをリアルタイムまたはニアリアルタイムで検出します。ログ、メトリクス、トランザクションデータなどの監視に利用でき、機械学習モデルを使用して自動的に異常スコアを計算します。
  • Trace Analytics: アプリケーションの分散トレーシングデータを収集、相関付け、可視化するための機能です。OpenTelemetryやJaegerなどのトレーシングデータを取り込み、サービス間の呼び出しレイテンシやエラーをOpenSearch Dashboardsで分析できます。APM (Application Performance Monitoring) の主要な要素となります。
  • Piped Processing Language (PPL): SQLライクなクエリ構文に加え、UNIXのパイプコマンドに似た構文でデータを検索・変換・可視化できるクエリ言語です。特にログデータなどの分析において、直感的で強力なデータ処理を可能にします。

これらの新しい機能は、OpenSearch Serviceの活用範囲を広げ、開発者やオペレーターがより高度な分析やモニタリングを実行できるよう支援します。

3.6. AWSサービスとの統合

OpenSearch ServiceはAWSエコシステムとの連携を前提に設計されています。

  • データ取り込み:
    • Amazon Kinesis Data Firehose: ストリーミングデータをほぼリアルタイムでOpenSearch Serviceに配信するための推奨される方法の一つです。Firehoseは、バッファリング、変換、エラー処理、リトライなどを自動的に行います。
    • AWS Lambda: S3バケットへのファイルアップロードやDynamoDB Streamへの書き込みなどをトリガーとしてLambda関数を実行し、データを整形してOpenSearch Serviceに書き込むことができます。
    • Amazon CloudWatch Logs: CloudWatch Logsのサブスクリプションフィルターを使用して、特定のロググループのデータをKinesis Data FirehoseまたはLambda経由でOpenSearch Serviceに転送できます。
    • Logstash, Fluentd, Fluent Bit: これらのログ収集エージェントは、OpenSearch Serviceへの出力プラグインを提供しており、EC2インスタンスやコンテナ、オンプレミス環境からログを直接OpenSearch Serviceに送信できます。
    • AWS Glue: S3などに保存された大量のデータをバッチ処理でOpenSearch Serviceにロードするために利用できます。
  • モニタリング: Amazon CloudWatchに自動的にクラスターやノードレベルのメトリクスが送信されます。CloudWatch Logsにはログ(エラーログ、スローログなど)が出力されます。
  • セキュリティ: IAM、VPC、KMSと統合されます。
  • 管理: CloudFormation、TerraformなどのIaC (Infrastructure as Code) ツールでプロビジョニングと管理が可能です。

これらの統合により、既存のAWSデータパイプラインや運用環境にOpenSearch Serviceを容易に組み込むことができます。

4. OpenSearch Serviceのユースケース

OpenSearch Serviceは、その柔軟性とスケーラビリティ、強力な検索・分析能力から、幅広いユースケースで活用されています。

4.1. ログ分析とモニタリング (Observability)

最も一般的で強力なユースケースの一つです。様々なソース(EC2インスタンス、コンテナ、Lambda関数、VPC Flow Logs、CloudTrailなど)から収集したログデータをOpenSearch Serviceに集約し、リアルタイムに検索、フィルタリング、分析、可視化します。

  • 利用シーン:
    • アプリケーションログ、システムログ、ネットワークログなどの集約と集中管理。
    • エラーや異常の検出と根本原因分析。
    • セキュリティイベントの監視と分析 (SIEM – Security Information and Event Management の一部として)。
    • インフラストラクチャおよびアプリケーションパフォーマンスの監視。
    • Trace Analyticsによる分散トレーシングの分析。
    • Piped Processing Language (PPL) を使用したログデータの複雑な分析。

OpenSearch Service、Kinesis Data Firehose、CloudWatch Logs、Lambdaなどを組み合わせることで、堅牢なログ分析パイプラインを構築できます。

4.2. ウェブサイト/アプリケーション検索

ユーザーがウェブサイトやアプリケーション内のコンテンツを検索するためのバックエンドとして利用されます。

  • 利用シーン:
    • ニュースサイト、ドキュメントポータル、ブログなどの全文検索。
    • 社内文書検索システム。
    • 地理情報を含むデータ(店舗検索など)の検索 (Geo-search)。
    • 検索候補のサジェスト機能。
    • ベクトル検索によるセマンティック検索や関連コンテンツ検索。

OpenSearch Serviceの強力な検索機能とスケーラビリティにより、大量のデータに対して高速かつ関連性の高い検索結果を提供できます。

4.3. Eコマース検索とカタログ分析

オンラインストアでの商品検索機能の実現や、商品カタログデータの分析に利用されます。

  • 利用シーン:
    • 高速な商品検索(キーワード検索、ファセット検索、カテゴリ検索など)。
    • 商品の属性に基づいたフィルタリングと並べ替え。
    • ユーザーの行動履歴に基づいたパーソナライズされた検索結果やレコメンデーション(ベクトル検索などと組み合わせ)。
    • 在庫状況や価格などのリアルタイムな更新への対応。
    • 商品カタログデータの集計と分析。

豊富な検索機能とリアルタイム処理能力は、Eコマースサイトのユーザー体験向上に不可欠です。

4.4. セキュリティ分析

CloudTrailログ、VPC Flow Logs、ファイアウォールログ、ホストのセキュリティログなどをOpenSearch Serviceに集約し、不正アクセスの試み、不審なネットワークアクティビティ、システム設定の変更などを検出・分析します。

  • 利用シーン:
    • SIEM (Security Information and Event Management) システムのバックエンド。
    • セキュリティイベントの相関分析。
    • 脅威ハンティング。
    • フォレンジック調査。
    • 異常検知による未知の脅威の検出。

きめ細かいアクセスコントロールや暗号化機能と組み合わせることで、機密性の高いセキュリティデータも安全に管理できます。

4.5. IoTデータ分析

センサーデータ、デバイスの状態情報など、IoTデバイスから生成される大量の時系列データをリアルタイムに取り込み、分析します。

  • 利用シーン:
    • デバイスの状態監視と異常検出。
    • 製造ラインの稼働状況分析。
    • 地理情報を含むIoTデータの可視化。
    • 履歴データの長期保存と分析(UltraWarm/Cold Storageを活用)。

Kinesis、Lambda、S3などのAWS IoTデータパイプラインと連携して利用されます。

4.6. その他

  • クリックストリーム分析: ウェブサイト訪問者の行動(クリックパス、滞在時間など)を分析し、ユーザーエクスペリエンスの向上やマーケティング戦略の最適化に活用します。
  • アプリケーションメトリクス分析: アプリケーションから出力される様々なメトリクス(リクエスト数、エラー率、レスポンスタイムなど)を収集・分析し、パフォーマンスのボトルネック特定やキャパシティプランニングに役立てます。CloudWatchやPrometheus exporterなどからメトリクスを取り込みます。
  • ビジネスインテリジェンス (BI): 大量のデータをインデックス化し、OpenSearch DashboardsやサードパーティのBIツールからクエリを実行して、ビジネス上の洞察を得ます。
  • 開発者向けの検索: APIログ、開発中のアプリケーションの状態など、開発者が自身の作業を効率化するための検索基盤として利用します。

これらのユースケースは一例であり、OpenSearch Serviceの柔軟性と強力な機能は、様々なデータの検索、分析、可視化のニーズに対応できます。

5. Amazon OpenSearch Serviceの使い方

実際にOpenSearch Serviceを利用するための基本的なステップと考慮事項を説明します。

5.1. OpenSearch Service ドメインの作成

OpenSearch Serviceを利用するための最初のステップは、「ドメイン」の作成です。ドメインはOpenSearch/Elasticsearchクラスターと、それに付随するリソース(インスタンス、ストレージ、ネットワーキング、セキュリティ設定など)を包含する論理的な単位です。

  1. AWSマネジメントコンソールにサインイン: OpenSearch Serviceコンソールにアクセスします。
  2. 「ドメインの作成」をクリック: 設定ウィザードを開始します。
  3. デプロイタイプとバージョンを選択:
    • デプロイタイプ: Standard Create (手動設定) または VPC付き開発/テスト (VPCに最小構成で作成) を選択します。本番環境では通常 Standard Create で詳細を設定します。
    • バージョン: OpenSearchまたはElasticsearchのサポートされているバージョンリストから選択します。可能な限り最新のOpenSearchバージョンを選択することを推奨します。
  4. ドメイン名を設定: 一意のドメイン名を付けます。
  5. クラスター設定:
    • アベイラビリティゾーン (AZ): 開発/テスト向けに単一AZも選択できますが、本番環境ではマルチAZ(推奨は3AZ)を選択して可用性を高めます。
    • ノード設定:
      • マスターノード: 専用マスターノードを使用するか(本番環境推奨)、データノードがマスターの役割も兼ねるかを選択します。使用する場合はインスタンスタイプとノード数(マルチAZ 3つ以上推奨)を選択します。
      • データノード: インスタンスタイプとノード数を指定します。ホットデータ容量と処理能力の要件に基づいて選択します。
      • UltraWarm/Cold Storage: 有効にするかを選択し、UltraWarmノードを使用する場合はインスタンスタイプと数を指定します。
    • ストレージ設定: データノードのストレージとしてEBSボリュームを選択した場合、ボリュームタイプ(gp3, io1/io2)、容量、IOPS (プロビジョンドIOPSの場合) を指定します。インスタンスストアタイプのノードを選択した場合は、インスタンスストアが使用されます。
  6. ネットワーク設定:
    • VPCアクセス: 推奨される設定です。既存のVPC、サブネット、セキュリティグループを選択します。
    • Public access: インターネットからアクセス可能にするかを選択します。アクセスコントロールポリシーを設定します。
  7. アクセスポリシー: ドメインへのアクセスを許可するIAMユーザー/ロール、IPアドレスなどを指定するアクセスポリシーを設定します。きめ細かいアクセスコントロール (FGAC) を有効にするかを選択します。
  8. 暗号化:
    • 保管時の暗号化: 有効にするかを選択し、AWS管理キーまたはカスタムKMSキーを選択します。
    • 転送中の暗号化: 有効にするかを選択します。ノード間通信とクライアント-ノード間通信のTLS暗号化が設定されます。
  9. その他の設定:
    • スナップショット: 自動スナップショットの有効化と保持期間を設定します。
    • Auto-Tune: 有効にするかを選択します。
    • ログ発行: OpenSearchログ(エラーログ、検索スローログ、インデックススローログなど)をCloudWatch Logsに発行するかを設定します。
    • タグ: リソース管理のためにタグを付けます。
  10. 確認と作成: 設定内容を確認し、「作成」をクリックします。ドメインの作成には数十分かかる場合があります。

作成が完了すると、ドメインエンドポイント(OpenSearch APIアクセス用)とOpenSearch Dashboardsエンドポイントが提供されます。

5.2. データの取り込み

OpenSearch Serviceドメインが作成されたら、次にデータをインデックス化する必要があります。データのソースと種類に応じて様々な方法があります。

  • ストリーミングデータ:
    • Amazon Kinesis Data Firehose: リアルタイムのイベントログやIoTデータなどのストリームをOpenSearch Serviceに継続的に配信する最も簡単な方法です。Firehoseの配信ストリームを作成する際に、送信先としてOpenSearch Serviceドメインを指定します。バッファリング設定(バッファサイズまたはバッファ間隔)を行います。
    • AWS Lambda: Kinesis Data StreamやDynamoDB Streamなどの他のストリームサービスからイベントをトリガーとしてLambda関数を実行し、整形したデータをOpenSearch Serviceに書き込みます。
  • バッチデータ:
    • AWS Glue: S3などのデータレイクに蓄積された大量のバッチデータをETL処理でOpenSearch Serviceにロードします。
    • バルクAPI: アプリケーションやスクリプトから、OpenSearchのBulk APIを使用して複数のドキュメントを効率的に一度にインデックス化します。
  • ログ収集エージェント:
    • Logstash: プラグインアーキテクチャを持ち、多様な入力元(ファイル、Syslog、Beats、Kafkaなど)からデータを収集し、フィルタリングや変換を行ってOpenSearch Serviceに出力できます。
    • Fluentd/Fluent Bit: 軽量なログプロセッサで、様々なプラグインを通じてデータを収集し、OpenSearch Serviceに転送できます。Kubernetes環境などでの利用が多いです。
    • AWS CloudWatch Logs: CloudWatch Logsから直接、またはKinesis Data FirehoseやLambda経由でOpenSearch Serviceにログを転送できます。
  • アプリケーションからの直接書き込み:
    • OpenSearch/Elasticsearchクライアントライブラリ(Java, Python, Rubyなど)を使用して、アプリケーションコードから直接ドキュメントのインデックス作成、更新、削除を行います。

データ取り込みパイプラインの設計は、データの性質(リアルタイム性、量、構造)と既存のインフラストラクチャに基づいて行う必要があります。Kinesis Data Firehoseは、マネージドで手間がかからないため、ストリーミングデータ取り込みの一般的な選択肢です。

5.3. データの検索と分析 (OpenSearch Dashboards)

データがOpenSearch Serviceにインデックス化されたら、OpenSearch Dashboardsを使用してデータを探索、分析、可視化できます。

  • OpenSearch Dashboardsへのアクセス: OpenSearch Serviceドメイン作成時に生成されたOpenSearch DashboardsエンドポイントURLにブラウザからアクセスします。FGACを有効にしている場合は、設定した認証情報(Basic Auth, Cognito, SAMLなど)でサインインが必要です。
  • Discover: インデックス化されたデータを検索し、結果を一覧表示します。キーワード検索、フィールドによるフィルタリング、時間範囲指定などが可能です。ログ分析で特定のエラーメッセージを探したり、特定の期間のイベントを調査したりするのに使用します。
  • Visualize: 検索結果や集計結果を様々な形式(棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、ヒートマップ、マップ、データテーブルなど)で可視化します。
  • Dashboards: 複数のVisualize要素を組み合わせて、インタラクティブなダッシュボードを作成します。システムの健全性、アプリケーションのパフォーマンス、セキュリティイベントなどの状況を一覧で把握するのに役立ちます。
  • Dev Tools: OpenSearch/ElasticsearchのREST APIを直接実行できるコンソールです。データのCRUD操作、インデックス管理、クラスター状態の確認など、より高度な操作やデバッグに使用します。DSL (Domain Specific Language) クエリやPiped Processing Language (PPL) クエリをテストできます。
  • Anomaly Detection, Trace Analytics, ISM: これらの機能の管理インターフェースもOpenSearch Dashboards内に統合されています。

OpenSearch Dashboardsは、データの探索から高度な分析、リアルタイム監視まで、OpenSearch Serviceの機能を最大限に引き出すための主要なツールです。FGACと組み合わせることで、ユーザーやチームごとにアクセス可能なデータ範囲や機能(例: Dev Toolsへのアクセス制限)を制御できます。

5.4. クラスターの監視とスケーリング

運用中のOpenSearch Serviceドメインを健全に保ち、パフォーマンスを維持するためには、継続的な監視と適切なスケーリングが重要です。

  • モニタリング:
    • Amazon CloudWatch: OpenSearch Serviceは、CPU使用率、メモリ使用率、ディスク使用率、ネットワークトラフィック、検索/インデックス作成レイテンシ、エラー率、クラスター状態(赤、黄、緑)など、多数のメトリクスをCloudWatchに自動的に送信します。これらのメトリクスを監視し、アラームを設定することで、問題が発生した際に迅速に通知を受け取ることができます。
    • CloudWatch Logs: OpenSearchのエラーログ、検索スローログ、インデックススローログなどをCloudWatch Logsに発行し、詳細なトラブルシューティングやパフォーマンス分析に活用できます。
    • OpenSearch Dashboards: Cluster Health, Nodes Infoなどのビューでクラスターの現在の状態を視覚的に確認できます。
  • スケーリング:
    • 手動スケーリング: CloudWatchメトリクスやワークロードの変化に応じて、手動でデータノード数、インスタンスタイプ、ストレージ容量を変更します。特にトラフィックの急増が予測される場合や、長期的なデータ増加に対応する場合に行います。
    • Index State Management (ISM): データライフサイクルポリシーを設定し、古いインデックスをUltraWarmやCold Storageに自動的に移行させることで、ホットストレージの負荷を軽減し、コストを最適化します。
    • データモデルとシャーディング: データモデルを適切に設計し、インデックス作成時に適切なシャード数とレプリカ数を設定することがパフォーマンスとスケーラビリティの鍵となります。シャード数はインデックス作成後に変更するのが難しいため、事前の計画が重要です。データ量や書き込み/読み込み負荷の予測に基づいてシャード数を決定します。

適切な監視体制とスケーリング戦略は、OpenSearch Serviceドメインの安定稼働とコスト効率を維持するために不可欠です。

5.5. バックアップとリストア (スナップショット)

データの耐久性と障害回復のために、OpenSearch Serviceはスナップショット機能を提供します。

  • 自動スナップショット: ドメイン作成時に有効化され、指定した時間帯に日次でスナップショットがS3に保存されます。保持期間も設定可能です。
  • 手動スナップショット: 特定の時点でのバックアップが必要な場合に、手動でスナップショットを取得できます。手動スナップショットを保存するためのS3バケットを別途用意し、そのバケットに対するOpenSearch Serviceドメインからのアクセス権限(IAMロール)を設定する必要があります。
  • リストア: スナップショットから新しいOpenSearch Serviceドメインを作成することで、データをリストアできます。既存のドメインにリストアすることはできません。したがって、リストアは主に障害回復や検証目的で新しい環境を構築する際に利用されます。

スナップショットは、クラスター全体の状態(データとメタデータ)を保存するため、大規模な障害が発生した場合でもデータを復旧できる重要な機能です。

6. 移行について (Elasticsearchからの移行)

Amazon OpenSearch ServiceはElasticsearch 7.10と互換性のあるOpenSearchプロジェクトから派生しているため、既存のElasticsearchワークロードからの移行比較的容易な場合があります。

  • Amazon Elasticsearch Service (旧サービス名) からの移行: サービス名変更前にAmazon Elasticsearch Serviceを使用していた場合、現在もそのドメインは引き続き利用可能ですが、OpenSearch Serviceコンソールで管理されます。新しいOpenSearchバージョンや機能を利用するには、ドメインをElasticsearchバージョンからOpenSearchバージョンにアップグレードする必要があります。AWSはインプレースアップグレードプロセスを提供しています。
  • 自己ホスティングElasticsearchからの移行:
    • スナップショット/リストア: 自己ホスト型のElasticsearchからS3にスナップショットを取得し、そのスナップショットを新しいOpenSearch Serviceドメインにリストアするのが一般的な方法です。OpenSearch ServiceからそのS3バケットへのアクセス許可を設定する必要があります。バージョンの互換性に注意が必要です。
    • データのリインデックス: Elasticdumpなどのツールを使用して、自己ホスト型クラスターからデータをエクスポートし、OpenSearch Serviceドメインにバルクインポートする方法もあります。
    • アプリケーションの修正: アプリケーションがElasticsearchクライアントライブラリを使用している場合、OpenSearch互換のクライアントライブラリに切り替えるか、使用している機能がOpenSearchで互換性があるかを確認する必要があります。APIエンドポイントは異なる場合があります。

移行の際には、バージョンの互換性、使用しているプラグインの互換性、データの量、ダウンタイムの許容度などを考慮し、適切な移行戦略を選択することが重要です。事前に十分なテストを行うことを推奨します。

7. 料金体系

Amazon OpenSearch Serviceの料金は、主に以下の要素に基づいて発生します。

  • インスタンス時間: 使用しているノード(マスター、データ、UltraWarm)のインスタンスタイプと実行時間に対して課金されます。インスタンスタイプによって時間あたりの料金は異なります。
  • EBSボリュームストレージ: ホットノードにアタッチされているEBSボリュームのストレージ容量に対して、月あたりのギガバイト (GB-Month) 単位で課金されます。プロビジョンドIOPS (io1/io2) を使用する場合は、IOPSに対しても課金が発生します。
  • UltraWarmストレージ: UltraWarmストレージに格納されているデータの容量に対して、月あたりのギガバイト (GB-Month) 単位で課金されます。
  • Cold Storage: Cold Storageに格納されているデータの容量に対して、月あたりのギガバイト (GB-Month) 単位で課金されます。
  • データ転送: AWS内外へのデータ転送に対して課金が発生します(AWS内、同一リージョン内のデータ転送は通常無料または低額です)。
  • スナップショット: 自動スナップショット自体はS3に保存されますが、OpenSearch Serviceが管理する自動スナップショットのストレージ料金は発生しません(S3バケットへの手動スナップショットはS3の料金が発生します)。
  • reserved Instance (RI): 特定のインスタンスタイプを1年または3年契約で予約することで、オンデマンド料金よりも大幅な割引を受けることができます。長期的に安定したワークロードがある場合にコスト削減に有効です。

料金はリージョンによって異なります。最新かつ正確な料金情報については、必ずAWS公式のOpenSearch Service料金ページを確認してください。ホット/ウォーム/コールドストレージを適切に使い分けることは、特に大量の時系列データを扱う場合のコスト最適化において非常に重要です。

8. 運用上のベストプラクティス

OpenSearch Serviceを効率的かつ安定的に運用するためのいくつかのベストプラクティスを以下に示します。

  • 専用マスターノードの使用: 本番環境では、クラスターの安定性と可用性を高めるために、必ず専用マスターノード(最低3つ)を使用してください。
  • マルチAZ配置: 高い可用性が求められるワークロードでは、マルチAZ配置(推奨は3AZ)を有効にし、ノードを複数のAZに分散させてください。
  • レプリカシャードの作成: データの耐久性と検索可用性を確保するために、各プライマリシャードに対して少なくとも1つのレプリカシャードを作成してください。レプリカ数を増やすことで読み込み性能は向上しますが、書き込み性能は低下し、ストレージコストも増加します。ワークロードに合わせて適切なレプリカ数を選択してください。
  • 適切なインスタンスタイプとストレージの選択: ワークロード(書き込み/読み込みの比率、データ量、必要な検索レイテンシなど)の特性に合わせて、CPU、メモリ、ストレージのバランスが良いインスタンスタイプを選択してください。時系列データの場合はUltraWarm/Cold Storageの活用を検討してください。
  • Index State Management (ISM) の活用: 特にログデータなど、時間の経過とともにアクセス頻度が低下するデータに対しては、ISMを使用してホット/ウォーム/コールドストレージへの自動移行を設定し、コストを最適化してください。
  • きめ細かいアクセスコントロール (FGAC) の有効化: データのセキュリティを強化するために、FGACを有効にし、ユーザー/ロールベースでアクセス可能なデータ範囲を制限してください。
  • VPC内配置: クラスターをVPC内に配置し、セキュリティグループでアクセスを制御することで、外部からの不要なアクセスを遮断してください。
  • 十分なモニタリングとアラート設定: CloudWatchメトリクス(CPU、メモリ、ディスク、クラスター状態など)を監視し、異常を検出するためのアラートを設定してください。スローログなどをCloudWatch Logsに発行し、パフォーマンス問題の調査に役立ててください。
  • シャード数の計画: インデックス作成時に適切なシャード数を設定することが重要です。シャード数はデータ量、ノード数、検索負荷を考慮して決定します。シャード数が少なすぎるとスケールアウトのボトルネックになり、多すぎるとマスターノードの負荷が増大し、パフォーマンスが低下する可能性があります。一般的に、シャードサイズは10-50GB程度に収まるように計画すると良いとされています。
  • バージョンの管理とアップグレード: サポートされている最新のOpenSearchバージョンを使用することを検討し、定期的にバージョンアップグレードを実施してください。アップグレード前には互換性のテストを十分に行ってください。
  • テスト環境の活用: 大規模な変更(バージョンアップグレード、構成変更など)を本番環境に適用する前に、テスト環境で十分なテストを実施してください。スナップショットからテスト環境を構築するのも良い方法です。
  • コストの監視: CloudWatchやAWS Cost Explorerを使用して、OpenSearch Serviceのコストを継続的に監視し、予期しないコスト増加がないか確認してください。

これらのベストプラクティスを遵守することで、OpenSearch Serviceの潜在能力を最大限に引き出し、信頼性の高いサービスを提供できます。

9. まとめ:Amazon OpenSearch Serviceの未来

Amazon OpenSearch Serviceは、Elasticsearch Serviceとしての長い歴史と実績を持ちながら、OpenSearchプロジェクトの立ち上げと共に進化を続けています。フルマネージドサービスとしての利便性、AWSの強固なインフラストラクチャ、そしてOpenSearchコミュニティによって開発される新しい検索・分析機能が組み合わさることで、多様化するデータの検索・分析ニーズに対応できる強力なプラットフォームとなっています。

ログ分析、アプリケーション監視、エンタープライズ検索、Eコマース、セキュリティ分析、IoTデータ処理など、 OpenSearch Serviceのユースケースは広がり続けています。特に、ベクトル検索や異常検知といった機械学習を活用した機能の追加は、OpenSearch Serviceが単なるキーワード検索エンジンではなく、より高度なデータインテリジェンスプラットフォームへと進化していることを示しています。

AWSはOpenSearchプロジェクトへの貢献を続け、OpenSearch Serviceを通じてその成果をユーザーに提供していくでしょう。今後も、パフォーマンスの向上、コスト効率の改善、新しい機能の追加、他のAWSサービスとのさらなる統合が進められることが期待されます。

もしあなたが大量のデータを効率的に検索、分析、可視化する必要があるなら、Amazon OpenSearch Serviceは検討すべき有力な選択肢です。そのマネージド機能は運用負荷を大幅に軽減し、豊富な機能はあなたのワークロードに強力な能力をもたらします。

この詳細な解説が、OpenSearch Serviceの特徴と使い方を理解し、あなたのプロジェクトで活用するための一助となれば幸いです。


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