初心者向け:これ一本でOK!IntelliJ IDEAの基本と導入方法を徹底解説
はじめに
プログラミング学習を始めたり、新しい言語やフレームワークに挑戦しようとしたとき、まず何から始めればいいか迷うことがありますよね。コードを書くための「エディタ」や「開発環境」もその一つです。世の中にはたくさんのエディタやIDE(統合開発環境)が存在しますが、プロの現場で圧倒的な人気を誇り、世界中の多くの開発者に愛用されているのが「IntelliJ IDEA」です。
「インテリジェイ・アイデア」と読みます。特にJava開発の分野ではデファクトスタンダードとも言える存在ですが、Javaだけでなく、Kotlin, Scala, GroovyといったJVM言語はもちろん、Python, JavaScript, TypeScript, Go, PHP, Rubyなど、非常に多くの言語や技術に対応しています。
IntelliJ IDEAは、単にコードを書くだけでなく、コードの入力補完、エラーチェック、デバッグ、バージョン管理システムとの連携、データベース操作など、開発に必要なあらゆる作業を強力にサポートしてくれる「統合開発環境」です。その「賢さ」と「高機能さ」ゆえに、一度使うと手放せなくなる開発者が後を絶ちません。
しかし、高機能であるがゆえに、初心者の方にとっては「難しそう」「設定が複雑なのでは?」と感じるかもしれません。確かに多機能ですが、基本的な使い方をマスターすれば、あなたのプログラミング学習や開発効率を飛躍的に向上させてくれる強力な味方になります。
この記事は、まさに「IntelliJ IDEAを使ってみたいけど、何から始めればいいか分からない」という初心者の方に向けて書かれています。IntelliJ IDEAがどういうものか、なぜ多くの開発者に選ばれているのかといった基本から始まり、PCへのインストール方法、最初の起動と設定、そして日々の開発で必要になる基本的な操作や便利な機能までを、ステップバイステップで丁寧に解説します。
この記事を最後まで読めば、IntelliJ IDEAをあなたのPCに導入し、簡単なプログラムを作成・実行できるようになっているはずです。さあ、IntelliJ IDEAの素晴らしい世界に飛び込んでみましょう!
IntelliJ IDEAとは? IDEとは?
まずは、「IntelliJ IDEA」という言葉に含まれる「IDE」について理解しましょう。
IDE (Integrated Development Environment) は「統合開発環境」の略称です。その名の通り、ソフトウェア開発に必要なさまざまなツールや機能を一つに統合したソフトウェアのことを指します。
かつては、プログラマーはコードを書くためにテキストエディタを使い、プログラムをコンパイルするためにコンパイラをコマンドラインから実行し、バグを見つけるためにデバッガを別途起動し、バージョン管理もコマンドで行う、といったように、複数のツールを切り替えながら作業していました。
しかし、IDEが登場してからは、これらの作業の多くを一つのソフトウェア内で完結できるようになりました。IDEが提供する主な機能は以下の通りです。
- コードエディタ: プログラムのソースコードを記述するための機能です。コードの色分け表示(シンタックスハイライト)、自動インデント、コード補完、エラーや警告の表示など、コードを書きやすくするための機能が豊富です。
- コンパイラまたはインタープリタ: 書いたコードをコンピューターが理解できる形式(機械語など)に変換したり、直接実行したりするための機能です。
- デバッガ: プログラムに潜むバグ(間違い)を見つけ、修正するためのツールです。プログラムを一時停止させたり、変数の値を確認したり、コードの実行パスを追跡したりできます。
- ビルドツール: プロジェクト全体のコンパイル、ライブラリの管理、実行可能ファイルの作成など、プログラムを「ビルド」するための機能です。
- バージョン管理システム連携: GitやSVNといったバージョン管理システムと連携し、コードの変更履歴の管理、複数人での共同開発などを容易に行えます。
これらの機能が統合されていることで、開発者はツールの切り替えにかかる手間を省き、開発効率を大幅に向上させることができます。
そして、IntelliJ IDEAは、数あるIDEの中でも特に高機能で「賢い」ことで知られています。JetBrains社によって開発されており、その強力なコード解析能力と開発者の作業効率を極限まで高めるための工夫が随所に凝らされています。
IntelliJ IDEAの主な特徴をいくつか挙げてみましょう。
- 賢いコード補完とコード解析: タイピング中に次に書くであろうコードを予測して候補を表示したり、エラーや警告をリアルタイムで教えてくれたりします。単なるキーワード補完ではなく、文脈を理解した高度な補完が可能です。
- 強力なリファクタリング機能: コードの構造を安全に変更するための機能です。変数名の一括変更、メソッドの抽出、クラスの移動などを、コードの挙動を変えることなく自動で行えます。コードの可読性や保守性を高めるのに非常に役立ちます。
- 高度なデバッグ機能: ブレークポイントの設定、ステップ実行はもちろん、条件付きブレークポイント、式の評価、スレッドの状態確認など、複雑なバグも効率的に特定できます。
- バージョン管理システムとの統合: Gitなどの操作をIDE上から直感的に行えます。コミット、プッシュ、プル、ブランチの作成・切り替えなどが簡単です。
- 豊富なフレームワークサポート: JavaのSpring, JavaFXはもちろん、PythonのDjango/Flask, JavaScriptのReact/Angular/Vue, Go, PHP, Ruby on Railsなど、様々な言語やフレームワークの開発を強力にサポートする機能が組み込まれています(※サポート範囲はエディションによります)。
- カスタマイズ性と拡張性: UIのテーマやキーマップを自由に変更できるだけでなく、豊富なプラグインが提供されており、機能を拡張できます。
このように、IntelliJ IDEAは開発に必要なあらゆる機能を網羅し、さらにそれを「賢く」「効率的に」利用できるように設計されています。
IntelliJ IDEAのエディション:Community vs Ultimate
IntelliJ IDEAには主に2つのエディションがあります。
- IntelliJ IDEA Community Edition: 無料で利用できます。Java, Kotlin, Groovy, ScalaといったJVM言語の開発に加えて、Android開発、Maven/Gradleといったビルドツール、Gitなどのバージョン管理、そして基本的なエディタ機能やデバッグ機能などが含まれています。初心者がJavaやAndroid開発を始めるにはこれで十分です。
- IntelliJ IDEA Ultimate Edition: 有料(サブスクリプション)です。Community Editionの機能に加えて、Web開発(JavaScript, TypeScript, HTML, CSS, 各種フレームワーク)、各種エンタープライズ技術(Spring, Java EEなど)、データベースツール、プロファイラ、リモート開発など、より多くの言語やフレームワーク、高度な開発機能がサポートされています。プロの開発者や大規模なプロジェクト開発に向いています。
この記事では、主に無料で利用できるCommunity Editionを対象に解説を進めます。まずはCommunity Editionから使い始めて、必要に応じてUltimate Editionへの移行を検討するのが良いでしょう。
IntelliJ IDEAの導入準備
IntelliJ IDEAをPCにインストールする前に、いくつか準備が必要です。
1. システム要件の確認
IntelliJ IDEAを快適に利用するためには、ある程度のシステムリソースが必要です。公式サイトで最新のシステム要件を確認することをお勧めしますが、一般的な目安は以下の通りです。
- オペレーティングシステム: Windows 10以降, macOS 10.13以降, 主要なLinuxディストリビューション
- メモリ (RAM): 最低 2 GB (推奨 8 GB以上)。特に大きなプロジェクトや複数のIDEウィンドウを開く場合は8GB以上が望ましいです。
- ディスク容量: インストールに 3.5 GB程度必要。さらにキャッシュやログに多くの容量を使うため、合計 8 GB以上の空き容量が推奨されます。SSDドライブがあると起動や動作が高速になります。
- ディスプレイ解像度: 1024×768以上 (推奨 1920×1080以上)。
古いPCやスペックの低いPCでは動作が遅くなる可能性があるため、推奨環境を満たしているか確認しましょう。
2. Java Development Kit (JDK) のインストール(Java開発の場合)
IntelliJ IDEA Community Editionの主な用途の一つはJava開発です。Javaプログラムを作成・実行・デバッグするためには、Java Development Kit (JDK) が必要です。JDKには、Javaコンパイラ(javac)やJava仮想マシン(JVM)、標準ライブラリなどが含まれています。
もしあなたがJava以外の言語(例えばPythonやJavaScriptなど)を主に開発する場合で、Java開発は全く行わないのであれば、必ずしもJDKのインストールは必須ではありません。しかし、IntelliJ IDEA自体がJavaで開発されているため、多くの機能で内部的にJavaを利用します。また、プラグインによってはJDKが必要になる場合もあります。特に理由がなければインストールしておくことをお勧めします。
JDKにはいくつかの種類があります。主要なものとしては以下の通りです。
- Oracle JDK: Oracle社が提供する公式のJDKです。商用利用にはライセンスが必要な場合があります(バージョンによる)。
- OpenJDK: オープンソースのJDKです。Oracle JDKのベースにもなっており、多くのディストリビューションがあります。代表的なものにAdoptium (旧 AdoptOpenJDK), Amazon Corretto, Azul Zuluなどがあります。こちらは基本的に無料で利用できます。
初心者の方には、無料で利用できるOpenJDKベースのディストリビューション(例: Adoptium Temurin)をお勧めします。
ここでは、Adoptium Temurinのインストール方法を簡単に紹介します。(バージョンは適宜最新版を選んでください)
Adoptium Temurin JDKのダウンロードとインストール
- Adoptiumの公式サイト(https://adoptium.net/)にアクセスします。
- トップページに表示されている「Latest LTS Release」(長期サポート版の最新版)のボタンをクリックします。
- お使いのOSとアーキテクチャ(x64など)が自動検出されるか、手動で選択します。Javaのバージョンは、特に指定がなければ最新のLTS版(例: Java 17, Java 21など)を選択すれば良いでしょう。
- ダウンロードするインストーラーの種類を選択します。
- Windows:
jdk-*-hotspot.msi
ファイル(推奨) - macOS:
jdk-*-hotspot.pkg
ファイル(推奨)または.dmg
ファイル - Linux:
.tar.gz
ファイルまたはディストリビューションに応じたパッケージ
- Windows:
- ダウンロードしたインストーラーを実行します。
- Windows:
msi
ファイルをダブルクリックして、インストーラーウィザードに従います。「Add to PATH」や「Set JAVA_HOME variable」にチェックを入れておくと、環境変数の設定が自動で行われるため便利です。 - macOS:
pkg
ファイルをダブルクリックして、インストーラーウィザードに従います。 - Linux:
.tar.gz
ファイルを任意の場所に展開し、環境変数(JAVA_HOME
とPATH
)を設定する必要があります。具体的な手順はディストリビューションやシェルの種類によって異なりますので、別途「Linux 環境変数 JAVA_HOME PATH 設定」などで検索して確認してください。
- Windows:
インストールが完了したら、コマンドプロンプトやターミナルを開いて以下のコマンドを実行し、Javaのバージョン情報が表示されることを確認しておくと良いでしょう。
bash
java -version
javac -version
バージョン情報が表示されれば、JDKのインストールは成功です。
IntelliJ IDEAのダウンロードとインストール
JDKの準備ができたら、いよいよIntelliJ IDEA本体をダウンロードしてインストールします。
-
IntelliJ IDEA公式サイトへのアクセス:
Webブラウザを開き、IntelliJ IDEAの公式ダウンロードページ(https://www.jetbrains.com/ja-jp/idea/download/)にアクセスします。 -
エディションの選択:
ダウンロードページにはUltimate EditionとCommunity Editionが表示されています。ここではCommunity Editionを選択します。OS(Windows, macOS, Linux)が自動的に判別されているか確認し、Communityの下にあるダウンロードボタンをクリックします。 -
インストーラーのダウンロード:
OSに応じてダウンロードするファイル形式が異なります。- Windows:
.exe
ファイル - macOS:
.dmg
ファイル - Linux:
.tar.gz
ファイルまたはSnapパッケージ/Toolbox App経由
ダウンロードが開始されます。ファイルサイズが大きいため、完了するまでしばらく待ちます。
- Windows:
OS別インストール手順
ダウンロードが完了したら、各OSの手順に従ってインストールを行います。
Windowsの場合:
- ダウンロードした
.exe
インストーラーファイルをダブルクリックして実行します。 - 「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」というユーザーアカウント制御のダイアログが表示されたら、「はい」をクリックします。
- Welcome to IntelliJ IDEA Community Edition Setup: 「Next」をクリックします。
- Choose Install Location: インストール先フォルダを選択します。特別な理由がなければデフォルトのままで問題ありません。「Next」をクリックします。
- Installation Options: インストールオプションを選択します。
- Create Desktop Shortcut: デスクトップにショートカットを作成するか選択します。64-bit launcherにチェックを入れるのが一般的です。
- Update PATH variable (restart needed): PATH環境変数にIntelliJ IDEAの実行ファイルパスを追加します。コマンドラインからIntelliJ IDEAを起動できるようになります。チェックを入れることをお勧めします。(後でPCの再起動が必要になります)
- Update Context Menu: エクスプローラーの右クリックメニューに「Open Folder as Project」を追加します。フォルダを右クリックしてIntelliJ IDEAで開けるようになります。便利なのでチェック推奨です。
- Create Associations: 関連付けを設定します。特定のファイル形式(例:
.java
,.kt
)をIntelliJ IDEAで開くように設定します。開発する言語に合わせてチェックを入れます。 - Download and install 64-bit JRE by JetBrains: IntelliJ IDEA自身が動作するために必要なJava実行環境(JRE)をインストールするか選択します。通常はチェックを入れたままで問題ありません。
必要なオプションにチェックを入れたら、「Next」をクリックします。
- Choose Start Menu Folder: スタートメニューに作成されるフォルダ名を指定します。デフォルトのままで問題ありません。「Install」をクリックします。
- Installing: インストールが開始されます。完了するまで待ちます。
- Completing IntelliJ IDEA Community Edition Setup: インストール完了画面です。「Run IntelliJ IDEA Community Edition」にチェックを入れて「Finish」をクリックすると、すぐにIntelliJ IDEAが起動します。PATH環境変数を更新した場合は、「Reboot now」を選択してPCを再起動するか、「I want to manually reboot later」を選択して後で手動で再起動してください。
macOSの場合:
- ダウンロードした
.dmg
ファイルをダブルクリックして開きます。 - ディスクイメージがマウントされ、Finderにウィンドウが表示されます。
- ウィンドウ内の「IntelliJ IDEA CE」アイコンを「Applications」フォルダのエイリアスにドラッグ&ドロップします。これでアプリケーションフォルダにインストールされます。
- ディスクイメージをアンマウントします。FinderのサイドバーにあるIntelliJ IDEAのアイコンの横にある取り出しボタンをクリックするか、Dockのアイコンをゴミ箱にドラッグします。
- アプリケーションフォルダを開き、「IntelliJ IDEA CE」アイコンをダブルクリックして起動します。初回起動時はセキュリティ警告が表示される場合がありますが、「開く」を選択して許可します。
Linuxの場合 (tar.gzファイルからのインストール例):
Linuxの場合、ディストリビューションによってはパッケージマネージャー(apt, dnf, pacmanなど)やSnapcraftストア、JetBrains Toolbox Appからもインストールできますが、ここでは一般的なtar.gzファイルからのインストール方法を説明します。
- ダウンロードした
.tar.gz
ファイルを任意のディレクトリ(例:/opt/
またはユーザーのホームディレクトリ下の適当な場所~/opt/
など)に移動します。インストール場所はユーザー権限で書き込み可能な場所を選んでください。/opt/
に入れる場合は管理者権限(sudo
)が必要になります。 - ターミナルを開き、移動したディレクトリに移動します。
bash
# 例: /opt にインストールする場合 (管理者権限が必要)
sudo mv ideaIC-*.tar.gz /opt/
cd /opt/
sudo tar -xzf ideaIC-*.tar.gz
# 解凍後のフォルダ名を確認 (例: idea-IC-233.13135.103)
bash
# 例: ホームディレクトリ下のoptにインストールする場合
mkdir ~/opt
mv ideaIC-*.tar.gz ~/opt/
cd ~/opt/
tar -xzf ideaIC-*.tar.gz
# 解凍後のフォルダ名を確認 - 解凍されたIntelliJ IDEAの実行可能ファイルがある
bin
ディレクトリに移動します。
bash
# 例 (フォルダ名は読み替えてください)
cd /opt/idea-IC-*/bin/
# または
cd ~/opt/idea-IC-*/bin/ idea.sh
スクリプトを実行してIntelliJ IDEAを起動します。
bash
./idea.sh- (任意)デスクトップエントリを作成すると、アプリケーションメニューから起動できるようになります。IntelliJ IDEAが起動したら、メニューバーの
Tools
>Create Desktop Entry...
を選択し、表示されるダイアログで作成します。
IntelliJ IDEAの初回起動と初期設定
インストールが完了し、初めてIntelliJ IDEAを起動すると、いくつかの初期設定を行う画面が表示されます。
- Complete Installation / Import Settings:
以前にIntelliJ IDEAをインストールしたことがある場合、前回の設定を引き継ぐか尋ねられます。初めてインストールする場合は、「Do not import settings」を選択します。 - JetBrains Privacy Policy:
JetBrainsのプライバシーポリシーが表示されます。内容を確認し、「I accept the terms of this agreement」にチェックを入れて「Continue」をクリックします。 - Data Sharing:
匿名利用統計やエラーレポートをJetBrainsに送信するか尋ねられます。製品改善に役立ちますが、任意です。送信したくない場合は「Don’t Send」を選択します。 - Customize IntelliJ IDEA:
ここでUIのテーマやキーマップ、初期プラグインなどを設定できます。後からいつでも変更可能です。- Themes: UIの見た目(カラーテーマ)を選択します。「Darcula」はダークテーマで、目に優しいと人気があります。「Light」は明るいテーマです。お好みで選びましょう。
- Keymap: ショートカットキーの配列を選択します。デフォルトの「IntelliJ IDEA classic」が推奨されますが、もしEclipseやNetBeansといった他のIDEに慣れている場合は、それぞれのキーマップを選択することもできます。プログラミング効率に直結するので、慣れているものか、デフォルトをしっかり覚えるか選びましょう。
- Plugins: IDEの機能拡張であるプラグインを設定します。画面にはいくつかのカテゴリが表示され、インストールを推奨されるプラグインや、無効化できるプラグインが表示されます。ここでは特に変更せず、「Start using IntelliJ IDEA」をクリックして起動することも可能です。後から必要に応じて「Plugins」設定画面で自由に追加/削除できます。
- Welcome Screen:
すべての初期設定が完了すると、IntelliJ IDEAの「Welcome Screen」(ウェルカムスクリーン)が表示されます。ここから新しいプロジェクトの作成、既存プロジェクトのオープン、バージョン管理システムからのプロジェクト取得などを行います。
これで、IntelliJ IDEAを利用する準備が整いました!
IntelliJ IDEAの基本操作:画面構成とプロジェクトの概念
IntelliJ IDEAのWelcome Screenが表示されたら、まずはその基本的な画面構成と、「プロジェクト」という概念について理解しましょう。
プロジェクトとは?
IntelliJ IDEAを含む多くのIDEでは、「プロジェクト」という単位で開発を行います。プロジェクトは、特定のソフトウェアやライブラリを開発するために必要なソースコードファイル、設定ファイル、ライブラリ、ビルド設定などの集合体です。
例えば、JavaのWebアプリケーションを開発する場合、プロジェクトにはJavaのソースファイル(.java
)、HTML/CSS/JavaScriptファイル、設定ファイル(.xml
, .properties
)、利用するライブラリ(.jar
ファイル)、ビルドツール(MavenやGradle)の設定ファイルなどが含まれます。
IntelliJ IDEAでは、このプロジェクトを管理し、効率的に開発を進めるための機能を提供します。
Welcome Screenの主な項目
Welcome Screenには、主に以下の項目があります。
- New Project: 新しいプロジェクトをゼロから作成します。言語やフレームワーク、ビルドツールなどを選択して、プロジェクトのひな形を生成できます。
- Open: 既存のプロジェクトフォルダを開きます。IntelliJ IDEAで作成したプロジェクトや、他のエディタ/IDEで作成したコードのフォルダを指定して開くことができます。
- Get from VCS: GitやSVNなどのバージョン管理システムのリポジトリから、プロジェクトをクローン(ダウンロード)して開きます。
- Customize: UIテーマ、キーマップ、フォントなどの設定を変更できます。初回起動時のカスタマイズ画面と同じものです。
- Plugins: インストールされているプラグインの管理や、新しいプラグインの検索・インストールを行います。
- Learn IntelliJ IDEA: IntelliJ IDEAの基本的な使い方を学ぶためのチュートリアルやヒントが表示されます。
プロジェクトを開いたときの画面構成
Welcome Screenから既存のプロジェクトを開くか、新しいプロジェクトを作成すると、メインの開発画面が表示されます。この画面は大きく以下の領域に分かれています。
- メニューバー: 画面最上部に位置し、ファイル操作、編集、コード、リファクタリング、ビルド、実行、ツール、ウィンドウ、ヘルプなど、IDEの全ての機能にアクセスするためのメニューが含まれています。
- ツールバー (Navigation Bar): メニューバーのすぐ下に位置し、よく使う操作(実行/デバッグ、ビルド、検索など)へのショートカットアイコンが表示されます。また、現在のファイルパスやプロジェクトの構成要素が表示され、ここからファイルや設定に素早くアクセスできます。
- エディタウィンドウ: 画面中央の大部分を占める領域で、現在開いているソースコードファイルの内容が表示されます。複数のファイルをタブで切り替えて表示できます。コードの入力、編集、コード補完、エラー表示、シンタックスハイライトなど、日々のコーディング作業のメインとなる場所です。
- ツールウィンドウ (Tool Windows): 画面の左右や下部に配置できるウィンドウ群です。プロジェクトのファイル構成を表示する「Project」ウィンドウ、プログラムの実行結果を表示する「Run」ウィンドウ、デバッグ時に利用する「Debug」ウィンドウ、バージョン管理の状況を表示する「Version Control」ウィンドウ、ターミナルなどが含まれます。これらのウィンドウは必要に応じて表示/非表示を切り替えたり、配置を変更したりできます。画面端にあるアイコンをクリックして表示できます。
- ステータスバー: 画面最下部に位置し、現在のIDEの状態(ファイルエンコーディング、改行コード、カーソル位置)、バックグラウンドタスクの進捗、イベント通知などが表示されます。
これらの要素は、開発作業の内容に応じてレイアウトを調整できます。最初は各ウィンドウの役割を完全に理解する必要はありません。開発を進める中で、必要に応じて開いたり閉じたりしながら慣れていきましょう。
特に重要なツールウィンドウ:
- Project: プロジェクトのファイルやディレクトリ構造をツリー形式で表示します。開発するファイルにアクセスする際に最もよく使います。
- Run / Debug: プログラムを実行またはデバッグした際の結果や制御が表示されます。エラーメッセージや標準出力もここに出ます。
- Terminal: IDEに内蔵されたコマンドラインターミナルです。IDEを離れることなくシェルコマンドを実行できます。
- Version Control / Git: Gitなどのバージョン管理システムの操作(コミット、プッシュ、プル、履歴確認など)を行います。
初めてのプロジェクト作成と実行(Javaを例に)
IntelliJ IDEAの画面構成が理解できたところで、実際に新しいプロジェクトを作成し、「Hello, World!」と表示する簡単なJavaプログラムを書いて実行してみましょう。
- Welcome Screenから「New Project」を選択します。
- New Projectウィザードが表示されます。
- 画面左側でプロジェクトのタイプを選択します。ここではJavaを選びます。
- 画面右側でプロジェクトの設定を行います。
- Name: プロジェクト名を入力します。(例:
HelloWorldProject
) - Location: プロジェクトを作成するフォルダを指定します。デフォルトの場所でも良いですし、任意の場所を指定しても構いません。
- Language: Javaが選択されていることを確認します。
- Build system: プロジェクトのビルドシステムを選択します。Java開発では「IntelliJ IDEA」(IDE組み込みのビルドシステム)、「Maven」、「Gradle」がよく使われます。最初はシンプルな「IntelliJ IDEA」で始めるのが簡単です。
- JDK: 利用するJDKを選択します。事前にインストールしたJDK(例: Temurin 17)がドロップダウンリストに表示されているはずです。もし表示されない場合は、「Add JDK」をクリックしてJDKがインストールされているフォルダを指定してください。
- Add sample code: サンプルコード(
main
メソッドを持つクラス)を自動生成するか選択します。チェックを入れておくと便利です。
- Name: プロジェクト名を入力します。(例:
- 設定が完了したら、右下の「Create」ボタンをクリックします。
IntelliJ IDEAが新しいプロジェクトを生成し、メインの開発画面が表示されます。
画面左側のProjectツールウィンドウに、プロジェクトのファイル構成が表示されているはずです。src
というフォルダがあり、その中に「Add sample code」にチェックを入れていれば、Main.java
のようなファイルが自動生成されています。
もしファイルが自動生成されていない場合は、手動で作成しましょう。
- Projectツールウィンドウで
src
フォルダを右クリックします。 - コンテキストメニューから
New
>Java Class
を選択します。 - 「New Java Class」ダイアログが表示されるので、クラス名を入力します。(例:
Main
) - 「Kind」は「Class」のままでOKです。Enterキーを押すか「OK」をクリックします。
src
フォルダ内に Main.java
という新しいファイルが作成され、エディタウィンドウに開かれます。
java
public class Main {
// ここにコードを書きます
}
自動生成された、または手動で作成した Main.java
ファイルに、以下のコードを記述します。
java
public class Main {
public static void main(String[] args) {
// "Hello, World!" と表示する
System.out.println("Hello, World!");
}
}
public static void main(String[] args)
は、Javaアプリケーションのエントリーポイント(プログラムが最初に実行される場所)を示す特別なメソッドです。
System.out.println("Hello, World!");
は、「Hello, World!」という文字列をコンソール(画面)に表示するための命令です。
コードを入力すると、IntelliJ IDEAがリアルタイムでコードを解析し、構文エラーがないかなどをチェックしてくれます。
さて、このプログラムを実行してみましょう。
Main.java
ファイルのエディタウィンドウを開いていることを確認します。main
メソッドの定義行(public static void main(...)
)の左端に、緑色の小さな再生アイコンが表示されているはずです。このアイコンをクリックします。- 表示されるメニューから
Run 'Main.main()'
を選択します。
または、以下の方法でも実行できます。
- メニューバーから
Run
>Run 'Main'
を選択します。 - ツールバーにある緑色の再生アイコンをクリックし、表示されるリストから
Main
を選択します。
IntelliJ IDEAがプログラムをコンパイルし、実行します。画面下部にRunツールウィンドウが表示され、プログラムの出力が表示されます。
“`
Hello, World!
Process finished with exit code 0
“`
このように表示されれば成功です!初めてのIntelliJ IDEAでのプログラム実行完了です。
もしエラーが発生した場合は、Runツールウィンドウにエラーメッセージが表示されます。メッセージをよく読んで、コードに間違いがないか確認し、修正してから再度実行してみてください。IntelliJ IDEAはエディタ上でもエラー箇所に赤線などでマークして教えてくれるので、そちらも参考に修正できます。
IntelliJ IDEAの便利な機能(初心者向け)
IntelliJ IDEAが「賢い」と言われるゆえんである、開発効率を大幅に向上させる便利な機能をいくつか紹介します。最初は全てを使いこなす必要はありませんが、存在を知っておくだけでも今後の学習に役立ちます。
1. コード補完 (Code Completion)
タイピング中に、入力しているコードの続きを予測して候補を提示してくれる機能です。IntelliJ IDEAのコード補完は非常に優秀で、単語の補完だけでなく、メソッド名、変数名、クラス名、キーワードなどを文脈に応じて賢く提案してくれます。
- Basic Completion: 入力中のプレフィックス(先頭の文字)に基づいて、最も関連性の高い候補を表示します。通常、入力中に自動的にポップアップ表示されます。手動で表示するには
Ctrl + Space
(Windows/Linux) またはCmd + Space
(macOS) を押します。 - Smart Completion: 期待される型に基づいて、候補を絞り込んで表示します。例えば、あるメソッドの引数として特定の型のオブジェクトが必要な場合、その型に一致する変数やメソッド呼び出しだけを候補に表示します。
Ctrl + Shift + Space
(Windows/Linux/macOS) で呼び出せます。
例えば、先ほどのSystem.out.println
を書く際に、「Sys」と入力した時点でSystem
が候補に表示され、Enterで確定。次に「.o」と入力するとout
が候補に表示…といった具合に、少し入力するだけで候補が出てくるので、全てを手打ちする必要がなくなります。メソッドのカッコやセミコロンも自動で補完してくれることが多いです。
2. コード生成 (Code Generation)
定型的によく書かれるコード(コンストラクタ、Getter/Setterメソッド、toString()
メソッドなど)を自動で生成してくれる機能です。手作業で書くよりも間違いがなく、時間を節約できます。
- クラスのエディタ上で
Alt + Insert
(Windows/Linux) またはCmd + N
(macOS) を押すと、生成できるコードのメニューが表示されます。 - 例えば、「Getter and Setter」を選択し、メソッドを生成したいメンバ変数を選ぶと、対応するGetter/Setterメソッドのコードが一瞬で生成されます。
3. ライブテンプレート (Live Templates)
よく使うコード片を短い略語(ショートカット)で入力し、展開する機能です。例えば、Javaのmain
メソッド全体を「psvm」と入力してTabキーを押すだけで生成できます。
psvm
->public static void main(String[] args) { }
sout
->System.out.println();
fori
->for (int i = 0; i < array.length; i++) { }
(forループのひな形)
他にもたくさんのテンプレートが用意されており、自分で新しいテンプレートを定義することも可能です。これらのテンプレートを使いこなすことで、コーディング速度が格段に向上します。略語を入力してTabキーを押すのが基本的な使い方です。
4. リファクタリング (Refactoring)
リファクタリングとは、プログラムの外部的な動作を変えずに、内部構造を改善することです。コードの可読性、保守性、再利用性を高めるために行われます。IntelliJ IDEAは、このリファクタリングを強力にサポートする機能を持っています。手作業でリファクタリングを行うと、関連する箇所全てを変更し忘れたりするリスクがありますが、IDEのリファクタリング機能を使えば安全に、かつ迅速に実行できます。
代表的なリファクタリング機能:
- Rename (名前の変更): 変数名、メソッド名、クラス名などを変更します。その名前が使われているプロジェクト内の全ての箇所を自動的に見つけて変更してくれます。変更したい要素にカーソルを合わせて
Shift + F6
(Windows/Linux/macOS) で実行できます。 - Extract Method (メソッドの抽出): 複数の行にわたるコードをまとめて、新しいメソッドとして抽出します。重複するコードをなくしたり、一つのメソッドの役割を明確にしたりするのに役立ちます。抽出したいコードを選択し、
Ctrl + Alt + M
(Windows/Linux) またはCmd + Alt + M
(macOS) で実行できます。 - Extract Variable (変数の抽出): 式の結果を変数に代入するように変更します。複雑な式に名前をつけたり、同じ式が複数回出現する場合に役立ちます。抽出したい式を選択し、
Ctrl + Alt + V
(Windows/Linux) またはCmd + Alt + V
(macOS) で実行できます。
他にも様々なリファクタリング機能がありますが、まずは名前の変更から使ってみるとその便利さを実感できるでしょう。
5. デバッグ (Debugging)
プログラムが想定通りに動かないとき(バグがあるとき)、その原因を特定するためにデバッグを行います。IntelliJ IDEAのデバッガは非常に強力です。
基本的なデバッグの流れ:
- ブレークポイントの設定: プログラムの実行を一時停止させたい行の、エディタの左端の余白部分をクリックすると、赤い丸が表示され、その行にブレークポイントが設定されます。
- デバッグ実行: プログラムを実行する代わりに、デバッグモードで実行します。ツールバーのデバッグアイコン(虫のマーク)をクリックするか、
Shift + F9
(Windows/Linux) またはCtrl + D
(macOS) を押します。 - プログラムの一時停止: プログラムは最初のブレークポイントに到達すると一時停止します。画面下部にDebugツールウィンドウが表示されます。
- 状態の確認: Debugツールウィンドウの「Variables」タブで、その時点での変数やオブジェクトの値を確認できます。
- ステップ実行: プログラムを1行ずつ実行したり、メソッドの中に入ったり、メソッドから抜けたりしながら、コードの実行パスを追跡できます。
- Step Over (F10 / F8): 現在の行を実行し、次の行に進みます。メソッド呼び出しの場合は、メソッド全体を実行してその次の行に進みます。
- Step Into (F11 / F7): 現在の行を実行し、もしメソッド呼び出しであればそのメソッドの最初の行に入ります。
- Step Out (Shift + F11 / Shift + F8): 現在のメソッドの実行を最後まで進め、呼び出し元の次の行に戻ります。
- Resume Program (F9 / Cmd + Option + R): 次のブレークポイントまでプログラムの実行を再開します。
- ブレークポイントの解除: デバッグが完了したら、ブレークポイントを再度クリックして解除します。
デバッグ機能を使えば、「なぜここで想定外の値になっているのか?」「この条件分岐には入るはずなのに、なぜスキップされるのか?」といったバグの原因を効率的に突き止めることができます。
6. バージョン管理システム連携 (VCS Integration)
IntelliJ IDEAは、Git, SVN, Mercurialなどの主要なバージョン管理システムと強力に連携しています。特にGit連携は非常に優れており、多くのGit操作をIDE上から直感的に行うことができます。
- Version Controlツールウィンドウ (Alt + 9 / Cmd + 9): プロジェクトの変更履歴、ブランチの状況、ステージングされているファイルなどが一目で確認できます。
- 変更の表示: コードの変更箇所がエディタ上で色分けされて表示されます。誰がいつ変更したか(Annotate機能)も確認できます。
- コミット: 変更内容を確認し、コミットメッセージを書いてコミットできます。
- プッシュ/プル: リモートリポジトリとの間でコードのやり取り(プッシュ、プル、フェッチ)が簡単に行えます。
- ブランチ操作: ブランチの作成、切り替え、マージ、リベースなどもGUIで操作できます。
- 競合の解決: マージ時に発生した競合(コンフリクト)も、専用のツールを使ってGUIで分かりやすく解決できます。
バージョン管理システムを使うことは、個人開発でもチーム開発でも必須です。IntelliJ IDEAを使えば、コマンドラインに不慣れな初心者でもGit操作をスムーズに行えます。
7. ターミナル (Terminal)
IDEの下部にあるツールウィンドウの一つとして、OSのコマンドラインターミナルが内蔵されています。IDEを離れることなく、ファイルシステムの操作、外部コマンドの実行、ビルドツールのコマンド実行などが行えます。Alt + F12
(Windows/Linux) または Cmd + F12
(macOS) で表示/非表示を切り替えられます。
カスタマイズとプラグイン
IntelliJ IDEAは非常に高いカスタマイズ性を持っています。自分の好みや開発スタイルに合わせて見た目や挙動を変更できます。また、プラグインを追加することで、標準機能にはない様々な機能を追加・強化できます。
設定画面を開くには、メニューバーから File
> Settings...
(Windows/Linux) または IntelliJ IDEA
> Preferences...
(macOS) を選択します。
主なカスタマイズ項目
- Appearance & Behavior > Appearance: UIテーマ(Darcula, Lightなど)、フォント、アイコンのサイズなどを変更できます。
- Editor > Font: エディタで表示されるコードのフォントやサイズ、行間などを変更できます。見やすいフォントやサイズに設定しましょう。
- Editor > Color Scheme: コードの色分け表示(シンタックスハイライト)の配色を変更できます。
- Keymap: ショートカットキーの割り当てを変更・確認できます。デフォルトのキーマップを確認したり、自分が使いやすいように変更したりできます。
- Editor > Code Style: コードの自動フォーマット(インデント、スペース、改行、カッコの位置など)のルールを設定できます。チームで開発する場合は、コードスタイルを統一することが重要です。
Ctrl + Alt + L
(Windows/Linux) またはCmd + Alt + L
(macOS) で現在のファイルのコードを整形できます。
プラグインの導入
IntelliJ IDEAの機能を拡張したい場合は、プラグインを利用します。様々な言語サポート、フレームワーク連携、開発支援ツールなどがプラグインとして提供されています。
- 設定画面で、左側のメニューから
Plugins
を選択します。 Marketplace
タブには、IntelliJ IDEAで利用可能なプラグインのリストが表示されます。検索バーでプラグイン名を検索したり、カテゴリから探したりできます。- インストールしたいプラグインが見つかったら、「Install」ボタンをクリックします。
- インストール後、IDEの再起動を求められる場合があります。再起動するとプラグインが有効になります。
Installed
タブでは、現在インストールされているプラグインを確認できます。不要なプラグインはここで無効化したりアンインストールしたりできます。
初心者の方にお勧めのプラグインとしては、開発している言語やフレームワークに関連するプラグイン(例: Python開発ならPython Community Editionプラグイン)、またはUIの日本語化プラグインなどがあります。
日本語化プラグイン:
「Japanese Language Pack」という公式プラグインをインストールすると、メニューやダイアログなどが日本語で表示されるようになります。英語に抵抗がある方は導入を検討しても良いでしょう。ただし、技術情報は英語が多いこと、日本語化が完全でない部分があることなどを考慮して判断してください。
よくあるトラブルとその解決策
IntelliJ IDEAを使い始める上で、初心者の方がつまずきやすいポイントや、よくあるトラブルとその解決策をいくつか紹介します。
-
JDKが見つからない、または正しく設定されていない:
- 症状: プロジェクトを作成・開こうとしたときにJDKが選択肢に表示されない、またはプロジェクトを開いた後にコンパイルエラーが出る(例: “javac command not found”)。
- 原因: JDKが正しくインストールされていない、またはIntelliJ IDEAがJDKの場所を認識できていない。
- 解決策:
- JDKがPCにインストールされているか、上記「導入準備」の手順を参考に確認します。コマンドプロンプト/ターミナルで
java -version
とjavac -version
が実行できるか確認します。 - IntelliJ IDEAの設定画面(File > Settings / Preferences)を開き、
Build, Execution, Deployment
>Build Tools
>Gradle
(または Maven) >Java Compiler
や、Project Structure
画面(File > Project Structure または Ctrl+Alt+Shift+S / Cmd+;)で、プロジェクトに使用するSDK(JDK)が正しく選択されているか確認します。もしリストに表示されていなければ、「Add JDK」からJDKのインストールディレクトリを指定して追加します。 - WindowsでPATH環境変数を設定した場合は、PCの再起動が必要なことがあります。
- JDKがPCにインストールされているか、上記「導入準備」の手順を参考に確認します。コマンドプロンプト/ターミナルで
-
プロジェクトがビルドできない、依存関係の解決に失敗する:
- 症状: コード自体に構文エラーはないのに、ビルドや実行をしようとするとエラーになる。特にMavenやGradleプロジェクトでライブラリが見つからないといったエラーが出る。
- 原因: 外部ライブラリのダウンロードや依存関係の解決に失敗している。インターネット接続の問題や、ビルド設定ファイル(pom.xml, build.gradle)の誤り。
- 解決策:
- インターネットに正常に接続できているか確認します。
- MavenまたはGradleツールウィンドウ(画面右側などに表示)を開き、リフレッシュボタン(🔄のようなアイコン)をクリックして依存関係を再読み込みします。
- メニューバーから
Build
>Rebuild Project
を選択し、プロジェクト全体をクリーンビルドしてみます。 - ビルド設定ファイル(pom.xmlやbuild.gradle)に誤字脱字や設定ミスがないか確認します。
-
ショートカットキーが効かない:
- 症状: 解説記事やドキュメントに記載されているショートカットキーを押しても何も起こらない。
- 原因: 設定されているキーマップが異なる、または他のアプリケーションがショートカットキーを占有している。
- 解決策:
- 設定画面(Settings / Preferences)を開き、
Keymap
を選択します。現在適用されているキーマップが何か確認します。記事のショートカットキーがデフォルトの「IntelliJ IDEA classic」用であれば、そのキーマップになっているか確認します。 - Keymap設定画面の検索バーで、実行したい機能名(例: “Run”, “Refactor This”)を検索し、現在割り当てられているショートカットキーを確認します。
- 他のアプリケーション(特にスクリーンショットツールやIMEなど)が同じショートカットキーを使っている場合、そちらが優先されてしまうことがあります。競合している場合は、他のアプリケーションの設定を変更するか、IntelliJ IDEAのキーマップを変更します。
- 設定画面(Settings / Preferences)を開き、
-
IntelliJ IDEAの動作が重い:
- 症状: IDEの起動や操作に時間がかかる、入力に対する反応が遅い、ファンが高速回転する。
- 原因: PCのスペック不足(特にメモリ)、大きなプロジェクトを開いている、多数のプラグインを有効にしている、IDEのキャッシュが壊れている/大きすぎる。
- 解決策:
- PCのメモリ搭載量を確認し、推奨環境を満たしているか確認します。
- IDEのメモリ割り当て設定を確認します(Help > Change Memory Settings)。PCに十分なメモリがある場合、割り当てを増やすことで改善することがあります。
- 不要なプラグインを無効化します(Settings / Preferences > Plugins > Installed)。
- キャッシュをクリアしてIDEを再起動します(File > Invalidate Caches / Restart… > Invalidate and Restart)。これにより一時ファイルやキャッシュが削除され、動作が改善することがあります。この操作で設定やコードは削除されません。
- SSDドライブを使用しているか確認します。HDDに比べてSSDはIDEの動作を大幅に高速化します。
これらのトラブルシューティングは、IntelliJ IDEAに限らず他のIDEや開発ツールでも役立つ基本的な考え方です。エラーメッセージをよく読み、何が問題なのか(JDK?ビルド設定?コード?)を切り分けて考えることが重要です。
学習リソース
IntelliJ IDEAの基本的な導入と操作はこれで分かりましたが、IDEにはまだまだたくさんの便利な機能があります。さらに深く学ぶためのリソースを紹介します。
- 公式ドキュメント (JetBrains Documentation):
JetBrainsが提供する公式ドキュメントが最も正確で網羅的です。各機能の詳細な使い方や設定方法などが記載されています。英語が中心ですが、日本語のドキュメントも一部存在します。
(例: IntelliJ IDEA Help – https://www.jetbrains.com/help/idea/) - JetBrains TV (YouTube):
JetBrains公式のYouTubeチャンネルには、IntelliJ IDEAの様々な機能を紹介するチュートリアル動画やウェビナーの録画が多数公開されています。視覚的に操作方法を学べるため、初心者にも分かりやすいです。
(例: JetBrainsTV – https://www.youtube.com/user/JetBrainsTV) - Learn IntelliJ IDEA (IDE内蔵):
IntelliJ IDEAのWelcome ScreenやHelpメニューからアクセスできるIDE内蔵の学習リソースです。インタラクティブなチュートリアルなどが提供されている場合があります。 - 書籍、技術ブログ、オンラインコース:
IntelliJ IDEAの使い方や特定の言語・フレームワークでの開発方法を解説した書籍、技術ブログの記事、UdemyやCourseraなどのオンライン学習プラットフォームのコースも多数存在します。自分の学習スタイルに合ったものを選びましょう。「IntelliJ IDEA 使い方」「Java IntelliJ IDEA チュートリアル」などで検索してみてください。 - コミュニティとフォーラム:
IntelliJ IDEAのユーザーコミュニティや技術系フォーラム(Stack Overflow, Qiita, Zennなど)では、他のユーザーに質問したり、過去の質問とその回答を参考にしたりできます。困ったときに助けを求められる場所として活用しましょう。
まとめ
この記事では、プログラミング初心者の方に向けて、統合開発環境であるIntelliJ IDEAの基本的な情報から、ダウンロード、インストール、初回設定、そして簡単なプロジェクト作成と実行、さらに開発効率を上げるための便利な機能(コード補完、リファクタリング、デバッグなど)について詳しく解説しました。
IntelliJ IDEAは非常に多機能なIDEですが、今回紹介した基本操作や主要な便利機能を押さえておけば、日々の開発作業をスムーズに進めることができるはずです。特に、賢いコード補完や強力なデバッグ機能は、バグの少ない、質の高いコードを効率的に書く上であなたの強力な武器となります。
最初は全ての機能を使いこなす必要はありません。まずはこの記事を参考にIntelliJ IDEAをPCに導入し、簡単なプログラムを書いて実行するところから始めてみてください。そして、コードを書く中で「もっと効率的にできないかな?」「このバグ、どうやったら見つけられるんだろう?」と感じたときに、この記事で紹介した便利機能(コード生成、リファクタリング、デバッグなど)を思い出して使ってみてください。きっとその便利さに驚くはずです。
IntelliJ IDEAは、あなたのプログラミング学習や開発キャリアを強力にサポートしてくれる、まさに「一生モノ」のツールになり得ます。ぜひIntelliJ IDEAを使いこなし、快適な開発ライフを送ってください!
この記事が、あなたのIntelliJ IDEAマスターへの第一歩となれば幸いです。頑張ってください!